説明

加熱ユニット、加熱ロール、および加熱装置

【課題】金属製の筒体から成るとともに、その外周面上にロール層を形成し、前記金属製の筒体の内部に発熱体を配した加熱ロールにおいて、熱応答性を高めるとともに、熱の軸線方向の分布を均一にした加熱ロールを提供する。
【解決手段】中空の金属製の筒体10の内側に、カーボングラファイトシートを圧縮成形して成るとともに中心部に形成された挿通孔23にシーズヒータ17を挿入した熱伝達部材22を収納し、しかもシーズヒータ17の外周面と熱伝達部材22の挿通孔23の内周面との間の隙間をなくし、さらに熱伝達部材22の外周面と前記筒体10の内周面との間の隙間をなくし、上記シーズヒータ17からの熱を熱伝達部材22を介して金属筒体10に伝達し、上記金属筒体の軸線方向の温度分布を均一にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱ユニット、加熱ロール、および加熱装置に係り、とくにカーボングラファイト製の熱伝達部材を用いて各種のヒータから成る発熱体からの熱を効率的に伝達するようにした加熱ユニット、加熱ロール、および加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に加熱ロールは、アルミニウム合金や鉄系の金属から成る中空の筒体の外周面上にゴム等のロール層を形成し、しかも上記金属製筒体の中心部には、軸線方向に延びるシーズヒータ、セラミックヒータ等の各種のヒータを配し、このようなヒータからの熱を上記金属製の筒体を介してロール層に伝達し、これによって外周面のロール層の温度を高くして加熱するようにしている。
【0003】
従来のこの種の加熱ロールは、中心部に配されるヒータと金属製の筒体との間に半径方向に大きな隙間が存在する。中心部に配されたヒータからの熱が半径方向に放射されるとともに、その熱が上記金属製の筒体の中心孔の内周面で反射し、再びヒータに戻って輻射するようになる。従って上記輻射熱によって中心部に配されるシーズヒータやセラミックヒータそれ自身が損傷劣化され、中心部のヒータの寿命が短くなる欠点がある。また金属製筒体の内部空間に間隔を隔てて余裕をもって、例えばシーズヒータを配した構成によると、外周面のロール層の温度分布が軸線方向に必ずしも均一ではなく、軸線方向の中間部分が最も高く、両端側の温度が低くなる傾向になる(図6参照)。
【0004】
なお本願発明者は、例えば特開2006−344532号公報において、熱の立上げ時間を短縮し、熱応答性を改善するために、加熱ロールのロール本体の外周部に断熱層を介してカーボングラファイトシートを螺旋状に巻装してカーボングラファイト層を形成し、カーボングラファイト層に対して通電を行なうことにより、この加熱ロールの外表面を所定の温度に昇温させるようにした加熱ロールを提案している。このような加熱ロールは、中心部に発熱手段を構成するヒータを配する必要がないために、従来のシーズヒータを用いた加熱ロールの欠点を解消することができる。ところがカーボングラファイトシートを発熱体として用いているために、外表面の温度をそれほど高くできないという欠点がある。
【0005】
また従来のキッチンユニットや電気炊飯器に用いられる加熱装置は、放熱板の裏面側に、例えばシーズヒータを直接取付けるようにし、このシーズヒータからの熱を上記放熱板を介して放散させるようにしていた。このような従来の加熱装置の構造は、シーズヒータからの熱の伝達の立上り特性に劣るばかりでなく、放熱板内における熱の分布が不均一であって、これによって温度ムラが生ずる欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−344532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の課題は、内部の発熱体からの熱を均一に伝達できるようにした加熱ユニットを提供することである。
【0008】
本願発明の別の課題は、発熱体からの熱の伝達が迅速に行なわれ、これによって立上り特性が改善されるようにした加熱ユニットを提供することである。
【0009】
本願発明のさらに別の課題は、ロールの全長にわたって均一な温度に加熱することができる加熱ロールを提供することである。
【0010】
本願発明のさらに別の課題は、温度の立上り特性に優れた加熱ロールを提供することである。
【0011】
本願発明のさらに別の課題は、内部に挿入される発熱体が、それ自身が発生する熱によって損傷することがないようにした加熱ロールを提供することである。
【0012】
本願発明のさらに別の課題は、発熱体からの熱が均一に放熱板に伝達され、これによって温度ムラがない加熱装置を提供することである。
【0013】
本願発明のさらに別の課題は、発熱体からの熱が迅速に放熱板に伝達され、熱の立上り特性に優れた加熱装置を提供することである。
【0014】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の主要な発明は、天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるととともに、該挿通孔にヒータが挿入され、熱伝達部材と前記ヒータとの間に隙間が存在しないことを特徴とする加熱ユニットに関するものである。
【0016】
ここで、前記熱伝達部材が天然黒鉛から圧延して製作されたカーボングラファイトシートを圧縮成形したものであってよい。また前記カーボングラファイトの熱伝達部材の中心部に軸線方向に貫通して挿通孔が形成され、該挿通孔に前記ヒータが挿入されていてよい。
【0017】
加熱ユニットに関する別の発明は、カーボングラファイト製の角紐を密着した状態で丸棒状のヒータの周囲に螺旋状に巻装したことを特徴とする加熱ユニットに関するものである。
【0018】
加熱ロールに関する主要な発明は、中空の筒体から成り、該筒体の外周面上にロール層を形成し、前記筒体の内部に軸線方向に延びる発熱体を配した加熱ロールにおいて、
前記筒体の内部に加熱ユニットが配され、該加熱ユニットは、天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるとともに、該挿通孔に前記発熱体を構成するヒータが挿入され、前記熱伝達部材と前記ヒータとの間に隙間が存在せず、しかも前記加熱ユニットと前記筒体の内周面との間に隙間が存在しないことを特徴とする加熱ロールに関するものである。
【0019】
ここで、前記カーボングラファイトの熱伝達部材が天然黒鉛から圧延して製作されたカーボングラファイトシートを圧縮成形したものであって、前記カーボングラファイトの熱伝達部材の中心部に軸線方向に貫通して挿通孔が形成され、該挿通孔内に前記ヒータが挿入されてよい。また前記発熱体が断面円形のシーズヒータから構成され、該シーズヒータの外径が前記カーボングラファイトの熱伝達部材の中心部に貫通して形成された断面円形の挿通孔の内径と等しく、前記シーズヒータの外周面と前記カーボングラファイトの熱伝達部材の挿通孔の内周面との間に半径方向に隙間が存在しないようにしてよい。また前記カーボングラファイトの熱伝達部材には、軸線方向に貫通して複数の挿通孔が形成され、それらの挿通孔にそれぞれヒータが挿入されてよい。また前記中空の筒体の外周面上に形成されるロール層がゴムから成ってよい。また前記中空の筒体の外周面上に形成されるロール層がセラミックから成ってよい。
【0020】
加熱装置に関する主要な発明は、放熱板によって内側に配された発熱体からの熱を放熱するようにした加熱装置において、
前記放熱板の内側に加熱ユニットが配され、該加熱ユニットは、天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるとともに、該挿通孔に前記発熱体を構成するヒータが挿入され、前記熱伝達部材と前記ヒータとの間に隙間が存在せず、
前記熱伝達部材の外表面と接するように前記放熱板が取付けられることを特徴とする加熱装置に関するものである。
【0021】
ここで、前記カーボングラファイトの熱伝達部材が断面矩形の棒状であって、軸線方向に貫通して挿通孔が形成され、該挿通孔に前記ヒータが挿入されるとともに、前記熱伝達部材の外周側の一面と接するように前記放熱板が取付けられてよい。また前記カーボングラファイトの熱伝達部材が断面三角形の棒状であって、軸線方向に貫通して挿通孔が形成され、該挿通孔に前記ヒータが挿入されるとともに、前記熱伝達部材の外周側の一面と接するように前記放熱板が取付けられてよい。
【発明の効果】
【0022】
本願の主要な発明は、天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるととともに、該挿通孔にヒータが挿入され、熱伝達部材とヒータとの間に隙間が存在しないようにしたものである。
【0023】
このような特徴ある加熱ユニットによると、ヒータによって発生した熱が、このヒータを収納している挿通孔を備える熱伝達部材に効果的に伝達されるとともに、この熱伝達部材がカーボングラファイトから構成されているために、その良好な熱伝導性を利用して極めて迅速かつ均一にこの熱伝達部材に熱の伝達を行なうことが可能になり、均一な温度であってしかも立上り特性に優れた加熱ユニットを提供できるようになる。
【0024】
加熱ロールに関する主要な発明は、中空の筒体から成り、該筒体の外周面上にロール層を形成し、筒体の内部に軸線方向に延びる発熱体を配した加熱ロールにおいて、筒体の内部に加熱ユニットが配され、該加熱ユニットは、天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるとともに、該挿通孔に発熱体を構成するヒータが挿入され、熱伝達部材とヒータとの間に隙間が存在せず、しかも加熱ユニットと筒体の内周面との間に隙間が存在しないようにしたものである。
【0025】
従ってこのような加熱ロールによると、発熱体で発生した熱がカーボングラファイトから成る熱伝達部材を介して中空の筒体の内周側に伝達され、この筒体およびその外側のロール層を熱伝達部材を介して迅速に昇温加熱することができる。しかも熱伝達部材がカーボングラファイトから構成され、その良好な熱伝達特性によって、軸線方向にわたって安定的な温度分布で加熱することが可能になる。また加熱手段で発生した熱が熱伝達部材を介して外周側に伝達されるとともに、中空の筒体の内周面における熱の輻射が防止され、発熱手段それ自身の熱でこの発熱手段が損傷劣化されることがない。
【0026】
加熱装置に関する主要な発明は、放熱板によって内側に配された発熱体からの熱を放熱するようにした加熱装置において、放熱板の内側に加熱ユニットが配され、該加熱ユニットは、天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるとともに、該挿通孔に発熱体を構成するヒータが挿入され、熱伝達部材とヒータとの間に隙間が存在せず、熱伝達部材の外表面と接するように放熱板が取付けられるようにしたものである。
【0027】
従ってこのような加熱装置によると、ヒータから成る発熱体で発生した熱が、熱伝達部材を介して放熱板に伝達されるようになり、とくに優れた熱伝達特性を有するカーボングラファイトから成る熱伝達部材を利用して放熱板を迅速にしかも均一な温度に加熱することが可能になる。従って温度分布の不均一性を回避して安定的な温度分布で加熱することができる加熱装置を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本願の一実施の形態の加熱ロールの縦断面図である。
【図2】この加熱ロールの内部に組込まれる熱伝達部材の外観斜視図である。
【図3】同熱伝達部材の縦断面図である。
【図4】熱伝達部材の製作を示す加圧型の縦断面図である。
【図5】変形例の熱伝達部材の断面図である。
【図6】加熱ロールの軸線方向の温度分布を示すグラフである。
【図7】さらに別の実施の形態のカーボングラファイト製の角紐と、角紐をヒータに巻付けた加熱ユニットの外観斜視図である。
【図8】角紐を用いた加熱ユニットの縦断面図である。
【図9】別の実施の形態の加熱装置の外観斜視図である。
【図10】同加熱装置の正面図および縦断面図である。
【図11】さらに別の実施の形態の加熱装置の外観斜視図である。
【図12】同加熱装置の正面図および縦断面図である。
【図13】さらに別の実施の形態の加熱装置の外観斜視図である。
【図14】同加熱装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1は本実施の形態の加熱ロールの全体の構成を示しており、ここでは、金属、例えばアルミニウム合金から成る金属筒体10を備えている。この筒体10がロール本体を構成している。そして金属筒体10の外周面上にはロール層11が形成される。ロール層11は、ゴムまたはセラミックから構成される。すなわちその外表面の温度を200℃程度に維持する場合には、ロール層11をゴムによって製作する。これに対して外表面の温度を400℃以上の温度に維持する場合には、セラミック溶射によってロール層11を形成する。なお使用目的に応じて、ロール層11をゴムやセラミックス以外の材料としてもよい。またロール層11を含むロールの外径は、その目的に応じて各種の寸法のものが製作可能であって、例えば直径が、56mmφ、80mmφ、100mmφ、150mmφ、200mmφ等の各種の寸法のロールを製作することができる。
【0030】
このようなロールは、その金属筒体10の両端の開口の部分にフランジ12を取付けるようにしている。フランジ12は軸線方向に突出するように中空の支軸13を備えるとともに、このフランジ12がビス14によって金属筒体10の両端面に固定されるようになっている。
【0031】
金属筒体10の中心部には発熱手段を構成するシーズヒータ17が配される。シーズヒータ17は、Nr−Cr、Fe−Cr−Al等の合金から成る発熱素子をコイル状、筒状等の形状にし、金属製の鞘(シーズ、Sheath)の中に挿入したものである。ここで鞘と上記の合金から成る発熱素子との間に酸化マグネシウムが充填される。発熱素子をコイル状に構成する場合には、このコイルの一端をリード線に、他の一端をシーズに接続する。そして上記端子とシーズとにそれぞれ図1に示すリード線19が接続される。外周部を構成するシーズ(Sheath)は、耐熱性および耐蝕性を有するステンレスまたはインコネイルで作られ、ヒートコイルを高温・高圧、腐蝕から保護する。またシーズの中の酸化マグネシウムは熱伝達性および絶縁性に優れ、シーズとヒートコイルの絶縁を保護し、振動からヒートコイルを保護し、ヒートコイルの熱をシーズに伝える働きをする。従ってこのようなシーズヒータは、耐久性、気密性、機械的強度等に優れ、放熱面積が大きいという特徴を有している。このようなシーズヒータ17が、図1に示すマイカ製の断熱ストッパ18によってその軸線方向の両端が受けられて保持された状態で金属筒体10の内部に配される。
【0032】
なお発熱手段としては、必ずしもシーズヒータを用いることなく、他のヒータ、例えばセラミックヒータ、石英ヒータ、電磁誘導ヒータ等各種のヒータに代えることができる。
【0033】
次に上記シーズヒータ17と金属筒体10の中心孔の内周面との間にカーボングラファイトから成る熱伝達部材22が充填配置される。そしてこの熱伝達部材22の挿通孔23の内側に、上記シーズヒータ17の外周面が密着するように挿入される。
【0034】
ここで熱伝達部材を構成するカーボングラファイトシートについて説明する。一般に炭素はダイヤモンド、グラファイト(黒鉛)および無定形炭素の形態で安定に存在する。この内とくにグラファイトは黒色不透明であって六方晶形の結晶構造を有し、電気および熱の良導体である。
【0035】
このようなグラファイト(黒鉛)は、天然に存在する。そしてこのような天然のグラファイトを圧延することによってグラファイトシートが得られる。またアクリルニトリルを用いたアクリル樹脂フィルム等の有機合成フィルムを無酸素下で焼成すると、シート状のグラファイトが得られる。シート状のグラファイトは柔軟性および圧縮弾性があり、しかも相手材との馴染みがよいために、ガスケットやパッキンの材料として用いられている。ここではこのようなグラファイトシートの熱伝達特性、すなわち所定の熱の良導体であるという性質を利用して、このグラファイトシートによって熱伝達部材22を構成している。
【0036】
熱伝達部材22として用いるカーボングラファイトシートとしては、天然黒鉛から成るグラファイトシートを用いるのが好適である。その主な理由は、コスト上の理由による。すなわち天然のグラファイトを用いたグラファイトシートは、極めて安価に製造できる特徴を有している。このような安価なグラファイトシートは、天然鱗状黒鉛等の原料を浮遊選鉱し、さらに薬品処理を行なった後に濃硫酸と酸化剤との混酸によって熱処理を行なう。そしてこの後に膨潤化処理を行なう。膨潤化処理は、炉内においてバーナで高温急加熱を行なうことにより達成される。そしてこの後にロール圧延を行なって成形する。これによってシート状のグラファイトシートが得られる。
【0037】
このような天然のカーボングラファイトから成る熱伝達部材22は、図2および図3に示すようにスリーブ状であって、中心部に軸線方向に貫通する挿通孔23を備えた形状として成形される。ここで上記熱伝達部材22の挿通孔23の内径は、円柱状のシーズヒータ17の外径と等しくなっており、またこの熱伝達部材22の外径は、上記金属筒体10の中心孔の内径と等しくなっている。従って、熱伝達部材22が金属筒体10の内部に組込まれると、シーズヒータ17と熱伝達部材22との間の隙間がなくなり、熱伝達部材22と金属筒体10との間の隙間がなくなる。
【0038】
このような熱伝達部材22は、図4に示すように製作される。すなわちここでは、下型27の中心部に芯棒28が組合わされるとともに、外周側に外型29が配された加圧型が用いられる。そして上記芯棒28の外周部であって外型29の中心部の貫通孔32内に高さ方向に摺動可能に円筒状のスライド型30が取付けられる。
【0039】
上記芯棒28の外周面上に予め天然黒鉛を圧延して成形されたカーボングラファイトシート31を所定のターン数巻装しておく(図4A参照)。そしてこの状態で、上方から下方に向けて図4Bに示すようにスライド型30を下降させて衝撃力を加え、これによって芯棒28の外周部に巻装されているカーボングラファイトシート31を圧縮成形する。すなわちここでは、常温でカーボングラファイトシート31を圧縮成形し、これによって図2および図3に示すようなスリーブ形状の熱伝達部材22を得るようにしている。ここで芯棒28の外径を上記シーズヒータ17の外径と等しくし、外型29の貫通孔32の内径を上記金属筒体10の中心孔の内径と等しくしておくことによって、金属筒体10内に隙間を生じない状態で組込むことが可能な熱伝達部材22が得られる。
【0040】
このようなロールを加熱する場合には、図1に示す一対のリード線19を通してシーズヒータ17に通電し、これによってシーズヒータ17を発熱させる。発熱したシーズヒータ17の熱は、熱伝達部材22を介して金属筒体10に伝達される。そして金属筒体10からさらに外周側のロール層11に熱の伝達が行なわれる。ここで熱伝達部材22が金属筒体10の中心孔とシーズヒータ17の外周面との間の空間を埋めるように配されているために、極めて良好な立上り特性を有することになる。しかも熱伝達部材22がとくにこのロールの軸線方向に安定的に熱の伝達を行なうために、より均一な温度で加熱ロールの外周面の温度を上げることが可能になる。
【0041】
すなわち図6に示すように、従来に比べて軸線方向の温度分布がほぼ平坦であって極めて均一になり、温度が安定化する利点がある。またシーズヒータ17からの熱が金属筒体10の中心孔の内周面で反射して再びシーズヒータ17に輻射されることがなく、これによってシーズヒータ17の損傷劣化が防止され、シーズヒータ17の長寿命化が図られるようになり、故障が少なく、信頼性の高い加熱ロールが得られる。なおシーズヒータ17に通電する電流量や時間を制御することによって、外周面のロール層11の温度を任意の温度とすることができ、例えば100〜500℃程度の範囲内の温度にすることができる。ここでロール層11は、低温の場合にはゴムから構成され、高温の場合にはセラミック溶射層が用いられる。またこのようなロールは、使用する目的に応じて、各種の寸法のものを製作することができ、細いものは直径が50mmから太いものは600mmまで各種の寸法のロールを製作することができる。
【0042】
次に変形例の構成を図5によって説明する。上記図2および図3に示す構成は、熱伝達部材22がその中心部に軸線方向に貫通する挿通孔23を有し、この挿通孔23の部分にシーズヒータ17を挿入するようにしている。このような構成に代えて、図5Aに示すように、熱伝達部材22の内部に、軸線方向に例えば3本の挿通孔35を形成し、これらの挿通孔35にそれぞれシーズヒータ17を配してよい。あるいはまた図5Bに示すように、熱伝達部材22内に円周方向に沿って60度間隔で6本の挿通孔35を形成し、これらの挿通孔35内にそれぞれシーズヒータ17を挿入してよい。なおこの場合において、上記挿通孔35の内径をシーズヒータ17の外径と一致させることにより、シーズヒータ17と熱伝達部材22の挿通孔35の内周面との間の隙間をなくすことができる。
【0043】
次に別の変形例の加熱ユニットを図7および図8によって説明する。この加熱ユニット22は、カーボングラファイト製の角紐50を用いて熱伝達部材22を構成したものである。すなわち一般に芯材にカーボングラファイトの粉末を含浸させて圧縮成形した柔軟な角紐50がガスケット材料として広く利用されている。そこでこのような角紐50を発熱部材として利用するようにしたものである。すなわち角紐50は、図7Aに示すように、断面がほぼ正方形あるいは長方形の紐状をなしている。このような角紐50を、丸棒状のヒータ17の外周部に図7Bに示すように密着して螺旋状に巻装する。図8は完全に角紐50を螺旋状に密着して巻付けた加熱ユニットの縦断面を示しており、角紐50が互いに密着するようにしかもシーズヒータ17の外周面上に密着して巻付けられて熱伝達部材22が形成される。従ってこのような構成によっても、上記実施の形態と同様の加熱ユニットを製作することができる。
【0044】
次に別の実施の形態を図9および図10によって説明する。この実施の形態は、本願発明を加熱装置に応用したものである。すなわちここでは、例えばキッチンユニット等に組込まれる電熱ヒータから成る加熱装置に関するものである。この加熱ヒータは、図9に示すように、ほぼ矩形の放熱板40を備えている。放熱板40は、鉄、アルミニウム等の金属板あるいはセラミック板から構成される。この放熱板40の表面それ自体が熱の放熱面を構成している。そしてこのような放熱板40の下面には、とくに図10および図11に示すように、矩形断面のカーボングラファイト製の熱伝達部材22が配される。
【0045】
このような熱伝達部材22は、各列にそれぞれ複数個、例えば5個が直線状に配されるとともに、これらの直線状の熱伝達部材22が5列に横に並べられる。なおここでも、熱伝達部材22は、例えばシート状をなすカーボングラファイトシートを圧縮成形して成形されたものであってよい。そしこのような熱伝達部材22の上面が上記放熱板40と接するようにこの放熱板40と組合わされる。そして熱伝達部材22には、その中心部に軸線方向に貫通するように挿通孔が形成され、これらの挿通孔にそれぞれシーズヒータ17が挿入される。ここで、シーズヒータ17の外径と上記熱伝達部材22の軸線方向に延びる挿通孔の内径とが同じ値になっているために、シーズヒータ17の外周面と熱伝達部材22の挿通孔の内周面との間には隙間が存在しない。なお図10Bに示す構成は、シーズヒータ17を挿入した熱伝達部材22の側面が互いに接触するようになっているが、隣接する熱伝達部材22は必ずしも互いに接する必要はなく、適宜間隙をあけて配列してもよい。
【0046】
従って、シーズヒータ17に通電を行なうと、このシーズヒータ17で発生した熱が、熱伝達部材22を介して放熱板40に迅速に伝達される。熱伝達部材22は上述の如くカーボングラファイトシートを圧縮成形したものであって、優れた熱伝導性を有しており、しかも放熱板40のほぼ全面であってその下面に熱伝達部材22が取付けられているために、放熱板40は迅速に昇温加熱されることになる。
【0047】
従ってこのような加熱装置は、熱伝達部材22によって放熱板40の温度の立上り特性に優れるとともに、熱伝達部材22の熱伝導性によって放熱板40の全面にわたって温度ムラのないほぼ均一な温度に加熱することが可能になる。しかもシーズヒータ17で発生した熱が、熱伝達部材22によって速やかに伝達されるとともに、熱の輻射によるシーズヒータ17への戻りがなくなるために、シーズヒータ17のそれ自身の熱による損傷劣化が回避され、シーズヒータ17の長寿命化が図られる。
【0048】
次に別の実施の形態を図11および図12によって説明する。この実施の形態は、カーボングラファイト製の熱伝達部材22の断面形状を正三角形あるいは二等辺三角形の形状にしたものである。そしてこのような熱伝達部材22の三角の一面が放熱板40の下面に面接触するようにし、これによって各列5個ずつの熱伝達部材22が互いに平行に放熱板40の下面に5列に取付けられることになる。
【0049】
このような構成の加熱装置においても、カーボングラファイト製の上記熱伝達部材22によって温度の立上り特性が改善され、さらにこの熱伝達部材22の優れた熱伝導性によって放熱板40の全面にわたる安定な温度分布を達成することができる。また熱伝達部材22によって、シーズヒータ17からの熱のシーズヒータ17への輻射による戻りが防止されるために、シーズヒータ17の長寿命化が図られることになる。
【0050】
次にさらに別の実施の形態を図13および図14によって説明する。この実施の形態は、三角形の熱伝達部材22と放熱板40とを組合わせてブロック状のヒータとしたものである。すなわち図13および図14に示すように、断面が正三角形の熱伝達部材22を各列について向きを交互に変えて7段に組合わせるとともに、これらを2列に配し、これによってブロック状のヒータを構成している。ここで上下の隙間の部分を埋めるように、上部と下部とにはそれぞれ2つずつの直角三角形の熱伝達部材45を充填配置するようにしている。そして四囲を放熱板40によって覆うようしている。ここで、上記放熱板40の内側に配される熱伝達部材22の中心部に軸線方向に延びるように形成されている挿通孔にはそれぞれシーズヒータ17が挿入される。
【0051】
従ってこのような構成によると、それぞれのシーズヒータ17に通電を行なうと、これらのシーズヒータ17が発熱するとともに、その熱が熱伝達部材22を介して周囲に伝達されるようになり、とくに四囲を囲むように配されている放熱板40を介して外部に熱が放散される。従ってこれによって、周囲に熱を放散することが可能なブロック状の加熱装置が得られる。ここでも、上記カーボングラファイト製の熱伝達部材22、45によってシーズヒータ17からの熱を迅速にしかもムラなく周囲の放熱板40に伝達することができるとともに、シーズヒータ17からの熱が輻射によってシーズヒータ17自身に戻ることがなく、これによってシーズヒータ17の長寿命化と信頼性とを得ることが可能になる。なおこのような加熱装置は、例えばサウナバスや暖炉の加熱ヒータとして利用することができる。
【0052】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態における加熱ロールの具体的な形状や寸法等については、各種の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願発明は、外周側を所定の温度に昇温加熱するようにした加熱ロールや、炊事用の加熱ヒータ、あるいはブロック状ヒータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 金属筒体
11 ロール層
12 フランジ
13 支軸
14 ビス
17 シーズヒータ
18 断熱ストッパ
19 リード線
22 熱伝達部材
23 挿通孔
27 下型
28 芯棒
29 外型
30 スライド型
31 カーボングラファイトシート
32 貫通孔
35 挿通孔
40 放熱板
45 熱伝達部材
50 角紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるととともに、該挿通孔にヒータが挿入され、熱伝達部材と前記ヒータとの間に隙間が存在しないことを特徴とする加熱ユニット。
【請求項2】
前記熱伝達部材が天然黒鉛から圧延して製作されたカーボングラファイトシートを圧縮成形したものであることを特徴とする請求項1に記載の加熱ユニット。
【請求項3】
前記カーボングラファイトの熱伝達部材の中心部に軸線方向に貫通して挿通孔が形成され、該挿通孔に前記ヒータが挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱ユニット。
【請求項4】
カーボングラファイト製の角紐を密着した状態で丸棒状のヒータの周囲に螺旋状に巻装したことを特徴とする加熱ユニット。
【請求項5】
中空の筒体から成り、該筒体の外周面上にロール層を形成し、前記筒体の内部に軸線方向に延びる発熱体を配した加熱ロールにおいて、
前記筒体の内部に加熱ユニットが配され、該加熱ユニットは、天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるとともに、該挿通孔に前記発熱体を構成するヒータが挿入され、前記熱伝達部材と前記ヒータとの間に隙間が存在せず、しかも前記加熱ユニットと前記筒体の内周面との間に隙間が存在しないことを特徴とする加熱ロール。
【請求項6】
前記カーボングラファイトの熱伝達部材が天然黒鉛から圧延して製作されたカーボングラファイトシートを圧縮成形したものであって、前記カーボングラファイトの熱伝達部材の中心部に軸線方向に貫通して挿通孔が形成され、該挿通孔内に前記ヒータが挿入されていることを特徴とする請求項5に記載の加熱ロール。
【請求項7】
前記発熱体が断面円形のシーズヒータから構成され、該シーズヒータの外径が前記カーボングラファイトの熱伝達部材の中心部に貫通して形成された断面円形の挿通孔の内径と等しく、前記シーズヒータの外周面と前記カーボングラファイトの熱伝達部材の挿通孔の内周面との間に半径方向に隙間が存在しないことを特徴とする請求項5に記載の加熱ロール。
【請求項8】
前記カーボングラファイトの熱伝達部材には、軸線方向に貫通して複数の挿通孔が形成され、それらの挿通孔にそれぞれヒータが挿入されていることを特徴とする請求項5に記載の加熱ロール。
【請求項9】
前記中空の筒体の外周面上に形成されるロール層がゴムから成ることを特徴とする請求項5に記載の加熱ロール。
【請求項10】
前記中空の筒体の外周面上に形成されるロール層がセラミックから成ることを特徴とする請求項5に記載の加熱ロール。
【請求項11】
放熱板によって内側に配された発熱体からの熱を放熱するようにした加熱装置において、
前記放熱板の内側に加熱ユニットが配され、該加熱ユニットは、天然黒鉛を圧縮成形したカーボングラファイトの熱伝達部材に挿通孔が形成されるとともに、該挿通孔に前記発熱体を構成するヒータが挿入され、前記熱伝達部材と前記ヒータとの間に隙間が存在せず、
前記熱伝達部材の外表面と接するように前記放熱板が取付けられることを特徴とする加熱装置。
【請求項12】
前記カーボングラファイトの熱伝達部材が断面矩形の棒状であって、軸線方向に貫通して挿通孔が形成され、該挿通孔に前記ヒータが挿入されるとともに、前記熱伝達部材の外周側の一面と接するように前記放熱板が取付けられることを特徴とする請求項11に記載の加熱装置。
【請求項13】
前記カーボングラファイトの熱伝達部材が断面三角形の棒状であって、軸線方向に貫通して挿通孔が形成され、該挿通孔に前記ヒータが挿入されるとともに、前記熱伝達部材の外周側の一面と接するように前記放熱板が取付けられることを特徴とする請求項11に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−272283(P2010−272283A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121784(P2009−121784)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000206174)大成ラミネーター株式会社 (32)
【Fターム(参考)】