説明

加熱型X線観察装置

【課題】 加熱炉内に収容されている電子部品などのワークに最も近接した位置でX線照射を行うことで、実際の加熱条件下におけるワークの挙動をリアルタイム且つ詳細に観察することのできる加熱型X線観察装置を提供することである。
【解決手段】 ハンダ付けの対象物であるワーク20を収容して加熱処理を施す加熱炉12と、前記ワーク20にX線を照射してハンダ付けの状態を検査するX線検査ユニット13とを備えた加熱型X線観察装置において、前記X線検査ユニット13は、加熱処理中の加熱炉12内に突出し、先端部のX線ターゲット部40が前記ワーク20の検査部位に近接した位置でX線を照射するX線照射管30を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー処理中のプリント基板及びこのプリント基板上に実装される電子部品の状態をX線透過によって観察する加熱型X線観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成されたプリント基板上にハンダを介して各種の電子部品、例えば、表面実装型の半導体素子やコネクタ類などを複数一括して実装するためにリフロー処理が行われる。このリフロー処理を行うためのリフロー装置は、ハンダ付が施される電子部品が配置されたプリント基板などの対象物(ワーク)を収容する加熱炉と、この加熱炉内及び前記ワークの温度等を測定するための観察及び測定手段と、この測定手段に基づいて温度制御を行う制御手段とを備える。
【0003】
前記加熱炉内やワークの加熱温度等は、加熱炉内に設置され、あるいは、ワークと共に投入される温度計測部材などを介して外部に数値データとして出力される。一方、加熱に伴うプリント基板の反りや変形、あるいは電子部品のプリント基板に対するハンダの溶融状態や接合状態などの挙動は、前記加熱炉の一部に設けられるのぞき窓から目視やカメラによって観察するようになっているものが多い(特許文献1参照)。
【0004】
通常のリフロー処理を行わせるためには、前記加熱炉内の温度が常温〜300℃程度の高温状態が維持される。このような高温環境下においては、前記ワークに大きなストレスがかかることとなる。このため、前記ワークの加熱中の状態を目視やカメラ等を用いた観察によって、加熱温度や加熱時間を制御及び管理することで、ワークの変形やハンダによる接合不良の防止が図られることになる。また、環境問題の観点から、前記ハンダが鉛を含まない非鉛系のハンダ合金(鉛フリーハンダ)に置き換えられようとしている。このような鉛フリーハンダは、従来一般的に使用されてきた鉛系のハンダ合金に比べて融点が20〜30℃程度と高いものとなるため、この鉛フリーハンダに対応させるためには、前記ワークをさらに詳細に観察する必要性が増している。
【0005】
また、近年の微細加工技術の進展によって、IC、LSIなどの電子デバイスもさらに微細化されているが、このような電子デバイスにおけるリフロー処理中における熱的内部挙動は、前述したような観察方法では十分に把握することが困難となっている。このような問題を解決するために、X線を用いてリフロー処理中のワークを詳細に観察する装置が提案されている(特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開平10−51127号公報
【特許文献2】特開2005−274194号公報
【特許文献3】特開2005−353712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に示したX線観察装置では、ワークである電子部品を取り囲む第1の熱源と、前記電子部品の一部をスポット的に暖める第2の熱源とを備え、前記第1及び第2の熱源によって暖められた電子部品にX線を透過して観察するようになっている。しかしながら、前記第1及び第2の熱源による加熱状態は、実際のリフロー炉(加熱炉)内における熱風の対流を伴った加熱状態とは異なる。このため、所定の温度に達した際における電子部品の内部挙動は観察することはできるが、加熱炉内における熱風の対流の変化に伴う温度の伝わり方に対応して変化する電子部品の内部挙動をリアルタイムに観察することは困難である。
【0007】
一方、特許文献3に示したX線による観察装置は、実際の加熱炉内に収容した電子部品などのワークを加熱し、このときの状態をX線によって観察するため、前記ワークを実際の加熱条件の下で観察できるが、X線をワークに向けて照射するためのX線照射管が加熱炉の外部に設けられている。このため、前記ワークに対するX線の照射距離が長くなり、有効な観察倍率を得ることが難しくなるとともに、観察部位に正確に焦点を合わせることが容易でない。特に、ICやLSIなどは微細加工が進んでいるため、より有効な観察倍率及び正確な焦点調整の可能な観察手段が望まれている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、加熱炉内に収容されている電子部品などのワークに最も近接した位置でX線照射を行うことで、実際の加熱条件下におけるワークの挙動をリアルタイム且つ詳細に観察することのできる加熱型X線観察装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の加熱型X線観察装置は、ハンダ付けの対象物を収容して加熱処理を施す加熱炉と、前記対象物にX線を照射してハンダ付けの状態を検査するX線検査ユニットとを備えた加熱型X線観察装置において、前記X線検査ユニットは、加熱処理中の加熱炉内に突出し、先端部が前記対象物の検査部位に近接した位置でX線を照射するX線照射管を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る加熱型X線観察装置によれば、X線照射管の先端部を加熱中の加熱炉の内部に突出させて、対象物の検査部位に最も近接させた状態でX線を照射することができるので、X線透過による前記検査部位の観察倍率をより向上させることが可能となった。これによって、LSIなどの高集積化及び微細加工に対応した配線パターン及び電子部品が実装された基板からなるワークの細部を忠実且つ鮮明に観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る加熱型X線観察装置の実施形態を詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の加熱型X線観察装置10の全体構成を示したものであり、図1は正面方向、図2は側面方向から見たときの内部の構成を示したものである。この加熱型X線観察装置10では、図3に示すようなプリント基板21及びこのプリント基板21上にクリーム状に印刷されたハンダ22を介して配置される電子素子やコネクタなどの各種の電子部品23からなるワーク20を主な検査の対象物としている。ワーク20の一例としては、厚みが1〜2mmのエポキシ樹脂やベークライトなどの絶縁板からなり、表面に30〜40μm程度の厚みの銅箔による配線パターンが形成されたプリント基板21であり、ハンダ22に関しては、従来のスズ-鉛を用いた共晶ハンダの他に、鉛を含まないスズ-銀-銅を用いた鉛フリーハンダなどの使用も可能である。また、前記プリント基板21上にハンダ22を介してリフロー実装される電子部品23は、微細加工及び多ピンのLSIにも対応可能となっている。
【0012】
図1及び図2に示したように、前記加熱型X線観察装置10は、ワーク20を収容して加熱処理を施す加熱炉12と、この加熱炉12を挟んで上下方向に配設されるX線検査ユニット13を中心に備え、その周囲を密閉する筐体11内に収容されている。この筐体11内には、前記加熱炉12及びX線検査ユニット13を駆動制御するための電源装置25、制御装置26や観察用のカメラ24などが配設されている。また、前記筐体11の外部には、図示しない電源部、制御盤、圧縮エアー用の配管などが備えられている。
【0013】
前記筐体11は、X線の漏出を防止するため、金属パネルで四方が密閉された箱型に形成され、内部には台座部(XYテーブル)17によって上下方向に大きく仕切られた下側収容スペース11a及び上側収容スペース11bが設けられる。前記下側収容スペース11aにはX線検査ユニット13の構成要素の一つであるX線発生器31が配置され、上側収容スペース11bには加熱炉12及び前記X線発生器31と対向するX線検出器32が配置される。また、この筐体11には、金属パネルの一部に前記上側収容スペース11b内を覗くための透過ガラス14aがはめ込まれた観察窓14が設けられている。この観察窓14は前記加熱炉12が配置を基準として上下動スライド可能に取り付けられている。
【0014】
前記加熱炉12は、図4に示すように、前記ワーク20を収容して加熱処理を行う炉本体部15と、この炉本体部15の左右両側に設けられる熱風供給部16と、前記炉本体部15の底部に開放部を有して前記XYテーブル17上を移動可能とする可動テーブル18とを備えている。また、前記X線照射管30は、図1、図2及び図4に示されるように、XYテーブル17の略中央部に開設されている孔部19を通して配置される。なお、前記筐体11には、熱風供給部16に備わるヒータ部の温度調整を行うための温度調整ユニットや加熱型X線観察装置10全体の制御や状態を表示するための制御表示パネルなどが設けられる。
【0015】
前記X線検査ユニット13は、X線発生器31と、このX線発生器31から照射されるX線を加熱炉12内のワーク20を介して透過させて検出するためのX線検出器32とを備えて構成されている。前記X線検出器32には、前記ワーク20を透過したX線を検出するX線検出面33を備えており、このX線検出面33と前記X線発生器31に備わるX線照射管30及びワーク20との位置関係に基づいて決定される拡大倍率で、前記ワーク20の検査部位を拡大表示するようになっている。
【0016】
図5に示すように、前記X線発生器31は、エネルギービーム(電子線)34を発生するカソード35と、このカソード35によって発生させた電子線34を加速するアノード36と、このアノード36によって加速された電子線34を集束させるコンデンサレンズ37と、このコンデンサレンズ37に対向して設けられる対物レンズ38と、この対物レンズ38によって集束された電子線34が照射されてX線39を発生させるX線ターゲット部40とを備える。
【0017】
前記X線ターゲット部40は、図6に示すように、内部に中空部42を有する細長いステンレス管41の先端部に溶接固定される。このX線ターゲット部40は、ベリリウムからなる円盤状のターゲット基板43と、このターゲット基板43の表面に接合され、電子線34が照射されることによりX線39を発生するタングステンからなるターゲット膜44とで構成される。
【0018】
前記ターゲット基板43は、ステンレス管41の先端部に設けられた溝部に嵌め込まれ、低温溶接によって固定することで前記中空部42が真空状態に保持されるようになっている。
【0019】
図6に示したように、ターゲット膜44に対して、集束された電子線34が照射されることにより、焦点位置に対応する点状のX線源46から所定の広がり角度を有してX線39が発生する。X線発生器31における電子線34の通路である中空部42は密閉され、真空ポンプ(図示せず)などで真空状態に保たれている。X線39の広がり角度は、特に限定されないが、たとえば45度〜150度の範囲内で、好ましくは100度〜140度程度が適正である。
【0020】
図1及び図2に示したように、前記X線発生器31と対向して設けられるX線検出器32は、加熱炉12の上方に上下移動可能に配置される。このX線検出器32は、前記X線照射管30と対向する位置にX線検出面33を備え、このX線検出面33が加熱炉12の上方において、前記X線照射管30との距離を短くしたり、長くしたりするための昇降機構部48が筐体11の天板部47に備えられている。前記昇降機構部48には、回転軸49が設けられ、この回転軸49によって前記X線検出器32を加熱炉12の上面に近接した位置から天板部47の近くまで離間した位置までの間で移動可能となっている。このように、X線検出器32を上下方向に移動可能とすることで、前記X線照射管30から照射されるX線による透過倍率を可変させることができる。
【0021】
前記加熱炉12は、図4に示したように、上面部51、前方側面(正面部)52、下面部53、背面部54及び左右方向に面した一対の側壁部55,56とで構成された加熱空間57を有しており、図3に示したようなA4サイズ版までのプリント基板21からなるワーク20がワーク支持部58を介して略中央部に浮かせた状態で配置される。このワーク支持部58は、前記ワーク20の左右の縁部を載せ置く略L字状の一対のガイドレール59と、このガイドレール59を加熱空間57の中間位置の高さで支持すると共に、互いに離間及び近接可能となるようにスライド可能に配置される一対の支持脚60とを有して構成されている。前記支持脚60をスライドさせることによって、B5やA5サイズ等のA4サイズ以下のワークにも対応させることができる。このスライド移動は、加熱炉12の前面側に備わるダイヤルつまみ61によって操作される。なお、前記支持脚60のスライド移動は、左右方向の移動量が対称となるように構成されているため、B5やA5などのサイズのワークに対しても加熱空間57内の略中心部に位置するようになっている。
【0022】
図7に示すように、前記X線照射管30は、X線ターゲット部40が炉本体部15内に載置されているワーク20の下面に近接するような高さとなるようにX線発生器31の先端部から延びている。このX線照射管30は、前記加熱炉12内における熱風の対流を乱さないように可能な限り細くして形成するのが望ましいが、実際に製造可能なX線ターゲット部40の直径は5〜10mm程度となる。また、X線照射管30は、X線発生器31を上下駆動することによって、前記ワーク20が載置されている位置に応じて突出する高さの調整が可能となっており、ワーク20の所定の検査部位にX線ターゲット部40を接触した状態でX線を照射して観察する。このように、前記X線ターゲット部40を検査部位に接触させた状態でX線を照射できるため、前記検査部位のX線透過像をX線検出器32によって高倍率で検出することができ、検査精度を飛躍的に向上させることが可能となる。なお、前記ワーク20を移動させて別の検査部位に前記X線ターゲット部40によるX線照射位置を合わせる際には、ワーク20に接触しないようにX線照射管30の突出量が低く調整される。
【0023】
また、前記X線照射管30は、X線発生器31と独立した構成になっているため、高さの異なるX線照射管を複数用意しておき、前記加熱炉12内に支持されるワーク20の高さ位置に合わせて適宜交換することもできる。このX線照射管30は、XYテーブル17に開設されている孔部19を通して固定され、加熱炉12がXYテーブル17上を滑るように移動させることで、ワーク20の任意の検査部位にX線ターゲット部40の照準を合わせるようになっている。
【0024】
図8は、前記XYテーブル17の構造を示したものである。このXYテーブル17上には前方側面及び後方側面に対向して延びる一対のX軸レール62と、このX軸レール62の間に架け渡される一対のY軸レール63が設けられている。前記X軸レール62はXYテーブル17上に固定されており、Y軸レール63は、それぞれの両端がX軸レール62上をスライド可能となるように取り付けられている。前記加熱炉12の底部を支える可動テーブル18は、一対のY軸レール63上をスライド移動可能となるように取り付けられる。前記加熱炉12は、Y軸レール63上をスライドすることによって、Y軸方向の移動が可能となり、さらに、前記Y軸レール63をX軸レール62に沿ってスライドすることによって、X軸方向の移動が可能となる。したがって、前記Y軸レール63上の可動テーブル18の移動と、X軸レール62上のY軸レール63の移動とによって、前記加熱炉12をXYテーブル17上の任意の位置に移動させることができる。
【0025】
前記加熱炉12の移動範囲は、図9に示すように、前記XYテーブル17の略中央部に突出して固定されているX線照射管30のX線ターゲット部40が炉本体部15の底部のX線照射用開口部64を全て走査可能な範囲となるように設定される。このX線照射用開口部64は、前記X線照射管30が突出可能な検査エリアであり、本実施形態では、A4サイズ(300x210mm)までのワーク20をX線検査可能とするため、前記X線照射用開口部64のサイズを355x255mmに設定した。
【0026】
前記ワーク20は、リフロー処理が可能な温度に加熱された環境下において、目視では確認できないような微小な検査部位をX線検査ユニット13によって、仔細に観察することが可能である。また、前記加熱炉12には、図4に示したように、上面部51、正面部52にそれぞれ窓部71a,71bが設けられているので、筐体11の正面に設けられている観察窓14(図1参照)を通して外部から加熱中のワーク20の状態を目視によっても観察することができる。なお、前記加熱炉12の下面部53にも窓部を設けることで、ワーク20の下面側からも観察することが可能である。
【0027】
次に、前記ワーク20を収容してリフロー処理を行う加熱炉12の構造を図7に基づいて詳細に説明する。この加熱炉12は、熱風による対流を発生することによって、ワーク20全体をムラなく均等に加熱するための構造を備えている。炉本体部15内の加熱空間57は、熱風の対流を考慮して、図4に示した前記ワーク支持部58を介して載置されるワーク20の上面側及び下面側に約40mm程度の空間スペースが確保される。前記炉本体部15の側壁部55,56及び背面部54は、耐熱性の金属面で構成され、上面部51、正面部52及び下面部53には、加熱空間57の状態が視認可能な透過性を有した窓部71a,71bがそれぞれ設けられている。この窓部71a,71bは、耐熱性を有する合成石英ガラスの二重構造となっており、前記ワーク20の表裏の両平面及び正面側の側面が全て見渡せる広さに形成されている。このような窓部71a,71bを設けることで、加熱中の前記ワーク20の表面側及び裏面側に配置されている電子部品23の実装状態やプリント基板21の反りや変形などを三方向から観察することができる。なお、前記窓部71aが設けられている炉本体部15の上面部は、ワーク20を出し入れさせるため、スライド開閉可能となっている。
【0028】
前記加熱炉12内の側壁部55,56には、図4に示したように、前記ワーク支持部58に支持されるワーク20の表面及び裏面に熱風を吹き付けるための噴出部72,73と、吹き付けた後の熱風を外部に排出する排出部74が設けられる。前記噴出部72,73は、図7に示すように、前記側壁部55,56の上辺部と下辺部に沿って設けられ、排出部74は前記上辺部及び下辺部に設けられている各噴出部72,73の中間部に設けられる。この排出部74は、前記ワーク支持部58に支持されているワーク20の高さと略同じ高さ位置に設定されている。また、前記噴出部72,73及び排出部74は、側壁部55,56を丸孔状に貫通して形成され、一列に等間隔ごとに配列されているが、前記排出部74の方が噴出部72,73よりも密に形成されるのが望ましい。前記噴出部72,73から噴出される熱風は、ワーク20の表面及び裏面のそれぞれの端部から中心部に向かって対流させた後、左右の側壁部55,56に設けられている排出部74から加熱炉12の外部に自然排出されることによって、加熱空間57内を一定の流量で循環するようになっている。
【0029】
前記炉本体部15の左右側に設けられているそれぞれの熱風供給部16には、前記排出部74を挟んだ上段と下段に加熱室75及び加圧室76が設けられている。加熱室75には、前記噴出部72,73に通じる空気の攪拌路77と、この各攪拌路77に対して熱した空気を供給するヒータ部78とを備える。このヒータ部78は、前記側壁部55,56の長手方向に沿って延びる複数の細長い発熱管と、この発熱管を所定の温度に設定調整するためのコントローラ(図示せず)とを備える。また、加圧室76では、前記加熱室75を通して炉本体部15内に熱風を噴出させるための圧縮空気が生成される。前記各加圧室76に通じる空気の配管(図示せず)には、バルブ及びエアフローコントローラ(図示せず)が取り付けられ、加圧室76に送り込まれる空気の流量が適宜調整される。本実施形態の加熱炉12にあっては、炉本体部15を挟んで配設される4基の加圧室76のそれぞれに対応して設けられるエアフローコントローラによって、空気の流量を制御する。これによって、炉本体部15内の4箇所の噴出部72,73からの熱風の噴出量を均一にし、ワーク20をムラなく均等に加熱させることができる(図7参照)。
【0030】
次に、上記加熱型X線観察装置10による実際の操作について説明する。最初に筐体11の観察窓14を開いた後、加熱炉12の上面部51をスライド開放(図4)し、各種の電子部品やコネクタ類が配置されたプリント基板21からなるワーク20をワーク支持部58の上に載置する。このワーク20の配置高さは、加熱空間57の略中間に位置するように設定されている。前記ワーク20を所定位置にセットした後、上面部51を前方側にスライド移動させて炉本体部15内を密閉する。この密閉は加熱炉内を加熱する際に熱が外部に漏れないようにするためのものであり、加熱中の内部も通常の大気圧状態に置かれる。最後に前記観察窓14を閉じて筐体11内部を完全に密閉する。
【0031】
前記ワーク20のセット作業が完了した後、筐体11内に備わる温度調整ユニット(図示せず)によって加熱炉12内の温度設定を行う。この温度は、鉛フリー実装を行う場合、最大300℃までの間で行われ、1℃刻みで設定される。ここで設定された温度は、炉本体部15内に備わる温度センサ(図示せず)で感知され、設定された温度を維持するように自動制御される。
【0032】
図10は、上記操作によって、加熱炉12内に流れる熱風の循環状態を断面図に示したものである。ここに示すように、前記各噴出部72,73からは、ワーク20の中心部に向かって熱風が排出される。この熱風は、前記ワーク20の中心部に到達した後、このワーク20と略同じ高さ位置に設けられた排出部74から自然排気されることで炉本体部15内を対流する。本実施形態では、前記噴出部72,73が前記ワーク20を中心とした左右側面の上辺部及び下辺部の計4箇所に設けられているため、ワーク20の上面及び下面を所定の温度に熱せられた熱風によって、ムラなく加熱することができる。
【0033】
前記熱風によって加熱中のワーク20をX線検査する際には、その検査する箇所にXYテーブル17から突出するX線照射管30のX線ターゲット部40を近接させ、このX線ターゲット部40を通してX線を照射する。前記ワーク20の検査部位へのX線照射は、図8及び図9に示したように、可動テーブル18を介して載置されている加熱炉12を前記XYテーブル17上で平面方向にスライド移動させながら行われ、その際に、X線照射管30のX線ターゲット部40をワーク20の任意の検査部位に近接させる。前記ワーク20の下面側から照射したX線は、炉本体部15の上側の窓部71aを通し、この窓部71aの上方に配置されているX線検出器32によって検出され、そのときの透過画像を外部に設置してあるモニタ等(図示せず)に映し出す。また、前記X線照射管30を中心として移動するワーク20の状態は、筐体11内に設置されているカメラ24によって観察することもできる(図1及び図2参照)。
【0034】
前記カメラ24は、加熱炉12の外側で前記X線照射管30を中心とした回転半径内に設置される。このカメラ24は、静止画像あるいは動画像の撮影が可能なCCDからなる撮像素子、レンズ部、自動あるいは手動式の焦点調節部とを備えている。前記レンズ部は、図3に示したようなワーク20全体から電子部品23の一つ一つまでを撮影可能となるように、標準で8〜64倍、高倍率で32〜256倍の性能を有するものが好ましい。カメラ24によって、ワーク20の検査部位を任意の角度及び倍率によって撮影され、外部に備わるモニタ等に映し出すことができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の加熱型X線観察装置では、X線照射管30のX線ターゲット部40を加熱中の炉本体部15の内部に挿入し、ワーク20の検査部位に最も近接させた状態でX線を照射することができるので、X線透過による観察倍率をより向上させることが可能となった。特に、X線ターゲット部40を含むX線照射管30が非常に細く形成されているため、本実施形態のような熱風によってワークを加熱するようなタイプの加熱炉内に挿入した場合であっても、前記熱風の対流を乱したり、妨げたりするようなことがない。このため、リフロー処理に影響を与えることなく、LSIなどの高集積化及び微細加工に対応した電子部品や配線パターンが微細化した基板からなるワークの細部を忠実且つ鮮明に観察することができる。
【0036】
また、前記加熱炉には、加熱中のワークを肉眼で観察可能な窓部やこの窓部の周囲にカメラが移動可能に設置されているため、前記X線透過によるワークの細部とワーク全体の観察も同時に行うことができる。
【0037】
なお、上記実施形態では、X線発生器31及びX線検出器32からなるX線検査ユニット13を固定にしておき、加熱炉12を移動させることによって、ワーク20の任意の検査部位にX線を照射させる構成となっている。これに対して、加熱炉12を固定にしておいて、X線検査ユニット13の方を前記加熱炉12内に載置されているワーク20の任意の検査部位に移動させるような構成にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る加熱型X線観察装置の正面側から見た内部構成図である。
【図2】上記加熱型X線観察装置の側面側から見た内部構成図である。
【図3】ワークの一例を示す斜視図である。
【図4】加熱炉の構造を示す斜視図である。
【図5】X線発生器の構造を示す要部断面図である。
【図6】X線照射管の構造を示す要部断面図である
【図7】加熱炉の内部構造を示す断面図である。
【図8】XYテーブルの構成を示す斜視図である。
【図9】上記XYテーブルの平面図である。
【図10】上記加熱炉内の熱風の対流を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10 加熱型X線観察装置
11 筐体
11a 下側収容スペース
11b 上側収容スペース
12 加熱炉
13 X線検査ユニット
14 観察窓
14a 透過ガラス
15 炉本体部
16 熱風供給部
17 XYテーブル(台座部)
18 可動テーブル
19 孔部
20 ワーク(対象物)
21 プリント基板
22 ハンダ
23 電子部品
24 カメラ
25 電源装置
26 制御装置
30 X線照射管
31 X線発生器
32 X線検出器
33 X線検出面
34 電子線
35 カソード
36 アノード
37 コンデンサレンズ
38 対物レンズ
39 X線
40 X線ターゲット部
41 ステンレス管
42 中空部
43 ターゲット基板
44 ターゲット膜
46 X線源
47 天板部
48 昇降機構部
49 回転軸
51 上面部
52 正面部
53 下面部
54 背面部
55,56 側壁部
57 加熱空間
58 ワーク支持部
59 ガイドレール
60 支持脚
61 ダイヤルつまみ
62 X軸レール
63 Y軸レール
64 X線照射用開口部
71a,71b 窓部
72,73 噴出部
74 排出部
75 加熱室
76 加圧室
77 攪拌路
78 ヒータ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダ付けの対象物を収容して加熱処理を施す加熱炉と、前記対象物にX線を照射してハンダ付けの状態を検査するX線検査ユニットとを備えた加熱型X線観察装置において、
前記X線検査ユニットは、加熱処理中の加熱炉内に突出し、先端部が前記対象物の検査部位に近接した位置でX線を照射するX線照射管を備えていることを特徴とする加熱型X線観察装置。
【請求項2】
前記X線照射管は、前記加熱炉が載置される台座部の略中央部から上方に向けて突出して設けられる請求項1記載の加熱型X線観察装置。
【請求項3】
前記加熱炉は、前記対象物を浮かせた状態で支持するとともに、前記X線照射管を中心として、前記台座部上をX軸方向及びY軸方向にスライド移動可能な密閉した加熱空間を備える請求項1又は2記載の加熱型X線観察装置。
【請求項4】
前記X線照射管は、その先端部が前記加熱炉内に支持されている対象物の任意の検査部位に近接するように上下移動可能に配置される請求項1又は2記載の加熱型X線観察装置。
【請求項5】
前記X線照射管は、ベリリウムで形成されたターゲット基板と、このターゲット基板の表面に設けられ、電子線が照射されることによりX線を発生するタングステンで形成されたターゲット膜とからなるX線ターゲット部を備える請求項1、2、4のいずれかに記載の加熱型X線観察装置。
【請求項6】
前記X線ターゲット部は、内部に中空部が形成された細長いステンレス管の先端部に溶接接合される請求項5記載の加熱型X線観察装置。
【請求項7】
前記加熱炉には、左右方向に前記対象物を挟んで対向する一対の側壁部を有し、それぞれの側壁部の上辺部及び下辺部に加圧室及び加熱室を経た圧縮空気による熱風の噴出部が設けられると共に、前記上辺部と下辺部の中間に前記熱風の排出部が設けられ、熱風を前記対象物の上面側及び下面側の加熱空間内で対流させることによって、対象物の表面を均等に加熱する請求項1記載の加熱型X線観察装置。
【請求項8】
前記加熱炉には、前記対象物を外部から観察するための透過窓部を備える請求項1記載の加熱型X線観察装置。
【請求項9】
前記透過窓部の外周には、この透過窓部を通して前記加熱炉内の対象物を撮影するためのカメラを移動可能に配置した請求項8記載の加熱型X線観察装置。
【請求項10】
前記対象物は、ハンダを介して電子部品が配置されたプリント基板である請求項1記載の加熱型X線観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−123858(P2009−123858A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295178(P2007−295178)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(501411385)株式会社 コアーズ (6)
【Fターム(参考)】