説明

加工システム

【課題】従来技術における噴霧手段では、水分等を一様に噴霧することは可能であるが、その微調整が容易ではなかった。特に食品加工システムにおいては、如何に噴霧量を調節するかが極めて重要な課題である。
【解決手段】そこで、本発明の加工システムでは、保持タンク(0201)に保持された液状体を、保持タンクから面に沿って滴るような壁面部(0204)を有する導管(0202)にて導き、この壁面部から滴る液状体を噴射部(0203)にて霧状散布するため、噴霧対象物へ噴霧する水、油、調味料等の噴霧量の微調整が可能である。このため、本発明の加工システムでは、噴霧対象物が食物であれば、その食物に最も適した噴霧量を噴霧することができ、外観、食感、味ともに良好な食品を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物等の加工を行うシステムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
学校施設、医療施設、介護施設などへ給食を提供する給食センターや、学内食堂、社員食堂など、食品工場ほどの規模ではないが、一度に大量の食品を加工する必要がある施設などでは、大型の食品加工システムが利用されている。このような食品加工システムとして、例えば、特許文献1にて自動連続式蒸米装置が開示されている。
【0003】
特許文献1では、入り口から搬入された原料米を搬送する一次コンベヤ及びこの一次コンベヤが配置される一次トンネルを設けた一次蒸米手段と、この一次蒸米手段の出口に配置されて一次蒸しされた蒸米の天地を反転させる反転手段と、この反転手段から搬入された一次蒸し蒸米を搬送する二次コンベヤ及びこの二次コンベヤが配置される二次トンネルを設けた二次蒸米手段と、を具備し、前記一次トンネル内に加湿用の噴霧手段、加熱用の上記加熱手段および米の撹拌混合手段が設けられ、前期二次トンネル内に加湿用の噴霧手段、加熱用の蒸気加熱手段及び蒸米の撹拌混合手段が設けられていることを特徴としている。
【特許文献1】特開平6−237860
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のポンプを用いて水分を圧送させるとともに噴霧ノズルから霧状に噴霧させる噴霧手段では、コンベヤ上の蒸米に対して水分等を一様に噴霧することは可能であるが、その微調整が容易ではない。このような食品加工システムでは、食品に噴霧される水分の量が加工食品の外観、食感等に大きく影響する。また、水分の他にも、油、調味料等を噴霧することもあり、これらの噴霧量も、味、食感等に大きく影響するが、油分を含む液体等は水よりも粘度が高いため流量調節が難しく、噴霧量の調節も難しい。このため、食品加工システムにおいては、如何に噴霧量を調節するかが極めて重要な課題である。特許文献1ではこの点において何ら具体的な解決方法が明らかにされておらず、なお課題として克服されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明では、上記課題を解決するために、第一発明では液状体を保持する保持タンクと、保持タンクからの液状体を面にそって滴るように導くための壁面部を有する導管と、壁面部から滴る液状体を霧状散布するための気体を噴射する噴射口を有する噴射部と、を有する加工システムを提供する。
【0006】
第二発明では、前記壁面部は、液状体の滴下方向に幅狭となっている加工システムを提供する。
【0007】
第三発明では、前記導管は、円筒管を滴下口にて斜め切断して前記壁面部を構成した加工システムを提供する。
【0008】
第四発明では、前記保持タンクは滴下口より高所に配置され、前記導管は、保持タンクより低所にて液状体の流れ方向に向かって上り傾斜に配置されている上傾斜領域を有する加工システムを提供する。
【0009】
第五発明では、前記導管は、滴下口直上にて略90度に屈曲する屈曲部を有する加工システムを提供する。
【0010】
第六発明では、前記保持タンクから流出する液状体の流量を調節する流量調節バルブと、前記噴射部の噴射口から噴射される気体の圧力を調節する圧力調節バルブと、を有する加工システムを提供する。
【0011】
第七発明では、前記保持タンクは、保持されている液状体の粘度を調整するための加熱手段を有する加工システムを提供する。
【0012】
第八発明では、液状体を噴射する対象である食物を液状体が散布される領域を通過して搬送するコンベヤを有し、噴射部の噴射口は、液状体をコンベヤの幅方向に拡散させるために幅方向切欠きを有する加工システムを提供する。
【0013】
第九発明では、前記液状体が散布される領域には、拡散された液状体を反射するための反射壁をコンベヤの両端側に有する加工システムを提供する。
【0014】
第十発明では、対象である食物は米飯類であり、コンベヤ上を移動する米飯類に対して噴射部により液状体が散布される後領域に配置した米飯類を撹拌する撹拌羽根部を有する加工システムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
以上のような構成をとる本発明の加工システムでは、保持タンクに保持された液状体を、保持タンクから面に沿って滴るような壁面部を有する導管にて導き、この壁面部から滴る液状体を噴射部にて霧状散布するため、噴霧対象物へ噴霧する水、油、調味料等の噴霧量の微調整が可能である。このため、本発明の加工システムでは、噴霧対象物が食物であれば、その食物に最も適した噴霧量を噴霧することができ、外観、食感、味ともに良好な食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施形態1は主に請求項1、2、3について説明する。実施形態2は主に請求項4、5、6、7について説明する。実施形態3は主に請求項8、9について説明する。実施形態4は主に請求項10について説明する。
【0017】
≪実施形態共通の概念≫
【0018】
本実施形態に共通する概念を、図1を用いて説明する。図1に示すのは、本実施形態1乃至4に記載の機能を有する加工システムの側面図の一例とした連続式炊飯装置である。図1に示す加工システムは、加工対象物である洗米の投入口(0101)、洗米の一次蒸煮加工を行いながら搬送を行う一次蒸煮コンベヤ(0102)、吸水等を行う吸水領域(0103)、二次蒸煮加工を行いながら搬送を行う二次蒸煮コンベヤ(0104)、米飯に炊き上がる途中の米の撹拌を行う撹拌羽根(0105)、炊き上げられた米飯に向けて液状体である調味料を散布する機能(0106)、米飯と噴霧された調味料を混ぜ合わせるための撹拌羽根(0107)、加工された米飯を加工システムから取り出す取出口(0108)などからなる。本発明では、主として調味料を散布する機能(0106)、加工対象物を搬送させることを行う二次蒸煮コンベヤ(0104)、撹拌羽根(0107)等に特徴を有する。なお、図1は、本発明の加工システムの一例であり、このような構成に限定されるものではない。
【0019】
≪実施形態1≫
【0020】
(実施形態1の概念)本実施形態の加工システムでは、液状体の散布方法について特徴を有する。
【0021】
(実施形態1の構成)図2に本実施形態の加工システムにおける液状体を散布する機能にかかる部分を示す。本実施形態の加工システムでは、保持タンク(0201)、導管(0202)、噴射部(0203)を有することを特徴とする。
【0022】
(実施形態1の構成の説明)「加工システム」とは、食物等を加工するシステムである。なお、本実施形態の加工システムの加工対象は食物が最も好適であるが、食物以外の加工に利用することとしても良い。一例として、金属部品に油を散布するような加工システムにも本実施形態の加工システムは利用可能である。
【0023】
「保持タンク」(0201)は、液状体を保持するように構成されている。保持タンクには、導管(0202)が接続されており、保持タンクにて保持されている液状体が噴射部における噴射対象となる液状体である。「液状体」とは、液状の物質であり、例えば、水、油、調味料等が該当する。
【0024】
「導管」(0202)は、保持タンクからの液状体を面にそって滴るように導くための壁面部(0204)を有するように構成されている。「壁面部」(0204)とは、導管の内壁面と一体又は別個に形成された壁面であり、液状体を導く機能を有する。また、壁面部から液状体を自然な状態で滴下することができるため、液状体を1滴ずつあるいは数滴ずつ又は連続した流れにて、少量ずつ滴下することができる。保持タンクから流出する液状体の量を調節することで、滴下する液状体の量の微調整が可能である。壁面部の形状は、図2に示すような、導管(0202)を斜め切断した形状のものであっても良いし、これ以外の形状であっても良い。以下、壁面部の具体例を示す。
【0025】
図3に壁面部の一例を示す。図3(a)は、導管が円筒であり、壁面部(0301)が略半円状である場合を示している。図3(b)は、同じく導管が円筒であり、壁面部(0302)が略半円状であり、先端にギザギザ形状が付されている場合を示している。図3(c)は、導管が角筒であり、壁面部(0303)が略V字状である場合を示している。液状体は、これらの壁面部の面にそって滴り落ちる。さらに、壁面を有していれば、図3(d)のように、導管(0305)から壁面部(0304)が垂れ下がっているようなものであっても良い。
【0026】
なお、壁面部をいずれの形状としても、液状体が壁面部から滴下されうる限り、液状体の滴下する状態は導管の形状等には依拠しない。例えば、導管の滴下口の口径を大きくしたとしても、壁面部からの液状体の滴下する状態は変化しない。従来技術における噴霧ノズル等では、液状体を散布する際にはノズル先端の噴霧孔を小さくする必要があり、粘度の高い液状体を噴霧する際に目詰まりの原因となっていた。しかし、本実施形態における導管では、壁面部を有することで、導管の滴下口の形状に関わらず液状体を滴下することができるため、滴下口の口径を大きくすることで、目詰まりを防止することができる。また、滴下口の口径を大きくすることで、導管のメンテナンス、清掃を容易に行うことができる。
【0027】
さらに、壁面部は、液状体の滴下方向に幅狭となっていることが望ましい。これを図4に示す。図4(a)は、導管が円筒であり、略半円状の壁面部(0401)が液状体の滴下方向に向けて次第に幅狭となっている場合を示している。なお、壁面部の先端は鋭角であっても良い。図4(b)は、導管が円筒であり、壁面部(0402)が液状体の滴下方向に向けて幅狭となっており、幅狭領域が所定の長さを有している場合を示している。図4(c)は、導管が角筒であり、壁面部(0403)先端が鋭角となっている場合を示している。図4(d)は、導管(0405)から壁面部(0404)が垂れ下がっており、その先端部が鋭角となっている場合を示している。図4に示すように、壁面部を液状体の滴下方向に向けて幅狭とすることにより、液状体の滴下位置が一定となり、噴射部において液状体を噴射する方向や領域を安定させることができる。
【0028】
さらに、導管は、円筒管を滴下口にて斜め切断して壁面部を構成しても良い。これを図5に示す。図5(a)に示すように、一の円筒管(0501)を所定の位置で斜め切断すると、二つの導管(0501a、0501b)が形成される。このとき、図5(b)に示すように、各導管の切り口が楕円形状となり、当該楕円形状にて壁面部(0502)が形成される。このように、導管を斜め切断して壁面部を形成することで、先端部分が液状体の滴下方向に幅狭な壁面部を容易に形成することができる。
【0029】
「噴射部」(0203)は、壁面部(0202)から滴る液状体を霧状散布するための気体を噴射する噴射口(0205)を有するように構成されている。霧状散布するための気体とは、通常は圧縮空気や不活性ガスであるが、特定の気体に限られない。噴射部では、壁面部から滴り落ちてくる液状体目掛けて噴射口から気体を噴射する。このため、噴射口は液状体が滴り落ちてくる壁面部下端付近に設置する。壁面部から滴り落ちた液状体は、当該噴射口から噴射する圧縮空気により霧状に散布される。なお、噴射口は、壁面部の液状体が滴っている面の先端部よりやや下方に位置した裏側に配置することが望ましい。このような位置関係に噴射口を設置することで、壁面部の液状体が滴っている面には噴射された風が直接当たらず、壁面部から滴り落ちた液状体のみを所定の方向に向けて噴射することができ、液状体を霧状に安定して散布することができる。そして、この霧状の液状体が、噴射口の先にある食物等の噴霧対象物に一様に噴霧される。
【0030】
(実施形態1の具体例)図2を用いて本実施形態の具体例を説明する。まず、本実施形態の加工システムでは、保持タンク(0201)に接続された導管(0202)にて保持タンクに保持されている液状体が導かれる。導かれた液状体は、導管の出口付近で壁面部(0204)にそって滴り、壁面部の先端部から滴り落ちる。噴射部(0203)では、噴射口(0205)から気体を噴射しており、壁面部から滴り落ちた液状体が霧状に散布される。霧状に散布された液状体は、噴射口の先にある食物等に一様に噴射される。
【0031】
(実施形態1の効果)以上のような構成をとる本発明の加工システムでは、保持タンクに保持された液状体を、保持タンクから面に沿って滴るような壁面部を有する導管にて導き、この壁面部から滴る液状体を噴射部にて霧状散布するため、噴霧対象物へ水、油、調味料等を少しずつ噴霧することが可能である。このため、本発明の加工システムでは、噴霧対象物が食物であれば、その食物に最も適した噴霧量を噴霧することができ、外観、食感、味ともに良好な食品を提供することができる。
【0032】
≪実施形態2≫
【0033】
(実施形態2の概念)本実施形態の加工システムでは、実施形態1に記載の加工システムを基本とし、さらに、導管等において特徴を有する。
【0034】
(実施形態2の構成)図6(a)に本実施形態の加工システムにおける噴霧器を示す。本実施形態の加工システムでは、保持タンク(0601)、導管(0602)、噴射部(0603)に加えて、流量調節バルブ(0605)、圧力調節バルブ(0606)からなる。
【0035】
(実施形態2の構成の説明)本実施形態の「保持タンク」(0601)は、実施形態1に記載の保持タンクを基本とし、さらに、導管の滴下口(0604)より高所に配置されていることを特徴とする。保持タンクが導管の滴下口よりも高所に配置されることで、後述するように導管が上傾斜領域(0607)を備えている場合であっても、ポンプ等を利用せずに滴下口から液状体を滴下させることができる。なお、保持タンクを高所に配置し、ポンプ等を利用することなく導管へ液状体を供給することとしているため、液状体は気圧差、重力等により、自然落下させることができ、微調整を容易に行うことができる。
【0036】
また、保持タンク(0601)は、保持している液状体が温度の低下によりその粘度が高くなってしまう粘性体である場合には、液状体の粘度を調整するための加熱手段を有していても良い。加熱手段の一例を図7に示す。図7は、保持タンク(0701)の周囲に温水を通水する通水管(0702)を巻き付けた加熱手段である。通水管に通す温水の温度を高くすることで保持タンクに保持されている液状体の粘度を低くし、噴霧し易い状態とすることができる。また、上記例以外であっても、例えば、加熱手段が保持タンクを湯煎して加熱するものであっても良いし、保持タンクに電熱線等のヒータを備え付けて加熱するものであっても良いし、保持タンクを加熱可能であれば良い。
【0037】
本実施形態の「導管」(0602)は、実施形態1に記載の導管を基本とし、保持タンクより低所にて液状体の流れ方向に向かって上り傾斜に配置されている上傾斜領域(0607)を有することを特徴とする。上傾斜領域を有することで、保持タンク(0601)から流れ出た液状体の流速が一旦抑えられ、液状体を少しずつ導管の壁面部に導くことができる。これを図6(b)に示す。図6(b)に示すように、導管(0602)には、水平面(0608)から角度θ(0°<θ<90°であり、5≦θ≦15°程度が望ましい)を設けておく。すると、滴下口(0604)から流れ落ちる液状体の流速は、直接保持タンク(0601)から流れ出ている流速ではなく、上傾斜領域(0607)における液状体の水面(0609)を押し上げる能力(上昇速度)により左右される。このため、保持タンクからの導管に流れ出る流量を急速に増やした場合であっても、直ちに滴下口での滴下速度が増大することもなく、滴下量の微調整をより容易に行うことができる。また、液状体の流れを停止しようとしたときに、バルブを閉めるなどの液状体の流れを停止する動作を行ってから実際に滴下口からの流れが停止するまでの間に流れ出る液状体の量は、上傾斜領域を有することで、上傾斜領域の最上部から滴下口までの間に残る液状体の量のみである。したがって、停止しようとする動作後に早期に液状体の流出を停止させることができる。
【0038】
また、導管は、滴下口(0604)直上にて略90度に屈曲する屈曲部(0610)を有していることが望ましい。屈曲部を図8を用いて具体的に説明する。図8(a)に示すように、例えば、噴射部(0803)にて液状体を噴射する対象が加熱されて蒸気を発生する食物である場合には、導管の滴下口(0804)から高温の蒸気が侵入し、導管(0802)内の液状体が劣化してしまう虞がある。しかし、滴下口直上にて略90度に屈曲する屈曲部(0801a)を設けることで、侵入した蒸気を屈曲部で結露させ、導管の奥深くまで侵入することを防ぐことができる。また、図8(b)に示すように、導管の屈曲部(0801b)に通気口(0805)を設けると、蒸気だけを外部へ逃がすこともできる。なお、従来技術のように、滴下口の口径を小さくして液状体を滴下する場合には、蒸気が導管内部に侵入する問題が生じず、この問題は本発明のように口径を大きくした場合に副次的に生じる問題であるが、屈曲部を設けることで本発明においても解決することができる。ただし、図3(d)、図4(d)のように壁面部(0304、0404)を構成した場合には、蒸気が導管内部に侵入するという問題がそもそも生じない場合もある。
【0039】
「流量調節バルブ」(0605)とは、保持タンクから流出する液状体の流量を調節するバルブである。流量調節バルブは、導管(0602)に設けられ、保持タンクから流れ出る液状体の流量を調節することができる。滴下する液状体は、滴下時の気温、湿度等によって微妙に変化させる必要がある。流量調節バルブによりこの微妙な滴下量を調節することができる。
【0040】
「圧力調節バルブ」(0606)とは、噴射部の噴射口から噴射される気体の圧力を調節するバルブである。圧力調節バルブは、噴射部の噴射口から噴射する気体を送気管に設けられる。圧力調節バルブには、圧縮空気を送り込むボンベ等が接続され、バルブの調節により送気される気体の圧力を調節することができる。
【0041】
(実施形態2の具体例)図6を用いて本実施形態の具体例を説明する。本実施形態の加工システムでは、保持タンク(0601)に接続された導管(0602)に流量調節バルブ(0605)が設けられているため、流量調節バルブにより、保持タンク(0601)から流れ出る流量を調節し、所定の流量の液状体を流す。
【0042】
本加工システムを炊飯装置として利用する場合には、液状体として炊飯用油が利用される。図9に炊飯用油及び比較用のなたね油における、温度と粘度の関係を示す。図9に示すように、これらの油は、温度が高くなるほど粘度が低くなる。このため、図7に示した加熱手段にて、粘度を調節しながら流量調節バルブ(0605)の開閉を行うことが望ましい。また、炊飯用油は、一般的な調理等に利用されるなたね油よりも粘度が高く、ノズルの目詰まり等が生じ易いが、本加工システムでは、導管の口径を広くすることが可能であり、かつ、加熱手段を備えているため、目詰まりの問題が生じない。なお、散布する炊飯用油は50℃程度が最も望ましい。
【0043】
そして、保持タンクより導管に流れた液状体は、導管の滴下口(0604)に向けて導かれるが、導管は上傾斜領域(0607)を有するため、一定量の液状体が導管内部に溜まった後に液状体が滴下口に達する。導管の滴下口には、実施形態1にて説明したとおり壁面部を有するため、液状体は壁面部にそって滴り、壁面部の先端部から滴り落ちる。噴射部(0603)では、圧力調節バルブ(0606)により圧力が調節されて噴射口から気体を噴射しており、壁面部から滴り落ちた液状体が霧状に散布される。霧状に散布された液状体は、噴射口の先にある食物等に一様に噴射される。
【0044】
図10に、本加工システムを炊飯装置として利用した場合における噴射部における空気圧と散布された液状体である炊飯用油の粒径の関係を示す。一般的に空気圧を高くすると散布される液状体の粒径は小さくなる。そして、炊飯装置では周囲の雰囲気温度が高く、散布される液状体の粒径を小さくすると、熱気で周辺に舞い上がってしまい、所定の場所のみに噴射されないことから、必要以上に小さくすることは好ましくない。このため、炊飯用油を散布させる場合の空気圧は0.02MPa〜0.03MPa程度が望ましく、上記のとおり炊飯用油の温度を50℃に保った場合には、飛散される油の粒径は約0.15mm程度となる。
【0045】
なお、上記数値は具体例の一つであり、本加工システムはこれらの態様に限られない。
【0046】
(実施形態2の効果)以上のような構成をとる本発明の加工システムでは、実施形態1に記載の効果に加えて、導管が上傾斜領域、流量調節バルブを有しており、保持タンクから流れ出る流量の微調整をより容易にかつ正確に行うことができる。
【0047】
≪実施形態3≫
【0048】
(実施形態3の概念)本実施形態の加工システムでは、実施形態1又は2に記載の加工システムを基本とし、さらに、液状体の噴射方法に特徴を有する。
【0049】
(実施形態3の構成)図11に本実施形態の加工システムの概略図を示す。本実施形態の加工システムでは、保持タンク(図示せず)、導管(1103)、噴射部(1102)に加えて、コンベヤ(1101)、反射壁(1105)からなる。
【0050】
(実施形態3の構成の説明)「コンベヤ」(1101)は、液状体を噴射する対象である食物(1104)を液状体が散布される領域を通過して搬送するように構成されている。例えば、図1に示す加工システムでは、液状体の散布装置(0106)下方に設置されている二次コンベヤ(0104)が本実施形態のコンベヤ(1101)に該当する。
【0051】
本実施形態の「噴射部」(1102)は、噴射口が液状体をコンベヤの幅方向に拡散させるために幅方向切欠きを有する。図12を用いてこれを具体的に説明する。図12(a)は噴射部の側面図、図12(b)は噴射部を噴射口側から見た正面図である。図12に示す噴射部(1201)は、その噴射口(1203)に幅方向切欠き(1202)を有する。噴射部にて噴射される空気は、当該切欠きにより、噴射口から幅方向切欠きを有する方向に拡散する。幅方向切欠きは、コンベヤの幅方向と略同一方向に設けられており、噴射口より噴射される空気はコンベヤの幅方向に拡散する。そして、図11に示すように噴射口に近接して導管(1103)の滴下口が設置されているため、滴下口から滴下された液状体を噴射口の幅方向切欠きによりコンベヤの幅方向に拡散させることができる。また、コンベヤ幅が広く一つの加工システムでは全幅に液状体を散布できない場合には、複数の加工システムを並設させることも可能である。
【0052】
「反射壁」(1105)は、前記液状体が散布される領域のコンベヤ両端側に設けられ、拡散された液状体を反射するように構成されている。反射壁を設けることで、コンベヤに向けて噴霧される液状体をコンベヤ以外の場所へ飛散させないとともに均一化することができる。図13を用いてこれを説明する。図13(a)は反射壁を有しない場合の液状体の散布量の分布図を示し、図13(b)に反射壁を有する場合の液状体の散布量の分布図を示す。図13(a)に示すように、コンベヤ(1301)に反射壁を有さない場合には、液状体が拡散される幅がコンベヤよりも広くなると、無駄に散布される液状体の量が増大してしまう。また、コンベヤ端部における液状体の散布量(1304a)はコンベヤ中心部と比較して少なくなり、コンベヤの位置により散布量のむらが大きくなってしまう。一方、図13(b)に示すように、コンベヤ(1301)に反射壁(1305)を有する場合には、コンベヤよりも幅広に拡散された液状体が反射壁にて反射して食物に散布され、液状体が無駄になることを防止することができる。また、反射壁により液状体が反射されることにより、コンベヤ端部における液状体の散布量(1304b)が増大し、コンベヤ全体における散布量を均一化し、散布量のむらを少なくすることができる。また、反射壁により、コンベヤ以外の領域に液状体が飛散してしまい、他の機器を汚してしまうことを防止することもできる。
【0053】
(実施形態3の効果)以上のような構成をとる本発明の加工システムでは、実施形態1又は2に記載の効果に加えて、噴射部の噴射口が切欠きを有しており、コンベヤの幅方向に液状体を拡散させることができる。また、コンベヤには反射壁を設けることで、拡散された液状体を無駄なく、かつ、むら無く食物に散布することができる。
【0054】
≪実施形態4≫
【0055】
(実施形態4の概念)本実施形態の加工システムでは、実施形態1から3のいずれかに記載の加工システムを基本とし、さらに、本実施形態の加工システムでは、加工対象を米飯類とし、この米飯類を撹拌する撹拌羽根を有することに特徴を有する。
【0056】
(実施形態4の構成)図14に本実施形態の加工システムの概略図を示す。本実施形態の加工システムでは、保持タンク(図示せず)、導管(1401)、噴射部(1402)、コンベヤ(1403)と、撹拌羽根(1404)からなる。
【0057】
(実施形態4の構成の説明)「撹拌羽根」(1404)は、コンベヤ上を移動する米飯類に対して噴射部により液状体が散布される後領域に配置され、米飯類を撹拌するように構成されている。本実施形態の加工システムの加工対象は米飯類であり、この米飯類が層状となってコンベヤ(1403)上を移動すると、まず、噴射部(1402)が導管(1401)に導かれた液状体を霧状散布する領域(1405)を通過する。そして、当該領域をコンベヤが通過した後の領域(1406)に撹拌羽根(1404)が配置されている。撹拌羽根が配置された領域(1406)では、米飯類には既に液状体が散布された後の状態である。そして、撹拌羽根では、この液状体が散布された後の状態の米飯類を撹拌することで、米飯層の上面部に向けて散布された液状体を直接的に散布された部分だけでなく全ての米飯類の表面に均一に馴染ませることができる。
【0058】
(実施形態4の具体例)図14を用いて本実施形態の具体例を説明する。まず、本実施形態の加工システムでは、保持タンクに接続された導管(1401)にて保持タンクに保持されている液状体が導かれる。なお、当該液状体は、米飯類を味付けするための調味料や調味油、米飯類のつやを出すための炊飯用の食用油等である。この導かれた液状体は、導管の出口付近で壁面部にそって滴り、壁面部の先端部から滴り落ちる。噴射部(1402)では、噴射口から気体を噴射しており、壁面部から滴り落ちた液状体をコンベヤ(1403)に向けて霧状に散布する。コンベヤ(1403)では米飯類が層状となって搬送され、この搬送された米飯類が、液状体が霧状散布される領域(1405)を通過すると、米飯類の層状の上面部に液状体が付着する。コンベヤ(1403)が当該領域を通過した後には、コンベヤは撹拌羽根(1404)を備える領域(1406)に米飯類を搬送する。当該領域では、撹拌羽根(1404)により、層状の米飯類が撹拌され、液状体を全ての米飯類の表面に均一に付着させることができる。
【0059】
(実施形態4の効果)以上のような構成をとる本発明の加工システムでは、実施形態1から3に記載の効果に加えて、撹拌羽根を有しており、米飯類に散布された液状体を米飯類により均一に付着させることができる。このため、その米飯類に最も適した量の液状体を付着させることができ、外観、食感、味ともに良好な米飯類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】加工システムの概念図
【図2】実施形態1の加工システムを説明する図
【図3】導管の壁面部を例示する図(1)
【図4】導管の壁面部を例示する図(2)
【図5】壁面部が導管を斜め切断したものである場合を例示する図
【図6】実施形態2の加工システムを説明する図
【図7】保持タンクの加熱手段を示す図
【図8】導管の屈曲部を示す図
【図9】温度と粘度の関係を示す図
【図10】空気圧と粒径の関係を示す図
【図11】実施形態3の加工システムを説明する図
【図12】噴射口の切欠きを例示する図
【図13】反射壁を設けた場合の散布量の分布を示す図
【図14】実施形態4の加工システムを説明する図
【符号の説明】
【0061】
0201 保持タンク
0202 導管
0203 噴射部
0204 壁面部
0205 噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体を保持する保持タンクと、
保持タンクからの液状体を面にそって滴るように導くための壁面部を有する導管と、
壁面部から滴る液状体を霧状散布するための気体を噴射する噴射口を有する噴射部と、
を有する加工システム。
【請求項2】
壁面部は、液状体の滴下方向に幅狭となっている請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
導管は、円筒管を滴下口にて斜め切断して前記壁面部を構成した請求項1又は2に記載の加工システム。
【請求項4】
保持タンクは滴下口より高所に配置され、
導管は、保持タンクより低所にて液状体の流れ方向に向かって上り傾斜に配置されている上傾斜領域を有する請求項1から3のいずれか一に記載の加工システム。
【請求項5】
導管は、滴下口直上にて略90度に屈曲する屈曲部を有する請求項1から4のいずれか一に記載の加工システム。
【請求項6】
保持タンクから流出する液状体の流量を調節する流量調節バルブと、
噴射部の噴射口から噴射される気体の圧力を調節する圧力調節バルブと、を有する請求項1から5のいずれか一に記載の加工システム。
【請求項7】
保持タンクは、保持されている液状体の粘度を調整するための加熱手段を有する請求項1から6のいずれか一に記載の加工システム。
【請求項8】
液状体を噴射する対象である食物を液状体が散布される領域を通過して搬送するコンベヤを有し、
噴射部の噴射口は、液状体をコンベヤの幅方向に拡散させるために幅方向切欠きを有する請求項1から7のいずれか一に記載の加工システム。
【請求項9】
前記液状体が散布される領域には、拡散された液状体を反射するための反射壁をコンベヤの両端側に有する請求項8に記載の加工システム。
【請求項10】
対象である食物は米飯類であり、コンベヤ上を移動する米飯類に対して噴射部により液状体が散布される後領域に配置した米飯類を撹拌する撹拌羽根を有する請求項8又は9に記載の加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−80218(P2008−80218A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261579(P2006−261579)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【Fターム(参考)】