説明

割断装置および割断方法

【課題】レーザ光によって加熱された被加工基板の割断予定線近傍を急速に冷却し、被加工基板を速い速度で割断し、当該冷却流体を被加工基板から除去する割断装置および割断方法を提供する。
【解決手段】被加工基板60を保持するとともに、開口50割断装置aを有する基板ホルダ50と、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lの割断予定線65近傍に、基板ホルダ50の開口50aを通過するレーザ光LB2を照射し局部的に加熱する。被加工基板60の下方に、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lのレーザ光LB2によって加熱された割断予定線65近傍に、基板ホルダ50の開口50aを通過する冷却流体Cを噴射する冷却部40がある。冷却部40から噴射された冷却流体Cを回収する回収装置10がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工基板を速い速度で割断する割断装置、および当該割断装置を用いた割断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、従来、一枚の被加工基板(例えば、ガラス基板)60を割断する割断装置は、被加工基板60を保持する基板ホルダ50と、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の割断予定線65近傍に、上方からレーザ光LB1を照射して局部的に予熱するレーザ予熱部20と、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の割断予定線65近傍に、上方からレーザ光LB2を照射して局部的に加熱するレーザ加熱部30と、レーザ加熱部30からのレーザ光LB2によって加熱された被加工基板60の割断予定線65近傍に、上方から冷却剤C’を噴射する冷却部40とを備えている。なお、冷却部40から噴射される冷却剤C’としては、揮発性の霧やガスなどが用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の割断装置では、被加工基板60の割断速度は十分ではなく、割断速度を速める必要がある。このように、被加工基板60の割断速度を上げるためには、レーザ加熱部30からのレーザ光LB2によって加熱された被加工基板60の割断予定線65近傍を、急速に冷却する必要があるが、揮発性の霧やガスなどからなる冷却剤では冷却速度が不十分である。
【0004】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱された被加工基板の割断予定線近傍を急速に冷却することによって、被加工基板を速い速度で割断する割断装置、および当該割断装置を用いた割断方法を提供することを目的とする。
【0005】
ところで、二枚の被加工基板をシール材により貼り合わせることによって構成された貼合基板を割断する方法として、貼合基板の上方面と下方面の両面にレーザ光を照射する方法は知られている(例えば、特開2002−255581号公報)。しかしながら、このような従来技術においては、冷却部から噴射される冷却剤は特に限定されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、脆性材料からなる被加工基板を、割断予定線に沿って局部的に加熱及び冷却し、その際に生じる応力によって当該被加工基板に亀裂を生じさせて割断する割断装置において、被加工基板を保持するとともに、開口を有する基板ホルダと、基板ホルダに保持された被加工基板の下方面の割断予定線近傍に、基板ホルダの開口を通過するレーザ光を照射して、局部的に加熱するレーザ加熱部と、基板ホルダの下方に配置され、基板ホルダに保持された被加工基板の下方面のうち、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱された割断予定線近傍に、基板ホルダの開口を通過する冷却流体を噴射する冷却部とを備え、冷却部近傍に、冷却部から噴射された冷却流体を回収する回収装置が設けられたことを特徴とする割断装置である。
【0007】
このような構成により、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱された被加工基板の割断予定線近傍を急速に冷却して、被加工基板を速い速度で割断するとともに、当該冷却流体を被加工基板から除去することができる。
【0008】
本発明は、回収装置が、回収トレイを有することを特徴とする割断装置である。
【0009】
本発明は、回収装置が、回収トレイと、被加工基板の下方面に空気を噴射して、被加工基板の下方面に付着した冷却流体を剥離するエアーナイフとを有することを特徴とする割断装置である。
【0010】
このような構成により、被加工基板の下方面に付着した冷却水を、被加工基板にキズをつけることなく、確実に剥離することができる。
【0011】
本発明は、回収装置が、回収トレイと、被加工基板の下方面に接触して、被加工基板の下方面に付着した冷却流体を剥離するスキージとを有することを特徴とする割断装置である。
【0012】
このような構成により、被加工基板の下方面に付着した冷却水を、より確実に剥離することができる。
【0013】
本発明は、回収装置が、回収トレイと、被加工基板の下方面に接触して、被加工基板の下方面に付着した冷却流体を剥離するとともに、回転自在なローラとを有することを特徴とする割断装置である。
【0014】
このような構成により、被加工基板の下方面に付着した冷却水を、より確実に剥離することができる。
【0015】
本発明は、回収装置が、回収トレイと、被加工基板の下方面近傍を吸引して、被加工基板の下方面に付着した冷却流体を剥離する吸引ノズルとを有することを特徴とする割断装置である。
【0016】
このような構成により、被加工基板の下方面に付着した冷却水を、被加工基板にキズをつけることなく、確実に剥離することができる。
【0017】
本発明は、被加工基板と吸引ノズルとの間の垂直方向間隙を計測する高さセンサと、吸引ノズルに連結され、高さセンサからの情報に基づいて吸引ノズルの高さを調整する調整ステージとをさらに備えたことを特徴とする割断装置である。
【0018】
このような構成により、大きな被加工基板を割断する場合であっても、被加工基板と吸引ノズルとの間の垂直方向間隙を一定に保つことができ、被加工基板の下方面に付着した冷却水を効率よくかつ確実に剥離することができる。
【0019】
本発明は、基板ホルダが、その間に開口を形成する一対の支持部からなり、被加工基板を下方から支持することを特徴とする割断装置である。
【0020】
本発明は、冷却部が、冷却流体を噴射する冷却ノズルを有し、この冷却ノズルが、被加工基板の下方面であって、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱される被加工基板の加熱領域と反対側に向かって傾斜して配置されることを特徴とする割断装置である。
【0021】
このような構成により、冷却部からの冷却流体が、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱される被加工基板の加熱領域に流入することを防止することができる。
【0022】
本発明は、基板ホルダ上であって、被加工基板が配置される配置位置の周縁外方の少なくとも一部に延在するガードを設け、このガードにより、冷却流体が被加工基板の上方面側に流入することを防止することを特徴とする割断装置である。
【0023】
このような構成により、冷却部からの冷却流体が誤って被加工基板へ降りかかることを防止することができる。なお、レーザ加熱部からのレーザ光が、誤って被加工基板の端面に照射されることも防止することができる。
【0024】
本発明は、脆性材料からなる被加工基板を、割断予定線に沿って局部的に加熱及び冷却し、その際に生じる応力によって当該被加工基板に亀裂を生じさせて割断する割断方法において、開口を有する基板ホルダによって、被加工基板を保持する基板保持工程と、レーザ加熱部によって、基板ホルダに保持された被加工基板の下方面の割断予定線近傍に、基板ホルダの開口を通過するレーザ光を照射して、局部的に加熱するレーザ加熱工程と、基板ホルダの下方に配置された冷却部によって、基板ホルダに保持された被加工基板の下方面のうち、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱された割断予定線近傍に、基板ホルダの開口を通過する冷却流体を噴射する冷却工程と、冷却部近傍に設けられた回収装置によって、冷却部から噴射された冷却流体を回収する回収工程と、を備えたことを特徴とする割断方法である。
【0025】
このような構成により、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱された被加工基板の割断予定線近傍を急速に冷却して、被加工基板を速い速度で割断するとともに、当該冷却流体を被加工基板から除去することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、冷却部から冷却流体を噴射することによって、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱された被加工基板の割断予定線近傍を急速に冷却し、被加工基板を速い速度で割断するとともに、冷却部から噴射された冷却流体を回収する回収装置によって、冷却流体を被加工基板から除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る割断装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図5は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0028】
本発明の割断装置は、脆性材料からなる被加工基板60を、割断予定線65に沿って局部的に加熱及び冷却し、その際に生じる応力によって当該被加工基板60に亀裂を生じさせて割断するものである。
【0029】
図1および図2に示すように、割断装置は、被加工基板60を保持するとともに、開口50aを有する基板ホルダ50と、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lの割断予定線65近傍に、基板ホルダ50の開口50aを通過するレーザ光LB1を照射して、局部的に予熱するレーザ予熱部20と、被加工基板60の下方面60lの割断予定線65近傍に、基板ホルダ50の開口50aを通過するレーザ光LB2を照射して、局部的に加熱するレーザ加熱部30と、基盤ホルダ50の下方に配置され、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lのうち、レーザ加熱部30からのレーザ光LB2によって加熱された割断予定線65近傍に、基板ホルダ50の開口50aを通過する冷却水(冷却流体)Cを噴射する冷却部40とを備えている。なお、冷却部40から噴射される冷却水Cは純水からなっている。
【0030】
また、図1および図2に示すように、基板ホルダ50は、一対の支持部51,51からなり、当該支持部51,51間の間隙が開口50aを構成している。
【0031】
また、図1および図2に示すように、冷却部40は、冷却水Cを噴射する冷却ノズル41を有している。そして、この冷却ノズル41は、被加工基板60の下方面60lであって、レーザ加熱部30からのレーザ光LB2によって加熱される被加工基板60の加熱領域HAと反対側(X方向の負方向)に向かって傾斜して配置されている。
【0032】
また、図1乃至図3に示すように、冷却部40近傍には、冷却部40から噴射された冷却水Cを回収する回収トレイ1と、被加工基板60の下方面60lに空気を噴射して、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cを剥離するエアーナイフ2と、回収トレイ1内に回収された冷却水Cを吸引する吸引部1aとからなる回収装置10が設けられている。
【0033】
図1に示すレーザ予熱部20は、被加工基板60上にレーザ光LB1を照射して被加工基板60を局部的に予熱するためのものである。図1に示すように、レーザ予熱部20は、200W程度のCOレーザ光を出射するレーザ発振器21と、レーザ発振器21により出射されたレーザ光LB1を反射する反射ミラー22,23と、反射ミラー22,23により反射されたレーザ光LB1を被加工基板60上で走査するポリゴンミラー24とを有している。そして、レーザ発振器21から出射したレーザ光LB1は、反射ミラー22,23を経てポリゴンミラー24で反射され、被加工基板60上で割断予定線65に沿って繰り返し走査される。
【0034】
また、図1に示すレーザ加熱部30は、被加工基板60上にレーザ光LB2を照射して被加工基板60を局部的に加熱して、被加工基板60に亀裂を生じさせるためのものである。図1に示すように、レーザ加熱部30は、数十W〜百数十W程度のCOレーザ光を出射するレーザ発振器31と、レーザ発振器31により出射されたレーザ光LB2を反射する反射ミラー32,33と、反射ミラー32,33により反射されたレーザ光LB2を被加工基板60上で走査するポリゴンミラー34とを有している。そして、レーザ発振器31から出射したレーザ光LB2は、反射ミラー32,33を経てポリゴンミラー34で反射され、被加工基板60上で割断予定線65に沿って繰り返し走査される。
【0035】
ここで、図1に示すように、レーザ予熱部20のレーザ発振器21とレーザ加熱部30のレーザ発振器31は各々、固定されている。また、このレーザ予熱部20のレーザ発振器21とレーザ加熱部30のレーザ発振器31によって、発振器ユニット15が構成されている。
【0036】
また、図1に示すように、レーザ予熱部20の反射ミラー22,23とポリゴンミラー24、レーザ加熱部30の反射ミラー32、33とポリゴンミラー34、冷却部40、および回収装置10は、水平方向移動機構17に設けられており、水平方向(X方向)に移動自在になっている。
【0037】
なお、図1に示すように、レーザ予熱部20の反射ミラー22,23とポリゴンミラー24、レーザ加熱部30の反射ミラー32、33とポリゴンミラー34、冷却部40、および回収装置10によって、加工ユニット16が構成されている。
【0038】
また、図1に示すように、基板ホルダ50上であって、被加工基板60が配置される配置位置DPのX方向の両外方には、Y方向(水平方向であって、X方向と直交する方向)に延在するガード53,53が設けられている。
【0039】
ところで、レーザ予熱部20のレーザ発振器21と反射ミラー22との間、およびレーザ加熱部30のレーザ発振器31と反射ミラー32との間に、レーザ発振器21,31からのレーザ光LB1,LB2を平行にして、反射ミラー22,32に入射させるコリメータ(図示せず)を設けてもよい(図1参照)。
【0040】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0041】
まず、一対の支持部51,51からなる基板ホルダ50(下方側が開口した基板ホルダ50)上に、被加工基板60が配置される(基板保持工程81)(図1および図4参照)。
【0042】
次に、初期クラックユニット(図示せず)により、被加工基板60の端面に微細な亀裂が形成される(クラック形成工程82)(図4参照)。
【0043】
その後、水平方向移動機構17によって、加工ユニット16が、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lの所定位置まで水平方向(X方向の正方向)に移動する。
【0044】
次に、レーザ予熱部20によって、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lの割断予定線65近傍に、基板ホルダ50の開口50aを通過するレーザ光LB1が照射される(レーザ予熱工程83)(図1および図4参照)。このことにより、被加工基板60の下方面60lの割断予定線65近傍が局部的に予熱される。
【0045】
その後、水平方向移動機構17によって、加工ユニット16が、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lの所定位置まで水平方向(X方向の正方向)に移動する。
【0046】
次に、レーザ加熱部30によって、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lの割断予定線65近傍に、基板ホルダ50の開口50aを通過するレーザ光LB2が照射される(レーザ加熱工程84)(図1および図4参照)。このことにより、被加工基板60の下方面60lの割断予定線65近傍が局部的に加熱されて、熱応力が発生する。
【0047】
その後、水平方向移動機構17によって、加工ユニット16が、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lの所定位置まで水平方向(X方向の正方向)に移動する。
【0048】
次に、被加工基板60の下方に配置された冷却部40によって、基板ホルダ50に保持された被加工基板60の下方面60lのうち、レーザ加熱部30からのレーザ光LB2によって加熱された割断予定線65近傍に、基板ホルダ50の開口50aを通過する冷却水Cが噴射される(冷却工程85)(図1乃至図4参照)。このように冷却することによって、被加工基板60の下方面60lが収縮し、引張応力が発生する。このため、レーザ加熱部30からのレーザ光LB2によって誘起された応力を拡大させることができ、被加工基板60を割断予定線65で、効率よく割断することができる。
【0049】
このような冷却水Cは安価に手に入るので、冷却水Cを用いて被加工基板60を割断することにより、被加工基板60の割断コストを低減することができる。
【0050】
また、熱伝達率の高い冷却水Cを適量で(場合によっては大量に)用いることができるので、被加工基板60の冷却効率を上げることができる。このため、被加工基板60の割断速度を向上させることができる。また、冷却水Cは純水からなるので、被加工基板60やその他の部材に、ダメージや汚染などが発生しにくい。
【0051】
このような冷却工程85の間、冷却部40近傍に設けられた回収装置10によって、冷却部40から噴射された冷却水Cが回収される(回収工程90)(図1乃至図4参照)。
【0052】
具体的には、まず、冷却部40の冷却ノズル41から噴射されて被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cが、エアーナイフ2で剥離されて、回収トレイ1上に落下する(剥離工程91)(図1乃至図4参照)。
【0053】
このため、被加工基板60に付着した冷却水Cが、被加工基板60とともに搬送されることを防止することができる。この結果、被加工基板60に付着した冷却水Cの吸着力によって、被加工基板60の搬送が阻害されることを防止することができる。また、被加工基板60に付着した冷却水Cによって、割断装置にさびが発生することを防止することができる。また、レーザ光学系(反射ミラーやポリゴンレンズ)に付着した冷却水Cによってレーザ光(COレーザ光)LB1,LB2が吸収されることで、レーザ光学系が過熱されて、破損することを防止することができる。
【0054】
なお、エアーナイフ2は、被加工基板60に接触することなく、空気を被加工基板60に噴射することによって、被加工基板60に付着した冷却水Cを剥離する。このため、被加工基板60にキズがつくことを防止することができる。
【0055】
また、図1に示すように、被加工基板60が配置される配置位置DPのX方向の両外方には、Y方向に延在するガード53,53が設けられている。このため、冷却部40からの冷却水Cが誤って被加工基板60へ降りかかることを防止することができる。なお、このようなガード53,53によって、レーザ予熱部20およびレーザ加熱部30からのレーザ光LB1,LB2が誤って被加工基板60の端面に照射されることも防止することができる。
【0056】
さらに、図1に示すように、冷却部40の冷却ノズル41は、被加工基板60の下方面60lであって、レーザ加熱部30からのレーザ光LB2によって加熱される被加工基板60の加熱領域HAと反対側(X方向の負方向)に向かって傾斜して配置されている。このため、被加工基板60の加熱領域HAと反対側に向かって冷却水Cが噴射される。この結果、冷却部40からの冷却水Cが、レーザ加熱部30からのレーザ光LB2によって加熱される被加工基板60の加熱領域HAに流入することを防止することができる。
【0057】
最後に、上述のようにエアーナイフ2で被加工基板60の下方面60lから剥離された冷却水C、および冷却部40の冷却ノズル41から噴射され、被加工基板60に付着することなく回収トレイ1上に落下した冷却水Cは、回収トレイ1から吸引部1aによって外部へ排出される(吸引工程92)(図1乃至図4参照)。
【0058】
ところで、基板を二枚貼り合わせた貼合基板ではなく、一枚の基板からなる被加工基板60の上方面60uには、成膜/リソグラフィー等によるパターンが施されていることが多い(図1乃至図3参照)。このように、被加工基板60の上方面60uに成膜/リソグラフィー等によるパターンが施されている場合には、レーザ予熱部20やレーザ加熱部30からのレーザ光LB1,LB2が当該パターンに吸収または反射されてしまう。このため、被加工基板60の下方面60lに、レーザ予熱部20やレーザ加熱部30から、レーザ光LB1,LB2が照射されることが好ましい。
【0059】
上記では、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cをエアーナイフ2で剥離する態様を用いて説明した。しかしながら、ガラスのような親水性の材料からなるのではなく、疎水性の材料からなる被加工基板60を割断する場合には、冷却水Cは被加工基板60に付着しない。このため、疎水性の材料からなる被加工基板60を割断する場合には、エアーナイフ2を用いる必要はない(図5参照)。
【0060】
第2の実施の形態
次に図6により本発明の第2の実施の形態について説明する。図6に示す第2の実施の形態は、被加工基板60の下方面60lに空気を噴射して、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cを剥離するエアーナイフ2の代わりに、被加工基板60の下方面60lに接触して、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cを剥離するスキージ3を用いたものであり、他は図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、このようなスキージ3は、ゴム、樹脂、金属などからなることが好ましい。
【0061】
図6に示す第2の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0062】
被加工基板60が、ゴム、樹脂、金属などに接触しても良い場合には、このようなスキージ3を用いることができる。
【0063】
このようなスキージ3によっても、被加工基板60に付着した冷却水Cを剥離することができる。このため、被加工基板60に付着した冷却水Cが、被加工基板60とともに搬送されることを防止することができる。この結果、被加工基板60に付着した冷却水Cの吸着力によって、被加工基板60の搬送が阻害されることを防止することができる。また、被加工基板60に付着した冷却水Cによって、割断装置にさびが発生することを防止することができる。また、レーザ光学系(反射ミラーやポリゴンレンズ)に付着した冷却水Cによってレーザ光(COレーザ光)LB1,LB2が吸収されることで、レーザ光学系が過熱されて、破損することを防止することができる。
【0064】
なお、スキージ3は被加工基板60の下方面60lに接触するため、被加工基板60に付着した冷却水Cを、より確実に剥離することができる。
【0065】
第3の実施の形態
次に図7により本発明の第3の実施の形態について説明する。図7に示す第3の実施の形態は、被加工基板60の下方面60lに空気を噴射して、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cを剥離するエアーナイフ2の代わりに、被加工基板60の下方面60lに接触して、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cを剥離するとともに、回転自在なローラ4を用いたものであり、他は図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0066】
図7に示す第3の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
図7に示すように、ローラ4の表面には刷毛4aが設けられており、当該刷毛4aはレーヨン、ナイロン、綿などからなることが好ましい。
【0068】
被加工基板60の表面を痛めず、かつダストなどを発生しないため、液晶のラビング工程で使われる、刷毛4aがレーヨンのパイル糸からなるローラ4が特に好ましい。
【0069】
このようなローラ4によっても、被加工基板60に付着した冷却水Cを剥離することができる。このため、被加工基板60に付着した冷却水Cが、被加工基板60とともに搬送されることを防止することができる。この結果、被加工基板60に付着した冷却水Cの吸着力によって、被加工基板60の搬送が阻害されることを防止することができる。また、被加工基板60に付着した冷却水Cによって、割断装置にさびが発生することを防止することができる。また、レーザ光学系(反射ミラーやポリゴンレンズ)に付着した冷却水Cによってレーザ光(COレーザ光)LB1,LB2が吸収されることで、レーザ光学系が過熱されて、破損することを防止することができる。
【0070】
なお、ローラ4は、その刷毛4aが被加工基板60の下方面60lに接触するため、被加工基板60に付着した冷却水Cを、より確実に剥離することができる。
【0071】
第4の実施の形態
次に図8および図9により本発明の第4の実施の形態について説明する。図8および図9に示す第4の実施の形態は、被加工基板60の下方面60lに空気を噴射して、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cを剥離するエアーナイフ2の代わりに、被加工基板60の下方面60l近傍を吸引して、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cを剥離する吸引ノズル5を用いたものであり、他は図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0072】
図8および図9に示す第4の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0073】
図8において、被加工基板60の下方面60lと吸引ノズル5の先端5tとの間隙(被加工基板60と吸引ノズル5との間の垂直方向間隙)Gは、0.5mm以下であることが好ましく、数十ミクロンであってもよい。
【0074】
このような吸引ノズル5によっても、被加工基板60に付着した冷却水Cを剥離することができる。このため、被加工基板60に付着した冷却水Cが、被加工基板60とともに搬送されることを防止することができる。この結果、被加工基板60に付着した冷却水Cの吸着力によって、被加工基板60の搬送が阻害されることを防止することができる。また、被加工基板60に付着した冷却水Cによって、割断装置にさびが発生することを防止することができる。また、レーザ光学系(反射ミラーやポリゴンレンズ)に付着した冷却水Cによってレーザ光(COレーザ光)LB1,LB2が吸収されることで、レーザ光学系が過熱されて、破損することを防止することができる。
【0075】
なお、吸引ノズル5は、被加工基板60に接触することなく、被加工基板60の下方面60l近傍を吸引することによって、被加工基板60に付着した冷却水Cを剥離する。このため、被加工基板60にキズがつくことを防止することができる。
【0076】
ところで、被加工基板60の厚みが0.7mm程度もしくはそれ以下で、被加工基板60の平面の大きさが数メートルになると、被加工基板60のたわみが大きくなる。このため、被加工基板60の下方面60lと吸引ノズル5の先端5tとの間隙Gを、所定の値に保つことが難しくなる。
【0077】
従って、このように大きな被加工基板60を割断する際には、図9に示すように、被加工基板60の下方面60lと吸引ノズル5の先端5tとの間隙Gを計測する高さセンサ11と、吸引ノズル5に連結され、高さセンサ11からの情報に基づいて吸引ノズル5の高さを調整する調整ステージ12を設けてもよい。
【0078】
なお、高さセンサ11と調整ステージ12は制御部(図示せず)に接続されている。そして、当該制御部は、高さセンサ11からの情報に基づいて、被加工基板60の下方面60lと吸引ノズル5の先端5tとの間隙Gが一定になるよう、調整ステージ12を自動的に制御する。
【0079】
このため、大きな被加工基板60を割断する場合であっても、被加工基板60の下方面60lと吸引ノズル5の先端5tとの間隙Gを数十ミクロンのオーダーで一定に保つことができ、被加工基板60の下方面60lに付着した冷却水Cを効率よくかつ確実に剥離することができる。
【0080】
また、各実施の形態において、上述したのと同様な高さセンサ11と調整ステージ12を用いて、被加工基板60と回収トレイ1との間隔、被加工基板60とエアーナイフ2との間隔、被加工基板60とスキージ3との間隔、被加工基板60とローラ4との間隔を適切に調整することもできる。このとき、被加工基板60を割断している際に、当該間隔を一定に保ったり、当該間隔を予め定めた所定の値にしたりするよう、逐次追従させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明による割断装置の第1の実施の形態を示す側方図。
【図2】図1のII−IIで切って見た側方図。
【図3】本発明による割断装置の第1の実施の形態を示す部分側方図。
【図4】本発明による割断方法の第1の実施の形態を示すフロー図。
【図5】本発明による割断装置の第1の実施の形態の変形例を示す部分側方図。
【図6】本発明による割断装置の第2の実施の形態を示す部分側方図。
【図7】本発明による割断装置の第3の実施の形態を示す部分側方図。
【図8】本発明による割断装置の第4の実施の形態を示す部分側方図。
【図9】本発明による割断装置の第4の実施の形態の変形例を示す部分側方図。
【図10】従来の割断装置を示す側方図。
【符号の説明】
【0082】
1 回収トレイ
2 エアーナイフ
3 スキージ
4 ローラ
5 吸引ノズル
5t 吸引ノズルの先端
10 回収装置
11 高さセンサ
12 調整ステージ
20 レーザ予熱部
30 レーザ加熱部
40 冷却部
41 冷却ノズル
50 基板ホルダ
50a 開口
51 支持部
53 ガード
60 被加工基板
65 割断予定線
81 基板保持工程
82 クラック形成工程
83 レーザ予熱工程
84 レーザ加熱工程
85 冷却工程
90 回収工程
91 剥離工程
92 吸引工程
C 冷却流体
DP 配置位置
LB1,LB2 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料からなる被加工基板を、割断予定線に沿って局部的に加熱及び冷却し、その際に生じる応力によって当該被加工基板に亀裂を生じさせて割断する割断装置において、
被加工基板を保持するとともに、開口を有する基板ホルダと、
基板ホルダに保持された被加工基板の下方面の割断予定線近傍に、基板ホルダの開口を通過するレーザ光を照射して、局部的に加熱するレーザ加熱部と、
基板ホルダの下方に配置され、基板ホルダに保持された被加工基板の下方面のうち、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱された割断予定線近傍に、基板ホルダの開口を通過する冷却流体を噴射する冷却部とを備え、
冷却部近傍に、冷却部から噴射された冷却流体を回収する回収装置が設けられたことを特徴とする割断装置。
【請求項2】
回収装置は、回収トレイを有することを特徴とする請求項1記載の割断装置。
【請求項3】
回収装置は、回収トレイと、被加工基板の下方面に空気を噴射して、被加工基板の下方面に付着した冷却流体を剥離するエアーナイフとを有することを特徴とする請求項1記載の割断装置。
【請求項4】
回収装置は、回収トレイと、被加工基板の下方面に接触して、被加工基板の下方面に付着した冷却流体を剥離するスキージとを有することを特徴とする請求項1記載の割断装置。
【請求項5】
回収装置は、回収トレイと、被加工基板の下方面に接触して、被加工基板の下方面に付着した冷却流体を剥離する、回転自在なローラとを有することを特徴とする請求項1記載の割断装置。
【請求項6】
回収装置は、回収トレイと、被加工基板の下方面近傍を吸引して、被加工基板の下方面に付着した冷却流体を剥離する吸引ノズルとを有することを特徴とする請求項1記載の割断装置。
【請求項7】
被加工基板と吸引ノズルとの間の垂直方向間隙を計測する高さセンサと、吸引ノズルに連結され、高さセンサからの情報に基づいて吸引ノズルの高さを調整する調整ステージとをさらに備えたことを特徴とする請求項6記載の割断装置。
【請求項8】
基板ホルダは、その間に開口を形成する一対の支持部からなり、
被加工基板を下方から支持することを特徴とする請求項1記載の割断装置。
【請求項9】
冷却部は、冷却流体を噴射する冷却ノズルを有し、
この冷却ノズルは、被加工基板の下方面であって、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱される被加工基板の加熱領域と反対側に向かって傾斜して配置されることを特徴とする請求項1記載の割断装置。
【請求項10】
基板ホルダ上であって、被加工基板が配置される配置位置の周縁外方の少なくとも一部に延在するガードを設け、
このガードにより、冷却流体が被加工基板の上方面側に流入することを防止することを特徴とする請求項1記載の割断装置。
【請求項11】
脆性材料からなる被加工基板を、割断予定線に沿って局部的に加熱及び冷却し、その際に生じる応力によって当該被加工基板に亀裂を生じさせて割断する割断方法において、
開口を有する基板ホルダによって、被加工基板を保持する基板保持工程と、
レーザ加熱部によって、基板ホルダに保持された被加工基板の下方面の割断予定線近傍に、基板ホルダの開口を通過するレーザ光を照射して、局部的に加熱するレーザ加熱工程と、
基板ホルダの下方に配置された冷却部によって、基板ホルダに保持された被加工基板の下方面のうち、レーザ加熱部からのレーザ光によって加熱された割断予定線近傍に、基板ホルダの開口を通過する冷却流体を噴射する冷却工程と、
冷却部近傍に設けられた回収装置によって、冷却部から噴射された冷却流体を回収する回収工程と、
を備えたことを特徴とする割断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−55715(P2008−55715A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234152(P2006−234152)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】