化合物、その化合物を含む組成物、その化合物を利用した自己免疫疾患の治療方法
有機リンカーによって共有結合しているが、互いに直接は結合していない2つの一置換トリアジン環または二置換トリアジン環を含む化合物は、自己免疫疾患の治療に用いることができる。本発明の化合物で治療できる可能性のある自己免疫疾患としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、特発性(免疫性)血小板減少症(ITP)、糸球体腎炎、脈管炎などがある。本発明は、自己免疫疾患の従来型治療薬に伴うことがしばしばある薬の毒性低下にも関する。本発明の化合物は、試験管内または生体外で抗体に結合させるのにも使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新しい有機化合物を用いた自己免疫疾患の治療に関する。この化合物は、有機リンカーによって共有結合しているが互いに直接は結合していない2つの一置換トリアジン環または二置換トリアジン環を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
関連する出願の相互参照
本出願は、2003年11月24日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第60/524,021号の恩恵を主張する。
【0003】
発明の背景
自己免疫疾患は、組織の損傷が、身体の構成要素に対する体液性免疫応答および/または細胞媒介性免疫応答、あるいはより広い意味では“自己への”免疫応答に関係している一群の病気または疾患のすべてを意味する。病気の原因となる免疫応答は、全身性の場合もあれば、臓器特異的な場合もある。例示するならば、自己に向けられた免疫応答は、関節、皮膚、神経を保護するミエリン鞘、腎臓、肝臓、膵臓、甲状腺、副腎、卵巣に影響を与える可能性がある。実際、自己免疫疾患のリストは、80種類を超える病気からなる。いくつかの自己免疫疾患(例えば皮膚のあちこちが色素を失う白斑)は、単に不快なだけである。大半を占める他の自己免疫疾患は、しばしば時間経過とともに進行して身体を弱らせ、場合によっては致命的になる。例えば全身性エリテマトーデス(SLE)は、診断されてから10年以内に患者の10〜15%が亡くなる慢性疾患である。いくつかを除く他のすべての自己免疫疾患では、性比が女性に偏っている。例えばSLEでは、女性患者と男性患者の比は9:1である。特別な1つのケースとして、免疫系が甲状腺を攻撃する橋本病では、比は50:1である。
【0004】
免疫複合体の形成が自己免疫疾患の病因と進行においてある役割を果たしていることがかなり以前から知られている。例えばGoodmanとGilmanの『治療の薬理学的基礎』、第16版、1980年、マクミラン出版の683ページには、関節炎の患者における炎症には、抗原と抗体と補体からなる複合体(免疫複合体)を白血球が貪食することがおそらく関与していると記載されている。しかしP.M. Hogarth他、Annual Reports in Medicinal Chemistry、第37巻、217〜224ページ、2002年に指摘されているように、免疫複合体によって起こる炎症(関節では関節炎、腎臓では糸球体腎炎、血管では脈管炎)が、自己免疫疾患における病的状態の主要な原因であることが今になってようやく認められるようになってきた。免疫複合体の形成増大は、自己に向かう抗体、すなわちいわゆる自己抗体の存在と相関しているため、自己抗体の存在も、免疫複合体の一部として、または抗原に結合しないこと(遊離抗体)で、組織の炎症に影響を与える可能性がある。いくつかの自己免疫疾患では、遊離自己抗体の存在が疾患の病状に顕著な影響を与える。そのことは、例えばSLE(抗DNA抗体)とITP(血小板に対する抗体応答)ではっきりと証明されており、関節リウマチ(IgG反応性リウマトイド因子)での証明はそれほど明確ではない。免疫複合体と遊離自己抗体の役割が重要であることは、特別な免疫吸着法で免疫複合体と遊離抗体を除去することにより、ある種の自己免疫疾患で治療がうまくいったという事実からも証明される。例えば患者の血液をイムノアフィニティ(プロソルバ(登録商標))カラムを通過させることによって免疫複合体と抗体を除去するというアフェレーシス法の利用が、ITPに関しては1987年に、関節リウマチに関しては1999年にアメリカ合衆国のFDAによって承認された。しかし現在のところ、自己免疫疾患を治療するために薬を投与して免疫複合体と自己抗体を容易に除去することに関しては、承認された方法はない。
【0005】
自己免疫疾患の病因と進行に関する別の側面は、炎症性サイトカインの役割である。通常の環境では、炎症性サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子α(TNFα)やインターロイキン-1(IL-1))は、感染や細胞ストレスに応答して保護する役割を果たす。しかしTNFαやIL-1の慢性的な産生および/または過剰な産生の結果として起こる病気が、多くの自己免疫疾患(例えば関節リウマチ、クローン病、炎症性大腸疾患、乾癬)の進行の裏にあると考えられている。他の炎症性サイトカインとしては、インターロイキン-6、インターロイキン-8、インターロイキン-17、顆粒球-マクロファージ・コロニー刺激因子などがある。しかしTNFαが炎症性サイトカイン・カスケードの頂点に存在しているように見える。すなわち1つの炎症性サイトカインをブロックするとすれば、TNFαをブロックすると最大の治療効果が得られよう。TNFαが他の炎症性サイトカインを下方調節する能力が、M. FeldmannによってPerspectives、第2巻、364〜371ページ、2002年に報告されている。実際、関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、クローン病を治療するための1つの選択肢としてTNFαの抑制に効果があることは、アメリカ合衆国のFDAによってレミケード(キメラ抗TNFαモノクローナル抗体)、エンブレル(可溶性TNFα p75受容体融合タンパク質)、ヒューミラ(ヒト抗TNFαモノクローナル抗体)が承認されていることで証明されている。
【0006】
自己免疫疾患の病因と進行に関する上記の考察から推測できるように、原因は複雑で多因子性である。そのため、利用できる多数の治療薬がある。しかし自己免疫疾患の大半は、現在の治療薬ではほとんど制御できない。従来の治療薬は、誰にでも効果があるわけではなく、中程度から重度の毒性を伴うことがしばしばある。それにもかかわらず上記の考察からわかるのは、身体が免疫複合体を排出するのに役立つか、少なくとも循環している免疫複合体の堆積阻止および/または(同時に)TNFαの活性抑制に役立つ一方で、患者にとって一般に毒性がない簡単でよくわかった有機化合物が必要とされている。要するに、効果がありながら毒性のない、慢性自己免疫疾患の治療薬が必要とされている。
【0007】
本発明により、慢性自己免疫疾患の治療に役立つ化合物が提供される。たいていの自己免疫疾患は、最初は命を脅かすことはないが、慢性疾患であり、ゆっくりと進行して衰弱状態になる。多数の治療法が利用できるとはいえ、従来の治療薬は効果的ではない。より問題なのは付随する毒性であり、その毒性のため、慢性疾患の場合に必要な長期の使用が禁止されることがしばしばある。自己免疫疾患に関する現在の治療薬は、大きく2つのグループに分けられる。すなわち、自己に対する免疫応答を減らすか抑制する薬と、慢性の炎症から生じる症状に対処する薬である。より詳しく説明するならば、自己免疫疾患(例えば主として関節炎)に関する現在の治療薬は、以下の通りである。
【0008】
1.非ステロイド系抗炎症薬(NSAID):その中にはアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、エトドラック、ケトプロフェンが含まれる。NSAIDはあまり強力な薬ではないため、疾患の初期段階において(例えば関節炎に伴う痛みと膨潤を緩和するため)抗炎症薬として最もよく使用される。しかしNSAIDは胃腸の炎症と肝臓毒性を伴う。多くのNSAIDを使用することに伴う胃腸潰瘍に対処するため、より選択的なNSAID薬が最近開発された。この薬は、シクロオキシゲナーゼ-2を選択的に抑制する(ビオックス、セレブレックス)、あるいは優先的に抑制する(モビコックス)(COX-2阻害剤)。しかしCOX-2阻害剤は、好ましくない副作用を示す。それは例えば、特に長期にわたって使用したときの胃腸の炎症である。
【0009】
2.コルチコステロイド:その中には、プレドニゾンやデキサメタゾンが含まれる。コルチコステロイドは関節リウマチの治療に最も広く使用されている抗炎症薬であるが、免疫を全般的に抑制するため、骨粗鬆症、胃腸毒性、感染のリスクを顕著に増大させる。したがってコステロイドは、疾患による発赤の治療(例えばSLE)に使用される傾向があり、慢性疾患の治療には使用されない。
【0010】
3.疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD):その中には、細胞毒性薬(例えばメトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミド)や、強力な免疫抑制剤(例えばシクロスポリンA(サンディミュン、ネオーラル社)、FK506(タクロリムス))、他の多彩な薬(ヒドロクロロキン、有機金塩(例えばオーロチオグルコース))が含まれる。DMARDは強力な薬であるため、炎症を減らし、疾患の進行速度を遅延させる上で顕著な効果を示す可能性がある。そのため内科医は、NSAIDの後、第2の治療薬としてDMARDを伝統的に使用してきた。しかしDMARDは強力な薬であるため、使用には顕著な毒性が伴う。細胞毒性薬は例えばDNAの複製を妨げるため、多数の毒性効果となって現われる。毒性効果としては、骨髄抑制、それに伴う感染や新生物のリスクなどがある。シクロスポリンAとFK506は、深刻な副作用(腎臓毒性や肝臓毒性)のために使用が制限される。ヒドロクロロキンの使用に伴う毒性効果としては、失明、ニューロミオパシー、胃腸痛などがある。金塩を用いた治療によって生じる最も一般的な副作用は、皮膚炎である。しかし金の毒性によって腎炎や骨髄抑制も生じる可能性がある。
【0011】
4.生物製剤:その中には、組み換えタンパク質であるレミケード、エンブレル、ヒューミラ(この3つはすべて、TNFαを標的とする)、キネレット(インターロイキン-1を標的とする)、アメバイブ(T細胞(CD2表面糖タンパク質)を標的とする)、ラプティバ(やはりT細胞(抗CD11a抗体)を標的とする)などが含まれる。しかし組み換えタンパク質と組み換え抗体、中でも後者は、製造が難しいために広く使用することはできず、しかも使用に伴う毒性副作用もある。毒性としては、慢性疾患で必要とされる可能性のある特に長期にわたる使用に伴う潜在的な免疫反応がある。キメラ抗体またはヒト化抗体に付随するよく知られたHAMA(ヒト抗マウス抗体)応答に加え、抗体を媒介とした細胞毒性メカニズム(ADCCと補体を媒介とする)によって副作用が発生する可能性がある。ごく最近、P. Wentworth他、Science、第293巻、1806〜1811ページ、2001年と、第298巻、2195〜2199ページ、2002年に記載されているように、抗体が、供給源や抗原特異性とは無関係に、分子酸素を過酸化水素とオゾンに変換できることが発見された。その結果、細胞と組織が損傷する可能性がある。すると長期にわたる使用による自己免疫疾患の治療で症状が悪化する可能性がある。例えば抗体による過酸化水素とオゾンの発生は、ラットにおける炎症応答とリンクしている可能性のあることが示された(いわゆるアルツス反応)。抗体であるレミケードの強力な抗TMFα活性は、日和見感染(結核、ヒストプラスマ症、リステリア症、ニューモシスティス症)のリスクを増大させた。
【発明の開示】
【0012】
したがって本発明の1つの目的は、自己免疫疾患の治療に用いる新規な化合物を提供することである。
【0013】
発明の概要
本発明は、ある化合物を哺乳動物(ヒトが好ましい)に投与することで慢性自己免疫疾患(特にSLE)を治療する新規な方法に関する。したがって本発明によれば、免疫複合体のクリアランスを容易にすることのできる、および/または体内の臓器(例えば腎臓)に免疫複合体が堆積するのを制限できる、および/またはTNFαの炎症促進作用を抑制できる、ある種の一置換トリアジン二量体または二置換トリアジン二量体(一方のトリアジン単量体は、有機リンカーによって他方の単量体に結合している)とその医薬組成物が提供される。本発明の好ましい一実施態様では、このトリアジン化合物は、炎症プロセスの両方の側面、すなわち免疫複合体とTNFαに影響を与えることになる。この二重作用メカニズムから得られる治療上の利点は、毒性プロファイルの改善となって現われることになる。すなわち、本発明で説明するトリアジン化合物は、TNFαの強力な阻害剤ではなく、免疫複合体を完全に除去することもなかろう。TNFαが感染から保護する役割を果たす一方で、免疫複合体はフィードバック・メカニズムにおいてある役割を果たして免疫応答を調節する(いわゆる特発性決定因子)。治療効果は、2つの作用メカニズムが合わさった効果から生まれている可能性がある。さらに、慢性治療に起因する毒性および/または組み合わせて使用される他の薬に起因する毒性が、少なくとも減少するか回避される可能性がある。
【0014】
本発明の別の一実施態様では、トリアジン化合物が炎症プロセスのほんの1つの側面にだけ影響を与えることになる。すなわちこの化合物は、免疫複合体とTMFαのいずれか一方に影響を与えることになる。トリアジン化合物が免疫複合体の除去に影響を与えるか、その堆積を妨げる場合には、この化合物は、関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、特発性(免疫性)血小板減少症(ITP)、糸球体腎炎、脈管炎の治療に特に役立つことが予想される。トリアジン化合物がTMFαを抑制する場合には、この化合物は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、クローン病、炎症性大腸炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、スティル病(マクロファージ活性化症候群)、ブドウ膜炎、強皮症、筋炎、ライター症候群、ヴェーゲナー症候群の治療に特に役立つことが予想される。もちろん、本発明によるいくつかの化合物は、免疫複合体および/またはTMFαに影響を及ぼす追加の生化学的メカニズムや別の生化学的メカニズムによって炎症プロセスに影響を与える可能性がある。しかしトリアジン化合物が標的とする自己免疫疾患に影響を与えるメカニズムがどうであれ、この化合物が炎症プロセスのどの側面にも強い影響を与える可能性はないために有害な毒性が生じないことが、本発明の重要な1つの側面である。
【0015】
当業者にとって、本発明のさらに別の側面は、以下の説明および請求項とその一般化から明らかになろう。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、下記の一般式:
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、
Aは、-(CH2)n-(nは0、1、2、3のいずれかである)または-C(CH3)H-であり;
Bは、0、または
【0019】
【化2】
【0020】
であり;
Cは、-(CH2)n-(ただし、nは0、1、2、3のいずれかである)または-C(CH3)H-であり;
Xは、NH、O、Sのいずれかであり;
R'は、水素、C1-4アルキル、C1-4N-メチルアミノアルキル、N,N-ジメチルアミノアルキルのいずれかであり;
Aは必ずしもCと同一でない;
ここで、R1、R2、R3、R4は独立に、水素、C2-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6ヒドロキシアルキル、C2-6アミノアルキル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、フェニル、ナフチル、ベンジル、ビフェニル、フェネチル、ピペラジニル、N-メチルピペラジニル、N-エチルピペラジニル、モルホリニル、ピペリジニル、メチルピペリジニル、エチルピペリジニル、インデニル、2,3-ジヒドロインデニル、C4−C7シクロアルキル、C4−C7シクロアルケニル、インドリル、メチルインドリル、エチルインドリル、および下記一般式:
【0021】
【化3】
【0022】
で表わされる置換された5員の芳香族複素環(Xは上に定義した通りであり、ZはNHまたはCH2である);または下記一般式:
【0023】
【化4】
【0024】
で表わされる置換されたフェニル環(XおよびR'は上に定義した通りである);または下記一般式:
【0025】
【化5】
【0026】
で表わされる置換されたフェニル環(Wは水素、CH3、NH2、COOR'、OR'のいずれかである);または下記一般式:
【0027】
【化6】
【0028】
で表わされる置換されたフェニル環(Hal(F、Cl等)はハロゲンである);または、下記一般式:
【0029】
【化7】
【0030】
で表わされる置換されたフェニル環(XおよびR'は上に定義した通りである)
からなる群より選ばれる。]
で表される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む。
【0031】
本発明の1つの特徴によると、それぞれのトリアジン単量体が、1,3-置換フェニル基または1,4-置換フェニル基を含む有機リンカーによって他方のトリアジン単量体に結合した二置換トリアジン二量体が提供される。すなわち、以下の通りである。
【0032】
【化8】
【0033】
この場合には、AおよびCが0であることが可能であり、フェニル基が、2つのトリアジン単量体を結合させるリンカーになる。この場合には、一般式は以下のようになる。
【0034】
【化9】
【0035】
これは、A=C=0である場合の本発明の好ましい一実施態様を示しているが、別の好ましい一実施態様は、A=-(CH2)n-(ただし、nは1または2である)かつC=0の場合、またはA=0かつC=-(CH2)n-(ただし、nは1または2である)の場合、またはA=C=-(CH2)n-(ただし、nは1または2である)の場合である。したがって、本発明の好ましい一実施態様は、例えば、A=-(CH2)2-かつC=0の場合、またはA=0かつC=-(CH2)2-の場合である。好ましい一実施態様では、一般式は以下のようになる。
【0036】
【化10】
【0037】
本発明の別の一実施態様では、2つの二置換トリアジン環を接続する有機リンカーにフェニル基が存在していない。すなわちB=0である。つまりトリアジン二量体は、アルキル鎖によって結合している。したがって好ましい別の一実施態様は、例えばA=C=-CH2-かつB=0である。したがって有機リンカーは、-CH2CH2-すなわちエチレン基を含み、一般式は以下のようになる。
【0038】
【化11】
【0039】
2つのトリアジン環を接続する有機リンカーが何であるかに関係なく、本発明の好ましい一実施態様ではR1、R2、R3、R4が以下のように規定される。
R1=ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル
=アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル
=フェニル、アニリノ、ヒドロキシフェニル
R2=フェネチル、ヒドロキシフェネチル、アミノフェネチル
= R3
R4=フェニル、アニリノ、ヒドロキシフェニル
【0040】
特に好ましいのは以下の化合物群である。
【0041】
A=-CH2-、B=0、C=-CH2-(エチレン・リンカー)である群1の化合物:
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【化17】
【0047】
【化18】
【0048】
しかしながら、本発明は上記の2つの群の化合物に限定されることはなく、他の特に好ましい化合物として以下のものがある。
【0049】
【化19】
【0050】
【化20】
【0051】
【化21】
【0052】
【化22】
【0053】
【化23】
【0054】
【化24】
【0055】
【化25】
【0056】
【化26】
【0057】
本発明の化合物は、免疫複合体が臓器や組織の表面に結合するのを妨げる能力により、食作用による免疫複合体のクリアランスを容易にすることや、体内の臓器や組織に免疫複合体が堆積することを制限できる。免疫複合体がさまざまな表面に付着するメカニズムには、細胞表面Fc受容体への結合が関与している可能性がある。Fc受容体は、免疫グロブリンのFc(尾)部と結合する炎症性白血球の糖タンパク質である。Fc受容体は多数の組織上にも存在しており、免疫複合体が付着し、次いで組織の表面に堆積するための部位を提供する。例えば免疫複合体を含む自己抗体がFc受容体に結合して腎臓組織に堆積すると、SLEに典型的な炎症応答の引き金となり、糸球体腎炎へとつながる可能性があると考えられている。よく特性がわかったFc受容体としては、FcγRI、FcγRII、FcγRIII(これらはIgG受容体)、FcεRI(IgE受容体)、FcαRI(IgA受容体)がある。興味深いことに、ブドウ球菌プロテインAは、たいていの抗体のFc(尾)部に結合できる細菌の細胞壁タンパク質である。プロテインAは、例えばヒト免疫グロブリンIgG1、IgG2、IgG4に結合する。より重要なことだが、プロテインAは、免疫複合体を含むIgG抗体がFc受容体に結合するのを抑制できることが何年も前から知られている。例えばA. Sulica他、Immunology、第38巻、173〜179ページ、1979年には、プロテインAが、免疫複合体を含むIgG抗体がFc受容体に結合するのを実際に抑制するが、プロテインAは、IgGがリンパ球とマクロファージに結合するのを促進することが報告されている。
【0058】
より最近になり、Fc受容体(γ鎖)欠損マウスが利用できるようになったため、自己免疫疾患(例えばSLEや関節リウマチ)で見られるエフェクター応答をIgG Fc受容体(FcγR)が媒介する際のそのIgG Fc受容体(FcγR)の主要な役割を明らかにできるようになった。これについては、M. Marino他、Nature Biotechnology、第18巻、735〜739ページ、2000年に記載されている。より具体的には、著者は、免疫複合体がFcγRに結合するのを妨げることのできる薬剤は、SLEを改善するはずであると述べている。著者は、ヒトSLEと似た症候群を発症する特別な株のマウス(MRL/lpr)をIgGのFc部分に結合するペプチドで処理することにより、この記述を支持する実験的証拠を提示した。処理したマウスの生存率(80%)は、処理していないマウスの生存率(10%)よりも有意に大きかった。P.M. Hogarthによる最近のレビュー論文(Current Opinion in Immunology、第14巻、798〜802ページ、2002年)には、FcγRが炎症プロセスの初期に作用し、免疫複合体の関与が、炎症性サイトカイン(例えばTNFα)を放出させる強力なシグナルであると述べられている。本発明の化合物が免疫複合体のクリアランスまたは堆積のある側面に影響を与える場合、その化合物は、プロテインAを模倣する能力によってそれが可能になる。すなわち、ヒトIgGへのプロテインAの結合をその化合物が抑制する能力を持つことからわかるように、その化合物は、ヒトIgGのFc部分に結合することができる。そのことは、試験管内での競合ELISAによって確認される。ヒトIgGがプロテインAと同様にしてFc部分に結合することにより、プロテインA模倣化合物は、免疫複合体を含むIgGがFcγRに結合しなくすることができる。したがって免疫複合体の堆積が妨げられ、そのことによって免疫複合体のクリアランスが容易になるとともに、炎症性サイトカインの放出が減る。
【0059】
上記のことに加え、あるいは上記のことの代わりに、本発明の化合物は、TNFαの炎症促進活性を抑制することができる。現在承認されている組み換え抗TNFαモノクローナル抗体(レミケード、ヒューミラ)または可溶性TNFα受容体(エンブレル)とは異なり、本発明の化合物は、TNFαがp55 TNFα受容体(CD120a)またはp75 TNFα(CD120b)に結合するのを抑制しない。それにもかかわらず、本発明の化合物はTNFαの効果を抑制することができる。それは、WEHI164(13var)マウス細胞系においてTNFαによって誘導されるアポトーシス/細胞毒性を抑制する能力を本発明の化合物が持つことから確認される。さらに本発明の化合物は、TNFαの産生を抑制することができる。それは、J774A1マウス細胞系においてLPSによって誘導されるTNFαの産生を抑制する能力を本発明の化合物が持つことから確認される。
【0060】
TNFαは、多くのタイプの細胞(例えば線維芽細胞)や、免疫細胞の多数のサブセットで産生される。後者の具体例として、マクロファージ、単球、B細胞、T細胞、マスト細胞などがある。TNFαは多彩な刺激に応答して産生される多面発現分子であり、ほとんどのタイプの細胞に影響を与えることができる。通常の環境では、低レベルの血清TNFαが、病原体、腫瘍、組織損傷から保護している。したがって本発明の化合物を治療薬として慢性的にまたは連続的に使用することに関する本発明の1つの特徴は、本発明の化合物が、TNFαの効果または産生の強力な阻害剤でもなく、TNFαがTNFα受容体に結合するのを強力に抑制するわけでもないことであろう。本発明の化合物を長期にわたって使用できる可能性があることは、NZBW-F1マウス(ヒトSLEの別のモデル)を約1年間にわたって化合物で処理しても顕著な毒性がまったく見られないことで確認される。
【0061】
上記の生物製剤と同様に他のTNFα阻害剤は毒性を示すため、長期の利用、すなわち慢性的な利用が制限される。例えばサリドマイド(N-フタルイミドグルタルイミド)は、TNFαの合成を抑制する合成抗炎症薬である。しかし関節リウマチの患者での臨床試験は、毒性が許容できなかったためにほとんど失敗した。重い副作用には、傾眠、末梢ニューロパシー、重度の発疹などがある。免疫抑制剤として一般に用いられている多くの薬(例えばシクロスポリンA、メトトレキサート)は、TNFαを抑制する性質を示すが、毒性があるために慢性的な使用はできない。
【0062】
実際、TNFαが多くの自己免疫疾患で主要な役割を果たしていることは、最近承認された生物製剤が治療で成功を収めていることから明らかであり、しかも慢性的な治療に利用できる効果的で毒性のない薬が不足していることから、TNFαを抑制するための多くの方法が研究されている。方法としては、ホスホジエステラーゼIVの阻害剤、アデノシンのアゴニスト、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例えばTACEの阻害剤)、シグナル伝達阻害剤(例えばp38 MAPキナーゼ)、転写因子の阻害剤(例えばNFκB)の探索がある。したがってTNFαの効果を効果的に抑制できるが、慢性自己免疫疾患の治療に長期間にわたって使用できる化合物が、明らかに必要とされている。
【0063】
本発明により、上記の一般式で規定される新規な化合物が提供される。この化合物は、慢性自己免疫疾患の治療に役立つ。この化合物は、免疫複合体が臓器や組織の表面に結合するのを妨げる能力により、食作用による免疫複合体のクリアランスを容易にすることや、体内の臓器や組織に免疫複合体が堆積することを制限できる。この場合には、この化合物は、免疫複合体が病因において重要な役割を果たしている自己免疫疾患(例えば関節炎、SLE、ITP、糸球体腎炎、脈管炎)の治療に特に役立つ可能性がある。あるいは本発明の化合物は、TNFαの炎症作用を抑制することができる。この場合には、この化合物は、TNFαの生物活性を抑制することが病因において重要である自己免疫疾患(例えば関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、クローン病、炎症性大腸炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、スティル病(マクロファージ活性化症候群)、ブドウ膜炎、強皮症、筋炎、ライター症候群、ヴェーゲナー症候群)の治療に特に役立つ可能性がある。本発明の好ましい一実施態様では、この化合物は、細菌のプロテインAの活性を模倣すること(その結果として免疫複合体のクリアランスが容易になる)と、TNFαの生物活性と、その結果として生じる効果を抑制することができる。いずれにせよ、自己免疫疾患であることを示すあらゆる炎症状態において改善が起こるメカニズムが何であるかによって本発明の範囲が限定されることは想定していない。実際、本発明の化合物を使用することで、ほとんどわかっていないメカニズムまたは未知のメカニズムによって自己免疫疾患が改善する可能性がある。しかしこの改善は、適切なモデル動物に現われる生体内活性によって明らかになる。したがって化合物が効果を示すメカニズムは重要ではなく、本発明を制限する要素になることもない。しかし重要なのは、本発明による化合物は毒性が少ないため、慢性自己免疫疾患を治療するために投与できるという事実である。
【0064】
本発明の化合物には、薬理学的に許容可能なすべての誘導体(例えばその化合物の塩やプロドラッグ、アナログのほか、あらゆる幾何異性体と鏡像異性体)が含まれる。活性化合物の製剤は、腸溶性投与、粘膜投与(例えば舌下、肺、直腸)、非経口投与(例えば筋肉内、皮内、皮下、静脈内)、局所投与(例えば軟膏、クリーム、ローション)に適した形態の医薬組成物となるように調製することができる。特に、本発明の化合物は、アルコールまたはポリオール溶媒(例えばソルトールHS15(BASF社のポリエチレングリコール660ヒドロキシステアリン酸塩)、グリセリン、エタノールなど)や、生体適合性のある他の溶媒(例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、クレモフォアEL(やはりBASF社のもの))に溶かすことができる。製剤は、必要な場合には離散した投与単位にすると便利であり、医薬製剤の分野でよく知られている任意の方法で調製することができる。どの方法にも、活性医薬成分を、必要に応じて液体担体と細かく分割した固体担体の一方または両方と混合するステップが含まれる。必要な場合には上記の製剤を改変し、活性医薬成分を持続放出できるようにすることができる。従来技術でよく知られている持続放出製剤としては、ボーラス注射、連続輸液、生体適合性のあるポリマーまたはリポソームの利用などがある。
【0065】
投与する量と時期、製剤、投与経路を適切に選択することで、哺乳動物における好ましい応答(すなわち効果)を実現し、哺乳動物への毒性やそれ以外の害を回避すること(すなわち安全性)ができる。したがって“効果的”とは、望む効果を実現する条件をルーチンで操作することを含む選択を意味する。望む効果とは、例えば、身体の構成要素(副腎、目、関節、腎臓、肝臓、肺、膵臓、神経系、皮膚、甲状腺などの臓器や組織)に対する免疫応答に伴う組織損傷の減少または改善;哺乳動物の免疫状態の回復、または病気/疾患(抗体の力価、免疫細胞のサブセット、サイトカインまたはケモカインによるシグナル伝達、抗体-抗原免疫複合体など)の正常化;遊離抗体および/または抗体-抗原免疫複合体の循環からの除去;実験室レベルでの自己免疫疾患の徴候(可溶性炎症メディエータの濃度または絶対量、自己抗体の存在、細胞増殖など);これらの組み合わせである。特に、従来の抗TNFα薬の有害な効果を避けることができる。
【0066】
化合物の投与量は、例えば化合物の生物活性や生物学的利用能(例えば体内での半減期、安定性、代謝);化合物の化学的性質(例えば分子量、疎水性、溶解度);投与経路と投与計画などの因子に依存する。ある特定の患者で実現する具体的な投与レベルは、年齢、健康状態、既往歴、体重、1種類以上の他の薬との組み合わせ、疾患の程度など、多くの因子に依存する可能性がある。
【0067】
“治療”という用語は、特に、疾患にかかっているか、疾患になるリスクを有する哺乳動物(例えばヒト)における自己免疫疾患の1つ以上の症状を軽減または緩和することを意味する。ある患者にとって、ある症状の改善、悪化、退縮、進行は、客観的または主観的な指標で測定することができる。治療には、既存の他の治療法や薬(例えば抗炎症薬、TNFα様抗体または可溶性受容体と結合する薬、NSAID、コルチコステロイド、DMARD)との組み合わせが含まれる。したがって組み合わせ治療を実践することができる。そのような実施態様では、本発明の化合物なしでの治療と比べて使用する追加薬の量または濃度を減少させることにより、慢性的治療薬または追加薬の毒性が、少なくとも減ること、または回避されることが好ましい。
【0068】
当業者であれば、この明細書で治療に言及する場合、この用語は、確立した自己免疫疾患すなわち慢性自己免疫疾患の治療だけでなく予防にも拡張されることがわかるであろう。さらに、治療に必要な本発明の化合物の量は、治療に使用する個々の化合物が何であるかだけでなく、投与経路、治療する自己免疫疾患の性質、患者の年齢や全体的な健康状態にも依存することがわかるであろう。投与量は、最終的には内科医が判断することになろう。しかし一般には、投与量は、体重1kgにつき1日に約0.1mg〜約200mgの範囲になろう。投与量は、体重1kgにつき1日に約1mg〜約100mgの範囲であることが好ましかろう。より好ましいのは、体重1kgにつき1日に約2mg〜約50mgの範囲になろう。
【0069】
最後に、必要な場合には、本発明の化合物は、自己免疫疾患に関して従来技術でよく知られている他の治療薬と組み合わせて利用することができる。従来からある他の治療薬としては上記のものがあり、その代表として、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えばイブプロフェン、アスピリン、ナプロキセン、エトドラック、ケトプロフェン);コルチコステロイド(例えばヒドロコルチゾン、プレグニゾン、デキサメタゾン);疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)(例えば細胞毒性薬(メトトレキサート、アザチオプリンなど)、免疫抑制剤(シクロスポリン、FK506、ヒドロクロロキン、有機金塩など);生物学的製剤が挙げられる。このような組み合わせの個々の成分は、別々の医薬製剤として、または組み合わせた医薬製剤として、順番に、または同時に投与することができる。あるいは新しい医薬製剤は、本発明の化合物と自己免疫疾患のための従来の治療薬の組み合わせに適合するようにつくることができる。
【0070】
本発明の化合物は、試験管内または生体外で抗体(例えばヒトのアイソタイプであるIgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)と結合するアフィニティ剤として用いることもできる。遊離した(すなわち抗原と結合していない)抗体および/または抗体-抗原免疫複合体は、このようなアフィニティ剤と特異的に結合することができる。大きなアフィニティ複合体は、選択的沈澱法または分画遠心法によって分離すること、または凝集アッセイによって同定することができる。しかし1種類以上の化合物を、直接に、またはリンカーによって間接に共有結合させ、不溶性支持材料(例えばアガロース、デキストラン、セルロース、ポリアクリルアミド、他のポリマー材料、シリカ、ガラス)に固定化することが好ましい。本発明の化合物は、支持体上においてその場で合成すること、または活性化した有機リンカーを通じて合成することができる。場合によっては、(例えば還元剤または部位特異的プロテアーゼによって)リンカーが開裂できるようにし、化合物(抗体が結合したもの、またはしていないもの)を支持体から分離することができる。例えば本発明の1種類以上の化合物を支持体に共有結合させることができる。支持体の形態は、アッセイと分析のためのスライド・ガラス、マルチウエル・プレート、光ファイバー、タンパク質チップ、試験管;細胞または抗原をインキュベートするための組織培養皿;分離のための磁性ビーズ、多孔膜、クロマトグラフィ媒体である。抗体または他のFcを含む材料は、本発明の1種類以上の化合物に結合させ(すなわち単離)、次いで、場合によっては、結合していない材料から分離することで(洗浄操作と、さまざまな条件下での複数回の結合操作とを実施する場合と実施しない場合がある)、Fc含有材料を精製できる。例えばイオン強度(例えば塩の濃度)またはpHは結合条件を変化させる可能性があるため、イオン強度またはpHを利用してFc含有材料を放出させることができる。
【0071】
遊離抗体および/または免疫複合体を単離して臨床実験室での診断に用いることができる。標準的なクロマトグラフィ、または流動床クロマトグラフィを利用したアフェレーシスにより、遊離抗体および/または免疫複合体を循環から除去することができる。すなわち生理流体(例えば血液)を、本発明の1種類以上の化合物を付着させた不溶性支持材料とともにインキュベートし、少なくとも一部の抗体材料を化合物と結合させて支持体上に固定化し、結合した抗体を残りの生理流体から分離し、生理流体のうちで残った(可溶性)成分の少なくとも一部を、その生理流体を採取した哺乳動物に戻す。本発明による一種類以上の化合物を含むアフェレーシス用装置(例えばカラム)を無菌条件下で包装し、使用するごとにその装置を交換するとよい。
【0072】
抗体は、組成物から単離した後、場合によっては望む程度まで精製することができる。組成物を含む抗体を、本発明の1種類以上の化合物を付着させた不溶性支持材料とともにインキュベートし、少なくとも一部の抗体材料を化合物と結合させて支持体上に固定化する。結合した抗体は残った組成物から分離できるため、その残った組成物は、全抗体または結合する抗体分画(例えば1種類以上のアイソタイプ)が欠乏している。支持体上にある単離した抗体は、リンカーの洗浄または開裂によって放出させることができる。豊富になった抗体と、欠乏状態になった組成物の成分の一方または両方が、望む生成物である。結合と洗浄をさまざまなインキュベーション条件下で繰り返して単離と分離の効率を高めるとよい。
【0073】
したがって本発明の別の一実施態様では、上記の方法で利用するための装置またはキットが提供される。その装置またはキットを利用すると、例えば、抗体を単離するために抗体を結合させること、抗体を分離するために組成物または循環から抗体を除去すること、供給材料または他の組成物から抗体を精製することができる。生成物は、薬理学的に許容可能な条件下で無菌包装することや、臨床実験室のために殺菌条件下で保管することができる。本発明の1種類以上の化合物を不溶性支持材料に付着させ、場合によっては存在する1種類以上の成分(保管用緩衝液、結合溶液、洗浄溶液、化合物を支持体から開裂させる薬剤)とともに装置(例えばカラム)またはキットの中に包装する。
【実施例】
【0074】
以下の実施例には本発明の実施法がさらに詳しく説明してあるが、本発明がその実施例に限定されることはない。
【0075】
本発明で役に立つ化合物を調製するための一般的な合成系列の概略をスキームIとスキームIIに示してある。スキームIには、グループ2に属する化合物を除く本発明の化合物のための合成経路を示してある。ただし、。また、スキームIIには、グループ1に属する化合物を除く本発明の化合物のための合成経路を示してある。
【0076】
【化27】
【0077】
試薬:(a)アニリンまたは他のアリールアミン、NaHCO3水溶液、アセトン/H2O、0℃;(b)2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンまたは他のアラルキルアミン、NaHCO3水溶液、THF/アセトン/H2O、室温;(c)エチレンジアミン、DIEA、THF、60℃;(d)エチレンジアミン、NaHCO3水溶液、THF/アセトン/H2O、室温;(e)2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンまたは2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン誘導体、Et3N、THF、60℃。
【0078】
【化28】
【0079】
【化29】
【0080】
器具:
【0081】
すべてのHPLCクロマトグラムと質量スペクトルは、ダイオード・アレイ検出器を利用したHP 1100 LC-MSアジレント装置で記録した。分析用C18カラム(250×4.6mm、5ミクロン)において、10〜70%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で10分間、流量は1ml/分(方法1)、または分析用C18カラム(75×4.6mm、5ミクロン)において、10〜99%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で10分間、流量は1ml/分(方法2)、または分析用C18カラム(75×4.6mm、5ミクロン)において、15〜99%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で6分間、流量は2ml/分(方法3)、または分析用C18カラム(75×4.6mm、5ミクロン)において、10〜40%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で6分間、流量は2ml/分(方法4)、または分析用C18カラム(75×4.6mm、5ミクロン)において、1〜20%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で6分間、流量は2ml/分(方法5)。
【0082】
実施例1(スキームIの方法Aの代表例):化合物1の合成
【0083】
【化30】
【0084】
塩化シアヌル(20g、108ミリモル)を0℃のアセトン(120ml)と氷(50ml)に懸濁させた懸濁液に、アニリン(10g、107ミリモル)をアセトン(45ml)を溶かした溶液を一滴ずつ添加した。添加が終了したとき、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(150ml)を用いて溶液のpHを調節して1から7にした。沈殿物を濾過し、水で数回洗浄し、真空中で乾燥させた。すると2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンが灰白色の固形物として得られた(24.3g、収率93%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。ジクロロトリアジン(6.2g、25.7ミリモル)を室温にてTHF(300ml)に溶かした溶液に、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(3.6g、25.9ミリモル)をアセトン(100ml)と水(100ml)に溶かした溶液を添加した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を添加した。室温にて20時間にわたって反応させた後、溶液を水(50ml)と酢酸エチル(50ml)で希釈した。水層を酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。有機層をブライン(150ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させた。すると2-クロロ-4-(2-[4-ヒドロキシフェニル]エチルアミノ)-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンが灰白色の固形物として得られた(8.5g、収率97%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。このトリアジン誘導体(384mg、1.1ミリモル)を室温にてTHF(11ml)に溶かした。この溶液にエチレンジアミン(68μl、1.0ミリモル)を添加した後、ジイソプロピルエチルアミン(355μl、2.0ミリモル)を添加した。得られた溶液を20時間にわたって50℃にした後、メタノール(10ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)25Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=9:1から0:1へ)で精製すると、化合物1が白色の固形物として得られた。生成物の収量は267mg(78%);1H NMR (300MHz, CD3OD)δ7.63 (m, 4H)、7.21 (t, 4H, J=7.6Hz)、6.98 (m, 6H)、6.68 (d, 4H, J=7.9Hz)、3.48 (m, 8H)、2.84 (m, 4H);LRMS (FAB+):m/z 672.0 (MH+);HRMS:MH+C36H39N12O2の計算値は671.331941;実測値は671.33060;HPLC(方法1):8.0分。
【0085】
実施例2(スキームIIの方法Aの代表例):化合物17の合成
【0086】
【化31】
【0087】
2,4-ジクロロ-6-アミノフェニル-1,3,5-トリアジン(1.6g、6.6ミリモル)を室温にてTHF(70ml)に溶かした溶液に、エタノールアミン(439mg、7.3ミリモル)をアセトン(24ml)と水(24ml)に溶かした溶液を添加した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(15ml)を添加した。この反応物を室温にて20時間にわたって撹拌した。次にこの混合物を水(25ml)と酢酸エチル(25ml)で希釈した。水層を酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。有機層をブライン(50ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)40Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=9:1から0:1へ)上で精製すると、2-クロロ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-6-アミノフェニル-1,3,5-トリアジンが白色の固形物として得られた(1.6g、収率91%)。この化合物(710mg、2.7ミリモル)をTHF(26ml)に溶かし、2-(4-アミノフェニル)エチルアミン(1.1ml、8.0ミリモル)を添加した後、トリエチルアミン(1.1ml、8.0ミリモル)を添加した。この反応物を60℃にて20時間にわたって撹拌した後、メタノール(20ml)で希釈した。溶媒を減圧下で除去し、粗残留物をバイオテージ(登録商標)40Sカラム(シリカ、AcOEt/MeOH=1:0から9:1へ)で精製すると、2-[2-(4-アミノフェニル)エチルアミノ]-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンが灰白色の固形物として得られた(916mg、収率91%)。2,4-ジクロロ-6-アミノフェニル-1,3,5-トリアジン(356mg、1.5ミリモル)をTHF(30ml)/アセトン(11ml)/水(11ml)に溶かした溶液に、上記の1,3,5-トリアジン誘導体(540mg、1.5ミリモル)をTHF(14ml)に溶かした溶液を添加した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を添加した。この反応物を室温にて20時間にわたって撹拌し、得られた溶液を水(30ml)と酢酸エチル(30ml)で希釈した。水層を酢酸エチル(30ml)で抽出した。有機層をブライン(40ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過した。すると2-{4-[2-(4-{4-クロロ-6-フェニルアミノ-[1,3,5]トリアジン-2-イルアミノ}-フェニル)-エチルアミノ]-6-フェニルアミノ-[1,3,5]トリアジン-2-イルアミノ}-エタノールが灰白色の固形物として得られた(860mg、かなりの収率)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。この化合物(41mg、0.1ミリモル)をTHF(1ml)に溶かした溶液に2-(4-アミノフェニル)エチルアミン(28μl、0.2ミリモル)を添加した後、トリエチルアミン(30μl、0.2ミリモル)を添加した。50℃にて20時間にわたって反応させた後、溶液をメタノール(5ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)12Mカラム(シリカ、AcOEt/MeOH=1:0から9:1へ)上で精製すると、化合物17が白色の固形物として得られた。生成物の収量は30mg(79%):1H NMR (400MHz, CD3OD)δ7.63〜7.39 (m, 6H)、7.14 (m, 4H)、7.04 (d, 2H, J=8.6Hz)、6.86 (m, 4H)、6.56 (d, 2H, J=7.8Hz)、3.59 (m, 2H)、3.43 (m, 6H)、2.75 (m, 2H)、2.66 (t, 2H, J=7.5Hz);LRMS (ESI):m/z 670.2 (MH+);HPLC(方法2):4.3分。
【0088】
実施例3(スキームIIの方法Bの代表例):化合物16の合成
【0089】
【化32】
【0090】
試薬:(a)1)1,4-ジアミノブタン、ジクロロメタン、17.5時間、400rpm;2)MeOH、DIEA、25℃、1時間、400rpm;(b)塩化シアヌル、DIEA、THF、25℃、30分、400rpm;(c)アニリン、DIEA、NMP、50℃、24時間、400rpm;(d)2-(4-アミノフェニル)エチルアミン、NMP、80℃、20時間、400rpm;(e)2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン、DIEA、NMP、80℃、20時間、400rpm;(f)5%トリフルオロ酢酸/ジクロロエタン、25℃、1時間、400rpm。
【0091】
器具
固相合成をボーダン・ミニブロックの中で実施した。これは、48本のポリエチレン製反応管を有する2つのセットからなる。それぞれの反応管の底部には固体支持体を濾過するためのフリットを入れた。バルブとして機能するスクリューにより液体が流れられるように(または流れなく)する。すべての反応管を取り囲む熱移動ブロックを追加し、反応物を適度に加熱する。熱移動ブロックを、ジューラボFP40冷却/加熱循環装置とカップルさせた。反応管をテフロン(登録商標)・シートとゴム製隔膜で覆い、ブロックの頂部に収容したクリップで閉じることで反応管がしっかりと閉じられた状態を維持するようにした。ブロックをニュー・ブランズウィック・サイエンティフィック社からの改変したインノヴァ振盪機の上で振盪した。蒸発のため、ジーンヴァックHT-4IIを使用した。
【0092】
固相合成のための2-クロロトリチル樹脂への1,4-ジアミノブタンの付加
バイアル(4.0ml)の中に樹脂(53.0mg、1.9ミリモル)を入れた後、ジクロロメタン(1.5ml)とTHF(0.5ml)を入れた。自動式ピペットを用いてこの混合物を均質化した。この混合物から2.0mlを取り出してブロック内のウエルに入れた。バルブを開くことにより、樹脂を溶媒から濾過した。次に、各ウエル内の樹脂を洗浄するためジクロロメタン(1.0ml)を添加した。バルブを閉じ、1,4-ジアミノブタン(41mg、0.47ミリモル)を含むジクロロメタン(2.0ml)を添加し、ブロックにキャップをし、400rpmにした振盪機の上に室温にて17.5時間にわたって置いた。次にブロックを真空回収セットの上に置き、バルブを開けて樹脂を濾過した。樹脂を、それぞれNMP(2×)、メタノール(2×)、水(3×)、メタノール(2×)、ジクロロメタン(2×)、THF(1×)で洗浄した。
【0093】
塩化シアヌルの第1回目の添加
バルブを閉じ、DIEA(68μl、0.5ミリモル)をTHF(1ml)に溶かした溶液を1.0ml、ウエルの中に注いだ。この混合物に、塩化シアヌル(87mg、0.5ミリモル)を含むTHF(1ml)を1ml添加した。ブロックにテフロン(登録商標)・シートを被せ、ゴム製隔膜を振盪機の上に置き、室温にて400rpmで30分間にわたって振盪した。ブロックを振盪機から取り出し、真空回収ベース・セットの上に置いた。次にバルブを開けて樹脂を濾過した。THF(1.0ml)を添加して混合物を洗浄した。バルブを閉じ、追加のTHF(1.0ml)を添加した。ブロックを振盪機の上に5分間置き、バルブを開いて樹脂を濾過した。THFで3回洗浄した後、最後の洗浄をNMPを用いて行ない、次の反応に備えた。
【0094】
ジクロロ-1,3,5-トリアジンへのアニリンの添加
DIEA(82μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を調製し、バルブを閉じた状態でウエルの中に入れた。この混合物に、アニリン(43μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を添加した。この溶液1.0mlを各ウエルに分配した。ブロックを振盪機の上に置き、50℃にて400rpmで17.5時間にわたって振盪した。ブロックを25℃に冷却し、振盪機から取り出した。次に、上に説明したのと同じ手続きを利用し、樹脂を濾過してNMP(5×)で洗浄した。
【0095】
モノクロロ-1,3,5-トリアジンへのリンカーの添加
DIEA(82μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を調製し、バルブを閉じた状態でウエルの中に入れた。2-(4-アミノフェニル)エチルアミン(52μl、0.4ミリモル)をバイアル(4.0ml)の中に入れ、NMP(1.0ml)を添加して溶液にした。ブロックを振盪機の上に置き、80℃にて400rpmで18.5時間にわたって振盪した。18時間後、ブロックを25℃まで冷却し、振盪機から取り出した。上に説明したのと同じ手続きを利用し、樹脂を濾過してNMP(5×)、ジクロロメタン(1×)、メタノール(1×)、ジクロロメタン(1×)、メタノール(1×)、ジクロロメタン(1×)で洗浄した。バルブを閉じることにより、ブロックは次のステップの準備が整った。
【0096】
塩化シアヌルの第2回目の添加
上に説明したのと同じ手続き。
【0097】
ジクロロ-1,3,5-トリアジンへのアニリンの2回目の添加
DIEA(82μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を調製し、バルブを閉じた状態でウエルの中に入れた。アニリン(43μl、0.5ミリモル)をバイアル(4.0ml)に入れ、NMP(1.0ml)を添加した。アニリン溶液をウエルに注いだ。ブロックを振盪機の上に置き、50℃にて400rpmで19時間にわたって振盪した。次にブロックを25℃に冷却し、振盪機から取り出し、上に説明したのと同じ手続きで処理した。樹脂を濾過し、NMP(5×)で洗浄した。バルブを閉じることにより、ブロックは次のステップの準備が整った。
【0098】
モノクロロ-1,3,5-トリアジンへの2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの2回目の添加
DIEA(82μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を調製し、バルブを閉じた状態でウエルの中に入れた。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(65mg、0.5ミリモル)をバイアル(4.0ml)に入れ、NMP(1.0ml)を添加して溶液にした。この2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン溶液(1ml)をウエルの中に注ぎ、ブロックを振盪機の上に置き、80℃にて400rpmで23時間にわたって振盪した。次にブロックを25℃に冷却し、振盪機から取り出し、すでに説明したのと同じ手続きで処理した。樹脂を濾過し、NMP(5×)、ジクロロメタン(1×)、メタノール(1×)、ジクロロメタン(1×)、メタノール(1×)、ジクロロメタン(1×)で洗浄した。バルブを閉じることにより、ブロックは次のステップの準備が整った。
【0099】
樹脂の開裂
5%トリフルオロ酢酸をジクロロエタンに溶かした溶液を調製し、2mlをウエルに添加した。ブロックにキャップをし、振盪機の上に置き、室温にて400rpmで1時間にわたって振盪した。次に、ブロックを真空回収ベース・セットの上に置いた。樹脂を濾過し、清潔な深い96ウエル・プレート#1の中に入れた。新しい清潔な深い96ウエル・プレート#2を真空回収セットの中に入れた。次にジクロロエタン(1.0ml)をウエルに添加し、バルブを閉じ、メタノール(1.0ml)を添加した。ブロックを振盪機の上で5分間にわたって振盪し、樹脂を濾過して深いウエル・プレート#2の中に入れた。新しい清潔な深い96ウエル・プレート#3を真空回収セットの中に入れ、メタノール(1.0ml)をウエルに添加した。次に、深い96ウエル・プレート(1と2)をジーンヴァック装置の中で蒸発させた。プレート#1をLC/MSによって分析した。プレートをまとめてジーンヴァック装置の中に入れ、再び蒸発させた。プレートをHPLC/ジルソンの上に置いて精製した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD)δ7.64〜6.67 (m, 18H)、3.65 (m, 4H)、3.48 (m, 2H)、2.99〜2.79 (m, 6H)、1.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 698.2 (MH+)、720.2 (M+Na);HPLC(方法2):4.4分。
【0100】
実施例4:化合物2の合成
アントラニル酸メチルと2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンから出発して上記の化合物を実施例1のようにして調製した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD)δ8.82〜6.69 (m, 16H)、3.86 (s, 6H)、3.63〜3.49 (m, 8H)、2.73 (s, 4H);LRMS (ESI):m/z 787.2 (MH+) ;HPLC(方法1):8.2分。
【0101】
実施例5:化合物3の合成
実施例1の手続きを改変することによって上記の化合物を調製した。塩化シアヌル(4g、21.7ミリモル)を0℃のアセトン(25ml)と氷(10ml)に懸濁させた懸濁液に、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(2.9g、21.5ミリモル)をTHF(15ml)とアセトン(10ml)と水(10ml)に溶かした溶液を一滴ずつ添加した。添加が終了した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(40ml)を用いて溶液のpHを調節して3から7にした。0℃にて2時間にわたって反応させた後、溶液を水(10ml)と酢酸エチル(20ml)で希釈した。2つの層が分離し、水層を酢酸エチル(25ml)で抽出した。1つにまとめた有機層をブライン(25ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させると、明るい黄色の固形物が得られた(5.3g、86%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。このジクロロトリアジン(1.21g、4.2ミリモル)を室温にてアセトン(25ml)に溶かした溶液に、0.5Mのアンモニアをジオキサン(25ml、12.7ミリモル)に溶かした溶液を添加し、得られた溶液を密封した試験管の中で50℃にて60時間にわたって撹拌した。次に溶液を減圧下で濃縮した。粗残留物を最初にバイオテージ(登録商標)40Mカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=9:1から0:1へ)上で精製した後、半分離用HPLC(両端にキャップをしたC18カラム、250×10mm、5ミクロン、H2O/0.05%のトリフルオロ酢酸を含むCH3CNを20分間かけて7:3から1:9へ)上で精製すると、クロロトリアジンが白色の固形物として得られた(70mg、6%)。
【0102】
塩化シアヌル(3g、16.3ミリモル)を0℃のアセトン(30ml)と氷(15ml)に懸濁させた懸濁液に、アントラニル酸メチル(2.46g、16.3ミリモル)をアセトン(10ml)に溶かした溶液を一滴ずつ添加した。添加が終了したとき、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(40ml)を用いて溶液のpHを調節して1から8.5にした。室温にて20時間にわたって反応させた後、沈殿物を濾過して取り出し、水で数回洗浄し、真空中で乾燥させると、灰白色の固形物が得られた(4.51g、93%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。このジクロロトリアジン(2.0g、6.7ミリモル)を室温にてTHF(55ml)に溶かした溶液に、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(918mg、6.7ミリモル)をアセトン(5ml)と水(2ml)に溶かした溶液を添加した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。50℃にて5時間にわたって反応させた後、溶液を水と酢酸エチルで希釈した。水層を酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。有機層をブライン(20ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。灰白色の固形物が得られた(2.45g、92%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。このジクロロトリアジン(350mg、0.9ミリモル)を室温にてTHF(9ml)に溶かした溶液に、エチレンジアミン(584μl、8.7ミリモル)を添加し、次いでトリエチルアミン(1.22μl、8.7ミリモル)を添加した。55℃にて20時間にわたって反応させた後、溶液をメタノール(10ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)25Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=1:1からAcOEt /MeOH=3:7へ)上で精製すると、第一級アミンが白色の固形物として得られた(227mg、62%)。このアミン(37mg、87マイクロモル)をTHF(1.5ml)に溶かした溶液に、2-アミノ-4-クロロ-6-[2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]-1,3,5-トリアジン(30mg、79マイクロモル)をTHF(1.5ml)に溶かした溶液を添加し、次いでジイソプロピルエチルアミン(50μl、280マイクロモル)を添加した。50℃にて48時間にわたって反応させた後、溶液をメタノール(10ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をまず最初にバイオテージ(登録商標)12Mカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=8:2 からAcOEt /MeOH=9:1へ)上で精製した後、半分離用HPLC(両端にキャップをしたC18カラム、250×10μm、5ミクロン、H2O/0.05%のトリフルオロ酢酸を含むCH3CNを20分間かけて7:3から1:9へ)上で精製すると、化合物3が白色の固形物として得られた。生成物の収量は17mg(33%);1H NMR (300MHz, CD3OD):δ8.60〜6.55 (m, 12H)、3.90 (s, 3H)、3.70〜3.39 (m, 8H)、2.78〜2.66 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 653.2 (MH+);HPLC(方法1):4.68分。
【0103】
実施例6:化合物4の合成
アニリンとN-1-t-ブチルオキシカルボニル-2-(4-アミノフェニル)エチルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。HCl/ジオキサンの混合物を室温にて3時間使用することにより、Boc基を除去した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.59〜7.21 (m, 16H)、3.74〜3.69 (m, 4H)、3.25〜2.94 (m, 8H);LRMS (ESI):m/z 669.4 (MH+);HPLC(方法2):4.2分。
【0104】
実施例7:化合物5の合成
o-トルイジンと2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.11 (m, 2H)、7.02 (m, 4H)、6.97 (m, 6H)、6.66 (d, J=7Hz, 4H)、3.47 (m, 8H)、2.70 (m, 4H)、2.24 (s, 6H);LRMS (ESI):m/z 699 (MH+)、721 (M+Na);HPLC(方法2):4.8分。
【0105】
実施例8:化合物6の合成
アニリンと4-アミノベンジルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。明るいピンク色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.72〜6.61 (m, 18H)、4.39 (s, 4H)、3.55 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 663.2 (M+Na);HPLC(方法2):3.6分。
【0106】
実施例9:化合物7の合成
実施例1の手続きを改変することによって上記の化合物を調製した。1,3-フェニレンジアミン(8.2g、75.3ミリモル)を25℃にてCH2Cl2(21ml)に懸濁させた懸濁液に、炭酸ジ-t-ブチル(2.7g、12.6ミリモル)をCH2Cl2(130ml)に溶かした溶液を1時間かけて一滴ずつ添加した。次にこの溶液を室温にて一晩にわたって撹拌した。18時間にわたって反応させた後、減圧下で溶液を蒸発させて乾燥させた。残留した油を酢酸エチル(50ml)に溶かし、2Nの炭酸ナトリウム溶液(50ml)で洗浄した。水層を酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。1つにまとめた有機層をブライン(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させた。粗残留物をバイオテージ(登録商標)40Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=95:5 から1:1へ)上で精製すると、N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンが灰白色の固形物として得られた(2.4g、93%)。塩化シアヌル(2.2g、11.7ミリモル)を0℃のアセトン(15ml)と氷(6ml)に懸濁させた懸濁液に、N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミン(2.4g、11.6ミリモル)をアセトン(7ml)に溶かした溶液を15分間かけて一滴ずつ添加した。添加が終了したとき、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(25ml)を用いて溶液のpHを調節して1から7にした。白色の沈殿物を濾過し、水で完全に洗浄した後、高真空下で乾燥させた。すると2,4-ジクロロ-6-(3-N-1-t-ブチルオキシカルボニルアミノフェニル)アミノ-1,3,5-チロアジンが灰白色の固形物として得られた(4.1g、99%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。この化合物(400mg、1.12ミリモル)を室温にてTHF(5ml)に溶かした溶液に、エチレンジアミン(38μl、0.562ミリモル)を添加し、次いでジイソプロピルエチルアミン(345μl、1.97ミリモル)を添加した。溶液を20時間にわたって25℃にした後、メタノール(5ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)25Mカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=8:2 から4:6へ)上で精製すると、N,N’-エチレンジアミン ジ[4-クロロ-6-(3-N-1-t-ブチルオキシカルボニルアミノフェニル)-アミノ]-1,3,5-トリアジンが白色の固形物として得られた(314mg、80%)。この化合物(85mg、0.1ミリモル)を室温にてTHF(3ml)に溶かし、2-(4-アミノフェニル)エチルアミン(100mg、0.7ミリモル)をTHF(1ml)に溶かした溶液に添加した後、トリエチルアミン(102μl、0.7ミリモル)に添加した。溶液を20時間にわたって60℃にした後、メタノール(2ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)25Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=8:2 から2:8へ)上で精製すると、N,N’-エチレンジアミン ジ[4-(2-[4-アミノフェニル]エチルアミノ)-6-(3-N-t-ブチルオキシカルボニルアミノフェニル)アミノ]-1,3,5-トリアジンが白色の固形物として得られた(97mg、89%)。この物質(97mg、0.1ミリモル)を室温にてCH2Cl2(1.5ml)に溶かした溶液に、4NのHClをジオキサン(1.5ml)に溶かした溶液を添加した。溶液を3時間にわたって25℃にした後、1,2-ジクロロエタン(10ml)で希釈し、減圧下で濃縮し、高真空下で20時間にわたって乾燥させた。黄色の固形物(74mg、かなりの収率);1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.10〜7.10 (m, 16H)、3.80〜3.60 (m, 8H)、2.99 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 699.2 (MH+);HPLC(方法2):2.8分。
【0107】
実施例10:化合物8の合成
2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンとL-チロシンメチルエステルから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。明るいピンク色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.54〜6.65 (m, 18H)、4.75 (m, 2H)、3.75〜3.40 (m, 14H)、3.18〜2.86 (m, 8H);LRMS (ESI):m/z 921.2 (MH+);HPLC(方法2):5.1分。
【0108】
実施例11:化合物9の合成
50℃にしたメタノール/水(4:1)の混合物の中で過剰な水酸化リチウムを一晩にわたって用いて化合物2を鹸化することにより、上記の化合物を調製した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ9.00〜6.50 (m, 16H)、3.70〜3.45 (m, 8H)、2.90〜2.75 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 759.20 (MH+);HPLC(方法2):7.1分。
【0109】
実施例12:化合物10の合成
(R)-2-フェニルグリシンメチルエステルと2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。実施例11に記載したようにして鹸化を行なった。白色の固形物;1H NMR (300MHz, CD3OD):δ7.48〜7.32 (m, 10H)、7.05〜6.89 (m, 4H)、6.70 (m, 4H)、5.45 (m, 2H)、3.53 (m, 8H)、2.66 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 787.2 (MH+)、785.2 (M-H);HPLC(方法1):6.5分。
【0110】
実施例13:化合物11aの合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにフェノールを用い、炭酸水素ナトリウムの代わりに水素化ナトリウムを用い、ジイソプロピルアミンの代わりに炭酸ナトリウムを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (300MHz, CD3OD):δ7.45〜6.95 (m, 12H)、6.80〜6.61 (m, 6H)、3.48 (m, 8H)、2.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 673.2 (MH+);HPLC(方法1):8.4分。
【0111】
実施例14:化合物11bの合成
チオフェノールと2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。淡いオレンジ色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.10〜7.64 (m, 10H)、6.40〜7.00 (m, 8H)、2.92〜3.50 (m, 8H)、2.29〜2.70 (m, 10H)。LRMS (ESI):m/z 705 (MH+)、727 (M+Na);HPLC(方法2):7.9分。
【0112】
実施例15:化合物12の合成
室温にてDMFの中で過剰なヨウ化2-クロロピリジニウムとトリエチルアミンを用いて化合物1と4-(ジメチルアミノ)ブチル酸ヒドロクロリドを一晩にわたってカップリングさせることにより、上記の化合物を調製した。この化合物を半分離用HPLC(両端にキャップをしたC18カラム、250×10μm、5ミクロン、H2O/0.05%のトリフルオロ酢酸を含むCH3CNを25分間かけて4:2から3:2へ)上で精製した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.52〜7.04 (m, 18H)、3.70〜3.39 (m, 12H)、3.00〜2.75 (m, 8H)、2.92 (s, 9H)、2.85 (s, 3H)、2.11 (m, 4H);19F NMR (400MHz, CD3OD):δ-77.5;定量的19F NMR (400MHz, CD3OD、同軸挿入トリフルオロトルエン):8TFA;LRMS (ESI):m/z 897 (MH+)、919 (M+Na);HPLC(方法2):3.8分。
【0113】
実施例16:化合物13の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを最初に2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンに添加し、次いで炭酸水素ナトリウムの代わりに水素化ナトリウムを用いてリンカーである2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを添加した点が異なっている。側鎖エタノールアミンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニルエチレンジアミンを用いた。5%トリフルオロ酢酸を含むジクロロメタン(0℃)を用いてBoc基を除去した。白色の粉末;1H NMR (300MHz, CD3OD):δ7.59 (m, 6H)、7.21 (m, 8H)、7.05 (d, 1H, J=8Hz)、6.91 (d, 1H, J=8Hz)、6.71 (d, 1H, J=8Hz)、6.67 (d, 1H, J=8Hz)、3.72 (m, 4H)、3.59 (d, 1H, J=8Hz)、3.39 (m, 1H)、3.22 (m, 2H)、2.97 (m, 2H)、2.80 (t, 1H, J=7Hz)、2.70 (t, 1H, J=7Hz);19F NMR (300MHz, CD3OD):δ-74.8;定量的19F NMR (400MHz, CD3OD、同軸挿入トリフルオロトルエン):3TFA;LRMS (ESI):m/z 671 (MH+)、654 (M-NH2);HPLC(方法2):4.5分。
【0114】
実施例17:化合物14の合成
化合物13を1-H-ピラゾール-1-カルボキサミジンヒドロクロリドと反応させることにより、上記の化合物を調製した。実施例16に記載したようにしてBoc基を除去した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.56 (m, 4H)、7.37 (m, 4H)、7.21 (m, 6H)、7.03 (d, 1H, J=8Hz)、6.90 (d, 1H, J=8Hz)、6.70 (d, 1H, J=8Hz)、6.65 (d, 1H, J=8Hz)、3.65 (m, 6H)、3.45 (m, 2H)、2.97 (m, 2H)、2.80 (t, 1H, J=8Hz)、2.68 (t, 1H, J=8Hz);19F NMR (400MHz, CD3OD):δ-77.8;定量的19F NMR (400MHz, CD3OD、同軸挿入トリフルオロトルエン):2TFA;LRMS (ESI):m/z 713 (MH+)、696 (M-NH2);HPLC(方法2):4.8分。
【0115】
実施例18:化合物15の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを最初に2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンに添加し、次いで側鎖N-1-アセチルエチレンジアミンを添加した点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.77〜7.49 (m, 6H)、7.24 (t, 4H, J=7.9Hz)、7.12 (d, 2H, J=8.4Hz)、7.04 (d, 2H, J=8.4Hz)、6.96 (m, 2H)、6.70 (d, 2H, J=8.4Hz)、3.66〜3.46 (m, 8H)、2.88〜2.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 712.2 (MH+);HPLC(方法2):5.0分。
【0116】
実施例19:化合物18の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを最初に2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンに添加し、次いで2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを添加した点が異なっている。N-1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジンを用いてトリアジン環上の最終的な置換を行ない、実施例16に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.58 (m, 6H)、7.39〜6.95 (m, 10H)、6.69 (m, 2H)、4.08 (m, 4H)、3.74〜3.52 (m, 4H)、2.96〜2.75 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 696.2 (MH+);HPLC(方法2):4.7分。
【0117】
実施例20:化合物19aの合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.05〜7.11 (m, 16H)、3.94〜3.48 (m, 8H)、3.00 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 700.2 (MH+);HPLC(方法2):3.2分。
【0118】
実施例21:化合物19bの合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用い、エタノールアミンの代わりに1,2-ジアミノエタンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.00〜7.60 (m, 16H)、3.40〜3.70 (m, 6H)、3.00〜3.20 (m, 2H)、2.70〜2.90 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 700 (MH+);HPLC(方法3):1.3分。
【0119】
実施例22:化合物20の合成
アニリンとエタノールアミンから出発して実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを用いた。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.61 (m, 6H)、7.25 (m, 4H)、7.14 (d, 2H, J=8.5Hz)、7.07 (d, 2H, J=8.5Hz)、6.98 (m, 2H)、6.70 (m, 2H)、3.69 (m, 2H)、3.55 (m, 6H)、2.83 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 671.2 (MH+);HPLC(方法2):5.1分。
【0120】
実施例23:化合物21の合成
実施例16のようにして上記の化合物を調製した。側鎖エチレンジアミンの代わりにエタノールアミンを用いた。白色の固形物;1H NMR (500MHz, CD3OD):δ7.58〜6.61 (m, 18H)、4.51 (m, 2H)、3.84 (m, 2H)、3.63 (m, 4H)、2.82 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 673.2 (MH+)、695.2 (M+Na);HPLC(方法2):9.7分。
【0121】
実施例24:化合物22の合成
実施例3に記載した固相手続きを利用し、エチレンジアミンと2-メトキシアニリンから出発して上記の化合物を調製した。LRMS (ESI):m/z 701.2 (MH+)、722.4 (M+Na);HPLC(方法2):4.2分。
【0122】
実施例25:化合物23の合成
実施例3に記載した固相手続きを利用し、1,4-ジアミノブタンと2-メトキシアニリンから出発して上記の化合物を調製した。LRMS (ESI):m/z 729.2 (MH+)、751.2 (M+Na);HPLC(方法2):4.9分。
【0123】
実施例26:化合物24の合成
実施例3に記載した固相手続きを利用し、1,3-ジアミノプロパンとアニリンから出発して上記の化合物を調製した。LRMS (ESI):m/z 684.4 (MH+)、706.2 (M+Na);HPLC(方法2):4.4分。
【0124】
実施例27:化合物25の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、エチレンジアミン・リンカーの代わりに1,3-ジアミノプロパンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.72〜7.48 (m, 4H)、7.20 (m, 4H)、7.08 (m, 6H)、6.66 (m, 4H)、3.46 (m, 8H)、2.71 (m, 4H)、1.74 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 685.2 (MH+);HPLC(方法2):6.0分。
【0125】
実施例28:化合物26の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに4-アミノメチルピペリジンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.60 (m, 4H)、7.24 (t, 4H, J=7.9Hz)、6.95 (m, 2H)、3.69 (t, 4H, J=5.8Hz)、3.50 (t, 4H, J=5.8Hz)、3.31 (m, 4H)、2.85 (t, 2H, J=12.4Hz)、1.95 (m, 1H)、1.81 (m, 2H)、1.20 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 573.2 (MH+);HPLC(方法2):4.1分。
【0126】
実施例29:化合物27の合成
実施例22のようにして上記の化合物を調製した。ただし、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに4-アミノベンジルアミンを用い、側鎖エタノールアミンの代わりにヒスタミンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.66 (m, 7H)、7.22 (m, 6H)、7.08〜6.65 (m, 7H)、4.53 (s, 2H)、3.63 (t, 2H, J=7.1Hz)、3.53 (m, 2H)、2.89 (t, 2H, J=7.1Hz)、2.77 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 707.2 (MH+);HPLC(方法2):4.4分。
【0127】
実施例30:化合物28の合成
実施例9のようにして上記の化合物を調製した。ただし、、N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンの代わりにアニリンを用い、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに1,4-フェニレンジアミンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.72〜7.51 (m, 8H)、7.26 (t, 4H, J=7.9Hz)、7.06 (d, 4H, J=7.1Hz)、6.98 (t, 2H, J=7.1Hz)、6.71 (t, 4H, J=8.2Hz)、3.57 (t, 4H, J=7.3Hz)、2.82 (t, 4H, J=7.3Hz);LRMS (ESI):m/z 719.2 (MH+);HPLC(方法1):9.0分。
【0128】
実施例31:化合物29の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用い、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりにピペラジンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。茶色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.46〜7.30 (m, 14H)、6.98 (m, 2H)、4.00〜3.85 (m, 8H)、3.80〜3.75 (m, 4H)、3.01 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 725.4 (MH+);HPLC(方法2):3.4分。
【0129】
実施例32:化合物30の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用い、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに4-アミノメチルピペリジンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.78〜7.07 (m, 16H)、3.83〜3.56 (m, 6H)、3.14〜2.92 (m, 8H)、2.17〜1.75 (m, 5H);LRMS (ESI):m/z 753.4 (MH+);HPLC(方法2):3.2分。
【0130】
実施例33:化合物31の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用い、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに1,6-ジアミノヘキサンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.85〜7.06 (m, 16H)、3.74 (m, 4H)、3.48 (m, 4H)、3.01 (m, 4H)、1.68 (m, 4H)、1.47 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 755.2 (MH+)、777.2 (M+Na);HPLC(方法3):1.4分。
【0131】
実施例34:化合物32の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに4-アミノメチルピペリジンを用いた点が異なっている。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.66〜6.74 (m, 18H)、3.64 (m, 4H)、3.09〜2.78 (m, 10H)、2.04 (m, 2H)、1.88 (m, 3H);LRMS (ESI):m/z 723.2 (MH+);HPLC(方法2):4.1分。
【0132】
実施例35:化合物33の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジンを用いた点が異なっている。実施例16に記載したようにしてBoc基を除去した。明るい黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.60 (m, 4H)、7.25 (m, 4H)、6.98 (m, 4H)、6.68 (d, 2H, J=8.2Hz)、3.83 (m, 8H)、3.70 (t, 2H, J=5.6Hz)、3.52 (m, 6H)、2.76 (t, 4H, J=6.3Hz);LRMS (ESI):m/z 620.2 (MH+);HPLC(方法2):4.3分。
【0133】
実施例36:化合物34の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに5-アミノ-2-メチルベンジルアミンを用いた点が異なっている。明るい黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.75〜6.92 (m, 15H)、6.64 (d, 2H, J=8.0Hz)、4.52 (s, 2H)、3.68〜3.41 (m, 6H)、2.73 (m, 2H)、2.30 (s, 3H);LRMS (ESI):m/z 670.2 (MH+);HPLC(方法2):4.4分。
【0134】
実施例37:化合物35の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに3-アミノベンジルアミンを用いた点が異なっている。オレンジ色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.75〜6.64 (m, 18H)、4.37 (s, 2H)、3.77〜3.39 (m, 6H)、2.79 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 656.2 (MH+);HPLC(方法3):2.4分。
【0135】
実施例38:化合物36の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりにピペラジンを用いた点が異なっている。ピンク色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.75〜6.68 (m, 18H)、3.98〜3.65 (m, 16H)、2.77 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 695.2 (MH+);HPLC(方法3):2.2分。
【0136】
実施例39:化合物37の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、エタノールアミンの代わりに2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに2-アミノベンジルアミンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.62〜6.60 (m, 22H)、4.44〜4.38 (m, 2H)、3.53〜3.47 (m, 4H)、2.80〜2.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 733.2 (MH+);HPLC(方法2):6.5分。
【0137】
実施例40:化合物38の合成
実施例9のようにして上記の化合物を調製した。ただし、N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンの代わりにアニリンを用い、2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに1,3-フェニレンジアミンを用いた点が異なっている。明るい黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.61 (m, 4H)、7.29〜6.92 (m, 14H)、6.69 (d, 4H, J=7.4Hz)、3.52 (t, 4H, J=7.2Hz)、2.79 (t, 4H, J=7.2Hz);LRMS (FAB+):m/z 719.4 (MH+);LRMS (ESI):m/z 719.2 (MH+);HPLC(方法1):8.6分。
【0138】
実施例41:化合物39の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、モノクロロトリアジンを最初に(R)-フェニルグリシノールとトリエチルアミンで処理し、得られた生成物を水素化ナトリウムで処理した点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (500MHz, CD3OD):δ7.69〜6.61 (m, 23H)、5.15 (m, 1H)、3.96〜3.37 (m, 6H)、2.89 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 748.2 (MH+);HPLC(方法1):8.8分。
【0139】
実施例42:化合物40の合成
実施例3に記載した固相手続きを利用し、アニリンとエチレンジアミンから出発して上記の化合物を調製した。LRMS (ESI):m/z 670.4 (MH+)、692.2 (M+Na);HPLC(方法2):4.2分。
【0140】
実施例43:化合物41の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンとp-キシレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにアンモニア・ガスを用いた。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.83 (m, 2H)、7.69 (m, 2H)、7.41 (m, 6H)、7.12 (m, 2H)、4.63 (m, 4H);19F NMR (376MHz, CD3OD、同軸挿入トリフルオロトルエン):2TFA;LRMS (ESI):m/z 537.4 (MH+)、559.2 (M+Na);HPLC(方法5):4.1分。
【0141】
実施例44:化合物42の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンから出発し、実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに4-アミノベンジルアミンを用いた。淡い黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.10〜7.87 (m, 1H)、7.86〜7.70 (m, 4H)、7.69〜7.58 (m, 2H)、7.57〜7.40 (m, 5H)、7.20〜7.06 (m, 3H)、4.74 (s, 2H)、3.79〜3.71 (m, 2H)、3.68〜3.56 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 658 (MH+)、680 (M+Na);HPLC(方法5):5.7分。
【0142】
実施例45:化合物43の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンから出発し、実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに3-アミノベンジルアミンを用いた。淡い黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.06〜7.90 (m, 1H)、7.85〜7.67 (m, 4H)、7.66〜7.57 (m, 2H)、7.56〜7.38 (m, 5H)、7.20〜7.08 (m, 3H)、4.77 (s, 2H)、3.76〜3.72 (m, 2H)、3.68〜3.56 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 658 (MH+)、680 (M+Na);HPLC(方法5):5.7分。
【0143】
実施例46:化合物44の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンから出発し、実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにピペラジンを用いた。灰白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.10〜7.82 (m, 3H)、7.80〜7.65 (m, 2H)、7.63〜7.57 (m, 2H)、7.52 (t, J=8.2Hz, 2H)、7.31〜7.19 (m, 1H)、7.11 (d, J=8.0Hz, 2H)、4.09 (s, 8H)、3.81〜3.70 (m, 2H)、3.60〜3.53 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 622 (MH+)、644 (M+Na);HPLC(方法5):5.9分。
【0144】
実施例47:化合物45の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンとアンモニアから出発し、実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに3-アミノベンジルアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに4-アミノベンジルアミンを用いた。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.85〜7.24 (m, 14H)、7.14 (m, 2H)、4.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 628.4 (MH+)、651.2 (M+Na);HPLC(方法4):2.7分。
【0145】
実施例48:化合物46の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,3-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンとアンモニア・ガスを用いた。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.69 (m, 3H)、7.42 (m, 6H)、7.08 (m, 3H)、3.73 (m, 2H)、3.64 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 553.4 (MH+)、575.6 (M+Na);HPLC(方法4):2.0分。
【0146】
実施例49:化合物47の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,4-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用いた。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.74 (m, 2H)、7.69 (m, 6H)、7.53 (m, 2H)、7.19 (m, 2H)、3.77 (m, 4H)、3.64 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 597.4 (MH+)、619.6 (M+Na);HPLC(方法4):2.3分。
【0147】
実施例50:化合物48の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンとp-キシレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに4-アミノベンジルアミンを用いた。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.75〜7.23 (m, 18H)、7.38 (m, 2H)、4.71 (m, 8H);LRMS (ESI):m/z 747.4 (MH+) ;HPLC(方法4):3.5分。
【0148】
実施例51:化合物49の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,3-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用いた。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.71 (m, 3H)、7.48 (m, 6H)、7.11 (m, 3H)、3.74 (m, 4H)、3.65 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 597.2 (MH+) ;HPLC(方法4):2.2分。
【0149】
実施例52:化合物50の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,3-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにセリノールを用いた。茶色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.20〜7.00 (m, 12H)、3.75 (m, 8H)、3.64 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 657.4 (MH+) ;HPLC(方法5):4.5分。
【0150】
実施例53:化合物51の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,3-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにアンモニア・ガスを用いた。灰白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.71 (m, 3H)、7.42 (m, 6H)、7.11 (m, 3H);LRMS (ESI):m/z 509.4 (MH+)、531.4(M+Na);HPLC(方法4):1.7分。
【0151】
実施例54:化合物がプロテインAを模倣する能力の競合プロテインA結合ELISAによる測定
上に説明したように、このアッセイでは、例示した化合物がプロテインAを模倣する能力を評価する。このような化合物は、ヒトIgGのFc部分と結合することができる。そのことは、ヒトIgGに対するプロテインAの結合が抑制されることで確認される。競合プロテインA結合ELISAアッセイを96ウエルのプレートであるマクシソープの表面で実施し、プレート底部へのプロテインAの結合を増大させた。ウエルを100μlのプロテインA(0.8μg)でコーティングし、4℃にて一晩にわたってインキュベートした。インキュベーションの後、結合しなかったプロテインAをリン酸緩衝溶液(PBS)で3回洗浄することによって除去した。次にプレートをウエル1つにつき100μlの2%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液とともに37℃にて1時間にわたってインキュベートすることにより、タンパク質の非特異的な結合を阻止した。インキュベーションの後、プレートをPBSで3回洗浄した。50μlの化合物またはプロテインAをPBSまたはPBS-20%DMSOの中で希釈して適切な濃度にした後、ウエルに添加し、次いで50μlのペルオキシダーゼ共役ヒトIgG(HPR-IgG)を添加した。37℃にて1時間にわたってインキュベートした後、プレートをPBSで3回洗浄し、結合しなかったHPR-IgGを除去した。結合したHPR-IgGは、100μlの2,2'-アジノ-ジ[3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸]ジアンモニウム塩結晶(ABTS)溶液とともに室温にて暗所で20分間にわたってインキュベートすることによって検出した。次にプレートを、EL800汎用マイクロプレート読み取り機(バイオ-テック社)を用いて405nmで読み取った。データをマイクロソフト社のエクセルで分析し、プリズム・ソフトウエアを用いてプロテインAの結合が50%抑制される化合物の濃度(IC50)を計算した。
【0152】
表1に、競合プロテインA結合ELISAアッセイで調べた化合物のIC50を示してある。このアッセイは、PBSとPBS-20%DMSOの中での並行分析(side by side analysis)からなる。DMSOを使用したのは、いくつかの化合物について溶解度を大きくするためである。これらのデータは、IgGのFc部分へのプロテインAの結合を本発明の化合物が抑制する能力を示している。
【0153】
【表1】
【0154】
表2は、競合ELISAアッセイにおいて可溶性プロテインAと比べて強力だった4つのプロテインA模倣化合物のIC50をまとめたものである。この結果は、ヒトIgGへのプロテインAの結合をプロテインA模倣化合物が抑制する能力も示している。
【0155】
【表2】
【0156】
実施例55:免疫複合体の食作用に対する化合物の効果
このアッセイは、プロテインA模倣化合物がFITC-免疫複合体(IC)の取り込みを促進または抑制する能力を調べるために実施した。回転式振盪機の上で室温にてヒト血清アルブミン(HSA)-イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)をマウスIgG抗HSAと1:4の比(抗原1分子につき抗体4分子)で1時間にわたって混合することにより、FITC-ICを調製した。次に可溶性ICを、化合物またはプロテインAとともに、または化合物もプロテインAもなしで、10分間にわたってインキュベートした。この混合物をRAW264.7細胞に添加した後、37℃にて2時間にわたってインキュベートしてICの食作用を調べた。インキュベーションの後、細胞を冷たいPBS(5分間、1200rpm)の中で2回洗浄し、2%ホルムアルデヒドを含む500μlのPBSを用いて固定した。RAW264.7によって捕えられたFITCの信号はICの食作用を示しており、アルゴン・レーザーを用いたベクトン・コールター・カウンタでのフロー・サイトメトリー分析によってその信号を明らかにし、信号を530/30nmフィルタを通じて測定した。
【0157】
図1は、RAW264.7(マクロファージ様)細胞を用いたICの食作用に関する化合物1の投与量-応答曲線である。結果から、ICの食作用が、化合物1が0.4μM未満の濃度では対照と同程度であることがわかる。ICの食作用増大は、1、2、4μMの濃度で観察され、10μMと20μMでは抑制される(約20%)。ICの食作用は、化合物14とプロテインAでも起こった。ICの食作用抑制は、化合物14では20μMで約50%、プロテインAでは2μMと20μMで約50%である。
【0158】
実施例56:WEHI-13 VAR細胞系においてTNFαによって誘発されるアポトーシスに対する化合物の効果
TNFαによって誘発されるアポトーシスに対する化合物の効果を、WEHI-13 VAR細胞を用いた標準的な生物学的アッセイによって測定した。この細胞は、TNFαとアクチノマイシンDの存在下でインキュベートするとアポトーシスを起こす。2×104個のWEHI-13 VAR細胞を、1%ピルビン酸ナトリウムと10%FBSを補足したRPMIの中で37℃にて一晩にわたってインキュベートし、細胞の接着を調べた。次に(タンパク質の合成を抑制するため)細胞を1μg/mlのアクチノマイシンDと0.04nMのTNFαの存在下で、化合物とともに、または化合物なしで培養した。16〜24時間後、2mg/mlのMTT溶液を50μlそれぞれのウエルに添加し、プレートを37℃にて4時間にわたってインキュベートした。生き残った細胞だけがMTTを代謝してホルマザン塩を形成する。この塩は、570nmでの吸光度を測定することによって検出できる。インキュベーションの後、プレートをひっくり返して培地と死んだ細胞を除去した。150μlのDMSOを各ウエルに添加して反応を停止させるとともに、ホルマザン塩を可溶化した。EL800汎用マイクロプレート読み取り機(バイオ-テック社)で光学密度を読み取った。光学密度の低下は、TNFαによって細胞のアポトーシスが誘発されたことの直接的な証拠である。化合物と抗TNFα中和抗体の活性も比較した。負の値は、テストした化合物がその特定の濃度でアポトーシスを促進できなかったことを意味する。
【0159】
表3は、細胞をベースとしたTNFα感受性WEHI- VAR13細胞増殖アッセイにおいて調べた化合物のTNFα抑制(アポトーシス)率を示している。本発明の化合物は、30〜50%の範囲のTNFα抑制活性を示した。それに対してTNFα抗体は、90〜95%というTNFα抑制活性を示した。このデータは、本発明の化合物が、TNFα感受性WEHI- VAR13細胞に関してTNFαのアポトーシス活性を抑制する能力を持つことを示している。
【0160】
【表3】
【0161】
実施例57:p55 TNFα受容体(CD 120a)とp75 TNFα受容体(CD 120b)へのTNFαの結合に対する化合物の効果
化合物がTNFαに結合する能力、またはTNFαと対応する受容体(p55 TNFα受容体とp75 TNFα受容体)の相互作用を抑制する能力を調べた。ManciniらがBiochemical Pharmacology、第58巻、851〜859ページ、1999年に記載しているようにして、3通りの結合ELISAアッセイを実施した。96ウエルのプレートであるマクシソープをTNFαまたは受容体(1μg/ml)で4℃にて一晩にわたってコーティングした。インキュベーションの後、結合しなかったTNFα、p55 TNFα受容体、p75 TNFα受容体を除去し、プレートをPBSで3回洗浄した。次にプレートをウエル1つにつき100μlの2%BSA溶液とともに37℃にて1時間にわたってインキュベートし、タンパク質の非特異的結合を阻止した。インキュベーションの後、プレートをPBSで3回洗浄した。ビオチニル化した組み換えヒトTNFα p55受容体、ビオチニル化した組み換えヒトTNFαp75受容体、ビオチニル化した組み換えヒトTNFαのいずれかを、化合物の存在下または不在下でウエルに添加した。プレートを37℃にて1時間にわたってインキュベートした。インキュベーションの後、プレートをPBSで3回洗浄し、標識したp55受容体、標識したp75受容体、組み換えヒトTNFαのうちで結合しなかったものを除去した。100μlのアビジン-HRP(PBS-0.1%BSAの中に2000倍に希釈したもの)を各ウエルに添加し、37℃にて1時間にわたってインキュベートした。ウエル1つにつき200μlの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)を添加することにより、結合したp55受容体、p75受容体、組み換えヒトTNFαを15分間にわたって検出した。次に、EL800汎用マイクロプレート読み取り機(バイオ-テック社、ミシソーガ、カナダ国)を用いて655nmでプレートを読み取った。データをマイクロソフト社のエクセルで分析し、TNFαに対するp55またはp75の結合の抑制率、あるいはRI(p55)またはRII(p75)に対するTNFαの結合の抑制率として記録した。
【0162】
表4は、(プラスチックにコーティングした)TNFαへのTNFα RIとTNFα RIIの直接的結合の抑制、または(プラスチックにコーティングした)TNFα受容体へのTNFαの直接的結合の抑制に対する化合物の効果を示している。プラスチックをTNFαでコーティングすると、化合物は RI受容体とRII受容体がTNFαに結合するのを抑制しない。しかしプラスチックをその受容体でコーティングすると、TNFαがRI受容体とRII受容体に結合するのを化合物が抑制する程度は小さくなる。この結果は、抑制が、化合物がTNFα受容体にではなくTNFαに直接結合するために起こることを示唆している。20%未満という抑制率は、有意ではないと見なした。負の抑制率は、沈澱、またはTNFα受容体に対するTNFαの結合増加が原因となっている可能性がある。
【0163】
【表4】
【0164】
実施例58:マウスJ774A-1細胞系においてLPSによって誘発されるTNFαの産生に対する化合物の効果
LPSで刺激したJ774A-1細胞を利用し、TNFαの産生に対する化合物の効果をELISAによって測定した。J774A-1細胞を、LPSと化合物の存在下または不在下で培養した。細胞を37℃にて24時間にわたって培養した後、上清を回収し、ELISAにより、製造者(BDバイオサイエンシーズ社)が勧めるようにしてTNFαの濃度を測定した。データをマイクロソフト社のエクセルで分析し、TNFαの産生を50%抑制する化合物の濃度(IC50)をプリズム・ソフトウエアを利用して計算した。
【0165】
表5に、J774A-1細胞においてLPSによって誘発されるTNFαの産生に対する化合物の効果をまとめてある。
【0166】
【表5】
【0167】
実施例59:プロテインA模倣化合物が末梢血単核白血球(PBML)細胞の細胞毒性、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成に及ぼす効果
PBMLを健康なボランティアの末梢血から採取した。リンフォライト-ポリ(シーダーレーン社、ホーンビー、カナダ国)を用い、血液に対して勾配遠心分離を行なった。単核白血球を含む層を回収し、細胞をPBSで3回洗浄した。次に細胞を、10%FBS(ハイクローン社、ローガン、アメリカ合衆国)を補足したRPMI(ギブコ社、バーリントン、カナダ国)の中に懸濁させた。トリパンブルー排除試験によると、生存率は99%超であった。
【0168】
PBMLを1mlにつき細胞2×106個の割合で再び懸濁させた。100μlのPBML(細胞が2×105個)を96ウエルの微量滴定プレートの中で、化合物またはプロテインAの存在下または不在下で48時間にわたってインキュベートした。細胞は、そのままにするか、コンカナバリンA(ConA;T細胞)またはアメリカヤマゴボウのマイトジェン(PWM;B細胞)で刺激した。インキュベーションの後、6時間にわたり、細胞をMTTで処理する(細胞毒性)か、細胞のパルス標識を、1μCiの[3H]-チミジン(DNA合成)、[3H]-ウリジン(RNA合成)、[3H]-ロイシン(タンパク質合成)を用いて行なった。
【0169】
表6に、PBMLにおいてプロテインA模倣化合物が細胞毒性、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成に及ぼす効果を、プロテインAと比較してまとめてある。プロテインAは、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成に対する効果がない。さらに、プロテインAは細胞毒性を誘導しない。細胞毒性は、ConAで刺激したPBMLと、マイトジェンで刺激したT細胞の増殖でだけ観察された。細胞毒性効果は、刺激なしのPBMLと、PWMというマイトジェンで刺激したB細胞の増殖では観察されず、刺激はプロテインA模倣化合物によって影響されなかった。さらに、化合物1、17、19aは、刺激なしのPBMLと刺激された(ConAとPWM)PBMLの両方でDNA合成とRNA合成を抑制する。しかし、化合物1および19aのみは、刺激なしのPBMLと刺激されたPBMLでタンパク質の合成を抑制する。これらの結果は、T細胞とB細胞の両方が抑制されることを示唆している。T細胞とB細胞は、自己免疫疾患に深く関与している。
【0170】
【表6】
【0171】
実施例60:全身性エリテマトーデス(SLE)-糸球体腎炎に対する化合物の効果
F1ハイブリッド交配NZB×NZWのニュージーランド・マウスは、ヒトSLEで見られる自己免疫異常のほとんどを発症し、SLE様免疫複合体(IC)を媒介とした糸球体腎炎で死ぬ。このマウスは、抗DNA(二本鎖と一本鎖)抗体と核抽出(NE)抗体が高力価になることに加え、SLEに関連した臨床症状(例えば白血球減少症、血小板減少症、蛋白尿、糸球体腎炎)を示す。このマウスは、年齢が3ヶ月以降に抗DNA抗体を産生し、7ヶ月の時点で抗DNA抗体応答がピークに達する。その後、おそらく進行性尿毒症の結果として抗DNA抗体の血清濃度が減少する。減少したことは、約150日(5ヶ月)の時点で血清に初めて現われる。マウスの生存を約250日目の時点で評価する。
【0172】
図2は、NZB×NZWマウスの死亡率に対する化合物1の効果を示している。化合物またはビヒクルを1週間に1回、18週目〜37週目にかけて静脈内投与した。処理を11週間にわたって停止し、48週目に対照群と化合物1群で再開した。結果は、37週目の時点で化合物1がNZB×NZWマウスの死亡率を低下させることを示している。化合物1は、症状と死亡の出現を45週まで遅らせもする。図3は、48週目〜51週目における蛋白尿を示している。化合物1で処理したマウスでタンパク質の量が5g/リットルよりも多いものの数は、疾患の動態(指数期)のために対照よりも多かった。
【0173】
しかしビヒクルまたは化合物を毎週静脈内投与する処理を続けて48週目〜52週目になると、化合物1は、ビヒクル単独の場合と比べて尿中のタンパク質濃度(5g/リットル)を減少させる(図3A)。さらに、尿中タンパク質の量のわずかな増加が、化合物1で処理したマウスで観察される(図3B)。これは、腎臓での濾過が改善したことを示している。
【0174】
二次的SLEの結果を図4に示してある。化合物は、NZB×NZWマウスの生存率の増加からわかるように、死亡を遅延させる。化合物1と9は、対照群と比べて生存率を35%まで増大させる。さらに、化合物1は生存を89週まで延ばす。それに対して対照では65週である。
【0175】
図5は、MRl/lprマウスの生存率に対する化合物の効果の一例である。このマウスも、SLE様症候群を自発的に発症する。MRl/lprマウスはホモfas突然変異を有するため、自己免疫が加速する。化合物は、MRl/lprマウスの生存率の増加からわかるように、死亡を遅延させる。さらに、化合物1と20は、生存率を対照群(10%)と比べて増大させる(40%)。
【0176】
実施例61:オキサゾロンによって誘発される遅延型過敏症(DRH)に対する化合物の効果
マウスにおいて、オキサゾロンによって誘発される遅延型過敏症(DRH)に対する化合物の効果を調べた。0日目、100μlのオキサゾロンを含む5%アセトンでマウスを感作した。0日目、1日目、2日目、マウスに、ビヒクル(対照)、メトトレキサート(MTX;正の対照/IV)またはヒドロコルチゾン(負の対照/PO)、化合物のいずれかを体重1kgにつき50mg〜300mgの割合で静脈内投与または経口投与するという処理を行なった。マウスの右耳の表面に50μlのオキサゾロンを塗布するというチャレンジを行なった(第1回目のチャレンジは3日目;第2回目のチャレンジは10日目)。耳の厚さを、4日目〜7日目と、11日目〜14日目に測定した。赤さとかさぶたの形成も観察した。マウスを14日目に安楽死させた。TDTH(CD4)細胞は、DTH応答の強度調節において重要な役割を果たしている。化合物は、T細胞の活性化と、DNA合成、および/またはRNA合成、および/またはタンパク質合成とを抑制することを通じてDTH応答に抑制効果を及ぼすことができる。
【0177】
図6と図7を見ると、どの化合物も、耳の厚さの低下からわかるように、炎症を有意に減少させる。また、単独の化合物19aは、メトトレキサートと同等の能力である。化合物は、赤さ、かさぶたの形成、耳の膨潤も減少させる。
【0178】
図8を見ると、化合物1と19aを0日目、1日目、2日目に経口投与した場合、耳の厚さの低下からわかるように、炎症が有意に減少する。また、単独の化合物1と19aは、体重1kgにつき150mgの濃度では化合物1がヒドロコルチゾンと同等の能力であり、体重1kgにつき300mgの濃度では化合物1と19aがヒドロコルチゾンと同等の能力である。化合物は、赤さ、かさぶたの形成、耳の膨潤も減少させる。
【0179】
実施例62:コラーゲンで誘発した関節炎に対する化合物の効果
0.1Mの酢酸に溶かして完全フロイント・アジュバント(CFA)の中で乳化したヘテロ(ウシ)II型コラーゲン(250μg)をメスのルイス・ラットに皮内投与することにより、コラーゲン誘発関節炎(CIA)を誘発させた。8日目、9日目、12日目、14日目、16日目にラットにビヒクル、メトトレキサート、化合物1のいずれかを静脈内注射するという処理を行なった。免疫化してから12〜15日後、80〜90%のラットに一般に滑膜炎が発症する。関節炎が現われた後、それぞれの手足を1週間に2〜3回調べた。関節炎の件数と程度の両方を評価した。件数は、研究期間中に関節炎の臨床的徴候があったラットの数として定義したのに対し、程度は、それぞれの手足を、膨潤の程度、関節周辺の浮腫の程度、こわばりの程度の増加に基づいて0〜4のスケールの整数(0=正常、4=最大;表7)に毎日点数化することによって定量化した。4本の手足すべての点数の合計を関節炎指数として計算した。ラット1匹当たりの可能な最大の点数は16点である。CIAは主に足に影響を与えるため、6〜8点という点数は重い関節炎であることを表わす。
【0180】
【表7】
【0181】
図9に示したように、免疫化してから12〜15日後、80〜90%のラットが重い滑膜炎を発症した。炎症は、16日目に最大になった。14日目までとそれ以降にメトトレキサート(正の対照)を静脈内注射することにより、関節炎の程度(関節炎指数)の有意な低下(50%)が観察された。より少ないが有意な関節炎指数の低下(20%)が、化合物1でも16日目〜21日目に観察された。
【0182】
実施例63:フロイント・アジュバントで誘発される関節炎(AIA)に対する化合物の効果
凍結乾燥させたミコバクテリウム・ブチリクムを鉱物油に懸濁させたものをメスのルイス・ラットの足に注射することにより、AIAを誘発させた。関節炎の進行状況を、アジュバントを注射してから3週間にわたってモニターした。炎症は、アジュバントを投与した3日後にピークに達する。免疫の活性化が14日目頃に現われる。アジュバントを注射する3日前、2日前、1日前にさまざまな量の化合物を経口投与または静脈内投与するとともに、実験に規定されているいろいろな投与計画に従い、アジュバントの注射後10日目〜21日目にさまざまな量の化合物を経口投与または静脈内投与した。あるいは-3日目から21日目まで、ラットに化合物19aを経口投与した。体重を記録した。いろいろな関節の関節炎指数(炎症(浮腫)の指数)、赤さ、こわばりを利用し、疾患の進行状況をモニターした。関節炎の程度は、くるぶしの直交する2つの直径を中外側面内と背腹方向面内においてノギスで測定することによって決定した。次に、幾何学の公式を利用し、関節の周囲長をミリメートル単位で計算した。関節炎の件数と程度の両方を評価した。件数は、研究期間中に関節炎の臨床的徴候を示したラットの数として定義した。
【0183】
図10に示したように、100%のラットが滑膜炎を発症した。炎症は、免疫化の3日後にピークに達する。-3日目、-2日目、-1日目、12日目、13日目、14日目、18日目、19日目、20日目にラットにいろいろな化合物を静脈内投与した。19日目までとそれ以降にメトトレキサート(正の対照)を静脈内注射することにより、関節炎の程度(炎症指数)の有意な低下(50%)が観察された。わずかだが有意な炎症指数の低下(20%)が、化合物1と19aでも3日目〜5日目に観察された。
【0184】
さらに、図11では、急性の炎症(1日目〜6日目)に対して化合物1と19aを静脈内注射することにより(-3日目、-2日目、-1日目、11日目、12日目、13日目)、関節炎の程度(炎症指数)の有意な低下(50%まで)が観察された。また、急性の炎症に対して化合物19aを経口投与することにより、対照およびメトトレキサートと比べて炎症が有意に抑制されることも観察された。慢性の炎症(12日目〜21日目)でも、炎症の強力かつ有意な抑制が、化合物19a(IV;12日目〜19日目、PO;16日目)とメトトレキサート(15日目〜21日目)によって観察された。
【0185】
化合物19aを毎日経口投与すると(-3日目〜21日目)、炎症の有意な抑制(50%まで)が13日目〜22日目に観察された(図12)。
【0186】
実施例64:化合物を利用した免疫グロブリンの結合と精製
すでに指摘したように、例示した化合物は、抗体と結合させ、その後その抗体をタンパク質混合物から単離・精製するための親和剤として用いることができる。このような精製は、化合物を、まず最初に直接的に、またはリンカーによって不溶性支持材料に共有結合させたときにうまく実現する。そこでエポキシドで活性化して(エピクロロヒドリンと)架橋させた6%アガロース・ビーズ101gを、6-アミノヘキサン酸(8.0g、61ミリモル)を水(101ml)に溶かした溶液で処理し、得られたスラリーのpHを2MのNaOHを用いて12に調節した。反応物をロッカー・プレート上で44時間にわたって振盪した。ビーズを濾過し、水(5×100ml)で洗浄した後、水(100ml)に再び懸濁させ、ホウ水素化ナトリウム(202mg、5.34ミリモル)を10MのNaOH(20ml)に溶かした溶液で処理した。反応物をロッカー・プレート上で25時間にわたって振盪した。ビーズを濾過し、濾液のpHが中性になるまで水(11×200ml)で洗浄し、ゲルのサンプルを凍結乾燥させて元素分析を行なった:C 47.366%;H 6.966%;N 0.990%。1分子の6-アミノヘキサン酸につき窒素原子が1個であることに基づくと、これは凍結乾燥させたゲル1gにつき707マイクロモルをロードすることに対応する。沈澱したゲル(4g)を、化合物19b(275mg、0.30ミリモル)を水(3.0ml)に溶かしてpHを4.5に調節した溶液で処理した。1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(400mg、2.09ミリモル)を水(3.0ml)に溶かしてpHを4.5に調節した溶液を反応物に添加し、それをロッカー・プレート上で21時間にわたって振盪した。得られたスラリーを濾過し、0.1MのHCl(3×10ml)と水(10×8ml)で洗浄すると、淡い茶色のゲルが得られた。(スピン・カラムに200μlを)充填したゲルを20mMのPBS(pH=7)の中で平衡させた。この方式では、例示した化合物を固体支持体に固定化したものを用いて抗体を精製することができる。
【0187】
固相結合では、例示した化合物が免疫グロブリンと結合する能力、および/または例示した化合物が免疫グロブリンを除去する能力、および/または例示した化合物が免疫グロブリンを精製する能力を評価する。例示した化合物を、直接に、または有機リンカーを用いて不溶性支持材料(樹脂)に結合させた。ゲル(例示した化合物が樹脂に結合している)をスピン・カラム上で包装した。包装した200μlのゲルを20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7)の中で平衡させた。全ヒトIgG(シグマ社、セントルイス、アメリカ合衆国;精製されたヒトIgGは、プールした正常なヒト血清から単離した)(図13のレーン2を参照のこと)をゲルを通過させ、フロースルー(図13のレーン3)を回収した。ゲルをカラム5容積分の20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7)と0.25MのNaClで洗浄した。洗浄分画(図13のレーン4を参照のこと)を回収した。結合したIgGを、低pHにて0.1Mのクエン酸(pH=3)を用いて溶離した。溶離したIgG(図13のレーン5を参照のこと)を回収し、次いでトリスHCl(pH=8)を用いて中和した。回収した分画に対してSDS-PAGE(12%)を実施し、クーマシー・ブルー染色によってタンパク質を可視化した。図13に示したように、化合物19bがアミノヘキサン酸リンカーによって樹脂に結合したときに全ヒトIgGの80%までが結合したてめ、そのIgGを精製した。
【0188】
この明細書で引用した特許、特許出願、他の出版物は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【0189】
請求項の意味内容ならびに請求項と法律的に同等な範囲に含まれるあらゆる変更と置換は、請求項の範囲に含まれる。“含む”という用語を用いた請求項により、その請求項の範囲に含まれる他の要素も含めることが可能になる。本発明は、“含む”の代わりに、“主としてなる”(すなわち他の要素が本発明の実施に実質的に影響を与えないのであれば、その要素を請求項の範囲に含めることができる)という表現や、“からなる”(すなわち請求項に列挙した要素だけが可能であり、通常は本発明に付随する不純物または重要でない活性は除かれる)という表現を用いた請求項によっても記述される。これら3つの表現のどれも、本発明で使用することができる。
【0190】
請求項に明示的に記載されている場合を除き、権利を主張する本発明がこの明細書で説明した要素に限定されると見なしてはならない。したがって請求項は、認められる法的保護の範囲を決定するための基礎であり、請求項に読み込まれる内容が明細書に記載された要素に限定されることはない。対照的に、従来技術は、権利を主張する本発明を予測させたり、新規性を破ったりするような特別な実施態様を除き、本発明から明らかに除外される。
【0191】
さらに、請求項の制限事項相互間には特別な関係はないものとする。ただし、そのような関係が請求項に明示してある場合は別である(例えば製品に関する請求項における要素の配置や、方法に関する請求項におけるステップの順番は、請求項にそのことが明示してある場合を除き、請求項を制限することにはならない)。この明細書に開示した個々の要素の可能なすべての組み合わせと順列は、本発明の特徴と見なす。同様に、本発明に関する説明の一般化は、本発明の一部と見なす。
【0192】
上記の説明から、当業者には、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、本発明を別の具体的な形態に具現化できることが明らかであろう。説明した実施態様は単なる例示と見なすべきであり、本発明がその実施態様に限定されることはない。なぜなら、本発明の法律的な保護範囲は、明細書よりは添付の請求項に示されているからである。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】図1は、RAW264.7マクロファージ様細胞による免疫複合体の食作用に関する化合物1の投与量-応答曲線である。
【図2】図2は、NZB×NZWマウスの死亡率に対する化合物1の効果を示す。
【図3A】図3Aは、NZB×NZWマウスの蛋白尿に対する化合物1の効果を示し、5g/l以上のマウスを示す。
【図3B】図3Bは、NZB×NZWマウスの蛋白尿に対する化合物1の効果を示し、腎臓の濾過状態が改善したマウスを示す。
【図4】図4は、化合物1と9がNZB×NZWマウスの死亡率に及ぼす効果を示す。
【図5】図5は、化合物1と20がMRL/lprマウスの死亡率に及ぼす効果を示す。
【図6】図6は、化合物1、5、19a、20が遅延型過敏症(DTH)に及ぼす効果を示す。
【図7】図7は、化合物47、51、49がDTHに及ぼす効果を示す。
【図8】図8は、化合物1と19aがDTHに及ぼす効果を示す。
【図9】図9は、化合物1がコラーゲンによって誘発される関節炎に及ぼす効果を示す。
【図10】図10は、化合物1と19aがアジュバントによって誘発される関節炎に及ぼす効果を示す。
【図11】図11は、化合物1と19aの経口投与と静脈内投与がアジュバントによって誘発される関節炎に及ぼす効果を示す。
【図12】図12は、化合物19aの経口投与と静脈内投与がアジュバントによって誘発される関節炎に及ぼす効果を示す。
【図13】図13は、樹脂に結合した化合物19bによって結合した全ヒトIgGを変性(ドデシル硫酸ナトリウム、すなわちSDS)ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(PAGE)で精製した結果を示している:レーン1、あらかじめ染色した基準(広い幅);レーン2、全ヒトIgG;レーン3、フロースルー分画;レーン4、洗浄分画;レーン5、溶離した分画。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新しい有機化合物を用いた自己免疫疾患の治療に関する。この化合物は、有機リンカーによって共有結合しているが互いに直接は結合していない2つの一置換トリアジン環または二置換トリアジン環を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
関連する出願の相互参照
本出願は、2003年11月24日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第60/524,021号の恩恵を主張する。
【0003】
発明の背景
自己免疫疾患は、組織の損傷が、身体の構成要素に対する体液性免疫応答および/または細胞媒介性免疫応答、あるいはより広い意味では“自己への”免疫応答に関係している一群の病気または疾患のすべてを意味する。病気の原因となる免疫応答は、全身性の場合もあれば、臓器特異的な場合もある。例示するならば、自己に向けられた免疫応答は、関節、皮膚、神経を保護するミエリン鞘、腎臓、肝臓、膵臓、甲状腺、副腎、卵巣に影響を与える可能性がある。実際、自己免疫疾患のリストは、80種類を超える病気からなる。いくつかの自己免疫疾患(例えば皮膚のあちこちが色素を失う白斑)は、単に不快なだけである。大半を占める他の自己免疫疾患は、しばしば時間経過とともに進行して身体を弱らせ、場合によっては致命的になる。例えば全身性エリテマトーデス(SLE)は、診断されてから10年以内に患者の10〜15%が亡くなる慢性疾患である。いくつかを除く他のすべての自己免疫疾患では、性比が女性に偏っている。例えばSLEでは、女性患者と男性患者の比は9:1である。特別な1つのケースとして、免疫系が甲状腺を攻撃する橋本病では、比は50:1である。
【0004】
免疫複合体の形成が自己免疫疾患の病因と進行においてある役割を果たしていることがかなり以前から知られている。例えばGoodmanとGilmanの『治療の薬理学的基礎』、第16版、1980年、マクミラン出版の683ページには、関節炎の患者における炎症には、抗原と抗体と補体からなる複合体(免疫複合体)を白血球が貪食することがおそらく関与していると記載されている。しかしP.M. Hogarth他、Annual Reports in Medicinal Chemistry、第37巻、217〜224ページ、2002年に指摘されているように、免疫複合体によって起こる炎症(関節では関節炎、腎臓では糸球体腎炎、血管では脈管炎)が、自己免疫疾患における病的状態の主要な原因であることが今になってようやく認められるようになってきた。免疫複合体の形成増大は、自己に向かう抗体、すなわちいわゆる自己抗体の存在と相関しているため、自己抗体の存在も、免疫複合体の一部として、または抗原に結合しないこと(遊離抗体)で、組織の炎症に影響を与える可能性がある。いくつかの自己免疫疾患では、遊離自己抗体の存在が疾患の病状に顕著な影響を与える。そのことは、例えばSLE(抗DNA抗体)とITP(血小板に対する抗体応答)ではっきりと証明されており、関節リウマチ(IgG反応性リウマトイド因子)での証明はそれほど明確ではない。免疫複合体と遊離自己抗体の役割が重要であることは、特別な免疫吸着法で免疫複合体と遊離抗体を除去することにより、ある種の自己免疫疾患で治療がうまくいったという事実からも証明される。例えば患者の血液をイムノアフィニティ(プロソルバ(登録商標))カラムを通過させることによって免疫複合体と抗体を除去するというアフェレーシス法の利用が、ITPに関しては1987年に、関節リウマチに関しては1999年にアメリカ合衆国のFDAによって承認された。しかし現在のところ、自己免疫疾患を治療するために薬を投与して免疫複合体と自己抗体を容易に除去することに関しては、承認された方法はない。
【0005】
自己免疫疾患の病因と進行に関する別の側面は、炎症性サイトカインの役割である。通常の環境では、炎症性サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子α(TNFα)やインターロイキン-1(IL-1))は、感染や細胞ストレスに応答して保護する役割を果たす。しかしTNFαやIL-1の慢性的な産生および/または過剰な産生の結果として起こる病気が、多くの自己免疫疾患(例えば関節リウマチ、クローン病、炎症性大腸疾患、乾癬)の進行の裏にあると考えられている。他の炎症性サイトカインとしては、インターロイキン-6、インターロイキン-8、インターロイキン-17、顆粒球-マクロファージ・コロニー刺激因子などがある。しかしTNFαが炎症性サイトカイン・カスケードの頂点に存在しているように見える。すなわち1つの炎症性サイトカインをブロックするとすれば、TNFαをブロックすると最大の治療効果が得られよう。TNFαが他の炎症性サイトカインを下方調節する能力が、M. FeldmannによってPerspectives、第2巻、364〜371ページ、2002年に報告されている。実際、関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、クローン病を治療するための1つの選択肢としてTNFαの抑制に効果があることは、アメリカ合衆国のFDAによってレミケード(キメラ抗TNFαモノクローナル抗体)、エンブレル(可溶性TNFα p75受容体融合タンパク質)、ヒューミラ(ヒト抗TNFαモノクローナル抗体)が承認されていることで証明されている。
【0006】
自己免疫疾患の病因と進行に関する上記の考察から推測できるように、原因は複雑で多因子性である。そのため、利用できる多数の治療薬がある。しかし自己免疫疾患の大半は、現在の治療薬ではほとんど制御できない。従来の治療薬は、誰にでも効果があるわけではなく、中程度から重度の毒性を伴うことがしばしばある。それにもかかわらず上記の考察からわかるのは、身体が免疫複合体を排出するのに役立つか、少なくとも循環している免疫複合体の堆積阻止および/または(同時に)TNFαの活性抑制に役立つ一方で、患者にとって一般に毒性がない簡単でよくわかった有機化合物が必要とされている。要するに、効果がありながら毒性のない、慢性自己免疫疾患の治療薬が必要とされている。
【0007】
本発明により、慢性自己免疫疾患の治療に役立つ化合物が提供される。たいていの自己免疫疾患は、最初は命を脅かすことはないが、慢性疾患であり、ゆっくりと進行して衰弱状態になる。多数の治療法が利用できるとはいえ、従来の治療薬は効果的ではない。より問題なのは付随する毒性であり、その毒性のため、慢性疾患の場合に必要な長期の使用が禁止されることがしばしばある。自己免疫疾患に関する現在の治療薬は、大きく2つのグループに分けられる。すなわち、自己に対する免疫応答を減らすか抑制する薬と、慢性の炎症から生じる症状に対処する薬である。より詳しく説明するならば、自己免疫疾患(例えば主として関節炎)に関する現在の治療薬は、以下の通りである。
【0008】
1.非ステロイド系抗炎症薬(NSAID):その中にはアスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、エトドラック、ケトプロフェンが含まれる。NSAIDはあまり強力な薬ではないため、疾患の初期段階において(例えば関節炎に伴う痛みと膨潤を緩和するため)抗炎症薬として最もよく使用される。しかしNSAIDは胃腸の炎症と肝臓毒性を伴う。多くのNSAIDを使用することに伴う胃腸潰瘍に対処するため、より選択的なNSAID薬が最近開発された。この薬は、シクロオキシゲナーゼ-2を選択的に抑制する(ビオックス、セレブレックス)、あるいは優先的に抑制する(モビコックス)(COX-2阻害剤)。しかしCOX-2阻害剤は、好ましくない副作用を示す。それは例えば、特に長期にわたって使用したときの胃腸の炎症である。
【0009】
2.コルチコステロイド:その中には、プレドニゾンやデキサメタゾンが含まれる。コルチコステロイドは関節リウマチの治療に最も広く使用されている抗炎症薬であるが、免疫を全般的に抑制するため、骨粗鬆症、胃腸毒性、感染のリスクを顕著に増大させる。したがってコステロイドは、疾患による発赤の治療(例えばSLE)に使用される傾向があり、慢性疾患の治療には使用されない。
【0010】
3.疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD):その中には、細胞毒性薬(例えばメトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミド)や、強力な免疫抑制剤(例えばシクロスポリンA(サンディミュン、ネオーラル社)、FK506(タクロリムス))、他の多彩な薬(ヒドロクロロキン、有機金塩(例えばオーロチオグルコース))が含まれる。DMARDは強力な薬であるため、炎症を減らし、疾患の進行速度を遅延させる上で顕著な効果を示す可能性がある。そのため内科医は、NSAIDの後、第2の治療薬としてDMARDを伝統的に使用してきた。しかしDMARDは強力な薬であるため、使用には顕著な毒性が伴う。細胞毒性薬は例えばDNAの複製を妨げるため、多数の毒性効果となって現われる。毒性効果としては、骨髄抑制、それに伴う感染や新生物のリスクなどがある。シクロスポリンAとFK506は、深刻な副作用(腎臓毒性や肝臓毒性)のために使用が制限される。ヒドロクロロキンの使用に伴う毒性効果としては、失明、ニューロミオパシー、胃腸痛などがある。金塩を用いた治療によって生じる最も一般的な副作用は、皮膚炎である。しかし金の毒性によって腎炎や骨髄抑制も生じる可能性がある。
【0011】
4.生物製剤:その中には、組み換えタンパク質であるレミケード、エンブレル、ヒューミラ(この3つはすべて、TNFαを標的とする)、キネレット(インターロイキン-1を標的とする)、アメバイブ(T細胞(CD2表面糖タンパク質)を標的とする)、ラプティバ(やはりT細胞(抗CD11a抗体)を標的とする)などが含まれる。しかし組み換えタンパク質と組み換え抗体、中でも後者は、製造が難しいために広く使用することはできず、しかも使用に伴う毒性副作用もある。毒性としては、慢性疾患で必要とされる可能性のある特に長期にわたる使用に伴う潜在的な免疫反応がある。キメラ抗体またはヒト化抗体に付随するよく知られたHAMA(ヒト抗マウス抗体)応答に加え、抗体を媒介とした細胞毒性メカニズム(ADCCと補体を媒介とする)によって副作用が発生する可能性がある。ごく最近、P. Wentworth他、Science、第293巻、1806〜1811ページ、2001年と、第298巻、2195〜2199ページ、2002年に記載されているように、抗体が、供給源や抗原特異性とは無関係に、分子酸素を過酸化水素とオゾンに変換できることが発見された。その結果、細胞と組織が損傷する可能性がある。すると長期にわたる使用による自己免疫疾患の治療で症状が悪化する可能性がある。例えば抗体による過酸化水素とオゾンの発生は、ラットにおける炎症応答とリンクしている可能性のあることが示された(いわゆるアルツス反応)。抗体であるレミケードの強力な抗TMFα活性は、日和見感染(結核、ヒストプラスマ症、リステリア症、ニューモシスティス症)のリスクを増大させた。
【発明の開示】
【0012】
したがって本発明の1つの目的は、自己免疫疾患の治療に用いる新規な化合物を提供することである。
【0013】
発明の概要
本発明は、ある化合物を哺乳動物(ヒトが好ましい)に投与することで慢性自己免疫疾患(特にSLE)を治療する新規な方法に関する。したがって本発明によれば、免疫複合体のクリアランスを容易にすることのできる、および/または体内の臓器(例えば腎臓)に免疫複合体が堆積するのを制限できる、および/またはTNFαの炎症促進作用を抑制できる、ある種の一置換トリアジン二量体または二置換トリアジン二量体(一方のトリアジン単量体は、有機リンカーによって他方の単量体に結合している)とその医薬組成物が提供される。本発明の好ましい一実施態様では、このトリアジン化合物は、炎症プロセスの両方の側面、すなわち免疫複合体とTNFαに影響を与えることになる。この二重作用メカニズムから得られる治療上の利点は、毒性プロファイルの改善となって現われることになる。すなわち、本発明で説明するトリアジン化合物は、TNFαの強力な阻害剤ではなく、免疫複合体を完全に除去することもなかろう。TNFαが感染から保護する役割を果たす一方で、免疫複合体はフィードバック・メカニズムにおいてある役割を果たして免疫応答を調節する(いわゆる特発性決定因子)。治療効果は、2つの作用メカニズムが合わさった効果から生まれている可能性がある。さらに、慢性治療に起因する毒性および/または組み合わせて使用される他の薬に起因する毒性が、少なくとも減少するか回避される可能性がある。
【0014】
本発明の別の一実施態様では、トリアジン化合物が炎症プロセスのほんの1つの側面にだけ影響を与えることになる。すなわちこの化合物は、免疫複合体とTMFαのいずれか一方に影響を与えることになる。トリアジン化合物が免疫複合体の除去に影響を与えるか、その堆積を妨げる場合には、この化合物は、関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、特発性(免疫性)血小板減少症(ITP)、糸球体腎炎、脈管炎の治療に特に役立つことが予想される。トリアジン化合物がTMFαを抑制する場合には、この化合物は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、クローン病、炎症性大腸炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、スティル病(マクロファージ活性化症候群)、ブドウ膜炎、強皮症、筋炎、ライター症候群、ヴェーゲナー症候群の治療に特に役立つことが予想される。もちろん、本発明によるいくつかの化合物は、免疫複合体および/またはTMFαに影響を及ぼす追加の生化学的メカニズムや別の生化学的メカニズムによって炎症プロセスに影響を与える可能性がある。しかしトリアジン化合物が標的とする自己免疫疾患に影響を与えるメカニズムがどうであれ、この化合物が炎症プロセスのどの側面にも強い影響を与える可能性はないために有害な毒性が生じないことが、本発明の重要な1つの側面である。
【0015】
当業者にとって、本発明のさらに別の側面は、以下の説明および請求項とその一般化から明らかになろう。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、下記の一般式:
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、
Aは、-(CH2)n-(nは0、1、2、3のいずれかである)または-C(CH3)H-であり;
Bは、0、または
【0019】
【化2】
【0020】
であり;
Cは、-(CH2)n-(ただし、nは0、1、2、3のいずれかである)または-C(CH3)H-であり;
Xは、NH、O、Sのいずれかであり;
R'は、水素、C1-4アルキル、C1-4N-メチルアミノアルキル、N,N-ジメチルアミノアルキルのいずれかであり;
Aは必ずしもCと同一でない;
ここで、R1、R2、R3、R4は独立に、水素、C2-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6ヒドロキシアルキル、C2-6アミノアルキル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、フェニル、ナフチル、ベンジル、ビフェニル、フェネチル、ピペラジニル、N-メチルピペラジニル、N-エチルピペラジニル、モルホリニル、ピペリジニル、メチルピペリジニル、エチルピペリジニル、インデニル、2,3-ジヒドロインデニル、C4−C7シクロアルキル、C4−C7シクロアルケニル、インドリル、メチルインドリル、エチルインドリル、および下記一般式:
【0021】
【化3】
【0022】
で表わされる置換された5員の芳香族複素環(Xは上に定義した通りであり、ZはNHまたはCH2である);または下記一般式:
【0023】
【化4】
【0024】
で表わされる置換されたフェニル環(XおよびR'は上に定義した通りである);または下記一般式:
【0025】
【化5】
【0026】
で表わされる置換されたフェニル環(Wは水素、CH3、NH2、COOR'、OR'のいずれかである);または下記一般式:
【0027】
【化6】
【0028】
で表わされる置換されたフェニル環(Hal(F、Cl等)はハロゲンである);または、下記一般式:
【0029】
【化7】
【0030】
で表わされる置換されたフェニル環(XおよびR'は上に定義した通りである)
からなる群より選ばれる。]
で表される化合物、またはその薬学的に許容される誘導体を含む。
【0031】
本発明の1つの特徴によると、それぞれのトリアジン単量体が、1,3-置換フェニル基または1,4-置換フェニル基を含む有機リンカーによって他方のトリアジン単量体に結合した二置換トリアジン二量体が提供される。すなわち、以下の通りである。
【0032】
【化8】
【0033】
この場合には、AおよびCが0であることが可能であり、フェニル基が、2つのトリアジン単量体を結合させるリンカーになる。この場合には、一般式は以下のようになる。
【0034】
【化9】
【0035】
これは、A=C=0である場合の本発明の好ましい一実施態様を示しているが、別の好ましい一実施態様は、A=-(CH2)n-(ただし、nは1または2である)かつC=0の場合、またはA=0かつC=-(CH2)n-(ただし、nは1または2である)の場合、またはA=C=-(CH2)n-(ただし、nは1または2である)の場合である。したがって、本発明の好ましい一実施態様は、例えば、A=-(CH2)2-かつC=0の場合、またはA=0かつC=-(CH2)2-の場合である。好ましい一実施態様では、一般式は以下のようになる。
【0036】
【化10】
【0037】
本発明の別の一実施態様では、2つの二置換トリアジン環を接続する有機リンカーにフェニル基が存在していない。すなわちB=0である。つまりトリアジン二量体は、アルキル鎖によって結合している。したがって好ましい別の一実施態様は、例えばA=C=-CH2-かつB=0である。したがって有機リンカーは、-CH2CH2-すなわちエチレン基を含み、一般式は以下のようになる。
【0038】
【化11】
【0039】
2つのトリアジン環を接続する有機リンカーが何であるかに関係なく、本発明の好ましい一実施態様ではR1、R2、R3、R4が以下のように規定される。
R1=ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル
=アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル
=フェニル、アニリノ、ヒドロキシフェニル
R2=フェネチル、ヒドロキシフェネチル、アミノフェネチル
= R3
R4=フェニル、アニリノ、ヒドロキシフェニル
【0040】
特に好ましいのは以下の化合物群である。
【0041】
A=-CH2-、B=0、C=-CH2-(エチレン・リンカー)である群1の化合物:
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【化17】
【0047】
【化18】
【0048】
しかしながら、本発明は上記の2つの群の化合物に限定されることはなく、他の特に好ましい化合物として以下のものがある。
【0049】
【化19】
【0050】
【化20】
【0051】
【化21】
【0052】
【化22】
【0053】
【化23】
【0054】
【化24】
【0055】
【化25】
【0056】
【化26】
【0057】
本発明の化合物は、免疫複合体が臓器や組織の表面に結合するのを妨げる能力により、食作用による免疫複合体のクリアランスを容易にすることや、体内の臓器や組織に免疫複合体が堆積することを制限できる。免疫複合体がさまざまな表面に付着するメカニズムには、細胞表面Fc受容体への結合が関与している可能性がある。Fc受容体は、免疫グロブリンのFc(尾)部と結合する炎症性白血球の糖タンパク質である。Fc受容体は多数の組織上にも存在しており、免疫複合体が付着し、次いで組織の表面に堆積するための部位を提供する。例えば免疫複合体を含む自己抗体がFc受容体に結合して腎臓組織に堆積すると、SLEに典型的な炎症応答の引き金となり、糸球体腎炎へとつながる可能性があると考えられている。よく特性がわかったFc受容体としては、FcγRI、FcγRII、FcγRIII(これらはIgG受容体)、FcεRI(IgE受容体)、FcαRI(IgA受容体)がある。興味深いことに、ブドウ球菌プロテインAは、たいていの抗体のFc(尾)部に結合できる細菌の細胞壁タンパク質である。プロテインAは、例えばヒト免疫グロブリンIgG1、IgG2、IgG4に結合する。より重要なことだが、プロテインAは、免疫複合体を含むIgG抗体がFc受容体に結合するのを抑制できることが何年も前から知られている。例えばA. Sulica他、Immunology、第38巻、173〜179ページ、1979年には、プロテインAが、免疫複合体を含むIgG抗体がFc受容体に結合するのを実際に抑制するが、プロテインAは、IgGがリンパ球とマクロファージに結合するのを促進することが報告されている。
【0058】
より最近になり、Fc受容体(γ鎖)欠損マウスが利用できるようになったため、自己免疫疾患(例えばSLEや関節リウマチ)で見られるエフェクター応答をIgG Fc受容体(FcγR)が媒介する際のそのIgG Fc受容体(FcγR)の主要な役割を明らかにできるようになった。これについては、M. Marino他、Nature Biotechnology、第18巻、735〜739ページ、2000年に記載されている。より具体的には、著者は、免疫複合体がFcγRに結合するのを妨げることのできる薬剤は、SLEを改善するはずであると述べている。著者は、ヒトSLEと似た症候群を発症する特別な株のマウス(MRL/lpr)をIgGのFc部分に結合するペプチドで処理することにより、この記述を支持する実験的証拠を提示した。処理したマウスの生存率(80%)は、処理していないマウスの生存率(10%)よりも有意に大きかった。P.M. Hogarthによる最近のレビュー論文(Current Opinion in Immunology、第14巻、798〜802ページ、2002年)には、FcγRが炎症プロセスの初期に作用し、免疫複合体の関与が、炎症性サイトカイン(例えばTNFα)を放出させる強力なシグナルであると述べられている。本発明の化合物が免疫複合体のクリアランスまたは堆積のある側面に影響を与える場合、その化合物は、プロテインAを模倣する能力によってそれが可能になる。すなわち、ヒトIgGへのプロテインAの結合をその化合物が抑制する能力を持つことからわかるように、その化合物は、ヒトIgGのFc部分に結合することができる。そのことは、試験管内での競合ELISAによって確認される。ヒトIgGがプロテインAと同様にしてFc部分に結合することにより、プロテインA模倣化合物は、免疫複合体を含むIgGがFcγRに結合しなくすることができる。したがって免疫複合体の堆積が妨げられ、そのことによって免疫複合体のクリアランスが容易になるとともに、炎症性サイトカインの放出が減る。
【0059】
上記のことに加え、あるいは上記のことの代わりに、本発明の化合物は、TNFαの炎症促進活性を抑制することができる。現在承認されている組み換え抗TNFαモノクローナル抗体(レミケード、ヒューミラ)または可溶性TNFα受容体(エンブレル)とは異なり、本発明の化合物は、TNFαがp55 TNFα受容体(CD120a)またはp75 TNFα(CD120b)に結合するのを抑制しない。それにもかかわらず、本発明の化合物はTNFαの効果を抑制することができる。それは、WEHI164(13var)マウス細胞系においてTNFαによって誘導されるアポトーシス/細胞毒性を抑制する能力を本発明の化合物が持つことから確認される。さらに本発明の化合物は、TNFαの産生を抑制することができる。それは、J774A1マウス細胞系においてLPSによって誘導されるTNFαの産生を抑制する能力を本発明の化合物が持つことから確認される。
【0060】
TNFαは、多くのタイプの細胞(例えば線維芽細胞)や、免疫細胞の多数のサブセットで産生される。後者の具体例として、マクロファージ、単球、B細胞、T細胞、マスト細胞などがある。TNFαは多彩な刺激に応答して産生される多面発現分子であり、ほとんどのタイプの細胞に影響を与えることができる。通常の環境では、低レベルの血清TNFαが、病原体、腫瘍、組織損傷から保護している。したがって本発明の化合物を治療薬として慢性的にまたは連続的に使用することに関する本発明の1つの特徴は、本発明の化合物が、TNFαの効果または産生の強力な阻害剤でもなく、TNFαがTNFα受容体に結合するのを強力に抑制するわけでもないことであろう。本発明の化合物を長期にわたって使用できる可能性があることは、NZBW-F1マウス(ヒトSLEの別のモデル)を約1年間にわたって化合物で処理しても顕著な毒性がまったく見られないことで確認される。
【0061】
上記の生物製剤と同様に他のTNFα阻害剤は毒性を示すため、長期の利用、すなわち慢性的な利用が制限される。例えばサリドマイド(N-フタルイミドグルタルイミド)は、TNFαの合成を抑制する合成抗炎症薬である。しかし関節リウマチの患者での臨床試験は、毒性が許容できなかったためにほとんど失敗した。重い副作用には、傾眠、末梢ニューロパシー、重度の発疹などがある。免疫抑制剤として一般に用いられている多くの薬(例えばシクロスポリンA、メトトレキサート)は、TNFαを抑制する性質を示すが、毒性があるために慢性的な使用はできない。
【0062】
実際、TNFαが多くの自己免疫疾患で主要な役割を果たしていることは、最近承認された生物製剤が治療で成功を収めていることから明らかであり、しかも慢性的な治療に利用できる効果的で毒性のない薬が不足していることから、TNFαを抑制するための多くの方法が研究されている。方法としては、ホスホジエステラーゼIVの阻害剤、アデノシンのアゴニスト、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例えばTACEの阻害剤)、シグナル伝達阻害剤(例えばp38 MAPキナーゼ)、転写因子の阻害剤(例えばNFκB)の探索がある。したがってTNFαの効果を効果的に抑制できるが、慢性自己免疫疾患の治療に長期間にわたって使用できる化合物が、明らかに必要とされている。
【0063】
本発明により、上記の一般式で規定される新規な化合物が提供される。この化合物は、慢性自己免疫疾患の治療に役立つ。この化合物は、免疫複合体が臓器や組織の表面に結合するのを妨げる能力により、食作用による免疫複合体のクリアランスを容易にすることや、体内の臓器や組織に免疫複合体が堆積することを制限できる。この場合には、この化合物は、免疫複合体が病因において重要な役割を果たしている自己免疫疾患(例えば関節炎、SLE、ITP、糸球体腎炎、脈管炎)の治療に特に役立つ可能性がある。あるいは本発明の化合物は、TNFαの炎症作用を抑制することができる。この場合には、この化合物は、TNFαの生物活性を抑制することが病因において重要である自己免疫疾患(例えば関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、クローン病、炎症性大腸炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、スティル病(マクロファージ活性化症候群)、ブドウ膜炎、強皮症、筋炎、ライター症候群、ヴェーゲナー症候群)の治療に特に役立つ可能性がある。本発明の好ましい一実施態様では、この化合物は、細菌のプロテインAの活性を模倣すること(その結果として免疫複合体のクリアランスが容易になる)と、TNFαの生物活性と、その結果として生じる効果を抑制することができる。いずれにせよ、自己免疫疾患であることを示すあらゆる炎症状態において改善が起こるメカニズムが何であるかによって本発明の範囲が限定されることは想定していない。実際、本発明の化合物を使用することで、ほとんどわかっていないメカニズムまたは未知のメカニズムによって自己免疫疾患が改善する可能性がある。しかしこの改善は、適切なモデル動物に現われる生体内活性によって明らかになる。したがって化合物が効果を示すメカニズムは重要ではなく、本発明を制限する要素になることもない。しかし重要なのは、本発明による化合物は毒性が少ないため、慢性自己免疫疾患を治療するために投与できるという事実である。
【0064】
本発明の化合物には、薬理学的に許容可能なすべての誘導体(例えばその化合物の塩やプロドラッグ、アナログのほか、あらゆる幾何異性体と鏡像異性体)が含まれる。活性化合物の製剤は、腸溶性投与、粘膜投与(例えば舌下、肺、直腸)、非経口投与(例えば筋肉内、皮内、皮下、静脈内)、局所投与(例えば軟膏、クリーム、ローション)に適した形態の医薬組成物となるように調製することができる。特に、本発明の化合物は、アルコールまたはポリオール溶媒(例えばソルトールHS15(BASF社のポリエチレングリコール660ヒドロキシステアリン酸塩)、グリセリン、エタノールなど)や、生体適合性のある他の溶媒(例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、クレモフォアEL(やはりBASF社のもの))に溶かすことができる。製剤は、必要な場合には離散した投与単位にすると便利であり、医薬製剤の分野でよく知られている任意の方法で調製することができる。どの方法にも、活性医薬成分を、必要に応じて液体担体と細かく分割した固体担体の一方または両方と混合するステップが含まれる。必要な場合には上記の製剤を改変し、活性医薬成分を持続放出できるようにすることができる。従来技術でよく知られている持続放出製剤としては、ボーラス注射、連続輸液、生体適合性のあるポリマーまたはリポソームの利用などがある。
【0065】
投与する量と時期、製剤、投与経路を適切に選択することで、哺乳動物における好ましい応答(すなわち効果)を実現し、哺乳動物への毒性やそれ以外の害を回避すること(すなわち安全性)ができる。したがって“効果的”とは、望む効果を実現する条件をルーチンで操作することを含む選択を意味する。望む効果とは、例えば、身体の構成要素(副腎、目、関節、腎臓、肝臓、肺、膵臓、神経系、皮膚、甲状腺などの臓器や組織)に対する免疫応答に伴う組織損傷の減少または改善;哺乳動物の免疫状態の回復、または病気/疾患(抗体の力価、免疫細胞のサブセット、サイトカインまたはケモカインによるシグナル伝達、抗体-抗原免疫複合体など)の正常化;遊離抗体および/または抗体-抗原免疫複合体の循環からの除去;実験室レベルでの自己免疫疾患の徴候(可溶性炎症メディエータの濃度または絶対量、自己抗体の存在、細胞増殖など);これらの組み合わせである。特に、従来の抗TNFα薬の有害な効果を避けることができる。
【0066】
化合物の投与量は、例えば化合物の生物活性や生物学的利用能(例えば体内での半減期、安定性、代謝);化合物の化学的性質(例えば分子量、疎水性、溶解度);投与経路と投与計画などの因子に依存する。ある特定の患者で実現する具体的な投与レベルは、年齢、健康状態、既往歴、体重、1種類以上の他の薬との組み合わせ、疾患の程度など、多くの因子に依存する可能性がある。
【0067】
“治療”という用語は、特に、疾患にかかっているか、疾患になるリスクを有する哺乳動物(例えばヒト)における自己免疫疾患の1つ以上の症状を軽減または緩和することを意味する。ある患者にとって、ある症状の改善、悪化、退縮、進行は、客観的または主観的な指標で測定することができる。治療には、既存の他の治療法や薬(例えば抗炎症薬、TNFα様抗体または可溶性受容体と結合する薬、NSAID、コルチコステロイド、DMARD)との組み合わせが含まれる。したがって組み合わせ治療を実践することができる。そのような実施態様では、本発明の化合物なしでの治療と比べて使用する追加薬の量または濃度を減少させることにより、慢性的治療薬または追加薬の毒性が、少なくとも減ること、または回避されることが好ましい。
【0068】
当業者であれば、この明細書で治療に言及する場合、この用語は、確立した自己免疫疾患すなわち慢性自己免疫疾患の治療だけでなく予防にも拡張されることがわかるであろう。さらに、治療に必要な本発明の化合物の量は、治療に使用する個々の化合物が何であるかだけでなく、投与経路、治療する自己免疫疾患の性質、患者の年齢や全体的な健康状態にも依存することがわかるであろう。投与量は、最終的には内科医が判断することになろう。しかし一般には、投与量は、体重1kgにつき1日に約0.1mg〜約200mgの範囲になろう。投与量は、体重1kgにつき1日に約1mg〜約100mgの範囲であることが好ましかろう。より好ましいのは、体重1kgにつき1日に約2mg〜約50mgの範囲になろう。
【0069】
最後に、必要な場合には、本発明の化合物は、自己免疫疾患に関して従来技術でよく知られている他の治療薬と組み合わせて利用することができる。従来からある他の治療薬としては上記のものがあり、その代表として、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えばイブプロフェン、アスピリン、ナプロキセン、エトドラック、ケトプロフェン);コルチコステロイド(例えばヒドロコルチゾン、プレグニゾン、デキサメタゾン);疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)(例えば細胞毒性薬(メトトレキサート、アザチオプリンなど)、免疫抑制剤(シクロスポリン、FK506、ヒドロクロロキン、有機金塩など);生物学的製剤が挙げられる。このような組み合わせの個々の成分は、別々の医薬製剤として、または組み合わせた医薬製剤として、順番に、または同時に投与することができる。あるいは新しい医薬製剤は、本発明の化合物と自己免疫疾患のための従来の治療薬の組み合わせに適合するようにつくることができる。
【0070】
本発明の化合物は、試験管内または生体外で抗体(例えばヒトのアイソタイプであるIgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)と結合するアフィニティ剤として用いることもできる。遊離した(すなわち抗原と結合していない)抗体および/または抗体-抗原免疫複合体は、このようなアフィニティ剤と特異的に結合することができる。大きなアフィニティ複合体は、選択的沈澱法または分画遠心法によって分離すること、または凝集アッセイによって同定することができる。しかし1種類以上の化合物を、直接に、またはリンカーによって間接に共有結合させ、不溶性支持材料(例えばアガロース、デキストラン、セルロース、ポリアクリルアミド、他のポリマー材料、シリカ、ガラス)に固定化することが好ましい。本発明の化合物は、支持体上においてその場で合成すること、または活性化した有機リンカーを通じて合成することができる。場合によっては、(例えば還元剤または部位特異的プロテアーゼによって)リンカーが開裂できるようにし、化合物(抗体が結合したもの、またはしていないもの)を支持体から分離することができる。例えば本発明の1種類以上の化合物を支持体に共有結合させることができる。支持体の形態は、アッセイと分析のためのスライド・ガラス、マルチウエル・プレート、光ファイバー、タンパク質チップ、試験管;細胞または抗原をインキュベートするための組織培養皿;分離のための磁性ビーズ、多孔膜、クロマトグラフィ媒体である。抗体または他のFcを含む材料は、本発明の1種類以上の化合物に結合させ(すなわち単離)、次いで、場合によっては、結合していない材料から分離することで(洗浄操作と、さまざまな条件下での複数回の結合操作とを実施する場合と実施しない場合がある)、Fc含有材料を精製できる。例えばイオン強度(例えば塩の濃度)またはpHは結合条件を変化させる可能性があるため、イオン強度またはpHを利用してFc含有材料を放出させることができる。
【0071】
遊離抗体および/または免疫複合体を単離して臨床実験室での診断に用いることができる。標準的なクロマトグラフィ、または流動床クロマトグラフィを利用したアフェレーシスにより、遊離抗体および/または免疫複合体を循環から除去することができる。すなわち生理流体(例えば血液)を、本発明の1種類以上の化合物を付着させた不溶性支持材料とともにインキュベートし、少なくとも一部の抗体材料を化合物と結合させて支持体上に固定化し、結合した抗体を残りの生理流体から分離し、生理流体のうちで残った(可溶性)成分の少なくとも一部を、その生理流体を採取した哺乳動物に戻す。本発明による一種類以上の化合物を含むアフェレーシス用装置(例えばカラム)を無菌条件下で包装し、使用するごとにその装置を交換するとよい。
【0072】
抗体は、組成物から単離した後、場合によっては望む程度まで精製することができる。組成物を含む抗体を、本発明の1種類以上の化合物を付着させた不溶性支持材料とともにインキュベートし、少なくとも一部の抗体材料を化合物と結合させて支持体上に固定化する。結合した抗体は残った組成物から分離できるため、その残った組成物は、全抗体または結合する抗体分画(例えば1種類以上のアイソタイプ)が欠乏している。支持体上にある単離した抗体は、リンカーの洗浄または開裂によって放出させることができる。豊富になった抗体と、欠乏状態になった組成物の成分の一方または両方が、望む生成物である。結合と洗浄をさまざまなインキュベーション条件下で繰り返して単離と分離の効率を高めるとよい。
【0073】
したがって本発明の別の一実施態様では、上記の方法で利用するための装置またはキットが提供される。その装置またはキットを利用すると、例えば、抗体を単離するために抗体を結合させること、抗体を分離するために組成物または循環から抗体を除去すること、供給材料または他の組成物から抗体を精製することができる。生成物は、薬理学的に許容可能な条件下で無菌包装することや、臨床実験室のために殺菌条件下で保管することができる。本発明の1種類以上の化合物を不溶性支持材料に付着させ、場合によっては存在する1種類以上の成分(保管用緩衝液、結合溶液、洗浄溶液、化合物を支持体から開裂させる薬剤)とともに装置(例えばカラム)またはキットの中に包装する。
【実施例】
【0074】
以下の実施例には本発明の実施法がさらに詳しく説明してあるが、本発明がその実施例に限定されることはない。
【0075】
本発明で役に立つ化合物を調製するための一般的な合成系列の概略をスキームIとスキームIIに示してある。スキームIには、グループ2に属する化合物を除く本発明の化合物のための合成経路を示してある。ただし、。また、スキームIIには、グループ1に属する化合物を除く本発明の化合物のための合成経路を示してある。
【0076】
【化27】
【0077】
試薬:(a)アニリンまたは他のアリールアミン、NaHCO3水溶液、アセトン/H2O、0℃;(b)2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンまたは他のアラルキルアミン、NaHCO3水溶液、THF/アセトン/H2O、室温;(c)エチレンジアミン、DIEA、THF、60℃;(d)エチレンジアミン、NaHCO3水溶液、THF/アセトン/H2O、室温;(e)2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンまたは2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン誘導体、Et3N、THF、60℃。
【0078】
【化28】
【0079】
【化29】
【0080】
器具:
【0081】
すべてのHPLCクロマトグラムと質量スペクトルは、ダイオード・アレイ検出器を利用したHP 1100 LC-MSアジレント装置で記録した。分析用C18カラム(250×4.6mm、5ミクロン)において、10〜70%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で10分間、流量は1ml/分(方法1)、または分析用C18カラム(75×4.6mm、5ミクロン)において、10〜99%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で10分間、流量は1ml/分(方法2)、または分析用C18カラム(75×4.6mm、5ミクロン)において、15〜99%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で6分間、流量は2ml/分(方法3)、または分析用C18カラム(75×4.6mm、5ミクロン)において、10〜40%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で6分間、流量は2ml/分(方法4)、または分析用C18カラム(75×4.6mm、5ミクロン)において、1〜20%アセトニトリル-0.01%のTFAを含む水という勾配で6分間、流量は2ml/分(方法5)。
【0082】
実施例1(スキームIの方法Aの代表例):化合物1の合成
【0083】
【化30】
【0084】
塩化シアヌル(20g、108ミリモル)を0℃のアセトン(120ml)と氷(50ml)に懸濁させた懸濁液に、アニリン(10g、107ミリモル)をアセトン(45ml)を溶かした溶液を一滴ずつ添加した。添加が終了したとき、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(150ml)を用いて溶液のpHを調節して1から7にした。沈殿物を濾過し、水で数回洗浄し、真空中で乾燥させた。すると2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンが灰白色の固形物として得られた(24.3g、収率93%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。ジクロロトリアジン(6.2g、25.7ミリモル)を室温にてTHF(300ml)に溶かした溶液に、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(3.6g、25.9ミリモル)をアセトン(100ml)と水(100ml)に溶かした溶液を添加した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を添加した。室温にて20時間にわたって反応させた後、溶液を水(50ml)と酢酸エチル(50ml)で希釈した。水層を酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。有機層をブライン(150ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させた。すると2-クロロ-4-(2-[4-ヒドロキシフェニル]エチルアミノ)-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンが灰白色の固形物として得られた(8.5g、収率97%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。このトリアジン誘導体(384mg、1.1ミリモル)を室温にてTHF(11ml)に溶かした。この溶液にエチレンジアミン(68μl、1.0ミリモル)を添加した後、ジイソプロピルエチルアミン(355μl、2.0ミリモル)を添加した。得られた溶液を20時間にわたって50℃にした後、メタノール(10ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)25Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=9:1から0:1へ)で精製すると、化合物1が白色の固形物として得られた。生成物の収量は267mg(78%);1H NMR (300MHz, CD3OD)δ7.63 (m, 4H)、7.21 (t, 4H, J=7.6Hz)、6.98 (m, 6H)、6.68 (d, 4H, J=7.9Hz)、3.48 (m, 8H)、2.84 (m, 4H);LRMS (FAB+):m/z 672.0 (MH+);HRMS:MH+C36H39N12O2の計算値は671.331941;実測値は671.33060;HPLC(方法1):8.0分。
【0085】
実施例2(スキームIIの方法Aの代表例):化合物17の合成
【0086】
【化31】
【0087】
2,4-ジクロロ-6-アミノフェニル-1,3,5-トリアジン(1.6g、6.6ミリモル)を室温にてTHF(70ml)に溶かした溶液に、エタノールアミン(439mg、7.3ミリモル)をアセトン(24ml)と水(24ml)に溶かした溶液を添加した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(15ml)を添加した。この反応物を室温にて20時間にわたって撹拌した。次にこの混合物を水(25ml)と酢酸エチル(25ml)で希釈した。水層を酢酸エチル(2×25ml)で抽出した。有機層をブライン(50ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)40Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=9:1から0:1へ)上で精製すると、2-クロロ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-6-アミノフェニル-1,3,5-トリアジンが白色の固形物として得られた(1.6g、収率91%)。この化合物(710mg、2.7ミリモル)をTHF(26ml)に溶かし、2-(4-アミノフェニル)エチルアミン(1.1ml、8.0ミリモル)を添加した後、トリエチルアミン(1.1ml、8.0ミリモル)を添加した。この反応物を60℃にて20時間にわたって撹拌した後、メタノール(20ml)で希釈した。溶媒を減圧下で除去し、粗残留物をバイオテージ(登録商標)40Sカラム(シリカ、AcOEt/MeOH=1:0から9:1へ)で精製すると、2-[2-(4-アミノフェニル)エチルアミノ]-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンが灰白色の固形物として得られた(916mg、収率91%)。2,4-ジクロロ-6-アミノフェニル-1,3,5-トリアジン(356mg、1.5ミリモル)をTHF(30ml)/アセトン(11ml)/水(11ml)に溶かした溶液に、上記の1,3,5-トリアジン誘導体(540mg、1.5ミリモル)をTHF(14ml)に溶かした溶液を添加した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)を添加した。この反応物を室温にて20時間にわたって撹拌し、得られた溶液を水(30ml)と酢酸エチル(30ml)で希釈した。水層を酢酸エチル(30ml)で抽出した。有機層をブライン(40ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過した。すると2-{4-[2-(4-{4-クロロ-6-フェニルアミノ-[1,3,5]トリアジン-2-イルアミノ}-フェニル)-エチルアミノ]-6-フェニルアミノ-[1,3,5]トリアジン-2-イルアミノ}-エタノールが灰白色の固形物として得られた(860mg、かなりの収率)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。この化合物(41mg、0.1ミリモル)をTHF(1ml)に溶かした溶液に2-(4-アミノフェニル)エチルアミン(28μl、0.2ミリモル)を添加した後、トリエチルアミン(30μl、0.2ミリモル)を添加した。50℃にて20時間にわたって反応させた後、溶液をメタノール(5ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)12Mカラム(シリカ、AcOEt/MeOH=1:0から9:1へ)上で精製すると、化合物17が白色の固形物として得られた。生成物の収量は30mg(79%):1H NMR (400MHz, CD3OD)δ7.63〜7.39 (m, 6H)、7.14 (m, 4H)、7.04 (d, 2H, J=8.6Hz)、6.86 (m, 4H)、6.56 (d, 2H, J=7.8Hz)、3.59 (m, 2H)、3.43 (m, 6H)、2.75 (m, 2H)、2.66 (t, 2H, J=7.5Hz);LRMS (ESI):m/z 670.2 (MH+);HPLC(方法2):4.3分。
【0088】
実施例3(スキームIIの方法Bの代表例):化合物16の合成
【0089】
【化32】
【0090】
試薬:(a)1)1,4-ジアミノブタン、ジクロロメタン、17.5時間、400rpm;2)MeOH、DIEA、25℃、1時間、400rpm;(b)塩化シアヌル、DIEA、THF、25℃、30分、400rpm;(c)アニリン、DIEA、NMP、50℃、24時間、400rpm;(d)2-(4-アミノフェニル)エチルアミン、NMP、80℃、20時間、400rpm;(e)2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン、DIEA、NMP、80℃、20時間、400rpm;(f)5%トリフルオロ酢酸/ジクロロエタン、25℃、1時間、400rpm。
【0091】
器具
固相合成をボーダン・ミニブロックの中で実施した。これは、48本のポリエチレン製反応管を有する2つのセットからなる。それぞれの反応管の底部には固体支持体を濾過するためのフリットを入れた。バルブとして機能するスクリューにより液体が流れられるように(または流れなく)する。すべての反応管を取り囲む熱移動ブロックを追加し、反応物を適度に加熱する。熱移動ブロックを、ジューラボFP40冷却/加熱循環装置とカップルさせた。反応管をテフロン(登録商標)・シートとゴム製隔膜で覆い、ブロックの頂部に収容したクリップで閉じることで反応管がしっかりと閉じられた状態を維持するようにした。ブロックをニュー・ブランズウィック・サイエンティフィック社からの改変したインノヴァ振盪機の上で振盪した。蒸発のため、ジーンヴァックHT-4IIを使用した。
【0092】
固相合成のための2-クロロトリチル樹脂への1,4-ジアミノブタンの付加
バイアル(4.0ml)の中に樹脂(53.0mg、1.9ミリモル)を入れた後、ジクロロメタン(1.5ml)とTHF(0.5ml)を入れた。自動式ピペットを用いてこの混合物を均質化した。この混合物から2.0mlを取り出してブロック内のウエルに入れた。バルブを開くことにより、樹脂を溶媒から濾過した。次に、各ウエル内の樹脂を洗浄するためジクロロメタン(1.0ml)を添加した。バルブを閉じ、1,4-ジアミノブタン(41mg、0.47ミリモル)を含むジクロロメタン(2.0ml)を添加し、ブロックにキャップをし、400rpmにした振盪機の上に室温にて17.5時間にわたって置いた。次にブロックを真空回収セットの上に置き、バルブを開けて樹脂を濾過した。樹脂を、それぞれNMP(2×)、メタノール(2×)、水(3×)、メタノール(2×)、ジクロロメタン(2×)、THF(1×)で洗浄した。
【0093】
塩化シアヌルの第1回目の添加
バルブを閉じ、DIEA(68μl、0.5ミリモル)をTHF(1ml)に溶かした溶液を1.0ml、ウエルの中に注いだ。この混合物に、塩化シアヌル(87mg、0.5ミリモル)を含むTHF(1ml)を1ml添加した。ブロックにテフロン(登録商標)・シートを被せ、ゴム製隔膜を振盪機の上に置き、室温にて400rpmで30分間にわたって振盪した。ブロックを振盪機から取り出し、真空回収ベース・セットの上に置いた。次にバルブを開けて樹脂を濾過した。THF(1.0ml)を添加して混合物を洗浄した。バルブを閉じ、追加のTHF(1.0ml)を添加した。ブロックを振盪機の上に5分間置き、バルブを開いて樹脂を濾過した。THFで3回洗浄した後、最後の洗浄をNMPを用いて行ない、次の反応に備えた。
【0094】
ジクロロ-1,3,5-トリアジンへのアニリンの添加
DIEA(82μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を調製し、バルブを閉じた状態でウエルの中に入れた。この混合物に、アニリン(43μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を添加した。この溶液1.0mlを各ウエルに分配した。ブロックを振盪機の上に置き、50℃にて400rpmで17.5時間にわたって振盪した。ブロックを25℃に冷却し、振盪機から取り出した。次に、上に説明したのと同じ手続きを利用し、樹脂を濾過してNMP(5×)で洗浄した。
【0095】
モノクロロ-1,3,5-トリアジンへのリンカーの添加
DIEA(82μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を調製し、バルブを閉じた状態でウエルの中に入れた。2-(4-アミノフェニル)エチルアミン(52μl、0.4ミリモル)をバイアル(4.0ml)の中に入れ、NMP(1.0ml)を添加して溶液にした。ブロックを振盪機の上に置き、80℃にて400rpmで18.5時間にわたって振盪した。18時間後、ブロックを25℃まで冷却し、振盪機から取り出した。上に説明したのと同じ手続きを利用し、樹脂を濾過してNMP(5×)、ジクロロメタン(1×)、メタノール(1×)、ジクロロメタン(1×)、メタノール(1×)、ジクロロメタン(1×)で洗浄した。バルブを閉じることにより、ブロックは次のステップの準備が整った。
【0096】
塩化シアヌルの第2回目の添加
上に説明したのと同じ手続き。
【0097】
ジクロロ-1,3,5-トリアジンへのアニリンの2回目の添加
DIEA(82μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を調製し、バルブを閉じた状態でウエルの中に入れた。アニリン(43μl、0.5ミリモル)をバイアル(4.0ml)に入れ、NMP(1.0ml)を添加した。アニリン溶液をウエルに注いだ。ブロックを振盪機の上に置き、50℃にて400rpmで19時間にわたって振盪した。次にブロックを25℃に冷却し、振盪機から取り出し、上に説明したのと同じ手続きで処理した。樹脂を濾過し、NMP(5×)で洗浄した。バルブを閉じることにより、ブロックは次のステップの準備が整った。
【0098】
モノクロロ-1,3,5-トリアジンへの2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの2回目の添加
DIEA(82μl、0.5ミリモル)をNMP(1.0ml)に溶かした溶液を調製し、バルブを閉じた状態でウエルの中に入れた。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(65mg、0.5ミリモル)をバイアル(4.0ml)に入れ、NMP(1.0ml)を添加して溶液にした。この2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン溶液(1ml)をウエルの中に注ぎ、ブロックを振盪機の上に置き、80℃にて400rpmで23時間にわたって振盪した。次にブロックを25℃に冷却し、振盪機から取り出し、すでに説明したのと同じ手続きで処理した。樹脂を濾過し、NMP(5×)、ジクロロメタン(1×)、メタノール(1×)、ジクロロメタン(1×)、メタノール(1×)、ジクロロメタン(1×)で洗浄した。バルブを閉じることにより、ブロックは次のステップの準備が整った。
【0099】
樹脂の開裂
5%トリフルオロ酢酸をジクロロエタンに溶かした溶液を調製し、2mlをウエルに添加した。ブロックにキャップをし、振盪機の上に置き、室温にて400rpmで1時間にわたって振盪した。次に、ブロックを真空回収ベース・セットの上に置いた。樹脂を濾過し、清潔な深い96ウエル・プレート#1の中に入れた。新しい清潔な深い96ウエル・プレート#2を真空回収セットの中に入れた。次にジクロロエタン(1.0ml)をウエルに添加し、バルブを閉じ、メタノール(1.0ml)を添加した。ブロックを振盪機の上で5分間にわたって振盪し、樹脂を濾過して深いウエル・プレート#2の中に入れた。新しい清潔な深い96ウエル・プレート#3を真空回収セットの中に入れ、メタノール(1.0ml)をウエルに添加した。次に、深い96ウエル・プレート(1と2)をジーンヴァック装置の中で蒸発させた。プレート#1をLC/MSによって分析した。プレートをまとめてジーンヴァック装置の中に入れ、再び蒸発させた。プレートをHPLC/ジルソンの上に置いて精製した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD)δ7.64〜6.67 (m, 18H)、3.65 (m, 4H)、3.48 (m, 2H)、2.99〜2.79 (m, 6H)、1.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 698.2 (MH+)、720.2 (M+Na);HPLC(方法2):4.4分。
【0100】
実施例4:化合物2の合成
アントラニル酸メチルと2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンから出発して上記の化合物を実施例1のようにして調製した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD)δ8.82〜6.69 (m, 16H)、3.86 (s, 6H)、3.63〜3.49 (m, 8H)、2.73 (s, 4H);LRMS (ESI):m/z 787.2 (MH+) ;HPLC(方法1):8.2分。
【0101】
実施例5:化合物3の合成
実施例1の手続きを改変することによって上記の化合物を調製した。塩化シアヌル(4g、21.7ミリモル)を0℃のアセトン(25ml)と氷(10ml)に懸濁させた懸濁液に、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(2.9g、21.5ミリモル)をTHF(15ml)とアセトン(10ml)と水(10ml)に溶かした溶液を一滴ずつ添加した。添加が終了した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(40ml)を用いて溶液のpHを調節して3から7にした。0℃にて2時間にわたって反応させた後、溶液を水(10ml)と酢酸エチル(20ml)で希釈した。2つの層が分離し、水層を酢酸エチル(25ml)で抽出した。1つにまとめた有機層をブライン(25ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させると、明るい黄色の固形物が得られた(5.3g、86%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。このジクロロトリアジン(1.21g、4.2ミリモル)を室温にてアセトン(25ml)に溶かした溶液に、0.5Mのアンモニアをジオキサン(25ml、12.7ミリモル)に溶かした溶液を添加し、得られた溶液を密封した試験管の中で50℃にて60時間にわたって撹拌した。次に溶液を減圧下で濃縮した。粗残留物を最初にバイオテージ(登録商標)40Mカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=9:1から0:1へ)上で精製した後、半分離用HPLC(両端にキャップをしたC18カラム、250×10mm、5ミクロン、H2O/0.05%のトリフルオロ酢酸を含むCH3CNを20分間かけて7:3から1:9へ)上で精製すると、クロロトリアジンが白色の固形物として得られた(70mg、6%)。
【0102】
塩化シアヌル(3g、16.3ミリモル)を0℃のアセトン(30ml)と氷(15ml)に懸濁させた懸濁液に、アントラニル酸メチル(2.46g、16.3ミリモル)をアセトン(10ml)に溶かした溶液を一滴ずつ添加した。添加が終了したとき、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(40ml)を用いて溶液のpHを調節して1から8.5にした。室温にて20時間にわたって反応させた後、沈殿物を濾過して取り出し、水で数回洗浄し、真空中で乾燥させると、灰白色の固形物が得られた(4.51g、93%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。このジクロロトリアジン(2.0g、6.7ミリモル)を室温にてTHF(55ml)に溶かした溶液に、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミン(918mg、6.7ミリモル)をアセトン(5ml)と水(2ml)に溶かした溶液を添加した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。50℃にて5時間にわたって反応させた後、溶液を水と酢酸エチルで希釈した。水層を酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。有機層をブライン(20ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。灰白色の固形物が得られた(2.45g、92%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。このジクロロトリアジン(350mg、0.9ミリモル)を室温にてTHF(9ml)に溶かした溶液に、エチレンジアミン(584μl、8.7ミリモル)を添加し、次いでトリエチルアミン(1.22μl、8.7ミリモル)を添加した。55℃にて20時間にわたって反応させた後、溶液をメタノール(10ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)25Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=1:1からAcOEt /MeOH=3:7へ)上で精製すると、第一級アミンが白色の固形物として得られた(227mg、62%)。このアミン(37mg、87マイクロモル)をTHF(1.5ml)に溶かした溶液に、2-アミノ-4-クロロ-6-[2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミノ]-1,3,5-トリアジン(30mg、79マイクロモル)をTHF(1.5ml)に溶かした溶液を添加し、次いでジイソプロピルエチルアミン(50μl、280マイクロモル)を添加した。50℃にて48時間にわたって反応させた後、溶液をメタノール(10ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をまず最初にバイオテージ(登録商標)12Mカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=8:2 からAcOEt /MeOH=9:1へ)上で精製した後、半分離用HPLC(両端にキャップをしたC18カラム、250×10μm、5ミクロン、H2O/0.05%のトリフルオロ酢酸を含むCH3CNを20分間かけて7:3から1:9へ)上で精製すると、化合物3が白色の固形物として得られた。生成物の収量は17mg(33%);1H NMR (300MHz, CD3OD):δ8.60〜6.55 (m, 12H)、3.90 (s, 3H)、3.70〜3.39 (m, 8H)、2.78〜2.66 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 653.2 (MH+);HPLC(方法1):4.68分。
【0103】
実施例6:化合物4の合成
アニリンとN-1-t-ブチルオキシカルボニル-2-(4-アミノフェニル)エチルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。HCl/ジオキサンの混合物を室温にて3時間使用することにより、Boc基を除去した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.59〜7.21 (m, 16H)、3.74〜3.69 (m, 4H)、3.25〜2.94 (m, 8H);LRMS (ESI):m/z 669.4 (MH+);HPLC(方法2):4.2分。
【0104】
実施例7:化合物5の合成
o-トルイジンと2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.11 (m, 2H)、7.02 (m, 4H)、6.97 (m, 6H)、6.66 (d, J=7Hz, 4H)、3.47 (m, 8H)、2.70 (m, 4H)、2.24 (s, 6H);LRMS (ESI):m/z 699 (MH+)、721 (M+Na);HPLC(方法2):4.8分。
【0105】
実施例8:化合物6の合成
アニリンと4-アミノベンジルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。明るいピンク色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.72〜6.61 (m, 18H)、4.39 (s, 4H)、3.55 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 663.2 (M+Na);HPLC(方法2):3.6分。
【0106】
実施例9:化合物7の合成
実施例1の手続きを改変することによって上記の化合物を調製した。1,3-フェニレンジアミン(8.2g、75.3ミリモル)を25℃にてCH2Cl2(21ml)に懸濁させた懸濁液に、炭酸ジ-t-ブチル(2.7g、12.6ミリモル)をCH2Cl2(130ml)に溶かした溶液を1時間かけて一滴ずつ添加した。次にこの溶液を室温にて一晩にわたって撹拌した。18時間にわたって反応させた後、減圧下で溶液を蒸発させて乾燥させた。残留した油を酢酸エチル(50ml)に溶かし、2Nの炭酸ナトリウム溶液(50ml)で洗浄した。水層を酢酸エチル(2×50ml)で抽出した。1つにまとめた有機層をブライン(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させた。粗残留物をバイオテージ(登録商標)40Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=95:5 から1:1へ)上で精製すると、N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンが灰白色の固形物として得られた(2.4g、93%)。塩化シアヌル(2.2g、11.7ミリモル)を0℃のアセトン(15ml)と氷(6ml)に懸濁させた懸濁液に、N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミン(2.4g、11.6ミリモル)をアセトン(7ml)に溶かした溶液を15分間かけて一滴ずつ添加した。添加が終了したとき、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(25ml)を用いて溶液のpHを調節して1から7にした。白色の沈殿物を濾過し、水で完全に洗浄した後、高真空下で乾燥させた。すると2,4-ジクロロ-6-(3-N-1-t-ブチルオキシカルボニルアミノフェニル)アミノ-1,3,5-チロアジンが灰白色の固形物として得られた(4.1g、99%)。この生成物をそれ以上精製せずに次のステップで使用した。この化合物(400mg、1.12ミリモル)を室温にてTHF(5ml)に溶かした溶液に、エチレンジアミン(38μl、0.562ミリモル)を添加し、次いでジイソプロピルエチルアミン(345μl、1.97ミリモル)を添加した。溶液を20時間にわたって25℃にした後、メタノール(5ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)25Mカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=8:2 から4:6へ)上で精製すると、N,N’-エチレンジアミン ジ[4-クロロ-6-(3-N-1-t-ブチルオキシカルボニルアミノフェニル)-アミノ]-1,3,5-トリアジンが白色の固形物として得られた(314mg、80%)。この化合物(85mg、0.1ミリモル)を室温にてTHF(3ml)に溶かし、2-(4-アミノフェニル)エチルアミン(100mg、0.7ミリモル)をTHF(1ml)に溶かした溶液に添加した後、トリエチルアミン(102μl、0.7ミリモル)に添加した。溶液を20時間にわたって60℃にした後、メタノール(2ml)で希釈し、減圧下で濃縮した。粗残留物をバイオテージ(登録商標)25Sカラム(シリカ、ヘキサン/AcOEt=8:2 から2:8へ)上で精製すると、N,N’-エチレンジアミン ジ[4-(2-[4-アミノフェニル]エチルアミノ)-6-(3-N-t-ブチルオキシカルボニルアミノフェニル)アミノ]-1,3,5-トリアジンが白色の固形物として得られた(97mg、89%)。この物質(97mg、0.1ミリモル)を室温にてCH2Cl2(1.5ml)に溶かした溶液に、4NのHClをジオキサン(1.5ml)に溶かした溶液を添加した。溶液を3時間にわたって25℃にした後、1,2-ジクロロエタン(10ml)で希釈し、減圧下で濃縮し、高真空下で20時間にわたって乾燥させた。黄色の固形物(74mg、かなりの収率);1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.10〜7.10 (m, 16H)、3.80〜3.60 (m, 8H)、2.99 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 699.2 (MH+);HPLC(方法2):2.8分。
【0107】
実施例10:化合物8の合成
2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンとL-チロシンメチルエステルから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。明るいピンク色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.54〜6.65 (m, 18H)、4.75 (m, 2H)、3.75〜3.40 (m, 14H)、3.18〜2.86 (m, 8H);LRMS (ESI):m/z 921.2 (MH+);HPLC(方法2):5.1分。
【0108】
実施例11:化合物9の合成
50℃にしたメタノール/水(4:1)の混合物の中で過剰な水酸化リチウムを一晩にわたって用いて化合物2を鹸化することにより、上記の化合物を調製した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ9.00〜6.50 (m, 16H)、3.70〜3.45 (m, 8H)、2.90〜2.75 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 759.20 (MH+);HPLC(方法2):7.1分。
【0109】
実施例12:化合物10の合成
(R)-2-フェニルグリシンメチルエステルと2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。実施例11に記載したようにして鹸化を行なった。白色の固形物;1H NMR (300MHz, CD3OD):δ7.48〜7.32 (m, 10H)、7.05〜6.89 (m, 4H)、6.70 (m, 4H)、5.45 (m, 2H)、3.53 (m, 8H)、2.66 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 787.2 (MH+)、785.2 (M-H);HPLC(方法1):6.5分。
【0110】
実施例13:化合物11aの合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにフェノールを用い、炭酸水素ナトリウムの代わりに水素化ナトリウムを用い、ジイソプロピルアミンの代わりに炭酸ナトリウムを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (300MHz, CD3OD):δ7.45〜6.95 (m, 12H)、6.80〜6.61 (m, 6H)、3.48 (m, 8H)、2.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 673.2 (MH+);HPLC(方法1):8.4分。
【0111】
実施例14:化合物11bの合成
チオフェノールと2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンから出発して実施例1のようにして上記の化合物を調製した。淡いオレンジ色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.10〜7.64 (m, 10H)、6.40〜7.00 (m, 8H)、2.92〜3.50 (m, 8H)、2.29〜2.70 (m, 10H)。LRMS (ESI):m/z 705 (MH+)、727 (M+Na);HPLC(方法2):7.9分。
【0112】
実施例15:化合物12の合成
室温にてDMFの中で過剰なヨウ化2-クロロピリジニウムとトリエチルアミンを用いて化合物1と4-(ジメチルアミノ)ブチル酸ヒドロクロリドを一晩にわたってカップリングさせることにより、上記の化合物を調製した。この化合物を半分離用HPLC(両端にキャップをしたC18カラム、250×10μm、5ミクロン、H2O/0.05%のトリフルオロ酢酸を含むCH3CNを25分間かけて4:2から3:2へ)上で精製した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.52〜7.04 (m, 18H)、3.70〜3.39 (m, 12H)、3.00〜2.75 (m, 8H)、2.92 (s, 9H)、2.85 (s, 3H)、2.11 (m, 4H);19F NMR (400MHz, CD3OD):δ-77.5;定量的19F NMR (400MHz, CD3OD、同軸挿入トリフルオロトルエン):8TFA;LRMS (ESI):m/z 897 (MH+)、919 (M+Na);HPLC(方法2):3.8分。
【0113】
実施例16:化合物13の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを最初に2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンに添加し、次いで炭酸水素ナトリウムの代わりに水素化ナトリウムを用いてリンカーである2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを添加した点が異なっている。側鎖エタノールアミンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニルエチレンジアミンを用いた。5%トリフルオロ酢酸を含むジクロロメタン(0℃)を用いてBoc基を除去した。白色の粉末;1H NMR (300MHz, CD3OD):δ7.59 (m, 6H)、7.21 (m, 8H)、7.05 (d, 1H, J=8Hz)、6.91 (d, 1H, J=8Hz)、6.71 (d, 1H, J=8Hz)、6.67 (d, 1H, J=8Hz)、3.72 (m, 4H)、3.59 (d, 1H, J=8Hz)、3.39 (m, 1H)、3.22 (m, 2H)、2.97 (m, 2H)、2.80 (t, 1H, J=7Hz)、2.70 (t, 1H, J=7Hz);19F NMR (300MHz, CD3OD):δ-74.8;定量的19F NMR (400MHz, CD3OD、同軸挿入トリフルオロトルエン):3TFA;LRMS (ESI):m/z 671 (MH+)、654 (M-NH2);HPLC(方法2):4.5分。
【0114】
実施例17:化合物14の合成
化合物13を1-H-ピラゾール-1-カルボキサミジンヒドロクロリドと反応させることにより、上記の化合物を調製した。実施例16に記載したようにしてBoc基を除去した。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.56 (m, 4H)、7.37 (m, 4H)、7.21 (m, 6H)、7.03 (d, 1H, J=8Hz)、6.90 (d, 1H, J=8Hz)、6.70 (d, 1H, J=8Hz)、6.65 (d, 1H, J=8Hz)、3.65 (m, 6H)、3.45 (m, 2H)、2.97 (m, 2H)、2.80 (t, 1H, J=8Hz)、2.68 (t, 1H, J=8Hz);19F NMR (400MHz, CD3OD):δ-77.8;定量的19F NMR (400MHz, CD3OD、同軸挿入トリフルオロトルエン):2TFA;LRMS (ESI):m/z 713 (MH+)、696 (M-NH2);HPLC(方法2):4.8分。
【0115】
実施例18:化合物15の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを最初に2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンに添加し、次いで側鎖N-1-アセチルエチレンジアミンを添加した点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.77〜7.49 (m, 6H)、7.24 (t, 4H, J=7.9Hz)、7.12 (d, 2H, J=8.4Hz)、7.04 (d, 2H, J=8.4Hz)、6.96 (m, 2H)、6.70 (d, 2H, J=8.4Hz)、3.66〜3.46 (m, 8H)、2.88〜2.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 712.2 (MH+);HPLC(方法2):5.0分。
【0116】
実施例19:化合物18の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを最初に2,4-ジクロロ-6-フェニルアミノ-1,3,5-トリアジンに添加し、次いで2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを添加した点が異なっている。N-1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジンを用いてトリアジン環上の最終的な置換を行ない、実施例16に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.58 (m, 6H)、7.39〜6.95 (m, 10H)、6.69 (m, 2H)、4.08 (m, 4H)、3.74〜3.52 (m, 4H)、2.96〜2.75 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 696.2 (MH+);HPLC(方法2):4.7分。
【0117】
実施例20:化合物19aの合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.05〜7.11 (m, 16H)、3.94〜3.48 (m, 8H)、3.00 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 700.2 (MH+);HPLC(方法2):3.2分。
【0118】
実施例21:化合物19bの合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用い、エタノールアミンの代わりに1,2-ジアミノエタンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.00〜7.60 (m, 16H)、3.40〜3.70 (m, 6H)、3.00〜3.20 (m, 2H)、2.70〜2.90 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 700 (MH+);HPLC(方法3):1.3分。
【0119】
実施例22:化合物20の合成
アニリンとエタノールアミンから出発して実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを用いた。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.61 (m, 6H)、7.25 (m, 4H)、7.14 (d, 2H, J=8.5Hz)、7.07 (d, 2H, J=8.5Hz)、6.98 (m, 2H)、6.70 (m, 2H)、3.69 (m, 2H)、3.55 (m, 6H)、2.83 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 671.2 (MH+);HPLC(方法2):5.1分。
【0120】
実施例23:化合物21の合成
実施例16のようにして上記の化合物を調製した。側鎖エチレンジアミンの代わりにエタノールアミンを用いた。白色の固形物;1H NMR (500MHz, CD3OD):δ7.58〜6.61 (m, 18H)、4.51 (m, 2H)、3.84 (m, 2H)、3.63 (m, 4H)、2.82 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 673.2 (MH+)、695.2 (M+Na);HPLC(方法2):9.7分。
【0121】
実施例24:化合物22の合成
実施例3に記載した固相手続きを利用し、エチレンジアミンと2-メトキシアニリンから出発して上記の化合物を調製した。LRMS (ESI):m/z 701.2 (MH+)、722.4 (M+Na);HPLC(方法2):4.2分。
【0122】
実施例25:化合物23の合成
実施例3に記載した固相手続きを利用し、1,4-ジアミノブタンと2-メトキシアニリンから出発して上記の化合物を調製した。LRMS (ESI):m/z 729.2 (MH+)、751.2 (M+Na);HPLC(方法2):4.9分。
【0123】
実施例26:化合物24の合成
実施例3に記載した固相手続きを利用し、1,3-ジアミノプロパンとアニリンから出発して上記の化合物を調製した。LRMS (ESI):m/z 684.4 (MH+)、706.2 (M+Na);HPLC(方法2):4.4分。
【0124】
実施例27:化合物25の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、エチレンジアミン・リンカーの代わりに1,3-ジアミノプロパンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.72〜7.48 (m, 4H)、7.20 (m, 4H)、7.08 (m, 6H)、6.66 (m, 4H)、3.46 (m, 8H)、2.71 (m, 4H)、1.74 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 685.2 (MH+);HPLC(方法2):6.0分。
【0125】
実施例28:化合物26の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに4-アミノメチルピペリジンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.60 (m, 4H)、7.24 (t, 4H, J=7.9Hz)、6.95 (m, 2H)、3.69 (t, 4H, J=5.8Hz)、3.50 (t, 4H, J=5.8Hz)、3.31 (m, 4H)、2.85 (t, 2H, J=12.4Hz)、1.95 (m, 1H)、1.81 (m, 2H)、1.20 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 573.2 (MH+);HPLC(方法2):4.1分。
【0126】
実施例29:化合物27の合成
実施例22のようにして上記の化合物を調製した。ただし、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに4-アミノベンジルアミンを用い、側鎖エタノールアミンの代わりにヒスタミンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.66 (m, 7H)、7.22 (m, 6H)、7.08〜6.65 (m, 7H)、4.53 (s, 2H)、3.63 (t, 2H, J=7.1Hz)、3.53 (m, 2H)、2.89 (t, 2H, J=7.1Hz)、2.77 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 707.2 (MH+);HPLC(方法2):4.4分。
【0127】
実施例30:化合物28の合成
実施例9のようにして上記の化合物を調製した。ただし、、N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンの代わりにアニリンを用い、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに1,4-フェニレンジアミンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.72〜7.51 (m, 8H)、7.26 (t, 4H, J=7.9Hz)、7.06 (d, 4H, J=7.1Hz)、6.98 (t, 2H, J=7.1Hz)、6.71 (t, 4H, J=8.2Hz)、3.57 (t, 4H, J=7.3Hz)、2.82 (t, 4H, J=7.3Hz);LRMS (ESI):m/z 719.2 (MH+);HPLC(方法1):9.0分。
【0128】
実施例31:化合物29の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用い、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりにピペラジンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。茶色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.46〜7.30 (m, 14H)、6.98 (m, 2H)、4.00〜3.85 (m, 8H)、3.80〜3.75 (m, 4H)、3.01 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 725.4 (MH+);HPLC(方法2):3.4分。
【0129】
実施例32:化合物30の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用い、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに4-アミノメチルピペリジンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.78〜7.07 (m, 16H)、3.83〜3.56 (m, 6H)、3.14〜2.92 (m, 8H)、2.17〜1.75 (m, 5H);LRMS (ESI):m/z 753.4 (MH+);HPLC(方法2):3.2分。
【0130】
実施例33:化合物31の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、、アニリンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンを用い、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに1,6-ジアミノヘキサンを用いた点が異なっている。実施例9に記載したようにしてBoc基を除去した。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.85〜7.06 (m, 16H)、3.74 (m, 4H)、3.48 (m, 4H)、3.01 (m, 4H)、1.68 (m, 4H)、1.47 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 755.2 (MH+)、777.2 (M+Na);HPLC(方法3):1.4分。
【0131】
実施例34:化合物32の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに4-アミノメチルピペリジンを用いた点が異なっている。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.66〜6.74 (m, 18H)、3.64 (m, 4H)、3.09〜2.78 (m, 10H)、2.04 (m, 2H)、1.88 (m, 3H);LRMS (ESI):m/z 723.2 (MH+);HPLC(方法2):4.1分。
【0132】
実施例35:化合物33の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにN-1-t-ブチルオキシカルボニルピペラジンを用いた点が異なっている。実施例16に記載したようにしてBoc基を除去した。明るい黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.60 (m, 4H)、7.25 (m, 4H)、6.98 (m, 4H)、6.68 (d, 2H, J=8.2Hz)、3.83 (m, 8H)、3.70 (t, 2H, J=5.6Hz)、3.52 (m, 6H)、2.76 (t, 4H, J=6.3Hz);LRMS (ESI):m/z 620.2 (MH+);HPLC(方法2):4.3分。
【0133】
実施例36:化合物34の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに5-アミノ-2-メチルベンジルアミンを用いた点が異なっている。明るい黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.75〜6.92 (m, 15H)、6.64 (d, 2H, J=8.0Hz)、4.52 (s, 2H)、3.68〜3.41 (m, 6H)、2.73 (m, 2H)、2.30 (s, 3H);LRMS (ESI):m/z 670.2 (MH+);HPLC(方法2):4.4分。
【0134】
実施例37:化合物35の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに3-アミノベンジルアミンを用いた点が異なっている。オレンジ色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.75〜6.64 (m, 18H)、4.37 (s, 2H)、3.77〜3.39 (m, 6H)、2.79 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 656.2 (MH+);HPLC(方法3):2.4分。
【0135】
実施例38:化合物36の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-アミノフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりにピペラジンを用いた点が異なっている。ピンク色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.75〜6.68 (m, 18H)、3.98〜3.65 (m, 16H)、2.77 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 695.2 (MH+);HPLC(方法3):2.2分。
【0136】
実施例39:化合物37の合成
実施例2のようにして上記の化合物を調製した。ただし、エタノールアミンの代わりに2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに2-アミノベンジルアミンを用いた点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.62〜6.60 (m, 22H)、4.44〜4.38 (m, 2H)、3.53〜3.47 (m, 4H)、2.80〜2.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 733.2 (MH+);HPLC(方法2):6.5分。
【0137】
実施例40:化合物38の合成
実施例9のようにして上記の化合物を調製した。ただし、N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンの代わりにアニリンを用い、2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンを用い、リンカーであるエチレンジアミンの代わりに1,3-フェニレンジアミンを用いた点が異なっている。明るい黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.61 (m, 4H)、7.29〜6.92 (m, 14H)、6.69 (d, 4H, J=7.4Hz)、3.52 (t, 4H, J=7.2Hz)、2.79 (t, 4H, J=7.2Hz);LRMS (FAB+):m/z 719.4 (MH+);LRMS (ESI):m/z 719.2 (MH+);HPLC(方法1):8.6分。
【0138】
実施例41:化合物39の合成
実施例1のようにして上記の化合物を調製した。ただし、モノクロロトリアジンを最初に(R)-フェニルグリシノールとトリエチルアミンで処理し、得られた生成物を水素化ナトリウムで処理した点が異なっている。白色の固形物;1H NMR (500MHz, CD3OD):δ7.69〜6.61 (m, 23H)、5.15 (m, 1H)、3.96〜3.37 (m, 6H)、2.89 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 748.2 (MH+);HPLC(方法1):8.8分。
【0139】
実施例42:化合物40の合成
実施例3に記載した固相手続きを利用し、アニリンとエチレンジアミンから出発して上記の化合物を調製した。LRMS (ESI):m/z 670.4 (MH+)、692.2 (M+Na);HPLC(方法2):4.2分。
【0140】
実施例43:化合物41の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンとp-キシレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにアンモニア・ガスを用いた。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.83 (m, 2H)、7.69 (m, 2H)、7.41 (m, 6H)、7.12 (m, 2H)、4.63 (m, 4H);19F NMR (376MHz, CD3OD、同軸挿入トリフルオロトルエン):2TFA;LRMS (ESI):m/z 537.4 (MH+)、559.2 (M+Na);HPLC(方法5):4.1分。
【0141】
実施例44:化合物42の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンから出発し、実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに4-アミノベンジルアミンを用いた。淡い黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.10〜7.87 (m, 1H)、7.86〜7.70 (m, 4H)、7.69〜7.58 (m, 2H)、7.57〜7.40 (m, 5H)、7.20〜7.06 (m, 3H)、4.74 (s, 2H)、3.79〜3.71 (m, 2H)、3.68〜3.56 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 658 (MH+)、680 (M+Na);HPLC(方法5):5.7分。
【0142】
実施例45:化合物43の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンから出発し、実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに3-アミノベンジルアミンを用いた。淡い黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.06〜7.90 (m, 1H)、7.85〜7.67 (m, 4H)、7.66〜7.57 (m, 2H)、7.56〜7.38 (m, 5H)、7.20〜7.08 (m, 3H)、4.77 (s, 2H)、3.76〜3.72 (m, 2H)、3.68〜3.56 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 658 (MH+)、680 (M+Na);HPLC(方法5):5.7分。
【0143】
実施例46:化合物44の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンから出発し、実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりにピペラジンを用いた。灰白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.10〜7.82 (m, 3H)、7.80〜7.65 (m, 2H)、7.63〜7.57 (m, 2H)、7.52 (t, J=8.2Hz, 2H)、7.31〜7.19 (m, 1H)、7.11 (d, J=8.0Hz, 2H)、4.09 (s, 8H)、3.81〜3.70 (m, 2H)、3.60〜3.53 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 622 (MH+)、644 (M+Na);HPLC(方法5):5.9分。
【0144】
実施例47:化合物45の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンとアンモニアから出発し、実施例2のようにして上記の化合物を調製した。2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに3-アミノベンジルアミンを用い、リンカーである2-(4-アミノフェニル)エチルアミンの代わりに4-アミノベンジルアミンを用いた。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.85〜7.24 (m, 14H)、7.14 (m, 2H)、4.72 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 628.4 (MH+)、651.2 (M+Na);HPLC(方法4):2.7分。
【0145】
実施例48:化合物46の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,3-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンとアンモニア・ガスを用いた。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.69 (m, 3H)、7.42 (m, 6H)、7.08 (m, 3H)、3.73 (m, 2H)、3.64 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 553.4 (MH+)、575.6 (M+Na);HPLC(方法4):2.0分。
【0146】
実施例49:化合物47の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,4-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用いた。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.74 (m, 2H)、7.69 (m, 6H)、7.53 (m, 2H)、7.19 (m, 2H)、3.77 (m, 4H)、3.64 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 597.4 (MH+)、619.6 (M+Na);HPLC(方法4):2.3分。
【0147】
実施例50:化合物48の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンとp-キシレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりに4-アミノベンジルアミンを用いた。黄色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.75〜7.23 (m, 18H)、7.38 (m, 2H)、4.71 (m, 8H);LRMS (ESI):m/z 747.4 (MH+) ;HPLC(方法4):3.5分。
【0148】
実施例51:化合物49の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,3-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにエタノールアミンを用いた。白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.71 (m, 3H)、7.48 (m, 6H)、7.11 (m, 3H)、3.74 (m, 4H)、3.65 (m, 4H);LRMS (ESI):m/z 597.2 (MH+) ;HPLC(方法4):2.2分。
【0149】
実施例52:化合物50の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,3-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにセリノールを用いた。茶色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ8.20〜7.00 (m, 12H)、3.75 (m, 8H)、3.64 (m, 2H);LRMS (ESI):m/z 657.4 (MH+) ;HPLC(方法5):4.5分。
【0150】
実施例53:化合物51の合成
N-1-t-ブチルオキシカルボニル-1,3-フェニレンジアミンと1,3-フェニレンジアミンから出発し、方法B(スキーム1)によって上記の化合物を調製した。2-(4-ヒドロキシフェニル)エチルアミンの代わりにアンモニア・ガスを用いた。灰白色の固形物;1H NMR (400MHz, CD3OD):δ7.71 (m, 3H)、7.42 (m, 6H)、7.11 (m, 3H);LRMS (ESI):m/z 509.4 (MH+)、531.4(M+Na);HPLC(方法4):1.7分。
【0151】
実施例54:化合物がプロテインAを模倣する能力の競合プロテインA結合ELISAによる測定
上に説明したように、このアッセイでは、例示した化合物がプロテインAを模倣する能力を評価する。このような化合物は、ヒトIgGのFc部分と結合することができる。そのことは、ヒトIgGに対するプロテインAの結合が抑制されることで確認される。競合プロテインA結合ELISAアッセイを96ウエルのプレートであるマクシソープの表面で実施し、プレート底部へのプロテインAの結合を増大させた。ウエルを100μlのプロテインA(0.8μg)でコーティングし、4℃にて一晩にわたってインキュベートした。インキュベーションの後、結合しなかったプロテインAをリン酸緩衝溶液(PBS)で3回洗浄することによって除去した。次にプレートをウエル1つにつき100μlの2%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液とともに37℃にて1時間にわたってインキュベートすることにより、タンパク質の非特異的な結合を阻止した。インキュベーションの後、プレートをPBSで3回洗浄した。50μlの化合物またはプロテインAをPBSまたはPBS-20%DMSOの中で希釈して適切な濃度にした後、ウエルに添加し、次いで50μlのペルオキシダーゼ共役ヒトIgG(HPR-IgG)を添加した。37℃にて1時間にわたってインキュベートした後、プレートをPBSで3回洗浄し、結合しなかったHPR-IgGを除去した。結合したHPR-IgGは、100μlの2,2'-アジノ-ジ[3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸]ジアンモニウム塩結晶(ABTS)溶液とともに室温にて暗所で20分間にわたってインキュベートすることによって検出した。次にプレートを、EL800汎用マイクロプレート読み取り機(バイオ-テック社)を用いて405nmで読み取った。データをマイクロソフト社のエクセルで分析し、プリズム・ソフトウエアを用いてプロテインAの結合が50%抑制される化合物の濃度(IC50)を計算した。
【0152】
表1に、競合プロテインA結合ELISAアッセイで調べた化合物のIC50を示してある。このアッセイは、PBSとPBS-20%DMSOの中での並行分析(side by side analysis)からなる。DMSOを使用したのは、いくつかの化合物について溶解度を大きくするためである。これらのデータは、IgGのFc部分へのプロテインAの結合を本発明の化合物が抑制する能力を示している。
【0153】
【表1】
【0154】
表2は、競合ELISAアッセイにおいて可溶性プロテインAと比べて強力だった4つのプロテインA模倣化合物のIC50をまとめたものである。この結果は、ヒトIgGへのプロテインAの結合をプロテインA模倣化合物が抑制する能力も示している。
【0155】
【表2】
【0156】
実施例55:免疫複合体の食作用に対する化合物の効果
このアッセイは、プロテインA模倣化合物がFITC-免疫複合体(IC)の取り込みを促進または抑制する能力を調べるために実施した。回転式振盪機の上で室温にてヒト血清アルブミン(HSA)-イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)をマウスIgG抗HSAと1:4の比(抗原1分子につき抗体4分子)で1時間にわたって混合することにより、FITC-ICを調製した。次に可溶性ICを、化合物またはプロテインAとともに、または化合物もプロテインAもなしで、10分間にわたってインキュベートした。この混合物をRAW264.7細胞に添加した後、37℃にて2時間にわたってインキュベートしてICの食作用を調べた。インキュベーションの後、細胞を冷たいPBS(5分間、1200rpm)の中で2回洗浄し、2%ホルムアルデヒドを含む500μlのPBSを用いて固定した。RAW264.7によって捕えられたFITCの信号はICの食作用を示しており、アルゴン・レーザーを用いたベクトン・コールター・カウンタでのフロー・サイトメトリー分析によってその信号を明らかにし、信号を530/30nmフィルタを通じて測定した。
【0157】
図1は、RAW264.7(マクロファージ様)細胞を用いたICの食作用に関する化合物1の投与量-応答曲線である。結果から、ICの食作用が、化合物1が0.4μM未満の濃度では対照と同程度であることがわかる。ICの食作用増大は、1、2、4μMの濃度で観察され、10μMと20μMでは抑制される(約20%)。ICの食作用は、化合物14とプロテインAでも起こった。ICの食作用抑制は、化合物14では20μMで約50%、プロテインAでは2μMと20μMで約50%である。
【0158】
実施例56:WEHI-13 VAR細胞系においてTNFαによって誘発されるアポトーシスに対する化合物の効果
TNFαによって誘発されるアポトーシスに対する化合物の効果を、WEHI-13 VAR細胞を用いた標準的な生物学的アッセイによって測定した。この細胞は、TNFαとアクチノマイシンDの存在下でインキュベートするとアポトーシスを起こす。2×104個のWEHI-13 VAR細胞を、1%ピルビン酸ナトリウムと10%FBSを補足したRPMIの中で37℃にて一晩にわたってインキュベートし、細胞の接着を調べた。次に(タンパク質の合成を抑制するため)細胞を1μg/mlのアクチノマイシンDと0.04nMのTNFαの存在下で、化合物とともに、または化合物なしで培養した。16〜24時間後、2mg/mlのMTT溶液を50μlそれぞれのウエルに添加し、プレートを37℃にて4時間にわたってインキュベートした。生き残った細胞だけがMTTを代謝してホルマザン塩を形成する。この塩は、570nmでの吸光度を測定することによって検出できる。インキュベーションの後、プレートをひっくり返して培地と死んだ細胞を除去した。150μlのDMSOを各ウエルに添加して反応を停止させるとともに、ホルマザン塩を可溶化した。EL800汎用マイクロプレート読み取り機(バイオ-テック社)で光学密度を読み取った。光学密度の低下は、TNFαによって細胞のアポトーシスが誘発されたことの直接的な証拠である。化合物と抗TNFα中和抗体の活性も比較した。負の値は、テストした化合物がその特定の濃度でアポトーシスを促進できなかったことを意味する。
【0159】
表3は、細胞をベースとしたTNFα感受性WEHI- VAR13細胞増殖アッセイにおいて調べた化合物のTNFα抑制(アポトーシス)率を示している。本発明の化合物は、30〜50%の範囲のTNFα抑制活性を示した。それに対してTNFα抗体は、90〜95%というTNFα抑制活性を示した。このデータは、本発明の化合物が、TNFα感受性WEHI- VAR13細胞に関してTNFαのアポトーシス活性を抑制する能力を持つことを示している。
【0160】
【表3】
【0161】
実施例57:p55 TNFα受容体(CD 120a)とp75 TNFα受容体(CD 120b)へのTNFαの結合に対する化合物の効果
化合物がTNFαに結合する能力、またはTNFαと対応する受容体(p55 TNFα受容体とp75 TNFα受容体)の相互作用を抑制する能力を調べた。ManciniらがBiochemical Pharmacology、第58巻、851〜859ページ、1999年に記載しているようにして、3通りの結合ELISAアッセイを実施した。96ウエルのプレートであるマクシソープをTNFαまたは受容体(1μg/ml)で4℃にて一晩にわたってコーティングした。インキュベーションの後、結合しなかったTNFα、p55 TNFα受容体、p75 TNFα受容体を除去し、プレートをPBSで3回洗浄した。次にプレートをウエル1つにつき100μlの2%BSA溶液とともに37℃にて1時間にわたってインキュベートし、タンパク質の非特異的結合を阻止した。インキュベーションの後、プレートをPBSで3回洗浄した。ビオチニル化した組み換えヒトTNFα p55受容体、ビオチニル化した組み換えヒトTNFαp75受容体、ビオチニル化した組み換えヒトTNFαのいずれかを、化合物の存在下または不在下でウエルに添加した。プレートを37℃にて1時間にわたってインキュベートした。インキュベーションの後、プレートをPBSで3回洗浄し、標識したp55受容体、標識したp75受容体、組み換えヒトTNFαのうちで結合しなかったものを除去した。100μlのアビジン-HRP(PBS-0.1%BSAの中に2000倍に希釈したもの)を各ウエルに添加し、37℃にて1時間にわたってインキュベートした。ウエル1つにつき200μlの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)を添加することにより、結合したp55受容体、p75受容体、組み換えヒトTNFαを15分間にわたって検出した。次に、EL800汎用マイクロプレート読み取り機(バイオ-テック社、ミシソーガ、カナダ国)を用いて655nmでプレートを読み取った。データをマイクロソフト社のエクセルで分析し、TNFαに対するp55またはp75の結合の抑制率、あるいはRI(p55)またはRII(p75)に対するTNFαの結合の抑制率として記録した。
【0162】
表4は、(プラスチックにコーティングした)TNFαへのTNFα RIとTNFα RIIの直接的結合の抑制、または(プラスチックにコーティングした)TNFα受容体へのTNFαの直接的結合の抑制に対する化合物の効果を示している。プラスチックをTNFαでコーティングすると、化合物は RI受容体とRII受容体がTNFαに結合するのを抑制しない。しかしプラスチックをその受容体でコーティングすると、TNFαがRI受容体とRII受容体に結合するのを化合物が抑制する程度は小さくなる。この結果は、抑制が、化合物がTNFα受容体にではなくTNFαに直接結合するために起こることを示唆している。20%未満という抑制率は、有意ではないと見なした。負の抑制率は、沈澱、またはTNFα受容体に対するTNFαの結合増加が原因となっている可能性がある。
【0163】
【表4】
【0164】
実施例58:マウスJ774A-1細胞系においてLPSによって誘発されるTNFαの産生に対する化合物の効果
LPSで刺激したJ774A-1細胞を利用し、TNFαの産生に対する化合物の効果をELISAによって測定した。J774A-1細胞を、LPSと化合物の存在下または不在下で培養した。細胞を37℃にて24時間にわたって培養した後、上清を回収し、ELISAにより、製造者(BDバイオサイエンシーズ社)が勧めるようにしてTNFαの濃度を測定した。データをマイクロソフト社のエクセルで分析し、TNFαの産生を50%抑制する化合物の濃度(IC50)をプリズム・ソフトウエアを利用して計算した。
【0165】
表5に、J774A-1細胞においてLPSによって誘発されるTNFαの産生に対する化合物の効果をまとめてある。
【0166】
【表5】
【0167】
実施例59:プロテインA模倣化合物が末梢血単核白血球(PBML)細胞の細胞毒性、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成に及ぼす効果
PBMLを健康なボランティアの末梢血から採取した。リンフォライト-ポリ(シーダーレーン社、ホーンビー、カナダ国)を用い、血液に対して勾配遠心分離を行なった。単核白血球を含む層を回収し、細胞をPBSで3回洗浄した。次に細胞を、10%FBS(ハイクローン社、ローガン、アメリカ合衆国)を補足したRPMI(ギブコ社、バーリントン、カナダ国)の中に懸濁させた。トリパンブルー排除試験によると、生存率は99%超であった。
【0168】
PBMLを1mlにつき細胞2×106個の割合で再び懸濁させた。100μlのPBML(細胞が2×105個)を96ウエルの微量滴定プレートの中で、化合物またはプロテインAの存在下または不在下で48時間にわたってインキュベートした。細胞は、そのままにするか、コンカナバリンA(ConA;T細胞)またはアメリカヤマゴボウのマイトジェン(PWM;B細胞)で刺激した。インキュベーションの後、6時間にわたり、細胞をMTTで処理する(細胞毒性)か、細胞のパルス標識を、1μCiの[3H]-チミジン(DNA合成)、[3H]-ウリジン(RNA合成)、[3H]-ロイシン(タンパク質合成)を用いて行なった。
【0169】
表6に、PBMLにおいてプロテインA模倣化合物が細胞毒性、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成に及ぼす効果を、プロテインAと比較してまとめてある。プロテインAは、DNA合成、RNA合成、タンパク質合成に対する効果がない。さらに、プロテインAは細胞毒性を誘導しない。細胞毒性は、ConAで刺激したPBMLと、マイトジェンで刺激したT細胞の増殖でだけ観察された。細胞毒性効果は、刺激なしのPBMLと、PWMというマイトジェンで刺激したB細胞の増殖では観察されず、刺激はプロテインA模倣化合物によって影響されなかった。さらに、化合物1、17、19aは、刺激なしのPBMLと刺激された(ConAとPWM)PBMLの両方でDNA合成とRNA合成を抑制する。しかし、化合物1および19aのみは、刺激なしのPBMLと刺激されたPBMLでタンパク質の合成を抑制する。これらの結果は、T細胞とB細胞の両方が抑制されることを示唆している。T細胞とB細胞は、自己免疫疾患に深く関与している。
【0170】
【表6】
【0171】
実施例60:全身性エリテマトーデス(SLE)-糸球体腎炎に対する化合物の効果
F1ハイブリッド交配NZB×NZWのニュージーランド・マウスは、ヒトSLEで見られる自己免疫異常のほとんどを発症し、SLE様免疫複合体(IC)を媒介とした糸球体腎炎で死ぬ。このマウスは、抗DNA(二本鎖と一本鎖)抗体と核抽出(NE)抗体が高力価になることに加え、SLEに関連した臨床症状(例えば白血球減少症、血小板減少症、蛋白尿、糸球体腎炎)を示す。このマウスは、年齢が3ヶ月以降に抗DNA抗体を産生し、7ヶ月の時点で抗DNA抗体応答がピークに達する。その後、おそらく進行性尿毒症の結果として抗DNA抗体の血清濃度が減少する。減少したことは、約150日(5ヶ月)の時点で血清に初めて現われる。マウスの生存を約250日目の時点で評価する。
【0172】
図2は、NZB×NZWマウスの死亡率に対する化合物1の効果を示している。化合物またはビヒクルを1週間に1回、18週目〜37週目にかけて静脈内投与した。処理を11週間にわたって停止し、48週目に対照群と化合物1群で再開した。結果は、37週目の時点で化合物1がNZB×NZWマウスの死亡率を低下させることを示している。化合物1は、症状と死亡の出現を45週まで遅らせもする。図3は、48週目〜51週目における蛋白尿を示している。化合物1で処理したマウスでタンパク質の量が5g/リットルよりも多いものの数は、疾患の動態(指数期)のために対照よりも多かった。
【0173】
しかしビヒクルまたは化合物を毎週静脈内投与する処理を続けて48週目〜52週目になると、化合物1は、ビヒクル単独の場合と比べて尿中のタンパク質濃度(5g/リットル)を減少させる(図3A)。さらに、尿中タンパク質の量のわずかな増加が、化合物1で処理したマウスで観察される(図3B)。これは、腎臓での濾過が改善したことを示している。
【0174】
二次的SLEの結果を図4に示してある。化合物は、NZB×NZWマウスの生存率の増加からわかるように、死亡を遅延させる。化合物1と9は、対照群と比べて生存率を35%まで増大させる。さらに、化合物1は生存を89週まで延ばす。それに対して対照では65週である。
【0175】
図5は、MRl/lprマウスの生存率に対する化合物の効果の一例である。このマウスも、SLE様症候群を自発的に発症する。MRl/lprマウスはホモfas突然変異を有するため、自己免疫が加速する。化合物は、MRl/lprマウスの生存率の増加からわかるように、死亡を遅延させる。さらに、化合物1と20は、生存率を対照群(10%)と比べて増大させる(40%)。
【0176】
実施例61:オキサゾロンによって誘発される遅延型過敏症(DRH)に対する化合物の効果
マウスにおいて、オキサゾロンによって誘発される遅延型過敏症(DRH)に対する化合物の効果を調べた。0日目、100μlのオキサゾロンを含む5%アセトンでマウスを感作した。0日目、1日目、2日目、マウスに、ビヒクル(対照)、メトトレキサート(MTX;正の対照/IV)またはヒドロコルチゾン(負の対照/PO)、化合物のいずれかを体重1kgにつき50mg〜300mgの割合で静脈内投与または経口投与するという処理を行なった。マウスの右耳の表面に50μlのオキサゾロンを塗布するというチャレンジを行なった(第1回目のチャレンジは3日目;第2回目のチャレンジは10日目)。耳の厚さを、4日目〜7日目と、11日目〜14日目に測定した。赤さとかさぶたの形成も観察した。マウスを14日目に安楽死させた。TDTH(CD4)細胞は、DTH応答の強度調節において重要な役割を果たしている。化合物は、T細胞の活性化と、DNA合成、および/またはRNA合成、および/またはタンパク質合成とを抑制することを通じてDTH応答に抑制効果を及ぼすことができる。
【0177】
図6と図7を見ると、どの化合物も、耳の厚さの低下からわかるように、炎症を有意に減少させる。また、単独の化合物19aは、メトトレキサートと同等の能力である。化合物は、赤さ、かさぶたの形成、耳の膨潤も減少させる。
【0178】
図8を見ると、化合物1と19aを0日目、1日目、2日目に経口投与した場合、耳の厚さの低下からわかるように、炎症が有意に減少する。また、単独の化合物1と19aは、体重1kgにつき150mgの濃度では化合物1がヒドロコルチゾンと同等の能力であり、体重1kgにつき300mgの濃度では化合物1と19aがヒドロコルチゾンと同等の能力である。化合物は、赤さ、かさぶたの形成、耳の膨潤も減少させる。
【0179】
実施例62:コラーゲンで誘発した関節炎に対する化合物の効果
0.1Mの酢酸に溶かして完全フロイント・アジュバント(CFA)の中で乳化したヘテロ(ウシ)II型コラーゲン(250μg)をメスのルイス・ラットに皮内投与することにより、コラーゲン誘発関節炎(CIA)を誘発させた。8日目、9日目、12日目、14日目、16日目にラットにビヒクル、メトトレキサート、化合物1のいずれかを静脈内注射するという処理を行なった。免疫化してから12〜15日後、80〜90%のラットに一般に滑膜炎が発症する。関節炎が現われた後、それぞれの手足を1週間に2〜3回調べた。関節炎の件数と程度の両方を評価した。件数は、研究期間中に関節炎の臨床的徴候があったラットの数として定義したのに対し、程度は、それぞれの手足を、膨潤の程度、関節周辺の浮腫の程度、こわばりの程度の増加に基づいて0〜4のスケールの整数(0=正常、4=最大;表7)に毎日点数化することによって定量化した。4本の手足すべての点数の合計を関節炎指数として計算した。ラット1匹当たりの可能な最大の点数は16点である。CIAは主に足に影響を与えるため、6〜8点という点数は重い関節炎であることを表わす。
【0180】
【表7】
【0181】
図9に示したように、免疫化してから12〜15日後、80〜90%のラットが重い滑膜炎を発症した。炎症は、16日目に最大になった。14日目までとそれ以降にメトトレキサート(正の対照)を静脈内注射することにより、関節炎の程度(関節炎指数)の有意な低下(50%)が観察された。より少ないが有意な関節炎指数の低下(20%)が、化合物1でも16日目〜21日目に観察された。
【0182】
実施例63:フロイント・アジュバントで誘発される関節炎(AIA)に対する化合物の効果
凍結乾燥させたミコバクテリウム・ブチリクムを鉱物油に懸濁させたものをメスのルイス・ラットの足に注射することにより、AIAを誘発させた。関節炎の進行状況を、アジュバントを注射してから3週間にわたってモニターした。炎症は、アジュバントを投与した3日後にピークに達する。免疫の活性化が14日目頃に現われる。アジュバントを注射する3日前、2日前、1日前にさまざまな量の化合物を経口投与または静脈内投与するとともに、実験に規定されているいろいろな投与計画に従い、アジュバントの注射後10日目〜21日目にさまざまな量の化合物を経口投与または静脈内投与した。あるいは-3日目から21日目まで、ラットに化合物19aを経口投与した。体重を記録した。いろいろな関節の関節炎指数(炎症(浮腫)の指数)、赤さ、こわばりを利用し、疾患の進行状況をモニターした。関節炎の程度は、くるぶしの直交する2つの直径を中外側面内と背腹方向面内においてノギスで測定することによって決定した。次に、幾何学の公式を利用し、関節の周囲長をミリメートル単位で計算した。関節炎の件数と程度の両方を評価した。件数は、研究期間中に関節炎の臨床的徴候を示したラットの数として定義した。
【0183】
図10に示したように、100%のラットが滑膜炎を発症した。炎症は、免疫化の3日後にピークに達する。-3日目、-2日目、-1日目、12日目、13日目、14日目、18日目、19日目、20日目にラットにいろいろな化合物を静脈内投与した。19日目までとそれ以降にメトトレキサート(正の対照)を静脈内注射することにより、関節炎の程度(炎症指数)の有意な低下(50%)が観察された。わずかだが有意な炎症指数の低下(20%)が、化合物1と19aでも3日目〜5日目に観察された。
【0184】
さらに、図11では、急性の炎症(1日目〜6日目)に対して化合物1と19aを静脈内注射することにより(-3日目、-2日目、-1日目、11日目、12日目、13日目)、関節炎の程度(炎症指数)の有意な低下(50%まで)が観察された。また、急性の炎症に対して化合物19aを経口投与することにより、対照およびメトトレキサートと比べて炎症が有意に抑制されることも観察された。慢性の炎症(12日目〜21日目)でも、炎症の強力かつ有意な抑制が、化合物19a(IV;12日目〜19日目、PO;16日目)とメトトレキサート(15日目〜21日目)によって観察された。
【0185】
化合物19aを毎日経口投与すると(-3日目〜21日目)、炎症の有意な抑制(50%まで)が13日目〜22日目に観察された(図12)。
【0186】
実施例64:化合物を利用した免疫グロブリンの結合と精製
すでに指摘したように、例示した化合物は、抗体と結合させ、その後その抗体をタンパク質混合物から単離・精製するための親和剤として用いることができる。このような精製は、化合物を、まず最初に直接的に、またはリンカーによって不溶性支持材料に共有結合させたときにうまく実現する。そこでエポキシドで活性化して(エピクロロヒドリンと)架橋させた6%アガロース・ビーズ101gを、6-アミノヘキサン酸(8.0g、61ミリモル)を水(101ml)に溶かした溶液で処理し、得られたスラリーのpHを2MのNaOHを用いて12に調節した。反応物をロッカー・プレート上で44時間にわたって振盪した。ビーズを濾過し、水(5×100ml)で洗浄した後、水(100ml)に再び懸濁させ、ホウ水素化ナトリウム(202mg、5.34ミリモル)を10MのNaOH(20ml)に溶かした溶液で処理した。反応物をロッカー・プレート上で25時間にわたって振盪した。ビーズを濾過し、濾液のpHが中性になるまで水(11×200ml)で洗浄し、ゲルのサンプルを凍結乾燥させて元素分析を行なった:C 47.366%;H 6.966%;N 0.990%。1分子の6-アミノヘキサン酸につき窒素原子が1個であることに基づくと、これは凍結乾燥させたゲル1gにつき707マイクロモルをロードすることに対応する。沈澱したゲル(4g)を、化合物19b(275mg、0.30ミリモル)を水(3.0ml)に溶かしてpHを4.5に調節した溶液で処理した。1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(400mg、2.09ミリモル)を水(3.0ml)に溶かしてpHを4.5に調節した溶液を反応物に添加し、それをロッカー・プレート上で21時間にわたって振盪した。得られたスラリーを濾過し、0.1MのHCl(3×10ml)と水(10×8ml)で洗浄すると、淡い茶色のゲルが得られた。(スピン・カラムに200μlを)充填したゲルを20mMのPBS(pH=7)の中で平衡させた。この方式では、例示した化合物を固体支持体に固定化したものを用いて抗体を精製することができる。
【0187】
固相結合では、例示した化合物が免疫グロブリンと結合する能力、および/または例示した化合物が免疫グロブリンを除去する能力、および/または例示した化合物が免疫グロブリンを精製する能力を評価する。例示した化合物を、直接に、または有機リンカーを用いて不溶性支持材料(樹脂)に結合させた。ゲル(例示した化合物が樹脂に結合している)をスピン・カラム上で包装した。包装した200μlのゲルを20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7)の中で平衡させた。全ヒトIgG(シグマ社、セントルイス、アメリカ合衆国;精製されたヒトIgGは、プールした正常なヒト血清から単離した)(図13のレーン2を参照のこと)をゲルを通過させ、フロースルー(図13のレーン3)を回収した。ゲルをカラム5容積分の20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7)と0.25MのNaClで洗浄した。洗浄分画(図13のレーン4を参照のこと)を回収した。結合したIgGを、低pHにて0.1Mのクエン酸(pH=3)を用いて溶離した。溶離したIgG(図13のレーン5を参照のこと)を回収し、次いでトリスHCl(pH=8)を用いて中和した。回収した分画に対してSDS-PAGE(12%)を実施し、クーマシー・ブルー染色によってタンパク質を可視化した。図13に示したように、化合物19bがアミノヘキサン酸リンカーによって樹脂に結合したときに全ヒトIgGの80%までが結合したてめ、そのIgGを精製した。
【0188】
この明細書で引用した特許、特許出願、他の出版物は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【0189】
請求項の意味内容ならびに請求項と法律的に同等な範囲に含まれるあらゆる変更と置換は、請求項の範囲に含まれる。“含む”という用語を用いた請求項により、その請求項の範囲に含まれる他の要素も含めることが可能になる。本発明は、“含む”の代わりに、“主としてなる”(すなわち他の要素が本発明の実施に実質的に影響を与えないのであれば、その要素を請求項の範囲に含めることができる)という表現や、“からなる”(すなわち請求項に列挙した要素だけが可能であり、通常は本発明に付随する不純物または重要でない活性は除かれる)という表現を用いた請求項によっても記述される。これら3つの表現のどれも、本発明で使用することができる。
【0190】
請求項に明示的に記載されている場合を除き、権利を主張する本発明がこの明細書で説明した要素に限定されると見なしてはならない。したがって請求項は、認められる法的保護の範囲を決定するための基礎であり、請求項に読み込まれる内容が明細書に記載された要素に限定されることはない。対照的に、従来技術は、権利を主張する本発明を予測させたり、新規性を破ったりするような特別な実施態様を除き、本発明から明らかに除外される。
【0191】
さらに、請求項の制限事項相互間には特別な関係はないものとする。ただし、そのような関係が請求項に明示してある場合は別である(例えば製品に関する請求項における要素の配置や、方法に関する請求項におけるステップの順番は、請求項にそのことが明示してある場合を除き、請求項を制限することにはならない)。この明細書に開示した個々の要素の可能なすべての組み合わせと順列は、本発明の特徴と見なす。同様に、本発明に関する説明の一般化は、本発明の一部と見なす。
【0192】
上記の説明から、当業者には、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、本発明を別の具体的な形態に具現化できることが明らかであろう。説明した実施態様は単なる例示と見なすべきであり、本発明がその実施態様に限定されることはない。なぜなら、本発明の法律的な保護範囲は、明細書よりは添付の請求項に示されているからである。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】図1は、RAW264.7マクロファージ様細胞による免疫複合体の食作用に関する化合物1の投与量-応答曲線である。
【図2】図2は、NZB×NZWマウスの死亡率に対する化合物1の効果を示す。
【図3A】図3Aは、NZB×NZWマウスの蛋白尿に対する化合物1の効果を示し、5g/l以上のマウスを示す。
【図3B】図3Bは、NZB×NZWマウスの蛋白尿に対する化合物1の効果を示し、腎臓の濾過状態が改善したマウスを示す。
【図4】図4は、化合物1と9がNZB×NZWマウスの死亡率に及ぼす効果を示す。
【図5】図5は、化合物1と20がMRL/lprマウスの死亡率に及ぼす効果を示す。
【図6】図6は、化合物1、5、19a、20が遅延型過敏症(DTH)に及ぼす効果を示す。
【図7】図7は、化合物47、51、49がDTHに及ぼす効果を示す。
【図8】図8は、化合物1と19aがDTHに及ぼす効果を示す。
【図9】図9は、化合物1がコラーゲンによって誘発される関節炎に及ぼす効果を示す。
【図10】図10は、化合物1と19aがアジュバントによって誘発される関節炎に及ぼす効果を示す。
【図11】図11は、化合物1と19aの経口投与と静脈内投与がアジュバントによって誘発される関節炎に及ぼす効果を示す。
【図12】図12は、化合物19aの経口投与と静脈内投与がアジュバントによって誘発される関節炎に及ぼす効果を示す。
【図13】図13は、樹脂に結合した化合物19bによって結合した全ヒトIgGを変性(ドデシル硫酸ナトリウム、すなわちSDS)ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(PAGE)で精製した結果を示している:レーン1、あらかじめ染色した基準(広い幅);レーン2、全ヒトIgG;レーン3、フロースルー分画;レーン4、洗浄分画;レーン5、溶離した分画。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式:
【化1】
[式中、
Aは、-(CH2)n-(nは0、1、2、3のいずれかである)または-C(CH3)H-であり;
Bは、0、または
【化2】
であり;
Cは、-(CH2)n-(ただし、nは0、1、2、3のいずれかである)または-C(CH3)H-であり;
Xは、NH、O、Sのいずれかであり;
R'は、水素、C1-4アルキル、C1-4N-メチルアミノアルキル、N,N-ジメチルアミノアルキルのいずれかであり;
Aは必ずしもCと同一でない;
ここで、R1、R2、R3、R4は独立に、水素、C2-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6ヒドロキシアルキル、C2-6アミノアルキル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、フェニル、ナフチル、ベンジル、ビフェニル、フェネチル、ピペラジニル、N-メチルピペラジニル、N-エチルピペラジニル、モルホリニル、ピペリジニル、メチルピペリジニル、エチルピペリジニル、インデニル、2,3-ジヒドロインデニル、C4−C7シクロアルキル、C4−C7シクロアルケニル、インドリル、メチルインドリル、エチルインドリル、および下記一般式:
【化3】
で表わされる置換された5員の芳香族複素環(Xは上に定義した通りであり、ZはNHまたはCH2である);または下記一般式:
【化4】
で表わされる置換されたフェニル環(XおよびR'は上に定義した通りである);または下記一般式:
【化5】
で表わされる置換されたフェニル環(Wは水素、CH3、NH2、COOR'、OR'のいずれかである);または下記一般式:
【化6】
で表わされる置換されたフェニル環(Halはハロゲンである);または、下記一般式:
【化7】
で表わされる置換されたフェニル環(XおよびR'は上に定義した通りである)
からなる群より選ばれる。]
で表される化合物。
【請求項2】
Aが-(CH2)n-(ただし、nは0、1、2、3のいずれかである)であり;
Cが-(CH2)n-(ただし、nは0、1、2、3のいずれかである)であり;
Aは必ずしもCと同一ではなく;かつ
Bが
【化8】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
A及びCが-CH2-であり;かつBが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1およびR4が、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、フェニル、アニリノ、ヒドロキシフェニル、アミノフェネチルからなる群より選ばれ;
R2およびR3が、アニリノ、アミノアニリノ、フェネチル、ヒドロキシフェネチルからなる群より選ばれる、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
からなる群より選ばれる化合物。
【請求項6】
抗体に非共有結合的に結合することができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
抗体に非共有結合的に結合することができ、置換基R1、R2、R3、R4のうちの1つ、2つ、3つ、またはすべてが
【化23】
である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記抗体が、少なくともヒトIgGのアイソタイプからなる、請求項6または7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物と、薬学的に許容される担体とを組み合わせた組成物。
【請求項10】
前記担体が、アルコールまたはポリオール溶媒に前記化合物を溶解する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ヒトTNFαに結合することができる組み換えタンパク質をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記組み換えタンパク質が、抗TNFα抗体または可溶性TNFα受容体である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
メトトレキサートをさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
抗炎症性コルチコステロイドをさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
非ステロイド系抗炎症薬をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
自己免疫疾患を有する患者を治療する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物または請求項9〜12のいずれか1項に記載の組成物の治療上有効量を、当該患者に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項17】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス、免疫性血小板減少症、糸球体腎炎、脈管炎および関節炎からなる群より選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記自己免疫疾患の選択が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、クローン病、炎症性大腸炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、スティル病(マクロファージ活性化症候群)、ブドウ膜炎、強皮症、筋炎、ライター症候群およびヴェーゲナー症候群からな群より選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ヒトTNFαに結合することができる組み換えタンパク質の治療上有効量を同時に投与するステップをさらに含み、当該組み換えタンパク質の治療上有効量が、前記化合物の存在下で減少する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物の投与前および/または投与後に、ヒトTNFαに結合することができる組み換えタンパク質の治療上有効量を、別に投与するステップをさらに含み、前記化合物と同時には投与しない、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物の炎症に影響を与えるための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物を使用。
【請求項22】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物を、アフェレーシス・カラムの一部を構成する不溶性支持材料に直接に、または有機リンカーを用いて共有結合させることにより、少なくともいくつかの遊離抗体および/または抗体-抗原免疫複合体がその化合物に結合した状態で、血液その他の生理流体をそのアフェレーシス・カラムを通じて循環させるステップ;そして、
少なくとも一部のヒト抗体が除去された血液その他の生理流体の少なくとも一部を、その血液その他の生理流体を採取した患者に戻すステップ
を含む、ヒト抗体の除去方法。
【請求項23】
不溶性支持材料に直接に、または有機リンカーを用いて共有結合させた請求項1〜8のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物を抗体に結合させるとき、少なくともその抗体の一部を、不溶性支持材料に結合した前記化合物に非共有結合させた後、その抗体を精製するステップを含む、抗体の精製方法。
【請求項24】
抗体と結合させるための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物の使用。
【請求項1】
下記一般式:
【化1】
[式中、
Aは、-(CH2)n-(nは0、1、2、3のいずれかである)または-C(CH3)H-であり;
Bは、0、または
【化2】
であり;
Cは、-(CH2)n-(ただし、nは0、1、2、3のいずれかである)または-C(CH3)H-であり;
Xは、NH、O、Sのいずれかであり;
R'は、水素、C1-4アルキル、C1-4N-メチルアミノアルキル、N,N-ジメチルアミノアルキルのいずれかであり;
Aは必ずしもCと同一でない;
ここで、R1、R2、R3、R4は独立に、水素、C2-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6ヒドロキシアルキル、C2-6アミノアルキル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、フェニル、ナフチル、ベンジル、ビフェニル、フェネチル、ピペラジニル、N-メチルピペラジニル、N-エチルピペラジニル、モルホリニル、ピペリジニル、メチルピペリジニル、エチルピペリジニル、インデニル、2,3-ジヒドロインデニル、C4−C7シクロアルキル、C4−C7シクロアルケニル、インドリル、メチルインドリル、エチルインドリル、および下記一般式:
【化3】
で表わされる置換された5員の芳香族複素環(Xは上に定義した通りであり、ZはNHまたはCH2である);または下記一般式:
【化4】
で表わされる置換されたフェニル環(XおよびR'は上に定義した通りである);または下記一般式:
【化5】
で表わされる置換されたフェニル環(Wは水素、CH3、NH2、COOR'、OR'のいずれかである);または下記一般式:
【化6】
で表わされる置換されたフェニル環(Halはハロゲンである);または、下記一般式:
【化7】
で表わされる置換されたフェニル環(XおよびR'は上に定義した通りである)
からなる群より選ばれる。]
で表される化合物。
【請求項2】
Aが-(CH2)n-(ただし、nは0、1、2、3のいずれかである)であり;
Cが-(CH2)n-(ただし、nは0、1、2、3のいずれかである)であり;
Aは必ずしもCと同一ではなく;かつ
Bが
【化8】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
A及びCが-CH2-であり;かつBが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1およびR4が、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、フェニル、アニリノ、ヒドロキシフェニル、アミノフェネチルからなる群より選ばれ;
R2およびR3が、アニリノ、アミノアニリノ、フェネチル、ヒドロキシフェネチルからなる群より選ばれる、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
からなる群より選ばれる化合物。
【請求項6】
抗体に非共有結合的に結合することができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
抗体に非共有結合的に結合することができ、置換基R1、R2、R3、R4のうちの1つ、2つ、3つ、またはすべてが
【化23】
である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記抗体が、少なくともヒトIgGのアイソタイプからなる、請求項6または7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物と、薬学的に許容される担体とを組み合わせた組成物。
【請求項10】
前記担体が、アルコールまたはポリオール溶媒に前記化合物を溶解する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ヒトTNFαに結合することができる組み換えタンパク質をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記組み換えタンパク質が、抗TNFα抗体または可溶性TNFα受容体である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
メトトレキサートをさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
抗炎症性コルチコステロイドをさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
非ステロイド系抗炎症薬をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項16】
自己免疫疾患を有する患者を治療する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物または請求項9〜12のいずれか1項に記載の組成物の治療上有効量を、当該患者に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項17】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス、免疫性血小板減少症、糸球体腎炎、脈管炎および関節炎からなる群より選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記自己免疫疾患の選択が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、クローン病、炎症性大腸炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、スティル病(マクロファージ活性化症候群)、ブドウ膜炎、強皮症、筋炎、ライター症候群およびヴェーゲナー症候群からな群より選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ヒトTNFαに結合することができる組み換えタンパク質の治療上有効量を同時に投与するステップをさらに含み、当該組み換えタンパク質の治療上有効量が、前記化合物の存在下で減少する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物の投与前および/または投与後に、ヒトTNFαに結合することができる組み換えタンパク質の治療上有効量を、別に投与するステップをさらに含み、前記化合物と同時には投与しない、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物の炎症に影響を与えるための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物を使用。
【請求項22】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物を、アフェレーシス・カラムの一部を構成する不溶性支持材料に直接に、または有機リンカーを用いて共有結合させることにより、少なくともいくつかの遊離抗体および/または抗体-抗原免疫複合体がその化合物に結合した状態で、血液その他の生理流体をそのアフェレーシス・カラムを通じて循環させるステップ;そして、
少なくとも一部のヒト抗体が除去された血液その他の生理流体の少なくとも一部を、その血液その他の生理流体を採取した患者に戻すステップ
を含む、ヒト抗体の除去方法。
【請求項23】
不溶性支持材料に直接に、または有機リンカーを用いて共有結合させた請求項1〜8のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物を抗体に結合させるとき、少なくともその抗体の一部を、不溶性支持材料に結合した前記化合物に非共有結合させた後、その抗体を精製するステップを含む、抗体の精製方法。
【請求項24】
抗体と結合させるための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の1種類以上の化合物の使用。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−512259(P2007−512259A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540119(P2006−540119)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002003
【国際公開番号】WO2005/049607
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(501475952)プロメティック、バイオサイエンシーズ、インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】PROMETIC BIOSCIENCES INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002003
【国際公開番号】WO2005/049607
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(501475952)プロメティック、バイオサイエンシーズ、インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】PROMETIC BIOSCIENCES INC.
【Fターム(参考)】
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