説明

剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物及びこれをコーティングしたシリコーン離型フィルム

本発明のシリコーン離型組成物は、剥離力を調節することができるシリコーン水分散離型組成物であって、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン樹脂、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び白金キレート触媒を含み、剥離力(Peeling Force)に関する下記数式1を満たすことを特徴とする。本発明によれば、所望の数値の再現性のある所定の剥離力を得ることができ、有害な有機溶剤を排出することがない均一なコーティングの離型フィルムを製造することができ、またこのように製造されたシリコーン離型フィルムは、粘着剤と適合する安定した剥離力特性を有する。
Peeling Force=aX+b・・・数式(1)
式中、a=61.62±3.98、b=16.43±3.01、X=離型コーティング組成物中のオルガノポリシロキサン樹脂の含有量(%)。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
[1]
本発明は、剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物及びこれをコーティングしたシリコーン離型フィルムに関し、所望の数値の再現性のある所定の剥離力を得ることができ、有害な有機溶剤を排出することのない均一なコーティングの離型フィルムを製造することができ、またこのように製造されたシリコーン離型フィルムは、粘着剤と安定した剥離力特性を有することができる剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物及びこれをコーティングしたシリコーン離型フィルムに関する。
【0002】
[2]
[背景技術]
[3]
一般に、離型フィルムは、粘着剤、接着剤、貼薬剤(pasting medicine)などのための接着面保護用フィルムとして使用されるか、又は樹脂のシートを形成するためのキャリアシート、詳細に説明すると、セラミックシート、電極シートなどで使用されている。近来、光学用製品の用途と品種が多様化し、生産量が増加すると共に、生産性の改善などの理由で粘着剤及び接着剤などが液状形態からシート状に変化しているのが現状である。このようなシート状の樹脂、粘着剤及び接着剤製品の構成は、図1のとおりである。このようなシートを使用する際には、まず剥離力がより低いA面(軽剥離)の離型層が除去され、シートは所望の部位に接合される。次に、剥離力がより高いB面(重剥離)の離型層が除去される。この場合、シートの両側に位置した離型層が同時に除去されてはならないので、求められる物性として、それぞれの離型層は、一定水準の剥離力の差を有していなければならない。
【0003】
基本的な離型コーティング組成物であるオルガノポリシロキサン(organopolysiloxane)、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(organo hydrogen polysiloxane)及び白金触媒で構成される付加型シリコーン組成物により形成された硬化被膜は、一般に各種ラベル又はテープ類などの剥離力の小さな軽剥離性が要求される用途には有用である。しかしながら、前述の硬化被膜は充分な剥離性を有しないため、上記のようなより重い剥離力が要求される用途には使用されない。
【0004】
[4]
上記問題を解決するために、従来では、離型組成物を二回コーティングすることにより両面の離型力に差を付ける方法が使用されてきた。この場合には、高速剥離時に剥離安定性が不足するという問題が生じる。また、日本公開特許H07−126532及びH07−252360には、オルガノポリシロキサン樹脂(organo polysiloxane resin)を、溶剤と共に、又は溶剤なしで添加した付加反応型シリコーン組成物を使用する方法が開示されている。しかしながら、オルガノポリシロキサン樹脂を溶剤と共に使用した場合には、環境的な側面や安定性の問題があり得る。オルガノポリシロキサン樹脂を溶剤なしで使用した場合には、得られるフィルムの剥離力を上昇させるためにオルガノポリシロキサン樹脂の添加量を増やすことによって、組成物の粘度が上昇してコーティング工程性が低下するという問題があり得る。
【0005】
[5]
[発明の開示]
[技術的な課題]
[6]
本発明は、上記のような要求に応じて上記の典型的な問題点を解決するために案出されたものである。
[7]
本発明の目的は、再現性のある所定の剥離力を有し、得られるフィルムの剥離力を調節することができる安定した離型コーティング層を形成するためのシリコーン離型組成物、及び当該組成物をコーティングしたシリコーン離型フィルムを提供することにある。
【0006】
[有利な効果]
[8]
本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物では、インライン又はオフライン製造工程を経て所望の数値の再現性のある所定の剥離力を得ることができる。また、本発明によれば、有害な有機溶剤を排出(揮発)することのない均一なコーティングの離型フィルムを製造することができ、また、このように製造されたシリコーン離型フィルムは、粘着剤(viscous agent)と適合する安定した剥離力特性を有する。
【0007】
[9]
本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物が塗布された離型フィルムは、シート状の樹脂、粘着剤及び接着剤の保護用として適用可能であり、また両面テープなどの用途にも効果的に且つ好適に使用することができる。
【0008】
[15]
[発明を実施するための最良の形態]
[16]
以下では、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に記載する。
【0009】
[17]
本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物は、シリコーン水分散離型コーティング組成物であって、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン樹脂、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び白金キレート触媒を含み、剥離力(Peeling Force)が下記数式1を満たすことを特徴とする。
[18]
Peeling Force=aX+b・・・数式1
[19]
数式1中、a=61.62±3.98、b=16.43±3.01、X=シリコーン離型コーティング組成物におけるオルガノポリシロキサン樹脂の含有量(%)、である。
【0010】
[20]
好ましくは、本発明は、前記組成物が、6〜20重量%の固形分を含むことを特徴とする。
【0011】
[21]
さらに好ましくは、本発明は、前記オルガノポリシロキサン樹脂が、水分散エマルジョン形態で下記化学式3〜5に示す構造を有する繰り返し単位を備えることを特徴とする。
[22]
【化1】


[23]
[24]
【化2】


[25]
[26]
【化3】

【0012】
[27]
さらに好ましくは、本発明は、上記化学式3及び上記化学式4におけるRが、メチル基、ビニル基、又はフェニル基であり、オルガノポリシロキサン樹脂が、直鎖状又は環状の構造を有することを特徴とする。
【0013】
[28]
本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物をコーティングしたシリコーン離型フィルムは、前記剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物をポリエステルプラスチックフィルムの一面又は両面に一定の塗布厚さに塗布(コーティング)することにより、シリコーン離型コーティング層が形成されていることを特徴とする。
【0014】
[29]
以下、本発明の実施形態を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの実施形態は、単に本発明をさらに具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施形態により制限されないことは、当業界における通常の知識を有するものにとって自明である。
【0015】
[30]
本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物の構成成分の一つであるオルガノポリシロキサン(organopolysiloxane)は、下記化学式1に示す代表的な分子構造を有する。
[31]
[32]
[33]
【0016】
【化4】


化学式1中、Rは、CH=CHであり、Rは、CH−CH−CH−CH−CH=CH,CHであり、mとnは、0より大きい整数である。
【0017】
[34]
前記オルガノポリシロキサンは、分子内にビニル基を含有し、ビニル基が分子中の何れの部分に存在していても良いが、特に分子の末端に存在することが好ましい。
【0018】
[35]
また、分子構造は、直鎖状又は分枝状であっても良く、直鎖と分枝が共にある構造であっても良い。シリコーン原子に結合されたメチル基は、脂肪族不飽和炭化水素基などで置換可能であるが、メチル基の単位が、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上含有されることによって、平滑性及び離型性が向上する。
【0019】
[36]
本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物において硬化剤として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(organo hydrogen polysiloxane)の代表的な分子構造を下化学式2に示す。
[37]
[38]
【0020】
【化5】


[39]
化学式2中、qとpは、0より大きい整数である。
【0021】
[40]
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状構造、分枝状構造又は環状構造のうち何れの構造を有していても良く、これらを組み合わせた構造を有していても良い。その粘度や分子量は限定されないが、前記オルガノポリシロキサンとの相溶性が良好でなければならず、使用量は、前記オルガノポリシロキサンのビニル基1個に対してシリコーン原子に結合した水素原子が0.5〜1.2個の範囲になることが好ましい。オルガノポリシロキサンのビニル基1個に対して、シリコーン原子に結合した水素原子が0.5個未満である場合には、良好な硬化性を得ることができないということがあり得、1.2個を超過する場合には、硬化後の弾性や物理的性質が低下することがあり得る。一方、本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物では、オルガノポリシロキサンに比べてオルガノハイドロジェンポリシロキサンの量が多いと、過剰な架橋が進行する結果、得られるフィルムにおいて、柔軟性が減少して亀裂が生じ、そのため平滑性が減少する。
【0022】
[41]
本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物中のオルガノポリシロキサン樹脂の代表的な構造は、下記化学式3〜5に示す単位が直鎖状、又は環状に繰り返された構造を有することが好ましい。
[42]
[43]
[44]
【0023】
【化6】


[45]
[46]
[47]
【0024】
【化7】


[48]
[49]
[50]
【0025】
【化8】

【0026】
[51]
ここで、化学式3及び4のRは、好ましくはアルキル基、より好ましくはメチル基又は脂肪族不飽和炭化水素、さらに好ましくはビニル基、芳香族炭化水素、最も好ましくは、フェニル基などである。
【0027】
[52]
また、本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物中のオルガノポリシロキサン樹脂は、0.1〜20重量%、好ましくは、0.15〜10重量%の固形分を含有する。含有される固形分の量が0.15重量%未満である場合には、所望の高水準の剥離力が調節されず、10重量%を超過する場合には、得られる剥離力が大きすぎるため、離型基材とは言い難い。
【0028】
[53]
また、本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンなどから形成されたプラスチックフィルム、クラフトペーパー、不織布、布などの上に直接適用することができる。コーティング層の均一性と安定した剥離力のためには、全体固形分の含有量が6〜20重量%であることが好ましい。基材とコーティング層との間の強い化学結合のために、コロナ処理などの表面処理を基材上に行った後に、離型剤を基材に塗布することができる。基材の厚さは12〜1500μmの範囲であることが好ましい。
【0029】
[54]
[55]
[実施例]
[56]
下記表1の実施例1〜5に示すように、本発明による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物を、基材であるポリエステルフィルムに通常の方法でコーティングして、離型フィルムを製造した。
【0030】
[57]
[58]
[比較例]
[59]
下記表1の比較例1〜3に示すように、剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物を、基材であるポリエステルフィルムに通常の方法でコーティングして、離型フィルムを製造した。
【0031】
[60]
前記実施例及び比較例に対応する組成と、実施例及び比較例の剥離力(g/in)と残留接着率(subsequent adhesion ratio)(%)とを、下記表1に示す。
[61]
【0032】
【表1】


[62]
(A:オルガノポリシロキサン、B:オルガノポリシロキサン樹脂、C:オルガノハイドロジェンポリシロキサン、D:白金キレート触媒)
【0033】
[63]
表1から確認できるように、本発明による実施例は、適切な組成比に応じて剥離力が一定の傾きで変化する。
【0034】
[64]
すなわち、オルガノポリシロキサン樹脂/オルガノポリシロキサンである組成比B/Aと、オルガノハイドロジェンポリシロキサン/オルガノポリシロキサンである組成物比C/Aに応じた剥離力を示すグラフである図2と、剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物中のオルガノポリシロキサン樹脂の含有量(%)に応じた剥離力を示すグラフである図3とから確認できるように、本発明及びその実施例による剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物を用いて製造された離型フィルムは、オルガノポリシロキサン樹脂(B)の添加量に応じて、下記数式1に応じた一定の傾きで連続的に上昇する剥離力(Peeling Force)を示すことが確認される。
[65]
[66]
[67]
Peeling Force=aX+b・・・数式1
[68]
式中、a=61.62±3.98、b=16.43±3.01、X=離型コーティング組成物中のオルガノポリシロキサン樹脂の含有量(%)。
【0035】
比較例に対応する離型フィルムの剥離力の分析結果により、オルガノポリシロキサン樹脂(B)を添加しない場合、所定の剥離力は、オルガノポリシロキサン(A)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(C)との含有量に応じて変化しないことが確認される。
【0036】
[69]
以下では、前記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの物性である剥離力(g/in)及び残留接着率(%)の測定方法を記載する。
[70]
(物性測定例1:剥離力の測定)
[71]
−試料準備
[72]
1.シリコーン離型組成物がコーティングされた測定用サンプルを25℃、65%RHで24時間放置する。
[73]
2.シリコーン離型組成物がコーティングされた表面に標準粘着テープ(TESA7475)を付けた後、このサンプルを室温(25℃)及び高温(50℃)の下で20g/cmの荷重で24時間圧着(press)した後に、サンプルの物性を測定する。
[74]
−測定機器:cheminstrument AR−1000
[75]
−測定方法:
[76]
1.剥離角度180゜、剥離速度12in/分
[77]
2.サンプルの大きさ:500mm×1500mm、剥離力の測定大きさ:250mm×1500mm
[78]
−測定データ:剥離力の単位は、g/inであり、サンプルを5回測定して平均値を算出する。
[79]
(物性測定例2:残留接着率の測定)
[80]
−試料準備:
[81]
1.シリコーン離型組成物がコーティングされた測定用サンプルを25℃、65%RHで24時間放置する。
[82]
2.シリコーン離型組成物がコーティングされた表面に標準粘着テープ(Nitto 31B)を付けた後、このサンプルを室温(25℃)下で20g/cmの荷重で24時間圧着(press)する。
[83]
3.シリコーン離型組成物がコーティングされた表面に付けられた粘着テープを汚染無しに回収し、表面が平坦でかつ清潔なPETフィルムの表面に接着した後、そのフィルムを2kgのテープローラ(ASTMD−1000−55T)で1回往復(one round)圧着(press)する。
[84]
4.剥離力を測定する。
[85]
−測定機器:cheminstrument AR−1000
[86]
−測定方法:
[87]
i)剥離角度180゜、剥離速度12in/分
[88]
ii)サンプルの大きさ:500mm×1500mm、剥離力の測定大きさ:250mm×1500mm
[89]
[90]
−データ
[91]
【数1】

【0037】
[92]
[93]
本明細書では、本発明者等が行った多様な実施例のうち、一部の例のみを挙げて説明しているが、本発明の技術的思想は、これに限定又は制限されず、当業者により変形されて多様に実施されうることはもちろんである。
[10]
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】[12] 図1は、一般的な接着シートの両面に貼り付けられた離型フィルムの構成図である。
【図2】[13] 図2は、オルガノポリシロキサン樹脂/オルガノポリシロキサンの組成比と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン/オルガノポリシロキサンの組成比とに応じた剥離力を示したグラフである。
【図3】[14] 図3は、オルガノポリシロキサン樹脂の含有量(%)に応じた剥離力を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離力を調節することができるシリコーン水分散離型組成物であって、
オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン樹脂、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び白金キレート触媒を含み、
剥離力(Peeling Force)に関する下記数式1を満たすことを特徴とする、シリコーン離型組成物。
Peeling Force=aX+b ・・・数式1
[式中、a=61.62±3.98、b=16.43±3.01、X=前記シリコーン離型組成物中のオルガノポリシロキサン樹脂の含有量(%)、である。]
【請求項2】
前記組成物は、6〜20重量%の固形分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサン樹脂は、水分散エマルジョン形態で下記化学式3〜5の構造の繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物。
【化1】


【化2】


【化3】

【請求項4】
前記化学式3及び4における前記Rは、メチル基、ビニル基、又はフェニル基であり、 前記オルガノポリシロキサン樹脂は、直鎖状又は環状の構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の剥離力を調節することができるシリコーン離型組成物をポリエステルプラスチックフィルムの一面又は両面に一定の塗布厚さにコーティングすることにより、シリコーン離型コーティング層が形成されていることを特徴とする、シリコーン離型フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−518499(P2009−518499A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544239(P2008−544239)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/KR2006/004876
【国際公開番号】WO2007/066912
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(501380081)トウレ セハン インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】