説明

包装機の物品噛込み検出装置

【課題】検出装置の組付け等に熟練度を必要とせず、また噛込み時に大きな負荷が加わらないような物品であっても、シール体への物品噛込みを良好に検出する。
【解決手段】エンドシール機構24のシール体26,26は、サーボアンプ38で制御されるサーボモータ28により不等速回転される。サーボアンプ38からサーボモータ28へは、シール体26,26を不等速回転させるのに必要な値の電圧、電流が供給される。電圧および電流から得られる電力値の変化は、検出処理手段34により検出される。検出処理手段34は、予め決定した基準電力値SPと検出電力値とを比較し、検出電力値が基準電力値SPを超えたときに、シール体26,26に物品が噛込んだと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば筒状に繰出し成形されるフィルムに物品を挿入供給し、該フィルムにセンターシールおよびエンドシールを施して包装体を製造する包装機において、エンドシール機構におけるシール体での物品噛込みを検出し得る物品噛込み検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
横型製袋充填機においては、筒状フィルムに送り込まれた物品は、エンドシール機構のシールタイミングに対応した所定間隔毎に筒状フィルム中に載置されていることが必要である。しかるに、前記筒状フィルム中に供給された物品がエンドシール機構に搬送されるまでに、稼動中に発生する振動等によってシールタイミングに対応した正規の位置からズレてしまった場合や、物品の割れや欠けにより発生した欠片がシール予定部位に至った場合には、シール体を噛合わせてエンドシールする際にシール体で物品等を噛込むといった事態が発生し、包装不良を招来することになる。
【0003】
前述した物品噛込みに関して、これを検出するものとして、例えば特許文献1,2に記載の技術が提案されている。これらの技術は、エンドシール機構のシール体が噛合ってシールを施す時点で発生するシール体の変位をセンサで検出し、その検出信号の変位レベルが基準値を超えている場合に、物品噛込みの発生と判断している。
【0004】
また、別の技術として、例えば、特許文献3に記載されているように、予め噛込みが予想される範囲として設定された噛合い領域において、エンドシール機構におけるシール体の目標位置に対する現在位置のズレ角度と、記憶されているシール体の許容ズレ角度に関する基準値とを比較し、その基準値に対するズレ角度の大小によって物品噛込みの有無を判断するようにしたものがある。
【特許文献1】実公平3−30244号公報
【特許文献2】実開平5−612号公報
【特許文献3】特開平4−44913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者の技術では、センサは、シール体の長手方向に沿って延在する支持軸や押動部材等の被検出部材における長手方向一端側での変位を検出するよう配置されているため、変位量の検出を数十ミクロン単位で正確に行なうには、被検出部材やセンサ自体を精度よく位置決めする必要があり、この位置決め作業は極めて熟練度が要求され、ユーザーでの部品交換その他のメンテナンスは困難なものとなっていた。
【0006】
また後者の技術では、シール体の許容ズレ角度に関する基準値は、シール体の1回転中における回転位置によって変化する負荷変動が考慮されることなく、通常運転した際に噛合い領域内で発生が予想されるシール体の最大ズレ角度に許容値を加えた値として設定される。すなわち、その基準値は、シール体の回転位置によって変化しない一定の値となっており、シール体で噛込んだ際に最大ズレ角度を超えるシール体の回転位置ズレが発生するような硬い物品に対象が限られてしまい、例えばせんべいやビスケットあるいはインスタントラーメン等の乾麺類等の如く、欠片がシール体で噛込まれた際に大きな負荷が加わらず、シール体で噛込んだ際に最大ズレ角度を超えないような物品の場合は、噛込み検出が困難となる等の問題がある。
【0007】
そこで発明者は、前記課題の解決策を求めて種々模索した結果、シール体駆動用のサーボモータに加わる負荷変動によって該サーボモータへ供給される電圧と電流が変化することに着目し、シール体に物品が噛込んだ際の負荷によってサーボモータへ供給される電流値または電圧値の変化の検出によって物品の噛込み判定が可能か否かについて試験を行なった。しかしながら、電流値または電圧値の個々の変化量の検出値では噛込み判定を行ない得るレベルに達しないことが判明した。これに対し、電力は、電圧と電流との積から求められるものであることから、電力の変化によって噛込み検出が可能か否かについて試験を行なった結果、噛込みを検出し得るに充分なレベルでの変化量を検出できることを見出し、本願発明に至ったものである。
【0008】
すなわち本発明は、前述した従来の技術に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、サーボモータへ供給される電力値の変化を検出することで、検出装置の組付け等に熟練度を要することなく、また噛込み時に大きな負荷が加わらないような前述の如き物品であっても、シール体への物品噛込みを良好に検出可能な包装機の物品噛込み検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る包装機の物品噛込み検出装置は、
物品が所定間隔で供給された筒状フィルムにエンドシール機構でエンドシールを施して包装体を製造する包装機において、
前記エンドシール機構のシール体を回転駆動するサーボモータと、
前記シール体の回転時に前記サーボモータに供給される電力値の変化を逐次検出する検出処理手段とを備え、
前記検出処理手段は、前記シール体の回転時に検出した電力値からシール体の1サイクルにおける回転位置に応じて変化した値となる基準電力値を決定し、前記包装機の運転に際し前記基準電力値と前記シール体の回転位置に対応して検出した検出電力値の変化とを比較してシール体への物品噛込みの有無を判定することを特徴とする。
これにより、噛込み判定のための検出設定を自動で行なうことができる。また、シール体の変位量等を検出するセンサ等の構成部品を必要としないから、センサの感度調節、組付けおよび位置決め等は不要であり、初期設定時や部品交換時等に熟練度を要せず、噛込み時に大きな負荷が加わらないような物品であっても、物品噛込みを良好に検出できる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記シール体の1サイクルの基点となる原点位置についての信号を出力する原点信号発信手段を備え、前記検出処理手段は、原点信号発信手段から発振された信号に基づく原点信号入力時点を基点としてシール体の1サイクル毎に前記基準電力値と検出電力値の変化とを比較することを要旨とする。
これにより、実際のシール体の回転位置に対する基点を1サイクル毎に得ることで、回転位置信号の誤差が蓄積されることなく、検出精度を良好なものとすることができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記検出処理手段において、前記包装機の運転によるシール体の複数サイクル分の回転によるサンプリングによって検出された電力値から前記基準電力値を決定することを要旨とする。
これにより、機械能力、フィルムの種類、シール温度、シール体の組付け状態や組付け精度等の噛込み検出を左右する各種要因となる事項を変更した場合、あるいは経年変化により駆動系の機械的負荷が増加した場合においても、作業者が変化要因に対して設定値を補正することなく、予め包装機を運転することでサンプリングされた複数サイクル分の電力値によって噛込み検出のための設定を自動でなし得る。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記サンプリング数を、前記包装機の運転時間または包装サイクル数に対応する値で設定手段により与えることを要旨とする。
これにより、包装条件や包装品種等に応じて適切な基準電力値を得ることができる。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記検出処理手段において、前記シール体の回転時に検出した電力値に許容値を加えてシール体の1サイクルにおける回転位置に応じて変化した値となる基準電力値として定めることを要旨とする。
これにより、物品噛込み以外のシールジワの発生等によるフィルム厚みの変化によって生ずる軽微な電力変化を、検出対象から排除することができる。また、1サイクル毎に電力値がバラつく条件においても、バラツキ度合に対応した基準電力値を定めることができ、検出エラーが発生することなく噛込み検出を行ない得る。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記検出処理手段による噛込み判定を、前記シール体の1サイクル中の所要範囲に対応して設定手段で与えられた判定領域においてすることを要旨とする。
これにより、基準電力値と検出電力値とを必要な領域でのみ比較して噛込み検出を行なうことができ、検出装置の誤作動を防ぐと共に検出精度を高めることができる。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記検出処理手段において、前記シール体の1サイクルを数百ポイントに分割した分解能で電力値を検出するよう設定され、基準電力値を超える検出電力値が数ポイント連続した際に、物品噛込み有りと判定することを要旨とする。
これにより、電気ノイズ等による誤判定を防いで確実な噛込み検出を行ない得る。
【0016】
請求項8に係る発明は、前記検出処理手段において、前記シール体の回転位置に対応した基準電力値およびシール体の回転時における検出電力値の変化を、表示手段に夫々異なる色または異なる線種の何れかでグラフ表示し得るよう設定されることを要旨ととする。
これにより、運転状況や物品噛込み時の変化をビジュアル的に確認でき、誰もが噛込みの発生状況を即座に把握できる。
【0017】
請求項9に係る発明は、前記基準電力値を、包装品種毎に記憶部に記憶することを要旨とする。
これにより、包装品種毎に予め記憶した基準電力値のデータを読み出して基準電力値とすることで、品種切替時点におけるサンプリングのための作業を省略して多品種少量生産時の品種切替時間の短縮化を図り、生産効率を高めることができる。
【0018】
請求項10に係る発明は、前記検出処理手段において、物品噛込みにおける前記シール体の1サイクル分についての基準電力値と検出電力値の変化との関係についてのデータを記憶部に異常発生履歴として記憶し、後にその履歴データを読み出して表示手段にグラフ表示し得るよう設定することを要旨とする。
これにより、物品噛込み検出の状況を、履歴データを読み出して後から確認することができる。すなわち、1サイクル中の噛込み検出の状況と、その前後の電力変動等の関係を詳細に検証できるから、実際の包装品との比較で誤作動によるものかどうかといったことも確認可能である。また、データが収集できるので、許容値等の噛込み検出に用いられる各種検出用データを最適な値に設定することが可能となる。
【0019】
請求項11に係る発明は、前記検出処理手段において、前記基準電力値を超える検出電力値の前記表示手段へのグラフ表示色を変色表示するよう設定されていることを要旨とする。
これにより、作業者に対して物品噛込み発生を確実に認知させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係る包装機の物品噛込み検出装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0021】
図3は、実施例に係る物品噛込み検出装置が適用される包装機としての横型製袋充填機の概略構成を示すものであって、該包装機は、原反ロール10から繰出された帯状フィルム12を、複数の案内ローラを介して製袋手段14に供給して筒状に成形するようになっている。製袋手段14の上流側には、物品16を所定間隔毎に供給する供給コンベヤ18が配設され、該コンベヤ18は、物品16を、製袋手段14で成形した筒状フィルム12aに受渡し供給するよう構成してある。また製袋手段14の下流側に、筒状フィルム12aの繰出し方向に沿う重合端縁部を挟圧して回転する一対の送りローラ20が配設され、該送りローラ20の下流側には重合端縁部を挟んでセンターシールを施す一対のシールローラ22が配設されている。
【0022】
前記シールローラ22の下流側に配設したエンドシール機構24は、上下の関係で対向して回転する一対のシール体26,26を備えている。実施例では、筒状フィルム12aが1包装長分移送される間に、シール体26,26が1回転するよう設定される。両シール体26,26は、三相モータからなるサーボモータ28により位置および速度を制御可能に駆動され、筒状フィルム12aを各物品16間で挟圧してエンドシールを施す時のシール体26,26の回転周速がフィルム移送速度と略同速度に設定されて、両シール体26,26が不等速回転を行なうよう構成されている。なお、筒状フィルム12aが1包装長分移送されること、およびエンドシール機構24の回転軸に配設されたシール体26,26が筒状フィルム12aをシールしてから次にシール体26,26が筒状フィルム12aをシールするまでの回転量が1サイクルとして設定されるものであり、実施例では回転軸に1つのシール体26が配設されているから、回転軸が1回転することが1サイクルに設定されている。そして、1サイクルの回転量の半分の回転位置がサイクル開始の原点位置となる。
【0023】
図1に示す包装機の制御部30には、データ入力や項目選択によってデータ設定が可能な例えばタッチパネルディスプレイからなる設定手段32が接続され、包装機を駆動制御するための、包装速度やフィルムのカットピッチ等の各種制御用データを設定し得るようになっている。この設定手段32では、包装機の制御用データに加えて、後述する基準電力値SPを得るためのサンプル数に関するデータ、許容値のデータ、判定領域DTのデータ等の噛込み検出に必要となる各種の噛込み検出用データが設定されるよう構成してある。なお、前記サンプル数として与えられるデータは、シール体26,26のサイクル数で設定したり、または後述するサンプリング運転を行なう時間に対応する値等により設定することができる。
【0024】
前記制御部30に設けた検出処理手段34は記憶部36を備え、前記設定手段32で設定された各種制御用データおよび噛込み検出用データを記憶部36に記憶するようになっている。また記憶部36では、噛込み検出に必要となる前述したデータの他、サンプリング運転により得られた基準電力値SPおよび下限閾値LSPも包装品種毎に記憶され、包装品種変更時の設定操作によって包装品種毎に記憶された包装機の各種制御用データと共に記憶部36から基準電力値SPおよび下限閾値LSPを含む各噛込み検出用データを読み出し得るよう構成されている。
【0025】
前記制御部30には、前記サーボモータ28と、該サーボモータ28をサーボ制御するサーボアンプ38とが接続されている。サーボモータ28にはエンコーダ(図示せず)が付設され、シール体26,26の回転位置を検出し得るよう設定されている。また、エンドシール機構24におけるシール体26,26の回転系には、シール体26,26の回転と共に回転するよう構成された検出部材40に形成したスリットを検出して原点位置についての信号を出力する光電センサ等からなる原点信号発信手段42が配設されている。制御部30は、前記エンコーダから発信されたサーボモータ28の回転位置信号と、前記原点信号発信手段42から発信された信号とを入力してシール体26,26の現在位置を得るようになっている。制御部30は、予め設定されたシール体26,26の回転制御信号に基づき、サーボアンプ38へ前記シール体26,26を回転制御するのに必要な信号を出力し、またエンコーダからのパルス信号がサーボアンプ38にフィードバックされることで、サーボアンプ38はサーボモータ28に対して所定の電圧と電流を供給してサーボモータ28をサーボ制御するようになっている。更に、原点信号発信手段42から制御部30に入力された信号は、シール体26,26の原点位置として記憶部36に記憶されるようになっており、記憶後に電源が遮断されるまでの間は、制御部30に原点信号発信手段42から1サイクル毎に信号を入力することはない。なお、シール体26,26の噛合いや、変速時に加わるサーボモータ28への負荷変動に応じて、サーボアンプ38からサーボモータ28へ供給される電流値や電圧値が変化することとなる。
【0026】
なお、シール体26,26の原点位置は、シール体26,26が噛合った位置から次にシール体26,26が噛合う位置までの中間位置に設定されており、実施例ではシール体26,26が配設された回転軸が1回転で1サイクルに設定されているので、図3に示す噛合い位置から180°回転した位置に設定されている。
【0027】
前記検出処理手段34は、サーボモータ28に供給される電流と電圧から得られる電力値の変化を逐次検出するようになっており、シール体26,26の1サイクルを数百ポイントに時分割した分解能で電力値の変化を1サイクル毎に検出すると共に、包装機が実際に包装体を製造する運転状態における検出電力値の変化と、予め決定された基準電力値SPの変化値とを比較して噛込みの有無を判定するよう設定されている。具体的には、検出処理手段34は、内部クロックパルスと前記記憶部36に記憶された原点位置を基に発信された原点信号を入力して、図2に示す如く、シール体26,26の1サイクル毎に、シール体26,26の回転位置との関係で噛込みが予想される回転領域について、検出対象とする領域として前記設定手段32で設定した判定領域DT内において、前記検出電力値が前記基準電力値SPを超えた時に、検出処理手段34はシール体26,26での物品16の噛込みが発生したと判定して、制御部30に物品噛込み信号を出力するよう設定されている。
【0028】
前記シール体26,26への物品噛込みについて電力値の変化で検出するにあたり、事前に行なった試験結果において、噛込み発生時点では前記シール体26,26への負荷上昇によってサーボモータ28に供給される電力値が通常値より降下し、その後に電力値が上昇することが認められ、また電力降下時より電力上昇時の値が顕著に現れることが認められた。これは、サーボアンプ38がエンコーダから得たサーボモータ28の回転量の遅れ信号に対して、遅れを一気に回復しようとするためにサーボモータ28への供給電力の上昇が顕著に現れるものと考えられる。このことから、シール体26,26への物品噛込みの有無を電力値の変化により判定するには、前記基準電力値SPに対する検出電力値の上昇との関係について比較判定を行なうことが最も効果的であることを見出した。また、前記判定領域DTとしては、シール体26,26の噛合い予定位置との関係で、実際の物品16の噛込み予想領域(シール体26,26の噛合い位置を基準としてその前後における物品高さとの関係で筒状フィルム12aとシール体26,26とが接触しているシール体26,26の回転領域)より遅い時期となる領域に設定することが最も好ましい。
【0029】
〔実施例の作用〕
次に、前述した実施例に係る包装機の物品噛込み検出装置の作用につき説明する。
【0030】
包装機の運転を開始するに先立ち、包装機を駆動制御するための各種制御用データ並びに検出処理手段34による噛込み検出のための噛込み検出用データを、前記設定手段32によりデータ入力することで、この入力値は、前記記憶部36に包装品種毎に記憶される。なお、サンプル数として与えられるデータに関しては、初期値としてシール体26,26のサイクル数に対する値が予め設定されており、変更したい場合にのみ設定手段32を操作して任意値を設定するようになっている。
【0031】
包装機を運転してフィルムを移送すると共に、シール体26,26を回転させて筒状フィルム12aにエンドシールを施すように動作させた状態で、前記検出処理手段34に接続された図示しないサンプリング開始操作スイッチをオン作動してサンプリング運転を実施する。検出処理手段34は、このサンプリングによってサーボモータ28に供給される電力値を検出し、物品16の噛込み判定の基準値としての基準電力値SPを決定する。すなわち、シール体26,26が予め設定された複数サイクル回転するまでの間、サーボモータ28に供給される電力値を逐次検出するサンプリングを行ない、シール体26,26の回転位置に応じて検出された最大電力値の変化から図2に示されるようにシール体26,26の1サイクルにおける回転位置との関係で変化する基準電力値SPを決定する。なお、シール体26,26におけるサイクル開始の基点Sは、前記原点信号発信手段42から出力されて前記サーボモータ28に付設されたエンコーダの回転パルスとの関係で記憶部36に記憶された原点位置を基に発信された原点信号の入力時点とし、検出処理手段34の内部クロックパルスを基にシール体26,26の1サイクルを数百ポイントに時分割して設定された1サイクル単位でサンプリングが実施される。また、原点信号発信手段42から出力された信号に基づく原点信号を毎サイクル入力することで、実際のシール体26,26の回転位置との信号誤差が蓄積されることなく、シール体26,26の回転位置に対する電力変化を正確に検出できる。なお、1サイクルにおける原点信号発信手段42の図2に示すON−OFFタイミングに示すように、原点信号発信手段42は、シール体26,26と共に回転する検出部材40のスリットを検出してONした後にスリットを検出しなくなるOFFとなるタイミング(立上がりエッジ)で、基点Sとなる原点位置についての信号を出力するようになっている。
【0032】
ここで、正常時においてもサーボモータ28に供給される電力値の変化にバラツキがあり、サンプリングしたデータから決定した基準電力値SPをそのまま判定に用いると誤検出の恐れがあることから、前記基準電力値SPに対して設定手段32で設定した許容値を加算してシール体26,26の回転位置により検出された電力値とは異なる値となる基準電力値SP0を用いることが好ましい。それにより、シールジワの発生等によるフィルム厚み変化等による物品噛込み以外の原因による軽微な電力値の変化を噛込み発生と誤判定するのを防止し得る。また、シール体26,26の1サイクル毎に電力値にバラツキが発生する場合であっても、そのバラツキによる誤判定を防止し得る。なお、前述した如く電力値の上昇を検出するべく、少なくとも噛込み判定には上記基準電力値SPを用いればよいが、電気的エラーの検出等の参照とするために、サンプリングにより検出したシール体26,26のサイクル中での回転位置に対応する電力の最小値の変化、更にはその値から許容値を減算した値を下限閾値LSPとする許容幅を含む基準電力値SPに対して、検出電力値が範囲外となったときに噛込み発生と判定するようにしてもよい。サンプリングにより検出したシール体26,26の回転位置に対応する電力値の最大値または最小値に対して加算または減算する許容値は、シール体26,26の回転位置に応じて異なる値であってもよい。
【0033】
包装運転の開始によって、前記検出処理手段34は、前記記憶部36に記憶された原点位置を基に発信された原点信号の入力時点を基点Sとして、シール体26,26の1サイクル回転毎に、回転位置に応じて前記基準電力値SPと検出電力値とを比較する。なお、この基準電力値SPと検出電力値との比較は、シール体26,26の噛合い期間との関係で判定領域DTを定めて実施するのが好ましい。実施例では前述したように実際の物品噛込み予想領域より遅れた時期となる所要範囲について、シール体26の1サイクルを時分割したポイント数に対応した値を、例えば数値データにより前記設定手段32で入力することで判定領域DTを設定し、前記検出処理手段34は判定領域DTにおいて基準電力値SPと検出電力値とを比較するようにしている。
【0034】
前記検出処理手段34は、検出電力値が基準電力値SPを超えた場合(図2の噛込み検出部)に、前記シール体26,26で物品16を噛込んだと判定して噛込み検出信号を前記制御部30に対して出力する。この噛込み検出信号が入力されると制御部30は、噛込み警報を前記表示手段32aやブザー等により報知すると共に、リジェクト装置を作動して物品噛込み発生対象包装体を系外に排出したり、または包装機を作動停止する制御を行なう。検出処理手段34による噛込み判定に際し、シール体26,26の回転位置に対する基点Sとなる原点信号発信手段42から出力される信号を基にした原点信号を1サイクル毎に得ており、1サイクル単位毎に実際のシール体26,26の位置と回転位置信号との誤差がリセットされ、検出精度は良好となる。
【0035】
前記検出処理手段34は、シール体26,26のサイクル単位の基準電力値SPや下限閾値LSPの各電力変化値、検出電力値の変化の夫々を、前記表示手段32aに、例えば図2に示す態様の如く、シール体26の1サイクル毎にシール体26,26の回転位置との関係で判別し得るようにリアルタイムでグラフ表示する。これにより作業者は、運転状況や噛込み検出状態をビジュアル的に確認することができ、不慣れな作業者等であっても物品噛込み発生の状況を即座に把握できる。また、基準電力値SP、下限閾値LSPおよび検出電力値が表示手段32aにグラフ表示されることで、実際の運転状況に応じた最適な許容値の設定や判定領域DTの変更等が容易となる。なお、前記夫々の電力変化値を示すグラフの表示線種および線色を異なるように設定することが好ましいが、線種あるいは線色の何れかを異なるように設定してもよい。また設定手段32では、各電力変化値等の表示情報についての表示の有無を切替え選択し得るよう構成されている。
【0036】
前述したように実施例では、サンプリング運転を行なうだけで基準電力値SPを人手によりデータ入力等することなく自動的に設定できるから、噛込み検出を行なうための各種データ設定等についての熟練度や経験値を必要としない。また、サーボモータ28に供給される電力値の変化を検出処理手段34で逐次検出して物品噛込みの有無を判定するよう構成したから、物品噛込みに伴うシール体26,26の機械的な変位量を検出するセンサを設ける必要はなく、該センサの組付け調整やセンサ感度調節時等に熟練度を要することがない。また、前記の包装条件等を変更した場合であっても、サンプリング運転により基準電力値SPが自動的に設定されるので、条件変更に伴う作業にも熟練度や経験値を必要としない。更に、物品16がせんべいやビスケットあるいはインスタントラーメン等、欠片がシール体26,26で噛込まれた際に大きな負荷が加わらないような物品16の場合であっても、物品噛込みを精度よく検出することができる。
【0037】
また、基準電力値SPを得るためのサンプル数に関するデータ、許容値のデータ、判定領域DTに関するデータ等の噛込み検出に必要となる各種データは、前記設定手段32により変更可能になっているから、包装条件や包装品種の変更に応じて最適な値に設定することで、精度のよい噛込み検出が可能となる。例えば、基準電力値SPを得るためのサンプル数については、検出精度を高めたい場合はサンプル数を大きくすればよく、またサンプリング運転時のフィルム消費量を抑えたい場合はサンプル数を小さくすればよい。更に、判定領域DTについては、シール体26,26の回転位置との関係で噛合い位置前後の所定範囲に設定することで誤作動を防止したり、シール体26,26の1サイクル毎における基準電力値SPと下限閾値LSPとの変化幅が大きい箇所を除外するよう設定することで検出精度を高めることができる。
【0038】
前記基準電力値SPや下限閾値LSPを含む各噛込み検出用データは、包装品種毎に対応して記憶部36に記憶し、包装機の品種変更に際して選択された品種と関連付けて読み出し得るよう構成することで、品種変更の都度検出用データを設定する必要はない。従って、多品種少量生産時の品種変更に伴う設定時間を短縮して、生産効率を高めることができる。
【0039】
〔変更例〕
本願は前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1.基準電力値SPを超える検出電力値が連続して検出されたときにのみ、物品噛込みが発生したと判定することが好ましい。すなわち、シール体26の1サイクルを時分割した数百ポイントの内、設定した数ポイント分連続して基準電力値SPを超える検出電力値を検出した際にのみ物品噛込みが発生したと判定するようにする。例えば、1サイクルを400ポイントに時分割し、そのうちの3ポイントの間連続して検出電力値が基準電力値SPを超えた場合に物品噛込みが発生したと判定するようにすればよい。そして、このようにすることで、物品噛込み以外の例えば電気ノイズが原因で単発的に検出電力値が基準電力値SPを超えた際の誤検出を防止し得る。
2.表示手段32aにグラフ表示する線の色について、検出電力値が基準電力値SPを超えた部分のみを、例えば強調表示し得る赤色等の正常値に対して判別可能な色に変えて表示するようにしてもよく、この場合は、物品噛込み発生をより確実に認知し得る。
3.物品噛込み発生時の基準電力値SP、検出電力値、基点S、判定領域DT等の各データは、サイクル単位で異常発生履歴データとして記憶部36に記憶し、それらの各内容を表示するようにしてもよい。この場合は、履歴データを後から読み出して確認することができるから、噛込み検出されたサイクル中における電力値の変動等の関係を把握でき、例えば噛込み発生サイクルでの包装品とによって噛込み検出誤作動の有無や検出装置の検証を容易に行なうことができる。また、多数のデータを収集できるから、許容値や判定領域DTあるいは前記1.で述べた連続検出についての値、その他噛込み検出用データ等を、包装条件や包装品種等に応じて最適な値に設定することが可能となる。
4.記憶部36として、実施例では検出処理手段34に備えたものとして説明したが、制御部30内、あるいは外部記憶装置等として独立したものとして設けるようにしてもよい。
5.設定手段32として、実施例ではタッチパネルディスプレイ等の表示手段32aを備えるものとしたが、モニタ等の表示手段とは別に設けたキーボード等、あるいは設定項目毎にボリューム式調節器やその他の切替スイッチを設ける等、少なくとも設定値を与えることが可能なものであればよい。
6.検出処理手段34は、実施例のように包装機の制御部30内に組込まれる構成に限らず、少なくともサーボモータ28へ供給される電流と電圧とを検出し得るものであれば、サーボアンプ38内、あるいは外部機器として独立したものとして設けるようにしてもよく、この場合に、専用のモニタ等の表示手段や設定手段32を検出処理手段34に接続する構成を採用し得る。
7.原点信号発信手段42は、実施例の構成に限定されるものでなく、シール体26の回転と関連する回転系に配設されて、該シール体26の原点位置を出力し得るものであればよい。なお、実施例では、原点信号発信手段42から出力されて記憶部36に記憶された原点位置を基に発信された原点信号の入力時点を基点Sとしたが、サイクル毎に原点信号発信手段42から出力される信号を直接入力して基点Sとするようにしてもよい。
8.エンドシール機構24は、実施例のように1つの回転軸に1つのシール体26が配設される構成に限らず、1つの回転軸に対して周方向に離間して複数のシール体が配設されて、複数組のシール体を備えるものであってもよい。
9.検出処理手段34によるサンプリングは、実施例のようにサンプリング開始操作スイッチを作業者がオン作動して行なうものでなく、例えばサンプリング運転モードが選択された際の運転の開始後、検出処理手段34へ入力される機械回転数が定常数に至った以後のサイクルについて自動的にサンプリングを行なって自動停止するよう制御することができる。
10.実施例では、シール体26,26の回転位置との関係で決定した基準電力値SPと検出電力値とを比較し、噛込みの有無を判定するようにしているが、これに代えて電力を検出して得られた電力量を対象として噛込みの有無を判定するようにしてもよい。
例えば、シール体26,26の1サイクルにおける所定期間内(実施例においてシール体噛合い時期に相当して設定された判定領域DT)での判定基準としての基準電力量を前記サンプリングにより予め決定し、その基準電力量と包装機の運転時における判定領域の時分割検出電力値の和から得られる電力量とを比較して判定するようにしてもよい。なお、電力量を判定基準とする場合における判定領域の設定は、シール体26,26が噛合い始める位置から噛合いが終わる位置までの両シール体26,26が噛合っている噛合い領域を基準にして、物品16の高さに応じてシール体26,26が筒状フィルム12aと接触するシール体噛合い領域前後の所定区間を判定領域に設定することが好ましい(図2の二点鎖線で示す判定領域DT1)。また、電力量での噛込み判定は、所定期間内に検出された電力量が基準電力量に達しなかった場合に物品噛込みが発生したと判定される。
11.噛込み判定時期に関しては、検出電力値が基準電力値SPを超えた時点で即座に噛込み判定を行なうことが最も好ましいものではあるが、例えば、物品噛込み発生が検出されたシール体26,26の回転サイクルの終期までの適時、あるいは次サイクルに移行後に噛込み判定を行なうようにしてもよい。また、上記した電力量での噛込み判定による場合では、電力値による判定での判定領域DTの終了時からサイクル終期までの間の適時に噛込み判定を行なうようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例に係る物品噛込み検出装置を示す制御ブロック図である。
【図2】実施例に係る物品噛込み検出装置の表示手段に表示されるグラフを示す説明図である。
【図3】実施例に係る物品噛込み検出装置が設けられる横型製袋充填機を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0041】
12a 筒状フィルム,16 物品,24 エンドシール機構,26 シール体
28 サーボモータ,32 設定手段,32a 表示手段
34 検出処理手段,36 記憶部,42 原点信号発信手段,SP,SP0 基準電力値
DT,DT1 判定領域,S 基点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品(16)が所定間隔で供給された筒状フィルム(12a)にエンドシール機構(24)でエンドシールを施して包装体を製造する包装機において、
前記エンドシール機構(24)のシール体(26,26)を回転駆動するサーボモータ(28)と、
前記シール体(26,26)の回転時に前記サーボモータ(28)に供給される電力値の変化を逐次検出する検出処理手段(34)とを備え、
前記検出処理手段(34)は、前記シール体(26,26)の回転時に検出した電力値からシール体(26,26)の1サイクルにおける回転位置に応じて変化した値となる基準電力値(SP)を決定し、前記包装機の運転に際し前記基準電力値(SP)と前記シール体(26,26)の回転位置に対応して検出した検出電力値の変化とを比較してシール体(26,26)への物品噛込みの有無を判定する
ことを特徴とする包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項2】
前記シール体(26,26)の1サイクルの基点(S)となる原点位置についての信号を出力する原点信号発信手段(42)を備え、前記検出処理手段(34)は、原点信号発信手段(42)から発振された信号に基づく原点信号入力時点を基点(S)としてシール体(26,26)の1サイクル毎に前記基準電力値(SP)と検出電力値の変化とを比較するようにした請求項1記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項3】
前記検出処理手段(34)は、前記包装機の運転によるシール体(26,26)の複数サイクル分の回転によるサンプリングによって検出された電力値から前記基準電力値(SP)を決定する請求項1または2記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項4】
前記サンプリング数は、前記包装機の運転時間または包装サイクル数に対応する値で設定手段(32)により与えるようにした請求項3記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項5】
前記検出処理手段(34)は、前記シール体(26,26)の回転時に検出した電力値に許容値を加えてシール体(26,26)の1サイクルにおける回転位置に応じて変化した値となる基準電力値(SP0)として定めるようにした請求項1〜4の何れか一項に記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項6】
前記検出処理手段(34)による噛込み判定は、前記シール体(26,26)の1サイクル中の所要範囲に対応して設定手段(32)で与えられた判定領域(DT,DT1)においてなされるようにした請求項1〜5の何れか一項に記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項7】
前記検出処理手段(34)は、前記シール体(26,26)の1サイクルを数百ポイントに分割した分解能で電力値を検出するよう設定され、基準電力値(SP,SP0)を超える検出電力値が数ポイント連続した際に、物品噛込み有りと判定する請求項1〜6の何れか一項に記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項8】
前記検出処理手段(34)は、前記シール体(26,26)の回転位置に対応した基準電力値(SP,SP0)およびシール体(26,26)の回転時における検出電力値の変化を、表示手段(32a)に夫々異なる色または異なる線種の何れかでグラフ表示し得るよう設定されている請求項1〜7の何れか一項に記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項9】
前記基準電力値(SP,SP0)は、包装品種毎に記憶部(36)に記憶するようにした請求項1〜8の何れか一項に記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項10】
前記検出処理手段(34)は、物品噛込みにおける前記シール体(26,26)の1サイクル分についての基準電力値(SP,SP0)と検出電力値の変化との関係についてのデータを記憶部(36)に異常発生履歴として記憶し、後にその履歴データを読み出して表示手段(32a)にグラフ表示し得るよう設定されている請求項1〜9の何れか一項に記載の包装機の物品噛込み検出装置。
【請求項11】
前記検出処理手段(34)は、前記基準電力値(SP,SP0)を超える検出電力値の前記表示手段(32a)へのグラフ表示色を変色表示するよう設定されている請求項8または10記載の包装機の物品噛込み検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−37450(P2008−37450A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212427(P2006−212427)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000136387)株式会社フジキカイ (129)
【Fターム(参考)】