説明

加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体

【課題】低硬度であり、透明性が維持され、かつ耐硫化性に優れた加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体の提供。
【解決手段】加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物は、(A)成分;1分子中に2個以上のシラノール基を有するポリシロキサン100質量部と、(B)成分;1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物0.1〜2000質量部と、(C)成分;有機基を有する、ジルコニウム化合物および/またはハフニウム化合物と、(D)成分;亜鉛化合物とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光半導体を封止するための組成物には樹脂としてエポキシ樹脂を使用することが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、エポキシ樹脂を含有する組成物から得られる封止体は白色LED素子からの発熱によって色が黄変するなどの問題があった。このため、光半導体を封止するための組成物として、より耐熱性および耐光性に優れたシリコーン系樹脂の使用が増えつつある。
例えば、2個のシラノール基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に2個以上有するシラン化合物等と、有機ジルコニウム化合物とを含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献2、3)。
また、例えば、2個のシラノール基を有するジオルガノポリシロキサン等と、アルコキシ基を3個以上有するシラン等とに縮合触媒を混合し加熱することが提案されている(例えば、特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−228249号公報
【特許文献2】特開2001−200161号公報
【特許文献3】特開平2−196860号公報
【特許文献4】特開2007−224089号公報
【特許文献5】特開2006−206700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シリコーン系樹脂の場合、エポキシ樹脂と比較して気体透過性が高いため、空気が通過しやすいため、空気中の硫化水素によって光半導体パッケージの銀メッキが経時で変色しやすく、その結果、輝度が低下する傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
また、シリコーン系樹脂では、耐硫化性を高めるため樹脂を硬くすることが一般的に行われているが、その場合、硬化収縮やそれによるLEDパッケージからのハガレやワイヤーの断線のおそれがあった。
本発明者らは、シリコーン樹脂組成物に亜鉛化合物を添加することによって、低硬度で耐硫化性を発現させて銀の変色を抑えることを見出した。
また、本願発明者らは、(A)成分;1分子中に2個以上のシラノール基を有するポリシロキサン100質量部と(B)成分;1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物とを縮合させる硬化触媒として、亜鉛化合物と有機基を有するジルコニウム化合物および/または有機基を有するハフニウム化合物とを併用することによって、組成物を加熱硬化させることができ、得られる硬化物が透過性、透明性に優れ、低硬度で耐硫化性を発現させて銀の変色を抑えることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、低硬度であり、透明性が維持され、かつ耐硫化性に優れた加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体を提供する。
本発明の第1の態様に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物は、
(A)成分;1分子中に2個以上のシラノール基を有するポリシロキサン100質量部と、
(B)成分;1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物0.1〜2000質量部と、
(C)成分;有機基を有する、ジルコニウム化合物および/またはハフニウム化合物と、
(D)成分;亜鉛化合物と、
を含有する。
上記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物において、前記(D)成分が亜鉛を含有する錯体および/または金属塩であることができる。
上記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物において、前記(C)成分を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部含有することができる。
上記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物において、前記(D)成分を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.001〜5質量部含有することができる。
上記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物において、前記ジルコニウム化合物が下記式(1)で表される化合物および/または下記式(2)で表される化合物であることができる。
【化1】

・・・(1)
(式中、Rは炭素原子数1〜18の炭化水素基である。)
【化2】

・・・(2)
(式中、Rは同一または異なり炭素原子数1〜16の炭化水素基であり、Rは同一または異なり炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、mは1〜3の整数である。)
この場合、前記式(2)中の前記Rが環状構造を有することができる。
また、この場合、前記式(2)中の前記Rが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基およびナフテン環からなる群から選ばれる少なくとも1種であることができる。
本発明の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物において、前記ハフニウム化合物が、下記式(I)で表される化合物および/または下記式(II)で表される化合物であるとすることができる。
【化3】


[式(I)中、nは1〜4の整数であり、R1は炭化水素基であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基である。]
【化4】


[式(II)中、mは1〜4の整数であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基であり、R3、R4は同一のまたは異なる、炭素数1〜18の炭化水素基またはアルコキシ基である。]
上記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物において、前記(A)成分が、下記式(3)で表される重量平均分子量1,000〜1,000,000の直鎖状オルガノポリシロキサンを含有することができる。
【化5】

・・・(3)
(式中、Rは同一または異なり、炭素原子数1〜18のアルキル基またはアリール基を示し、nは1以上の整数である。)
本発明の第2の態様に係る光半導体封止体は、上記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得られる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物は、(D)成分である亜鉛化合物を含有するため、該組成物を用いることにより、低硬度のシリコーン系樹脂硬化物でも耐硫化性を付与でき、透明性が維持され、かつ耐硫化性に優れた光半導体封止体を製造することができる。
本発明の光半導体封止体は、上記組成物を用いて形成されたものであるため、クラックが生じにくい適度な硬度を有し、かつ耐硫化性および透明性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体封止体の一例を模式的に示す上面図である。
【図2】図2は、図1に示す光半導体封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る光半導体封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
【図6】図6は、図5に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
【図7】図7は、本願実施例において組成物を硬化させるために使用した型の断面を模式的に表す断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体について詳細に説明する。
【0009】
1.加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物
本実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物は、
(A)成分;1分子中に2個以上のシラノール基を有するポリシロキサン100質量部と、
(B)成分;1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物0.1〜2000質量部と、
(C)成分;有機基を有する、ジルコニウム化合物および/またはハフニウム化合物と、
(D)成分;亜鉛化合物と、
を含有する。
なお、本実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を以下「本実施形態(第1実施形態)に係る組成物」ということがある。
【0010】
1.1.(A)成分
(A)成分は、1分子中に2個以上のシラノール基を有するポリシロキサンである。ポリシロキサンは、オルガノポリシロキサンであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
オルガノポリシロキサンが有する炭化水素基は特に制限されない。例えば、フェニル基のような芳香族基;アルキル基;アルケニル基が挙げられる。
(A)成分の主鎖は直鎖、分岐のいずれであってもよい。
(A)成分としては、例えば、2個以上のシラノール基が末端に結合しているオルガノポリジアルキルシロキサンが挙げられる。
耐熱着色安定性により優れるという観点から、(A)成分は2個以上のシラノール基が末端に結合している、オルガノポリシロキサンまたはジオルガノポリシロキサンであるのが好ましく、2個のシラノール基が両末端に結合しているオルガノポリジメチルシロキサン(例えばジメチルポリシロキサン)であるのがより好ましく、2個のシラノール基が両末端に結合している直鎖状のオルガノポリジメチルシロキサン(直鎖状オルガノポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール)であるのがさらに好ましい。
(A)成分は、例えば、下記式(3)で表されるもの(ジオルガノポリシロキサン)が挙げられる。
【0011】
【化6】

・・・(3)
(式中、Rは同一または異なり、炭素原子数1〜18のアルキル基またはアリール基を示し、nは1以上の整数である。)
【0012】
式(3)中、Rで表される炭素原子数1〜18のアルキル基(鎖状、分岐状、環状、これらの組み合わせを含む。)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基のような鎖状、分岐状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルカン基(シクロアルキル基)等が挙げられる。Rで表される炭素原子数1〜18のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。このうち、Rで表される基はメチル基またはフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。Rは同一でも異なっていてもよい。
また、式(3)中、nは(A)成分の重量平均分子量に対応する数値とすることができる。作業性、耐クラック性に優れるという観点から、nは10〜15,000の整数であるのが好ましい。
【0013】
(A)成分はその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。耐熱着色安定性により優れ、硬化時間、可使時間が適切な長さとなり硬化性に優れ、硬化物物性に優れるという観点から、(A)成分の分子量は1,000〜1,000,000であるのが好ましく、6,000〜100,000であるのがより好ましい。
なお、本発明において、ポリシロキサンの分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(A)成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
1.2.(B)成分
(B)成分は、1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。
(B)成分としては、例えば、1分子中1個のケイ素原子を有し、ケイ素原子にアルコキシ基が2個以上結合している化合物(以下この化合物を「シラン化合物B1」ということがある。)、1分子中2個以上のケイ素原子を有し、骨格がポリシロキサン骨格であり、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するオルガノポリシロキサン化合物(以下このオルガノポリシロキサン化合物を「シラン化合物B2」ということがある。)が挙げられる。
【0015】
(B)成分は1分子中に1個以上の有機基を有することができる。
(B)成分が有することができる有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基が挙げられる。具体的には、例えば、アルキル基(炭素数1〜6のものが好ましい。)、(メタ)アクリレート基、アルケニル基、アリール基、これらの組合せが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。なかでも、耐熱着色安定性により優れるという観点から、メチル基、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロキシアルキル基が好ましい。
【0016】
シラン化合物B1としては、例えば、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
Si(OR4−n ・・・(4)
(式中、nは2、3または4であり、Rはアルキル基であり、Rは有機基である。)
なお、Rで表される有機基としては、(A)成分が有する炭化水素基として記載したものが挙げられる。
【0017】
シラン化合物B1としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランのようなジアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランのようなトリアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシランのようなテトラアルコキシシラン;トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの加水分解物;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランのような(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アクリロキシトリアルコキシシランは、アクリロキシトリアルコキシシランまたはメタクリロキシトリアルコキシシランであることを意味する。(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロキシアルキル基についても同様である。
【0018】
シラン化合物B2としては、例えば、式(5)で表される化合物が挙げられる。
Si(OR′)(4−m−n)/2 ・・・(5)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、R′は炭素数1〜6のアルキル基であり、mは0<m<2、nは0<n<2、m+nは0<m+n≦3である。)
【0019】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れ、耐熱着色安定性により優れるという観点から、メチル基が好ましい。アルケニル基は、炭素数2〜6のものが挙げられ、具体的には例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらは同一また異なっていてもよい。
式(5)で表される化合物において、R′の炭素数1〜6のアルキル基は例えば酸素原子のようなヘテロ原子を含むことができる。R′は例えばアシル基であってもよい。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基が挙げられる。
【0020】
シラン化合物B2としては、例えば、メチルメトキシオリゴマーのようなシリコーンアルコキシオリゴマーが挙げられる。
シリコーンアルコキシオリゴマーは、主鎖がポリオルガノシロキサンであり、分子末端がアルコキシシリル基で封鎖されたシリコーンレジンであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
メチルメトキシオリゴマーは、例えば上記式(5)で表される化合物に該当し、メチルメトキシオリゴマーとしては、例えば、下記式(6)で表されるものが表されるものが挙げられる。
【化7】

・・・(6)
(式中、R″はメチル基であり、aは1〜100の整数であり、bは0〜100の整数である。)
メチルメトキシオリゴマーは、市販品を使用することができる。メチルメトキシオリゴマーの市販品としては、例えば、x−40−9246(重量平均分子量6,000、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0021】
また、シラン化合物B2として例えば、少なくとも片末端にアルコキシシリル基を有し、1分子中に3個以上のアルコキシ基(アルコキシシリル基由来のもの)を有する化合物(以下これを化合物B3と記述する。)が好ましい形態として挙げられる。化合物B3は、例えば、両末端シラノール基を有するポリシロキサン1モルに対してアルコキシシリル基および/またはアルコキシ基を有するシラン化合物1モル以上を脱アルコール縮合した反応物;ケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物のオリゴマーを両末端に有するジオルガノポリシロキサンとすることができる。
化合物B3を製造するために使用される、アルコキシ基を有するシラン化合物としては、例えば、上記の式(4):Si(OR4−nで表される化合物や上記の式(5):RSi(OR′)(4−m−n)/2で表される化合物などが挙げられる。
化合物B3を製造するために使用される、両末端シラノール基を有するポリシロキサンとしては、例えば、上記の式(3)で表されるものが挙げられる。
シラン化合物B3としては、例えば、下記式(7)で表されるものが挙げられる。
【化8】

・・・(7)
【0022】
耐熱着色安定性により優れ、耐クラック性に優れるという観点から、(B)成分は上記式(4)で表される化合物および/または上記式(5)で表される化合物であることが好ましく、上記式(6)で表される化合物であることがより好ましい。
【0023】
耐熱着色安定性により優れるという観点から、(B)成分は、テトラエトキシシランのようなテトラアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなトリアルコキシ(メタ)アクリロキシアルキルシラン;メチルメトキシオリゴマーが好ましい。
【0024】
耐熱着色安定性により優れ、硬化時間、可使時間が適切な長さとなり硬化性に優れ、相溶性に優れるという観点から、(B)成分の分子量は100〜1,000,000であるのが好ましく、100〜100,000であるのがより好ましい。
なお、本発明において、(B)成分がシラン化合物B2の場合、その分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
(B)成分はその製造について特に制限されず、例えば従来公知のものが挙げられる。(B)成分はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
耐熱着色安定性により優れ、耐クラック性、相溶性に優れるという観点から、(B)成分の量は(A)成分100質量部に対して、0.1〜2000質量部であり、5〜100質量部であるのが好ましい。
【0026】
1.3.(C)成分
(C)成分は有機基を有する、ジルコニウム化合物および/またはハフニウム化合物である。(C)成分としての有機基を有するジルコニウム化合物はジルコニウム原子および有機基を含有するジルコニウム化合物である。(C)成分としての有機基を有するハフニウム化合物はハフニウム原子および有機基を含有するハフニウム化合物である。
(C)成分は、本実施形態に係る組成物を硬化させるための初期の加熱や初期硬化後の加熱の際ルイス酸として作用し、(A)成分と(B)成分との架橋反応を促進すると考えられる。より具体的には、(C)成分は、加熱によって活性化され、シラノール基を(例えば、シラノール基同士、シラノール基とアルコキシシリル基との反応によって)縮合させることができる。これによって(C)成分は、本実施形態に係る組成物を加熱によって全体的に均一に硬化させることができる。
したがって、(C)成分を含有する本実施形態に係る組成物は、耐熱着色安定性に優れる。
(C)成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
(C)成分は、ジルコニウムまたはハフニウムと有機基とを有する化合物であればよい。ジルコニウムまたはハフニウムは、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を介して、および/または、エステル結合のような結合基を介して、有機基と結合することができる。有機基は、脂肪族炭化水素基(鎖状、分岐状、環状、これらの組み合わせを含む。脂肪族炭化水素基は不飽和結合を有することができる。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。有機基は例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。有機基としては、例えば、有機カルボキシレート(−O−CO−R);アルコキシ基、フェノキシ基のような、炭化水素基がオキシ基と結合したのもの(−O−R);配位子;これらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
より具体的には、(C)成分としてのジルコニウム化合物は下記式(1)で表される化合物(化合物C1)および/または下記式(2)で表される化合物(化合物C2)であることができる。
【0029】
【化9】

・・・(1)
(式中、Rは炭素原子数1〜18の炭化水素基である。)
【化10】

・・・(2)
(式中、Rは同一または異なり炭素原子数1〜16の炭化水素基であり、Rは同一または異なり炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、mは1〜3の整数である。)
【0030】
1.3.1.化合物C1
化合物C1は、ジルコニル[(Zr=O)2+]を構成要素として含むジルコニウム金属塩である。化合物C1を含む本実施形態に係る組成物は硬化性により優れている。
化合物C1のジルコニウム金属塩を製造するために使用される酸は特に制限されない。例えば、カルボン酸、カルボン酸塩が挙げられる。カルボン酸、カルボン酸塩としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクチル酸(2−エチルヘキサン酸)、ノナン酸、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪族カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸のような脂環式カルボン酸;安息香酸のような芳香族カルボン酸;これらの塩が挙げられる。
硬化性に優れるという観点から、化合物C1は脂肪族カルボン酸塩および/または脂環式カルボン酸塩であるのがより好ましく、脂環式カルボン酸塩であるのがさらに好ましい。
この場合、脂肪族カルボン酸塩としては、例えばジオクチル酸ジルコニル、ジネオデカン酸ジルコニルが挙げられ、脂環式カルボン酸塩としては、例えばナフテン酸ジルコニル、シクロヘキサン酸ジルコニルのような脂環式カルボン酸塩が挙げられ、芳香族カルボン酸塩としては、例えば安息香酸ジルコニルが挙げられる。硬化性に優れるという観点から、(C)成分として化合物C1を用いる場合、化合物C1は、ジオクチル酸ジルコニルおよびナフテン酸ジルコニルのうちの一方または両方であるのが好ましい。
【0031】
1.3.2.化合物C2
化合物C2は上記式(2)で表されるように、1〜3個のアシル基(R−CO−)を有する。上記式(2)で表される化合物C2において、アシル基はカルボン酸エステルとして上記式(2)に含まれる。上記式(2)においてmが2以上である場合、複数のRは同じでも異なっていてもよい。また、mが1〜2である場合、複数のRは同じでも異なっていてもよい。
【0032】
耐熱着色安定性により優れ、相溶性(例えば、シリコーン樹脂に対する相溶性)に優れるという観点から、上記式(2)においてRで表される炭化水素基の炭素原子数は3〜16であるのが好ましく、4〜16であるのがより好ましい。
で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は直鎖状でも分岐していてもよい。炭化水素基は不飽和結合を有することができる。炭化水素基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。硬化性、耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、Rで表される炭化水素基は脂環式炭化水素基および/または脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。
【0033】
耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、Rで表される炭化水素基は環状構造を有するのが好ましい。この場合、環状構造としては、例えば、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。Rは環状構造のほかに例えば脂肪族炭化水素基を有することができる。
【0034】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基のようなシクロアルキル基;ナフテン環(ナフテン酸由来のシクロパラフィン環);アダマンチル基、ノルボルニル基のような縮合環系炭化水素基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレンが挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基が挙げられる。
なかでも耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、Rで表される炭化水素基は脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ナフテン環(RCOO−としてのナフテート基)、フェニル基がより好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ナフテン環がさらに好ましい。
【0035】
脂環式炭化水素基を有するRCOO−としては、例えば、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロブチルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基(シクロヘキシルカルボネート基)、シクロヘプチルカルボニルオキシ基(シクロヘプチルカルボネート基)、シクロオクチルカルボニルオキシ基のようなシクロアルキルカルボニルオキシ基;ナフテート基(ナフテン酸エステル);アダマンチルカルボニルオキシ基、ノルボルニルカルボニルオキシ基のような縮合環系炭化水素基のカルボニルオキシ基が挙げられる。
芳香族炭化水素基を有するRCOO−としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基、ナフチルカルボニルオキシ基、アズリルカルボキシ基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基を有するRCOO−としては、例えば、アセテート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、オクチル酸エステル、2−エチルヘキサン酸エステル、ノナン酸エステル、ラウリン酸エステルが挙げられる。
なかでも、耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、脂環式炭化水素基を有するRCOO−、芳香族炭化水素基を有するRCOO−、2エチルヘキサノエートが好ましく、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アダマンチルカルボニルオキシ基、ナフテート基、フェニルカルボニルオキシ基がより好ましく、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、アダマンチルカルボニルオキシ基、ナフテート基がさらに好ましい。
【0036】
また、耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、Rで表される炭化水素基の炭素原子数は3〜8であるのが好ましい。
で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は直鎖状でも分岐していてもよい。炭化水素基は不飽和結合を有することができる。炭化水素基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、Rで表される炭化水素基は脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。
【0037】
脂肪族炭化水素基を有するRO−(アルコキシ基)としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基が挙げられる。なかでも、耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、脂肪族炭化水素基を有するRO−(アルコキシ基)はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソプロポキシ基であるのが好ましい。
【0038】
環状構造として脂環式炭化水素基を有する化合物C2としては、例えば、ジルコニウムトリアルコキシモノシクロプロパンカルボキシレート、ジルコニウムジアルコキシジシクロプロパンカルボキシレート、ジルコニウムモノアルコキシトリシクロプロパンカルボキシレートのようなジルコニウムアルコキシシクロプロパンカルボキシレート;
ジルコニウムトリアルコキシモノシクロペンタンカルボキシレート、ジルコニウムジアルコキシジシクロペンタンカルボキシレート、ジルコニウムモノアルコキシトリシクロペンタンカルボキシレートのようなジルコニウムアルコキシシクロペンタンカルボキシレート;
ジルコニウムトリブトキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムジブトキシジシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムモノブトキシトリシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムトリイソプロポキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムジイソプロポキシジシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムモノイソプロポキシトリシクロヘキサンカルボキシレートのようなジルコニウムアルコキシシクロヘキサンカルボキシレート;
ジルコニウムトリアルコキシモノアダマンタンカルボキシレート、ジルコニウムジアルコキシジアダマンタンカルボキシレート、ジルコニウムモノアルコキシトリアダマンタンカルボキシレートのようなジルコニウムアルコキシアダマンタンカルボキシレート;
ジルコニウムトリブトキシモノナフテート、ジルコニウムジブトキシジナフテート、ジルコニウムモノブトキシトリナフテート、ジルコニウムトリイソプロポキシモノナフテート、ジルコニウムジイソプロポキシジナフテート、ジルコニウムモノイソプロポキシトリナフテートのようなジルコニウムアルコキシナフテートが挙げられる。
【0039】
環状構造として芳香族炭化水素基を有する化合物C2としては、例えば、ジルコニウムトリブトキシモノベンゼンカルボキシレート、ジルコニウムジブトキシジベンゼンカルボキシレート、ジルコニウムモノブトキシトリベンゼンカルボキシレート、ジルコニウムトリイソプロポキシモノベンゼンカルボキシレート、ジルコニウムジイソプロポキシジベンゼンカルボキシレート、ジルコニウムモノイソプロポキシトリベンゼンカルボキシレートのようなジルコニウムアルコキシベンゼンカルボキシレートが挙げられる。
【0040】
脂肪族炭化水素基を有する化合物C2としては、例えば、ジルコニウムトリブトキシモノイソブチレート、ジルコニウムジブトキシジイソブチレート、ジルコニウムモノブトキシトリイソブチレート、ジルコニウムトリイソプロポキシモノイソブチレート、ジルコニウムジイソプロポキシジイソブチレート、ジルコニウムモノイソプロポキシトリイソブチレートのようなジルコニウムアルコキシブチレート;
ジルコニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムジブトキシジ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムモノブトキシトリ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムトリイソプロポキシモノ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムジイソプロポキシジ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムモノイソプロポキシトリ2エチルヘキサノエートのようなジルコニウムアルコキシ2エチルヘキサノエート;
ジルコニウムトリブトキシモノネオデカネート、ジルコニウムジブトキシジネオデカネート、ジルコニウムモノブトキシトリネオデカネート、ジルコニウムトリイソプロポキシモノネオデカネート、ジルコニウムジイソプロポキシジネオデカネート、ジルコニウムモノイソプロポキシトリネオデカネートのようなジルコニウムアルコキシネオデカネートが挙げられる。
【0041】
なかでも、耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、(C)成分として化合物C2を用いる場合、環状構造として脂環式炭化水素基を有する化合物C2、環状構造として芳香族炭化水素基を有する化合物C2が好ましく、ジルコニウムトリアルコキシモノナフテート、ジルコニウムトリアルコキシモノイソブチレート、ジルコニウムトリアルコキシモノ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムトリアルコキシモノシクロプロパンカルボキシレート、ジルコニウムトリアルコキシシクロブタンカルボキレート、ジルコニウムトリアルコキシモノシクロペンタンカルボキシレート、ジルコニウムトリアルコキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムトリアルコキシモノアダマンタンカルボキシレート、ジルコニウムトリアルコキシモノナフテートがより好ましく、ジルコニウムトリブトキシモノナフテート、ジルコニウムトリブトキシモノイソブチレート、ジルコニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムトリブトキシモノシクロプロパンカルボキシレート、ジルコニウムトリブトキシモノシクロペンタンカルボキシレート、ジルコニウムトリブトキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムトリブトキシモノアダマンタンカルボキシレート、ジルコニウムトリブトキシモノナフテートがさらに好ましい。
【0042】
化合物C2は、耐熱着色安定性により優れるという観点から、1〜3個のアシル基(エステル結合)を有するアルコシキ基含有ジルコニウム金属塩であるのが好ましい。
1〜3個のアシル基を有するアルコシキ基含有ジルコニウム金属塩としては、例えば、ジルコニウムトリブトキシモノナフテート、ジルコニウムトリブトキシモノイソブチレート、ジルコニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムトリブトキシモノネオデカネート、ジルコニウムジブトキシジナフテート、ジルコニウムジブトキシジイソブチレート、ジルコニウムジブトキシジ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムジブトキシジネオデカネート、ジルコニウムモノブトキシトリナフテート、ジルコニウムモノブトキシトリイソブチレート、ジルコニウムモノブトキシトリ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムモノブトキシトリネオデカネートが挙げられる。
なかでも、耐熱着色安定性により優れ、相溶性に優れるという観点から、(C)成分として化合物C2を用いる場合、化合物C2は、ジルコニウムトリブトキシモノナフテート、ジルコニウムトリブトキシモノイソブチレート、およびジルコニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
化合物C2の製造方法としては、例えば、Zr(OR[Rは同一または異なり炭素原子数1〜18の炭化水素基である。Rは式(2)におけるRと同義である。例えばジルコニウムテトラアルコキシドが挙げられる。]1モルに対して、R−COOHで表されるカルボン酸[Rは同一または異なり炭素原子数1〜16の炭化水素基である。Rは式(2)におけるRと同義である。]1モル以上4モル未満を用いて、窒素雰囲気下、20〜80℃の条件下で攪拌することによって製造することができる。
また、Zrアルコラートとカルボン酸の反応についてはD.C.Bradley著「Metal alkoxide」Academic Press(1978)を参考とすることができる。
【0044】
化合物C2を製造するために使用することができるZr(ORとしては、例えば、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシドが挙げられる。
【0045】
化合物C2を製造するために使用することができるカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、イソブタン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、ラウリン酸のような脂肪族カルボン酸;ナフテン酸、シクロプロパンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキシルカルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、アダマンタンカルボン酸、ノルボルナンカルボン酸のような脂環式カルボン酸;安息香酸のような芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0046】
1.3.3.ハフニウム化合物
本発明の組成物が(C)成分として含有することができる有機基を有するハフニウム化合物は、ハフニウム原子および有機基を有する化合物であれば特に制限されない。なかでも、ハフニウム化合物は、耐硫化性により優れ、硬化性に優れるという観点から、下記式(I)で表される化合物および/または下記式(II)で表される化合物であるのが好ましい。
【化11】


[式(I)中、nは1〜4の整数であり、R1は炭化水素基であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基である。]
【化12】


[式(II)中、mは1〜4の整数であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基であり、R3、R4は同一のまたは異なる、炭素数1〜18の炭化水素基またはアルコキシ基である。]
【0047】
式(I)で表されるハフニウム化合物について以下に説明する。
【化13】


[式(I)中、nは1〜4の整数であり、R1は炭化水素基であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基である。]
【0048】
1における炭化水素基としては例えば炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基(アルキル基;アリル基のような不飽和脂肪族炭化水素基を含む。)、脂環式炭化水素基、アリール基(芳香族炭化水素基)、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は直鎖状でも分岐していてもよい。炭化水素基は不飽和結合を有することができる。炭化水素基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
1における炭化水素基は、耐硫化性により優れ、耐熱性(例えば耐熱着色安定性)に優れ、薄膜硬化性に優れ、熱硬化性、相溶性に優れるという観点から、環状構造を有するのが好ましく、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせであるのがより好ましい。R1は環状構造のほかに例えば脂肪族炭化水素基を有することができる。
【0049】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基のようなシクロアルキル基;ナフテン環(ナフテン酸由来のシクロパラフィン環);アダマンチル基、ノルボルニル基のような縮合環系炭化水素基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレンが挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基が挙げられる。
なかでも、耐硫化性により優れ、耐熱性(例えば耐熱着色安定性)に優れ、薄膜硬化性に優れ、熱硬化性、相溶性に優れるという観点から、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が好ましく、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ナフテン環、アダマンチル基、ノルボルニル基、フェニル基、ナフチル基およびアズレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であるがより好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ナフテン環(R1COO−としてのナフテート基)、フェニル基がさらに好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ナフテン環が特に好ましい。
【0050】
式(I)においてR2は炭素数1〜18のアルキル基である。R2において炭素原子数は、耐硫化性により優れ、耐熱性(例えば耐熱着色安定性)に優れ、薄膜硬化性に優れ、熱硬化性、相溶性に優れるという観点から、3〜8であるのが好ましい。
【0051】
2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基が挙げられる。
なかでも、硬化性により優れ、耐熱性(例えば耐熱着色安定性)に優れ、薄膜硬化性に優れ、熱硬化性、相溶性に優れるという観点から、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基、ペンチル基が好ましい。
【0052】
環状構造として脂環式炭化水素基を有するハフニウム化合物としては、例えば、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)シクロプロパンカルボキシレート、ハフニウムテトラシクロプロパンカルボキシレート、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)シクロペンタンカルボキシレート、ハフニウムテトラシクロペンタンカルボキシレート、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)シクロヘキサンカルボキシレート、ハフニウムテトラシクロヘキサンカルボキシレート、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)アダマンタンカルボキシレート、ハフニウムテトラアダマンタンカルボキシレート、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)ナフテート、ハフニウムテトラナフテートが挙げられる。
【0053】
環状構造として芳香族炭化水素基を有するハフニウム化合物としては、例えば、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)ベンゼンカルボキシレート、ハフニウムテトラベンゼンカルボキシレートが挙げられる。
【0054】
脂肪族炭化水素基を有するハフニウム化合物としては、例えば、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)ブチレート、ハフニウムテトラブチレート、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)2エチルヘキサノエート、ハフニウムテトラ2エチルヘキサノエート、
ハフニウムアルコキシ(モノ〜トリ)ネオデカネート、ハフニウムテトラネオデカネートが挙げられる。
なお本願明細書において「(モノ〜トリ)」は、モノ、ジおよびトリのうちのいずれかであることを意味する。
【0055】
なかでも、薄膜硬化性に優れ、耐熱性(例えば耐熱着色安定性に優れる。)に優れ、熱硬化性、相溶性に優れるという観点から、ハフニウムトリアルコキシモノナフテート、ハフニウムトリアルコキシモノイソブチレート、ハフニウムトリアルコキシモノ2エチルヘキサノエート、ハフニウムトリアルコキシモノシクロプロパンカルボキシレート、ハフニウムトリアルコキシシクロブタンカルボキレート、ハフニウムトリアルコキシモノシクロペンタンカルボキシレート、ハフニウムトリアルコキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ハフニウムトリアルコキシモノアダマンタンカルボキシレート、ハフニウムトリアルコキシモノベンゼンカルボキシレート、ハフニウムジアルコキシジナフテートが好ましく、ハフニウムトリブトキシモノナフテート、ハフニウムトリブトキシモノイソブチレート、ハフニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエート、ハフニウムトリブトキシモノシクロプロパンカルボキシレート、ハフニウムトリブトキシモノシクロペンタンカルボキシレート、ハフニウムトリブトキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ハフニウムトリアルコキシモノベンゼンカルボキシレート、ハフニウムトリブトキシモノアダマンタンカルボキシレート、ハフニウムジブトキシジナフテート、ハフニウムトリプロポキシモノナフテートがより好ましい。
【0056】
式(II)で表されるハフニウム化合物について以下に説明する。
【0057】
【化14】


[式(II)中、mは1〜4の整数であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基であり、R3、R4は同一のまたは異なる、炭素数1〜18の炭化水素基またはアルコキシ基である。]
炭素数1〜18のアルキル基は式(I)におけるR2(炭素数1〜18のアルキル基)と同義である。
炭素数1〜18の炭化水素基は式(I)におけるR1(炭化水素基)の炭素数が1〜18であるものと同様である。
アルコキシ基としては例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基のような炭素数1〜18のものが挙げられる。
3、R4は、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のようなハロゲンを有してもよい。
なお式(II)においてR3、R4は入れ替わってもよい。
【0058】
式(II)で表されるハフニウム化合物としては例えば、
ハフニウムアルコキサイド(モノ〜トリ)2,4−ペンタジオネート、ハフニウム−2,4−ペンタジオネート、ハフニウムアルキルペンタジオネート、ハフニウムフルオロペンタジオネートが挙げられる。
なかでも、耐硫化性により優れ、薄膜硬化性に優れ、耐熱性(例えば耐熱着色安定性に優れる。)に優れ、熱硬化性、相溶性に優れるという観点から、ハフニウムジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタジオネート)、ハフニウム−2,4−ペンタジオネート、ハフニウムテトラメチルペンタジオネート、ハフニウムトリフルオロペンタジオネートが好ましい。
【0059】
耐熱着色安定性により優れ、貯蔵安定性に優れるという観点から、(C)成分の量は(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であるのが好ましく、0.01〜0.5質量部であるのがより好ましく、0.001〜0.05質量部であるのがさらに好ましい。
【0060】
1.4.(D)成分
(D)成分である亜鉛化合物は、亜鉛を含有する化合物であり、例えば、亜鉛を含有する錯体および/または金属塩である。本実施形態に係る組成物が(D)成分である亜鉛化合物を含有することにより、該亜鉛化合物が硫黄と結合することで、硬化物に耐硫化性を付与することができる。これにより、銀の腐食を防止して、透明性を保持することができる。また、本実施形態に係る組成物を用いて得られる硬化物は、樹脂を硬くしなくても十分耐硫化性がある。このため、前記硬化物は、クラックが生じにくく適度な硬度を有するシリコーン樹脂であることができる。このため、硬化物が光半導体封止体として用いられる場合、該封止体に含まれるワイヤーの断線を防止することができる。
【0061】
亜鉛化合物は、亜鉛を含む化合物であれば特に制限されない。例えば、亜鉛塩;亜鉛錯体;亜鉛アルコラート;亜鉛華、スズ酸亜鉛などの亜鉛酸化物;亜鉛を含む2元および/または多元金属酸化物、これらの塩および/または錯体、これらの組み合わせが挙げられる。なかでも、耐硫化性、透明性により優れるという観点から、亜鉛塩および/または亜鉛錯体であるのが好ましい。亜鉛塩は亜鉛と酸(無機酸、有機酸を含む。)とから形成される塩であれば特に制限されない。亜鉛錯体は亜鉛と配位子とから形成されるキレート化合物であれば特に制限されない。
【0062】
(D)成分である亜鉛を含有する錯体および金属塩としては、例えば、亜鉛ビスアセチルアセトネート、亜鉛ビス2−エチルヘキサノエート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛ネオデカネート等のカルボン酸塩、亜鉛華、スズ酸亜鉛などの亜鉛酸化物が挙げられる。
例えば、本実施形態に係る組成物を用いて形成される硬化物が透明性を要求されるものである場合、(D)成分は、(D)成分を樹脂中に添加した場合の樹脂の透過率が例えば、波長400nmの光の透過率が70%以上である亜鉛化合物であるのが好ましい。
【0063】
亜鉛化合物としては、具体的には例えば、下記式(1)、式(2)で表されるもの、サリチル酸化合物の亜鉛錯体、ジアミン化合物の亜鉛錯体が挙げられる。
式(1)で表される亜鉛化合物は以下のとおりである。
Zn(O−CO−R12 (1)
式(1)中、R1が炭素数1〜18のアルキル基、アリール基である。炭素数1〜18のアルキル基、アリール基は上記式(I)中のR1におけるアルキル基、アリール基と同様である。式中のCOはカルボニル基(C=O)である。
式(1)で表される亜鉛化合物が塩である場合、亜鉛塩としては例えば、下記式(1′)が挙げられる。
【化15】


上記式(1′)中、R1は式(1)と同様である。
式(1)で表される亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛アセテート、亜鉛2−エチルヘキサノエート、亜鉛オクトエート、亜鉛ネオデカネート;亜鉛アセチルアセテート;亜鉛(メタ)アクリレート;亜鉛サリチレート等のカルボン酸塩が挙げられる。
【0064】
式(2)で表される亜鉛化合物は以下のとおりである。
Zn(R2COCHCOR32 (2)
式(2)中、R2、R3は同一または異なる炭素数1〜18の1価の炭化水素基、アルコキシ基である。式中のCOはカルボニル基(C=O)である。
式(2)で表される亜鉛化合物が錯体である場合、亜鉛錯体としては例えば、下記式(2′)が挙げられる。
【化16】


上記式(2′)中、R2、R3は式(2)と同様であり、同一の(R2COCHCOR3)内にあるR2、R3は入れ替わっていてもよい。
炭素数1〜18の1価の炭化水素基としては例えば炭素数1〜18のアルキル基、アリール基が挙げられる。炭素数1〜18のアルキル基、アリール基は上記と同義である。
アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。
式(2)で表される亜鉛化合物としては、例えば、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛錯体、2,2,6,6,6テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート亜鉛錯体等が挙げられる。
【0065】
亜鉛化合物は、金属層の耐硫化性をより優れたものとし、金属層の腐食(例えば変色)をより抑制することができるという観点から、式(1)または式(2)で表されるもの、これらの併用であるのが好ましく、亜鉛アセテート、亜鉛2−エチルヘキサノエート、亜鉛オクトエート、亜鉛ネオデカネート、亜鉛アセチルアセテート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛サリチレート、ビス(アセチルアセトナート)亜鉛錯体、2,2,6,6,6テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート亜鉛錯体がより好ましい。
【0066】
本実施形態に係る化合物は、耐硫化性を確実に発現させることができる観点から、(D)成分を(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して0.001〜5質量部含有することが好ましく、0.01〜0.5質量部含有することがより好ましく、0.1〜0.5質量部であるのがさらに好ましい。
(D)成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
本実施形態に係る組成物は、耐硫化性に優れているという観点から、実質的に、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分とからなる組成物(以上の4つの成分のみを含有する組成物)とすることができる。ここで、「実質的に〜からなる組成物」とは、以上の4つの成分以外の成分が5質量%以下であることをいう。
【0068】
1.6.その他の成分
また、本実施形態に係る組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分以外に、本発明の目的や効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤、ビスアルコキシシリルアルカンやカップリング剤のような接着付与剤、イソシアヌレート化合物(密着付与剤)が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0069】
添加剤としてのビス(アルコキシシリル)アルカンは接着付与剤であり、2価のアルカン(アルキレン基)と2つのアルコキシシリルとを有する化合物である。本発明の組成物がさらにビス(アルコキシシリル)アルカンを含有する場合接着性、密着性に優れる。アルコキシシリル基はアルコキシ基のほかに例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基を有することができる。2価のアルカンは例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。2価のアルカンは具体的には例えば、イミノ基(−NH−)を有することができる。2価のアルカンはヘテロ原子[例えば、イミノ基(−NH−)]を介して2つのアルキレン基が結合するものであってもよい。ビス(アルコキシシリル)アルカンとしては、例えば、下記式(VII)で表されるものが挙げられる。
【化17】


式中、R7〜R8はそれぞれアルキル基であり、R9は酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい2価のアルカン(アルキレン基)であり、aはそれぞれ1〜3の整数である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。R9としての2価のアルカンは炭素原子数1〜10のアルキレン基が挙げられる。2価のアルカンは上記と同義である。
【0070】
ビス(アルコキシシリル)アルカンとしては、例えば、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ブタン、1−メチルジメトキシシリル−4−トリメトキシシリルブタン、1,4−ビス(メチルジメトキシシリル)ブタン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、1−メチルジメトキシシリル−5−トリメトキシシリルペンタン、1,5−ビス(メチルジメトキシシリル)ペンタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、2,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,5−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、2,7−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、2,7−ビス(トリメトキシシリル)ノナン、1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカン、3,8−ビス(トリメトキシシリル)デカン;ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンのような2価のアルカンが窒素原子を有するものが挙げられる。
【0071】
ビス(アルコキシシリル)アルカンは、透明性に優れ、硬化性、平滑性、貯蔵安定性に優れ、可使時間、硬化時間が適切な長さとなるという観点から、式(VII)で表されるものが好ましく、ビス(トリアルコキシシリル)アルカンがより好ましく、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンがさらに好ましい。
ビス(アルコキシシリル)アルカンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
ビス(アルコキシシリル)アルカンの量は、透明性に優れ、硬化性、平滑性、貯蔵安定性に優れ、可使時間、硬化時間が適切な長さとなるという観点から、(A)ポリシロキサンと(B)シラン化合物との合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのが好ましい。
【0073】
添加剤としてのイソシアヌレート化合物はポリイソシアネートの3量体によってイソシアヌレート骨格を形成する化合物であれば特に制限されない。本発明の組成物がさらにイソシアヌレート化合物を含有する場合接着性、密着性に優れる。イソシアヌレート化合物としては例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化18】


式(1)中、Rはそれぞれ有機基または脂肪族不飽和結合を有する一価の炭化水素基である。さらにRはエポキシ基、グリシドキシ基、アルコキシシリル基、(メタ)アクリロイル基などを含むことができる。Rはエポキシ基、グリシドキシ基、アルコキシシリル基および(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれる少なくとも1種と炭化水素基[例えば、脂肪族炭化水素基(鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、不飽和結合を含んでもよい。)、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。]とを組み合わせたものとすることができる。有機基は上記と同様のものが挙げられる。アルコキシシリル基が有するアルコキシ基は1〜3個とすることができ、アルコキシ基が有する炭素原子数は1以上とすることができる。アルコキシシリル基はアルコキシ基以外に炭化水素基を有することができる。炭化水素基は特に制限されない。
上記式で表されるイソシアヌレート誘導体としては、例えば、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
イソシアヌレート化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアヌレート化合物の量は、接着性、密着性及び透明性に優れるという観点から、(A)ポリシロキサンと(B)シラン化合物との合計100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましい。
【0074】
無機蛍光体としては、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y22S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体が挙げられる。
【0075】
本実施形態に係る組成物は、貯蔵安定性に優れるという観点から、実質的に水を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に水を含まないとは、本発明の組成物中における水の量が0.1質量%以下であることをいう。
また、本実施形態に係る組成物は、作業環境性に優れるという観点から、実質的に溶媒を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に溶媒を含まないとは、本発明の組成物中における溶媒の量が1質量%以下であることをいう。
【0076】
1.7.製造
本実施形態に係る組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分と、必要に応じて使用することができる、添加剤とを混合することによって製造することができる。
【0077】
本実施形態に係る組成物は1液型または2液型として製造することが可能である。本実施形態に係る組成物を2液型とする場合、(A)成分と(C)成分と(D)成分とを含む第1液と、(B)成分を含む第2液とを有するものとするのが好ましい態様の1つとして挙げられる。添加剤は第1液および第2液のうちの一方または両方に加えることができる。
【0078】
1.8.用途および使用方法
本実施形態に係る組成物は、光半導体封止用組成物として使用することができる。
本実施形態に係る組成物を適用することができる光半導体は特に制限されない。例えば、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイが挙げられる。
本実施形態に係る組成物の使用方法としては、例えば、光半導体に本実施形態に係る組成物を付与し、本実施形態に係る組成物が付与された光半導体を加熱して本実施形態に係る組成物を硬化させることが挙げられる。本実施形態に係る組成物を付与する方法は特に制限されない。例えば、ディスペンサーを使用する方法、ポッティング法、スクリーン印刷、トランスファー成形、インジェクション成形が挙げられる。
【0079】
本実施形態に係る組成物は加熱によって硬化させることができる。
加熱温度は、硬化時間、可使時間を適切な長さとすることができ、縮合反応による副生成物であるアルコールが発泡するのを抑制でき、硬化物のクラックを抑制でき、硬化物の平滑性、成形性、物性に優れるという観点から、80℃〜150℃付近で硬化させるのが好ましく、150℃付近がより好ましい。
加熱は、硬化性、透明性に優れるという観点から、実質的に無水の条件下で行うことができる。本発明において、加熱が実質的に無水の条件下でなされるとは、加熱における環境の大気中の湿度が10%RH以下であることをいう。
【0080】
本実施形態に係る組成物を加熱し硬化させることによって得られる硬化物(シリコーン樹脂)は、長期のLED(なかでも白色LED)による使用に対して、高い透明性を保持することができ、耐硫化性、耐熱着色安定性および耐クラック性に優れる。得られる硬化物は架橋部分、骨格がすべてシロキサン結合なので従来のシリコーン樹脂より耐熱着色安定性に優れる。
【0081】
本実施形態に係る組成物を用いて得られる硬化物(硬化物の厚さが2mmである場合)は、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製、以下同様。)を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0082】
また、本実施形態に係る組成物を用いて得られる硬化物は、初期硬化の後耐熱試験(初期硬化後の硬化物を150℃下に10日間置く試験)を行いその後の硬化物(厚さ:2mm)について、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視スペクトル測定装置を用いて波長400nmにおいて測定された透過率が、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのがより好ましい。
【0083】
本実施形態に係る組成物を用いて得られる硬化物は、その透過性保持率(耐熱試験後の透過率/初期硬化の際の透過率×100)が、70〜100%であるのが好ましく、80〜100%であるのがより好ましい。
【0084】
本実施形態に係る組成物は、光半導体以外にも、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途に用いることができる。
【0085】
2.光半導体封止体
次に、本発明の第2実施形態に係る光半導体封止体について以下に説明する。
本実施形態に係る光半導体封止体は、上述の第1実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を用いてLEDチップを封止したものである。
本実施形態に係る光半導体封止体は、上記第1実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得ることができる。
【0086】
本実施形態に係る光半導体封止体に使用される組成物は、上記第1実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物であれば特に制限されない。
本実施形態に係る光半導体封止体において、組成物として上記第1実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を使用することによって、本実施形態に係る光半導体封止体は、クラックが生じにくい適度な硬度を有し、耐硫化性および透明性に優れているうえに、LED等の光半導体チップからの発熱や発光等に対する耐熱着色安定性に優れている。
【0087】
本実施形態に係る光半導体封止体に使用されるLEDチップは、発光素子として発光ダイオードを有する電子回路であれば特に制限されない。
本実施形態に係る光半導体封止体に使用されるLEDチップはその発光色について特に制限されない。例えば、白色、青色、赤色、緑色が挙げられる。本実施形態に係る光半導体封止体は、LEDチップからの発熱による高温下に長時間さらされても、耐熱着色安定性に優れるという観点から、白色LEDに対して適用することができる。
白色LEDは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
LEDチップの大きさ、形状は特に制限されない。また、LEDチップの種類は、特に制限されず、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LEDが挙げられる。
本実施形態に係る光半導体封止体は、1個の光半導体封止体の内部にLEDチップを少なくとも1個以上有するものであり、2個以上のLEDチップを有することができる。
【0088】
本実施形態に係る光半導体封止体の製造方法としては、例えば、LEDチップに本実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を付与する付与工程と、前記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物が付与されたLEDチップを加熱をして加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を硬化させてLEDチップを封止する加熱硬化工程とを有するものが挙げられる。
【0089】
付与工程において、LEDチップに加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を付与し、前記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物が付与されたLEDチップを得る。付与工程において使用されるLEDチップは上記と同義である。付与工程において使用される組成物は、上記第1実施形態に係る加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物であれば特に制限されない。付与の方法は特に制限されない。
【0090】
次に、加熱硬化工程において、前記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物が付与されたLEDチップを加熱をして前記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を硬化させてLEDチップを封止することによって、本実施形態に係る光半導体封止体を得ることができる。加熱硬化工程における加熱温度は上記と同義である。
【0091】
本実施形態に係る光半導体封止体の態形としては、例えば、硬化物が直接LEDチップを封止しているもの、砲弾型、表面実装型、複数のLEDチップまたは光半導体封止体の間および/または表面を封止しているものが挙げられる。
【0092】
本実施形態に係る光半導体封止体について添付の図面を用いて以下に説明する。なお、本実施形態に係る光半導体封止体は添付の図面に限定されない。図1は、本実施形態に係る光半導体封止体の一例を模式的に示す上面図であり、図2は図1に示す光半導体封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
図1において、600は本実施形態に係る光半導体封止体であり、光半導体封止体600は、LEDチップ601と、LEDチップ601を封止する硬化物603とを備える。上記第1実施形態に係る組成物は加熱後、硬化物603となる。なお、図1において基板609は省略されている。
図2において、LEDチップ601は基板609に例えば接着剤、はんだ(図示せず。)によってボンディングされ、またはフリップチップ構造とすることによって接続されている。なお、図2において、ワイヤ、バンプ、電極等は省略されている。
また、図2におけるTは、硬化物603の厚さを示す。すなわち、Tは、LEDチップ601の表面上の任意の点605から、点605が属する面607に対して鉛直の方向に硬化物603の厚さを測定したときの値である。
本実施形態に係る光半導体封止体は、透明性を確保し、密閉性に優れるという観点から、その厚さ(図2におけるT)が0.1mm以上であるのが好ましく、0.5〜1mmであるのがより好ましい。
【0093】
本実施形態に係る光半導体封止体の一例として白色LEDを使用する場合について添付の図面を用いて以下に説明する。図3は、本実施形態に係る光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。図8は、本実施形態に係る光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。図4は、本実施形態に係る光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【0094】
図3において、光半導体封止体200は基板210の上にパッケージ204を有する。
パッケージ204には、内部にキャビティー202が設けられている。キャビティー202内には、青色LEDチップ203と硬化物202とが配置されている。硬化物202は、上記第1実施形態に係る組成物を硬化させたものである。この場合、本実施形態に係る組成物は光半導体封止体200を白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を含有することができる。
青色LEDチップ203は、基板210上にマウント部材201で固定されている。青色LEDチップ203の各電極(図示せず。)と外部電極209とは導電性ワイヤー207によってワイヤーボンディングさせている。
キャビティー202において、斜線部206まで上記第1実施形態に係る組成物で充填してもよい。
または、キャビティー202内を他の組成物で充填し、斜線部206を上記第1実施形態に係る組成物で充填することができる。
【0095】
図8は、図3に示す光半導体封止体200がさらにパッケージ内に銀メッキ層を有する場合を示すものである。
図8において、光半導体封止体800はパッケージ204内に銀メッキ層810を有する。光半導体封止体800はパッケージ204内に銀メッキ層810を有する以外は図3と同様である。
硬化物202および/または斜線部206を、第1実施形態に係る組成物を硬化させたものとすることができる。
パッケージの内部(例えば、図8における内部202および/または内部206)を本発明の組成物で封止することによって、耐硫化性を高め銀メッキ層の変色を抑制することができ、光半導体の輝度や透明性を低下させることがない。
また、パッケージの内部(例えば、図8における内部202、または内部202および内部206)を本発明の組成物で封止する場合、光半導体封止体は低硬度で硬化収縮が小さいため、硬化収縮によるLEDパッケージからのハガレやワイヤーの断線を抑制することができる。
【0096】
図4において、本実施形態に係る光半導体封止体300は、ランプ機能を有する樹脂306の内部に基板310、青色LEDチップ303およびインナーリード305を有する。
基板310の頭部にはキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティーには、青色LEDチップ303と硬化物302とが配置されている。硬化物302は、上記第1実施形態に係る組成物を硬化させたものである。この場合、上記第1実施形態に係る組成物は光半導体封止体300を白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を含有することができる。また、樹脂306を上記第1実施形態に係る組成物を用いて形成することができる。
青色LEDチップ303は、基板310上にマウント部材301で固定されている。
青色LEDチップ303の各電極(図示せず。)と基板310およびインナーリード305とはそれぞれ導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングさせている。
【0097】
なお、図3、図4においてLEDチップを青色LEDチップとして説明したが、キャビティー内に赤色、緑色および青色の3色のLEDチップを配置すること、赤色、緑色および青色の3色のLEDチップのうちの1色または2色を選択してキャビティー内に配置し、選択したLEDの色に応じてLEDチップを白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を組成物に添加することができる。キャビティー内に上記第1実施形態に係る組成物を例えばポッティング法によって充填し加熱することによって光半導体封止体とすることができる。
【0098】
本実施形態に係る光半導体封止体をLED表示器に利用する場合について添付の図面を用いて説明する。図5は、本実施形態に係る光半導体封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。図6は、図5に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。なお、本実施形態に係る光半導体封止体が使用されるLED表示器、LED表示装置は添付の図面に限定されない。
【0099】
図5において、LED表示器(本実施形態に係る光半導体封止体)400は、白色LEDチップ401を筐体404の内部にマトリックス状に配置し、白色LEDチップ401を硬化物406で封止し、筐体404の一部に遮光部材405を配置して構成されている。上記第1実施形態に係る組成物を硬化物406に使用することができる。また、白色LEDチップ401として本実施形態に係る光半導体封止体を使用することができる。
【0100】
図6において、LED表示装置500は、白色LEDを用いるLED表示器501を具備する。LED表示器501は、駆動回路である点灯回路などと電気的に接続される。駆動回路からの出力パルスによって種々の画像が表示可能なディスプレイ等とすることができる。駆動回路としては、入力される表示データを一時的に記憶させるRAM(Random、Access、Memory)504と、RAM504に記憶されるデータから個々の白色LEDを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路(CPU)503と、階調制御回路(CPU)503の出力信号でスイッチングされて、白色LEDを点灯させるドライバー502とを備える。階調制御回路(CPU)503は、RAM504に記憶されるデータから白色LEDの点灯時間を演算してパルス信号を出力する。なお、本実施形態に係る光半導体封止体はカラー表示できる、LED表示器やLED表示装置に使用することができる。
【0101】
本実施形態に係る光半導体封止体の用途としては、例えば、自動車用ランプ(ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクターが挙げられる。
【実施例】
【0102】
3.実施例
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0103】
3.1.(C)成分の製造
3.1.1.ジルコニウムトリブトキシモノナフテート(ジルコニウム化合物2)の製造
87.5質量%濃度のジルコニウムテトラブトキシド(関東化学社製)11.4g(0.026mol)とナフテン酸(東京化成社製、カルボキシ基に結合する炭化水素基の炭素原子数の平均:15、中和価220mg、以下同様。)6.6g(0.026mol)とを三ツ口フラスコに投入し窒素雰囲気下、室温で2時間程度攪拌し目的合成物とした。
なお、ナフテン酸の中和価はナフテン酸1gを中和するのに必要なKOHの量である。
合成物の定性はフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いてその分析を行った。その結果、カルボン酸由来のCOOHに帰属される1700cm−1付近の吸収が反応後は消失し、1450〜1560cm−1付近のCOOZrに由来するピークを確認した。
得られた合成物(ジルコニウム金属塩)をジルコニウム化合物2とする。ジルコニウム化合物2が有するナフテート基(RCOO−)中のRの平均炭素原子数は15である。
【0104】
3.1.2.トリブトキシハフニウム2エチルヘキサノエート(ハフニウム化合物1)の製造
ハフニウムテトラブトキシド(Gelest社製)0.026molと2エチルヘキサン酸0.026molとを三ツ口フラスコに投入し窒素雰囲気下、室温で2時間程度攪拌し目的合成物とした。
合成物の定性はフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いてその分析を行った。その結果、カルボン酸由来のCOOHに帰属される1700cm−1付近の吸収が反応後は消失し、1450〜1560cm−1付近のCOOHfに由来するピークを確認した。得られた合成物をハフニウム化合物1とする。
【0105】
3.2.評価
以下に示すように、透過率、耐熱着色安定性、混合後の増粘、耐硫化性、硬化状態、硬度について評価した。結果を表1、表2に示す。
3.2.1.透過率評価試験
透過率評価試験において、下記のようにして得られた加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で12時間硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物をさらに150℃の条件下で10日間加熱する試験。)後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)についてそれぞれ、JIS K0115:2004に準じ紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて波長400nmにおける透過率を測定した。また、耐熱試験後の透過率の初期の透過率に対する保持率を下記計算式によって求めた。
透過率保持率(%)=(耐熱試験後の透過率)/(初期の透過率)×100
【0106】
3.2.2.耐熱着色安定性評価試験
下記のようにして得られた加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間硬化させて得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物を150℃の条件下で10日間加熱する試験。)後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)について、耐熱試験後の硬化物が、初期硬化物と比較して黄変したかどうかを目視で観察した。
【0107】
3.2.3.混合後の増粘
表1〜表2に示す成分を混合して製造した直後における25℃の条件下での組成物の粘度(初期粘度)と、得られた組成物を25℃の条件下に置き製造から24時間経過した後の組成物の粘度(24時間後の粘度)とを、E型粘度計を用いてRH50%、25℃の条件下で測定し、混合から24時間後の粘度の増加を確認した。
【0108】
3.2.4.耐硫化性
硬化サンプル作製:銀メッキ上に(A)〜(D)成分を配合したシリコーン樹脂組成物を厚さ1mm程度になるよう塗布し、150℃で12時間加熱して硬化させて、硬化サンプルを作製した。
試験:10Lのデシケーターの底に粉状に粉砕した硫化鉄を10g程度(塩酸0.5mmolに対して大過剰))を置き、この硫化鉄の上方に、硫化鉄に接触しないように目皿(貫通孔を有する)をデシケーター内に取り付け、この目皿の上に硬化サンプルを置いた。次に、大過剰の硫化鉄に0.5mmolの塩酸を滴下することにより、0.25mmolの硫化水素(濃度:約500ppm、理論値560ppm)を発生させた(反応式:FeS+2HCl→FeCl2+H2S)。1時間ごとに目視により銀の変色を確認した。表1において、目視により変色が確認されなかったものを「○」、目視により変色が確認されたものを「×」とした。 本発明において耐硫化試験での硫化水素の濃度は理論値560ppmであるものとする。耐硫化試験では塩酸を0.5mmol添加しているので硫化水素は0.25mmol(0.25mmol×22.4リットル=5.6ミリリットル)生成する。故に硫化水素の濃度は[5.6ミリリットル/10リットル(デシケータの容積)]×106=560ppmとなる。
【0109】
3.2.5.硬化状態
下記のようにして得られた加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で12時間硬化させて得られた硬化物を触手で観察した。表1において、硬化物の状態に例えば表面タックが確認されなかったものを「○」、硬化物の状態に表面タック、ゲル、未硬化が確認されたものを「×」とした。
【0110】
3.2.6.硬度
下記のようにして得られたサンプル(加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で12時間硬化させて得られた初期硬化物)のJIS A硬度をJIS K6523:2006の規定に準じて測定した。
【0111】
3.3.サンプルの作製(透過率、耐熱着色安定性、硬化状態および硬度の評価用)
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図7は、実施例において本発明の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用した型を模式的に表す断面図である。
図7において、型8は、ガラス3(ガラス3の大きさは、縦10cm、横10cm、厚さ4mm)の上にPETフィルム5が配置され、PETフィルム5の上にシリコンモールドのスペーサー1(縦5cm、横5cm、高さ2mm)を配置されているものである。
型8を用いてスペーサー1の内部6に組成物6を流し込み、次のとおりサンプルの硬化を行った。
【0112】
組成物6が充填された型8を電気オーブンに入れて、上記の評価の条件で加熱して組成物6を硬化させ、厚さ2mmの硬化物6(初期硬化物)を製造した。得られた硬化物6を透過率、耐熱着色安定性、硬化状態および硬度の評価用のサンプルとして用いた。
【0113】
3.4.加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物の製造
下記表1、表2に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で真空かくはん機を用いて均一に混合し加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を製造した。
表1の実施例1〜3の組成物は(D)成分を含有する。一方、表1の比較例1〜4、6の組成物は(D)成分を含有しない。比較例1〜2は(D)成分を含有しない以外は、実施例1〜2とそれぞれ同様の成分を含有し、比較例3および4は(D)成分の代わりにそれぞれアルミ化合物またはマグネシウム化合物を含有する。比較例6はエポキシ樹脂を用いた例である。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
表1、表2に示されている各成分は、以下のとおりである。
・(A)ポリシロキサン1:ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(重量平均分子量6,000)、商品名x−21−5841、信越化学工業社製
・(A)ポリシロキサン2:ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール、商品名x−−21−5848(信越化学工業社製、重量平均分子量110,000)
・エポキシ樹脂:ビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ液状樹脂(商品名:EP4100、旭電化工業製)
・(B)シラン化合物1:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(分子量248)、商品名KBM503、信越化学工業社製
・(B)シラン化合物2:シリコーンアルコキシオリゴマー[RSi(OR′)(4−m−n)/2(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、R′は炭素数1〜6のアルキル基であり、mは0<m<2、nは0<n<2、m+nは0<m+n≦3である)。重量平均分子量6,000。商品名x−40−9246、信越化学工業社製。以下同様]
・(B)シラン化合物3:三つ口のセパラブルフラスコに両末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン(ss70、信越化学工業社製、Mw=18000)100重量部、テトラメトキシシラン(KBM−04、信越化学工業社製)20重量部、2エチルヘキサノエートスズ0.01重量部を投入、均一に攪拌した後、80℃で8時間程度で減圧しながら攪拌し、反応させた。その後余剰のテトラメトキシシランを除去するため130℃で4時間減圧した。プロトンNMRによりシラノールのピークの消失を確認し、両末端トリメトキシシリルを有するシラン化合物3(トリメトキシシランのオリゴマーを両末端に有し、主鎖がジオルガノポリシロキサンである、両末端トリメトキシリルジメチルポリシロキサン)とした。シラン化合物3の重量平均分子量(クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表わされるもの)は35,000であった。
・(C)ジルコニウム化合物1:ナフテン酸ジルコニル(商品名:ナフテックスジルコニウム、日本化学産業製)
・(C)ジルコニウム化合物2:上述のとおり製造したジルコニウム化合物2
・(C)ハフニウム化合物1:上述のとおり製造したトリブトキシハフニウム2エチルヘキサノエート
・(C)ハフニウム化合物2:ハフニウム2,4ペンタジオネート、Gelest社製
・(D)亜鉛化合物1:亜鉛ビスアセチルアセトネート、関東化学製
・(D)亜鉛化合物2:亜鉛ビス2エチルヘキサノエート、ホープ製薬製
・アルミ化合物:エチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート(商品名:AL−CH,川研ファインケミカル社製)
・マグネシウム化合物:マグネシウムビス(2−エチルヘキサノエート)(商品名:ニッカオクチックスマグネシウム、日本化学産業社製)
・カチオン重合触媒:BF3・Et2O(BF3エチルエテラート錯体、東京化成工業社製)
【0117】
3.5.結果
表1、2に示す結果から明らかなように、(D)成分を含有しない、比較例1〜4、比較例7〜10の組成物を用いて得られた硬化物は耐硫化性に劣った。また、(C)成分を含有しない比較例5の組成物を用いて得られた硬化物は加熱によりゲル状になった。さらに、エポキシ樹脂を含有する比較例6の組成物を用いて得られた硬化物はゲル化し、透過率に劣った。
これに対して、実施例1〜7の組成物を用いて得られた硬化物は、耐硫化性に優れるうえ、透過率および透過率保持率が高いことから透明性を保持することができ、混合後の増粘が低く、かつ可使時間に優れていることが理解できる。また実施例7の結果から明らかなように、(D)成分としてジルコニウム化合物とハフニウム化合物とを併用することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 スペーサー 3 ガラス
5 PETフィルム
6 本発明の組成物(内部、硬化後硬化物6となる)
8 型
200、300、800 本発明の光半導体封止体
201、301 マウント部材
202 キャビティー、硬化物 203、303 青色LEDチップ
302 硬化物
204 パッケージ 206 斜線部
306 樹脂 207、307 導電性ワイヤー
209 外部電極 210、310 基板
305 インナーリード 400、501 LED表示器
401 白色LEDチップ 404 筐体
405 遮光部材 406 硬化物
500 LED表示装置 502 ドライバー
501 LED表示器 503 階調制御手段(CPU)
504 画像データ記憶手段(RAM) 600 本発明の光半導体封止体
601 LEDチップ 603 硬化物
605 点 607 点605が属する面
609 基板 T 硬化物603の厚さ
810 銀メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分;1分子中に2個以上のシラノール基を有するポリシロキサン100質量部と、
(B)成分;1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物0.1〜2000質量部と、
(C)成分;有機基を有する、ジルコニウム化合物および/またはハフニウム化合物と、
(D)成分;亜鉛化合物と、
を含有する、加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)成分が亜鉛を含有する錯体および/または金属塩である、請求項1に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部含有する、請求項1または2に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)成分を前記(A)成分および前記(B)成分の合計100質量部に対して0.001〜5質量部含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ジルコニウム化合物が下記式(1)で表される化合物および/または下記式(2)で表される化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【化1】

・・・(1)
(式中、Rは炭素原子数1〜18の炭化水素基である。)
【化2】

・・・(2)
(式中、Rは同一または異なり炭素原子数1〜16の炭化水素基であり、Rは同一または異なり炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、mは1〜3の整数である。)
【請求項6】
前記式(2)中の前記Rが環状構造を有する、請求項5に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
前記式(2)中の前記Rが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基およびナフテン環からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
前記ハフニウム化合物が、下記式(I)で表される化合物および/または下記式(II)で表される化合物である請求項1〜7のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【化3】


[式(I)中、nは1〜4の整数であり、R1は炭化水素基であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基である。]
【化4】


[式(II)中、mは1〜4の整数であり、R2は炭素数1〜18のアルキル基であり、R3、R4は同一のまたは異なる、炭素数1〜18の炭化水素基またはアルコキシ基である。]
【請求項9】
前記(A)成分が、下記式(3)で表される重量平均分子量1,000〜1,000,000の直鎖状オルガノポリシロキサンを含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【化5】

・・・(3)
(式中、Rは同一または異なり、炭素原子数1〜18のアルキル基またはアリール基を示し、nは1以上の整数である。)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得られる光半導体封止体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−137140(P2011−137140A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253136(P2010−253136)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】