説明

化学気相堆積によって基質の上に分散した金属または金属合金のナノ粒子を調製する方法

金属または前記金属の合金(前記金属は、周期律表の列VIIIBおよびIBからの金属から選択される)の、1種以上の前駆体から、化学気相堆積(CVD)によって基質の上に分散された、ナノ粒子を堆積させるプロセスであって、そこにおいて堆積が50容量%以上の反応性酸化性気体を含む気体の存在下で遂行されるプロセス。
金属から、または金属の合金から、たとえば、銀からまたは銀合金から作られたナノ粒子がその表面に分散された、少なくとも1つの表面を含む基質。
化学反応、たとえばNO脱離反応、を触媒するための基質の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学気相堆積(CVD)によって基質の上に金属または金属合金のナノ粒子を調製する方法に関する。金属(単数または複数)は、周期律表の列VIIIBおよびIBからの金属から選択される。
【0002】
より具体的には、本発明は、基質上にCVDによって分散された銀または銀合金ナノ粒子を調製する方法に関する。
【0003】
本発明はまた、前記ナノ粒子が分散されている少なくとも一つの表面を含む基質に関する。
【0004】
本発明はまた、特に化学反応を触媒するための、前記基質の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
本発明の技術分野は、通常、基質または支持体(後者は稠密であるか、または多孔性である)の上に分散された金属ナノ粒子を含むナノ物質を調製する分野と定義される。
【0006】
これらのナノ物質は、エレクトロニクス、光学の分野において、および、特に環境を保護するための、特に触媒反応の分野で、応用を見出す。
【0007】
本発明の特に有利な応用分野は、空気中で見出される酸化窒素NOおよびNOのような汚染物質(これらの汚染物質は、特に、自動車の排気ガスに由来する)を除去する分野である。
【0008】
事実、汚染物質気体(VOC、炭化水素、CO、NOなど)の空気中への放出を大幅に減らすことを意図する、新EU指令は、当然、放出基準を満足させるために探索される生態学的および経済的解決策へと導く。なかんずく特定のガソリン車およびディーゼル車に対して、および焼却炉、セメント工場またはガラス工場の煙突に対して、課される現在および将来の制約のゆえに、NO排出の削減は、環境保全の分野における特例の研究題目の1つになった。学術的および工業的両方の、多数の研究チームは、「脱NO」反応に直接影響する種々のパラメータ、すなわち、支持体、反応性気体(CO、H、NH、炭化水素など)および、特に、NOの減少、または除去をさえ結果する可能性のある触媒系に注意を向けた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、したがって、主に、自動車または固定汚染源から由来する酸化窒素の処理に特に関係し、とりわけ、炭化水素の存在下でのNOの選択的触媒的還元(通常、H−SCRまたは「希薄混合気(lean)脱NO」プロセスとして知られている)を助ける、あるいは硝酸塩の形のNOを捕捉し、続いての還元、あるいはアンモニア法によるNOを除去する、触媒の導入の枠組みの中に存する。
【0010】
要約すれば、ディーゼルエンジンのように、大量の酸素を用いて作動する「希薄混合気燃焼(lean burn)」エンジンとして知られた直接ガソリン噴射エンジンの最近の出現は、新規な型の触媒コンバーターの開発を伴った。
【0011】
還元性汚染物質の接触酸化は、ディーゼルエンジンから出てくる強酸化性の気体流の中で少しの困難ももたらさないが、そのような媒体中のNOの(Nへの)還元は、現在まで解決されていなかった問題である。数種の触媒システムが研究されつつあり、更なる発展を必要とする。
【0012】
H−SCRプロセスによって働くそれらは、通常、金属酸化物に支持された(特に1種以上の貴金属からなる)金属相からなり、その金属酸化物は、通常、酸化セリウムと混合した酸化アルミニウムであり、それに、他の金属酸化物および/または列IIIAからの金属の酸化物が添加されるか、または添加されないこともある。連続流またはパルス流として導入された、還元剤の酸化は、酸化窒素を解離させることができる支持相の金属的特徴を維持する。支持体は、なかんずく、解離に由来する酸素を除去することを助ける。
【0013】
「NOトラップ」触媒として知られている触媒の特殊性は、希薄なおよび濃厚な状況下で連続的変化によって働くことであり、第一段階は、エンジンから出る気体排気物に存在するNOの、硝酸塩の形での、酸化と保存に相当し、第二段階は、それらの還元に相当する。この経路は、それがディーゼルエンジンの燃焼室の出口に存在する反応混合物に近いそれを必要とし、さらに、還元剤の使用においてはるかにより経済的であると思われるので、今日まで、自動車排ガス汚染規制の分野において最も魅力的であるとして提示されている。
【0014】
「脱NO」および「NOトラップ」触媒の開発中の金属の選択は、周期律表のVIII族の種々の元素から、より具体的には、パラジウム、白金およびロジウムの間で、なされる。従来、PtとRhの組合せが見つけられ、Ptは(希薄混合気段階(lean phase)の間の一酸化窒素の、および、アンモニアSCRプロセスにおいては、濃厚混合気(rich)すなわち還元的段階の間の還元剤の)酸化反応に関係していると推測されており、一方、ロジウムは、主に、Nを生じるNOおよびNOの還元反応に関係しているようである。これらの金属はまた、NOトラップ触媒上に蓄積された化学種(硝酸塩)の分解プロセスにおいて濃厚混合気段階において役割を果たす。
【0015】
この金属は、NOトラップ触媒における吸着剤、または、他のケースにおける酸素交換体、の役割を果たす酸化物によって、または、その上に堆積する:要約すれば、その役割は、第一のケースにおいては、希薄混合気段階の間NOを保存すること、および濃厚混合気の期間の間それらの還元を可能にすることの両方である[1]。これをするために、最も適当な材料は、それらの低い電気陰性度、またはそれらの高い塩基性のいずれかのおかげで、アルカリ金属およびアルカリ土金属(Ca、Sr、Ba、KまたはNa)である。事実、問題の元素の塩基性が高くなればなるほど、NOに対する親和性が大きくなる。この理由から、最も一般的に用いられる元素は、バリウムおよびストロンチウムである。第二のケースでは、酸化物は、酸化のための酸素容器を構成する。したがって、Ce、Prなどのような希土類元素に、または、Mn、Fe、Co、Niなどのような遷移元素に基づいたシステムの場合のように、それは優れたO交換特性を持たなければならない。
【0016】
他方、アンモニアまたは尿素による酸化窒素の選択的な触媒還元は、反応:
4NO+4NH+O→4N+6H
または
2NO+2NO+4NH→4N+6H
により、固定汚染源に由来する廃水を浄化するために現在使用されている。
【0017】
使われる触媒材料は、バナジウム、モリブデンおよびタングステンを保持する酸化チタン、あるいはゼオライトである。それらの欠点は、活性段階の、および極端な使用条件における支持体の不安定性、またはそれに続く老化、ならびにアンモニア漏れによる。これを避けるために、最近、ゼオライトマトリックス中にアンモニアを蓄えること、および、ついでそれを、NOを含む流体と反応させることが想定されてきた[2]。このプロセスが効果的であるためには、反応流における大量のNOが必須であり、それゆえに、反応温度でNOを一部NOへ酸化する必要がある。
【0018】
金属または金属合金の性質の他に、内容量および分散の最適化は、SCR反応におけるこれらの材料の効率を規定するので、触媒の開発の間は必須である。
【0019】
含侵/乾燥/溶融によって作られる金属粒子の、NO変換活性と大きさとの間の関係についての正確な研究が行われてきた。たとえば、オルソン(Olsson)ら[3]は彼ら自身、白金粒子がより大きく(直径およそ100nmに)なり、かつより分散するにつれて、NOのNOへの酸化が有利になることを確認した。他の最近の研究は、Agの化学的な形と量の影響が重要であることを示す、銀ベースの触媒による「脱NOx」反応における触媒反応の結果を挙げている:最高の「脱NOx」性能は、低い充填濃度(1〜3 重量%)に対しては、Ag触媒が主に+1の酸化状態で存在するとき、得られた。これらの2つの実例において、触媒は、NOの、ad−NO種(これは、続いて反応し、Nへの変換が可能な、NO、硝酸塩などのような中間反応体種を生成する)への酸化を促進する。
【0020】
さらにまた、金属の特性は、その粒子がナノメートル範囲の大きさを持つとき、変わることが知られている。Au、PtおよびIrのような貴金属は、それらがナノスケールサイズに達するとき、非常に活性になる。
【0021】
特に、銀ベースの前駆体の比較的低コストのゆえに、そして、この金属に基づいた材料の高い触媒能のゆえに、銀ベースの触媒は、特別の注目の対象であり、それらの触媒性能は、それらの分散の増加の、したがって、粒子の大きさの減少の結果として非常にわずかに上昇することが示された。
【0022】
実例として、NaBH、Nまたはアスコルビン酸のような穏やかな還元剤による、水溶液中のAgNOまたはAgClOの還元によって調製された、7〜15nmのサイズを持つ銀ナノ粒子は、水性媒体中でニトロ芳香族化合物をアミンに還元するプロセスにおいて非常に良い性能を持つ。
【0023】
通常、含浸は、酸化窒素NOを変換するのに用いられる触媒のような、銀に基づくことも、基づかないこともある坦持金属触媒を調製する主要なプロセスであるが、このプロセスは、高温の還元および酸化を含む数個の段階を必要とする。このプロセスは、およそ1〜10μmの凝集体サイズを提供する。
【0024】
含浸の他に、現在使用され、開発されている触媒は、他の従来の調製プロセス(たとえば、ゾル−ゲル法、共沈、その他など)によって堆積させられる。これらの従来のプロセスすべて(含浸、ゾル−ゲルプロセス、共沈)によって調製される触媒は、たとえば、通常300℃と500℃の間の温度領域においてNO変換活性を持つ。しかしながら、本当の難点は、ナノ粒子の大きさの制御に関して、特に50nm未満の大きさ(直径)を持つ粒子およびそれらの分散に関して遭遇される。そしてこれは、触媒反応収率および活性化温度に悪影響する。
【0025】
金属が基質の上に堆積することを可能にする他のプロセスは、有機金属化学気相堆積(OMCVD)として知られるプロセスである。このプロセスには、含浸または電析のようなプロセスと比較して、あるいは、物理気相堆積(PVD)技術と比較してさえ、多くの利点を持つ。確かに、OMCVDプロセスは、たとえばフォーム、ハニカム、セラミックのような触媒支持体、あるいはゼオライト、のような複雑な形状をもつ部分を、高真空領域、すなわち100〜500Paの領域において作業することを必要としないで、被覆することを可能にする。そして、そのことが、これを、たとえば物理気相堆積(PVD)プロセスと比較して、工業レベルに容易にスケールアップされうるプロセスとしている。
【0026】
さらに、OMCVD堆積過程は、「クリーンである」と称することができるプロセスであり、それは、とりわけ、ひどく汚染するプロセスである電気溶着と異なり、液体または気体の排出物を少ししか出さない。
【0027】
OMCVDプロセスは、特に、高性能触媒ナノ物質を調製することを可能にする。こうして、P.サープ(Serp)、R.ヒューラー(Fuerer)、R.モランチョ(Morancho)、P.カルク(Kalck)による文書、「ジャーナル・オブ・キャタリシス(Journal of Catalysis)」、157巻(1995年)、294〜300頁は、ヘリウムおよび水素の存在下での、二酸化ケイ素基質への低温OMCVDによる、非常によく分散したパラジウムナノ粒子を含む触媒の一段階調製を記載している。これらの触媒は、従来の含浸技術によって堆積させた触媒より勝れた、水素化に対する触媒活性を持つ。
【0028】
銀の具体的なケースでは、一般的にCVDプロセス、特にOMCVDプロセスが、唯一、今までのところ、連続層の堆積を可能にした、すなわち、それらが堆積する基質の全体を被覆することを可能にした。
【0029】
言い換えると、銀被膜の気相堆積のための方法に関して、この主題に関して利用できる数少ない科学的な研究は、主にエレクトロニクス、光学および磁気の分野で使用される平坦な基質の上への導電性銀の連続的薄膜の合成に関するだけである。
【0030】
こうして、サモイレンコブ(Samoilenkov)らによる文書「ケミカル・ベーパー・デポジション(Chemical Vapour Deposition)」、8(2)巻(2002年)74頁は、OMCVDによる銀の厚膜を堆積させるプロセスを記述している。得られた堆積物は、500℃を超える高い合成温度により、連続被膜の形または1μmより大きい直径をもつ島の形で存在する。
【0031】
同様に、文書仏国特許(A)2852971号明細書は、基質、特に半導体基質の上にCVDによって銀フィルムを堆積させる方法を記述している。堆積は、メシチレン、シクロヘキサン、キシレン、トルエンおよびn−オクタンのような溶媒に溶解したカルボン酸銀−ピバル酸銀が好ましい−である、銀の前駆体の溶液を使って遂行される。前駆体の溶解を進めるために、アミンまたはニトリルが溶液に添加される。
【0032】
堆積チャンバーは水素または酸素雰囲気下にある、すなわち、水素または酸素がH/NまたはO/N体積比が1以下であるか1に等しい、Nとの混合物の形で堆積チャンバーに導入される。これは、反応気体(OまたはH)が気体混合物中の少数成分であることを意味する。
【0033】
このプロセスは、薄い(50nm以下の厚みを持つ)または厚い(50nm〜1μmの厚さを持つ)連続層を得ることを可能にする。
【0034】
実施例においては、0.075(実施例1および2)ならびに0.8875(実施例4)のO/N流量比が使われ、各々の場合に、連続した銀被膜が得られる。したがって、このプロセスは、基質の上に分散した銀ナノ粒子を調製することを不可能にする。
【0035】
したがって、ここまで言及してきたことから見れば、通常、金属または合金のナノ粒子の大きさおよび形態、ならびに前記基質の上でのそれらの分散および濃度をも調整・制御することを可能にする、基質の上に金属または金属合金のナノ粒子を調製する、堆積させる、プロセスの必要性が存在する。
【0036】
また、たとえば酸化窒素NO脱離反応のための、触媒として使用されて、特に収率、選択性、および活性化温度、ならびに延びた寿命という点で、増大した触媒効果を持つ、基質上に金属または金属合金のナノ粒子を調製するための、堆積させるための、プロセスに対する需要が存在する。
【0037】
さらに、このプロセスは、経済的およびエネルギーの観点の両方で、簡単で、信頼性があり、低コストでなければならない。
【0038】
とりわけ、化学気相堆積によって基質の上に分散した銀ナノ粒子を堆積させることを可能にするプロセスに対する、まだ満たされていない要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明の目的は、なかんずく、これらのニーズを満たすことである。
【0040】
この目的、および更に他の目的も、本発明によれば、金属の(から作られた)、または、前記金属の合金の(から作られた)ナノ粒子を堆積させるための一つの方法によって達成され、前記金属は、周期律表の列VIIIBおよびIBからの金属から選ばれ、1種以上の前駆体から化学気相堆積(CVD)によって基質の上に分散され、そこにおいては、堆積は、50容量%以上の反応性酸化性気体から成る気体の存在において遂行される。
【0041】
好都合には、その金属は、銀、ロジウム、白金、パラジウムおよびイリジウムから選ばれる。
【0042】
合金から作られるナノ粒子の場合、前記合金は、好ましくは、周期律表の列VIIIBおよびIB(たとえばAg、Rh、Pt、PdおよびIr)からの金属と他のものとの合金から選択される。
【0043】
好都合には、ナノ粒子は、金属酸化物マトリックス(前記酸化物は、たとえば、Ca、Sr、Ba、K、Na、Ce、Pr、Mn、Fe、Co、Ni、などのような、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属または希土類金属の酸化物から選択される)または、炭素マトリックスの中に取り込まれるか、あるいはゼオライトと結合される。
【0044】
好都合には、堆積が遂行されるときに存在する気体は、反応性酸化性気体の、70容量%以上、望ましくは100容量%を含む。
【0045】
反応性酸化性気体は、酸素、二酸化炭素、オゾン、NOおよびそれらの混合物から選択される。
【0046】
堆積が遂行される際に存在する気体は、酸化性気体と不活性気体の混合物から成る。
【0047】
不活性気体は、アルゴン、窒素、ヘリウムとそれらの混合物から選択される。
【0048】
酸化性気体と不活性気体の前記混合物の中に、酸化性気体/不活性気体の流量比率は、(厳密には)1より大であり、それは、上記の条件に相当し、それによれば、本発明のプロセスにおいて、酸化性気体は、その存在下で堆積が遂行される気体混合物中に50容量%以上存在する。
【0049】
基本的に、本発明によれば、金属または金属合金、特に銀または銀合金の堆積は、大部分、酸素、COまたはこれらの気体の混合物のような反応性酸化性気体を含む気体−反応気体と呼ばれる−の存在下で行われるので、本発明によるプロセスは、基質の上にOMCVDによって金属、特に銀、を堆積させるための先行技術のプロセスとは根本的に区別される。
【0050】
言い換えれば、前記反応気体は、50容量%以上の反応性酸化性気体から成る。
【0051】
堆積が遂行される気体が気体と不活性気体の混合物からなるとき、この条件は、酸化性気体/不活性気体の流量比率が1以上であるという事実によって表されるが、文書仏国特許(A)2852971号明細書においては、この比率は1以下または1に等しい。
【0052】
通常、本発明によるプロセスは、液相の使用なしで、複雑な表面(2D)またはボリューム(3D)構造体の中に、たとえば触媒として、作用する金属または合金を堆積させることを可能にする。金属または合金の触媒は、特に、(稠密なまたは多孔性の)支持体の表面によく分散しているナノスケールサイズ(たとえば、直径1〜100nm)の粒子の形をしている。
【0053】
本発明によれば、(気体の性質、注入パラメータ、圧力のような)プロセスパラメータの制御が、比較的低い堆積温度(たとえば、しばしば400℃以下)で、不連続被膜を作成することを可能にする。このようにして得られた多孔性被膜は(稠密なまたは多孔性の)支持体の表面によく分散しているナノスケールサイズ(たとえば、しばしば直径約1〜100nm)の金属の島(複数)の形をしており、そのことはそれらに大きな活性表面領域を与える。本発明による合成技法は、その層の構成、とりわけ多孔性が、触媒への適用にとっての基本的な因子であるナノ粒子の大きさおよび分散に直接影響する、プロセスのある種のパラメータ(たとえば、反応性気体の性質および流量、前駆体の量、温度、圧力など)によって調整される層を作り上げることを可能にする。
【0054】
特に、金属または合金が触媒として作用する場合には、堆積条件の制御は、本発明のプロセスのおかげで、触媒凝集体の形態(大きさ)および濃度(分散度)を調節することを可能にする。得られた触媒堆積物の活性は、これらの2つのパラメータに密接に関連し、そして、そのことは、研究されたシステムに依存して、反応温度の低下によって、または反応速度の改良によって表される。最後に、一方では、触媒をその部分のボリュームの中に局所化させ、他方では、それをナノスケールで分散させる能力は、活性相の充填濃度の、したがって装置のコストの、特に貴金属を使用するそれらに関して、大きな低下を可能にする。
【0055】
特に、本発明によるプロセスは、驚くべきことに、OMCVD技法によって、基質の表面に分散した金属または金属合金のナノ粒子、より具体的には銀または銀合金のナノ粒子を調製することを可能にする。一方、たとえば文書フランス特許(A)第2852971号明細書によって表現された先行技術においては、基質の表面の全体を被覆する連続した被膜または層を調製することが可能であるに過ぎない。
【0056】
本発明によるプロセスのおかげで、初めて、「OMCVD」テクニックによって、基質のタイプに関係なく基質の上に、金属または金属合金に基づいた、特に銀または銀合金に基づいたナノ粒子を調製することが可能になった。これらの粒子は、基質または支持体の表面に非常によく分散している。この優れた分散は、特に、本発明のプロセスによって堆積される粒子の小さいナノスケール(ナノメータ)サイズに関連している。
【0057】
このサイズは、分散粒子の最も大きな寸法によって定義される。球体またはほぼ球体の粒子の場合、サイズは粒子の直径によって定義される。
【0058】
用語「ナノスケール(ナノメータ)」は、本発明のプロセスによって堆積した粒子が、一般に、1〜400nmのサイズ(好ましくは1〜200nm、より好ましくは1〜100nm、さらに良好には、5〜50nmのサイズをもつことを意味すると理解される。
【0059】
本発明によるプロセスは、基質の表面に非常によく分散している、ナノスケールサイズ(用語「ナノスケールサイズ」の意味はすでに上で定義された)の、たとえば銀から作られる、金属の島の形をしている、(ある場合には)多孔性の被膜を調製することを可能にするということが言われうる。
【0060】
粒子のある種の合体が観測される場合には、多孔性不連続被膜が得られる。
【0061】
すべての場合に、連続した被膜は、本発明によっては得られず、むしろ、分散した個々の(特に銀の)粒子の堆積が得られ、それは、任意に合体現象により結合してより大きいサイズの凝集体を形成するので、この堆積物は、そのとき、なお粒子の堆積からまぬかれていて、露出されたままである基質の表面の一部をもつ、多孔性または不連続な被膜とみなされる。
【0062】
驚くべきことに、本発明によって、酸化性気体の大部分の体積割合を占める特定の雰囲気の存在において堆積を遂行するという事実が、特に銀の場合、粒子、特に銀の粒子の形成を驚異的に結果し、連続被膜の形成を結果せず、これらの粒子は、加えて、先行技術の特定のプロセスにおけるよりはるかに小さい特異的ナノスケールサイズを持っていることが立証された。従って、これらの粒子、特に銀粒子は、そのうえ、先行技術におけるよりはるかに大きい、基質上への分散度を持つ。
【0063】
本発明によるプロセスの特別の気体雰囲気を使用することによって、連続的な均一堆積の代わりに、特別の、小さい、ナノスケールサイズの粒子、特に銀粒子(これらの粒子は、加えて、非常によく分散している)の形での堆積を得ることが可能であることを、先行技術を読んですぐ、推測させるように導くものは何もない。
【0064】
実例として、本発明によるナノ粒子の堆積の密度は、通常、μmにつき粒子10〜500個、好ましくはμmにつき粒子50〜200個である。
【0065】
上に記した本発明のプロセスの特異的長所の他に、本発明によるプロセスはまた、OMCVDプロセスの固有の長所すべてをもつ:この堆積は、あらゆる基質上で可能である、この基質の、非常に複雑な形態がどうであれ、その(滑らかなまたはラフな)表面仕上げがどうであれ、そして基質を形成している物質の性質がどうであれ、事実、堆積は、比較的低い温度、たとえば300℃以下、で遂行され、熱に敏感な材料から作られる基質でさえ、本発明のプロセスによる堆積を受けることができる。
【0066】
たとえば、本発明によるプロセスは、金属または金属合金の粒子、たとえば銀合金粒子または銀粒子の、気体排出物を処理するために分野で使用されるそれらと同じくらい複雑である形態(これは、たとえば、セラミックのハニカムまたはフォームの形をしている)を持つ基質の上への堆積を可能にする。
【0067】
本発明によるプロセスは、工業的に実行することが容易であり、通常、高真空を必要とせず、そして、特に電着のようなプロセスと比較すると、ひどく汚染性ではない。
【0068】
本発明によって分散されるナノ粒子は、とりわけ、炭素および/または酸素のオプションの導入をもつ、金属、特に銀のナノ粒子、あるいは、炭素および/または酸素の同様の任意の導入をもつ金属合金、たとえば銀合金、のナノ粒子である。
【0069】
金属合金は、上に定義されたような第一の金属の、他の任意に酸化された金属(第一の金属とは異なる)および炭素から選択された少なくとも1種の元素との合金から選択される。
【0070】
こうして、銀合金は、他の、任意に酸化された(銀以外の)金属、および炭素から選択される、少なくとも1種の元素と銀の合金から選択される。
【0071】
本発明によるプロセスのもう一つの利点はその大きな融通性である。それが、事実、銀以外に、ほとんどさまざまな金属またはこれらの金属の酸化物を堆積させるからである。したがって、任意の合金化される元素の選択に関して、広範囲にわたる選択が可能である:炭素、金属(貴金属であっても、なくてもよいし、酸化されていても、されていなくてもよい)。
【0072】
好ましくは、銀と合金化する他の金属は、白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムのような貴金属から選ばれる。
【0073】
本発明によれば、二元合金の、たとえばAg/Rhの粒子、Ag/Pt/Rhのような三元合金の粒子、ならびに、少なくとも1種の金属および少なくとも1種の酸化物を含む複合粒子を調製することが可能である。
【0074】
前記酸化物は、おそらく、アルカリ金属、アルカリ土金属、遷移金属または希土類金属の酸化物のような、上にすでに述べた酸化物から選ばれる。さらに、単一の金属だけを堆積することが、本発明のプロセスにより可能であり、あるいは、その各々が異なる金属または合金からなる数種の異なる粒子を同時に堆積させることも可能である。
【0075】
前駆体は、通常、有機金属化合物(それらが、銀のような金属(単数または複数)、あるいは銀と合金を形成する他の金属の任意の前駆体であろうとなかろうと)であり、固体であっても液体であってもよい。他の前駆体は、とりわけ金属硝酸塩である。
【0076】
有機金属の前駆体は、通常、金属カルボキシル酸塩およびβ−ジケトナト金属から選択される。
【0077】
銀または銀合金のナノ粒子を調製することが要求されるとき、有機金属前駆体は、そのとき、必然的に少なくとも1種の銀前駆体を含むことが明白である。
【0078】
たとえば、銀前駆体は、通常、式RCOAgのカルボン酸銀(式中、Rは1〜10個の炭素原子、好ましくは3〜7個の炭素原子を持つ線状または分岐状のアルキル基を表す)、およびテトラメチルヘプタンジオナト銀のようなβ−ジケトナト銀から選択される。
【0079】
好ましくは、銀の前駆体はピバル酸銀である。
【0080】
好都合には、有機金属の前駆体(単数または複数)は、基質が置かれている密閉チャンバーに通常注入される有機溶剤の、このまたはこれらの前駆体の溶液の形で使用される。
【0081】
溶液中の前駆体(単数または複数)の濃度は、通常、0.01〜0.6モル/lである。
【0082】
前記溶液は、その溶液が少なくとも1種の銀前駆体を含む場合には、好都合には、銀前駆体(単数または複数)を溶解することをより容易にするためにアミンおよび/またはニトリルを含む。
【0083】
溶液中のアミンおよび/またはニトリルの濃度は、通常、0.1容量%より大きく、好ましくは、このアミンおよび/またはニトリルの濃度は0.5〜10容量%である。
【0084】
前記溶液の溶媒は、通常、蒸発温度が前駆体(単数または複数)の分解温度以下にある溶媒から選択される。
【0085】
溶媒は、好ましくは、メシチレン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、n−オクタン、アセチルアセトン、エタノール、水およびそれらの混合物のような、室温から200℃以下で、標準圧力条件下で液体である有機化合物から選択される。
【0086】
溶液に任意に含まれるアミンは、通常、n−ヘキシルアミン、イソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、エタノールアミンとジイソプロピルアミン、ポリアミン、およびそれらの混合物のような、第一、第二、または第三モノアミンから選択される。
【0087】
溶液に任意に含まれるニトリルは、通常、アセトニトリル、ワレロニトリル、ベンゾニトリルおよびプロピオニトリルならびにそれらの混合物から選択される。
【0088】
堆積は、通常、低温で、すなわち、500℃以下の、またはそれに等しい、好ましくは400℃以下の、またはそれに等しい、より好ましくは300℃以下の、またはそれに等しい、さらによりよくは250℃〜290℃の、基質温度で遂行される。
【0089】
これは、本発明によるプロセスの一つの追加的長所、多数の基質に適合する低温で粒子を堆積させることを可能にするという長所である。
【0090】
堆積は大気圧で遂行することが可能であるが、真空下で、たとえば300〜1000Paの圧力(これは、非常に高い真空ではなく、作り出すことが容易である)で遂行することが可能である。
【0091】
堆積時間は、通常、2〜90分、好ましくは5〜30分である。
【0092】
堆積は、好都合には、「LF」、「RF」または「パルスDC」のプラズマ励起のように、プラズマ支援され、またはプラズマ強化される。
【0093】
基質は、通常、多孔性の基質と稠密な基質から選択される。
【0094】
基質は、通常、アルミナ、セリン(cerine)、ジルコニアのようなセラミック、シリコン、ゼオライト、鋼および織物から選択される材料である(から作られる)。
【0095】
本発明はまた、金属の(から作られる)、または、前記金属の合金の、ナノ粒子が分散している、少なくとも一つの表面を含む基質に関しており、この金属は、周期律表の列VIIIBおよびIBの金属から選択される。前記金属は、好ましくは、Ag、Rh、Pt、PdおよびIrから選択される。
【0096】
合金の場合、前記合金は、好ましくは、周期律表の列VIIIBおよびIB(たとえば、Ag、Rh、Pd、PtおよびIrとその他の一つ)から選択される。
【0097】
とりわけ、本発明は、銀または銀合金のナノ粒子が分散している、少なくとも一つの表面を含む基質に関する。
【0098】
炭素および/または酸素は、任意に、前記粒子に、たとえば、1原子%の量で組み込まれる。
【0099】
通常、前記の分散したナノ粒子は、1〜400nmの、好ましくは1〜200nmの、より好ましくは1〜100nmの、さらによりよくは、5〜50nmの大きさを持つ。
【0100】
通常、前記ナノ粒子は、μmにつき10〜500個、好ましくはμmにつき50〜200個という、基質の表面上の密度を持つ。
【0101】
粒子のあるものは合体し、こうして基質の表面に不連続の多孔性被膜を形成することが可能である。
【0102】
それらの表面のうちの少なくとも一つに、分散したナノスケール(ナノメータ)の金属または金属合金の粒子、特にナノスケールの銀または銀合金の粒子を持つ基質は、先行技術において記述されておらず、本質的に新規である。
【0103】
前記基質は、光学装置または電子装置の構成成分として使用されうるが、それらの好ましい用途は、触媒の分野においてである。特に粒子の高分散およびそれらの小さいサイズのゆえに、ナノ構造化触媒と定義される本発明による基質は、先行技術の触媒、特に、非常に良くは分散しておらず、非常に活性ではない先行技術の銀ベースの触媒より、大きな、非常に高い触媒活性を持つ。
【0104】
この触媒活性は、低温においても存在する。事実、本発明による基質によって構成される触媒は、特にそれらが銀に基づく場合、白金ベースの触媒のそれに匹敵する活性を持ちうるが、白金よりはるかに安価で、はるかに希少ではないという決定的な利点をもつ。
【0105】
言い換えると、この基質の、とりわけ本発明による触媒として働く基質の有利な特性は、本質的に、本発明によるナノ粒子を、調製するための、堆積させるための、プロセスから生じる。
【0106】
本発明による基質、とりわけ本発明にしたがって触媒として働く基質のこれらの有利な特性は、特に、本発明による合成プロセスによって惹き起こされるナノ構造化から起こる。
【0107】
これは、化学気相堆積プロセスによるナノ構造化材料の合成が、活性部位の数を数桁の大きさだけ増加させることによって、そして、従来の調製プロセスによるよりももっと容易に定義される、合金およびコンポジットのような混合化合物を形成させることによって、触媒活性を非常に強力に増加させることを可能にさせるからである。一方でその部分のボリューム中に触媒を局所化させ、かつ他方でそれをナノスケールで分散させる能力が、さらに、触媒充填濃度のかなりの低下を可能にし(その濃度は、たとえば、含浸のような従来のプロセスに比較して10倍の桁だけ低くなりうる)、したがって、装置、特に白金、ロジウムなどのような貴金属を使用する装置に関して、装置のコストの低下を可能にする。
【0108】
これを理解することによって、本発明によるプロセスおよびこのプロセスによって調製される基質は、以下の利点を結合することによって技術飛躍を構想することを可能にしうる:
−触媒システムのコストを削減させること:一方で触媒充填濃度をかなり減少させ、かつ他方で(貴金属を非貴金属または酸化物に置換する)関係するシステムの化学的性質に影響する能力は、システムのコストをかなり(約5%の予期される節減で)低下させることを可能にする、
−エネルギーのコストを削減させること:CVDによって堆積したナノ構造の触媒の上で遂行された特性評価からの結果は、収率および選択性の点で、そしてまた、触媒反応の活性化温度(少なくとも100℃の温度低下)の点で、触媒効果が既存のテクノロジーと比較して大幅に改善される、したがってエネルギーコストを削減させるであろうと考えることを可能にする:例として、200℃に近い温度でNOのNOへの酸化反応を起こすという事実は、燃料消費量とCOの生成を劇的に減らすという直接の結果をもつ:目安として、余剰燃料消費量の約50%の減少が予想される、
−耐用期間に関する向上:低い反応温度のもう一つの長所は、より低いエネルギー消費を別として、それらの焼結またはそれらの熱劣化を防ぐことによる触媒の限定された失活である。
【0109】
従って、本発明はまた、化学反応を触媒するための、上述の基質の使用に関する。
【0110】
この化学反応は、前述の金属または金属合金の一つ(たとえば、銀)に基づいた触媒によって触媒されうるあらゆる既知の反応であることができる。
【0111】
それは、たとえば、好ましくは選択的な、酸化反応(例:メタノールの酸化、オレフィンのエポキシ化、炭化水素の制御された(穏やかな)酸化、COの酸化、NOの分解、メタノールおよびエタノールのような軽アルコール類の改質)、あるいは、たとえば燃料電池における、気体の改質、あるいは空気を浄化するための反応、のような気相での反応でありうる。
【0112】
それは、液相での、特に、たとえば水を浄化するための、水相での反応でありうる。
【0113】
本発明による基質はまた、水素化/脱水素反応を触媒するための、あるいは、たとえば燃料電池において起こる他の反応を触媒するための、水素透過用膜として使用される。
【0114】
上述の基質の好ましい使用は、NOまたはNOのような酸化窒素を酸化および/または還元によって取り除くための、分解反応である化学反応の触媒作用にある。
【0115】
事実、本発明による基質は、たとえば、自動車のための「NOトラップ」として知られている触媒で遂行される反応中の、NO脱離反応の触媒効率を大きく上げることを可能にする高性能触媒システムを提供する。
【0116】
事実、上に示したように、Pt、Pd、Rh、Irなどのような貴金属元素および/またはAgのような非貴金属元素に基づいた「ナノ構造化触媒」として定義され、酸化物基質(Ca、Sr、Ba、KまたはNaのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、またはMn、Fe、Co、Niのような遷移金属の酸化物、または、CeまたはPrのような希土類金属の酸化物)に閉じ込められていることも、いないこともあり、あるいは、ゼオライトと結合しているかもしれない、本発明の基質は、低温での、たとえば300℃以下での窒素酸素放出を可能にし、したがって、以下のようなプロセスにおける触媒としての直接利用を見出す:
−良好なNO含有量を得るために、ゼオライト材料の上でのアンモニア−SCRプロセスによる、固定源(焼却炉、セメント工場、ガラス工場、発電所、など)から生じるNOの除去、
−金属ナノ粒子が還元剤を簡単に酸化し、こうしてそれを活性化し、かつ、同時に、上述の、酸化のより進んだ、より反応性のNO種を生み出す、H−SCRプロセスによる移動源から生じるNOの除去、および
−金属ナノ粒子が、低温においてさえ、NOを硝酸塩へ容易に酸化することが可能なNOトラッププロセスによる移動源から生じるNOの除去。
【発明を実施するための最良の形態】
【0117】
さて、本発明は、添付の図面に関してなされる、例証としてかつ非制限的に示される、あとに続く説明において更に詳細に記述される。
【0118】
より具体的には、本発明によるプロセスを遂行するために、通常前駆体(単数または複数)を含む液体状態の組成は、通常まず、蒸発装置すなわち気化器へ送られる。
【0119】
前駆体(単数または複数)を含む組成は、好ましくは、上に示唆したように、前駆体(単数または複数)の溶液の形で存在し、前記溶液は、好ましくは、問題の前駆体が銀前駆体であるとき、溶液中の前駆体の解離を促進するために、二トリルおよび/またはアミンを含む。
【0120】
前記前駆体(単数または複数)は、通常、有機金属化合物である。用語「有機金属化合物」は、金属硝酸塩をも意味すると理解される。その溶液は、唯一種の前駆体だけを含んでいることもあり、その場合、それは、たとえば銀の有機金属化合物である。溶液が数種の前駆体を含むならば、これらの前駆体の一つは、第一の金属の前駆体、たとえば銀有機金属化合物であり、他の前駆体(単数または複数)は、基質の上に、銀のような第一の金属、およびこの、他の金属、またはこれらの、他の金属の合金を形成するために、第一の金属と異なる、たとえば、銀と異なる、他の金属の有機金属化合物である。
【0121】
銀および他の金属両方の好ましい有機金属の前駆体がβ−ジケトナト金属およびカルボン酸金属から選択されることは、上に見られた。
【0122】
こうして、好ましい銀の前駆体は、β−ジケトナト銀およびカルボン酸銀から選択される。特に好ましい銀の前駆体はピバル酸銀であり、これは、カルボン酸銀Ag(OCR)(ここで、Rは、好ましくは3〜7個の炭素原子を持つアルキル基である)のような前駆体で遭遇する低揮発性問題を、および、通常、フッ化有機金属前駆体で遭遇される汚染の問題をも避けることを可能にする。
【0123】
蒸発装置を出るとすぐ、前駆体を含む組成、たとえば溶液は、その上に堆積が遂行される基質または支持体を含むチャンバーに導入される。
【0124】
本発明によるプロセスは、非常に複雑な形状を持つ基質の上にさえ、金属粒子の、たとえば銀粒子の、堆積を可能にするので、基質または支持体はあらゆる形体を持ちうる。基質は、多孔性基質から、または、稠密で、非多孔性の基質から選択されうる。
【0125】
基質はあらゆる表面仕上げを持つことができ、ざらざらであったり、平滑であったりする。
【0126】
基質の大きさは限定されず、小さいサイズと大きいサイズの両方の基質が、本発明のプロセスによる堆積を受けることができる。
【0127】
基質はいかなる材料からでも、そして、使われる比較的低い堆積温度のおかげで、熱に比較的敏感な材料からでさえも作られる。
【0128】
基質は、たとえば、セラミック、シリコン、ゼオライト、鋼または織物から選択された材料から作られる。
【0129】
蒸発装置に入る前、溶液のような組成物は、通常、周辺温度で容器内に保存される。
【0130】
前駆体組成物の蒸発は、当業者に知られている種々の装置を使って遂行される。
【0131】
好ましい例として、「ケミストリー・オブ・マテリアルズ(Chem.Mat.)」13巻、3993頁(2001年)に記載された装置に言及することができ、「InJect−純粋であるか、または溶液の形で存在する液状前駆体を注入し、蒸発させるためのシステム」という名前の下にジペレク社(Jipelec)によって販売されている。被覆される基質の温度(これは、通常、堆積チャンバーの温度と同じであり、堆積温度であると定義される)は、本発明によれば、通常、比較的低い温度、すなわち500℃以下またはそれに等しい、好ましくは300℃以下またはそれに等しい、たとえば280℃、である。
【0132】
そのような低温は、熱に敏感である基質の上への銀粒子の堆積を可能にするという長所をもち、それは、はるかに高い温度で操作する他のプロセスによっては可能ではなかった。
【0133】
堆積チャンバーは、密封された反応器および容器から成り、その中には、(ボリュームで)大部分、本発明によれば、反応性酸化性気体を含む反応気体と呼ばれる気体から成る雰囲気が存在する。
【0134】
堆積チャンバー内には、大気圧、またはそれ以下の圧力(真空下のチャンバー)、たとえば15トール以下またはそれに等しい圧力が確立されうる。
【0135】
本発明によるプロセスは、好都合には、プラズマ強化されるか、またはプラズマ支援される。
【0136】
プラズマ強化型技術は、それらも低い反応温度を使うという点で、有機金属の前駆体を利用する化学気相堆積プロセス(PA−またはPE−CVD、すなわち、プラズマで支援される、またはプラズマ強化される化学気相堆積として知られている技術)と相補的である。
【0137】
プラズマ励起のタイプは、たとえば、低周波(LF)、高周波(RF)またはパルス直流(パルスDC)のプラズマ励起から選択することが可能である。
【0138】
プラズマ強化は、更なる表面構造化の可能性を提供することを可能にする。
【0139】
コールドプラズマは、したがって、任意に、支持体のまわりに付加される。堆積がプラズマの存在下で遂行されるとき、金属または金属合金のナノ粒子、たとえば銀または銀合金のナノ粒子を受けとろうとする支持体または基質は蒸発器中にあるのと同じ温度に保たれることで十分である。プラズマが存在しない場合、前記支持体が蒸発器のそれより高い温度で存在することが必要であり、反応器の壁面に銀の堆積を防ぐために、温度差は少なくとも20℃に等しいか、好ましくは少なくとも50℃に等しい。
【0140】
酸化性気体の使用によって惹き起こされる界面エネルギーの変化および粒子境界は、本発明によれば、上に規定した比較的低い堆積温度で、分散した金属または金属合金、たとえば銀または銀合金のナノ粒子の堆積物、たとえば不連続の被膜を作り出すことを可能にする。
【0141】
すでに上で示されたように、本発明によるプロセスによって得られる堆積物は、特にナノスケールサイズの(すなわち、たとえば1〜400nmの寸法、たとえば直径をもつ)金属的島(それは、稠密であろうと、多孔性であろうと、基質または支持体の上によく分散している)の形で存在する多孔性被膜と定義され、それは、その島に、たとえば触媒利用のための必須の条件である、大きな活性の表面積を与える。
【0142】
本発明のプロセスによって遂行される、金属または金属合金のナノ粒子、たとえば銀ナノ粒子または銀合金ナノ粒子の堆積物の組成、形態および特に多孔性は、反応性気体の性質および流量、前駆体の量、温度ならびに圧力のような、ある種のパラメータに影響することによって、しかしながら、その存在下で堆積が遂行される、その気体が、特に酸化性気体/不活性気体流量比率>1での、優勢の量比の酸化性気体を常に含むという条件付きで、制御されるか、または調整される。
【0143】
本発明のプロセスの実施は、それらが堆積した支持体への良好な密着性をもつ、金属をベースとした、たとえば銀をベースとした、ナノ粒子を得ることを可能にする。ナノ粒子の大きさは、プロセスパラメータに依存して、特に、酸化性気体/不活性気体流量比率(常に、この比率を>1に保ちながら)に、金属前駆体の流量、および、最後に実験時間に依存して、変化する。一般に、被膜は非導電性で、視覚的には艶消しの外観をもつ。
【0144】
本発明によるプロセスの実施に特によく適しており、上記の例において使用されたそれである装置は、ジペレク社(Jipelec)から販売された、上に挙げたタイプ「InJect」の蒸発装置(これは、化学気相堆積チャンバーに結合している)を含む。
【0145】
「InJect」装置は、4つの主要な部品からなる:
−前駆体の化学溶液(単数または複数)を保存するための容器(単数または複数);ナノ粒子が単一の金属から成る場合には、単一の貯蔵容器が準備される;有機金属の前駆体(複数)が共通溶媒に溶解されることができない合金の場合には、数個の貯蔵容器が使われる、
−たとえば、溶液を貯蔵容器に供給するための1個以上の配管または導管によって接続された石油またはディーゼルエンジン注入器タイプの、そして電子制御装置によって駆動される、1個以上の注入器、
−搬送ガスまたは中性の不活性搬送体(たとえば窒素)を供給するための配管または導管、および
−蒸発装置(蒸発器)。
【0146】
被覆されるべき基質を含む、化学気相堆積チャンバーは、加熱手段、酸素のような反応性酸化性気体の供給、ならびに、ポンプ輸送、および圧力、または真空下で働かせるならば減圧を制御するための手段を含む。蒸発器は、加熱手段を具備しており、蒸発器と同じ温度に保たれている導管によって化学気相堆積チャンバーに接続している。
【0147】
化学気相堆積チャンバーおよびその中に置かれている被覆されるべき基質は、通常、プラスの温度勾配を作るために蒸発器の温度より高い温度に保たれる。銀前駆体を含む化学溶液は、たとえば、1バールまたは2バールの圧力に保たれた加圧容器に導入され、ついで、前記容器から真空下で保たれている蒸発器に注入器を通して(圧力差によって)送られる。注入流量は、マイクロソレノイド弁であると考えられ、コンピュータよって支配される注入器の開口時間および振動数に作用することよって制御される。
【0148】
化学反応は、O、HまたはCOのような反応性気体からなる反応気体の存在下で、かつ、通常2000Pa以下またはそれに等しい圧力の下で遂行される。
【0149】
特に、本発明によるナノ粒子の化学的性質(銀である少なくとも1種の貴金属および任意に数種)および形態(ナノスケールサイズの非常によく分散した活性部位の大多数)(すなわち銀または銀合金のナノエレクトロニクス粒子が分散されている基質)のゆえに、それらはエレクトロニクス、光学および、特に、たとえば環境保全のための触媒反応の分野における優れた候補であると思われる。例として、それらは、こうして、気相(汚染防除する空気)において酸化することに対して、および水相(汚染除去水)において酸化することに対して、直接的応用を見出すが、それらはまた、水素透過(燃料電池のための改質気体、水素化/脱水素)のための膜として使用され、あるいは、燃料電池の分野における他の反応を触媒することを可能にする。
【0150】
さて、本発明は、例証のためかつ非限定的に与えられる、以下の実施例に関して記述される。
【実施例】
【0151】
実施例1および2
これらの実施例では、20ppi(1インチ当たりの細孔数)のアルミナ−ジルコニアフォームから成る多孔性セラミック基質の上への、または、シリコンウエハから成る平坦な基質の上への銀粒子の堆積を行った。
【0152】
堆積は、先に述べたような堆積チャンバーに結合した「InJect」蒸発装置を用いて行った。
【0153】
溶解を促進するためにジイソプロピルアミン(iPrNHまたは[(CHCH]NH)を添加したメシチレンである溶媒の中に溶解した有機金属前駆体、ピバル酸銀AgPiv(Ag(tBuCO))、から成る溶液からの堆積を遂行した。最終の前駆体濃度は0.05モル/lであった。
【0154】
蒸発器および基質の温度は、それぞれ、170および280℃に固定した。
【0155】
これらの2つの実施例の他の操作条件は、下の表1に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
実施例3
本実施例では、比較として、実施例1および2からの基質と同じ基質の上へ、以下の条件下で、化学気相堆積(CVD)テクニックによって銀の堆積を行った:
−銀ターゲット:バイアス電圧:−100V、
−圧力:1Pa、
−気体:アルゴン、および
−ターゲット上の電力:10W/cm
【0158】
実施例4
本実施例では、比較として、堆積が15容量%の水素および85容量%の窒素から成る還元雰囲気の下で遂行するという唯一の違いをもって、実施例1の場合と同じ条件の化学気相堆積テクニックによって、かつ、同じ装置で、銀の堆積を行った。
【0159】
実施例1〜4で行った堆積物の特性評価
−走査型電子顕微鏡による実施例1および2からの堆積物の特性評価
実施例1(図1、2、3および4)の場合に、直径50〜100nmの銀のナノ粒子(そのうちのあるものは、合体の開始に入った−それは、直径で数百nmの凝集体の形成によって示された)からなる堆積物が得られた。ナノ粒子の密度は、この実施例では、cmにつき0.3×1011個であった。
【0160】
実施例2(図5、6、7、8および9)の場合、直径5〜50nmの非合体銀ナノ粒子から成る堆積物が得られた;ナノ粒子の密度は、この場合、cmにつき1012個に近かった。
【0161】
両方の実施例に関して、こうして作られた堆積物は、付着性で、非導電性で、得られた堆積物のX線回折図[(図10(上:実施例1、下:実施例2)に示す]に見られるように、fcc構造で結晶化していた。
【0162】
その上、ナノ粒子はよく分散していた。これは、基質の性質または形状に関係なく、それが平坦で、Siからできていようが、多孔性で、セラミックフォームからできていようが、そうであった。
【0163】
多孔性基質の場合には、堆積物は、細孔の中のナノ粒子の存在でもって完全に構造に浸透した。
【0164】
−ラザフォード後方散乱スペクトロメトリ(RBS)による、実施例1、2、3および4において行った堆積物の特性評価
酸化性雰囲気(O90%)下での本発明にしたがって、実施例1の条件下で行った堆積物のRBSスペクトルは、2本のピークが重なったシリコンピークにまで減少した、表面に大きな銀のピークを持っていた:これは、堆積物が均一でないこと、そして、光線との直接接触においてシリコン表面の一部を残す銀の島の形で存在することを確認することを可能にした。RBSテクニックはさらに、(1原子%のオーダーの)被膜の全厚みにわたって小さな炭素汚染を立証することを可能にした。この元素は、PVDよって遂行された堆積物の場合には検出されなかった(実施例3)。
【0165】
実施例1の場合におけると同じ条件下であるが、還元雰囲気(H15%)の下で行われた堆積物(実施例4)は、より低い強度の特徴的な銀のピークを持っていた。それは、より稠密であるように見え、表面と界面の間の濃度のわずかな勾配、および(10原子%のオーダーの)より高い炭素汚染を持っていた。この元素炭素の存在は、主に前駆体および溶媒の分解に由来した。
【0166】
注意:試験は、少量の割合のOの存在で遂行されたが、堆積物があまりにわずかであったので、特性付けることが不可能であった。
【0167】
実施例5
本実施例においては、触媒効率は、実施例1(本発明による)および4(本発明によらない)において、異なる雰囲気で、OMCVDによって行われた2種の堆積物に関して試験した。この触媒効率は、気相酸化法において、より具体的には、メタノールの酸化反応に関して、試験した。
【0168】
還元雰囲気下で遂行した堆積物(実施例4、本発明によっていない)はゼロ触媒活性を持っていた。実施例1(本発明による)で遂行した銀の堆積物に関して、酸化性雰囲気下で遂行した試験からの結果だけを示す(表2および3)。あまりよく分散されていない、あまり活性でない普通の銀をベースとした触媒に反して、ここでは触媒活性が100℃から観察されたので、この結果は非常に立証的であった:より稀少で高価な材料である白金から作られた触媒で通常得られる結果に匹敵する結果。
【0169】
たとえメタノールの転化が低温では部分的だけであるとしても−そのことは、さらに、たとえばオレフィンのエポキシ化、炭化水素の限定的酸化、COの酸化、NOの分解、メタノールおよびエタノールのような軽アルコール類の改質のような、他の選択的酸化反応用途が期待されることを可能にする−この転化は、曖昧さなしに、本発明のプロセスによって調製されるこの触媒の効率が高いこと、より小さい粒径の結果、および、したがってはるかに大きい分散の結果を示す。
【0170】
表2および3:本発明による実施例1(N10%、O90%)の操作条件下で多孔性セラミック基質(アルミナ−ジルコニアフォーム、20ppi)の上にOMCVDによって堆積された銀被膜のメタノール転化プロセスの触媒効率
【0171】
【表2】

【0172】
【表3】

【0173】
実施例6〜10
あとに続く堆積実施例においては、金属(Ag、RhまたはPt、あるいは、Ag/Rh金属合金)から成る触媒のナノ粒子の堆積を、たとえば20ppiのアルミナ−ジルコニアフォームである多孔性セラミック基質、または400cpsiのアルミナ−セリンハニカム、あるいは、シリコンウエハである平坦な基質の上で行った。より具体的には、実施例6においては、基質は、20ppiのアルミナ−ジルコニアセラミックフォームから作られた多孔性基質であった、実施例7においては、基質は平坦なシリコン基質であり、実施例9においては、基質は平坦なシリコン基質であった、そして、実施例10においては、基質はシリコン基質であった。
【0174】
堆積は、先に述べたような堆積チャンバーに結合した「InJect」蒸発装置を使って行った。
【0175】
堆積は、有機金属の前駆体を含む化学溶液から行なった。実施例で使用した化学溶液は、以下であった:
−銀に関して:溶媒(メシチレン)に溶解した、ピバル酸銀AgPiv(Ag(tBuCO))、そこへ、溶解を促進するために分子ジイソプロピルアミン(iPrNH=[(CHCH]NH)を添加した。最終的な前駆体濃度は、0.05モル/lであった、
−パラジウムに関して:アセチルアセトンに0.03モル/lの濃度で溶解した、アセチルアセトナトパラジウムPd(C
−白金に関して:アセチルアセトンに0.02モル/lの濃度で溶解したアセチルアセトナト白金Pt(C;および
−ロジウムに関して:トルエンに0.02モル/lの濃度で溶解したアセチルアセトナトロジウムRh(C
【0176】
溶媒の選択は、有機金属前駆体の性質に依存して行った:金属合金(たとえばAg/Rhのような二元合金、またはAg/Pt/Rhのような三元合金)、あるいは金属/酸化物(アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物)複合合金の場合の場合には、溶媒は、種々の前駆体に共通であってもよいし、あるいは異なってもよい(前駆体の数種の独立したソースからの蒸発)。
【0177】
蒸発器および基質の温度は、それぞれ200および350℃で固定した。実施例の他の操作条件を下の表4に示す:
【0178】
【表4】

【0179】
実施例6〜10で行った堆積物の特性評価
−走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)による、実施例6、7および9(図14、15および16)において行った堆積物の特性評価
【0180】
実施例6、図14、の場合には、直径50〜100nmの銀のナノ粒子から成る堆積物が得られた。それは、約40nmの距離の間隔をもち、20ppiのアルミナ−ジルコニアセラミックフォームであるマクロポーラス支持体の上に堆積していた。このナノ粒子の密度は、本実施例では、粒子100個/μmに近かった。化学分析によって推定された触媒充填濃度は、約0.020%(または、約200μg/g)であった。
【0181】
実施例7、図15、の場合には、約10nmの間隔をおいた、直径20nmの銀のナノ粒子から成る堆積物を得た。この場合、ナノ粒子の密度は、粒子270個/μmに近かった。触媒充填濃度は、約0.010%(すなわち約100μg/g)であった。
【0182】
実施例9、図16、の場合、合体していない白金ナノ粒子からなる堆積物が得られた;
この場合、ナノ粒子の密度は、粒子170個/μmに近かった。触媒充填濃度は、約0.015%(すなわち約150μg/g)であった。
−透過型電子顕微鏡(TEM)によって、およびX線回折によって、実施例10において行った堆積物の特性評価
【0183】
実施例10、図17、の場合、約5〜20nmの間隔で配置された、直径5〜20nmの銀およびロジウムナノ粒子から成る二種の金属からなる堆積物を得た。この場合、ナノ粒子の密度は約410個の粒子/μmであった。触媒充填濃度は、約0.035%(すなわち約350μg/g)であった。透過型電子顕微鏡によって作られた回折図形(17A)から、およびX線回折によって得られた線図(図17Bおよび17C)からも、2種のAgおよびRh金属相の存在が見られ、それは、触媒の熱的安定度に関して、より有利であると予見された。
【0184】
上記の実施例の観点において、充填濃度が、含浸または他のゾル−ゲル法のようなプロセスと比較して非常に低いままであったこと、およびそれらは0.1〜0.5%のオーダーであったことを認めた。
【0185】
RBSテクニックは、さらに、1原子%のオーダーの、被膜の厚さ全体にわたって炭素汚染を立証することを可能にした。含浸あるいはゾル−ゲル法によって作られ、ついで乾燥/か焼段階を経た被膜の場合には観測されなかった元素。この元素炭素の存在は、主に前駆体および溶媒の分解に由来する。
【0186】
実施例11
本実施例では、実施例6からの堆積物の性質を、現場での(in situ)かつ操作中の(operando)赤外線(FTIR)特性評価で示した。
【0187】
実験は、周辺温度で、PNO=1000ppm、PO2=10%という反応流の下で行った。
【0188】
表示の目的で、これらの2つの実験的なアプローチから生じる銀ナノ粒子で被覆された表面でのNO吸着試験の第一の結果は、図19Aおよび19Bの中に示す:NOのNOへの、ついで硝酸塩への酸化は、周辺温度においてでさえ、銀ナノ粒子の強い酸化性能を示した(中間的反応種は、Nへ転化されることが可能である)。
【0189】
(参考文献)
[l] N.ミヨシ(Myioshi)、S.マツモト(Matsumoto)、K.カトー(Katoh)、T.タナカ(Tanaka)、K.ハラダ(Harada)、N.タカハシ(Takahashi)、K.ヨコタ(Yokota)、M.スギウラ(Sugiura)、K.カサハラ(Kasahara)、SAE・テクニカル・ペーパーズ(SAE Technical Papers)シリーズ番号No.950809(1995年)。
[2] M.リヒター(Richter)、R.エッケルト(Eckelt)、B.パーリッツ(Parlitz)、R.フリッケ(Fricke)、Appl. Cat. B: Environmental 151(1998) 129。
[3] L.オルソン(Olsson)、E.フリデル(Fridell)、ジャーナル・オブ・キャタリシス(J.Catal)、210巻(2002年)、340頁。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】実施例1の条件の下で平坦なシリコン基板上に本発明によるプロセスによって調製された銀ナノ粒子を示す、走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)を使って撮った顕微鏡写真である。図1と図2は、同一試料を異なる倍率で示したものである。図1の倍率は100000倍、スケールは100nmである。
【図2】図1と同一試料を異なる倍率で示したものである。図2の倍率は50000倍、スケールは1μmである。
【図3】実施例1の条件下で、20ppi(1インチ当たりの細孔数)を持つアルミナ−ジルコニアセラミックフォームから作られた多孔性基質に本発明によるプロセスによって調製された銀ナノ粒子を示す、走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図3と図4は、同一試料を異なる倍率で示したものである。図3の倍率は50000倍、スケールは300nmである。
【図4】図3と同一試料を異なる倍率で示したものである。図4の倍率は50520倍、スケールは1μmである。
【図5】実施例2の条件下で、平坦なシリコン基質の上に本発明によるプロセスによって調製した銀ナノ粒子を示す、走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図5と図6は、同一試料を異なる倍率で示したものである。図5の倍率は100000倍、スケールは200nmである。
【図6】図5と同一試料を異なる倍率で示したものである。図6の倍率は、200000倍、スケールは200nmである。
【図7】実施例2の条件下で、20ppi(インチ当たりの細孔数)を持つアルミナ−ジルコニアセラミックフォームから作られた多孔性基質上に本発明による方法によって調製した銀ナノ粒子を示す、走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図7〜9は、同一試料を異なる倍率で示したものである。図7は10000倍で示す。スケールは1μmである。
【図8】図7と同一試料を異なる倍率で示したものである。図8は50000倍で示す。スケールは200nmである。
【図9】図7と同一試料を異なる倍率で示したものである。図9は200000倍で示す。スケールは100nmである。
【図10】実施例1(一番上の曲線)および2(一番下の曲線)において本発明のプロセスに従って得た堆積物のX線回折図を表すグラフである。y軸は、I(cps):1秒当たりのカウント数での強度を表し、x軸は、2θ(°):回折角を表す。
【図11】N10%およびO90%からなる酸化性雰囲気をもつ、または実施例1の条件下で、しかしN85容量%およびH15容量%(一番下の曲線)からなる還元性雰囲気で、OMCVDによって本発明にしたがってシリコン基質に堆積した銀被膜のRBSスペクトルを示すグラフである。y軸は強度I(任意単位、a.u.で)を表し、x軸はkeVでのエネルギー(E)を表す。
【図12】実施例1の条件下で、N10%およびO90%から成る気体の存在において、多孔性セラミック基質(アルミナ−ジルコニアフォーム、20ppi)上にOMCVDによって堆積させた銀フィルムを用いてメタノールを変換する方法における、メタノールの変換C(%)を温度T(℃)の関数として示すグラフである。
【図13】図2に関して上に記述したように、同じ銀フィルムを用いてメタノールを変換するプロセスにおいて、COへの変換(C)(%)を温度T(℃)の関数として示すグラフである。
【図14】実施例6の条件下で20ppiでアルミナ−ジルコニアセラミックフォームから作られた多孔性基質の上に本発明による方法プロセスによって調製した銀ナノ粒子を示す、走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図14の上に示された目盛りは、1μmである。
【図15】実施例7の条件下で平坦なシリコン基質の上に本発明による方法によって調製した銀ナノ粒子を示す、走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図15の上に示された目盛りは、100nmである。
【図16】実施例9の条件下で平坦なシリコン基質の上に本発明によるプロセスによって調製した白金粒子を示す、走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図16に示された目盛りは、100nmである。
【図17A】実施例10の条件下で本発明によるプロセスによって作ったシリコン基質の上の、Ag−Rh2種の金属からなる堆積物の、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図17に示した目盛は、20nmである。
【図17B】実施例10の条件下で本発明によるプロセスによって作ったシリコン基質の上の、Ag−Rh2種の金属からなる堆積物の、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図17に示した目盛は、20nmである。
【図17C】実施例10の条件下で本発明によるプロセスによって作ったシリコン基質の上の、Ag−Rh2種の金属からなる堆積物の、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮った顕微鏡写真である。図17に示した目盛は、20nmである。
【図18】実施例10の条件下で本発明によるプロセスによって作られたシリコン基質の上の、Ag−Rh二種の金属からなる堆積物のX線回折スペクトルを表す。y軸は、Lin(Cps)を表し、x軸は2θを表す;
【図19A】実施例1で作った銀ナノ粒子で被覆された表面のそばで、周辺温度でPNO(1000ppm)およびPO2=10%の流体の処理の間の、気相(19A)および吸収された相(19B)のFTIRスペクトルを示す。y軸は吸光度を表し、x軸は波数(cm−1)を表す。
【図19B】実施例1で作った銀ナノ粒子で被覆された表面のそばで、周辺温度でPNO(1000ppm)およびPO2=10%の流体の処理の間の、気相(19A)および吸収された相(19B)のFTIRスペクトルを示す。y軸は吸光度を表し、x軸は波数(cm−1)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または前記金属の合金のナノ粒子を堆積させる方法であって、前記金属が周期律表の列VIIIBおよびIBからの金属から選択され、1種以上の前駆体から、化学気相堆積(CVD)によって、基質の上に分散され、そこにおいて、その堆積が反応性酸化性気体の50容量%以上を含む気体の存在の中で行われる、方法。
【請求項2】
金属が銀、ロジウム、白金、パラジウムおよびイリジウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合金がAg、Rh、Pt、PdおよびIrのような周期律表の列VIIIBおよびIBからの金属と他の1種の金属の合金から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ナノ粒子が炭素または金属酸化物のマトリックスのなかに取り囲まれているか、またはゼオライトと結合している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
気体が70容量%以上、好ましくは100容量%の反応性酸化性気体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応性酸化性気体が酸素、二酸化炭素、オゾン、亜酸化窒素NO、およびそれらの混合物から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
気体が酸化性気体および不活性気体の混合物から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
不活性気体がアルゴン、窒素、ヘリウムおよびそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
不活性気体の流量に対する酸化性気体の流量の比率が1より大きい、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記前駆体が、カルボキシル酸金属および金属β−ジケトン酸塩から選択される有機金属前駆体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体が金属硝酸塩から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
特に有機金属の、前駆体(単数または複数)が有機溶媒中のこれらの前駆体の溶液の形で使われる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
溶液中の前駆体の濃度が0.01〜0.6モル/lである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
溶媒が前駆体(単数または複数)の分解温度以下の蒸発温度を持つ、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
溶媒が、標準圧力条件下で、室温でおよび200℃まで液体である有機化合物から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
溶媒がメシチレン、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、n−オクタン、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセチルアセトン、エタノール;水;およびそれらの混合物から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ナノ粒子が銀または銀合金のナノ粒子である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
銀合金が、他の、任意に酸化された、金属および炭素から選択される少なくとも1種の元素と銀との合金から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
銀以外の金属が白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムのような貴金属から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
銀の前駆体が式RCOAg(式中、Rは1〜10個の炭素原子、好ましくは3〜7個の炭素原子を持つ線状または分岐状アルキル基を表す)のカルボン酸銀およびテトラメチルヘプタンジオナト銀のようなβ−ジケトナト銀から選択される、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
銀前駆体がピバル酸銀である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
銀前駆体が、溶媒の中の溶液の形で使用され、前記溶液がさらにアミンおよび/またはニトリルを含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
溶液中の該アミンおよび/またはニトリルの体積濃度が0.1%より大きい、好ましくは0.5%〜10%である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アミンが、n−ヘキシルアミン、イソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、エタノールアミンおよびジ−イソプロピルアミンのようなモノアミン;ポリアミン;ならびにそれらの混合物から選択される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ニトリルがアセトニトリル、ワレロニトリル、ベンゾニトリルおよびプロピオニトリルならびにそれらの混合物から選択される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項26】
堆積が500℃以下またはそれに等しい、好ましくは300℃以下またはそれに等しい、さらに好ましくは250〜290℃の基質温度で行なわれる、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
堆積が大気圧で行われる、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
堆積が真空下で、好ましくは300Pa〜1000Paの圧力で行われる、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
堆積時間が2〜90分、好ましくは5〜30分である、請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
堆積がプラズマ強化型である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
基質が、アルミナ、セリン、ジルコニアのようなセラミック;シリコン;ゼオライト;鋼;ならびに織物から選択される材料で作られる、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
金属または前記金属の合金のナノ粒子が分散されている少なくとも一つの表面を含み、該金属が周期律表の列VIIIBおよびIBからの金属から選択される、基質。
【請求項33】
金属が銀、ロジウム、白金、パラジウムおよびイリジウムから選択される、請求項32に記載の基質。
【請求項34】
前記合金が、Ag、Rh、Pt、PdおよびIrのような周期律表の列VIIIBおよびIBからの金属とお互いの中の1種からとの合金から選択される、請求項32又は33に記載の基質。
【請求項35】
ナノ粒子が銀または銀合金のナノ粒子である、請求項32に記載の基質。
【請求項36】
銀合金が、銀以外の、任意に酸化された金属、および炭素から選択された、少なくとも1種と銀との合金から選択される、請求項35に記載の基質。
【請求項37】
銀以外の金属が白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムのような貴金属から選択される、請求項36に記載の基質。
【請求項38】
炭素および/または酸素がナノ粒子に組み入れられる、請求項32〜37のいずれか1項に記載の基質。
【請求項39】
前記ナノ粒子が1〜400nm、好ましくは1〜100nm、より好ましくは1〜100nm、さらになお良くは5〜50nmの大きさをもつ、請求項32〜38のいずれか1項に記載の基質。
【請求項40】
ナノ粒子がμmにつき10〜500個、好ましくはμmにつき50〜200個の密度を持つ、請求項32〜39のいずれか1項に記載の基質。
【請求項41】
粒子のいくつかが基質の表面に多孔性不連続膜をつくるために結合する、請求項32〜40のいずれか1項に記載の基質。
【請求項42】
稠密であるかまたは多孔性である、請求項32〜41のいずれか1項に記載の基質。
【請求項43】
請求項32〜42のいずれか1項に記載の基質であって、その基質がアルミナ、セリン、ジルコニアのようなセラミック;シリコン;ゼオライト;鋼;ならびに織物から選択される材料から作られる基質。
【請求項44】
化学反応を触媒する、請求項32〜43のいずれか1項に記載の基質の使用。
【請求項45】
そこにおける化学反応が気相での反応である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
そこにおける化学反応が、メタノールの酸化、オレフィンのエポキシ化、炭化水素の限定的酸化、COの酸化、NOの分解、メタノールおよびエタノールのような軽アルコール類の改質のような、好ましくは選択的な、酸化反応である、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
そこにおける化学反応が、酸化および/または還元による、NOのような酸化窒素NOの分解反応である、請求項45に記載の使用。
【請求項48】
化学反応が、たとえば燃料電池における、気体改質である、請求項45に記載の使用。
【請求項49】
そこにおける反応が空気を浄化するための反応である、請求項45に記載の使用。
【請求項50】
そこにおける化学反応が、たとえば水相におけるような、液相での反応である、請求項44に記載の使用。
【請求項51】
そこにおける反応が水を浄化するための反応である、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
そこにおける反応が、たとえば燃料電池の中で起こる水素化反応または脱水素化反応または他の反応である、請求項44記載の使用。
【請求項53】
水素透過のための膜としての、請求項32〜43のいずれか1項に記載の基質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【公表番号】特表2008−525635(P2008−525635A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547579(P2007−547579)
【出願日】平成17年12月23日(2005.12.23)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003264
【国際公開番号】WO2006/070130
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【出願人】(503434139)ソントル ナショナル ド ラ ルシェルシュ ションティフィーク (20)
【出願人】(506155266)ユニヴェルシテ・ドゥ・ポワティエ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE POITIERS
【Fターム(参考)】