説明

加硫(パー)フルオロエラストマーシール物品

本発明は、ASTM D2240タイプAデュロメータ法に準拠して測定した場合のショアA硬度が少なくとも85であり、ASTM D395に準拠して200℃で70時間、ASTM D1414によるO−リングで測定した場合の圧縮永久歪みが30%未満である、フッ化ビニリデン(VDF)重合体の粒子を含む加硫(パー)フルオロエラストマー組成物のシール物品、ならびに、加硫成形およびVDF重合体の融点より高い温度で熱的な後処理を行うことによるその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化ビニリデン(VDF)をベースにする熱可塑性重合体の粒子を含む特定の加硫(パー)フルオロエラストマーシール物品に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫(パー)フルオロエラストマーは、優れた耐熱性と耐薬品性を有する材料であり、一般に、低温〜高温の広範囲の使用温度にわたって、耐漏洩性、機械的特性、および鉱油、作動液、溶媒または様々な性質を有する化学薬品などの物質に対する耐性が確保されてなければならないオイルシール、ガスケット、シャフトシール、およびO−リングなどのシール物品の製造に使用される。
【0003】
改善された耐漏洩性/剛性の兼ね合いを有する、即ち、向上した耐漏洩性(圧縮永久歪みの低下によって示される)およびエラストマー挙動を有すると同時に、より高い硬度および改善された機械的特性(即ち、破断応力、モジュラス、および破断伸び)を併せ持ち、例えば280℃までの高温で老化させた後もこれらの特性が維持される(パー)フルオロエラストマーシール物品が引き続き必要とされている。
【0004】
剛性および機械的特性を改善する方法の1つは、前記シール物品を得ることができる(パー)フルオロエラストマーマトリックス中に分散される充填剤の使用である。しかし、使用される充填剤がカーボンブラックである場合、特に、それが高濃度で使用される場合、耐漏洩性および破断伸びの特性(弾性挙動に特有な)の低下が見られる。重合体充填剤、特にテトラフルオロエチレン(TFE)をベースにする熱可塑性重合体に基づくものを使用すると、このような欠点を部分的に克服することが可能になったが、このような充填剤を用いて得られたシール特性は、特に、高硬度のシール物品を目標にする場合、依然として不十分な可能性がある。
【0005】
また、VDFをベースにする熱可塑性重合体を充填剤として使用する(パー)フルオロエラストマー組成物が、シール物品または他の成形物品の製造に用いられることも知られている。
【0006】
特許出願(特許文献1)は、THVタイプ(テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、VDF三元共重合体)の熱加工可能な重合体で充填されたフルオロエラストマー組成物を記載しており、それらは、改善された耐ガソリン透過性を示す可撓管の製造に、特に適している。しかし、このような重合体が充填されたフルオロエラストマーは、モジュラスおよび破断応力が十分ではない、換言すれば、THV三元共重合体は、架橋フルオロエラストマーの剛性の改善には効果がない。また、シール物品の製造に関するこれらの材料の適性については示されていない。
【0007】
文献(特許文献2)は、燃料系路などの押出物品の製造に用いられる、1種類以上の熱可塑性PVDF重合体または共重合体が充填されたフッ素化ゴムコンパウンドを記載している。それにもかかわらず、この文献は、このようなゴム組成物のシール性については言及していない。
【0008】
また、(特許文献3)は、フッ化ビニリデンをベースにするフルオロプラストマー充填剤を含むフルオロエラストマー組成物を開示しており、それは、組成物を予備成形し、成形された物品にγ線を照射することによってシール物品を製造するのに使用される。それにもかかわらず、照射され完全に共架橋(co−reticulated)されたこれらのシール物品は、その剛性のため突出した寸法精度を備えるが、許容されるエラストマー挙動を付与できない。
【0009】
同様に、文献(特許文献4)は、O−リングの製造に用いられる、共架橋性(co−curable)フッ化ビニリデン重合体充填剤を含むフルオロエラストマー組成物を開示している。それにもかかわらず、プラストマーとエラストマーの共架橋のため、この文献に記載されている材料は、かなりの硬度を有すると同時に依然として十分なシール性を示すシール物品を得るのに適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第02/00777号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6538069号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0041069号明細書
【特許文献4】米国特許第6160053号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、高温で熱老化させた後でも、改善されたシール特性(改善された圧縮永久歪みの値によって示される)と、改善された剛性および機械的特性(改善されたモジュラスの値、改善された破断応力の値と共に改善された破断伸びの値を併せ持つという意味)とを併せ持つ(パー)フルオロエラストマーシール物品の必要性が感じられた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の1つの対象は、フッ化ビニリデン(VDF)単独重合体、およびVDFと少なくとも1つのエチレン性タイプの不飽和を含有する1種類以上のモノマーとの共重合体(VDF以外のコモノマーの合計は、共重合体中のモノマーの総量に対して≦15mol%である)から選択される半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の粒子を含む加硫された(パー)フルオロエラストマー組成物を含むシール物品であり、半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の量は、(パー)フルオロエラストマーと半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の総重量に対して30重量%〜90重量%であり、加硫組成物は、ASTM D2240タイプAデュロメータ法に準拠して測定した場合のショアA硬度が少なくとも85であり、ASTM D395に準拠して200℃で70時間、ASTM D1414によるO−リングで測定した場合の圧縮永久歪みが30%未満である。
【0013】
本発明の他の対象は、前記シール物品の製造方法であり、前記方法は、
− 上で詳述したVDF単独重合体およびVDFの共重合体から選択される半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の粒子を含む(パー)フルオロエラストマー組成物を準備する工程、
− 前記組成物を加硫成形し、形状付与され予備成形されたシール物品を得る工程、および
− 前記の形状付与され予備成形されたシール物品を半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の融点以上の温度で熱的に後処理する工程、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従って、本出願人は、本発明の方法により、有利には剛性と弾性との、即ち、高い硬度と低い圧縮永久歪みとの有利な兼ね合いを有するシール物品を得ることが可能であることを見出した。
【0015】
シール物品の用語は、その通常の意味を有し、一般に流体(気体または液体)の漏れまたは浸入を防止するように、対になっている部品(matched parts)の間に使用されてその部品どうしを結合させる様々な要素のいずれをも包含するものとする。
【0016】
シール物品の非限定例としては、特に、ガスケット、フランジガスケット、インサート、シール、シャフトシール、圧縮シール、オイルシール、ガスシール、浸透シール、ピストンリング、サイホントラップ、O−リングがある。
【0017】
本発明のシール物品は、上記に定義した加硫された(パー)フルオロエラストマー組成物を含んでおり、即ち、そのシール物品の最終組立品中には、前記加硫された組成物から作られていない他の要素が含まれていてもよい。それにもかかわらず、シール物品は、好ましくは、上記に定義した加硫された(パー)フルオロエラストマー組成物から本質的になるものであることが理解される:前述の他の要素は、一般に、物品のシール効果に寄与も、干渉もしない。
【0018】
上記の熱可塑性重合体は半結晶性でなければならない、即ち、熱可塑性重合体は少なくとも部分的に結晶構造を有していなければならない。換言すれば、半結晶性熱可塑性重合体の融解熱は、一般に、ASTM規格D3418に準拠して測定して、少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも15J/g、より好ましくは少なくとも25J/gである。
【0019】
本発明に使用される半結晶性熱可塑性重合体は、前述した、VDF単独重合体、およびVDFと少なくとも1つのエチレン性タイプの不飽和を有する1種類以上のコモノマーとの共重合体から選択される。共重合体中のVDFの量は、好ましくは85mol%より多く、より好ましくは90mol%より多い。
【0020】
少なくとも1つのエチレン性タイプの不飽和を有するコモノマーは、フッ素化されていることが好ましい。これらのフッ素化コモノマーは、好ましくは以下のものから選択される。
(a)C〜Cパーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、およびヘキサフルオロイソブテン;
(b)C〜C水素化フルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、およびパーフルオロアルキルエチレンCH=CH−R(式中、RはC〜Cパーフルオロアルキルである);
(c)C〜Cクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF=CFOR(式中、RはC〜C(パー)フルオロアルキル、例えば、CF、C、またはCである);
(e)(パー)フルオロオキシアルキルビニルエーテルCF=CFOX(式中、Xは、1個以上のエーテル基を有するC〜C12((パー)フルオロ)オキシアルキル、例えば、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルである);
(f)式:
【化1】

(式中、Rf3基、Rf4基、Rf5基、およびRf6基は互いに同一であってもまたは異なってもよく、これらはそれぞれ独立して、フッ素原子、または任意に1個以上の酸素原子を含むC〜Cパーフルオロアルキル基、例えば、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである)
の(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)一般式:
CFX=CXOCFOR” (I−Ba)
(式中、R”は直鎖または分岐鎖C〜C(パー)フルオロアルキル;環状C〜C(パー)フルオロアルキル;および、1〜3個の酸素原子を含む直鎖または分岐鎖C〜C(パー)フルオロオキシアルキルから選択され、X=F、Hであり;好ましくは、XはFであり、R”は−CFCF(MOVE1);−CFCFOCF(MOVE2);または−CF(MOVE3)である)
を有する(パー)フルオロメトキシビニルエーテル(以下、MOVEと称する)。
【0021】
一般に、本発明のシール物品に使用される半結晶性熱可塑性含フッ素重合体は、高分子の末端位および/または鎖中にヨウ素原子及び/又は臭素原子を含まないことが好ましい。これらの部位に存在しないようにすると、(パー)フルオロエラストマーとの共加硫を著しく低減することができ、加硫されたシール物品のシール性および弾性挙動が保たれるようになる。
【0022】
特に好ましい半結晶性熱可塑性重合体は、VDF単独重合体、および、VDFに由来する繰り返し単位と、HFP、CTFEおよびTrFEおよびこれらの混合物から選択されるコモノマーに由来する繰り返し単位0.1mol%〜15mol%とから本質的になるVDF共重合体である。
【0023】
フルオロエラストマーマトリックス中の半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の量は、好ましくは、(パー)フルオロエラストマーと半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の総重量に対して30重量%〜80重量%、より好ましくは30重量%〜70重量%、さらにより好ましくは35重量%〜60重量%である。
【0024】
本発明のシール物品に特に良い結果をもたらす加硫組成物は、(パー)フルオロエラストマーと半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の総重量に対して40重量%〜50重量%の量の半結晶性熱可塑性含フッ素重合体を含有するものである。
【0025】
半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の粒子のサイズは、一般に、10〜500nm、好ましくは50〜350nmである。
【0026】
これらの半結晶性熱可塑性重合体は、例えば、10〜100nmのサイズのナノ粒子が得られるパーフルオロポリオキシアルキレンの水性マイクロエマルション中での重合法、例えば、欧州特許出願第969027号明細書(これは参照によりその内容全体が本明細書に援用される)に記載されている重合法により得ることができる。水性エマルション中でのモノマーの重合では、比較的大きい粒子が得られる。また、米国特許第5523346号明細書および米国特許第5616648号明細書に記載されている、油相が重合性不飽和モノマーからなるマイクロエマルション重合法を使用することも可能である。
【0027】
本発明に使用される(パー)フルオロエラストマーは、典型的には、以下の種類に属する:
(1)VDFに基づく共重合体であって、VDFが、半結晶性含フッ素重合体に関して前述したフッ素化コモノマー(a)、(c)、(d)、(e)、(f)および(g)、ならびに、以下の:
(h)非フッ素化C〜Cオレフィン(Ol)、例えば、エチレン(E)およびプロピレン(P);
から選択される少なくとも1種類のコモノマーと共重合されている共重合体、
(2)TFEに基づく共重合体であって、TFEが、半結晶性含フッ素重合体に関して前述したフッ素化コモノマー(c)、(d)、(e)および(g)、ならびに、以下の:
(h)非フッ素化C〜Cオレフィン(Ol)、例えば、エチレン(E)およびプロピレン(P);
(i)例えば、米国特許第4281092号明細書、米国特許第5447993号明細書および5789489号明細書に記載されているシアニド基を有するパーフルオロビニルエーテル;
から選択される少なくとも1種類のコモノマーと共重合されている共重合体。
【0028】
上で定義した種類のうち、(パー)フルオロエラストマーのモル組成は、好ましくは以下から選択され、モノマー類のモルパーセンテージの合計は100%である:
(a)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10〜45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜15%、
(b)フッ化ビニリデン(VDF)50〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5〜50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%、
(c)フッ化ビニリデン(VDF)20〜30%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C10〜30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)および/またはパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18〜27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10〜30%、
(d)テトラフルオロエチレン(TFE)45〜65%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C20〜55%、フッ化ビニリデン0〜30%、
(e)テトラフルオロエチレン(TFE)32〜60mol%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C10〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜40%、(パー)フルオロメトキシビニルエーテル(MOVE)0〜30%、
(f)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15〜45%、フッ化ビニリデン(VDF)5〜30%、ヘキサフルオロプロペンHFP0〜30%、
(g)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、(パー)フルオロメトキシビニルエーテル(MOVE)5〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0〜30%、
(h)テトラフルオロエチレン(TFE)50〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜50%、
(i)テトラフルオロエチレン(TFE)45〜65%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C20〜55%、フッ化ビニリデン0〜30%、
(l)テトラフルオロエチレン(TFE)32〜60%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C10〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜40%、
(m)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15〜45%、フッ化ビニリデン(VDF)5〜30%、
(o)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜45%、MOVE 15〜30%、HFP 0〜30%。
【0029】
任意に、(パー)フルオロエラストマーは、また、一般式:
【化2】

(式中、
、R、R、R、RおよびRは互いに同一であってもまたは異なってもよく、これらはHまたはC〜Cアルキルであり、
Zは、任意に酸素原子を含んでもよく、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化されている直鎖もしくは分岐鎖C〜C18アルキレン基もしくはシクロアルキレン基であるか、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)
のビスオレフィンに由来するモノマー単位を含んでいてもよく、これらのビスオレフィンは、例えば、文献として本出願人による欧州特許第661304号明細書に記載されている。
【0030】
これらのビスオレフィンに由来する鎖単位の量は、一般に、フルオロエラストマーの基本構造を構成する前述の他のモノマー単位100mol当たり、0.01〜1.0mol、好ましくは0.03〜0.5mol、さらにより好ましくは0.05〜0.2mol%である。
【0031】
本発明のシール物品の製造に使用される混合物のフルオロエラストマーの調製は、当技術分野で周知の方法に従って、ラジカル開始剤(例えば、アルカリ金属またはアンモニウムの過硫酸塩、過リン酸塩、過ホウ酸塩、または過炭酸塩)の存在下で、任意選択で場合いよってはそれを鉄(II)塩、銅(I)塩もしくは銀塩または他の易酸化性金属の塩と組み合わせて、水性エマルション中でモノマーを共重合することによって行ってもよい。通常、反応媒体中には様々なタイプの界面活性剤も存在するが、その中でフッ素化界面活性剤が特に好ましい。
【0032】
乳化重合の代替として考慮される、混合物のフルオロエラストマーを得るための重合反応は、周知の方法に従って、塊状(in bulk)でまたは懸濁液中で、有機液体中(中に好適なラジカル開始剤が存在する)で行ってもよい。
【0033】
重合反応は、一般に、25〜150℃の温度で、10MPa以下の圧力で行われる。
【0034】
本発明の対象であるフルオロエラストマーの調製は、米国特許第4789717号明細書および米国特許第4864006号明細書に記載のように、パーフルオロポリオキシアルキレンのマイクロエマルションとして行われることが好ましい。
【0035】
本出願人は、本発明のシール物品を得るために、上で定義したVDFに基づく充填剤を使用する必要があることを見出した。本出願人は、驚くべきことにまた意外なことに、このようなタイプの熱可塑性充填剤の使用により、市販のPTFEまたはTFE共重合体などのタイプの熱可塑性充填剤が充填されたフルオロエラストマーと比較して、圧縮永久歪みがかなり改善されたフルオロエラストマーが得られることを見出した。さらに、このような改善された圧縮永久歪みの値と、改善された機械的特性の値(即ち、向上した硬度、改善したモジュラス、および破断応力の値と共に改善した破断伸びの値、即ち、高い後者のパラメータの値)を併せ持っている。さらに、このような特性の組み合わせは、例えば280℃までの高温で熱老化させた後でも、高い値を維持する。
【0036】
本発明のシール物品中に含まれる加硫された(パー)フルオロエラストマー組成物は、典型的には、イオン加硫、または過酸化物加硫、またはイオン/過酸化物の混合加硫をうける。過酸化物加硫の場合、フルオロエラストマーは、高分子の鎖中におよび/または末端位にヨウ素原子/臭素原子を有することが好ましい。これらのヨウ素原子および/または臭素原子の導入は、反応混合物に、炭素数2〜10のブロモオレフィンおよび/またはヨードオレフィン(例えば、米国特許第4035565号明細書および米国特許第4694045号明細書に記載されている)、またはヨード−および/またはブロモ−フルオロアルキルビニルエーテル(米国特許第4745165号明細書、米国特許第4564662号明細書および欧州特許第199138号明細書に記載されている)などの臭素化および/またはヨウ素化された「硬化サイト(cure-site)」コモノマーを、最終生成物中の「硬化サイト」コモノマーの含有量が一般に他のベースモノマー単位100mol当たり0.05〜2molとなるような量で添加することによって行ってもよい。
【0037】
使用され得る他のヨウ素化化合物は、欧州特許出願第860436号明細書および伊国特許出願第MI98A001880号明細書に記載されている三ヨウ素化トリアジン誘導体である。
【0038】
「硬化サイト」コモノマーの代わりに、またはそれと組み合わせて、反応混合物にヨウ素化および/または臭素化連鎖移動剤、例えば、式R(I)(Br)(式中、Rは炭素数1〜8の(パー)フルオロアルキルまたは(パー)フルオロクロロアルキルであり、xおよびyは0〜2の整数であり、1≦x+y≦2である)の化合物を添加することによってヨウ素および/または臭素末端原子を導入することが可能である(例えば、米国特許第4243770号明細書および米国特許第4943622号明細書を参照されたい)。また、米国特許第5173553号明細書に記載のように、連鎖移動剤としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物および/または臭化物を使用することも可能である。ヨウ素および/または臭素を有する連鎖移動剤と組み合わせて、酢酸エチル、マロン酸ジエチルなどの当技術分野で公知の他の連鎖移動剤を使用することが可能である。
【0039】
過酸化物による加硫は、公知の方法に従って、熱分解によってラジカルを生成できる好適な過酸化物を添加することによって行われる。最も一般的に使用される薬剤の中では、ジアルキルパーオキサイド、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキサイドおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;ジベンゾイルパーオキサイド;ジ−tert−ブチルパーベンゾエート;ビス[1,3−ジメチル−3−(tert−ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネートを挙げることができる。他の過酸化物系は、例えば、欧州特許出願公開第136596号明細書および欧州特許出願公開第410351号明細書に記載されている。
【0040】
その他の製品を上記の加硫ブレンドに添加してもよく、例えば以下のものである。
(a’)(パー)フルオロエラストマーに対して概ね0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜7重量%の量の加硫助剤;これらの加硫助剤の中で、一般的に使用されているものは、トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン;亜リン酸トリアリル;N,N−ジアリルアクリルアミド;N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド;トリビニルイソシアヌレート;2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサンなどであり;TAICが特に好ましく;他の好ましい架橋剤は、欧州特許第769520号明細書に記載のビス−オレフィンである。使用され得る他の架橋剤は、欧州特許第860436号明細書および国際公開第97/05122号パンフレットに記載のトリアジンである;
(b’)任意選択で場合によっては、重合体に対して1重量%〜15重量%、好ましくは2重量%〜10重量%の量の、2価の金属(例えば、Mg、Zn、Ca、またはPbなど)の酸化物および水酸化物から選択される金属化合物であって、任意選択で場合により、弱酸の塩、例えば、Ba、Na、K、PbまたはCaのステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩または亜リン酸塩と組み合わせたもの;
(c’)任意選択で場合によっては、欧州特許第708797号明細書に記載されている、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、オクタデシルアミンなどの金属非酸化物タイプの受酸剤;
(d’)任意選択で場合によっては、他の従来の添加剤、例えば、0.01mol%〜10mol%、好ましくは0.05mol%〜7mol%の量の増粘充填剤、好ましくはカーボンブラック、TFE単独重合体、またはTFEと少なくとも1つのエチレン性タイプの不飽和を含有する1種類以上のモノマーとの共重合体からなる半結晶性含フッ素重合体;顔料、酸化防止剤、および安定剤等。
【0041】
(パー)フルオロエラストマーマトリックスがシアニド基を含む場合、本発明のシール物品の製造に使用される含フッ素重合体の加硫は、架橋剤として、米国特許第4394489号明細書、米国特許第5767204号明細書、および5789509号明細書に記載されている有機スズ化合物またはジ芳香族アミン化合物を使用して行われる。このようなタイプの加硫は、フルオロエラストマーマトリックスがヨウ素化および/または臭素化末端基を有する場合、米国特許第5447993号明細書に記載されているように、過酸化物タイプの加硫と組み合わされてもよい。
【0042】
イオン加硫は、有利には、当技術分野で周知の加硫剤および促進剤を添加することによって行われる。(パー)フルオロエラストマー100部当たり、促進剤の量は0.05〜5重量部、加硫剤の量は0.5〜15重量部、好ましくは1〜6重量部である。
【0043】
使用され得る加硫剤としては、例えば、欧州特許第335705号明細書および米国特許第4233427号明細書に記載されているような、芳香族または脂肪族のポリオキシヒドリル化合物またはその誘導体が挙げられる。これらの加硫剤の中で、特に、ジ−、トリ−およびテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレンまたはアントラセン;2つの芳香環が2価の脂肪族基、脂環式基もしくは芳香族基でまたは酸素原子もしくはイオウ原子あるいはカルボニル基で互いに結合しているビスフェノールを挙げることができる。この芳香環は、1個以上の塩素原子、フッ素原子、もしくは臭素原子で、またはカルボニル基、アルキル基もしくはアシル基で置換されていてもよい。ビスフェノールAFが特に好ましい。
【0044】
使用され得る促進剤の例としては、四級アンモニウムまたはホスホニウム塩(例えば、欧州特許第335705号明細書および米国特許第3876654号明細書を参照されたい);アミノホスホニウム塩(例えば、米国特許第4259463号明細書を参照されたい);ホスホラン類(例えば、米国特許第3752787号明細書を参照されたい);欧州特許第182299号明細書および欧州特許第120462号明細書に記載のイミン化合物などが挙げられる。四級ホスホニウム塩およびアミノホスホニウム塩が好ましい。
【0045】
促進剤と加硫剤を別々に使用する代わりに、促進剤と加硫剤の1:2〜1:5、好ましくは1:3〜1:5のモル比の付加物を1〜5phr(好ましくは2〜4.5phr)使用することも可能であり、促進剤は上で定義したような正電荷を有する有機オニウム化合物の1つであり、加硫剤は上に示した化合物、特にジ−もしくはポリヒドロキシまたはジ−もしくはポリチオール化合物から選択され;付加物は、促進剤と加硫剤との前述のモル比での反応生成物を溶融することによって、または前述の量の加硫剤を補足した1:1付加物の混合物を溶融することによって得られる。任意選択により、付加物に含有されるものに対して過剰の促進剤が存在してもよい。
【0046】
付加物の調製には、次のカチオン、即ち、1,1−ジフェニル−1−ベンジル−N−ジエチルホスホランアミンおよびテトラブチルホスホニウムが特に好ましく;特に好ましいアニオンには、2つの芳香環が3〜7の炭素原子を含むパーフルオロアルキルの群から選択される2価の基で結合されており、そのOH基がパラ位にあるビスフェノール化合物がある。
【0047】
付加物の調製は、本出願人による欧州特許出願である欧州特許出願公開第684277号公報に記載されており、これは参照によりその内容全体が本明細書に援用される。
【0048】
イオン加硫コンパウンドは、
i)フッ化ビニリデン共重合体のイオン加硫で知られているものから選択される1種類以上の無機受酸剤を(パー)フルオロエラストマー100部当たり1〜40部の量で、
ii)フッ化ビニリデン共重合体のイオン加硫で知られているものから選択される1種類以上の塩基性化合物を(パー)フルオロエラストマー100部当たり0.5〜10部の量で、
含有することもできる。
【0049】
ii)の箇所で言及した塩基性化合物は、一般的に、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、ならびに弱酸の金属塩、例えば、Ca,Sr、Ba、Na、およびKの炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、および亜リン酸塩、ならびに、前述の水酸化物と前述の金属塩との混合物からなる群から選択され;タイプi)の化合物の中では、MgOを挙げることができる。
【0050】
前述のブレンドの成分の量は、(パー)フルオロエラストマー100重量部に対するものである。上述したように、増粘剤、顔料、酸化防止剤、および安定剤等の他の従来の添加剤を加硫混合物に添加してもよい。
【0051】
本発明のシール物品に含まれる(パー)フルオロエラストマー組成物は、2種類の加硫を組み合わせる混合経路で加硫されてもよい。
【0052】
本発明のシール物品は、前述のような本発明の方法で製造され、前記方法は、
− 上で詳述したVDF単独重合体およびVDFの共重合体から選択される半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の粒子を含む(パー)フルオロエラストマー組成物を準備する工程、
− 前記の組成物を加硫成形し、形状付与され予備成形されたシール物品を得る工程、および
− 前記の形状付与され予備成形されたシール物品を半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の融点以上の温度で熱的に後処理する工程、
を含む。
【0053】
本出願人は、驚くべきことに、前述の、形状付与され予備成形されたシール物品に前述の条件下で熱的な後処理工程を施すことによって、かなり改善された圧縮永久歪みを有すると同時に改善された機械的特性(高い硬度を含む)を有するシール物品を得ることが可能であることを見出した。
【0054】
一般に、本発明の方法に使用される(パー)フルオロエラストマー組成物は、射出成形または圧縮成形などの方法を使用して、あるいは押出成形により、成形と同時に加硫が行われる。
【0055】
加硫成形の温度は特に限定されないが、一般に、約50℃〜約250℃、好ましくは約100℃〜約200℃の温度が用いられる。
【0056】
形状付与され予備成形された成形品がより優れた耐漏洩性(即ち、改善された圧縮永久歪み)を有するシール物品を得るためには、半結晶性熱可塑性重合体の融点を超えない温度で組成物の加硫成形を行うことが好ましいであろう。
【0057】
これは、一般に、本実施形態の加硫成形工程の温度が一般に160℃より低い、好ましくは150℃より低い、より好ましくは140℃より低いことを意味する。
【0058】
当業者は、従って、選択された温度で適切な架橋が得られるように、適切な架橋/加硫系を選択するであろう。特に、過酸化物による加硫の場合、この加硫成形温度を選択すると、有利には、選択された条件で適正な加硫速度を達成するには、どの過酸化物を使用するかが決まる。
【0059】
加硫成形後、加硫された、形状付与され予備成形されたシール物品に、熱的な後処理工程を施す。この処理は、一般に、好適な加熱装置、一般には電気炉または熱対流炉で行われる。
【0060】
熱的な後処理は、一般に、少なくとも2分〜24時間、好ましくは30分〜8時間、より好ましくは1時間〜8時間行われる。前述の時間より長く後処理しても、得られる機械的性質の値は変化しない。
【0061】
熱的な後処理は、VDFに基づく半結晶性熱可塑性重合体の融点より高い温度で行わなければならない。これは、一般に、この後処理の温度が160℃より高い、好ましくは170℃より高い、より好ましくは180℃より高いことを意味する。
【0062】
(パー)フルオロエラストマー組成物の機械的特性およびシール性のより高い改善を可能にしている後処理温度は、200〜250℃の後処理温度である。
【0063】
前述のように、前述のような加硫された(パー)フルオロエラストマー組成物を含む、形状付与され予備成形されたシール物品は、前述のような後処理を施した場合、TFEに基づく熱可塑性重合体が充填された組成物から製造される物品と比較して、改善されたシール性を示すが、後者では同じ温度条件下で熱的な後処理を行っても特性は改善されない。この後処理温度では、VDFに基づく熱可塑性重合体が溶融状態になり、この充填剤のブルーミング(expulsion)およびブリードが起こる可能性があり、その結果シールが劣化する可能性があるため、この現象はいっそう驚くべきことである。
【0064】
さらに、(パー)フルオロエラストマー組成物から製造されたシール物品は、圧縮永久歪みが改善されていると共に機械的特性も改善されている(硬度が向上し、モジュラスの値が改善され、破断応力の値が改善されていると共に破断伸びの値が改善されている、即ち、このパラメータの値が高くなっているという意味において)。さらに、この値の組み合わせは、例えば、280℃までの高温で10時間以上も熱老化させた後でも高いままである。
【0065】
以下の実施形態により本発明をより明確に説明するが、それらは純粋に説明の目的であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0066】
[硬度の測定]
硬度は、ASTM D2240規格に準拠し、タイプAデュロメータ法に従って25℃で測定した。
【0067】
[圧縮永久歪みの測定]
圧縮永久歪みは、ASTM D395の方法Bに準拠して200℃で70時間、ASTM D1414規格に詳述されているようなO−リング試験片で測定した。
【0068】
〔例1〕
半結晶性含フッ素重合体B)を40重量%含有する本発明の組成物の調製
a)半結晶性含フッ素重合体B)のラテックスの調製
156〜160℃の融点を有するSolvay Solexis製のPVDFラテックスHylar(登録商標)5000を使用した。
b)含フッ素重合体A)のラテックスの調製
545rpmで作動する撹拌機を備えた10Lのオートクレーブに、真空排気後、脱イオン水6.5Lおよびパーフルオロポリオキシアルキレンマイクロエマルション67mLを投入したが、このマイクロエマルションは、式:
CFClO(CF−CF(CF)O)(CFO)CFCOOH
(式中、n/m=10であり、平均分子量は600である)
の酸末端基を有するパーフルオロポリオキシアルキレン14.5mL;30体積%のNHOH水溶液14.5mL;脱イオン水29mL;式:
CFO(CF−CF(CF)O)(CFO)CF(式中、n/m=20であり、平均分子量は450である)
のGalden(登録商標)D02を9ml混合することによって予め得られた。
次いで、オートクレーブを80℃にし、反応中ずっとこの温度に維持した。次いで、次の組成(単位:モル)、即ち、VDF:17%;HFP:70%;TFE:13%を有するモノマーの混合物を供給して、圧力を30bar(30MPa)にした。
開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)0.32g、連鎖移動剤として1,4−ジヨードパーフルオロブタン(C)25g(重合の開始時に3g、20%転化後に9g;80%転化後に8g)、および式CH=CH−(CF−CH=CHのビスオレフィン10gを(転化を5%ずつ漸増させるために、0.5gずつ20部分に分けて)オートクレーブに導入した。
VDF:50%;HFP:25%;TFE:25%(単位:モル)からなる混合物を供給することによって重合中ずっと30barの一定の圧力に維持した。
100%のモノマー転化に対応する180分の反応後、オートクレーブを冷却しラテックスを排出した。
c)ラテックスの混合および本発明の組成物の調製
a)で得られたラテックスをb)で調製したラテックスと混合し、A)+B)の総重量に対して40重量%の量の半結晶性重合体を得た。混合後、硫酸アルミニウム溶液(ラテックス1リットル当たり6gのAl(SO)でラテックスを凝集させ、90℃の熱対流炉で16時間乾燥させた。Luperco(登録商標)101XL−45(2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルペルオキシヘキサン)を過酸化物として架橋ブレンド中に用いた。
このブレンドを160℃で10分間成形した。成形により得られた製造品に230℃の温度で4時間、後処理を施した。得られた結果を表1に記載する。
【0069】
〔例1A〕
上記の架橋ブレンド中に、過酸化ベンゾイルを過酸化物として用い、成形を130℃で3分間行ったこと以外、実施例1を繰り返した。
【0070】
〔例2〕
半結晶性含フッ素重合体B)を50重量%含有する本発明の組成物の調製
a)半結晶性含フッ素重合体B)のラテックスの調製
実施例1(a)におけるように、Solvay Solexis製のPVDFラテックスHylar(登録商標)5000を使用した。
b)実施例1(b)で得られたラテックスを使用した。
c)ラテックスの混合および本発明の組成物の調製
本発明の組成物中の半結晶性含フッ素重合体の含有量が50重量%であること以外、実施例1に記載の手順を繰り返す。
【0071】
〔例2A〕
架橋ブレンド中に過酸化ベンゾイルを過酸化物として用い、成形を130℃で3分間行ったこと以外、実施例2を繰り返した。
【0072】
〔例3、比較例〕
テトラフルオロエチレンに基づく半結晶性含フッ素重合体を40重量%含有するフルオロエラストマー組成物の調製
a)半結晶性含フッ素重合体B)のラテックスの調製
545rpmで作動する撹拌機を備えた10Lのオートクレーブに、真空排気後、脱イオン水6.5L、および、実施例1(b)で使用したマイクロエマルションと同じ組成を有するパーフルオロポリオキシアルキレンマイクロエマルション260mLを仕込んだ。
次いで、オートクレーブを80℃にし、反応中ずっとこの温度に維持した。オートクレーブをエタンで0.6bar(0.06MPa)の圧力にした後、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)6.5mol%およびテトラフルオロエチレン(TFE)93.5mol%からなるモノマー混合物で20bar(2MPa)の圧力にした。
次いで、過硫酸アンモニウム(APS)0.13gを開始剤としてオートクレーブに導入した。反応中、次のモノマー混合物、即ち、PMVE2mol%およびTFE98%を連続的に供給することによって圧力を20barに維持した。
100%のモノマー転化に対応する160分の反応後、オートクレーブを冷却しラテックスを排出した。
b)フルオロエラストマーA)のラテックスの調製
実施例1(b)で調製したラテックスを使用した。
c)ラテックスの混合および本発明の組成物の調製
混合、成形、および後処理は、実施例1に記載のように行った。
【0073】
〔例4、比較例〕
テトラフルオロエチレンに基づく半結晶性含フッ素重合体を50重量%含有するフルオロエラストマー組成物の調製
a)半結晶性含フッ素重合体ラテックスの調製
実施例3(a)におけるように調製したラテックスを使用した。
b)フルオロエラストマーラテックスA)の調製
実施例1(b)で調製したラテックスを使用した。
c)ラテックスの混合および本発明の組成物の調製
混合、成形、および後処理は、実施例2に記載のように行った。
【0074】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン(VDF)単独重合体、およびVDFと少なくとも1つのエチレン性タイプの不飽和を有する1種類以上のモノマーとの共重合体(VDF以外のコモノマーの合計は、共重合体中のモノマーの総量に対して≦15mol%である)から選択される半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の粒子を含む加硫された(パー)フルオロエラストマー組成物を含むシール物品であって、前記半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の量が、前記(パー)フルオロエラストマーと前記半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の総重量に対して30重量%〜90重量%であり、前記加硫された組成物は、ASTM D2240タイプAデュロメータ法に準拠して測定した場合のショアA硬度が少なくとも85であり、ASTM D395に準拠して200℃で70時間、ASTM D1414によるO−リングで測定した場合の圧縮永久歪みが30%未満である、シール物品。
【請求項2】
前記半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の量が、前記(パー)フルオロエラストマーに対して30重量%〜80重量%、より好ましくは30重量%〜70重量%、さらにより好ましくは35重量%〜60重量%である、請求項1に記載のシール物品。
【請求項3】
前記半結晶性熱可塑性含フッ素重合体粒子のサイズが、10〜500nm、好ましくは50〜350nmである、請求項1または2に記載のシール物品。
【請求項4】
前記半結晶性熱可塑性重合体が、VDF単独重合体、または、VDFと以下:
(a)C〜Cパーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、およびヘキサフルオロイソブテン;
(b)C〜C水素化フルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、およびパーフルオロアルキルエチレンCH=CH−R(式中、RはC〜Cパーフルオロアルキルである);
(c)C〜Cクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF=CFOR(式中、RはC〜C(パー)フルオロアルキル、例えば、CF、CまたはCである);
(e)(パー)フルオロオキシアルキルビニルエーテルCF=CFOX(式中、Xは、1個以上のエーテル基を有するC〜C12((パー)フルオロ)オキシアルキル、例えば、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルである);
(f)式:
【化1】

(式中、Rf3基、Rf4基、Rf5基、およびRf6基は互いに同一であってもまたは異なってもよく、これらはそれぞれ独立して、フッ素原子、または任意に1個以上の酸素原子を含んでいてもよいC〜Cパーフルオロアルキル基、例えば、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである)
の(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)一般式:
CFX=CXOCFOR” (I−Ba)
(式中、R”は直鎖または分岐鎖C〜C(パー)フルオロアルキル;環状C〜C(パー)フルオロアルキル;および、1〜3個の酸素原子を含む直鎖または分岐鎖C〜C(パー)フルオロオキシアルキルから選択され、X=F、Hであり;好ましくはXはFであり、R”は−CFCF(MOVE1);−CFCFOCF(MOVE2);または−CF(MOVE3)である)
を有する(パー)フルオロメトキシビニルエーテル(以下、MOVEと称する)、
から選択される1種類以上のフッ素化コモノマーとの共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシール物品。
【請求項5】
前記(パー)フルオロエラストマーが、以下の種類に属する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール物品:
(1)VDFに基づく共重合体であって、VDFが、以下:
(a)C〜Cパーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、およびヘキサフルオロイソブテン;
(b)C〜C水素化フルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、およびパーフルオロアルキルエチレンCH=CH−R(式中、RはC〜Cパーフルオロアルキルである);
(c)C〜Cクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF=CFOR(式中、RはC〜C(パー)フルオロアルキル、例えば、CF、CまたはCである);
(e)(パー)フルオロオキシアルキルビニルエーテルCF=CFOX(式中、Xは、1個以上のエーテル基を有するC〜C12((パー)フルオロ)オキシアルキル、例えば、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルである);
(f)式:
【化2】

(式中、Rf3基、Rf4基、Rf5基、およびRf6基は互いに同一であってもまたは異なってもよく、これらはそれぞれ独立して、フッ素原子、または任意に1個以上の酸素原子を含んでいてもよいC〜Cパーフルオロアルキル基、例えば、−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFである)
の(パー)フルオロジオキソール;好ましくはパーフルオロジオキソール;
(g)一般式:
CFX=CXOCFOR” (I−Ba)
(式中、R”は直鎖または分岐鎖C〜C(パー)フルオロアルキル;環状C〜C(パー)フルオロアルキル;および、1〜3個の酸素原子を含む直鎖または分岐鎖C〜C(パー)フルオロオキシアルキルから選択され、X=F、Hであり;好ましくはXはFであり、R”は−CFCF(MOVE1);−CFCFOCF(MOVE2);または−CF(MOVE3)である)
を有する(パー)フルオロメトキシビニルエーテル(以下、MOVEと称する)、
(h)非フッ素化C〜Cオレフィン(Ol)、例えば、エチレン(E)およびプロピレン(P);
から選択される少なくとも1種類のコモノマーと共重合している、VDFに基づく共重合体、
2)TFEに基づく共重合体であって、TFEが、以下:
(c)C〜Cクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)CF=CFOR(式中、RはC〜C(パー)フルオロアルキル、例えば、CF、CまたはCである);
(e)(パー)フルオロオキシアルキルビニルエーテルCF=CFOX(式中、Xは、1個以上のエーテル基を有するC〜C12((パー)フルオロ)オキシアルキル、例えば、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルである);
(g)一般式:
CFX=CXOCFOR” (I−Ba)
(式中、R”は直鎖または分岐鎖C〜C(パー)フルオロアルキル;環状C〜C(パー)フルオロアルキル;および、1〜3個の酸素原子を含む直鎖または分岐鎖C〜C(パー)フルオロオキシアルキルから選択され、X=F、Hであり;好ましくはXはFであり、R”は−CFCF(MOVE1);−CFCFOCF(MOVE2);または−CF(MOVE3)である)
を有する(パー)フルオロメトキシビニルエーテル(以下、MOVEと称する)、
(h)非フッ素化C〜Cオレフィン(Ol)、例えば、エチレン(E)およびプロピレン(P);
(i)シアニド基を有するパーフルオロビニルエーテル、
から選択される少なくとも1種類のコモノマーと共重合している共重合体。
【請求項6】
前記(パー)フルオロエラストマーのモル組成が、以下:
(a)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10〜45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜15%、
(b)フッ化ビニリデン(VDF)50〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5〜50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%、
(c)フッ化ビニリデン(VDF)20〜30%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C10〜30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)および/またはパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18〜27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10〜30%、
(d)テトラフルオロエチレン(TFE)45〜65%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C20〜55%、フッ化ビニリデン0〜30%、
(e)テトラフルオロエチレン(TFE)32〜60mol%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C10〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜40%、(パー)フルオロメトキシビニルエーテル(MOVE)0〜30%、
(f)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15〜45%、フッ化ビニリデン(VDF)5〜30%、ヘキサフルオロプロペンHFP 0〜30%、
(g)フッ化ビニリデン(VDF)35〜85%、(パー)フルオロメトキシビニルエーテル(MOVE)5〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0〜40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0〜30%、
(h)テトラフルオロエチレン(TFE)50〜80%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜50%、
(i)テトラフルオロエチレン(TFE)45〜65%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C20〜55%、フッ化ビニリデン0〜30%、
(l)テトラフルオロエチレン(TFE)32〜60%、非フッ素化オレフィン(Ol)C〜C10〜40%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20〜40%、
(m)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75mol%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15〜45%、フッ化ビニリデン(VDF)5〜30%、
(o)テトラフルオロエチレン(TFE)33〜75%、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜45%、MOVE 15〜30%、HEP 0〜30%、
から選択され、前記モノマーのモルパーセンテージの合計が100%である、請求項5に記載のシール物品。
【請求項7】
前記(パー)フルオロエラストマーが、一般式:
【化3】

(式中、
、R、R、R、RおよびRは互いに同一であってもまたは異なってもよく、これらはHまたはC〜Cアルキルであり、
Zは、任意に酸素原子を含んでいてもよい、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化されている直鎖もしくは分岐鎖C〜C18アルキレン基もしくはシクロアルキレン基であるか、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基である)
のビスオレフィンに由来するモノマー単位を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシール物品。
【請求項8】
前記ビスオレフィンに由来する繰り返し単位の量が、前記(パー)フルオロエラストマーの他のモノマー単位100mol当たり、0.01〜1.0molである、請求項7に記載のシール物品。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のシール物品の製造方法であって、
− フッ化ビニリデン(VDF)単独重合体、およびVDFと少なくとも1つのエチレン性タイプの不飽和を含有する1種類以上のモノマーとの共重合体(VDF以外のコモノマーの合計は、共重合体中のモノマーの総量に対して≦15mol%である)から選択される半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の粒子を含む(パー)フルオロエラストマー組成物を準備する工程であって、前記半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の量が、前記(パー)フルオロエラストマーと前記半結晶性熱可塑性含フッ素重合体の総重量に対して30重量%〜90重量%である工程、
− 前記組成物を加硫成形し、形状付与され予備成形されたシール物品を得る工程、および
− 前記形状付与され予備成形されたシール物品を前記半前記結晶性熱可塑性含フッ素重合体の融点以上の温度で熱的に後処理する工程、
を含む、製造方法。
【請求項10】
前記方法が、160℃より低い、好ましくは150℃より低い、より好ましくは140℃より低い温度で加硫成形する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、少なくとも2分〜24時間、好ましくは30分〜8時間、より好ましくは1時間〜8時間の時間、熱的な後処理を行う工程を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、160℃より高い、好ましくは170℃より高い、より好ましくは180℃より高い温度で熱的な後処理を行う工程を含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−511074(P2012−511074A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539033(P2011−539033)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066376
【国際公開番号】WO2010/063810
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・スペシャルティ・ポリマーズ・イタリー・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】