説明

劇場用コンテンツのための更新できるウォーターマーク

本発明は、コンテンツプロバイダが劇場用コンテンツのウォーターマークを更新するため、及び前記更新されたウォーターマークを検出するようにコンシューマ装置をアップデートするための方法に関し、ウォーターマークは、少なくとも第1のウォーターマーク雑音パターンを用いて前記劇場用コンテンツ中に埋め込まれる。更新は、前記ウォーターマークを前記劇場用コンテンツに埋め込みそして検出するために用いられる少なくとも第2ウォーターマーク雑音パターンを、放送暗号化技術を用いて、前記コンシューマ装置に配給する前記コンテンツプロバイダによって実行される。本発明はさらに、劇場用コンテンツのウォーターマークを更新し、前記更新されたウォーターマークを検出するためにコンシューマ装置をアップデートするのに用いられるように適応されるコンテンツプロバイダシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツプロバイダが劇場用コンテンツのウォーターマークを更新し、更新されたウォーターマークを検出するようにコンシューマ装置をアップデートするための方法に関する。本発明はさらに、劇場用コンテンツのウォーターマークを更新するために、及び前記更新されたウォーターマークを検出するようにコンシューマ装置をアップデートするために用いられるように適応されるコンテンツプロバイダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、視聴覚メディア業界は、複数の時期にそのコンテンツを市場に出す。例えば、主要な映画スタジオは、最初に、映画シアターのみで上映するためにそれらのコンテンツをリリースし、次に、その映画はビデオレンタルショップにおいてDVDで入手可能になり、そして最後に、DVDは一般大衆に発売される。コンテンツは違法コピーに対する保護を提供するメディア担体(映画シアターの場合プロフェッショナルなセルロイドテープ(デジタルシネマの場合、配給は物理メディア担体でなくて完全に電子的な手段によって行われることができる)、最終的にDVDの場合にはコピープロテクトディスク)で配信されるが、メディアプレーヤー又はレンダリング装置の出力は保護されていない。さもなければ人間がコンテンツを視聴することができないからである。例えば、映画がシアターのホワイトスクリーンに投影される場合、もはやコピーに対するふさわしい保護は明らかに存在しない。その結果、(シアター従業員からの助けの有無にかかわらず)シアターに持ち込まれて持ち出される個人のカムコーダーを用いてコピーを作ることは簡単である。このように作られたコピーは、容易に複写されて違法なDVDで配られることができる。これらの違法なディスクはシアター及び公式のDVDと競合し、オリジナルのコンテンツ所有者にとって販売減の原因となる。不法なコピーはまた、メディアプレーヤ(例えばDVDプレーヤ)からのアナログ信号を直接記録することによって作られることができ、これは、Macrovision信号のようなアナログコピープロテクション手段を取り除くための「信号クリーナー」の使用を必要とする。
【0003】
不法なコピーが作られることを防ぐことは不可能であるが、それらの不法なコピーがDVDプレーヤーのようなコンシューマ装置において再生されることを防ぎ、又は少なくとも妨げることは可能である。この目的のために用いられる技術は、デジタルウォーターマークに基づく。ウォーターマークは、人間がオリジナルのウォーターマークされていないコンテンツと比較した違いを知覚しないように視聴覚コンテンツに追加される信号である。一般的に、ウォーターマークは雑音パターンから成り、オリジナルコピーの意図された用途(例えば「このコンテンツは映画シアターのみでの再生用です」)を示すペイロードを伝えることができる。コンシューマ装置は再生の間に相関法によってコンテンツ中のウォーターマークの存在を検出することができる。プレーヤーは、ウォーターマーク(及びそのペイロード)を発見し、コンテンツが違法であると認識すると直ちに、再生を中止して、一般的にディスクを取り出す。このシナリオが機能するためには、ビデオに追加されるウォーターマークの場合、ウォーターマーク信号は、映画シアターのホワイトスクリーン上への投影及び個人のカムコーダーによるその後の記録の段階を生き残るために十分に強くなければならない。音声に追加されるウォーターマークの場合、ウォーターマーク信号は、映画シアターのスピーカからカムコーダーの(又は音声レコーダの)マイクロフォンまでの経路を生き残るために十分に強くなければならない。
【0004】
このシナリオは、規格化されたウォーターマークを必要とし、全てのプレーヤーは、ウォーターマークを追加するために用いられた同じ雑音パターンを使用して相互に関連しなければならないことが明らかである。このシステムのアキレス腱がここにある。一旦決意の固いハッカーがプレーヤーをリバースエンジニアリングして、雑音パターンを入手することができると、システムは完全に破られる。その理由は、ハッカーが、そのコピーの品質を容認できないほどに悪化させることなく、違法コピーからウォーターマークを取り除くツールを作成するためにその雑音パターンを用いることができるからである。その結果、「浄化された」コピーは、コンシューマプレーヤー中のウォーターマーク検出器を起動させず、ディスクを取り出させない。したがって、以前のように、浄化された違法コピーは再生されることができ、DVDで又はインターネットを通じて配られることができる。浄化されたコピーを配ることに加えて、ハッカーはまた、例えばインターネット上で、パーソナルコンピュータ上で実行するソフトウェアアプリケーションの形のツールを発表するかもしれない。これは、誰もが浄化されたコピーを作成することを可能にする。
【0005】
可能な限りハッカーを頓挫させるために、雑音パターンは、通常コンシューマプレーヤーのハードウェア中に深く埋め込まれる。これは、ハッカーが雑音パターンを取り出すために「プロフェッショナルな」ツールを用いる必要があることを意味する。残念なことに、そのようなツールにアクセスする多少のハッカーが常に存在し、最終的には、雑音パターンが発見されて、浄化ツールがインターネットに現れることが予想される。
【0006】
上記のウォーターマークに基づく保護システムの少なくとも若干の効果を維持するための単純な方法は、単一の雑音パターンではなく、複数の雑音パターンを規格化することである。この改良されたシステムにおいて、コンテンツ所有者は、(各々の規格化された雑音パターンを使用して)コンテンツに複数のウォーターマークを追加し、個々のコンシューマプレーヤーは、これらのウォーターマークのうちの唯一つを求めてスキャンする。この目的のために、各々のコンシューマプレーヤーは、例えば製造時にランダムに割り当てられた規格化された雑音パターンのうちの唯一つを有する。このアプローチの結果、1つのコンシューマプレーヤーがハッキングされた場合、すなわちその雑音パターンが暴露された場合、他の雑音パターンのうちの1つを用いるプレーヤーにとって、これは全く重要ではない。例えば、システムが100個のユニークな雑音パターンを用いる場合、1つのプレーヤーがハッキングされた後でも、システムの99%は依然として損なわれない。このシステムの副作用は、洩れた雑音パターンを含むプレーヤーは、それらのプレーヤーが(部分的に)浄化されたコンテンツを再生するために用いられることができるので、消費者にとってより価値があるようになることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この単純な方法に依然として残る問題は、セキュリティ違反から回復することが可能でないことである。これは、洩れた雑音パターンのうちの1つを含む任意のプレーヤーに対するセキュリティを復元することが可能ではないことを意味する。その結果、更なるプレーヤーがハッキングされるので、システムのセキュリティは時間とともに低下する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、少なくともいくつかの上記の問題を軽減することである。
【0009】
これは、コンテンツプロバイダが劇場用コンテンツのウォーターマークを更新し、前記更新されたウォーターマークを検出するようにコンシューマ装置をアップデートするための方法であって、ウォーターマークが少なくとも第1のウォーターマーク雑音パターンを用いて前記劇場用コンテンツ中に埋め込まれる方法によって達成される。前記更新は、前記コンテンツプロバイダが前記劇場用コンテンツ中の前記ウォーターマークの埋め込み及び検出に用いられる少なくとも第2のウォーターマーク雑音パターンを放送暗号化技術を用いて前記コンシューマ装置に配るによって実行される。
【0010】
それによって、ウォーターマークするための効果的な方法が達成され、ウォーターマーク雑音パターンが洩らされた場合、ウォーターマークはコンテンツプロバイダ側から容易に更新されることができる。配布に放送暗号を用いることは、許可された装置のみにパターンを届ける安価で効率的な方途である。特に、無効にされた装置は、放送暗号化されたものにアクセスすることができず、したがってそれらは新たなパターンにアクセスできない。それによって、損なわれた装置の価値は低下する。
【0011】
実施の形態において、第1のウォーターマーク雑音パターンが洩らされたコンシューマ装置は前記コンテンツプロバイダによって特定され、第2のウォーターマーク雑音パターンは前記特定された装置には配られない。それによって、ハッキングされた装置は、更新されたウォーターマーク雑音パターンを受け取らない。これは、更新されたウォーターマーク雑音パターンがハッキングされた装置によって受け取られないことを保証し、それによって、ハッキングされた装置は、更新されたウォーターマークを洩らすことができない。
【0012】
実施の形態において、前記ウォーターマークは、第1及び第2のウォーターマーク雑音パターンを含む複数のウォーターマーク雑音パターンを用いて前記劇場用コンテンツ中に埋め込まれる。それによって、ウォーターマーク雑音パターンのうちの1つがハッキングされた場合、そのウォーターマーク雑音パターンを用いている一部のコンシューマ装置のみが影響を受ける。
【0013】
実施の形態において、前記更新は、第1のウォーターマーク雑音パターン及び第2のウォーターマーク雑音パターンの両方を用いて前記劇場用コンテンツ中に前記ウォーターマークを埋め込むことを含む。それによって、第2のウォーターマーク雑音パターンを用いるようにまだアップデートされていないコンシューマ装置が、依然としてウォーターマークされたコンテンツにアクセスすることができる。
【0014】
実施の形態において、放送暗号技術は、配られる雑音パターンを暗号化するために暗号鍵ブロック構造を用い、前記鍵ブロックの各々の鍵はコンシューマ装置のグループに割り当てられ、更新する時は新たな鍵ブロックが用いられる。暗号鍵ブロック構造は、ウォーターマーク雑音パターンが漏れたために必要となった更新の際に鍵ブロックがアップデートされることができるので、本発明において放送暗号を実行する有利な方途を形成する。
【0015】
実施の形態において、暗号ブロック構造は、階層的ツリーに基づく。これは、鍵ブロック構造で装置を管理する容易な方途である。
【0016】
実施の形態において、雑音パターンは、ネットワーク接続を用いてコンテンツプロバイダからコンシューマ装置に配られる。これは、雑音パターンを配る単純な態様である。
【0017】
実施の形態において、雑音パターンは、メディア担体を用いてコンテンツプロバイダからコンシューマ装置に配られる。これは、雑音パターンを配る有利な他の態様であり、ネットワークに接続されていない装置に配ることを可能にする。
【0018】
本発明はさらに、劇場用コンテンツのウォーターマークを更新するために、及び前記更新されたウォーターマークを検出するようにコンシューマ装置をアップデートするために用いられるように適応されるコンテンツプロバイダシステムであって、ウォーターマークは、少なくとも第1のウォーターマーク雑音パターンを用いて前記劇場用コンテンツ中に埋め込まれるシステムに関する。コンテンツプロバイダ装置は、前記劇場用コンテンツ中に前記ウォーターマークを埋め込むために用いられる少なくとも第2ウォーターマーク雑音パターンを、放送暗号技術を用いて前記コンシューマ装置に配るための更新手段を含む。
【0019】
以下では、本発明の好ましい実施の形態が図を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、メディア担体(104)を再生する間にウォーターマーク(103)の存在を求めてコンテンツ(102)をスキャンするコンシューマプレーヤー(101)を示す。メディア担体は、例えば光ディスク、磁気ディスク、磁気テープ又はソリッドステートメモリから成ることができる。コンシューマプレーヤ(101)は、メディア担体(104)から直接それを読む代わりに、例えばストリーミングメカニズムを用いて、コンテンツ(102)をネットワークサーバから取り出すこともできる。後者の場合、ネットワークサーバは一般的にメディア担体(104)に物理的にアクセスする。商用の大量販売用のメディア担体上で配られるコンテンツ及びウォーターマークを含んでいない個人の記録は、制限されずに再生されなければならない。違法な記録(例えば劇場用コンテンツの記録)は、ウォーターマークされて、コンシューマプレーヤー上で再生されてはならない。合法のコンテンツと不法なコンテンツとを区別するために、コンシューマプレーヤーは、コンテンツ(102)をプレーヤー中に含まれる雑音パターン(105)に相関させるウォーターマーク検出器(106)を有する。この雑音パターンは、コンテンツ所有者がコンテンツにウォーターマークを追加するために用いたものと同一である。一般的に、ウォーターマーク検出プロセスは、コンテンツの再生の間、連続的に動作する。ウォーターマーク検出プロセスの結果が入手可能になるとすぐに、プレーヤーは再生を中断するか否かを決定する(107)。ウォーターマークがコンテンツ中に発見されない場合、再生は中断されずに続けられる(108)。ウォーターマーク及びオプションとしてそのペイロードがコンテンツから取り出された場合、再生は中断され(109)、メディア担体は例えばプレーヤーから取り出される。プレーヤーは、コンテンツ中にウォーターマークが存在することのみに基づいて、あるいはウォーターマークのペイロードに基づいて、再生を中断することを決定することができる。例えばペイロードは、コンテンツが劇場用途のみを意図されており、コンシューマプレーヤー上では決して再生されてはならないことを示すことができる。その場合、プレーヤーは再生を中止する。別の例として、ペイロードは、消費者が支払いをした後であれば再生が続けられてもよいことを示すことができる。これらの2つの例は、ウォーターマークペイロード中にエンコードされることができる「使用権」を表す。多くの他の使用権が同様に考え得る。
【0021】
熟練したハッカーは、コンシューマプレーヤ(101)から雑音パターン(105)をリバースエンジニアリングし、コンテンツからウォーターマークを取り除くことができるツール(110)を作成するためにそれを用いることができる。これが可能な理由は、コンテンツ所有者が、初めの段階でコンテンツにウォーターマークを追加するために同じ雑音パターンを用いなければならないことである。あるいは、ハッカーのツール(110)は、異なる使用権(例えば、「このコンテンツは制限なしで用いられることができる」)をエンコードするように、ウォーターマークのペイロードを変更するように設計されている可能性がある。ツール(110)は、パーソナルコンピュータ上で実行するソフトウェアアプリケーションという形をとることができる。これは、莫大な数の熟練していない消費者にインターネットを介してツールを配布することを容易にする。その結果、それらの熟練していない消費者は、彼らが取得した違法なコピーのコンテンツ中に埋め込まれたウォーターマークを取り除き又は変更する(111)ためにハッカーの専門知識から利益を得ることができ、その後、コンシューマプレーヤーがウォーターマークを発見しないか又は自由な使用権を指示するペイロードを有するウォーターマークを発見することを理由として中断されることなく再生される違法なコンテンツを含んだメディア担体(112)生産することができる。
【0022】
従来技術は、例えば、コンテンツにウォーターマークを追加するため及びコンテンツ中のウォーターマークを検出するための両方に用いられる単一の雑音パターンを指定することによって、単一の規格化されたウォーターマークを使用する。これは、システム秘密(すなわち雑音パターン)が全てのコンシューマプレーヤー中に存在することを意味する。コンシューマプレーヤーの実装に対するロバストネスルールは、多大な困難によってのみ、好ましくはプロフェッショナルなツールを用いてのみ取り出されることができるように、この秘密がプレーヤー中に記憶されなければならないと述べる。この要求を満たすための従来のアプローチは、コンシューマプレーヤーのハードウェア内に雑音パターンを深く埋設することである。しかしながら、これは、雑音パターンのリバースエンジニアリングが不可能であることを保証しない。一旦雑音パターンがリバースエンジニアリングされると、ウォーターマークシステムは完全に破られる。
【0023】
この問題に対する解決案は、正しく更新できる雑音パターンを作ることである。これは、雑音パターンが暴かれたときはいつでも、新たな雑音パターンに切り替えることが可能でなければならないことを意味する。コンシューマプレーヤーは明らかに、あらかじめ全ての雑音パターンを記憶することができないので(ハッカーは最初に用いられた雑音パターンと一緒にそれらの雑音パターンをリバースエンジニアリングする)、新たな雑音パターンは、(ハッキングされていない)コンシューマプレーヤーに伝達されなければならない。加えて、コンシューマプレーヤーは、新たな雑音パターンを記憶するための手段を含まなければならない。好ましくは、この記憶手段は、記憶された雑音パターンを取り出し又は消去する試みを失敗させるように構成されなければならない。例えば、プレーヤーは、雑音パターンを記憶するためにフラッシュメモリ又はEEPROMのような不揮発性メモリを含むことができる。雑音パターンの守秘性を保つために、コンシューマプレーヤーは、そのハードウェア内に深く埋設される暗号鍵を有することができる。加えて、コンシューマプレーヤーは、記憶手段が有効な雑音パターンを含まない場合には再生機能を無効にするメカニズムを有することができる。記憶手段に加えて、コンシューマプレーヤーは、また、新たな雑音パターンを受け取るための通信手段を含まなければならない。この通信手段は、コンシューマ装置が、雑音パターンがアップデートされなければならないかを決定するためにインターネット上のサーバーをポーリングするために定期的に用いるネットワーク接続を有することができる。そのようなネットワーク接続は、例えば、Ethernet(登録商標)、WiFi(登録商標)、BlueTooth(登録商標)又はGSM(登録商標)に基づくことができる。そのようなネットワーク接続上での通信の守秘性は、認証及び暗号を含む周知の技術を用いて保護されなければならない。メディア担体は、代わりの通信チャネルを提供する。例えば、新たな雑音パターンは、市販の大量販売用のコンテンツを含んだDVDに記憶されることができる。あるいは、新たな雑音パターンは、プリレコ(pre-recording)又は他の手段によって、ブランク記録可能ディスクに記憶されることができる。例えば、DVD+RWディスクに関して、プリグルーブ(pre-groove)は、有利に用いられることができるデータチャネル(ADIP)を提供する。メディア担体を介して伝達される雑音パターンの守秘性を提供するために、放送暗号技術が用いられなければならない。
【0024】
放送暗号は、コンシューマプレーヤーのグループを選択的にアップデートするためのメカニズムを提供する。この目的のために、鍵公布センターは、多数のプレーヤーのグループを定義し、加えて、暗号鍵をそれらのグループの各々に割り当てる。これらの暗号鍵は、グループ鍵としても知られている。各々のプレーヤーは、それがそのメンバである全てのグループのグループ鍵を記憶しなければならない。また、プレーヤーは一意的に定義可能でなければならず、それは、2つのプレーヤーがグループ鍵の同一のセットを記憶してはならないことを意味する。新たな雑音パターンを配る時はいつでも、鍵公布センターは、新たな雑音パターンを使用し始めなければならない一セットのプレーヤーグループを選択する。一般的に、このセットは、それが任意の既知のハッキングされたプレーヤーを含まないように選択される。加えて、有利には、鍵公布センターはそのセット中のグループの数を最小にしようと試みる。鍵公布センターは、初めのプレーヤーグループを構造化された態様で定義することによって高い効率を達成することができる。例えば、第1のグループは、これまでに製造された全てのプレーヤーを含み、第2及び第3のグループは、それぞれ全てのプレーヤーの半分を含み、第4から第7のグループは、それぞれ全てのプレーヤーの4分の1を含むなどであり、最後のグループに至っては、それぞれが単一のプレーヤーのみを含む。
【0025】
図2は、ノード鍵がバイナリのツリーとして編成される例を示す。ツリー中の各々のノード205は、ノード鍵(NK)を保持する。装置鍵は、リーフノードからルートへの経路201中のノード鍵のセットであり、ルートノード200は使用されず、装置は、(円内の)リーフノードのIDに等しい装置ID 203によって識別される。これに基づいて、鍵ブロック(EKB)は、暗号化された鍵{X}NK0及び{X}NK1のリストとして作成される(Xは鍵、NKはXの暗号化に用いられるノード鍵である)。例えば、装置ID 010を有する製品が無効にされた場合、そのノード鍵はもはや使用されることができず、ノード鍵1、00及び011を使用する新たなEKBが生成される。
【0026】
鍵発行センターは、セット中に含まれるグループ鍵の各々を用いて雑音パターンを暗号化する。あるいは、鍵発行センターは、ランダムに選択された鍵を用いて雑音パターンを暗号化して、セット中に含まれるグループ鍵の各々を用いて後者の鍵を暗号化する。そして鍵発行センターは、暗号化された雑音パターンをいわゆる鍵ブロックにフォーマットして、それはその後メディア担体上で配られる。暗号化された雑音パターンに加えて、鍵ブロックは、鍵ブロックの真偽を保証する情報(例えばデジタル署名)と同様に、それらの発行の順序に関する情報(例えばシーケンス番号又は発行の日付)を含まなければならない。プレーヤーが巡り合った一番最近発行された鍵ブロックによって伝達される雑音パターンをプレーヤーは使用していなければならないので、発行の順序は重要である。図3は本発明の実施の形態を示す。図3aは最初の状況を示し、ハッキングされたプレーヤーはない。全ての劇場用コンテンツ(301)は、最初の雑音パターンW0を用いてウォーターマークされる。一般的に、ウォーターマークはコンテンツの全体にわたって繰り返される。
【0027】
この最初の状況において、全てのコンシューマプレーヤーは、雑音パターンW0を用いてウォーターマークを検出することができなければならない。したがって、鍵公布センターは、全てのプレーヤーを含むグループのセットを選択し、グループのこのセットに割り当てられたグループ鍵を用いて雑音パターン暗号化し、暗号化された雑音パターンを鍵ブロック(E0... Em)へとフォーマットする。暗号化された雑音パターンW0の配布は、メディア担体(例えばDVD)上への鍵ブロックの適用によって、ネットワーク接続によって、又は当業者に知られている他の手段によって行われることができる。プレーヤーが新たな雑音パターン(すなわちプレーヤーがこれまで用いていた雑音パターンより最近発行された雑音パターン)を伝達する鍵ブロックを受け取るときはいつでも、プレーヤーは、その新たな雑音パターンを記憶しなければならない。さらに、コンテンツ中のウォーターマークを捜すときに、プレーヤーはその新たな雑音パターンを使い始めなければならない。一般的に、最初の雑音パターンW0は、製造の間又はその直後に、プレーヤーに伝達される。
【0028】
図3bは、例えばハッカーがそのグループ鍵の1つ以上を入手し、雑音パターンW0が暴かれたために、プレーヤーがハッキングされた状況を示す。加えて、ハッカーが劇場用コンテンツからウォーターマークを取り除くためのツールを作成して配ったかもしれない。一旦劇場用コンテンツの所有者(例えば映画スタジオ)が、雑音パターンが暴かれたことを知ると、また好ましくはハッカーがどのグループ鍵を入手したのかを知ると、新たな劇場用コンテンツ(303)は、古い雑音パターンW0と同様に新たな雑音パターンW1を用いてウォーターマークされる。
【0029】
この新たな状況において、ウォーターマークが雑音パターンW0のみを用いて埋め込まれている古い劇場用コンテンツ(301)と、ウォーターマークが雑音パターンW0及びW1を用いて埋め込まれている新しい劇場用コンテンツ(303)とが存在する。加えて、新たな雑音パターンW1は、例えば放送暗号技術を用いて配られている。好ましくは、この目的のために用いられる放送技術の鍵ブロックは、既知のハッキングされたプレーヤ(304)を除いた全てのプレーヤーが新たな雑音パターンW1を解読することができるように構成される。新たな雑音パターンの配布は、(光学的)ディスク、(フラッシュ)メモリーモジュール、放送チャネル、インターネットなどのような、多くの異なるチャネルを介して行われる場合があり、加えて、全てのプレーヤーがアップデートされるには時間を要する。したがって、まだアップデートされておらず依然として古い洩れた雑音パターンW0を用いている装置(カテゴリA装置)が存在し、そして、アップデートされて新たな雑音パターンW1を用いている装置(カテゴリB)が存在する。当初は多数の装置がカテゴリAであり、たとえW0が洩れたとしても若干の効果が依然として残されるかもしれないことが、W0が新たな劇場用コンテンツ中に埋め込まれる理由である(例えば、誰もがハッカーツールを使用するわけではないし、ハッカーツールは完全ではない)。より多くの装置がアップデートされるにつれて、ウォーターマークシステムの本来の有効性が新たなコンテンツに対して回復される。他方では、古いコンテンツにとって、これは当てはまらない。実際、一旦全てのプレーヤーが新たな雑音パターンW1にアップデートされると、(プレーヤーがもはや雑音パターンW0を用いてウォーターマークを捜さない場合)古いコンテンツに対するウォーターマークシステムの有効性はゼロに低下する。しかしながら、コンテンツは「古い」ので、その価値は新たなコンテンツの価値よりも低いと予想される。コンテンツ所有者は、これを公平なトレードオフと考えるだろう。あるいは、プレーヤーは、新たな雑音パターンに加えて1つ以上の古い雑音パターンを記憶し、記憶された雑音パターンの全てを用いてウォーターマークを捜すことを要求される場合がある。
【0030】
図4a及び4bは、第2の実施の形態による劇場用ウォーターマークの更新可能性を示す。図4aは、ハッキングされたプレーヤーがない最初の状況を示す。図3a及び3bに示される第1の実施の形態と比較した違いは、始めからコンテンツ401中に埋め込まれた複数のウォーターマークが存在することである。加えて、プレーヤーの異なるグループが異なるウォーターマークを捜すように、鍵ブロックが構成される。これは、単に各々のグループ鍵を用いて異なる雑音パターンを暗号化することによって達成されることができる。例えば、劇場用コンテンツがm個のウォーターマークを含む場合、鍵公布センターは、m個又はより多くのプレーヤーのグループから鍵ブロックを構成し、m個の異なる雑音パターン402を暗号化するために関連するグループ鍵を用いる。このアプローチの利点は、単一のプレーヤーがハッキングされ、ハッキングされたプレーヤーのグループに関連する雑音パターンが公表された場合に、全ての装置のうちの一部のみが影響を受けることである。これは、ウォーターマークシステムの有効性の大部分が損なわれないままであることを意味する。
【0031】
図4bは、例えばハッカーがそのグループ鍵の1つ以上を入手し、関連する雑音パターンが暴かれたことによって、プレーヤーがハッキングされた状況を示す。加えて、ハッカーが劇場用コンテンツからウォーターマークを取り除くためのツールを作成して配ったかもしれない。一旦劇場用コンテンツの所有者(例えば映画スタジオ)が、雑音パターンが暴かれたことを知ると、また好ましくはハッカーがどのグループ鍵404を入手したのかを知ると、鍵公布センターによって作成される新たな鍵ブロックは、ハッキングされたウォーターマークをもはや利用しない。したがって、全てのウォーターマークが洩れるまで、ウォーターマークシステムの十分な有効性が新旧両方のコンテンツに対して回復されることができる。
【0032】
図3及び4を用いて上で説明した2つの実施の形態の複合も可能である。例えば、第1の実施の形態において、始めから追加のウォーターマークを埋め込むことが可能である。これは、この状況では「古い」コンテンツがすでに「新たな」ウォーターマークを含むので、ウォーターマークシステムの有効性が古いコンテンツに対しても同様に回復されることを可能にする。同様に、第2実施の形態において、含まれるウォーターマークは、新たなコンテンツ中で完全に新しいウォーターマークに置き換えられることができる(例えば、W1はW1'に置き換えられることができる)。これは、第1の実施の形態において用いられるアプローチと同様に、ウォーターマークの新たなセットに移行するための道を提供する。
【0033】
上記の実施の形態は、一例としてコンシューマプレーヤーについて説明され、ウォーターマークシステムが一種の再生制御を実現するために用いられ、すなわち、コンテンツがウォーターマークを含む場合、プレーヤーはコンテンツの更なる再生をやめることになっている。同様の実施の形態がコンシューマレコーダに対して存在することは当業者にとって明らかである。その場合、ウォーターマークシステムは一種の録音制御を実現するために用いられ、すなわち、コンテンツがウォーターマークを含む場合、レコーダは記録を続けることをやめることになっている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】ウォーターマークされたコンテンツを検出するコンシューマプレーヤーを示す図。
【図2】鍵がバイナリのツリーとして編成される放送暗号システムの例を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツプロバイダが劇場用コンテンツのウォーターマークを更新し、前記更新されたウォーターマークを検出するようにコンシューマ装置をアップデートするための方法であって、ウォーターマークが少なくとも第1のウォーターマーク雑音パターンを用いて前記劇場用コンテンツに埋め込まれ、前記コンテンツプロバイダが前記劇場用コンテンツ中の前記ウォーターマークの埋め込み及び検出に用いられる少なくとも第2のウォーターマーク雑音パターンを放送暗号化技術を用いて前記コンシューマ装置に配ることによって前記更新が実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1のウォーターマーク雑音パターンが洩らされたコンシューマ装置が前記コンテンツプロバイダによって特定され、第2のウォーターマーク雑音パターンは当該特定された装置には配られない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウォーターマークが第1及び第2のウォーターマーク雑音パターンを含む複数のウォーターマーク雑音パターンを用いて前記劇場用コンテンツに埋め込まれる請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記更新が、第1のウォーターマーク雑音パターン及び第2のウォーターマーク雑音パターンの両方を用いて前記ウォーターマークを前記劇場用コンテンツに埋め込むことを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記放送暗号化技術が配られる前記雑音パターンを暗号化するために暗号鍵ブロック構造を用い、前記鍵ブロックの各々の鍵が、コンシューマ装置のグループに割り当てられ、新しい鍵ブロックが更新の際に用いられる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記暗号鍵ブロック構造が階層化ツリーに基づく請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記雑音パターンがネットワーク接続を用いて前記コンテンツプロバイダから前記コンシューマ装置に配られる請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記雑音パターンがメディア担体を用いて前記コンテンツプロバイダから前記コンシューマ装置に配られる請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
劇場用コンテンツのウォーターマークを更新し、前記更新されたウォーターマークを検出するようにコンシューマ装置をアップデートするために用いられるコンテンツプロバイダシステムであって、ウォーターマークが少なくとも第1のウォーターマーク雑音パターンを用いて前記劇場用コンテンツに埋め込まれ、前記コンテンツプロバイダシステムが、前記ウォーターマークを前記劇場用コンテンツに埋め込むために用いられる少なくとも第2のウォーターマーク雑音パターンを、放送暗号化技術を用いて前記コンシューマ装置に配る更新手段を有することを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2009−535884(P2009−535884A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507223(P2009−507223)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051459
【国際公開番号】WO2007/122574
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】