説明

加熱条件設定方法およびそれの応用

【課題】加熱条件の設定を熟練者の経験に依る必要も少なく、また、試行錯誤を繰り返す必要も少なくて済むことを可能にする。
【解決手段】本加熱条件設定方法は、加熱対象物(部品24)それぞれに関する情報から加熱温度と加熱時間とを直交二次元軸とする等温線図のデータを加熱対象物それぞれについてあらかじめ作成し、加熱対象物を加熱するに際してはそれぞれ作成した等温線図を重ね合わせ、重ね合わせた等温線図に基づいて加熱対象物すべてが要求温度プロファイルを満たす加熱条件を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉内で加熱対象物を温度プロファイルに従い加熱するに際して該加熱対象物の加熱条件を設定する方法に係り、さらに、この加熱条件をコンピュータが起動実行するソフトウェアプログラムにして記録している記録媒体、上記加熱条件を決定する決定方法、加熱対象物を加熱する加熱装置、等温線図を表示する表示装置、等温線図の作図を支援する作図支援装置(CAD)ならびにコンピュータにより構成される操作制御装置に関するものである。本発明は、より詳しくは、加熱装置を用いて加熱対象物をその所望の温度プロファイルに沿って加熱するに際しての最適な加熱条件の設定を試行錯誤する必要なく実施可能とすることに関する。
【背景技術】
【0002】
このような加熱装置の中で、例えば、リフロー半田付け装置は、熱輻射、熱風加熱、蒸気加熱、伝熱加熱等の各種の加熱方式に従い、加熱対象物であるプリント基板等の基板上に、クリーム半田等の半田で仮固定された電子部品を、加熱炉内で該クリーム半田を加熱して溶融することにより、接合固定する装置である。
【0003】
このリフロー半田付けの方式には、加熱炉内を、基板をベルトコンベアで順次に搬送させながら加熱するベルトコンベア式や、加熱炉内で複数のプリント基板を一度に加熱するバッチ式がある。
【0004】
このリフロー半田付けを行う温度プロファイルにおいては、一般に、基板やこれに実装している電子部品を急激に加熱して熱損傷するおそれや半田付け不良を回避するなどの理由により、先ず基板を半田の溶融点以下の温度で予備加熱し、次いで、クリーム半田中のフラックス成分を十分機能させるため基板の温度を一定時間保持させるよう均一に加熱し、最後に基板を半田が溶融する温度以上でかつ基板や電子部品の耐熱限界温度を超えない温度の範囲で本加熱するようになっている。
【0005】
このような温度プロファイルでは、溶融点が低い錫鉛半田に代えて環境保護に好ましいが溶融点が高い鉛フリー半田が用いられてきているため、狭い温度範囲で基板の加熱制御を高精度に管理することが要求されるようになっている。
【0006】
しかしながら、基板には、その材質、板厚が種々あり、また多層基板ではその層数、等により、熱容量等が相違し、また、電子部品においても、QFP(Quad Flat Package)や電解コンデンサ等、その部品その種類、サイズ等により、熱容量等が相違するなどにより、基板を高精度に加熱制御することは必ずしも容易ではなく、上記相違を熟知した熟練者の豊富な経験や勘に依らなければ、信頼性の高いリフロー半田付けを行うことが難しいとされている。
【0007】
そこで特許文献1や2においては、その明細書の記載に従うと、このような熟練者の経験に依らずにリフロー半田付けを実施することができる技術を提供しているとしている。しかしながら、これら特許文献1や2に開示されている技術の場合、詳細は略するが、最適な加熱条件の設定が試行錯誤の繰り返しによるために、加熱条件の設定に長時間費やす必要がある。
【特許文献1】特開平4−165694号公報
【特許文献2】特開平11−201647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明により解決すべき課題は、基板等の加熱対象物を温度プロファイルに沿って加熱するに際して最適な加熱条件の設定を熟練者の経験に依る必要も少なく、また、試行錯誤を繰り返す必要も少なくて済むことを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明による加熱条件設定方法は、加熱炉内で加熱対象物を温度プロファイルに従い加熱するに際して該加熱対象物の加熱条件を設定する方法であって、加熱対象物に関する情報から当該加熱対象物の等温線図をあらかじめ作成しておき、複数の加熱対象物を加熱するに際してはそれぞれの加熱対象物について作成した等温線図を重ね合わせ、重ね合わせた等温線図に基づいて加熱対象物のすべてが上記温度プロファイルを満たす加熱条件を設定することを特徴とするものである。
【0010】
加熱対象物に関する情報は、当該加熱対象物の熱容量等に関する情報であれば、特に限定しないが、加熱対象物が例えば基板であれば、基板の種類、サイズや板厚等の形状、基板の層数等の内部構造、材質、基板上に搭載してある部品の間隔を例示することができ、また、加熱対象物が電子部品であれば、基板と同様に、その種類、サイズ等を例示することができる。
【0011】
加熱対象物の態様には、特に限定されないが、リフロー半田付けであれば、部品を搭載した基板を例示することができる。
【0012】
等温線図の作成には、加熱時間を一定にして加熱温度を変化させ、そのときの加熱対象物の温度上昇を測定するか、あるいは、加熱温度を一定にして加熱時間を変化させ、そのときの加熱対象物の温度上昇を測定することにより作成することができる。上記測定は、少なくとも加熱対象物の一ヶ所で行う。また、上記測定は複数の加熱条件で行い、それら測定データの間を一次近似や二次近似で補間することができる。その補間には例えば表計算ソフトウェアを用いることができる。
【0013】
本発明の加熱方法においては、加熱条件の設定に、試行錯誤的な測定の実施や熟練者の豊富な経験を必要としないで済む。
【0014】
(2)上記(1)の一態様として、上記等温線図を、加熱時間を一定にして加熱温度を変化させ、そのときの加熱対象物の温度上昇を測定し、加熱温度と加熱時間とを直交二次元の座標軸とし上記測定値を用いてこの座標図上で加熱対象物の上昇温度を示す等温線を所定の温度間隔で分布表示させて作成することができる。
【0015】
(3)上記(1)の一態様として、上記等温線図を、加熱温度を一定にして加熱時間を変化させ、そのときの加熱対象物の温度上昇を測定し、加熱温度と加熱時間とを直交二次元の座標軸とし上記測定値を用いてこの座標図上で加熱対象物の上昇温度を示す等温線を所定の温度間隔で分布表示させて作成することができる。
【0016】
(4)上記(2)または(3)の一態様として、加熱対象物の温度上昇の測定値と測定値との間のデータを表計算ソフトウェアを用いて補間近似することができる。表計算ソフトウェアは、表やグラフや画像の組み合わせを含む資料ファイルを作成可能なソフトウェアであり、例えばマイクロソフト(登録商標)社の製品であるExcelなどがある。また、Excelで作成した表やグラフを取り込んだ資料ファイルを作成可能な資料作成ソフトウェアとして例えば同社の製品であるパワーポイント(登録商標)などがある。
【0017】
(5)本発明による加熱条件設定方法は、加熱炉内で加熱対象物を温度プロファイルに従い加熱するに際して該加熱対象物の加熱条件を設定する方法であって、加熱対象物に関する情報から作成した該加熱対象物の等温線図と、加熱温度に上下限の温度幅(温度プロファイル領域)を有する温度プロファイルとをデータベース化して蓄積しておき、複数の加熱対象物を加熱するに際しては、上記データベースから加熱対象物それぞれの情報に対応した等温線図を読み込み、読み込んだ等温線図それぞれに対して上記温度プロファイル領域に対応する等温線領域を選定し、この選定した等温線領域それぞれを重ね合わせ、重ね合わせた等温線領域に基づいて複数の加熱対象物すべてが温度プロファイルを満たす加熱条件を設定することを特徴とするものである。
【0018】
本発明においては、温度プロファイルに上下限の温度幅(温度プロファイル領域)をもたせたので、読み込んだ等温線図に対して上記温度プロファイル領域に対応する等温線領域を選定し、この選定した等温線領域それぞれを重ね合わせ、重ね合わせた等温線領域に基づいて複数の加熱対象物すべてが温度プロファイル領域を満たす加熱条件を設定することができるようになり、より加熱条件の設定に、試行錯誤的な測定の実施や熟練者の豊富な経験を必要としないで済む。
【0019】
(6)上記(5)の一態様として、上記読み込んだ等温線図に対して加熱対象物の初期温度を加味した等温線図を作成し、該加味した等温線図に対して上記温度プロファイル領域に対応する等温線領域を選定し、この選定した等温線領域それぞれを重ね合わせ、重ね合わせた等温線領域に基づいて複数の加熱対象物すべてが温度プロファイルを満たす加熱条件を設定する、ことが好ましい。
【0020】
(7)上記(6)の一態様として、等温線図を初期温度で補正するとき、初期温度が基準より高くなる場合および低くなる場合は加熱温度が低いほど加熱時間のシフト量を大きくすることが好ましい。
【0021】
(8)上記(1)ないし(7)の一態様として、加熱炉を複数の加熱ゾーンにわけ、加熱対象物を上記複数の加熱ゾーンで温度プロファイルに従い基板上にリフロー半田付けされる部品として、上記等温線領域に対して基板上への部品の半田付け性と部品の耐熱性とに対応した境界条件を設定することが好ましい。
【0022】
(9)上記(8)の一態様として、任意の加熱ゾーンから次の加熱ゾーンに移行するときの部品の初期温度を上記任意の加熱ゾーンの終了時点の加熱対象物の温度とすることが好ましい。
【0023】
(10)上記(1)ないし(9)の一態様として、加熱対象物に関する情報を、その形状、内部構造および材質のうちの少なくともいずれか1つの情報である、ことが好ましい。
【0024】
(11)本発明による加熱条件決定方法は加熱炉内で基板に搭載した部品を半田付けするための加熱条件を決定する方法であって、加熱温度と加熱時間とを直交二次元軸とする座標図上で部品の上昇温度を示す等温線を所定の温度間隔で分布表示した等温線図を作成し、この作成した等温線図に対して部品の半田付け性が問題となる等温線領域と部品の耐熱性が問題となる等温線領域とを除外した残りの領域を、半田付けを行う加熱に適した領域(第1適合領域)とすることを特徴とするものである。
【0025】
(12)上記(11)の一態様として、上記第1適合領域に対して所定の加熱時間を超過する領域を境界線により除外することが好ましい。
【0026】
(13)上記(11)または(12)の一態様として、上記第1適合領域に対して所定の加熱時間を経過していない領域を境界線により除外することが好ましい。
【0027】
(14)上記(11)ないし(13)のいずれかの一態様として、複数の部品について作成した等温線図それぞれを重ね合わせ、それぞれの部品についての第1適合領域が重複する領域をすべての部品に対して半田付けを行う加熱に適した領域(第2適合領域)とすることが好ましい。
【0028】
(15)上記(14)の一態様として、上記第2適合領域において問題となる領域から離れて余裕のある領域部分を加熱に適した領域とすることが好ましい。
【0029】
(16)本発明による記録媒体は、上記(1)ないし(15)のいずれかの加熱条件設定方法を実行するソフトウェアプログラムが記録されていることを特徴とするものである。これはコンピュータが実行することができるアプリケーションプログラムとして記録される記録媒体であり、その記録媒体に、加熱装置および加熱対象物に関する情報から作成された該加熱対象物の温度上昇を表す等温線図と、加熱温度に上下限の温度幅(温度プロファイル領域)を有する温度プロファイルとがデータベース化して蓄積される。このデータベースによって、コンピュータからの上記情報に対応した等温線図のデータの読み込み、読み込んだ等温線図それぞれに対して上記温度プロファイル領域に対応する等温線領域の選定、この選定した等温線領域それぞれを重ね合わせ、重ね合わせた等温線領域に基づいて複数の加熱対象物すべてが温度プロファイルを満たす加熱条件を設定する、というプログラムを実行することができる。このようなソフトウェアプログラムの記録媒体としては、ディスク型ストレージ、半導体メモリおよび通信ネットワークなどの各種の媒体があり、コンピュータにインストールまたはロードすることができる。
【0030】
なお、上記記録媒体には、加熱装置および加熱対象物に関する情報も含めるように構成してもよい。
【0031】
(17)本発明による加熱装置は、加熱対象物を温度プロファイルに従い加熱する加熱装置において、データベース部と、制御部とを有し、データベース部は、加熱装置および加熱対象物に関する情報に対応した等温線図と、上下限の温度幅(温度プロファイル領域)を有する温度プロファイルとをデータとして蓄積しており、制御部は、加熱対象物の情報入力によりデータベース部にアクセスしてその入力情報に対応する等温線図を読み込み、読み込んだ等温線図に対して少なくとも加熱対象物の初期温度で補正し、複数の加熱対象物毎に読み込みかつ補正した等温線図それぞれを重ね合わせ、この重ね合わせた等温線図に基づいて複数の加熱対象物全体が上記温度プロファイル領域を満たす加熱条件を設定することを特徴とするものである。
【0032】
制御部はコンピュータで構成することができる。また、データベースはコンピュータ内の記憶媒体に記憶させることができる。また、データベースは外部の記憶媒体に記憶させることができる。データベースの記憶形式等には何等限定されない。なお、上記データベースには、加熱装置および加熱対象物に関する情報も含めて蓄積されるように構成してもよい。
【0033】
本発明の加熱装置においては、上記データベース化により、加熱条件を簡単に設定することができるようになるので、作業効率に優れたものとなり、また、未経験の作業者でも、短時間で加熱条件を導き出すことができ、さらに、温度プロファイルに幅(温度プロファイル領域)を持たせているので多種の基板に対応することができる加熱条件を設定することができる。さらに、本発明の加熱装置においては、データベースに汎用性のある加熱対象物情報を入れることにより、新規の加熱対象物に短時間で対応することができる。
【0034】
(18)上記(17)の一態様として、装置入口の温度を測定して加熱対象物の初期温度とし、自動的に等温線図を補正する手段をさらに含むことができる。
【0035】
(19)上記(17)または(18)の一態様として、加熱対象物が、基板にクリーム半田で仮固定される部品を含むことができる。
【0036】
(20)上記(17)ないし(19)のいずれかの一態様として、リフロー半田付けするための複数の加熱ゾーンを備えた加熱炉を有し、各加熱ゾーンに対応して加熱対象物全体が上記温度プロファイル領域を満たす加熱条件を設定することができる。
【0037】
(21)上記(17)ないし(20)のいずれかの一態様として、制御部がコンピュータにより構成され、該コンピュータは、加熱対象物の温度測定データにより、または加熱対象物の入力情報からシミュレーションにより等温線図を作成するとともに、作成した等温線図をデータベース部に蓄積することができる。
【0038】
(22)本発明による表示装置は、加熱炉内で加熱される加熱対象物の加熱条件の設定状態を表示する表示装置において、加熱対象物に対する加熱温度と加熱時間とを直交二次元の座標軸とする座標図を、加熱対象物の上昇温度を示す等温線が所定の温度間隔で分布している等温線図として表示する、ことを特徴とするものである。この表示装置においては、作業者に対して加熱条件の設定状態を容易に確認することができるので便利であり、加熱条件の設定に費やす時間の短縮を図ることができるようになる。
【0039】
(23)上記(22)の一態様として、上記等温線図に対して加熱対象物の加熱に適合しない第1領域を除外し残りの領域を加熱に適合する第2領域として表示することができるようになっていることが好ましい。この表示により、さらに作業者に対して加熱条件の設定状態を容易に確認することができるので便利であり、加熱条件の設定に費やす時間の短縮を図ることができるようになる。
【0040】
(24)本発明による作図支援装置は、操作部と、上記(22)または(23)の表示装置とを備え、操作部の操作により等温線図の作図と、作図した等温線図に対して上記第1および第2領域の設定表示を行うことができるようになっていることを特徴とするものである。この作図支援装置によると、作業者は、加熱条件の設定に必要な作図を容易にすることができるので便利であり、加熱条件の設定に費やす時間の短縮を図ることができるようになる。
【0041】
(25)本発明による操作制御装置は、加熱炉内で加熱される加熱対象物の加熱条件を設定しかつ炉運転制御装置を制御操作するための操作部と、この操作部の操作による上記設定状態を表示する表示部とを備えた操作制御装置において、上記表示部に、加熱対象物に対する加熱温度と加熱時間とを直交二次元の座標軸とする座標図上で加熱対象物の上昇温度を示す等温線を所定の温度間隔で分布表示させることを特徴とするものである。
【0042】
本発明の操作制御装置は、加熱炉の運転を制御する炉運転制御装置に対しての加熱条件の設定に、試行錯誤的な測定の実施や熟練者の豊富な経験を必要としないで済む操作制御装置である。
【0043】
(26)上記(25)の一態様として、表示装置に、上記等温線図に対して加熱対象物の加熱に適合しない第1領域を除外し残りの領域を加熱に適合する第2領域として表示することができるようになっていることが好ましい。
【0044】
(27)上記(25)の一態様として、上記表示装置に、加熱対象物を基板に半田付けされる部品として表示させ、上記等温線図に対してこの部品の半田付け性および部品の耐熱性の少なくとも一方に適合しない領域を除外し残りの領域を半田付けに適合する領域として表示することができるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、加熱対象物を加熱するときにはあらかじめ作成した等温線図に基づいてその温度プロファイルを満たす加熱対象物の加熱条件を設定することができるので、その加熱条件の設定に従来のごとく試行錯誤的な測定の実施や豊富な経験を必要としないで済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る加熱条件設定方法等およびこの方法の実施に用いる加熱装置を説明する。
【0047】
図1を参照して本実施の形態の加熱条件設定方法を説明すると、加熱装置10は、加熱炉12と、炉運転制御装置14と、操作制御装置16と、データベース部18とを備える。加熱炉12は、その内部をベルトコンベア20により搬送される基板22に対して複数の加熱ゾーンZ1,Z2,Z3で加熱するようになっている。なお、実際の加熱炉ではほとんどの場合、さらに多くの加熱ゾーンを有するが、ここでは理解のため単純化して加熱ゾーンを3つとして説明する。加熱炉12内部の加熱ゾーンZ1,Z2,Z3は、基板22に対する急激な加熱による熱損傷を防止するため基板22を予備的に加熱する第1加熱ゾーンZ1と、この予備加熱後に基板22の温度を一定に保持する加熱を行う第2加熱ゾーンZ2と、この均一加熱後に加熱炉12内で半田が溶融する温度以上に加熱する第3加熱ゾーンZ3とを有する。これら加熱ゾーンZ1,Z2,Z3には赤外線ヒータや熱風ヒータ等の熱源が配置されている。図1の点線円部分を拡大して示すように、基板22上には熱容量等が異なる複数の部品24がクリーム半田26上に搭載されている。
【0048】
操作制御装置16は、パソコン(コンピュータ)により構成されている。パソコンは、表示装置(ディスプレイ)を備え、キーボードやマウス等の操作を通じてデータベース部18にアクセスし該データベース部18から情報を読み込み、あるいは必要な情報を書き込み、さらには各種操作その他で必要な情報を表示装置に表示することが可能になっている。
【0049】
データベース部18には加熱対象物である基板の情報、基板に搭載される部品の情報、加熱装置の情報、基板上の部品の配置情報、その他のリフロー半田付けに必要な情報が蓄積されている。データベース部18にはさらに、基板や部品の等温線図、初期温度補正および目標温度プロファイルの情報、その他として基板上に搭載した部品が他の部品から受ける温度(他部品温度)の影響、等の情報が蓄積されている。
【0050】
データベース部18の基本とする蓄積情報を例示説明する。
【0051】
(1)基板情報、部品情報、加熱装置情報等
基板情報は、各種基板毎に、基板形状、基板材質、ランド形状、配線パターン形状、印刷マスク形状、基板の板厚、多層基板の場合の層数、基板上における部品の配置間隔等である。
【0052】
部品情報は、部品の形状、材質、種類、サイズ等である。
【0053】
加熱装置情報は、熱源の種類、加熱ゾーンの数、加熱温度、加熱時間等である。
【0054】
(2)等温線図
等温線図は加熱ゾーンにおける部品の温度上昇を示している。この等温線図の情報に関しては、操作制御装置16が温度測定データあるいは温度シミュレーションにより規定のソフトウェアプログラムに従って演算を行いデータベースに蓄積したものである。作業者は操作制御装置16のキーボードやマウスの操作を通じてデータベース部18にその情報を書き込むことができるとともにその表示装置に図2(a)ないし図2(b)の表示をさせることができるようになっている。等温線図は、横軸を加熱時間(s)、縦軸を加熱温度(℃)とし、それら加熱時間と加熱温度との関係で部品の上昇温度が同一となる線をプロットして等温線として表したものである。等温線図を温度測定データに基づいて作成する方法としては、図2(a)で示すように加熱時間を一定にして加熱温度を変化させ、そのときの加熱対象物における温度上昇を測定するか、あるいは、図2(b)で示すように加熱温度を一定にして加熱時間を変化させ、そのときの加熱対象物における温度上昇を求めることにより作成することができる。温度上昇を求めるには、温度測定による実験的な方法や、加熱炉や加熱対象物等をモデル化してコンピュータによるシミュレーションで算出する方法がある。
【0055】
図2(a)では、図(40s)で加熱時間40秒の一定で加熱温度を横軸に示す通り変化させたときの縦軸の部品温度の上昇と、図(60s)で加熱時間60秒の一定で加熱温度を横軸に示す通り変化させたときの縦軸の部品温度の上昇と、図(80s)で加熱時間80秒の一定で加熱温度を横軸に示す通り変化させたときの縦軸の部品温度の上昇を示す図である。
【0056】
図2(b)では図(150℃)で加熱温度150℃の一定で加熱時間を横軸に示す通り変化させたときの縦軸の部品温度の上昇と、図(200℃)で加熱温度200℃の一定で加熱時間を横軸に示す通り変化させたときの縦軸の部品温度の上昇と、図(250℃)で加熱温度250℃の一定で加熱時間を横軸に示す通り変化させたときの縦軸の部品温度の上昇を示す図である。
【0057】
図3(a)は、図2(a)または図2(b)のいずれか一方で行方向(x1)に加熱温度150℃、200℃、250℃、列方向(x2)に加熱時間40秒(s)、60秒(s)、80秒(s)とするマトリクスで部品温度データを記入した図である。なお、図3(a)の行列式は理解のため単純化しているが、実際はもう少し詳細な、例えば加熱時間10秒刻み、加熱温度10℃刻みのデータを使用する。これには実際の測定データを増やすほか、図2の近似曲線から補完することができる。上記近似は、パソコンによるExcel等の表計算ソフトウェアを用いて、誤差が少ない種類の近似式を利用することができる。例えば、上記近似は、図2(a)では横軸の加熱温度をx1、縦軸の部品温度をy1としてy1=ax12+bx1+cの二次近似関数式により最小二乗近似演算により各次数項の係数a,b,cを求め、図2(b)では横軸の加熱時間をx2、縦軸の部品温度をy2としてy2=px22+qx2+rの二次近似関数式により最小二乗近似演算により各次数項の係数p,q,rを求めて、等温線図作成のための補完データを得ることができる。このマトリクスを用いて図3(b)で示すように等温線図を作成する。
【0058】
図3(b)には横軸(x2方向)を加熱時間(s)、縦軸(x1方向)を加熱温度(℃)とする直交二次元の座標軸において、この座標図上に、適宜に定められた温度間隔、例えば、25℃毎である75℃等温線、100℃等温線、125℃等温線、150℃等温線が分布表示されている。
【0059】
なお、風速を変える必要がある場合、風速の変化による補正係数を求めておき、この補正係数を上記近似式に含めることができる。また、その他の補正係数も含め、これら補正は加熱炉12の各加熱ゾーンZ1,Z2,Z3それぞれで行うことができる。この場合、実施の形態ではベルトコンベア式の加熱炉12であったが、バッチ式の加熱炉にも適用することができる。
【0060】
(2)初期温度および初期温度による等温線図の補正
初期温度は部品を加熱するときに該部品の加熱当初の温度である。図4(a)は図1で示すデータベース部18に蓄積されている第1加熱ゾーンZ1における、初期温度25℃からの温度上昇を表す等温線図である。図4(b)は図4(a)の特性図に対して初期温度25℃のときの初期温度に応じた補正が加えられた実際の温度を表す等温線図である。図4(b)の110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃の各等温線は図4(a)の+85℃、+95℃、+105℃、+115℃、+125℃、+135℃の各等温線それぞれに25℃を加算しただけの等温線である。この場合、実際の初期温度が25℃で図4(a)で想定している初期温度と同一であるが、実際の初期温度が図4(a)で想定している初期温度と異なる場合を図5に示す。
【0061】
図5は初期温度の相違による等温線図の補正状態を示す図である。図5(a)は初期温度が190℃(基準)の場合の等温線図であり、図5(b)は初期温度が200℃(温度高)で高い場合の等温線図であり、図5(c)は初期温度が180℃(温度低)で低い場合の等温線図である。図5から明らかであるように、初期温度が図5(a)で示す基準の初期温度190℃より高く200℃になると等温線は図5(a)の実線で示す等温線L1,L2,L3から図5(b)の実線で示す等温線L1´,L2´,L3´となる。図5(b)には図5(a)の等温線L1,L2,L3を破線で示している。初期温度が基準の初期温度190℃より低く180℃になると等温線は図5(a)の実線で示す等温線L1,L2,L3から図5(c)の実線で示す等温線L1´´,L2´´,L3´´となる。図5(c)には図5(a)の等温線L1,L2,L3を破線で示している。すなわち、図5で示すように、初期温度が基準より高くなる場合は加熱温度が低いほど加熱時間のシフト量が大きくなる。基準の初期温度はデータベースに蓄積されている。図5(d)は、上記シフト量を示すための図であり、横軸は時間、縦軸において(基準)の文字は図5(a)に、「高」の文字は図5(b)に、「低」の文字は図5(c)に対応する。また、温度プロファイルh1は図5(a)に、温度プロファイルh2は図5(b)に、温度プロファイルh3は図5(c)に対応する。縦軸の「高」のところから時間軸方向の線LHと温度プロファイルh1,h2,h3の交点が原点O(縦横の基準点が交わる点)からの時間がシフト量Δ1、Δ2、Δ3を示す。横軸の「低」についてもシフト量は示さないが上記と同様である。
【0062】
なお、初期温度の相異によって等温線図を補正する変わりに、あらかじめ複数の初期温度に対する等温線図をデータベースに蓄積するようにしてもよい。
【0063】
(3)目標温度プロファイル
データベースに蓄積されている目標温度プロファイルを図6に示す。図6で横軸は加熱時間、縦軸は加熱対象物の温度である。目標温度プロファイルは第1加熱ゾーンZ1、第2加熱ゾーンZ2、第3加熱ゾーンZ3に分けることができる。第1加熱ゾーンZ1の初期温度は、第1加熱ゾーンZ1の開始時点での加熱温度であり、第2加熱ゾーンZ2の初期温度は、第1加熱ゾーンZ1の終了時点での加熱温度であり、第3加熱ゾーンZ3の初期温度は、第2加熱ゾーンZ2の終了時点での加熱温度である。
【0064】
この温度プロファイルは加熱温度に温度プロファイル線P1と温度プロファイル線P2とで挟む幅をもっている。両温度プロファイル線P1,P2で囲む領域を温度プロファイル領域S1ということにする。
【0065】
図7に図4(b)の等温線図に対して、図6の温度プロファイル領域S1のうち楕円C1で囲む領域(第1加熱ゾーンZ1の終了点での温度領域:加熱温度130℃−150℃領域)に対応する等温線領域(130℃等温線と150℃等温線とで囲む領域)を選定した状態を示す。図7において、選定した等温線領域S2に対して130℃等温線以下のハッチングで示す領域S3と150℃等温線以上のハウジングで示す領域S4とを除外している。この選定した等温線領域S2が基板に搭載される複数の部品のうちの、1つの部品の第1加熱ゾーンZ1での加熱に適した領域である。
【0066】
以上の他部品温度の影響(どこにも書いていないので削除)、等温線図および目標温度プロファイルはパーソナルコンピュータの処理によりデータベースに蓄積されている。
【0067】
(4)操作制御装置16による加熱装置10の制御動作
操作制御装置16は、以下に述べる加熱条件に従い加熱装置10を制御動作する。
【0068】
加熱条件の設定は、基本として、(a)初期温度を設定すること、(b)データベースから情報を読出し、この読出した情報に従い等温線図を作成すること、(c)作成した等温線図を重ね合わせ、重ね合わせた等温線図において重なり合う等温線領域が目標温度プロファイルを満たす加熱条件を選定することにより行われる。初期温度は作業者が入力するほか、加熱炉入口付近の温度を測定して自動的に設定できるようにしてもよい。
【0069】
基本の加熱条件の設定以外には、重ね合わせた等温線図が目標温度プロファイルを満たす加熱条件を選定できないときは基板単体での加熱条件に従い基板をグループ分けし各グループ毎に加熱条件の設定や、あるいはそうした基板単体での加熱条件が無ければ加熱手段の見直し等がある。
【0070】
初期温度以外にも他の部品から基板を通じて受ける温度の影響も考慮して等温線図を補正することができる。この他の部品の温度の影響に関して本出願人は特願2001−185463(特開2003−8168号)で出願している。
【0071】
上記(a)(b)(c)のうち(a)の初期温度は上述したからその説明は略する。以下において上記(b)(c)をわけて説明する。
【0072】
(上記(b)の等温線図の作成)
図8を参照して上記(b)の等温線図の作成について説明する。
【0073】
図8(a)は図7を参照して説明したのと同様に図4(a)の等温線図に対して初期温度25℃の補正を加えて図4(b)の等温線図となし、かつ、図6の温度プロファイルにおいて楕円C1で囲む第1加熱ゾーンZ1の終了温度での等温線領域S2を選定し、領域S3,S4を除外した等温線図であり、図4(b)と同様であるから、特に説明を要しない。この等温線領域S2は、リフロー半田付けを行うのに適した半田付け適合領域となる。
【0074】
図8(b)は図8(a)と同様の等温線領域S2を有することに加えて130℃−150℃において加熱時間が40秒以上とする等温線領域としてその40秒未満の等温線領域を除外する境界条件が存在するものである。そのため、等温線領域S2からは加熱時間が40秒未満のハッチングで示す領域S5が除外される。D1は境界線である。
【0075】
図8(c)は図6の目標温度プロファイルの第3加熱ゾーンZ3において225℃−240℃の等温線領域S6に対して領域S7とS8とを除外することに加えて、その等温線領域S6であっても220℃以上の滞留時間が5秒を示す境界線D2より短い領域S9と、200℃以上の滞留時間が50秒を示す境界線D3より長い領域S10とを除くものである。
【0076】
図8(d)は図8(c)に加えてさらに、加熱時間を30−60秒とするため、加熱時間が30秒を示す境界線D4より短いダブルハッチングで示す領域S11と、加熱時間が60秒を示す境界線D5より長いハッチングで示す領域S12とを除くものである。
【0077】
なお、上記境界線の理解のため図9(a)(b)を参照して説明する。図9(a)の横軸は加熱時間、縦軸は加熱対象物である部品の温度であり、いくつかの加熱温度で部品温度が200℃になる加熱時間を求める。図9(a)では加熱温度が300℃、275℃、250℃の3つで示されている。この滞留時間の条件は200℃以上で50秒以下であるとする。図9(a)で示すように、加熱温度300℃では時刻t1から50秒経過するまでであり、加熱温度275℃では時刻t2から50秒経過するまでであり、加熱温度250℃では時刻t3から50秒経過するまでである。この時間50秒以上経過した後の時間は滞留時間超過となり、目標とする温度プロファイルから外れることになる。図9(b)では等温線領域Saが温度プロファイル内にあり、領域Sbは温度プロファイルから外れる領域となることを示している。この両領域Sa,Sbの境界を示す線が境界線Dxとして示されている。
【0078】
(上記(c)の等温線図の重ね合わせ)
図10を参照して等温線図の重ね合わせを説明する。
【0079】
この等温線図の重ね合わせは、例として、図6の目標温度プロファイルの第3加熱ゾーンZ3において行う。部品のボディ温度は耐熱温度以下であり、部品のリードは半田の融点以上であることが必要である。
【0080】
図10(a)は、部品aのボディの等温線図を示す。この部品aのボディは耐熱温度が240℃以下であり、等温線領域S13に対してハッチングで示す領域S14が除外される。さらに、等温線領域S13内であっても境界線D6より高い領域S15が除かれる。等温線領域S13は半田付け適合領域となる。
【0081】
図10(b)は、部品bのリードの等温線図を示す。部品bは部品aとは別の部品である。部品bのリードの等温線図においては、境界線D7より高い等温線領域S16に対してそれより低い領域S17が除外される。等温線領域S16は、半田付け適合領域となる。
【0082】
図10(c)は、図10(a)の等温線図と図10(b)の等温線図とを重ね合わせた等温線図である。この重ね合わせによる等温線領域はS18である。等温線領域S18は、上記両半田付け適合領域が重複する領域であり、部品aのボディにも、部品bのリードにも、半田付けに適合した領域である。
【0083】
図10(d)は、図10(a)の部品aおよび図10(b)の部品bを搭載した基板とは別の基板に搭載した複数の部品それぞれの等温線図を重ね合わせた等温線図である。重ね合わせた等温線領域S21に対して、領域S19,S20は除外される。この等温線領域S21は、すべての部品に対して半田付けに適合した領域である。
【0084】
図10(e)は、さらに、図10(c)と図10(d)それぞれの等温線図を重ね合わせた等温線図である。図10(e)での重ね合わせの等温線領域はS22である。この等温線領域S22は、異なる基板に搭載された部品すべての等温線領域である。等温線領域S22内の領域S23は、半田付け性が問題とされる領域S24や、部品耐熱性が問題となる領域S25から余裕をもって離れている領域である。この領域S23は、部品の耐熱性のばらつきや炉内温度の変動などその他のばらつきがあっても、はんだ付けに適合した領域であるから、基板製品の生産性の向上を図ることができる。
【0085】
以上説明した実施の形態においては、操作制御装置16はパソコンで構成し、このパソコンの表示部(表示装置)に図2ないし図9で示す等温線図等の表示を作業者の操作により、あるいは自動的に行うことができるようになっている。また、パソコンに付属される表示装置とは別の専用の表示装置に、加熱炉内で加熱される部品搭載基板に対するリフロー半田付けを行うための加熱条件の設定状態やその他の表示を行うことができるようにしてもよい。
【0086】
また、上記専用の表示装置として、作図支援装置(CAD:Computer Aided Design)を用いて等温線図の作図をすることができるようにしてもよい。この作図支援装置は操作コマンドを入力して作図を行うものや、作図アイコンを用いて作図を行うものでもよい。作図支援装置は、例えば、コンピュータと、キーボードやマウス等の操作部と、表示装置(ディスプレイ)と、コンピュータにインストールされた等温線図作図用のCAD用ソフトウェアプログラムとにより構成することができる。作業者は加熱条件の設定のため、マウスないしはキーボードを操作して加熱炉情報、基板情報、部品情報等のその設定に必要な情報を入力し、コンピュータはこの入力に対応してデータベース部から等温線図を読み込み、また、ディスプレイ上で各部品それぞれの等温線図を重ね合わせるなどの作図を行うことができる。コンピュータはこの作図の結果に対応して、炉運転制御装置を制御する。データベース部は、コンピュータ本体に内蔵の記録媒体を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る加熱装置の構成を示す図である。
【図2】図2は加熱温度一定で部品温度上昇を示す図と、加熱時間一定で部品温度上昇を示す図である。データベースに蓄積されている等温線図の元データを示す図である。
【図3】図3は図2の測定に対応したマトリクスとそれに対応する等温線図とを示す図である。
【図4】図4は図3の等温線図に初期温度の補正を加えたときの等温線図を示す図である。
【図5】図5は初期温度が相違する場合の等温線図の補正を示す図である。
【図6】図6はデータベースに蓄積されている目標温度プロファイルを示す図である。
【図7】図7は図4の等温線図から問題となる等温線領域を除外した状態を示す図である。
【図8】図8は図7に対応する図であり、操作制御部の制御動作を説明するための等温線図を示す図である。
【図9】図9は等温線図において境界線の説明に供する図である。
【図10】図10は等温線図の重ね合わせを説明するための図である。
【符号の説明】
【0088】
10 加熱装置
12 加熱炉
14 炉運転制御装置
16 操作制御装置
18 データベース部
20 ベルトコンベア
22 基板
24 電子部品
26 クリーム半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内で複数の加熱対象物を所定の温度プロファイルに従い加熱するに際して該加熱対象物の加熱条件を設定する方法であって、
加熱対象物と加熱炉に関する情報から当該加熱対象物の温度上昇を表す等温線図をあらかじめ作成するステップと、
上記複数の加熱対象物についてそれぞれ作成された等温線図を重ね合わせるステップと、
重ね合わせた等温線図に基づいて加熱対象物のすべてが上記温度プロファイルを満たす加熱条件を設定するステップ、
とからなる加熱条件設定方法。
【請求項2】
上記等温線図を作成するステップは、
加熱時間を一定にして加熱温度を変化させたときの加熱対象物の温度上昇を所定の回数測定するステップと、
加熱温度と加熱時間とを直交二次元の座標軸とし上記測定値を用いてこの座標図上で加熱対象物の上昇温度を示す等温線を所定の温度間隔で分布表示させて作成するステップ、
を有することを特徴とする請求項1に記載の加熱条件設定方法。
【請求項3】
上記等温線図を作成するステップは、
加熱温度を一定にして加熱時間を変化させたときの加熱対象物の温度上昇を所定の回数測定するステップと、
加熱温度と加熱時間とを直交二次元の座標軸とし上記測定値を用いてこの座標図上で加熱対象物の上昇温度を示す等温線を所定の温度間隔で分布表示させて作成するステップ、
を有することを特徴とする請求項1に記載の加熱条件設定方法。
【請求項4】
上記分布表示させて作成するステップにおいて、
測定値と測定値との間のデータを表計算ソフトウェアなどを用いて補間近似することにより求める、ことを特徴とする請求項2または3に記載の加熱条件設定方法。
【請求項5】
加熱炉内で複数の加熱対象物を温度プロファイルに従い加熱するに際して該加熱対象物の加熱条件を設定する方法であって、
加熱装置および加熱対象物に関する情報から作成した該加熱対象物の等温線図と、加熱温度に上下限の温度プロファイル領域を有する温度プロファイルとをデータベースとして蓄積するステップと、
上記データベースから加熱対象物それぞれの情報に対応した等温線図を読み込むステップと、
読み込んだ等温線図それぞれに対して上記温度プロファイル領域に対応する等温線領域を選定するステップと、
この選定した等温線領域それぞれを重ね合わせ、重ね合わせた等温線領域に基づいて複数の加熱対象物すべてが温度プロファイルを満たす加熱条件を設定するステップ、
を有することを特徴とする加熱条件設定方法。
【請求項6】
上記等温線領域を選定するステップは、
上記読み込んだ等温線図に対して加熱対象物の初期温度を加味した等温線図を新たに生成するステップと、
該新たに生成された等温線図に対して上記温度プロファイル領域に対応する等温線領域を選定するステップ、
を有することを特徴とする請求項5に記載の加熱条件設定方法。
【請求項7】
初期温度を加味した等温線図を新たに生成するステップは、
さらに加熱対象物の初期温度を所定の基準値と比較するステップを有し、
上記初期温度が所定の基準値と異なると判断する場合には、加熱温度が低いほど加熱時間の補正量を大きくする、ことを特徴とする請求項6に記載の加熱条件設定方法。
【請求項8】
複数の加熱ゾーンからなる加熱炉内で、基板上にリフロー半田づけされる複数の加熱対象物を所定の温度プロファイルに従い加熱するに際して該加熱対象物の加熱条件を設定する方法であって、
加熱装置と加熱対象物に関する情報から当該加熱対象物の温度上昇を表す等温線図をあらかじめ作成するステップと、
上記複数の加熱対象物についてそれぞれ作成された等温線図を重ね合わせるステップと、
上記重ね合わされた等温線領域に対して基板上への部品の半田付け性と部品の耐熱性とに対応した境界条件を設定するステップを有する、
ことを特徴とする加熱条件設定方法。
【請求項9】
任意の加熱ゾーンから次の加熱ゾーンに移行するときの部品の初期温度を上記任意の加熱ゾーンの終了時点の加熱対象物の温度とする、ことを特徴とする請求項8に記載の加熱条件設定方法。
【請求項10】
加熱対象物に関する情報が、その形状、内部構造および材質のうちの少なくともいずれか1つの情報である、ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の加熱条件設定方法。
【請求項11】
加熱炉内で基板に搭載した部品を半田付けするための加熱条件を決定する方法であって、
加熱温度と加熱時間とを直交二次元軸とする座標図上で部品の上昇温度を示す等温線を所定の温度間隔で分布表示した等温線図を作成するステップと、
この作成された等温線図に対して部品の半田付け性が問題となる領域と部品の耐熱性が問題となる領域とを除外するステップと、
上記除外された残りの領域を半田付けを行う加熱に適した領域(第1適合領域)とするステップ、を有することを特徴とする加熱条件決定方法。
【請求項12】
上記第1適合領域に対して所定の加熱時間を超過する領域を境界線により除外する、ことを特徴とする請求項11に記載の加熱条件決定方法。
【請求項13】
上記第1適合領域に対して所定の加熱時間を経過していない領域を境界線により除外する、ことを特徴とする請求項12または13に記載の加熱条件決定方法。
【請求項14】
複数の部品について作成した等温線図それぞれを重ね合わせ、それぞれの部品についての第1適合領域が重複する領域をすべての部品に対して半田付けを行う加熱に適した領域(第2適合領域)とする、ことを特徴とする請求項11ないし13のうちのいずれかに記載の加熱条件決定方法。
【請求項15】
上記第2適合領域において問題となる領域から離れて余裕のある領域部分を加熱に適した領域とする、ことを特徴とする請求項14に記載の加熱条件決定方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載の加熱条件設定方法を実行するソフトウェアプログラムが記録されている、ことを特徴とする記録媒体。
【請求項17】
加熱対象物を温度プロファイルに従い加熱する加熱装置において、データベース部と、制御部とを有し、データベース部は、加熱対象物に関する情報に対応した等温線図と、上下限の温度幅(温度プロファイル領域)を有する温度プロファイルとをデータとして蓄積しており、制御部は、加熱対象物の情報入力によりデータベース部にアクセスしてその入力情報に対応する等温線図を読み込み、読み込んだ等温線図に対して少なくとも加熱対象物の初期温度で補正し、複数の加熱対象物毎に読み込みかつ補正した等温線図をそれぞれ重ね合わせ、この重ね合わせた等温線図に基づいて複数の加熱対象物のすべてが上記温度プロファイル領域を満たす加熱条件を設定する、ことを特徴とする加熱装置。
【請求項18】
装置入口の温度を測定して加熱対象物の初期温度とし、自動的に等温線図を補正する手段、をさらに具備することを特徴とする請求項17に記載の加熱装置。
【請求項19】
加熱対象物が、基板にクリーム半田で仮固定される部品を含む、ことを特徴とする請求項17または18に記載の加熱装置。
【請求項20】
リフロー半田付けするための複数の加熱ゾーンを備えた加熱炉を有し、各加熱ゾーンに対応して複数の加熱対象物のすべてが上記温度プロファイル領域を満たす加熱条件を設定する、ことを特徴とする請求項17ないし19に記載の加熱装置。
【請求項21】
制御部は、加熱対象物の温度測定データにより、または加熱対象物の入力情報からシミュレーションにより等温線図を作成するとともに、作成した等温線図をデータベース部に蓄積する、ことを特徴とする請求項17ないし20のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項22】
加熱炉内で加熱される加熱対象物の加熱条件の設定状態を表示する表示装置において、加熱対象物に対する加熱温度と加熱時間とを直交二次元の座標軸とする座標図を、加熱対象物の上昇温度を示す等温線が所定の温度間隔で分布している等温線図として表示する、ことを特徴とする表示装置。
【請求項23】
上記等温線図に対して加熱対象物の加熱に適合しない第1領域を除外し残りの領域を加熱に適合する第2領域として表示することができるようになっている、ことを特徴とする請求項22に記載の表示装置。
【請求項24】
操作部と、請求項22または23に記載の表示装置とを備え、操作部の操作により等温線図の作図と、作図した等温線図に対して上記第1および第2領域の設定表示を行うことができるようになっている、ことを特徴とする作図支援装置。
【請求項25】
加熱炉内で加熱される加熱対象物の加熱条件を設定しかつ炉運転制御装置を制御操作するための操作部と、この操作部の操作による上記設定状態を表示する表示部とを備えた操作制御装置において、上記表示部に、加熱対象物に対する加熱温度と加熱時間とを直交二次元の座標軸とする座標図上で加熱対象物の上昇温度を示す等温線を所定の温度間隔で分布表示させる、ことを特徴とする操作制御装置。
【請求項26】
上記表示装置に、上記等温線図に対して加熱対象物の加熱に適合しない第1領域を除外し残りの領域を加熱に適合する第2領域として表示することができるようになっている、ことを特徴とする請求項25に記載の操作制御装置。
【請求項27】
上記表示装置に、加熱対象物を基板に半田付けされる部品として表示させ、上記等温線図に対してこの部品の半田付け性および部品の耐熱性の少なくとも一方に適合しない領域を除外し残りの領域を半田付けに適合する領域として表示することができるようになっている、ことを特徴とする請求項26に記載の操作制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−93031(P2007−93031A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279578(P2005−279578)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】