説明

包装用容器のための開口弁、及び開口弁を形成するための抜き型

【課題】白濁現象や亀裂が発生しないとともに、容器内に残留物を発生させるおそれが全くない、包装用容器のための開口弁を提供すること。
【解決手段】
包装用容器10に形成される開口弁20を、略U字状の弁部と、この弁部を包装用容器10側に連結する連結部と、この連結部の両側に位置して、弁部の先端円弧部より小さい半径の小円弧部23とにより構成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用容器のための開口弁、及びこの開口弁を形成するための抜き型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、納豆を入れる包装用容器においては、半醸成された納豆を入れておき、これをしばらく一定温度内に貯蔵しておくことにより、完熟した納豆を形成するということがなされている。このような納豆容器においては、納豆が完熟するまでの間の醸成によって種々なガスが発生して当該容器を膨張させるため、このガス抜きを行うための開口弁が形成されることがある。
【0003】
また、インスタントラーメンやソバのように、乾燥麺を一端湯通しして、所定の柔らかい麺にする包装用容器があるが、この場合、使用された湯を開口弁から捨てることがなされている。
【0004】
つまり、包装用容器は、一般的には密閉タイプのものが多いのではあるが、上記のように、気体や液体を容器に対して出し入れするタイプのものもある。このような開口弁を有する包装用容器としては、例えば特許文献1あるいは特許文献2に提案されている。
【特許文献1】実開平4−29976号公報、代表図
【特許文献2】実開昭58−19966号公報、代表図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された開口弁(舌片4)は、図6に示すように、蓋体の天板部に形成したものであり、図7の(イ)〜(ヌ)に示すような種々な形状のものが提案されている。
【0006】
ところが、この特許文献1に示された舌片4では、その不連続部6の端部と環状切込線5とが、図7にも示したように、鋭角的に連続しているため、図2の(c)または(d)にて示すような問題が発生し得るものとなっている。図2の(c)では、切込線の各端部において「白濁現象」が発生したことを、また、図2の(d)では、切込線の端部において「亀裂」が発生していることを示している。
【0007】
この「白濁現象」は、この部分での容器内部の視認を困難にするだけでなく、見た目にも非常に印象が悪く、製品価値を落とすものである。また、「亀裂」も、見栄えを悪くして商品価値を落とすだけでなく、場合によっては「不連続部」をなくしてしまって、開口弁そのもの脱落を招くおそれがある。
【0008】
一方、特許文献2に記載された開口弁では、図8にも示すように、「舌片を残すための抜き取り部5(穴)」を形成するものであるため、これによって上記「白濁現象」や「亀裂」は発生しないものとなっている。
【0009】
しかしながら、この特許文献2の抜き取り部5は、そのまま容器側にくっついたままとなることがあり、例えば食品用の容器内に残留したときには、食品中にこの抜き取り部5が混入することがある。食品中に異物が混入することは極力避けなければならないものであり、特許文献2の技術は、この点がおろそかになっていると考えられるのである。
【0010】
そこで、本発明者等は、この種の包装用容器について、ガスや液体の出入を行う開口弁を形成するにあたって、「白濁現象」や「亀裂」が発生しないようにし、かつ、容器に残留物が発生しないようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0011】
すなわち、本発明の目的とするところは、「白濁現象」や「亀裂」が発生しないとともに、容器内に残留物を発生させるおそれが全くない、包装用容器のための開口弁を、簡単な構成によって提供することにある。
【0012】
また、本発明の他に目的とするところは、上記のような作用を発揮する開口弁を確実に製造することのできる抜き型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「包装用容器10に形成されて、当該包装用容器10に対する流体の出し入れを行う開口弁20であって、
この開口弁20を、略U字状の弁部21と、この弁部21を包装用容器10側に連結する連結部22と、この連結部22の両側に位置して、弁部21の先端円弧部21aより小さい半径の小円弧部23とにより構成したことを特徴とする包装用容器10のための開口弁20」
である。
【0014】
すなわち、本発明に係る開口弁20は、図1に示すような包装用容器10に形成されて、当該包装用容器10に対する流体の出し入れを行うものである。勿論、この包装用容器10が、図1に示すような、合成樹脂シートからなる容器本体11と、これに対して嵌合される合成樹脂製シートの蓋体12とからなるものである場合には、開口弁20は、蓋体12の天板部12aに形成するのが、最も効果的であるが、容器本体11側に形成してもよいものである。なお、図1では、蓋体12の天板部12aの中央に、後述する小円弧部23を内側に位置するように形成したもの(図1の図示左側に示したもの)と、小円弧部23を外側に位置するように形成したもの(図1の図示右側に示したもの)との両方が示してある。
【0015】
そして、この請求項1に係る開口弁20は、図2の(a)及び(b)に示すように、略U字状の弁部21と、この弁部21を包装用容器10側に連結する連結部22と、この連結部22の両側に位置して、弁部21の先端円弧部21aより小さい半径の小円弧部23とにより構成したものである。連結部22は、「もの」としては現れないものであるから、図2の(a)及び(b)中では、これを点線にて示すようにしている。
【0016】
さて、図2の(a)で示した開口弁20の場合、各小円弧部23は、弁部21の先端円弧部21aとは反対側であって、連結部22の両端に位置している。このため、弁部21の外周線は、この小円弧部23の外周を通って、弁部21の言わば内側に滑らかに連続していき、連結部22の端部で終わるものとなっている。
【0017】
従って、弁部21に力が加えられて開閉されたとき、その力は、各小円弧部23の存在によって分散される。何故なら、弁部21の開閉力は、最終的に連結部22での弁部21の開閉作用に使われるのであり、そのときの力は、両小円弧部23の間に位置する連結部22を曲げる力に変換されてしまうからである。
【0018】
このため、図2の(a)で示した開口弁20では、図2の(c)に示したような端部での「白濁現象」や、図2の(d)に示したような端部での「亀裂」は、全く発生しないのである。
【0019】
一方、図2の(b)で示した開口弁20においても、各小円弧部23は、弁部21の先端円弧部21aとは反対側であって、連結部22の両端でかつ弁部21の外側に位置している。このため、弁部21の外周線は、この小円弧部23の外周を通って、弁部21の言わば外側に滑らかに連続していき、連結部22の端部で終わるものとなっている。
【0020】
従って、弁部21に力が加えられて開閉されたとき、その力は、各小円弧部23の存在によって分散される。何故なら、弁部21の開閉力は、最終的に連結部22での弁部21の開閉作用に使われるのであり、そのときの力は、両小円弧部23の間に位置する連結部22を曲げる力に変換されてしまうからである。
【0021】
このため、図2の(b)で示した開口弁20についても、図2の(c)に示したような端部での「白濁現象」や、図2の(d)に示したような端部での「亀裂」は、全く発生しないのである。
【0022】
また、以上の図2の(a)及び(b)で示したいずれの開口弁20においても、各小円弧部23は、先端円弧部21aとは反対側で弁部21と一体的になっているのであるから、後述する雄パンチ30a及び雌パンチ30bからなる抜き型30による成形時は勿論、実際の弁部21の開閉作用がなされる場合であっても、各小円弧部23は、弁部21(図2の(a)の場合)または蓋体12の天板部12a(図2の(b)の場合)と一体的になっていて、分離することはない。つまり、この開口弁20において、小円弧部23が開口弁20から外れて食品等に混入するおそれが全くないものとなっているのである。
【0023】
従って、この請求項1の開口弁20は、「白濁現象」や「亀裂」が発生しないとともに、包装用容器10内に残留物を発生させるおそれが全くないものとなっているのである。
【0024】
以上の課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、同様に、
「略U字状の弁部21と、この弁部21を包装用容器10側に連結する連結部22と、この連結部22の両側に位置して、弁部21の先端円弧部21aより小さい半径の小円弧部23とにより構成した開口弁20を打ち抜き加工するための、雄パンチ30aと雌パンチ30bとからなる抜き型30であって、
雄パンチ30aについては、開口弁20の弁部21及び小円弧部23の外側線を打ち抜く第1刃部31と、小円弧部23の内側線を打ち抜く第2刃部32と、この第2刃部32間に位置する逃がし部33とを備えたものとし、
雌パンチ30bについては、雄パンチ30aの各刃部が挿入される、開口弁20と略同じ形状の挿入部34を備えたものとしたことを特徴とする開口弁20のための抜き型30」
である。
【0025】
すなわち、この請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の開口弁20を実際に打ち抜くために使用する抜き型30に関するものであり、図3に示した雄パンチ30aと、図4に示した雌パンチ30bとからなっているものである。
【0026】
雄パンチ30aは、図3の(a)〜(c)に示すように、開口弁20の弁部21及び小円弧部23の外側線を打ち抜く第1刃部31と、小円弧部23の内側線を打ち抜く第2刃部32と、この第2刃部32間に位置する逃がし部33とを備えたものである。
【0027】
この雄パンチ30aを、間に合成樹脂製のシートからなる蓋体12を介在させて、後述する雌パンチ30bの挿入部34内に挿入すると、雄パンチ30aと合成樹脂シートとは、図5に示すような関係になる。すなわち、この図5の(b)中に示したI〜IIIの各線の位置に合成樹脂製シートが来たとき、この合成樹脂製シートは、図5の(a)中に示した第1刃部31によってA点からB点に至る切断がなされ、その後は、B点から小円弧部23の外周に沿った切断がなされる。
【0028】
ところが、開口弁20の弁部21と小円弧部23との外形になる部分には第1刃部31による切れ込みが既に入っているから、弁部21は雌パンチ30b内に押し込まれるだけで、各小円弧部23の内周以外の切断はなされない。つまり、この雄パンチ30aによって切断したときには、図5の(a)中の仮想線にて示した位置に、開口弁20側の連結部22が位置することになるのである。このような弁部21の逃がしを行っているのが、雄パンチ30aに形成してある逃がし部33で、これは、図5の(a)及び(b)中に、斜線を引いて示してある。
【0029】
一方、雌パンチ30bは、図4に示しように、図3に示した雄パンチ30aの各刃部が挿入される、開口弁20と略同じ形状の挿入部34が形成してあり、この挿入部34内に上述した雄パンチ30aが挿入されることにより、上述した開口弁20が形成されるのである。
【0030】
従って、この請求項2の抜き型30によれば、請求項1に係る開口弁20を確実に形成することができるのである。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した通り、本発明に係る開口弁20は、
「包装用容器10に形成されて、当該包装用容器10に対する流体の出し入れを行う開口弁20であって、
この開口弁20を、略U字状の弁部21と、この弁部21を包装用容器10側に連結する連結部22と、この連結部22の両側に位置して、弁部21の先端円弧部21aより小さい半径の小円弧部23とにより構成したこと」
にその構成上の特徴を有するものであり、これにより、「白濁現象」や「亀裂」が発生しないとともに、容器内に残留物を発生させるおそれが全くない、包装用容器10のための開口弁20を、簡単な構成によって提供することができるのである。
【0032】
特に、この開口弁20の包装用容器10(蓋体12)に対する引裂強度は、従来品に比較して9〜10倍となっていた(当社比)。
【0033】
また、請求項2に係る発明においては、
「略U字状の弁部21と、この弁部21を包装用容器10側に連結する連結部22と、この連結部22の両側に位置して、弁部21の先端円弧部21aより小さい半径の小円弧部23とにより構成した開口弁20を打ち抜き加工するための、雄パンチ30aと雌パンチ30bとからなる抜き型30であって、
雄パンチ30aについては、開口弁20の弁部21及び小円弧部23の外側線を打ち抜く第1刃部31と、小円弧部23の内側線を打ち抜く第2刃部32と、この第2刃部32間に位置する逃がし部33とを備えたものとし、
雌パンチ30bについては、雄パンチ30aの各刃部が挿入される、開口弁20と略同じ形状の挿入部34を備えたものとしたことを特徴とする開口弁20のための抜き型30」
にその特徴があり、これにより、上記請求項1に係る開口弁20を確実に製造することのできる抜き型30を提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態である開口弁20と抜き型30に従って説明すると、図1には、本発明に係る開口弁20を形成した包装用容器10の斜視図が示してある。この包装用容器10は、合成樹脂シートからなる容器本体11と蓋体12とからなるものであり、蓋体12の天板部12aに本発明に係る開口弁20が形成してある。なお、この図1に示した蓋体12には、図2の(a)に示した開口弁20を図示左側に、また、図2の(b)に示した開口弁20を図示右側に示してある。
【0035】
本発明に係る開口弁20は、図2の(a)及び(b)に示したように、略U字状の弁部21と、この弁部21を包装用容器10側に連結する連結部22と、この連結部22の両側に位置して、弁部21の先端円弧部21aより小さい半径の小円弧部23とにより構成したものである。また、図2の(a)に示した開口弁20では、各小円弧部23が弁部21の内側に位置する例を示しており、図2の(b)に示した開口弁20では、各小円弧部23が弁部21の外側に位置する例を示している。
【0036】
なお、図2の(c)に示した開口弁は小円弧部23を有さないものであり、その端部に「白濁現象」が発生している様子を示し、図2の(d)に示した開口弁も小円弧部23を有さないものであって、その端部に「亀裂」が発生した様子を示すものである。
【0037】
以上の開口弁20は、図3に示した雄パンチ30aと、図4に示した雌パンチ30bとからなる抜き型30によって形成されるものである。雄パンチ30aは、図3に示したように、開口弁20の弁部21及び小円弧部23の外側線を打ち抜く第1刃部31と、小円弧部23の内側線を打ち抜く第2刃部32と、この第2刃部32間に位置する逃がし部33とを備えたものである。
【0038】
この雄パンチ30aにおいては、各第1刃部31及び第2刃部32が、図3の(b)に示すような傾斜面を形成しており、このような各第1刃部31及び第2刃部32による傾斜面によって、当該雄パンチ30aを雌パンチ30bの挿入部34内に挿入したときに、図5の(a)及び(b)に示したようにして、開口弁20の切込線が順に形成されるのである。この傾斜面は、図5で具体的に説明すると、図5中のA点からB点に至る部分では約3°であり、図5の(b)に示したB点からC点では、約10°である。
【0039】
一方、雌パンチ30bは、図4に示したように、上記雄パンチ30aの各刃部が挿入される、開口弁20と略同じ形状の挿入部34を備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る開口弁を採用した包装用容器の斜視図である。
【図2】同開口弁及び従来の開口弁を拡大して示すもので、(a)は小円弧部が弁部の内側になる本発明に係る開口弁を示す平面図、(b)は小円弧部が弁部の外側になる本発明に係る開口弁を示す平面図、(c)は弁部の端部に「白濁現象」が生じた従来例を示す平面図、(d)は弁部の端部に「亀裂」が生じた従来例を示す平面図である。
【図3】抜き型を構成している雄パンチを示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断側面図、(d)はこの雄パンチによって天板部形成された開口弁の平面図である。
【図4】抜き型を構成している雌パンチを示すもので、(a)は平面図、(b)は縦断正面図、(c)は縦断側面図、(d)はこの雌パンチによって天板部形成された開口弁の平面図である。
【図5】抜き型を構成している雄パンチの刃部を拡大して示すもので、(a)は平面図、(b)は縦断側面図である。
【図6】従来の開口弁を形成した包装用容器の斜視図である。
【図7】図6中に形成される開口弁の例を(イ)〜(ヌ)の10種類を例示する拡大平面図である。
【図8】従来の他の例を示す部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 包装用容器
11 容器本体
12 蓋体
12a 天板部
20 開口弁
21 弁部
21a 先端円弧部
22 連結部
23 小円弧部
30 抜き型
30a 雄パンチ
30b 雌パンチ
31 第1刃部
32 第2刃部
33 逃がし部
34 挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装用容器に形成されて、当該包装用容器に対する流体の出し入れを行う開口弁であって、
この開口弁を、略U字状の弁部と、この弁部を前記包装用容器側に連結する連結部と、この連結部の両側に位置して、前記弁部の先端円弧部より小さい半径の小円弧部とにより構成したことを特徴とする包装用容器のための開口弁。
【請求項2】
略U字状の弁部と、この弁部を包装用容器側に連結する連結部と、この連結部の両側に位置して、前記弁部の先端円弧部より小さい半径の小円弧部とにより構成した開口弁を打ち抜き加工するための、雄パンチと雌パンチとからなる抜き型であって、
前記雄パンチについては、前記開口弁の弁部及び小円弧部の外側線を打ち抜く第1刃部と、前記小円弧部の内側線を打ち抜く第2刃部と、この第2刃部間に位置する逃がし部とを備えたものとし、
前記雌パンチについては、前記雄パンチの各刃部が挿入される、前記開口弁と略同じ形状の挿入部を備えたものとしたことを特徴とする開口弁のための抜き型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−50008(P2008−50008A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224824(P2006−224824)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(396000422)リスパック株式会社 (53)
【Fターム(参考)】