説明

加熱調理器

【課題】本体ケースを大きくしたり、加熱室の寸法を小さくすることなく、加熱室内の温度を均一に、しかも漏電の危険性のない加熱調理器を提供する。
【解決手段】本体ケース1の中に形成され、被加熱物を収納するための加熱室3と、本体ケース1に取り付けられ、加熱室3を開閉するためのドア4と、ドア4を前面とする加熱室3の6面のうち両側面、天井面およびドア4のガラス面に設けられた絶縁体ヒータ8、11、23と、絶縁体ヒータ8、11、23の通電を制御して被加熱物2を加熱させる電源制御装置とを備え、絶縁体ヒータ8、11、23は、加熱室3の面に設けられた絶縁体8b、11b、23bと、絶縁体の加熱室側の面の反対側の面に形成された導電膜8a、11a、23aと、導電膜に設けられた一対の電極とでなり、この電極に電源制御装置からの電圧が印加されることにより抵抗発熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱室内の被加熱物を調理する加熱調理器に係わり、その加熱室のドアを一面とする6面全てに加熱源が設けられた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器として、調理物を内部に収納するための焼成庫と、焼成庫内に設けられ前記調理物を焼成する加熱ヒータと、焼成庫の少なくとも一方の側面に設けられ当該側面から加熱するサイド加熱ヒータとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−84086号公報(第3―4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加熱調理器では、加熱室の天井面近傍にヒータが設置されたものや、調理器によっては天井面のヒータに加え、背面に熱風発生装置を備え、熱風による加熱を行うものもある。従来構成は加熱の基本に立ち返って考えると、高温に加熱されたヒータによる輻射は熱源に近い方が加熱されやすく、また、熱風の熱伝達による加熱は、熱風の温度や風速・風量に依存し、ヒータで加熱した空気を被加熱物に当て加熱する際に、熱風の温度や風速が大きい吹き出し口近辺が加熱されやすいという課題がある。すなわち、被加熱物の加熱不均一が発生することとなり、例えばクッキー数十枚を同時に焼き上げるような調理を行う際には、設置位置により焦げ色の濃いクッキーと薄いクッキーが出来上がるという不具合が発生する場合があった。
【0005】
これを解消するために、前述したように加熱室側面にヒータが設置された加熱調理器もあるが、これは、ヒータ側面にシーズヒータやマイカの芯材にニクロム線を巻きつけたニクロム線ヒータなどが使用されているため、設置寸法を必要とするヒータを用いた場合には両側面寸法が大きくなり、加熱調理器の本体ケースの寸法に制約がある場合には加熱室の寸法を小さくせざるを得なかった。また、加熱調理器の本体ケースの寸法に制約がないとしても、本体ケースの寸法を大きくすることにより調理器設置寸法が大きくなるなどの欠点が発生していた。
【0006】
また、シーズヒータなどの発熱材を利用した場合、ヒータ設置部近傍の温度上昇が顕著となることから、同一面におけるヒータ未設置部分の温度と設置部分との温度分布差が大きくなり、ヒータ設置面においては、温度が高い部分と低い部分が発生することとなり、結果的に大量調理の際の加熱不均一は解消されないという課題があった。
【0007】
さらに、高温を要する加熱室の本体ケースの壁面、即ちヒータ設置面には金属など導電体が用いられるが、電気抵抗による発熱を原理とするヒータを導電体近傍に設置することは、ヒータから壁面間の設置スペースを十分に取る必要があるばかりか、絶縁保護策をとらない場合には漏電などの危険性も有していた。
【0008】
さらにまた、一般消費者に用いられる加熱調理器においては、加熱室内部を確認する目的でガラス窓が設置されているが、ガラス窓部分には発熱部材を設置していないことから、必然的にガラス窓側の被加熱物の加熱は弱く、加熱不均一を起こすと共に、ガラス窓部からの熱漏洩が大きくなり、加熱効率が悪化するという課題があった。
【0009】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、本体ケースを大きくしたり、加熱室の寸法を小さくすることなく、加熱室内の温度を均一に、しかも漏電の危険性のない加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る加熱調理器は、本体ケースの中に形成され、被加熱物を収納するための加熱室と、本体ケースに取り付けられ、加熱室を開閉するためのドアと、ドアを前面とする加熱室の6面のうち所定の面に設けられた絶縁体ヒータと、絶縁体ヒータの通電を制御して被加熱物を加熱させる電源制御装置とを備え、絶縁体ヒータは、加熱室の面に設けられた絶縁体と、絶縁体の加熱室側の面の反対側の面に略一様に塗装された導電膜と、導電膜に設けられた一対の電極とでなり、この電極に前記電源制御装置からの電圧が印加されることにより抵抗発熱する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱室の面に設けられた絶縁体と、絶縁体の加熱室側の面の反対側の面に略一様に塗装された導電膜と、導電膜に設けられた一対の電極とでなり、この電極に電源制御装置からの電圧が印加されることにより抵抗発熱する絶縁体ヒータを備えたので、加熱室を小型化したり、本体ケースの寸法を大きくすることなく、導電膜の発熱による絶縁体の発熱分布を均一にすることができ、このため、加熱室内の被加熱物の温度を均一に保つことが可能になり、加熱速度を向上させることができる。また、導電膜は絶縁体表面に形成されているため、他の部品への接触などによる漏電の危険性を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の実施の形態を示す加熱調理器の斜視図、図2は実施の形態に係る加熱調理器の加熱源の配置を示す断面図、図3は同じく加熱調理器の加熱源の配置を示す側断面図である。
【0013】
図1において、加熱調理器の本体ケース1の中には加熱室3が形成され、本体ケース1の正面には、加熱開始や加熱時間、目標加熱温度などを設定するための各種スイッチ及び表示部を有する操作パネル6と、加熱室3を開閉するためのドア4とが取り付けられている。ドア4は、後述するが、2枚のガラスからなる視認窓5が設けられ、その視認窓5を通して加熱室3内の被加熱物2の調理状態を確認できる。加熱室3は、ドア4が閉じられたときにほぼ直方体の空間が形成され、その両側面、天井面と底面および前面(ドア4)と背面の全6面に加熱源がそれぞれ配置されている。
【0014】
例えば、図2および図3に示すように、加熱室3の両側面には、角皿載置用の角皿レール9が形成された側面絶縁体ヒータ8がそれぞれ設置され、加熱室3の天井面には、天面絶縁体ヒータ11が設置され、加熱室3の底面には、その面を構成するセラミック板7の下方にシーズヒータからなる底面ヒータ12が配置されている。加熱室3の背面には、背面板10の後方に形成された空間にシーズヒータからなる背面ヒータ20が配置され、加熱室3の前面となるドア4の外側ガラス24に対向する内側のガラスに、そのガラスを絶縁体23bとする前面絶縁体ヒータ23が設置されている。
【0015】
前述したドア4は、中央部をパンチングメタル25aとしたドアフレーム25と、ドア4の保護および意匠性を高めるためのドアカバー26と、ドアカバー26に固着された外側ガラス24と、パンチングメタル25aを介して外側ガラスと対向するようにドアフレーム25に固着された内側ガラスとで構成されている。この内側ガラスは、前面絶縁体ヒータ23の絶縁体23bとして用いられている。前記の角皿レール9は、絶縁体23bと一体のもので、例えば2段に亘って設けられ、角皿が載置されることで2段調理、3段調理が可能になっている。
【0016】
天面絶縁体ヒータ11は、加熱室3の天井面として設けられた例えばセラミックやガラスからなる絶縁体11bと、この絶縁体11bの加熱室側の面の反対側の面に設けられた導電膜11aと、導電膜11aの両端に取り付けられた一対の電極(図示せず)と、この電極に接続されたケーブル(図示せず)とでなっている。導電膜11aは、ZnOやITO(インジウム酸化錫)と言った酸化金属を含む顔料がスプレーやディップによって絶縁体11bに一様に塗装されたもので、オーブンで焼成することで定着形成される。電極は、導電性を有する銀ペーストなどの塗装によって形成されている。導電膜11aの顔料は、透明性や熱膨張率などを任意に変化させるために、絶縁体11bの種類や目的に合わせてSiなどの混合比が変更される。また、この天面絶縁体ヒータ11は、側面絶縁体ヒータ8の説明時に詳述するが、導電膜11a側が覆われるように加熱室3の天井面に形成されたヒータカバー部11cに固着されている。
【0017】
背面ヒータ20は、本体ケース1の背面中央部に設置されたファンモータ22により回転するコンベクションファン21の周囲に配設されている。背面ヒータ20の発熱とコンベクションファン21の回転により発生する高温の熱風は、背面板10に設けられた複数の通風孔10aを通って加熱室3内に送り込まれる。
【0018】
また、本実施の形態の加熱調理器は、被加熱物2の加熱性能を高めるために、高周波による加熱、蒸気による加熱も同時に行うことができるようになっている。本体ケース1と加熱室3の間には、2.45GHzのマイクロ波を発振する高周波発振器13(マグネトロン)と、発振されたマイクロ波を導くための導波管14と、導波管14により案内されたマイクロ波をセラミック板7を介して加熱室3内に伝搬し被加熱物2に照射するための回転アンテナ15とが配置されている。この回転アンテナ15は、アンテナモータ16によって回転し、この回転により、被加熱物2へのマイクロ波照射状態を変化させることができるので、均一かつ高速に加熱することが可能となる。
【0019】
さらに、加熱室3の後方には、図2に示すように蒸気発生器40が設置されている。この蒸気発生器40は、図示せぬタンク、ポンプからパイプ18を介して供給される水を加熱し、加熱室3の背面板10に設けられた蒸気吹き出し口17から加熱室3内に蒸気を供給する。供給された蒸気は、前述したように背面ヒータ20とコンベクションファン21により加熱室3内に送り込まれた熱風でさらに加熱され、過加熱蒸気となって被加熱物2を加熱する。また、本体ケース1と加熱室3との間の空間に冷却ファン39が設けられており、この冷却ファン39による冷却風38で、側面絶縁体ヒータ8、天面絶縁体ヒータ11などによって温度上昇した本体ケース11や、高周波発振器13を冷却する。
【0020】
ここで、側面絶縁体ヒータ8の構成について図4を用いて説明する。図4は実施の形態の加熱調理器における側面絶縁体ヒータの構成を示す拡大側断面図である。なお、図中の(b)は他の例を示すヒータユニットの拡大側断面図である。
側面絶縁体ヒータ8は、前述したように、発熱体である導電膜8a、絶縁体8b、導電膜8aに電源を供給する一対の電極28および各電極28に接続されたケーブル30からなっている。絶縁体8bはセラミックあるいはガラスからなり、導電膜8aは、ZnOやITOなどの酸化金属を含む顔料がスプレーやディップによって絶縁体8bに一様に塗装されたもので、オーブンで焼成することで定着形成される。電極28は、導電性を有する銀ペーストなどの塗装によって形成されている。また、導電膜8aの顔料は、透明性や熱膨張率などを任意に変化させるために、絶縁体8bの種類や目的に合わせてSiなどの混合比が変更される。
【0021】
前述の側面絶縁体ヒータ8は、加熱室側面板27に形成されたヒータカバー部8cに耐熱性と絶縁性を有するシリコンパッキン19により固着されている。シリコンパッキン19は、液状のもので、室温あるいは加熱硬化させることにより、側面絶縁体ヒータ8が落下危険性なきように固着される。導電膜8aは、電極28に電圧が印加されると、表面に電流が流れて発熱し、絶縁体8bを通して加熱室3側、ひいては被加熱物2を加熱することとなる。一例として、300×200のガラス板に導電膜8aをペーストした場合、500W程度の発熱性能を得ることができる。
【0022】
また、ヒータカバー部8cの導電膜8a側の面の反対側の面に断熱材29が固着されている。この断熱材29は、ヒータカバー部8cと導電膜8aとの間に形成された断熱空気層35とで、導電膜8aからの放熱による加熱室3外の温度上昇を抑制している。これにより、加熱室3内の熱効率の低下を抑え、これに加えて冷却ファンの運転よる冷却風38により、加熱室3外の電気部品の温度上昇をさらに抑制し、信頼性の向上を図っている。
【0023】
なお、加熱室3を構成する際に、加熱室側面板27に直接側面絶縁体ヒータ8を固着させずに、ヒータユニットとして構成した後、加熱室3に固定することも可能である。図4(b)に示すように、導電膜8a側に保護絶縁体37が固着された側面絶縁体ヒータ8を前記と同様にシリコンパッキン19を用いてヒータユニット31に固着してユニットを構成し、そのヒータユニット31を加熱室側面板27にネジ止めで固定する。保護絶縁体37は、誘電率の高いセラミックやガラスからなっており、マイクロ波暴露による導電膜8aの劣化を抑制する効果を有している。ここでは、ネジ止め固定を例としたが、かしめや溶接、あるいはパッキン接着による固定でも良い。また、側面絶縁体ヒータ8のユニット化に限らず、天面絶縁体ヒータ11もユニット化しても良い。
【0024】
次に、前面絶縁体ヒータ23の構成について図5および図6を用いて説明する。図5は実施の形態の加熱調理器における前面絶縁体ヒータの構成を示す拡大側断面図、図6は前面絶縁体ヒータの斜視図および前面絶縁体ヒータの電極から引き出されたケーブル周辺の模式図である。
前面絶縁体ヒータ23は、透明の導電膜23a、絶縁体23b、導電膜23aに電源を供給する一対の電極28および電極28に接続されたケーブル30よりなっている。前述したように、ドア4にある2枚のガラスのうち内側のガラスを絶縁体23aとして用いている。製造方法に関しては側面絶縁体ヒータ8と同様であるため説明を省略する。なお、導電膜23aは透明であるため、加熱室3内の視認性を阻害することなく加熱可能な上、被加熱物2から発生する蒸気によるガラス曇りを防止できる。
【0025】
電極28は、図6(a)に示すように、絶縁体23b上に塗装された導電膜23aの両端に設置されている。また、一端が電極28に接続されたケーブル30は、図5(b)に示すように、ドアフレーム25上の空間から引き出され、ドアヒンジ32周辺を通って操作パネル6や電源制御装置(図示せず)に接続されている。なお、発熱する際には、操作パネル6の表示部に「高温注意、ガラス面に触らないでください」などのメッセージが表示されるようになっている。
【0026】
本実施の形態における絶縁体ヒータ(側面絶縁体ヒータ8、天面絶縁体ヒータ11、前面絶縁体ヒータ23)に電圧100V、500W相当の電力を入力したときの温度上昇と、マイカを芯とするニクロム線+鉄板よりなる従来の民生用オーブンレンジのヒータに同じ100Vの電圧、500W相当の電力を入力したときの温度上昇とを比較した場合、図8に示すように、本実施の形態の絶縁体ヒータの方が従来のヒータよりも約4分早く200度に到達することを確認できた。
【0027】
次に、本実施の形態の加熱調理器の回路について図7を用いて説明する。図7は実施の形態に係る加熱調理器の回路構成を示すブロック図である。
電源制御装置50は、操作パネル6のスイッチ操作を検知すると、その操作スイッチに基づいてメモリ(図示せず)に格納されたテーブルから選択する。このテーブルには、各種の調理メニューに対して加熱源、電力、調理時間などがデータとして書き込まれている。例えば、クッキー調理が選択された場合は、天面絶縁体ヒータ11、左右の側面絶縁体ヒータ8、底面ヒータ12、前面絶縁体ヒータ23を選択して、それぞれ200Wの電力で加熱するように制御すると共に、背面ヒータ20とコンベクションファン21を選択して400Wの電力で熱風が発生するように制御する。これは、角皿に広範囲にクッキーが配置されているものとして均一加熱を行うためで、商用電源100Vの上限である1500Wを超えない、合計1400Wの電力で調理する。
【0028】
また、調理メニューとして500g〜1Kg程度のローストビーフが選択された場合は、表面の焦げ色と内部の赤身部分維持が重要となるため、天面絶縁体ヒータ11の電力を900Wとし、加熱室3の両側面、底面、前面、背面からの熱量を補完する意味で左右の側面絶縁体ヒータ8と前面絶縁体ヒータ23の電力を100Wとする。この電力制御により、ローストビーフの表面に焦げ色がつき良好な仕上がりとなる。
【0029】
また、被加熱物2の内部の温度上昇を重視するような調理メニューが選択された場合には、高周波発振器13による加熱補完をし、表面の水分保持を必要とする調理メニューや蒸し調理の場合には、蒸気発生器40による蒸気で調理するようになっている。
【0030】
また、電源制御装置50は、複数のヒータを用いて調理をしているときに、後述する断線検知装置52によりヒータの断線が検知された場合や、以前に断線検知されたヒータを使用する場合、断線ヒータの電力を残りのヒータに分配して調理を行う機能を備えている。ヒータ断線による電力の分配は、予めメモリに格納されたテーブルから判別するようになっている。例えば、前述したクッキー調理を行っているときに前面絶縁体ヒータ23の断線が検知された場合、そのヒータ23の電力200Wを、天面絶縁体ヒータ11、左右の側面絶縁体ヒータ8、底面ヒータ12に等分に振り分けて調理を続行する。この場合、調理仕上がりにおいて、前面絶縁体ヒータ23から発熱がある場合と比較して、被加熱物2の調理品質が劣る可能性がある旨を操作パネル6の表示部を通して使用者に知らせる。また、調理開始前において、使用するヒータの中に断線したヒータが存在する場合は、前述した情報を表示部に表示すると共に、調理実行の可否を選択させる旨を表示する。
【0031】
温度検知装置51は、例えば加熱室3内に設置されたサーミスタや赤外線センサなどで構成され、加熱室3内の温度を電源制御装置50に検知信号として送る。これは、加熱室3内の温度が任意の温度になるようにするためで、選択された調理メニューや調理重量に合わせて、出力フィードバックを実施することで可能になる。加熱源となる各ヒータ8、11、12、20、23および高周波発振器13、蒸気発生器40の出力制御は、電流制御、電圧制御、一定電圧におけるタイムシェアリングによる制御によって行われる。
【0032】
前述した断線検知装置52は、各ヒータ8、11、12、20、23の抵抗値を監視しており、その情報を電源制御装置50に出力している。電源制御装置50は、断線検知装置52を通して抵抗値の変化を検知したときに断線と判断して操作パネル6にその旨を報知する。この断線の検知は、導通開放による抵抗値の変化から検知する。側面絶縁体ヒータ8、天面絶縁体ヒータ11および前面絶縁体ヒータ23においては、各電極間の導電膜8a、11a、23aの抵抗値の変化、即ち導電膜の割れによる抵抗値の変化を検知したときに断線と判断する。
【0033】
以上のように実施の形態によれば、加熱室3の両側面に側面絶縁体ヒータ8、天井面に天面絶縁体ヒータ11およびドア4に前面絶縁体ヒータ23を設けてそれらを発熱面としたので、発熱面における発熱分布を均一に保つことができる。
また、前述の如くドア4に前面絶縁体ヒータ23を設けたので、従来の加熱調理器においては加熱不足となる部位からも加熱することが可能となり、加熱室3内の全体や被加熱物2の温度を均一に保つことができ、加熱速度の向上と蓄熱効果を持たせることができる。
さらに、発熱面となる導電膜は絶縁体表面に薄膜として塗装されるため、他の部品への接触などによる漏電の危険性を大幅に低減することができる。これに加えて、導電膜を保護する保護絶縁体を設ける構造としたため、マイクロ波や蒸気などによる導電膜の劣化を低減することができる。また、加熱室3の寸法の小型化あるいは本体ケース1の寸法の大型化を招くことなく、発熱体を設置できるという効果がある。
さらにまた、加熱室3の6面全てにヒータを設けたため、一箇所のヒータが断線等による電力不足となった場合でも、その分の電力を他のヒータで補完し、被加熱物2の加熱を継続することが可能となり、このため、製品寿命の延命が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態を示す加熱調理器の斜視図である。
【図2】実施の形態に係る加熱調理器の加熱源の配置を示す断面図である。
【図3】同じく加熱調理器の加熱源の配置を示す側断面図である。
【図4】実施の形態の加熱調理器における側面絶縁体ヒータの構成を示す拡大側断面図である。
【図5】実施の形態の加熱調理器における前面絶縁体ヒータの構成を示す拡大側断面図である。
【図6】前面絶縁体ヒータの斜視図および前面絶縁体ヒータの電極から引き出されたケーブル周辺の模式図である。
【図7】実施の形態に係る加熱調理器の回路構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態における絶縁体ヒータと従来のヒータを比較して示す加熱温度の特性図である。
【符号の説明】
【0035】
1 本体ケース、2 被加熱物、3 加熱室、4 ドア、5 視認窓、6 操作パネル、7 セラミック板、8 側面絶縁体ヒータ、8a 導電膜、8b 絶縁体、8c ヒータカバー部、9 角皿レール、10 背面板、11 天面絶縁体ヒータ、11a 導電膜、11b 絶縁体、11c ヒータカバー部、12 底面ヒータ、13 高周波発振器、14 導波管、15 回転アンテナ、16 アンテナモータ、17 蒸気吹き出し口、
18 パイプ、19 シリコンパッキン、20 背面ヒータ、21 コンベクションファン、22 ファンモータ、23 前面絶縁体ヒータ、23a 導電膜、23b 絶縁体、24 外側ガラス、25 ドアフレーム、26 ドアカバー、27 加熱室側面板、
28 電極、29 断熱材、30 ケーブル、31 ヒータユニット、32 ドアヒンジ、35 断熱空気層、37 保護絶縁体、38 冷却ファン、39 冷却風、40 蒸気発生器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの中に形成され、被加熱物を収納するための加熱室と、
本体ケースに取り付けられ、前記加熱室を開閉するためのドアと、
該ドアを前面とする前記加熱室の6面のうち所定の面に設けられた絶縁体ヒータと、
該絶縁体ヒータの通電を制御して被加熱物を加熱させる電源制御装置とを備え、
前記絶縁体ヒータは、前記加熱室の面に設けられた絶縁体と、該絶縁体の加熱室側の面の反対側の面に形成された導電膜と、該導電膜に設けられた一対の電極とでなり、この電極に前記電源制御装置からの電圧が印加されることにより抵抗発熱することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記絶縁体ヒータは、前記加熱室の両側面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記絶縁体ヒータは、前記加熱室の天井面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記絶縁体ヒータは、前記ドアの加熱室側の面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱室の両側面の前記絶縁体ヒータは、前記絶縁体に被加熱物載置用の角皿を設置するためのレールが形成されていることを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記絶縁体は、ガラスあるいはセラミックの何れか一方からなっていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記導電膜は、透明の部材よりなっていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記ドアはガラス窓が設けられ、
前記絶縁体は、前記ガラス窓のガラスよりなっていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記加熱室に前記導電膜を覆うように設けられ、該導電膜との間に断熱空気層を有するヒータカバー部を備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記絶縁体ヒータと、該絶縁体ヒータに導電膜を覆うように設けられ、該導電膜との間に断熱空気層を有するヒータカバー部とよりなり、前記加熱室に着脱可能に設けられたヒータユニットを備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記ヒータカバー部の導電膜側の面の反対側の面に断熱材を設けたことを特徴とする請求項9又は10記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記ヒータカバー部と前記導電膜との間に保護絶縁体を設けたことを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項13】
本体ケースと前記加熱室との間に形成された空間に前記絶縁体ヒータを冷却する冷却ファンが設けられていることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項14】
前記絶縁体ヒータは、ヒータカバー部に耐熱性と絶縁性を有する部材により固着されていることを特徴とする請求項9乃至13の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項15】
前記電極間の前記導電膜の抵抗値を検知する断線検知装置を備え、
前記電源制御装置は、前記断線検知装置により検知された抵抗値が変化したときに断線と判断して、該当する絶縁体ヒータの出力分を他の絶縁体ヒータに分配する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項16】
加熱源として、前記絶縁体ヒータ以外に、高周波発振器、蒸気発生器および熱風発生器の少なくとも何れか一つを備えていることを特徴とする請求項1乃至15の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項17】
前記ヒータユニットは、本体ケースにネジ止め、かしめ、溶接、あるいはパッキン接着固定の何れかにより固着されていることを特徴とする請求項10乃至16の何れかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−156521(P2009−156521A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336057(P2007−336057)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】