説明

加速度センサのゼロ点補正装置及び駐車支援装置

【課題】傾斜する路面に停車した場合でもゼロ点補正に必要な処理を実行可能な加速度センサのゼロ点補正装置の提供
【解決手段】本発明によるゼロ点補正装置は、車両位置を検出する車両位置検出手段と、停車状態を検出する停車状態検出手段と、停車状態で得られる加速度センサの出力値を、そのときの車両位置に対応付けて記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記加速度センサの出力値(記憶値)と、該記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値とを比較し、該比較結果に基づいて、前記加速度センサのゼロ点を補正するゼロ点補正手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサのゼロ点を補正するゼロ点補正装置及びこれを用いる駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加速度センサの経時変化によるゼロ点のドリフト分を、車両に加速度の生じない車両停車時に補正する車両用加速度センサ補正装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用加速度センサ補正装置では、車両がほぼ平坦な路面に停車した場合に限って加速度センサのゼロ点補正に必要な処理が実行される。即ち、加速度センサの出力に基づいて路面傾斜を演算し、傾斜角が所定値を越えている場合はその値を補正量として記憶せず、所定値より小さい場合にのみその出力値を補正量として記録する。
【特許文献1】特開平7−301641公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、車両がほぼ平坦な路面に停車した場合に限って加速度センサのゼロ点補正に必要な処理が実行されるので、ゼロ点補正に必要な処理の実行機会が限定されるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、傾斜する路面に停車した場合でもゼロ点補正に必要な処理を実行可能な加速度センサのゼロ点補正装置及びこれを用いる駐車支援装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、加速度センサのゼロ点補正装置であって、
車両位置を検出する車両位置検出手段と、
停車状態を検出する停車状態検出手段と、
停車状態で得られる加速度センサの出力値を、そのときの車両位置に対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記加速度センサの出力値(以下、「記憶値」という)と、該記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値とを比較し、該比較結果に基づいて、前記加速度センサのゼロ点を補正するゼロ点補正手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係るゼロ点補正装置において、
前記記憶手段には、ユーザの自宅の駐車場周辺に車両が停車する際に得られる加速度センサの出力値が記憶されることを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第1又は2の発明に係るゼロ点補正装置において、
前記記憶手段には、ゼロ点が初期設定又は補正された後から車両が所定走行距離走行するまでの間に得られた加速度センサの出力値が前記記憶値として記憶されることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第3の発明に係るゼロ点補正装置において、
前記ゼロ点補正手段は、ゼロ点が初期設定又は補正された後から車両が所定走行距離走行した後に得られる加速度センサの出力値であって、前記記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値を、前記記憶値と比較することを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、第4の発明に係るゼロ点補正装置において、
前記ゼロ点補正手段は、前記記憶手段に記憶された前記加速度センサの記憶値と、該記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値との差分値に基づいて、前記加速度センサのゼロ点を補正することを特徴とする。
【0010】
第6の発明は、第5の発明に係るゼロ点補正装置において、
前記ゼロ点補正手段は、前記記憶手段に記憶された前記加速度センサの記憶値の平均値であって、同一の車両位置に係る前記加速度センサの記憶値の平均値と、該記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値との差分値に基づいて、前記加速度センサのゼロ点を補正することを特徴とする。
【0011】
第7の発明は、駐車支援装置に関し、当該駐車支援装置は、第1〜6のうちのいずれかの発明に係るゼロ点補正装置と、
前記ゼロ点補正装置によりゼロ点が補正される前記加速度センサと、
駐車を支援する駐車支援手段とを備え、
前記駐車支援手段は、前記ゼロ点補正装置によりゼロ点が補正された前記加速度センサの出力値に基づいて、車両前方側が下り勾配となる所定勾配以上の坂道が検出された場合に、駐車支援制御を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、傾斜する路面に停車した場合でもゼロ点補正に必要な処理を実行可能な加速度センサのゼロ点補正装置及びこれを用いる駐車支援装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0014】
図1は、本発明による加速度センサのゼロ点補正装置1の主要構成の一実施例を示す構成図である。ゼロ点補正装置1は、電子制御ユニット10(以下、「ECU10」と称す)を中心に構成されている。ECU10は、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0015】
ECU10には、加速度センサ30、GPS受信機32及び車速センサ34が接続されている。加速度センサ30は、ゼロ点補正装置1によりゼロ点が補正されるセンサである。加速度センサ30は、路面の傾斜を演算できる成分(方向成分)の加速度を検出できる構成(典型的には、車両前後軸方向と鉛直軸方向の加速度成分を検出する構成)であれば任意の構成であってよい。加速度センサ30は、ゼロ点を基準として検出した加速度の検出値を出力する。ゼロ点は、加速度センサ30に作用している加速度がゼロである状態(例えば車両が勾配の無い場所で停止している状態)における加速度センサ30の出力値又はそれに基づき演算される所定の物理量(例えば後述の勾配)に相当し、典型的には、車両出荷時や部品製造時等に予め計測され、所定のメモリに記憶される。加速度センサ30は、ABS(アンチロックブレーキシステム)や車両姿勢安定化システム(例えばVSC)で用いられる加速度センサであってよい。GPS受信機32は、GPSの衛星からの電波に基づいて自車位置を測位して、自車位置情報をECU10に供給する。GPS受信機32は、車載ナビゲーションシステムで用いられるGPS受信機であってよい。車速センサ34は、各輪に配設され、車輪速に応じた周期でパルス信号を発生する車輪速センサであってよい。車速センサ34は、ABSで用いられる車速センサであってよい。
【0016】
ECU10には、データベース20が接続される。データベース20には、加速度センサ30のゼロ点補正に必要な各種のデータが記憶される。
【0017】
図2は、データベース20内のデータの一例を示す図である。データベース20には、車両停車時の車両位置、そのときの加速度センサ30のセンサ値(Gセンサ値)、カウンタnの状態、及び、車両位置が基準位置か否かの情報が記憶される。これらの情報の詳細及びこれらの記憶処理については後述する。尚、データベース20は、ECU10内のメモリにより実現されてもよいし、外部のメモリにより実現されてもよい。
【0018】
図3は、ECU10の主要な機能部を示す図である。ECU10は、その主要な機能部として、停車状態検出部12、センサ出力記憶処理部14及びゼロ点補正部16を備える。
【0019】
停車状態検出部12は、車速センサ34からの車速情報に基づいて、車両の停止状態を検出する。例えば、停車状態検出部12は、車速センサ34からの車速情報に基づいて、車速が略ゼロの状態が所定時間(例えば1秒)継続した場合に、停車状態を検出することとしてもよい。停車状態検出部12は、車速センサ34からの車速情報に加えて若しくは代えて、GPS受信機32からの自車位置情報やブレーキペダルやシフトの操作情報等に基づいて、車両の停止状態を検出してもよい。
【0020】
図4は、センサ出力記憶処理部14により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。
【0021】
ステップ300では、停車状態検出部12の検出結果に基づいて、車両の停車状態が検出されたか否かが判定される。車両の停車状態が検出された場合には、ステップ301に進む。
【0022】
ステップ301では、車両の走行距離が所定距離(例えば2000km)よりも短いか否かが判定される。所定距離は、加速度センサ30の経年劣化が発生しない範囲の距離に相当し、加速度センサ30の特性等に応じて適合される距離であってよい。尚、走行距離は、車速センサ34からの情報に基づいて算出されたものが使用されてよい。車両の走行距離は、車両出荷時にゼロに設定され、その後、後述のゼロ点補正実行時に初期化されてもよい。
【0023】
本ステップ301において、車両の走行距離が所定距離よりも短い場合には、ステップ302に進む。他方、車両の走行距離が所定距離以上である場合には、今回の停車時におけるセンサ出力記憶処理は終了する。これは、経年劣化している可能性のある加速度センサ30の出力値を用いたゼロ点補正が行われないようにするためである。尚、この観点から、図4に示すセンサ出力記憶処理は、車両の走行距離が所定距離よりも短い状況下で車両の停車状態が検出された場合のみ起動されることとしてもよい。
【0024】
ステップ302では、現在の停止時の車両位置に係る加速度センサ30のセンサ値(「Gセンサ値」ともいう)がデータベース20内に記憶されているか否かが判定される。この判定は、今回の停止位置(車両位置)と、データベース20内に記憶されている車両位置(即ち後述のGセンサ値と関連付けて記憶される車両位置)とが一致するか否かを判定することで実現される。2つの車両位置が一致するか否かは、使用するGPS受信機32の測位精度に依存するが、例えば誤差が±5m以下の場合に、2つの車両位置が一致すると判定されてよい。現在の停止時の車両位置に係る加速度センサ30のGセンサ値がデータベース20内に記憶されている場合、即ち今回の停止位置が以前にも停止したことがある停止位置である場合には、ステップ306に進み、記憶されていない場合、即ち今回の停止位置が初めての停止位置である場合には、ステップ304に進む。
【0025】
ステップ304では、今回の停止位置で得られる加速度センサ30のGセンサ値が、今回の停止位置(車両位置)と関連付けてデータベース20内に記憶される。このとき、今回の車両位置に対してGセンサ値が1つ記憶されたことを表すべくカウンタnがn=1にセットされる。尚、カウンタは、車両位置毎に設定される。データベース20内に記憶されるGセンサ値は、加速度センサ30の出力値をそのもの(但し現在のゼロ点を基準とした出力値)であってもよいし、出力値に対して所定の処理(例えばフィルタ処理)が施された値であってもよいし、或いは、出力値から所定の演算式(又は変換式)で演算された他の物理量を表す値であってよい。本例では、説明の無用な複雑化を防止するために、加速度センサ30のGセンサ値は、加速度センサ30の出力値から所定の演算式で導出される路面傾斜ないし勾配を表す値[deg]であるとする。ステップ304の処理が終了すると、今回の停車時におけるセンサ出力記憶処理は終了する。
【0026】
ステップ306では、今回の停止位置(車両位置)に係るカウンタnが1だけインクリメントされる。また、上記ステップ304と同様、今回の停止位置で得られる加速度センサ30のGセンサ値が、今回の停止位置と関連付けてデータベース20内に記憶される。この場合、2個以上のGセンサ値が今回の停止位置と関連付けてデータベース20内に記憶されることになるが、2個以上のGセンサ値がそれぞれ記憶されてもよいし、2個以上のGセンサ値の平均値が記憶されてもよい。
【0027】
ステップ308では、今回の停止位置に係るカウンタnが所定値以上であるか否かが判定される。所定値は、頻繁に停車状態が検出される車両位置を特定するための値であり、また、後述のゼロ点補正に用いる記憶値のばらつき(例えばノイズの影響)を抑制するための値であり、例えば3である。今回の停止位置に係るカウンタnが所定値以上である場合には、ステップ310に進み、今回の停止位置に係るカウンタnが所定値未満の場合には、今回の停車時におけるセンサ出力記憶処理は終了する。
【0028】
ステップ310では、今回の停止位置が基準位置と設定され、基準位置であることを示す情報が、該基準位置に係る車両位置情報及びGセンサ値に関連付けてデータベース20内に記憶される。尚、このようにして設定された基準位置に対しては、データベース20内に3つ以上のGセンサ値(又は3つ以上のGセンサ値の平均値)が記憶されていることになる。ステップ310の処理が終了すると、今回の停車時におけるセンサ出力記憶処理は終了する。
【0029】
図5は、ゼロ点補正部16により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。尚、図5に示すゼロ点補正処理ルーチンは、好ましくは、ゼロ点補正が必要となる状況が検出されたことを条件として起動される。例えば、図5に示すゼロ点補正処理ルーチンは、車両の走行距離が所定距離(例えば2000km)以上であることを条件として起動される。
【0030】
ステップ400では、停車状態検出部12の検出結果に基づいて、車両の停車状態が検出されたか否かが判定される。車両の停車状態が検出された場合には、ステップ402に進む。
【0031】
ステップ402では、今回の停止位置(車両位置)がデータベース20内に記憶された基準位置に一致するか否かが判定される。2つの車両位置が一致するか否かは、使用するGPS受信機32の測位精度に依存するが、例えば誤差が±5m以下の場合に、2つの車両位置が一致すると判定されてよい。今回の停止位置が基準位置に一致する場合には、ステップ404に進み、今回の停止位置が基準位置に一致しない場合には、ステップ400に戻る。
【0032】
ステップ404では、今回の停止時の車両位置で得られる加速度センサ30のGセンサ値が適切なメモリに記憶される。尚、以下では、本ステップ404で記憶されるGセンサ値と、データベース20に記憶される過去の停車時のGセンサ値(図4のステップ304及び308参照)と区別するため、本ステップ404で記憶されるGセンサ値を、「今回値B」ともいい、データベース20に記憶された過去の停車時のGセンサ値を、「記憶値A」ともいう。記憶値Aは、上述の如くGセンサ値の平均値を含む。
【0033】
ステップ406では、経年劣化量Cが今回値B及び記憶値Aを用いて算出される。具体的には、経年劣化量Cは、今回値Bと記憶値Aの差分値であってよい。即ち、(経年劣化量C)=(今回値B)−(記憶値A)として算出されてよい。
【0034】
ステップ408では、上記ステップ406で算出された経年劣化量Cが所定基準値未満であるかが判定される。所定基準値は、経年劣化時に生じうる変動範囲の最大値に対応し、異常値を排除するための閾値である。所定基準値は、経年劣化時に生じうる変動範囲の最大値として例えば4.0[deg]であってよい。経年劣化量Cが所定基準値未満である場合には、ステップ410に進む。他方、経年劣化量Cが所定基準値以上である場合には、今回値B等に何らかの異常があると判断して、ステップ400に戻る。従って、この場合、今回の停車時に得られた今回値Bによるゼロ点補正は実行されない。
【0035】
ステップ410では、加速度センサ30のゼロ点が経年劣化量Cに基づいて補正される。即ち、加速度センサ30のゼロ点は、現在値(補正前の値)に経年劣化量Cを和算することで補正される。ところで、加速度センサ30のゼロ点は、初期的には車両出荷時等に設定されるが、その後、時間の経過と共にドリフト等して変化する。本ステップ410では、このような経年劣化に起因して変化した加速度センサ30のゼロ点が、初期設定時又は前回補正時からの経年劣化分(=経年劣化量C)だけ補正される。ステップ410の処理が終了すると、ステップ412に進む。
【0036】
ステップ412では、データベース20内のデータがリセットされる。また、これと同時に、走行距離がゼロにリセットされる。即ち、ゼロ点補正が実施されると、次のゼロ点補正に備えて、各種のデータがリセットされる。尚、データベース20内の記憶値Aは、リセットされずに、補正後のゼロ点に基づいて補正されてもよい。また、経年劣化に起因してゼロ点補正が必要となる走行距離の間隔が総走行距離の増加と共に徐々に短くなっていく場合には、次のゼロ点補正が早く実行されるように、走行距離が例えば1000kmといったゼロ以外の値にリセットされてもよい。
【0037】
以上説明した本実施例の加速度センサのゼロ点補正装置1によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
【0038】
本実施例によれば、過去のGセンサ値を、過去の停止位置に関連付けてデータベース化し、その後、ゼロ点補正が必要となった段階で、データベース20内に記憶された停車位置と同一の位置に停車した場合に、過去のGセンサ値に基づいて、ゼロ点補正を実行することができる。従って、本実施例によれば、平坦路や勾配の急な道路を含め、停車時の路面の勾配に依存することなくゼロ点補正が可能である。特に、ユーザの自宅の駐車場のような頻繁に利用する車両位置での過去のGセンサ値を利用することができるので、ゼロ点補正を適時に行うことが可能である。
【0039】
図6は、本実施例による加速度センサのゼロ点補正装置1が組み込まれた駐車支援装置2の主要構成の一例を示す図である。
【0040】
駐車支援装置2は、図6に示す如く、電子制御ユニット40(以下、「駐車支援ECU40」と称す)を中心に構成されている。駐車支援ECU40は、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0041】
駐車支援ECU40には、駐車支援に必要な各種車載センサ(例えば車速センサ34、加速度センサ30、ステアリングセンサ等)やスピーカ、ディスプレイ等が接続されてよい。駐車支援ECU40は、ユーザにより設定された目標駐車位置又は自動的に設定された目標駐車位置への駐車を支援するための駐車支援制御を実行する。駐車支援制御は、多種多様であり、任意の駐車支援制御が実行されてよい。例えば駐車支援制御は、車両後退時の操舵を自動的に行う自動操舵制御を含んでよい。
【0042】
駐車支援ECU40には、ゼロ点補正装置1が接続されている。駐車支援ECU40は、加速度センサ30からの出力信号に基づいて、現在の車両位置での路面傾斜を演算する。このとき、駐車支援ECU40は、ゼロ点補正装置1からの情報に基づいて、上述のゼロ点補正が反映される態様で、路面傾斜を演算する。尚、路面傾斜の演算はゼロ点補正装置1側で実行されてもよく、この場合、演算された路面傾斜を表す情報が駐車支援ECU40に供給されればよい。
【0043】
駐車支援ECU40は、車両後退時の駐車支援制御を開始する際、演算された路面勾配に基づいて、現在の車両の位置する道路が、車両の前方へのずり下がりが生ずる坂道であるか否かを判定する。即ち、現在の車両位置でブレーキ油圧をゼロに低減した場合に所定基準以上の高い加速度での前進が生ずるような坂道であるか否かを判定する。現在の車両の位置する道路が、車両の前方へのずり下がりが生ずる坂道であると判定した場合には、駐車支援ECU40は、車両後退時の駐車支援制御を中止(停止)する。
【0044】
このような図6に示す駐車支援装置2によれば、上述のゼロ点補正装置1によるゼロ点補正が反映されたGセンサ値を用いて、路面傾斜を評価するので、車両の前方へのずり下がりが生ずる坂道を精度良く検出して、ずり下がりが生ずる坂道における車両後退時の駐車支援制御を防止することができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0046】
例えば、上述の実施例では、停車位置の特性を考慮せずに、任意の停車位置に係るGセンサ値がデータベース20に記憶されているが、ユーザが頻繁に利用する特定の停車位置に係るGセンサ値だけがデータベース20に記憶されるようにしてもよい。例えば、ユーザの自宅や勤務先の駐車場周辺に車両が位置する際に得られた加速度センサの出力値が記憶されてもよい。これは、かかる自宅等の駐車場周辺での停車は頻繁に生ずるので、Gセンサ値がデータベース20に記憶される停車位置を自宅等の駐車場周辺に限定しても、ゼロ点補正の機会が大きく減ることは無く、また、データベース20の効率化の観点からも有利であるからである。従って、例えばGPS受信機32及びナビゲーション装置の地図データに基づいて、自宅の駐車場付近に車両が停車したことが検出された場合に、そのときのGセンサ値がデータベース20に記憶されるようにしてもよい。この場合、Gセンサ値がデータベース20に記憶される停車位置は、駐車支援制御開始時の停車位置(即ち駐車開始位置)であってもよいし、駐車支援制御完了時の停車位置(即ち駐車完了位置)であってもよい。かかる停車位置は略一定であるので、一致精度の高い同一の停車位置に係るGセンサ値を利用したゼロ点補正を実現することができ、ゼロ点補正の精度が向上する。尚、この場合、GPS受信機32及びナビゲーション装置の地図データは、車両が自宅等の駐車場の周辺に位置することを検出するためだけに用い、駐車支援制御開始時及び/又は駐車支援制御完了時の停車位置は、車両が自宅等の駐車場の周辺に位置するときの車両の挙動情報及び/又は運転者の操作情報(例えばシフトポジションや車速や、駐車スイッチ、IGスイッチの操作に関する情報)に基づいて検出されてもよい。例えば、駐車支援制御開始時には駐車スイッチがオンにされシフトレバーがR(リバース)にされる構成では、車両が自宅等の駐車場の周辺に位置する状況下で駐車スイッチがオンにされシフトレバーがRにされたときのGセンサ値が、駐車支援制御開始時の停車位置に係るGセンサ値として扱われてもよい。同様に、車両が自宅等の駐車場の周辺に位置する状況下で、駐車スイッチがオンにされシフトレバーがRにされ駐車スイッチがオンにされて駐車支援制御が実行され、そして、その駐車支援制御が完了したときに、そのときのGセンサ値が、駐車支援制御完了時の停車位置に係るGセンサ値として扱われてもよい。
【0047】
また、上述の実施例では、ゼロ点補正の精度を高めるために、過去に同一位置での複数回の停車が検出された場合に当該停車位置が基準位置として決定されているが、過去に1回だけの停車しか検出されない場合でも当該停車位置が基準位置として決定されてもよい。即ち、上記図4の処理においてn=1の車両位置が基準位置として決定されてもよい。
【0048】
また、上述の実施例では、基準位置での一回の停車時に得られる今回値Bがゼロ点補正に用いられているが、ノイズ等による変動の影響を防止するために、同一の基準位置での複数回の停車時に得られる複数個の今回値Bがゼロ点補正に用いられることとしてもよい。即ち、同一の基準位置に係る今回値Bが複数個記憶された段階で、ゼロ点補正が実行されるようにしてもよい。この場合、複数個の今回値Bの平均値が使用されてよい。
【0049】
また、上述の実施例では、車両の走行距離に基づいて経時劣化の進行度合いが評価されているが、車両の走行距離に代えて、ゼロ点補正後からの経過時間(ゼロ点補正が未だされていない場合には、車両出荷後の経過時間)が使用されてもよい。
【0050】
また、上述の実施例によるゼロ点補正処理は、他の態様のゼロ点補正処理と並存してもよい。例えば、上述の実施例によるゼロ点補正処理は、上記の特許文献1に記載のゼロ点補正処理と並存してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による加速度センサのゼロ点補正装置1の主要構成の一実施例を示す構成図である。
【図2】データベース20内のデータの一例を示す図である。
【図3】ECU10の主要な機能部を示す図である。
【図4】センサ出力記憶処理部14により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】ゼロ点補正部16により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施例によるゼロ点補正装置1が組み込まれた駐車支援装置2の主要構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ゼロ点補正装置
2 駐車支援装置
10 ECU
12 停車状態検出部
14 センサ出力記憶処理部
16 ゼロ点補正部
20 データベース
30 加速度センサ
32 GPS受信機
34 車速センサ
40 駐車支援ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサのゼロ点補正装置であって、
車両位置を検出する車両位置検出手段と、
停車状態を検出する停車状態検出手段と、
停車状態で得られる加速度センサの出力値を、そのときの車両位置に対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記加速度センサの出力値(以下、「記憶値」という)と、該記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値とを比較し、該比較結果に基づいて、前記加速度センサのゼロ点を補正するゼロ点補正手段とを備えることを特徴とする、ゼロ点補正装置。
【請求項2】
前記記憶手段には、ユーザの自宅の駐車場周辺に車両が停車する際に得られる加速度センサの出力値が記憶される、請求項1に記載のゼロ点補正装置。
【請求項3】
前記記憶手段には、ゼロ点が初期設定又は補正された後から車両が所定走行距離走行するまでの間に得られた加速度センサの出力値が前記記憶値として記憶される、請求項1又は2に記載のゼロ点補正装置。
【請求項4】
前記ゼロ点補正手段は、ゼロ点が初期設定又は補正された後から車両が所定走行距離走行した後に得られる加速度センサの出力値であって、前記記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値を、前記記憶値と比較する、請求項3に記載のゼロ点補正装置。
【請求項5】
前記ゼロ点補正手段は、前記記憶手段に記憶された前記加速度センサの記憶値と、該記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値との差分値に基づいて、前記加速度センサのゼロ点を補正する、請求項4に記載のゼロ点補正装置。
【請求項6】
前記ゼロ点補正手段は、前記記憶手段に記憶された前記加速度センサの記憶値の平均値であって、同一の車両位置に係る前記加速度センサの記憶値の平均値と、該記憶値に対応する車両位置に再び停車した際に得られる前記加速度センサの出力値との差分値に基づいて、前記加速度センサのゼロ点を補正する、請求項5に記載のゼロ点補正装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のゼロ点補正装置と、
前記ゼロ点補正装置によりゼロ点が補正される前記加速度センサと、
駐車を支援する駐車支援手段とを備え、
前記駐車支援手段は、前記ゼロ点補正装置によりゼロ点が補正された前記加速度センサの出力値に基づいて、車両前方側が下り勾配となる所定勾配以上の坂道が検出された場合に、駐車支援制御を停止することを特徴とする、駐車支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−264794(P2009−264794A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111787(P2008−111787)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】