Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
剥離性と耐熱性を有する難燃性組成物、難燃性樹脂の製造方法及び絶縁電線
説明

剥離性と耐熱性を有する難燃性組成物、難燃性樹脂の製造方法及び絶縁電線

【課題】シラン変性ポリエチレン系樹脂をベ一ス樹脂とする難燃性組成物から形成される樹脂皮膜の表面同士が高温で接触した状態で放置された後に、容易に表面同士を剥離することが可能である、剥離性と耐熱性を有する難燃性組成物、難燃性樹脂の製造方法及び絶縁電線を提供する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂にシランカップリング剤をグラフト重合させたシラン変性ポリエチレン系樹脂を含有するA成分と、ポリエチレン系樹脂に水酸化マグネシウムと、融点150℃以上のトリアジン系化合物と、ベンズイミダゾール系化合物と、酸化亜鉛と、銅害防止剤を配合してなるB成分と、ポリエチレン系樹脂にシラン架橋触媒を配合してなるC成分を混練し、導体の外周を被覆するように成形した後、水架橋を行い架橋された難燃性樹脂からなる絶縁体を形成して絶縁電線を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離性と耐熱性を有する難燃性組成物、難燃性樹脂の製造方法及び絶縁電線に関し、さらに詳しくは、例えば自動車のエンジンルーム等の高い耐熱性が要求される場所で使用される絶縁電線の被覆材として好適な難燃性組成物、難燃性樹脂の製造方法及び絶縁電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンルーム等の高温環境下で使用される絶縁電線には、高い耐熱性が要求されている。そのため、このような場所で使用される絶縁電線の被覆材には、電子線照射等の手段により架橋した架橋ポリ塩化ビニル(PVC)や架橋ポリエチレン等が用いられてきた。
【0003】
例えば特許文献1には、高い耐熱性と難燃性を有する、シラン架橋ポリオレフィンと、ポリオレフィンと、金属水和物と、フェノール系酸化防止剤と、硫黄系酸化防止剤と、金属酸化物と、銅害防止剤とを含有する難燃性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−174157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来知られているシラン架橋ポリエチレンを用いた難燃性組成物は、ISO6722規格の150℃−3000時間長期耐熱評価試験に合格する高い耐熱性を有するものの、絶縁電線の被覆材として使用した場合には以下のような間題が生じることが判明した。
【0006】
すなわち、自動車等の車両において絶縁電線を使用する場合、一般に複数の絶縁電線をひとまとまりに束ねて電線束とし、この電線束の外周に保護材を巻くことによりワイヤーハーネスとして使用することが多い。
【0007】
この際、電線束では電線同士が表面で接触し、エンジンルームのような高温環境下で長期間使用される。このような高温環境下で長期間電線同士を束ね放置すると、電線表面同士が接着する。原因としては、詳細なメカニズムまでは解明されていないが、べ一ス樹脂のポリエチレン系樹脂のうち未架橋の部分同士が高温下で溶融し接着するのではないかと考えられる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、シラン変性ポリエチレン系樹脂をベ一ス樹脂とする難燃性組成物から形成される樹脂が、例えば絶縁電線の被覆材として使用される場合のように、樹脂皮膜の表面同士が高温で接触した状態で放置された後に、容易に表面同士を剥離することが可能である、剥離性と耐熱性を有する難燃性組成物、難燃性樹脂の製造方法及び絶縁電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る難燃性組成物は、
シラン変性ポリエチレン系樹脂40〜80質量部と、ポリエチレン系樹脂20〜60質量部を含有するポリマー成分100質量部に対し、
水酸化マグネシウム又は/及び水酸化アルミニウム30〜200質量部、融点150℃以上のトリアジン系化合物0.5〜5質量部、ベンズイミダゾール系化合物1〜10質量部、酸化亜鉛1〜10質量部、銅害防止剤0.1〜5質量部含有することを要旨とするものである。
【0010】
上記難燃性組成物は、上記ポリマー成分100質量部に対し、更にフェノール系酸化防止剤1〜10質量部含有することができる。
【0011】
また本発明に係る難燃性樹脂の製造方法は、
ポリエチレン系樹脂にシランカップリング剤をグラフト重合させたシラン変性ポリエチレン系樹脂を含有するA成分と、
ポリエチレン系樹脂に、水酸化マグネシウム又は/及び水酸化アルミニウムと、融点150℃以上のトリアジン系化合物と、ベンズイミダゾール系化合物と、酸化亜鉛と、銅害防止剤を配合してなるB成分と、
ポリエチレン系樹脂に、シラン架橋触媒を配合してなるC成分と、
を混練し成形した後、水架橋を行うことを要旨とするものである。
【0012】
上記難燃性樹脂の製造方法において、上記B成分が、更にフェノール系酸化防止剤を配合してなるものとすることができる。
【0013】
本発明に係る絶縁電線は、上記の難燃性組成物から形成された絶縁体により、導体の外周が被覆されていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る難燃性組成物は、シラン変性ポリエチレン系樹脂40〜80質量部と、ポリエチレン系樹脂20〜60質量部を含有するポリマー成分100質量部に対し、水酸化マグネシウム又は/及び水酸化アルミニウム30〜200質量部、融点150℃以上のトリアジン系化合物0.5〜5質量部、ベンズイミダゾール系化合物1〜10質量部、酸化亜鉛1〜10質量部、銅害防止剤0.1〜5質量部含有することにより、硬化して架橋した後の樹脂皮膜は、剥離性、耐熱性、難燃性に優れたものが得られる。
【0015】
特に、融点150℃以上のトリアジン系化合物を0.5〜5質量部添加したことにより、従来の融点150℃以上のトリアジン系化合物を含まない難燃性組成物を硬化して架橋した後の樹脂皮膜と比較して、樹脂皮膜の表面同士が接触した状態で150℃以上の高温下に長期間放置された後でも、樹脂皮膜同士を容易に剥離することが可能である。
【0016】
本発明に係る難燃性樹脂の製造方法は、ポリエチレン系樹脂にシランカップリング剤をグラフト重合させたシラン変性ポリエチレン系樹脂を含有するA成分と、ポリエチレン系樹脂に、水酸化マグネシウム又は/及び水酸化アルミニウムと、融点150℃以上のトリアジン系化合物と、ベンズイミダゾール系化合物と、酸化亜鉛と、銅害防止剤を配合してなるB成分と、ポリエチレン系樹脂に、シラン架橋触媒を配合してなるC成分と、を混練し成形した後、水架橋を行う方法を採用したことにより、ポリエチレン系樹脂にシランカップリング剤をグラフト重合させたシラン変性ポリエチレン系樹脂を含有するA成分と、難燃剤を含むB成分とが別々に混練された後に、混合添加される方法を用いたことにより、難燃剤や安定剤中の水分が、シラン変性ポリエチレン系樹脂を製造する際にシランカップリング剤が反応しないので、ポリエチレン系樹脂とシランカップリング剤のグラフト反応を阻害する虞がない。また、シラン変性ポリエチレン系樹脂を製造する際にゲル状物質が発生する虞がない。
【0017】
そのため上記の本発明難燃性組成物から形成される難燃樹脂成形品の外観が悪化したり、架橋不足が発生して、耐熱性が低下したりすることがなく、剥離性、耐熱性に優れた難燃性樹脂を確実に製造することができる。
【0018】
本発明に係る絶縁電線は、上記の難燃性組成物から形成された絶縁体により、導体の外周が被覆されていることにより、優れた耐熱性と剥離性を有する難燃性電線が得られる。特に絶縁電線を束ねた電線束を、150℃以上の高温環境下で長期間放置した場合であっても、電線表面同士が接着することがなく電線表面の剥離性に優れた絶縁電線が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る難燃性組成物は、少なくともシラン変性ポリエチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を含有するポリマー成分と、水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウム、或いは水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムの混合物のいずれかである無機系難燃剤、融点150℃以上のトリアジン系化合物、フェノール系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系化合物、酸化亜鉛、銅害防止剤を含有する。
【0020】
本発明の難燃性組成物は、融点が150℃以上のトリアジン系化合物を用いることにより、難燃性組成物を成形し架橋して得られる難燃性樹脂が、樹脂同士が接触した状態で150℃以上の高温で長期間放置された後でも、樹脂同士を良好に剥離することができ、剥離性を有するものであれる。これは融点が150℃以上のトリアジン系化合物が、ポリマー成分のポリエチレン系樹脂の未架橋の部分同士が高温下で溶融し接着するのを抑制していると考えられる。
【0021】
尚、本発明において剥離性を有するとは、樹脂同士を接触した状態で150℃×24時間の条件下に放置した後で、樹脂同士が容易に剥がれる程度の剥離性を備えることを意味する。また本発明において耐熱性を有するとは、ISO6722規格の150℃−3000時間長期耐熱評価試験に合格する程度の耐熱性を備えることを意味する。
【0022】
また難燃性組成物は、フェノール系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系化合物、酸化亜鉛、銅害防止剤により高い耐熱性が得られる。フェノール系酸化防止剤は、難燃性組成物内の熱劣化とともに発生するラジカルを捕捉する。ベンズイミダゾール化合物は、硫黄原子が酸化亜鉛の働きを受け、熱劣化の進行中にシラン架橋ポリエチレン間に補足的な架橋結合を作ることにより、シラン架橋ポリエチレンの熱劣化を抑制しているものと推察される。さらに、銅害防止剤が、絶縁電線の導体(銅線)から発生する銅イオンを捕捉し、銅が触媒となって絶縁体が熱劣化するのを抑制する。
【0023】
シラン変性ポリエチレン系樹脂は、シラン変性ポリエチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を含むポリマー成分(以下、単にポリマー成分ということもある)の合計量100質量部中の、40〜80質量部の範囲で使用される。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂がシランカップリング剤等により変性されたものである。シラン変性ポリエチレン系樹脂に用いられるポリエチレン系樹脂としては、例えばエチレンの重合体が挙げられる。また上記ポリエチレン系樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合体を用いても良い。これらは単独で使用しても良いし、併用しても良い。
【0024】
上記エチレンの重合体としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン等を例示することができる。これらは、単独で用いても良いし、併用しても良い。シラン変性ポリエチレン系樹脂のポリエチレン系樹脂は、好ましくは柔軟性に優れる等の観点から超低密度ポリエチレンである。
【0025】
シラン変性ポリエチレン系樹脂は、柔軟性に優れる等の観点から、密度が0.910g/cm以下であることが好ましい。もっとも、密度が小さくなるにつれて樹脂の結晶化度が低くなるため、シラングラフト化された樹脂が、ガソリン(オイル)等に対して膨潤するのを抑え、耐ガソリン性が向上する観点から、密度が0.880g/cm以上であることが好ましい。したがって、シラン変性ポリエチレン系樹脂の形成に用いられるポリエチレン系樹脂としては、密度が0.880〜0.910g/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0026】
上記シラン変性ポリエチレン系樹脂とともに含有されるポリエチレン系樹脂は、非シラン変性ポリエチレン系樹脂が用いられる。ポリエチレン系樹脂としては、例えばシラン変性ポリエチレン系樹脂のポリエチレン系樹脂として例示したもの等が挙げられる。これらは1種又は2種以上併用することができる。上記ポリエチレン系樹脂は、相溶性の観点からシラン変性ポリエチレン系樹脂と同種のものを用いると良い。
【0027】
上記ポリエチレン系樹脂は、ポリマー成分の合計量100質量部中の20〜60質量部の範囲で使用される。ポリエチレン系樹脂がポリマー成分の合計量100質量部中の20質量部未満では、混練時に取り込める難燃剤等の量が少なくなり、難燃性が不足しやすい。またポリエチレン系樹脂が60質量部を超えると、ポリマー成分中のシラン変性ポリエチレン系樹脂が相対的に少なくなるため、架橋成分が少なくなりゲル分率が不足し易い。
【0028】
無機系難燃剤として用いられる水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムの含有量は、上記ポリマー成分100質量部に対して30〜200質量部の範囲内で、難燃性樹脂や絶縁電線の種類、電線のサイズ、導体、絶縁体の構成等により、適宜、含有量を決定することができる。
【0029】
無機系難燃剤は、上記ポリマー成分100質量部に対して30〜200質量部の範囲内であれば、例えば自動車用電線に要求されるのに十分な難燃性が得られやすい。無機系難燃剤は上記ポリマー成分100質量部に対し30質量部未満では十分な難燃性が得られない。また200質量部を超えると十分な機械的特性が得られない。
【0030】
難燃性組成物に配合される融点が150℃以上のトリアジン系化合物は、剥離性を向上させるために用いられる。融点が150℃未満のトリアジン系化合物では、十分な剥離性を得ることができない。
【0031】
融点が150℃以上のトリアジン系化合物としては、例えば、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン(融点226℃)、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン(融点162℃)等が挙げられる。
【0032】
本発明の難燃性組成物において、融点が150℃以上のトリアジン系化合物の含有量は、上記ポリマー成分100質量部に対して0.5〜5質量部の範囲内である。上記含有量が0.5質量部未満では十分な剥離性が得られず、5質量部を超えるとコスト高となってしまう。
【0033】
本発明の難燃性組成物には、フェノール系酸化防止剤を含有させることが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3、5−ジ−tert−ブチル4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]等を例示することができる。
【0034】
難燃性組成物におけるフェノール系酸化防止剤の含有量としては、上記ポリマー成分100質量部に対し、1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。難燃性組成物にフェノール系酸化防止剤を含有せしめることにより、耐熱性を更に向上させることができる。フェノール系酸化防止剤の含有量が上記ポリマー成分100質量部に対し1質量部未満では、耐熱性向上効果が不十分となる虞があり、10質量部を超えると、特に高温高湿雰囲気下において、ブルームし易くなる虞がある。
【0035】
ベンズイミダゾール系化合物としては、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、4−メルカプトメチルベンズイミダゾール、5−メルカプトメチルベンズイミダゾール等や、これらの亜鉛塩等が挙げられる。特に好ましいものは、2−メルカプトベンズイミダゾール及びその亜鉛塩である。ベンズイミダゾール系化合物においては、ベンズイミダゾールの骨格の他の位置にアルキル基等の置換基を有していても良い。
【0036】
難燃性組成物におけるベンズイミダゾール系化合物の含有量は、上記ポリマー成分100質量部に対し、1〜10質量部の範囲内である。上記ベンズイミダゾール系化合物の含有量が1質量部未満では、耐熱性向上効果が不十分であり、10質量部を超えると、特に高温高湿雰囲気下においてブルームし易くなる。
【0037】
難燃性組成物における酸化亜鉛の含有量は、上記ポリマー成分100質量部に対し、1〜10質量部の範囲内である。上記酸化亜鉛の含有量が1質量部未満では、耐熱性向上効果が不十分であり、10質量部を超えると、十分な機械的特性が得られない。
【0038】
上記銅害防止剤は、例えば、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、2,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジ等を例示することができる。
【0039】
難燃性組成物における銅害防止剤の含有量は、上記ポリマー成分100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲内である。上記銅害防止剤の含有量が0.1質量部未満では、耐熱性向上効果が不十分であり、5質量部を超えると、耐熱性向上効果が飽和する一方で、高温高湿環境下においてブルームし易くなり、更にコスト増になる。
【0040】
難燃性組成物は、シラン架橋触媒を含有するのが好ましい。シラン架橋触媒としては、例えば、錫、亜鉛、鉄、鉛、コバルト、バリウム、カルシウム等の金属カルボン酸塩、チタン酸エステル、有機塩基、無機酸、有機酸等を例示することができる。具体的にはジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫メルカプトチド(ジブチル錫ビスオクチルチオグリコールエステル塩、ジブチル錫β−メルカプトプロピオン酸塩ポリマー等)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、カプリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ジブチルアミン、へキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸等を例示することができる。好ましくは、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫メルカプチドである。
【0041】
難燃性組成物におけるシラン架橋触媒の含有量は、シラン変性ポリエチレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等の合計量であるポリマー成分100質量部に対して、0.005〜0.3質量部の範囲である。シラン架橋触媒の配合量は、好ましくは、ポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.1質量部である。シラン架橋触媒の配合量がポリマー成分100質量部に対し0.005質量部未満では架橋度が不足し、0.3質量部を超えると成形品の外観が悪化する。
【0042】
本発明に係る難燃性組成物においては、本発明の特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、上記以外の他の添加剤を含有せしめることができる。このような添加剤としては例えば、紫外線吸収剤、加工助剤(ワックス、滑剤等)、難燃助剤、顔料等を例示することができる。
【0043】
本発明の難燃性組成物は、融点が150℃以上のトリアジン系化合物を用いることにより、難燃性組成物を成形し架橋して得られる難燃性樹脂が、樹脂同士が接触した状態で150℃以上の高温で長期間放置された後でも、樹脂同士を良好に剥離することができ、剥離性に優れたものが得られる。これは融点が150℃以上のトリアジン系化合物が、ポリマー成分のポリエチレン系樹脂の未架橋の部分同士が高温下で溶融し接着するのを抑制していると考えられる。
【0044】
また難燃性組成物は、フェノール系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系化合物、酸化亜鉛、銅害防止剤により高い耐熱性が得られる。フェノール系酸化防止剤は、難燃性組成物内の熱劣化とともに発生するラジカルを捕捉する。ベンズイミダゾール化合物は、硫黄原子が酸化亜鉛の働きを受け、熱劣化の進行中にシラン架橋ポリエチレン間に補足的な架橋結合を作ることにより、シラン架橋ポリエチレンの熱劣化を抑制しているものと推察される。さらに、銅害防止剤が、絶縁電線の導体(銅線)から発生する銅イオンを捕捉し、銅が触媒となって絶縁体が熱劣化するのを抑制する。
【0045】
シラン変性ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂とシランカップリング剤等のシラン架橋剤とを有機過酸化物等のラジカル発生剤を用いてグラフト反応させる等の方法により得ることができる。
【0046】
本発明においては、シラン架橋を十分なものとするために、予めシラン変性ポリエチレン系樹脂を合成しておき、これと水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤を接触させるようにする。無機系難燃剤とポリエチレン系樹脂とシランカップリング剤を同時に混練すると、無機系難燃剤の水分がシランカップリング剤と反応して、ポリエチレン系樹脂とシランカップリング剤のグラフト反応を阻害する虞がある。また水分とシランカップリング剤が反応して、ゲル状物質が生成すると、それが組成物から形成した樹脂皮膜の表面に現れて、絶縁体の外観が悪化する虞がある。またシランカップリング剤が水分と反応すると、架橋不足が発生して、耐熱性が低下したりする虞がある。これに対し、予めシラン変性ポリエチレン系樹脂を合成しておいて、後から水分を含む無機系難燃剤等と混合することにより、シラン変性ポリエチレン系樹脂を高い架橋度でシラン架橋することができる。
【0047】
上記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルアルコキシシランやノルマルへキシルトリメトキシシラン、ビニルアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を例示することができる。これらは、1種又は2種以上併用しても良い。
【0048】
上記ラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ブチルパーアセテート、tert−ブチルパーベンゾエート、2,5−ジメチル2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を例示することができる。より好ましくは、ジクミルパーオキサイド(DCP)である。
【0049】
以下、難燃性樹脂の製造方法について説明する。難燃性樹脂は、混練機を用いて上記の難燃性組成物の各成分を混練し、所定の樹脂形状に成形し、この成形体の水架橋を行うことで、難燃性樹脂が得られる。難燃性樹脂の製造方法は、下記の方法が好ましい。予め上記の難燃性組成物を、ポリエチレン系樹脂にシランカップリング剤をグラフト重合させたシラン変性ポリエチレン系樹脂を含有するA成分と、ポリエチレン系樹脂に、水酸化マグネシウム又は/及び水酸化アルミニウムと、融点150℃以上のトリアジン系化合物と、フェノール系酸化防止剤と、ベンズイミダゾール系化合物と、酸化亜鉛と、銅害防止剤を配合して分散してなるB成分と、ポリエチレン系樹脂に、シラン架橋触媒を配合して分散してなるC成分に分けて混練し、所定の形状に成形した後、水架橋を行い、シラン架橋させる。上記A成分〜C成分は、成形直前にこれらを加熱溶融して混練するのが好ましい。
【0050】
上記の混練機としては、バンバリミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等が挙げられる。またシラン架橋は、水あるいは水蒸気等による水架橋を用いることができる。
【0051】
上記の製造方法では、シラン変性ポリエチレン系樹脂と無機系難燃剤は、A成分とB成分として別々に混練されるので、無機系難燃剤中の水分がシランカップリング剤と直接反応することが避けられる。シラン変性ポリエチレン系樹脂を調製する際、ポリエチレン系樹脂とシランカップリング剤のグラフト反応が阻害されずゲル状物質が発生する虞がない。そのため難燃性組成物から形成される難燃樹脂の成形品の外観が悪化したり、架橋不足が発生して、耐熱性が低下したりすることがない。
【0052】
本発明の難燃性組成物は、自動車、電子・電気機器に使用される部材や絶縁材料に利用することができ、特に絶縁電線の絶縁層の形成材料(被覆材)として好適に用いられる。
【0053】
難燃性組成物から得られる難燃性樹脂を絶縁電線の被覆材として用いる場合、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等よりなる導体の外周に上記各成分の混練物を押出成形した後、シラン架橋(水架橋)することで、架橋した難燃性樹脂からなる絶縁体(被覆材)を形成することができる。
【0054】
本発明に係る絶縁電線は、上記の難燃性組成物から形成された絶縁体により導体の外周が被覆されているものである。上記導体は、その導体径や導体の材質等は特に限定されるものではなく、絶縁電線の用途等に応じて適宜選択することができる。また難燃性組成物からなる絶縁体の被覆層は、単層であっても、2層以上の複数層であってもいずれでも良い。また絶縁体の被覆層の厚さについても特に制限はなく、導体径等を考慮して適宜定めることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。
〔供試材料及び調製方法〕
本実施例及び比較例において使用した各成分の供試材料及び調製方法を示す。
【0056】
[A成分]シラン変性したポリエチレン(シラン変性ポリエチレン系樹脂)

・ポリエチレン[デュポン ダウ エラストマージャパン社製、商品名「エンゲージ 8003」、密度0.885g/cm
・シランカップリング剤(ビニル系)[東レダウコーニング社製、商品名「SZ6300」]
・ジクミルパーオキサイド(DCP)[日本油脂社製、商品名「パークミルD」]
【0057】
〔A成分(シラングラフトバッチ)の調製〕
ポリエチレン65質量部と、シランカップリング剤0.33質量部と、DCP0.07質量部とを2軸押出混練機に加え200℃で0.1〜2分間加熱混練した後、ペレット化して、シラン変性したポリエチレンを調製した。
【0058】
[B成分]
・ポリエチレン[デュポン ダウ エラストマージャパン社製、商品名「エンゲージ 8003」、密度0.885g/cm
・水酸化マグネシウム[協和化学社製、商品名「キスマ5」]
・融点が150℃以上のトリアジン系化合物:1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)トリオン[BASF社製、商品名「イルガノックス3114」、融点226℃]
・フェノール系酸化防止剤(1)[BASF社製、商品名「イルガノックス1010」]
・フェノール系酸化防止剤(2)[アデカ社製、商品名「AO80」]
・フェノール系酸化防止剤(3)[BASF社製、商品名「イルガノックス1330」]
・ベンズイミダゾール系化合物[大内新興化学社製、商品名「ノクラックMB」]
・酸化亜鉛[ハクスイテック社製、商品名「酸化亜鉛1種」]
・銅害防止剤[アデカ社製、商品名「CD−1」]
【0059】
〔B成分(難燃剤バッチ)の調製〕
表1〜2に示す配合質量比で、B成分の各成分を2軸押出混練機に加え、200℃で0.1〜2分間加熱混練した後、ペレット化して、難燃剤バッチを調製した。
【0060】
[C成分]
・ポリエチレン[デュポン ダウ エラストマージャパン社製、商品名「エンゲージ 8003」、密度0.885g/cm
・シラン架橋触媒(ジブチル錫ジラウレート)[和光純薬社製、試薬]
【0061】
〔C成分(触媒バッチ)の調製〕
表1〜2に示す配合質量比でポリエチレンとシラン架橋触媒を2軸押出混練機に加え、200℃で0.1〜2分間加熱混練した後、ペレット化して、触媒バッチを調製した。
【0062】
〔絶縁電線の作製〕
上記シラングラフトバッチと、上記難燃剤バッチと、上記触媒バッチとを押出機のホッパーで混合して押出機の温度を約180〜200℃に設定して、押出加工を行った。外径2.4mmの導体上に厚さ0.7mmの絶縁体として押出被覆した(被覆外径3.8mm)。その後、60℃、90%湿度の高湿高温槽で24時間水架橋処理を施して絶縁電線を作製した。
【0063】
得られた絶縁電線について、下記方法に従って難燃性、耐熱性、機械特性、剥離性の評価を行った。その結果を表1〜2に合わせて示す。
【0064】
〔難燃性〕
JASO D608−92に従い、300mmの試料を用意し、水平燃焼試験を実施した。口径10mmのブンゼンバーナーを用いて還元炎の先端を試料中央部の下側から10秒間当て、炎を静かに取り去った後の残炎時間を測定した。炎がすぐに消えるものを良好「◎」、この残炎時間が30秒以内のものを合格「○」、残炎時間が30秒を超えるものを不合格「×」とした。
【0065】
〔耐熱性)
150mm以上の試料を用意し、180℃の恒温槽に504時間投入し、その後、室温で電線径の1.5倍の直径のマンドレルに巻付けて絶縁体のヒビ割れ有無を観察した。なお180℃の恒温槽に504時間投入することは、アレニウスプロットの外挿にてISO6722の150℃3000時間の長期耐熱評価に相当することが判っている。試験の結果、変色が少なくヒビ割れのないものを良好「◎」、ヒビ割れが無かったものを合格「○」、ヒビ割れが有ったものを不合格「×」とした。
【0066】
〔機械特性の評価〕
JIS C 3005の引張試験に準拠して、引張試験及び引張伸びを測定した。すなわち絶縁電線を150mmの長さに切り出し、導体を取り除いて絶縁被覆材のみの管状試験片とした後、23℃±5℃の室温下にて、試験片の両端を引張試験機チャックに取り付けた後、引張速度200mm/分で引っ張り、試験片の破断時の荷重及び伸びを測定した。引張強度11MPa以上かつ伸び200%以上のものを良好「◎」、引張強度10MPa以上かつ伸び150%以上のものを合格「○」、引張強度10MPa未満あるいは伸び150%未満のものを不合格「×」とした。
【0067】
〔剥離性の評価〕
100mmの電線2本をテープで巻付けたものを、150℃×24時間の条件下に放置した後、テープを取り去り2本の電線を剥がした。すぐに剥がれ接着跡がほとんどついていないものを良好「◎」、剥がれるが接着跡がまばらについているものを合格「○」、剥がれにくく接着跡が全面的についているものを不合格「×」とした。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
表1に示すように実施例1〜10に係る絶縁電線は、いずれもシラン変性ポリエチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、無機系難燃剤、融点が150℃以上のトリアジン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、酸化亜鉛、銅害防止剤を所定の範囲内で含有するものであるから、難燃性、耐熱性、機械特性、剥離性の全ての特性について良好又は合格という結果が得られた。
【0071】
これに対し表2に示すように、比較例1〜7の絶縁電線は、本願発明の構成を備えるものではないので、難燃性、耐熱性、機械特性、剥離性の全ての特性について良好又は合格という結果が得られなかった。すなわち比較例1は、融点が150℃以上のトリアジン系化合物を含有するものではないから、剥離性が不合格であった。比較例2は、ベンズイミダゾール系化合物を含有するものではないから、耐熱性が不合格であった。比較例3は酸化亜鉛を含有するものではないから、耐熱性が不合格であった。比較例4は銅害防止剤を含有するものではないから、耐熱性が不合格であった。比較例5は水酸化マグネシウムを含有するものではないから、難燃性及び耐熱性が不合格であった。比較例3はポリマー成分中のシラン変性ポリエチレンの含有量が少ないので、耐熱性が不合格であった。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン変性ポリエチレン系樹脂40〜80質量部と、ポリエチレン系樹脂20〜60質量部を含有するポリマー成分100質量部に対し、
水酸化マグネシウムまたは/および水酸化アルミニウム30〜200質量部、融点150℃以上のトリアジン系化合物0.5〜5質量部、ベンズイミダゾール系化合物1〜10質量部、酸化亜鉛1〜10質量部、銅害防止剤0.1〜5質量部含有することを特徴とする難燃性組成物。
【請求項2】
上記ポリマー成分100質量部に対し、更にフェノール系酸化防止剤1〜10質量部含有することを特徴とする請求項1記載の難燃性組成物。
【請求項3】
ポリエチレン系樹脂にシランカップリング剤をグラフト重合させたシラン変性ポリエチレン系樹脂を含有するA成分と、
ポリエチレン系樹脂に、水酸化マグネシウムまたは/および水酸化アルミニウムと、融点150℃以上のトリアジン系化合物と、ベンズイミダゾール系化合物と、酸化亜鉛と、銅害防止剤を配合してなるB成分と、
ポリエチレン系樹脂に、シラン架橋触媒を配合してなるC成分と、
を混練し成形した後、水架橋を行うことを特徴とする難燃性樹脂の製造方法。
【請求項4】
上記B成分が、更にフェノール系酸化防止剤を配合してなるものであることを特徴とする請求項3記載の難燃性樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の難燃性組成物から形成された絶縁体により、導体の外周が被覆されていることを特徴とする絶縁電線。

【公開番号】特開2013−18896(P2013−18896A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154405(P2011−154405)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】