説明

化合物及びそれを含有する薄膜

【課題】有機トランジスタの有機半導体層に含有させるのに有用なπ共役構造を有する化合物及びそれを用いた薄膜、及び該π共役構造を含む化合物を得るための前駆体である化合物を提供することである。
【解決手段】式


[式中、R1及びRは、それぞれ独立に、置換基を表す。R及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位と;π共役構造を有する構造単位とを;有する化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びそれを含有する薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタ等の有機半導体素子の製造過程では、シリコン系トランジスタ等の無機半導体素子の製造に必要な高温プロセス及び真空プロセスを省くことができ、製造に要するエネルギーを低減できる。また、有機半導体素子は、柔軟性を有するフィルム状の素子とすることが可能であり、次世代の素子として注目されている。
【0003】
π共役構造を有する化合物は導電性及び半導体性を示し、有機半導体素子に用いられる有機半導体化合物として注目されている。π共役構造を有する化合物として、具体的には、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)などが知られている。
【0004】
非特許文献1には、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)のクロロホルム溶液をシリコンウエハー上にスピンコートして有機半導体層を形成した有機トランジスタが記載されている。
【0005】
しかしながら、上記有機トランジスタはトランジスタ特性が不十分であり、有機トランジスタの有機半導体層に含有させるのに有用な新規な有機半導体化合物が求められている。
【0006】
非特許文献2には、π共役構造を有する化合物として、ポリアントラセン、及びアントラセンとベンゼンとのコポリマーが記載されている。アントラセン部分の多くは発光性であり、π共役構造の一部としてアントラセン部分を有するポリマーは、エレクトロルミネッセンス性を示す可能性が高い材料である。
【0007】
π共役構造を有する化合物の多くは非溶解性であり、合成方法が複雑になり易い。そのため、非特許文献2では、加熱してポリアントラセン、及びアントラセンとベンゼンとのコポリマーに変化させることができ、溶剤に対して溶解性を示す前駆体が提案されている。上記前駆体は、ポリアントラセン、又はアントラセンとベンゼンとのコポリマーのアントラセン部分に、無水マレイン酸がディールスアルダー付加した構造を持っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】アプライド フィジックス レターズ(Appl. Phys. Lett.)、第53巻、第18号、第195〜197頁(1988年)
【非特許文献2】ケミカル コミュニケーション(Chem. Commun.)、第73〜74頁(1997年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、有機トランジスタの有機半導体層に含有させるのに有用なπ共役構造を有する化合物及びそれを含有する薄膜、及び該π共役構造を含む化合物を得るための前駆体である化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、R1及びRは、それぞれ独立に、置換基を表す。R及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位と;式(2)、(3)、又は(4)
【0013】
【化2】

【0014】
[式(2)〜(4)中、Rは、置換基を表す。sは、1〜4の整数を表す。pは、0〜4の整数を表す。qは、0〜4の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位、式(5)
【0015】
【化3】

(5)
【0016】
[式中、Ar1は、−C≡C−、−C(R)=C(R)−、−N=N−、−C(R)=N−、置換基を有していてもよい環炭素数8以上のアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。但し、Ar1は、前記式(1)で表される基ではない。2個のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。]
で表される構造単位、及び下式
【0017】
【化4】

(6)
【0018】
[式中、r及びrrは、それぞれ構造単位(-Ar-NAr-)の数及び構造単位(−Ar−NAr−)の数を表し、それぞれ独立に、0又は1である。Ar2、Ar3、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。
Ar6、Ar7及びAr8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。]
で表される構造単位、からなる群から選択される少なくとも一種の構造単位とを有する化合物を提供する。
なお、前記式(1)において、左側のベンゼン環には、その右側の2つのC原子(これらの内の一つにはRが結合し、他方にはRが結合している)と結合している2つのベンゼン環炭素原子以外のベンゼン環炭素原子の内のいずれかにおいて、水素原子の代わりにn個のR基、及び一つの隣接構造単位(図示せず)と結合している。同様に、前記式(2) において、s個のR基はそれぞれ水素原子に代わって、隣接構造単位(図示せず)と結合している2つの環炭素原子以外の環炭素原子の内のいずれかs個の環炭素原子と結合している。式(1)や式(2)に類似した他の式も同様に解釈される。
【0019】
ある一形態においては、前記化合物は、式(1)で表される構造単位を2個以上有する。このとき、式(1)で表される構造単位は互いに同じであってもよく、また異なっていてもよい。
【0020】
ある一形態においては、前記化合物は、さらに、式(7)
【0021】
【化5】

(7)
【0022】
で表される構造単位を1個以上有する。
【0023】
ある一形態においては、Yで表される2価の基が、式(Y−1)〜(Y−8)のそれぞれで表される基
【0024】
【化6】

【0025】
[式(Y−1)〜(Y−8)中、R10〜R20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Xは、水素原子又はハロゲン原子を表す。Xが複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。]
からなる群から選択される少なくとも一種の基である。すなわち、前記化合物は、式(1)で表される構造単位を1個だけ有するとき、Yで表される2価の基は、上記式(Y−1)〜(Y−8)のいずれか1つで表され、前記化合物が式(1)で表される構造単位を2個以上有するとき、それらの構造単位におけるYは、互いに同じであってもよく、また異なっていてもよい。
【0026】
ある一形態においては、前記化合物は、重量平均分子量が3000以上の高分子化合物である。
【0027】
ある一形態においては、前記化合物は、さらに、式(8)
【0028】
【化7】

【0029】
[式中、n、m、R1、R、R及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を有する。
【0030】
また、本発明は、前記いずれかの化合物と溶媒とを含有する溶液を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記いずれかの化合物を含有する薄膜を提供する。
【0032】
また、本発明は、基体と薄膜とを有する積層体であって、
前記薄膜は、前記溶液を該基体上に塗布して式(1)で表される構造単位を含む化合物を含有する塗膜を形成し、次いで、
該塗膜にエネルギーを加えて、塗膜に含有される式(1)で表される構造単位を含む化合物全体の内の少なくとも一部に含まれる式(1)で表される構造単位を式(8)で表される構造単位に変換して得られる膜である積層体を提供する。
【0033】
また、本発明は、薄膜と基体とを有する積層体の製造方法であって、
前記溶液を基体上に塗布し、式(1)で表される構造単位を含む化合物を含有する塗膜を形成する工程と、
該塗膜にエネルギーを加えて、塗膜に含有される式(1)で表される構造単位を含む化合物全体の内の少なくとも一部に含まれる式(1)で表される構造単位を式(8)で表される構造単位に変換して膜を形成する工程とを有する積層体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0034】
有機トランジスタの有機半導体層に含有させるのに有用なπ共役構造を有する化合物及びそれを含有する薄膜、及び該π共役構造を含む化合物を得るための前駆体である化合物が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例3の薄膜の加熱前後の赤外吸収スペクトルである。
【図2】実施例3の薄膜の加熱前後の紫外可視吸収スペクトルである。
【図3】参考例3として製造した有機トランジスタの構造を示す断面図である。
【図4】参考例4〜11として製造した有機トランジスタの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明の化合物は、式(1)で表される構造単位を含む。
【0038】
【化8】

【0039】
式(1)中、R1及びRは、それぞれ独立に、置換基を表す。置換基の中でも、ハロゲン原子、炭素数1〜30の基が好ましい。
【0040】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
【0041】
炭素数1〜30の基の例としては、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、チエニル基などのヘテロアリール基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、シアノ基が挙げられる。炭素数1〜30の基中の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。炭素数1〜30の基中の水素原子がハロゲン原子で置換されている場合、ハロゲン原子の中でもフッ素原子で置換されていることが好ましい。
【0042】
n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。n及びmは、0であることが好ましい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0043】
式(1)中、R及びR4は、水素原子又は置換基を表す。R又はR4で表される置換基の例としては、Rで表される置換基の例と同じ基が挙げられる。化合物の合成の容易さの観点からは、R及びR4は、水素原子が好ましい。
【0044】
式(1)中、Yは、2価の基を表す。2価の基の中でも、熱や光などのエネルギーを与えることで脱離しうる基が好ましい。Yで表される2価の基としては、以下の基が例示される。
【0045】
【化9】

【0046】
式(Y−1)〜式(Y−8)中、R10〜R20は、同一又は相異なり、水素原子又は置換基を表す。中でも、水素原子又は炭素数1〜30の基が好ましい。
【0047】
10〜R19が置換基である場合、該置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0048】
20が置換基である場合、該置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ビニル基、エステル構造を含む基が挙げられる。
【0049】
は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子の中でも、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0050】
式(Y−1)〜式(Y−8)で表される基の中でも、式(Y−3)〜式(Y−7)で表される基が好ましく、式(Y−3)〜式(Y−5)で表される基がより好ましい。例えば、好ましいYは、式(Y−3)又は(Y−4)中で、R16、R17、R18及びR19が、炭素数1〜10のアルコキシ基、特に、炭素数1〜4のアルコキシ基となる基である。
【0051】
本発明の化合物は、式(1)で表される構造単位に加えて、π共役構造を有する構造単位を有する。π共役構造を有する構造単位の具体例には、次の式(2)で表される構造単位、式(3)で表される構造単位、式(4)で表される構造単位、式(5)で表される構造単位及び式(6)で表される構造単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位が含まれる。
【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

(6)
【0054】
式(2)〜式(4)中、Rは、置換基を表す。Rで表される置換基の例としては、Rで表される置換基の例と同じ基が挙げられる。
【0055】
式(2)中、sは、1〜4の整数を表す。式(3)中、pは、0〜4の整数を表す。pは、0が好ましい。式(4)中、qは、0〜4の整数を表す。qは、0が好ましい。
【0056】
式(2)〜式(4)中、Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0057】
式(5)中、Ar1は、−C≡C−、−C(R)=C(R)−、−N=N−、−C(R)=N−、置換基を有していてもよい環炭素数8以上のアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。但し、Ar1は、前記式(1)で表される基ではない。2個のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。R又はRで表される置換基の例としては、Rで表される置換基の例と同じ基が挙げられる。
【0058】
アリーレン基としては、単環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基、2個以上の芳香族炭化水素が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基が挙げられる。
【0059】
アリーレン基が、単環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、該アリーレン基の炭素数は、8〜60であることが好ましく、8〜48であることがより好ましく、8〜30であることがさらに好ましく、8〜14であることが特に好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0060】
アリーレン基が、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、該アリーレン基の炭素数は、10〜60であることが好ましく、10〜48であることがより好ましく、10〜30であることがさらに好ましく、10〜14であることが特に好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0061】
アリーレン基が、多環の芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0062】
【化12】

【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
上記式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rが置換基である場合、メチル基、エチル基、ブチル基、2−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基、フェニル、ナフチル等のアリール基、チエニルなどのヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基が挙げられる。Rがアルキル基である場合、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がさらに好ましい。Rがアルコキシ基である場合、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜8のアルコキシ基がさらに好ましい。
【0069】
アリーレン基が、2個以上の芳香族炭化水素が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、芳香族炭化水素としてはベンゼンが好ましい。アリーレン基が、2個以上のベンゼンが直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0070】
【化18】

【0071】
【化19】

【0072】
【化20】

【0073】
上記式中、Rは、前述と同じ意味を表す。
【0074】
ヘテロアリーレン基としては、単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基、多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基、少なくとも1個の芳香族複素環式化合物を含む2個以上の芳香族化合物が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基が挙げられる。
【0075】
ヘテロアリーレン基が単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基又は多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基である場合、該ヘテロアリーレン基の炭素数は、3〜60であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。該炭素数に置換基の炭素数は含まれない。
【0076】
ヘテロアリーレン基が単環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基又は多環の芳香族複素環式化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基の例としは、下記の基があげられる。
【0077】
【化21】

【0078】
【化22】

【0079】
【化23】

【0080】
【化24】

【0081】
【化25】

【0082】
【化26】

【0083】
【化27】

【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

【0086】
【化30】

【0087】
【化31】

【0088】
【化32】

【0089】
【化33】

【0090】
【化34】

【0091】
上記式中、Rは、前述と同じ意味を表す。
【0092】
ヘテロアリーレン基が少なくとも1個の芳香族複素環式化合物を含む2個以上の芳香族化合物が直接結合した又はビニレン基を介して結合した化合物から水素原子2個を除いた基である場合、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基の例としては、下記の基が挙げられる。
【0093】
【化35】

【0094】
【化36】

【0095】
【化37】

【0096】
【化38】

【0097】
【化39】

【0098】
【化40】

【0099】
【化41】

【0100】
上記式中、Rは、前述と同じ意味を表す。Xは、−CH=又は窒素原子を表す。Xが複数個ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0101】
Ar1としては、置換基を有していてもよい環炭素数8以上のアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基が好ましい。
【0102】
式(6)中、Ar2、Ar3、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基、ヘテロアリーレン基の例としては、フェニレン基、Arで表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基の例と同じ基が挙げられる。
【0103】
Ar2、Ar3、Ar4及びAr5は、置換基を有していてもよいフェニレン基が好ましい。
【0104】
式(6)中、Ar6、Ar7及びAr8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。
【0105】
アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントリル基が挙げられる。ヘテロアリール基の例としては、チエニル基が挙げられる。
【0106】
Ar6、Ar7及びAr8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基が好ましく、アルキル基を有していてもよいフェニル基がより好ましい。
【0107】
式(6)中、r及びrrは、それぞれ構造単位(-Ar-NAr-)の数及び構造単位(−Ar−NAr−)の数を表し、それぞれ独立に、0又は1である。
【0108】
式(6)中、Ar5、Ar6、Ar7又はAr8で表される基中の炭素原子は、Ar5、Ar6、Ar7又はAr8で表される基が結合している窒素原子と結合しているAr2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar7又はAr8で表される基中の炭素原子と、直接結合し、又は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(R)−、−C(=O)−N(R)−若しくは−C(R)2−を介して結合し、5〜7員環を形成していてもよい。Rは、ア
ルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はアラルキル基を表す。
【0109】
式(6)で表される構造単位の例としては、下記の基が挙げられる。
【0110】
【化42】

【0111】
上記式中、Rは前述と同じ意味を表す。
【0112】
本発明の化合物は、式(2)〜式(6)で表される構造単位を、それぞれ、1種のみ含んでいても2種以上含んでいてもよい。
【0113】
本発明の化合物は、さらに、式(7)で表される構造単位を1個以上含んでいてもよい。
【0114】
【化43】

(7)
【0115】
本発明の化合物は、さらに、式(8)で表される1個以上構造単位を含んでいてもよい。
【0116】
【化44】

【0117】
式(8)中、n、m、R1、R、R及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。
【0118】
本発明の化合物は、式(1)で表される構造単位を2個以上含むことが好ましい。式(1)で表される構造単位が含まれるとき、それらは互いに同じであってもよく、また異なっていてもよい。
【0119】
本発明の化合物の分子量は特に制限なく、どのような分子量でも使用することができるが、高分子化合物であることが好ましい。本発明における高分子化合物とは、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3×10以上のものを指す。
【0120】
本発明の化合物の中でも、重量平均分子量で3×10〜1×10の高分子化合物が好ましく用いられる。重量平均分子量が3×10以上であるとデバイス作製時の膜形成において、欠陥の発生が抑制され、1×10以下であると溶媒への溶解性や素子作成時の塗布性が高くなる。
【0121】
重量平均分子量としてさらに好ましくは、8×10〜5×10であり、特に好ましくは1×10〜1×10である。デバイス作製時の膜形成において、欠陥の発生が抑制する観点からは、10000以上が好ましい。
【0122】
ポリスチレン換算の数平均分子量が1×103〜1×108であることが好ましく、より好ましくは2×103〜1×107である。ポリスチレン換算の数平均分子量が1×103以上である場合には、強靭な薄膜が得られやすくなる。一方、108以下である場合には、高分子化合物の溶解性が高く、薄膜の作製が容易である。
【0123】
なお、本発明における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、ポリスチレンスタンダードを用いて算出した重量平均分子量のことを指す。
【0124】
本発明の化合物が高分子化合物である場合、溶媒に対する溶解度の観点からは、該高分子化合物が有する全繰り返し単位の合計量を100とした場合、繰り返し単位として含む式(1)で表される構造単位の量が、20〜99であることが好ましく、30〜60であることがより好ましい。
【0125】
前記高分子化合物は、分子鎖末端に重合に関与する基が残っていると、得られた高分子化合物を有機素子に用いたときの特性が低下する可能性があるので、末端が重合に関与しない安定な基で保護されていることが好ましい。該安定な基としては、分子鎖主鎖の共役構造と連続した共役結合を有している基が好ましい。具体的には、特開平9-45478号公報の化10に記載の置換基が例示される。
【0126】
また、前記高分子化合物は、素子に用いる場合、素子作製の容易性から、溶媒への溶解度が高いことが望ましい。具体的には、0.01wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することが好ましく、0.1wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することがより好ましく、0.4wt%以上の溶液を作製できる溶解性を有することがさらに好ましい。
【0127】
本発明の化合物が高分子化合物である場合、該化合物の製造方法は、特に制限されるものではないが、Ni触媒を用いた還元的カップリング反応を用いる方法、Stilleカップリング反応を用いる方法、Suzukiカップリング反応を用いる方法があげられる。化合物の合成の容易さからは、Suzukiカップリング反応を用いる方法が好ましい。
【0128】
Suzukiカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式
−E1−Q (100)
[式中、E1は、式(1)で表される構造単位を表す。Q及びQは、同一又は相異なり、ボロン酸残基又は、ホウ酸エステル残基を表す。]
で表される1種類以上の化合物と、式
1−E2−T2 (200)
[式中、E2は、式(2)〜式(8)で表される構造単位を表す。T1及びT2は、同一又は相異なり、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基又はアリールアルキルスルホネート基を表す。]
で表される1種類以上の化合物とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。
【0129】
反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計に対して、過剰であることが好ましい。反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計を1モルとすると、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が0.6〜0.99モルであることが好ましく、0.7〜0.95モルであることがさらに好ましい。
【0130】
式(200)における、T1及びT2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがさらに好ましい。
【0131】
式(200)における、T1及びT2で表されるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基が例示される。アリールスルホネート基としては、ベンジルスルホネート基が例示される。
【0132】
Suzukiカップリング反応に用いられるパラジウム触媒としては、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒等が挙げられる。パラジウム触媒の具体例としては、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が挙げられるが、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウムアセテート類が好ましい。
【0133】
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モルであり、好ましくは0.0003モル〜0.1モルである。
【0134】
Suzukiカップリング反応に用いられる塩基は、無機塩基、有機塩基、無機塩等である。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウムが挙げられる。
【0135】
塩基の添加量は、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モルであり、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0136】
前記パラジウム触媒としてパラジウムアセテート類を用いる場合は、配位子としてリン化合物を添加してもよい。リン化合物の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。リン化合物を添加する場合、その添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モルであり、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0137】
Suzukiカップリング反応において、反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランが挙げられる。高分子化合物の溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。また、塩基を水溶液として反応系中に加え、水相と有機相の2相の溶媒中でモノマーを反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、通常、水溶液として反応系中に加え、2相の溶媒中でモノマーを反応させる。
【0138】
なお、塩基を水溶液として反応系中に加え、2相の溶媒中でモノマーを反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を反応系中に加えてもよい。
【0139】
Suzukiカップリング反応の温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50〜160℃程度である。高分子化合物の高分子量化の観点からは、60〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。
【0140】
Suzukiカップリング反応を行う時間(反応時間)は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度であり、1時間〜30時間程度が好ましい。
【0141】
Suzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下であってパラジウム触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、反応容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(100)で表される化合物、式(200)で表される化合物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を仕込み、さらに、反応容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、脱気したトルエンを加えた後、この溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基、例えば、脱気した炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0142】
式(8)で表される構造単位を含む本発明の化合物は、式(1)で表される構造単位を含み、かつ、式(8)で表される構造単位を含まない化合物にエネルギーを加え、Yで表される2価の基を脱離させて製造することができる。出発化合物がYで表される2価の基を複数有している場合には、Yで表される2価の基の全てを脱離させてもよく、また、かかる基の一部を脱離させてもよい。
【0143】
<本発明の化合物と溶媒を含む溶液>
本発明の溶液は、本発明の化合物と溶媒とを含む。溶媒の例としては、化合物の溶解性の観点からは、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、ハロゲン置換脂肪族炭化水素溶媒、エーテル溶媒が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の例としては、キシレン、メシチレン、アニソール、シクロヘキシルベンゼンが挙げられる。ハロゲン置換芳香族炭化水素溶媒の例としては、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンが挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒の例としては、テトラリンが挙げられる。ハロゲン置換脂肪族炭化水素溶媒の例としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンが挙げられる。エーテル溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランが挙げられる。
【0144】
該溶液を用いて本発明の化合物を含む薄膜を成膜する場合、溶液中の溶媒の沸点が低いと、均一な薄膜を形成するための乾燥工程の制御が困難な場合がある。そのため、溶媒の沸点は150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。
【0145】
<本発明の化合物を含む薄膜>
本発明の化合物を含む薄膜の製造方法は、特に制限されるものではないが、成膜の容易さからは、本発明の化合物と溶媒を含む溶媒を基板などに塗布することで形成する方法が好ましい。
【0146】
塗布方法としては、キャスト方法、スピンコート方法、バーコート法、インクジェット方法、凸版を用いる印刷方法、孔版を用いる印刷方法、第1の版に塗布した後に第2の版に転写し、第2の版を用いて印刷する方法などがあげられる。
【0147】
基板としては、特に制限されるものではないが、ガラス、ポリエチレン、ポリスチレンやフッ素樹脂からなるプラスチックやフィルム、ステンレスやアルミなどの金属、シリコンウエハなどが例示される。
【0148】
式(8)で表される構造単位を含む本発明の化合物を含む薄膜は、式(1)で表される構造単位を含み、かつ、式(8)で表される構造単位を含まない化合物からなる薄膜にエネルギーを加え、Yで表される2価の基の一部を脱離させて製造することができる。
【0149】
<積層体>
本発明の積層体は、基体と薄膜とを有する積層体であって、前記薄膜は、本発明の化合物と溶媒とを含む溶液を該基体上に塗布して式(1)で表される構造単位を含む化合物を含有する塗膜を形成し、次いで、該塗膜にエネルギーを加えて、塗膜に含有される式(1)で表される構造単位を含む化合物全体の内の少なくとも一部に含まれる式(1)で表される構造単位を式(8)で表される構造単位に変換して得られる膜である積層体である。
【0150】
式(1)で表される構造単位を含む化合物にエネルギーを加えることで、式(1)中のYで表される2価の基が脱離し、式(8)で表される構造単位を含む化合物が生成する。
該エネルギーの例としては、熱エネルギー、光エネルギーが挙げられる。
【0151】
熱エネルギーを用いる場合は、前記化合物からYで表される2価の基が脱離する温度以上、かつ、該化合物が分解する温度よりも低い温度であれば、任意の温度を設定することができる。通常は150℃から400℃の範囲が好ましく、より好ましくは200℃から350℃である。熱処理を行う時間としては、工業的な範囲で選定できるが、通常は1分から50時間であり、好ましくは10分から24時間である。熱処理の雰囲気としては、不活性雰囲気が好ましく、窒素ガス中、アルゴンガス中、真空中が例示される。不活性雰囲気中に酸素を含む場合、酸素濃度が100体積ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましい。また、不活性雰囲気が真空である場合、酸素分圧が200Pa以下であることが好ましく、より好ましくは50Paである。
【0152】
光によりYで表される2価の基を脱離させる方法としては、400nm以下の波長の紫外線を照射する方法が例示される。光強度はYで表される2価の基が脱離する強さであれば特に制限はない。光を照射する場合の雰囲気も、不活性雰囲気が好ましく、その範囲は上記に例示した範囲を好適に用いることができる。
【0153】
本発明の積層体は、有機トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子などに用いることができる。
【0154】
基体は、ガラス、フィルムなどの基板であってもよく、基板と電極とを有していてもよく、基板と電極と有機層とを有していてもよい。積層体を有機トランジスタに用いる場合、基体は、基板とゲート電極とゲート絶縁層からなることが好ましい。積層体を有機エレクトロルミネッセンス素子に用いる場合、基体は、基板と陽極と有機層からなることが好ましい。
【0155】
本発明の積層体の製造方法は、薄膜と基体とを有する積層体の製造方法であって、本発明の化合物と溶媒とを含む溶液を基体上に塗布し、式(1)で表される構造単位を含む化合物を含有する塗膜を形成する工程と、該塗膜にエネルギーを加えて、塗膜に含有される式(1)で表される構造単位を含む化合物全体の内の少なくとも一部に含まれる式(1)で表される構造単位を式(8)で表される構造単位に変換して薄膜を形成する工程とを有する積層体の製造方法である。
【0156】
<有機トランジスタ>
本発明の化合物は、有機トランジスタの有機半導体層に好適に用いられる。有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えるものであり、電界効果型有機トランジスタ、静電誘導型有機トランジスタなどが例示される。
【0157】
電界効果型薄膜有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。
特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層(活性層)に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0158】
静電誘導型薄膜有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【実施例】
【0159】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0160】
(NMR測定)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0161】
(数平均分子量及び重量平均分子量の測定)
数平均分子量及び重量平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。GPC装置は、島津製作所製、商品名:LC−10Avp(カラム:TsKgel SuperHM−H(東ソー製)2本と、TsKgel SuperH2000(東ソー製)1本との直列接続、移動相:テトラハイドロフラン、流速:0.6ml/分、サンプル濃度:約0.5wt%、検出器:示差屈折率検出器またはUV検出器)または、Waters製、商品名:Alliance GPC/V2000(カラム:PLgel MIXED−B(Varian製)3本の直列接続、カラム温度:140℃、移動相:オルトジクロロベンゼン、流速:1ml/分、サンプル濃度:約0.77wt%、検出器:示差屈折率検出器またはUV検出器)を用いた。
【0162】
高分子化合物の吸収波長の測定には、紫外、可視、近赤外の波長領域で動作する分光光度計(例えば、日本分光製、紫外可視近赤外分光光度計JASCO−V670)を用いた。JASCO−V670を用いる場合、測定可能な波長範囲が200〜1500nmであるため、該波長範囲で測定を行った。まず、測定に用いる基板の吸収スペクトルを測定した。基板としては、石英基板、ガラス基板等を用いた。次いで、該基板の上に高分子化合物を含む溶液を塗布し、乾燥して高分子化合物を含む薄膜を形成した。その後、薄膜と基板との積層体の吸収スペクトルを測定した。薄膜と基板との積層体の吸収スペクトルと基板の吸収スペクトルとの差を、薄膜の吸収スペクトルとして得た。
【0163】
参考例1
(化合物(C−2)の合成)
【0164】

【0165】
化合物(C−1)(東京化成工業社製)を20.16g(60.00mmol)、無水マレイン酸を20.59g(210.0mmol)、及び、トルエンを250mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。この時、化合物(C−1)はトルエンに対して不溶であり、反応系中は不均一であった。オイルバス温度を120℃にして、反応液を3.5時間還流させることにより、Diels−Alder反応が進行し、反応系内は均一溶液となった。その後、反応液にメタノール20mLを30分おきに5回(計100mL)加え、3時間加熱環流させることで、無水物が開環したモノエステル体を得た。その後、反応液に濃硫酸1gを3時間おきに2回加え、6時間加熱環流させた。エバポレータを用いて反応液中の溶媒を除去した後、ヘキサン200mLを加え、室温で1時間撹拌することで、無水マレイン酸を除去した。反応液にメタノール200mLを加え、濃硫酸1gを3時間おきに2回加え、6時間加熱環流させた後、反応液を濾過して不溶物を取り除いた。クロロホルムを展開溶媒に用いたカラムで反応液の分離を行い、分離物をヘキサンで再沈殿を行い、無色粉末のアントラセンの架橋体(化合物(C−2))を25.17g得た。
【0166】
実施例1
(高分子化合物1の合成)
【0167】

(C−2) (A)
【0168】
グローブボックス内の100ml反応管に、化合物(C−2)を311mg、ビチオフェンのジホウ酸エステル体(化合物(A))を292mg、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を秤量して加え、その後、窒素雰囲気のグローブボックス内で、脱気したトルエンを12g、脱気した炭酸カリウム水溶液を12g、及び、触媒であるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)を1.5mg反応管に加えた。前記炭酸カリウム水溶液は、炭酸カリウム282mgを脱気した純水12gに溶解させて製造した。
【0169】
還流条件で17時間反応させた後、反応液に化合物(C−2)に対して0.13モル等量のブロモベンゼンを加え1.5時間還流を続け、さらに、反応液に化合物(C−2)に対して0.13モル等量のフェニルホウ酸を加え、1.5時間還流を続けた後、反応を停止した。
【0170】
反応液中の水層を除去後、有機層にクロロホルムを添加し、加熱溶解させた後、エバポレーターで濃縮し、減圧乾燥を行い、粗精製物を得た。得られた粗精製物にクロロホルムを加えて加熱溶解させた後、アルミナとシリカとを積層したカラムを用いて精製処理を3回行った。カラム処理後の溶液をエバポレーターで濃縮し、減圧乾燥を行い黄色粉状の高分子化合物1を得た。高分子化合物1の得量は100mgであった。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量は17,100であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は31,300であった。
【0171】
参考例2
(化合物(C−3)の合成)
【0172】

【0173】
四つ口フラスコに、化合物(C−2)を4.802g、ビスピナコラートジボロンを10.16g及びジオキサンを150mL加え、室温(25℃)でアルゴンガスを用いて四つ口フラスコ中をバブリングした。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を408.3mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを277.2mg及び酢酸カリウムを3.926g加えた後、反応液を7時間加熱環流させた。反応後。液体クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。フィルターを用いて反応液に難溶である塩基を分離した。反応液をエバポレータで30分程乾燥させ、溶媒を取り除いた。参考例1と同様の方法で、反応液をカラムで分離した後、分離物を少量のアセトンに溶解させ、メタノールを加えて撹拌し、少量の水を加えていくことで、化合物(C−2)のビスピナコールエステル体(化合物(C−3))を3.50g得た。化合物(C−3)の収量は60.9%であり、液体クロマトグラフィーから求めたHPLC面百値による純度は、97.5%であっ
た。
【0174】
得られた化合物(C−3)の1H-NMR(CD2Cl2, (ppm)) シフト値は、(s, 24H)、 3.17 (m, 2H) 、 3.48 (d, 6H) 、 4.58 (s, 2H) 、 7.28 (m, 2H) 、 7.50 (m, 2H) 、 7.67 (s, 2H) を示し、目的物の生成を確認した。
【0175】
実施例2
(高分子化合物2の合成)
【0176】

【0177】
50mlの3つ首フラスコに、化合物(C−3)を230mg、トリフェニルアミン誘導体(化合物(B))を184mg、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を81mg秤量して加えた後、アルゴン雰囲気下で、脱気したトルエン12mlを加えた後、90℃まで昇温した。つづいて、反応液にパラジウムジアセテート(Pd(OAc))を0.92mgとトリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン(P(o−MeOPh))を34.95mg加え、100℃まで昇温した後、脱気した16.7%の炭酸ナトリウム(NaCO)水溶液を2.54g滴下した。その後、100℃で5時間27分半反応を行なった後、トルエン4mlに化合物(C−3)を4.59mg、Pd(OAc)を0.95mg、P(o−MeOPh)を4.95mg溶解させ、得られたトルエン溶液を反応液に加えた。その後、100℃で2時間10分反応を行なった。室温まで冷却して放置した後、反応液の油層を水で2回洗浄し、3%の酢酸水溶液で1回洗浄し、水で3回洗浄した後、硫酸ナトリウム(NaSO)を加えて乾燥した。その後、アルミナとシリカとを積層したカラムを用いて精製を行い、カラムで処理した溶液を濃縮し、濃縮液にメタノールに加えて、析出物を回収し、乾燥し、高分子化合物2を得た。高分子化合物2の得量は133mgであった。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量は8,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は14,000であった。
【0178】
実施例3
(薄膜の作製)
高分子化合物1はクロロホルムに溶解したので、高分子化合物1を0.5重量(wt)%含むクロロホルム溶液を調整し、シリコンウエハ及びガラス上にスピンコートで塗布し、薄膜を得た。
【0179】
実施例4
(積層体の製造)
【0180】

【0181】
シリコンウエハ上の薄膜及びガラス上の薄膜を窒素雰囲気下、300℃で加熱処理を行ない、積層体を製造した。
【0182】
シリコンウエハ上に形成した薄膜について、加熱処理前後の薄膜の赤外吸収スペクトルを赤外分光光度計で測定した。加熱処理前の薄膜の赤外吸収スペクトル11及び加熱処理後の薄膜の赤外吸収スペクトル12を図1に示す。また、ガラス上に形成した薄膜について、加熱処理前後の薄膜の紫外可視吸収スペクトルを紫外−可視吸光光度計で測定した。
加熱処理前の薄膜の紫外可視吸収スペクトル21及び加熱処理後の薄膜の紫外可視吸収スペクトル22を図2に示す。
【0183】
薄膜の加熱により、薄膜エステル構造に由来する赤外吸収スペクトルの1750cm−1のピークが消失した。また、薄膜の加熱により、共役系の拡張に由来する紫外可視吸収スペクトルの540nmのピークが生成した。結果を表1に示す。
【0184】
[表1]

【0185】
参考例3
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物1を用い、以下の方法で図3に示す構造を有する有機薄膜トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。
【0186】
次に、フォトリソグラフィ工程によりシリコン酸化膜32上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(シリコン酸化膜側から、クロム、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)を用いて、スピンコート法により基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物1をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製し、メンブランフィルターでろ過した。ろ過後の溶液を、上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。
【0187】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、5×10−3cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0188】
参考例4
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物2を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機薄膜トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物2をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0189】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、2.4×10−4cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0190】
実施例5
(高分子化合物3の合成)
【0191】

【0192】
200mlの四つ口フラスコに、化合物(D)を392.2mg、化合物(C−2)を480.2mg、テトラハイドロフランを20ml加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。次いで、反応液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを18.31mg、トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム テトラフルオロボレートを23.21mg加えた。反応液を室温で撹拌しながら、27.6wt%の炭酸カリウム水溶液2gを30分かけて滴下し、50℃まで昇温した。10分後、80℃まで昇温し3時間還流を行った。
【0193】
得られた反応液を、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液で洗浄を行い、高分子化合物を濾過した。得られた高分子化合物の内、加熱クロロホルムに可溶分を、アルミナとシリカを積層したカラムに通液した。カラムで処理した液をメタノールに加え、析出物を回収し、乾燥し、高分子化合物3を得た。高分子化合物3の得量は100mgであった。高分子化合物3のポリスチレン換算の数平均分子量は17,500であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は42,400であった。
【0194】
参考例5
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物3を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機薄膜トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物3をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を50℃に加熱し、50℃に加熱した上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0195】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、7.0×10−3cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0196】
実施例6
(高分子化合物4の合成)
【0197】

【0198】
化合物(B)にかえて化合物(E)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で高分子化合物4を合成した。高分子化合物4の得量は35mgであった。
【0199】
参考例6
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物4を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。次に、高分子化合物4をオクタジクロロベンゼンに溶解して0.2質量%の溶液を作製した。この溶液を140℃に加熱し、140℃に加熱した上記基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0200】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、1.2×10−3cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0201】
実施例7
(高分子化合物5の合成)
【0202】

【0203】
化合物(B)にかえて化合物(F)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で高分子化合物5を合成した。高分子化合物5の得量は、190mgであった。高分子化合物5のポリスチレン換算の数平均分子量は60,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は94,000であった。
【0204】
参考例7
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物5を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるオクタデシルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物5をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0205】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、7.5×10−4cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0206】
実施例8
(高分子化合物6の合成)
【0207】

【0208】
化合物(B)にかえて化合物(G)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で高分子化合物6を合成した。高分子化合物6の得量は100mgであった。高分子化合物6のポリスチレン換算の数平均分子量は20,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は28,000であった。
【0209】
参考例8
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物6を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物6をトルエンに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を100℃に加熱し、100℃に加熱した上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0210】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、1.8×10−2cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0211】
実施例9
(高分子化合物7の合成)
【0212】

【0213】
化合物(B)にかえて化合物(H)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で高分子化合物7を合成した。高分子化合物7の得量は、74mgであった。高分子化合物7のポリスチレン換算の数平均分子量は59,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は89,000であった。
【0214】
参考例9
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物7を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物7をトルエンに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、270℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0215】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、3.3×10−3cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0216】
実施例10
(高分子化合物8の合成)
【0217】

【0218】
化合物(C−3)にかえて化合物(C−4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で高分子化合物8を合成した。高分子化合物8の得量は100mgであった。
【0219】
参考例10
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物8を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物8をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で30分間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0220】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、4.8×10−2cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0221】
実施例11
(高分子化合物9の合成)
【0222】

【0223】
化合物(B)にかえて化合物(J)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で高分子化合物9を合成した。高分子化合物9の得量は、142mgであった。高分子化合物9のポリスチレン換算の数平均分子量は52,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は82,000であった。
【0224】
参考例11
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物9を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン酸化膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物9をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、250℃で1時間熱処理を行ない、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0225】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、1.3×10−3cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0226】
実施例12
(高分子化合物10の合成)
【0227】

【0228】
化合物(B)にかえて化合物(K)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で高分子化合物10を合成した。高分子化合物10の得量は、133mgであった。高分子化合物10のポリスチレン換算の数平均分子量は54,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は90,000であった。
【0229】
参考例12
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物10を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物10をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、330℃で1時間熱処理を行い、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0230】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、4.8×10−3cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0231】
実施例13
(高分子化合物11の合成)
【0232】

【0233】
化合物(B)にかえて化合物(L)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で高分子化合物11を合成した。高分子化合物11の得量は、145mgであった。高分子化合物11のポリスチレン換算の数平均分子量は25,000であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は41,000であった。
【0234】
参考例13
(有機トランジスタの作製)
高分子化合物11を用い、以下の方法で図4に示す構造を有する有機トランジスタを作製した。まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、100nmのシリコン膜32を形成した。こうして得られた基板を十分洗浄した後、シランカップリング剤であるフェネチルトリクロロシランを用いて基板の表面をシラン処理した。次に、高分子化合物11をクロロホルムに溶解して0.5質量%の溶液を作製した。この溶液を上記表面処理を行った基板上にスピンコート法により塗布した。その後、窒素雰囲気下で、300℃で1時間熱処理を行い、有機半導体層35を形成した。次に、抵抗加熱蒸着工程により有機半導体層35の上にチャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33、ドレイン電極34(有機半導体層側から、MoO、金の順で積層した膜からなる。)を作製した。
【0235】
(トランジスタ特性の測定)
作製した有機薄膜トランジスタに、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを−60Vかけてトランジスタ特性を測定した。測定した特性から得られた電界効果移動度を算出したところ、2.9×10−4cm/Vsであった。結果を表2に示す。
【0236】
[表2]

【符号の説明】
【0237】
11…加熱処理前の薄膜の赤外吸収スペクトル、
12…加熱処理後の薄膜の赤外吸収スペクトル、
21…加熱処理前の薄膜の紫外可視吸収スペクトル、
22…加熱処理後の薄膜の紫外可視吸収スペクトル、
31…n−型シリコン基板、
32…シリコン酸化膜、
33…ソース電極、
34…ドレイン電極、
35…有機半導体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

[式中、R1及びRは、それぞれ独立に、置換基を表す。R及びR4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。Yは、2価の基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位と;式(2)、(3)、又は(4)
【化2】

[式(2)〜(4)中、Rは、置換基を表す。sは、1〜4の整数を表す。pは、0〜4の整数を表す。qは、0〜4の整数を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。]
で表される構造単位、式(5)
【化3】

(5)
[式中、Ar1は、−C≡C−、−C(R)=C(R)−、−N=N−、−C(R)=N−、置換基を有していてもよい環炭素数8以上のアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。但し、Ar1は、前記式(1)で表される基ではない。2個のRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。]
で表される構造単位、及び下式
【化4】

[式中、r及びrrは、それぞれ構造単位(-Ar-NAr-)の数及び構造単位(−Ar−NAr−)の数を表し、それぞれ独立に、0又は1である。Ar2、Ar3、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。
Ar6、Ar7及びAr8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。]
で表される構造単位、からなる群から選択される少なくとも一種の構造単位とを有する化合物。
【請求項2】
式(1)で表される構造単位を2個以上有する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
さらに、式(7)
【化5】

(7)
で表される構造単位を1個以上有する請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Yで表される2価の基が、式(Y−1)〜(Y−8)のそれぞれで表される基
【化6】

[式(Y−1)〜(Y−8)中、R10〜R20は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Xは、水素原子又はハロゲン原子を表す。Xが複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。]
からなる群から選択される少なくとも一種の基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
重量平均分子量が3000以上の高分子化合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
さらに、式(8)
【化7】

[式中、n、m、R1、R、R及びR4は、式(1)におけるこれらと同じ意味を表す。]
で表される構造単位を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物と溶媒とを含有する溶液。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を含有する薄膜。
【請求項9】
基体と薄膜とを有する積層体であって、
前記薄膜は、請求項7に記載の溶液を該基体上に塗布して式(1)で表される構造単位を含む化合物を含有する塗膜を形成し、次いで、
該塗膜にエネルギーを加えて、塗膜に含有される式(1)で表される構造単位を含む化合物全体の内の少なくとも一部に含まれる式(1)で表される構造単位を式(8)で表される構造単位に変換して得られる膜である積層体。
【請求項10】
薄膜と基体とを有する積層体の製造方法であって、
請求項7に記載の溶液を基体上に塗布し、式(1)で表される構造単位を含む化合物を含有する塗膜を形成する工程と、
該塗膜にエネルギーを加えて、塗膜に含有される式(1)で表される構造単位を含む化合物全体の内の少なくとも一部に含まれる式(1)で表される構造単位を式(8)で表される構造単位に変換して膜を形成する工程とを有する積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−151464(P2012−151464A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283104(P2011−283104)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】