説明

化学気相堆積炭化ケイ素物品

【課題】改善された化学気相堆積炭化ケイ素物品および該物品の部品を結合する方法が求められている。
【解決手段】化学気相堆積炭化ケイ素物品および化学気相堆積炭化ケイ素物品を製造する方法が開示される。化学気相堆積炭化ケイ素物品は、焼結セラミック結合部116によって結合された複数の部品112、114で構成されている。結合部が強化され、物品の結合部における公差を維持する。物品は、半導体処理で使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学気相堆積炭化ケイ素物品を対象とする。より詳細には、本発明は、改善された強度および寸法公差を有する化学気相堆積炭化ケイ素物品を対象とする。
【背景技術】
【0002】
セラミック業界では多くのタイプの炭化ケイ素が知られている。各タイプは、それを製造するためのプロセスに従って分類される。各プロセスは、1以上の異なる物理的または構造的特性を有する炭化ケイ素を提供する。異なるタイプの炭化ケイ素の例には、化学気相堆積炭化ケイ素、反応焼結炭化ケイ素、焼結炭化ケイ素、ホットプレス炭化ケイ素、および発泡炭化ケイ素が含まれる。様々な種類の炭化ケイ素は、1以上の重複する特性を有し得るが、それらは同一ではなく、それぞれは、X線回折解析および化学分析によって容易に区別される。様々な炭化ケイ素の異なる物理的、構造的特性は、多くの場合、それらの用途を決定する。
【0003】
化学気相堆積炭化ケイ素(CVD−SiC)は、これを特殊材料用途に非常に適したものにする特性の組み合わせを有する。CVD−SiCは、高い熱伝導性、化学安定性および酸化安定性、熱安定性、硬質性、耐スクラッチ性、電気抵抗性、並びに理論密度を有し得る。CVD−SiCが非常に好適である用途の例には、半導体処理で使用されるウエハーボート、ウェットベンチ洗浄で使用されるウエハーキャリア、半導体処理チャンバで使用される備品、光学望遠鏡構造体、光学ベンチ、および半導体炉への挿入、半導体炉からの取り出しの過程において半導体ウエハーを保持するためのエンドエフェクタ(end effector)などが含まれる。
【0004】
例えば、半導体ウエハーの処理には、例えば腐食性化合物(例えばHF)などを用いた腐食条件への暴露、高温及び急速熱サイクルといった厳しい条件を伴う。したがって、炉の備品およびウエハーボートは、かかる厳しい条件に耐える必要がある。半導体ウエハーを処理する一つの方法は、急速熱処理(RTP)を伴う。かかる処理は、急速熱アニーリング装置(RTA)で行われる。半導体ウエハーは、数秒オーダーの期間に、室温から400℃〜1400℃の温度までのRTAにおいて処理される。かかる厳しい条件は、多くの場合、備品およびウエハーボート内に傷および割れの形成をもたらし、材料の表面から備品およびボートへの材料の脱落を生じることとなる。備品およびボートが損傷すると交換が必要になり、材料の表面からの材料の脱落は、ウエハーの汚染をもたらし、損失および費用増大を生じることになる。
【0005】
半導体産業では、CVD−SiCが、半導体処理に伴う厳しい条件に耐えることができ、備品およびウエハーボートの構築のための優れた材料であると評価されている。CVD−SiC以前には、石英、および後に、焼結炭化ケイ素が、備品およびボートのための材料として使用されていた。しかしながら、これらの材料は共に、一般に、厳しい処理条件に耐えるのに適さず、しばしば、交換される必要があった。また、ウエハー製造で使用される材料との熱的非適合性も、ウエハーへの損傷をもたらし、製造に際して損失および余分な費用を生じる。
【0006】
CVD−SiCは、特殊用途で非常に望ましい多くの特性を有するが、これらの同じ特性のいくつかは、CVD−SiCを物品に加工するのが難しい材料にする。例えば、その硬さは、CVD−SiCを機械加工するのを難しくする。CVD−SiCは、単一の、モノリシックな堆積シートまたはブロックから実際に加工するのに過度に形状が複雑でかさばる物品を加工する際に、相当の難題を生じる。CVD−SiCの高い密度、すなわち理論密度は、最小限もしくはゼロの空隙率をもたらす。空隙率は、例えば焼結炭化ケイ素など、他のタイプの炭化ケイ素における接着剤を用いた部品結合を促進する。
【0007】
様々なタイプの炭化ケイ素の部品を結合するいくつかの技術が提案されている。これらには、ダイレクトボンディング、中間層および素地(green body)の共高密度化(codensification)、好適な炭化ケイ素粉末のホットプレス、高分子前駆体を用いた結合、ろう付けおよび反応性金属結合、加圧燃焼反応、テープおよびマイクロ波結合の使用する及び使用しないの反応が挙げられる。これらの技術は、例えば炉環境を汚染する充填材料の使用、結合部が高い供給温度に耐えられないこと、結合処理の過程における非常に高い温度または圧力の必要性などの1以上の欠点のために、半導体用途では限られた有用性しかもたない。
【0008】
Goelaらの米国特許第5683028号明細書には、2つのCVD−SiC部品間の雄/雌結合部を固定する化学的手段が開示されている。この特許では、4つのモノリシックなCVD−SiCロッドからなるウエハーボートが開示されている。各ロッドは、個々の端板内の対応する雌型受口中に滑り込んで単一物品を形成する2つの雄型結合部材を有する。結合部は、固体シリコンシーラントで固定される。このシリコンは、結合部において粉末として適用され、そこで溶解するまで加熱される。次いで、シリコンを冷却、固めさせて部品同士を結合する。結合部は、CVD−SiCの被覆でさらに固定されてもよい。
【0009】
米国特許第5683028号明細書に開示されている物品は、多くの従来のウエハーボートに優る改善された物品であるが、かかる物品は、製造の過程において結合部における厳しい寸法公差を要求する。典型的に、かかる寸法公差は、±0.01mm〜0.05mmの範囲内の正確さでなければならない。要求される公差がより厳しいほど、機械加工並びに部品を位置づけるための取り付け及び処理における誤差の余地が少なくなる。かかる物品は、物品の異なる部品を位置合わせする様々なタイプの固定装置を使って組み立てられる。しかしながら、位置合わせ工程の過程において、典型的に、部品間でいくらかの動きが生じる。この動きは、それらの結合部における部品のいくらかの位置合わせ不良を生じ、よって、公差範囲が±0.01mm〜0.05mmより増大することがある。これは、多くの場合、例えばギャップなどの結合部の欠陥を生じる。かかるギャップは、結合部の強度を低減させ、レールなどの部品を、それらが結合されている端板に対してわずかに動かし、ボートをわずかに傾かせ、または端板を中心からずらすことがある。これは、端板の相互に対する真位置(TP)の大きさを増大させ、よって、結合部の位置合わせ不良を生じ、ウエハーボートを、本質的にその本来の目的には役立たないものにする。これは、多くの場合、物品が使用される厳しい条件における割れおよび破損の形成をもたらす。
【0010】
TPの増大は、半導体ウエハー処理における物品の位置決めに影響を及ぼす。例えば、縦型ウエハーボートは、一方の端板が炉内の台座上に載るように位置決めされる。許容可能なウエハー処理を実現するには、ボートは、台座に対して、数ミリメートルを超えて傾いてはならない。TP値は、典型的に、3ミリメートルを上回る。しかしながら、3ミリメートル以下のTP値が求められるが、達成されることはまれであり、達成されないこともある。理想的には、TPは0である。
【0011】
また、ギャップは、ウエハー処理の前、およびウエハー処理の過程において汚染物質が集まる場所も提供する。洗浄処理では、多くの場合、ウエハー処理の前後に、かかる汚染物質を適切に除去できず、最終的には、半導体ウエハーを汚染し、損傷することになる。
【0012】
また、寸法公差は、例えば前述の特許などにおけるように、結合部間の接着剤の適用および任意の加熱処理の過程においても影響を受けることがある。この場合もやはり、物品の部品を結合する結合部の強度が弱まり、使用時に傷および割れが形成されることになり得る。
【0013】
CVD−SiCは、典型的に、別のタイプの炭化ケイ素より硬い。したがって、CVD−SiC部品を機械加工することは、別のタイプの炭化ケイ素を機械加工するより難しい。CVD−SiCでできた結合部で求められる厳しい公差を達成するにはより多くの時間と費用が必要とされる。
【特許文献1】米国特許第5683028号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、改善された化学気相堆積炭化ケイ素物品および該物品の部品を結合する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、物品は、焼結セラミックによって結合された少なくとも2つの化学気相堆積炭化ケイ素部品を含む。
【0016】
別の態様では、物品は、両端部において、焼結セラミックによってそれぞれの端板に結合された複数のロッドを含み、複数のロッドおよび端板は、化学気相堆積炭化ケイ素からなる。
【0017】
別の態様では、物品は、それぞれの端部の一方において、焼結セラミック結合部により背板の基部に結合された複数のロッドを含み、複数のロッドの両端部は、焼結セラミック結合部によって支持レールに結合され、複数のロッド、背板および支持レールは、化学気相堆積炭化ケイ素からなる。
【0018】
別の態様では、方法は、1以上のセラミックを含むペースト、ゾルまたはスラリーを提供し;1以上のセラミックを含む該ペースト、ゾルまたはスラリーを、2つの化学気相堆積炭化ケイ素部品に適用してこれらの部品を結合し;該ペースト、ゾルまたはスラリーを乾燥させて、2つの化学気相堆積炭化ケイ素部品の周りに1以上のセラミックを含む乾燥した組成物を形成し;および2つの化学気相堆積炭化ケイ素部品の周りの1以上のセラミックを含む乾燥した組成物を焼結して焼結セラミック結合部を形成すること;を含む。
【0019】
別の態様では、少なくとも、化学気相堆積炭化ケイ素物品の焼結セラミックが、化学気相堆積炭化ケイ素で被覆される。
【0020】
焼結セラミックによって結合された部品を有する化学気相堆積炭化ケイ素の物品は、その組み立ての過程において厳しい公差を維持し、かつ結合部におけるギャップ形成を防止または低減する。セラミックは、スラリーとして結合部に適用され、および結合部品の周りに封(seal)を形成してギャップ形成を防止する。これは、処理の過程における半導体ウエハーの粒子汚染を防止または低減し、物品洗浄における困難さを低減し、及び結合部の強度を増大させて、傷および割れの形成を低減する。加えて、物品のTPが、炭化ケイ素からなる多くの従来の物品と比べて、少なくともそれらの最も重要な位置合わせの位置において減少される。したがって、部品の嵌め合わせを、厳しい公差まで機械加工する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書を通して使用する際、文脈で特に他を示さない限り、以下の略語は、以下の意味を有するものとする。℃=摂氏〜度;mm=ミリメートル;cm=センチメートル;2.54cm=1インチ;slpm=標準リットル/分;torr=0℃で1mmの水銀を支持するのに必要な圧力;1mmの水銀=0.00132気圧(atm);1atm=1.01325×10ダイン/cm;μm=ミクロン;ppb=十億分率;CVD=化学気相堆積された;SiC=炭化ケイ素;RMS=二乗平均平方根;OD=外径;およびTP=真位置。
【0022】
「真位置」という用語は、基準参照フィーチャー(feature)との関係において、あるフィーチャーの点、線または面(通常は中心)の、完全な(正確な)位置として定義される。「モノリシック」という用語は、少なくとも98%の理論密度を有する材料の単一の固体片を意味する。「結合部」という用語は、少なくとも2つの端部、面または縁部が接続されている領域を意味する。「結合」という用語は、複数の部品を一体化することを意味する。
【0023】
あらゆる数値範囲は、境界値を含み、かつかかる数値範囲が合計100%になるように制約されることが論理的である場合を除いては、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0024】
物品は、焼結セラミックによって結合された少なくとも2つのCVD−SiC部品を含む。CVD−SiC部品と焼結セラミックの間に形成される結合部は、CVD−SiCをはじめとする炭化ケイ素でできた物品の多くの従来の結合部よりも強い結合部を提供する。かかる結合部は、半導体ウエハー処理の厳しい条件に絶えることができ、3mm以下のTPを有する。加えて、CVD−SiCと焼結セラミックの結合部は、結合部におけるギャップを形成することなく、より増加した寸法公差での物品の組み立てを可能にし、よって、厳しい半導体処理条件下での物品損傷の確率が低減する。
【0025】
好適なCVD−SiCには、当分野で知られている任意のCVD−SiCが含まれる。典型的に、かかるCVD−SiCは、50ppb、あるいは例えば30ppbまたは例えば10ppbといった金属不純物総量を有する、高純度のCVD−SiCである。かかるCVD−SiC材料には、これらに限らないが、β結晶CVD−SiC、αCVD−SiC、ならびにαとβのCVD−SiCの混合物を有するCVD−SiCが含まれる。これには、これらに限らないが、立方βCVD−SiC、ならびに立方晶および六方晶構造を有するβCVD−SiCが含まれる。かかるCVD−SiCは、当分野で知られ、文献に開示されている任意の好適な方法によって製造され得る。典型的に、CVD−SiCは、モノリシック部品として形成される。かかるCVD−SiCは、少なくとも90%の理論密度を有し得る。
【0026】
典型的に、物品の部品を製造するのに使用されるCVD−SiCは、立方β結晶SiCである。立方β結晶CVD−SiCを製造する方法の例は、米国特許第5374412号明細書および米国特許第5354580号明細書に開示されている。ガス状反応物質が、CVD炉内で、例えばマンドレルなどの基体上に堆積されて、モノリシックな立方β結晶CVD−SiC部品が形成される。かかる方法は、X線回折解析によって示される場合に純粋な立方β結晶CVD−SiCである立方β結晶CVD−SiCを提供する。かかる立方β結晶CVD−SiCのX線回折スペクトル上には、六方晶構造は観測されない。かかる立方β結晶CVD−SiCは、少なくとも98%の理論密度を有する。典型的に、この理論密度は、98%から99%である。
【0027】
CVD−SiC部品は、所望の形状および粗度を提供するように機械加工され得る。従来の機械加工を使用してもよい。かかる方法は、当分野では周知であり、文献に開示されている方法によって得ることができる。焼結セラミック材料を用いてCVD−SiC部品を結合することによって製造される物品では、従来の方法よりも高い寸法公差が許容されるため、結合部品を整合させるのにより少ない機械加工ですむ。これは、CVD−SiCが硬質でありかつ正確に機械加工するのが難しい材料であるため、非常に望ましい。典型的に、結合部を構成する部品の部分は、最小限の機械加工がされる。結合部分の粗さおよび表面からの突出部は、焼結セラミックで被覆される。また、この粗さおよび突出部は、表面積を増大させて、結合部をさらに強化する。平均表面粗度Rは0.2μmから5μmである。Rmaxは、2μmから50μmまでの範囲とすることができる。
【0028】
表面粗度を測定する任意の方法を使用することができる。1つの好適な方法が自己共分散関数である。自己共分散関数の、表面トポロジの決定への適用の記述については、Kieleyらによる、「走査型プローブ顕微鏡による地形構造の定量化(Quantification of Topographic Structure by Scanning Probe Microscopy)」、Journal of Vacuum Science Technology B、第15巻、第4号、1997年7/8月、第1483〜1493頁を参照されたい。粗度パラメータ、およびこれらのパラメータの値を決定する方法の詳細は、Standard ASME B46.1−2002、「表面テクスチャ(表面粗度、うねりおよびレイ)(Surface texture (Surface Roughness, Waviness and Lay)」、米国機械学会(American Society of Mechanical Engineers)、2003に提供されている。典型的に、表面フィーチャーの方向性表面トポグラフィは、原子間力分光法(AFM)または光学表面形状測定装置を使って決定される。
【0029】
これらの方法を使って、様々なサイズおよび形状の2つ以上のCVD−SiC物品を結合することができる。かかる形状には、これらに限らないが、柱状、棒状、円柱状、板状、シート状、フィルム状、角棒状、平板状、円錐状、円錐台状、角錐状、偏菱形が含まれる。結合は、同じ形状の部品間のみならず、異なる形状を有する部品間でも行われ得る。
【0030】
物品の結合部を形成するのに使用され得るセラミック材料には、所望の結合強度および寸法公差を可能にするセラミックが含まれる。かかるセラミック材料には、これらに限らないが、炭化ケイ素、窒化ケイ素、様々な酸化物、および、酸化物と炭化ケイ素との混合物を含む様々な酸化物の混合物が含まれる。かかる酸化物には、これらに限らないが、アルミニウム、ニッケル、ランタン、バリウム、亜鉛、リチウム、コバルト、カドミウム、セリウム、クロム、アンチモン、鉄、イットリウム、タンタル、タングステン、ストロンチウム、カルシウム、ビスマス、スズ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、チタン、鉛、ニオブおよびケイ素の酸化物が含まれる。
【0031】
その他の好適なセラミックには、これらに限らないが、原料鉱物材料が含まれる。かかる原料鉱物材料には、これらに限らないが、頁岩、石器、粘土、ボーキサイト、カヤナイト、ベントナイト、カオリン、葉ろう石、滑石、長石、霞石閃長岩、珪灰石、リシア輝石、フリント(石英)、ジルコン、ジルコン酸塩およびコーデライトが含まれる。かかる原料鉱物材料の混合物も使用され得る。これらの原料鉱物は、酸化物セラミック、窒化ケイ素および炭化ケイ素の1以上と混合されてもよい。
【0032】
セラミックは、ペースト、ゾルまたはスラリーの形で結合部に適用される。通常のペースト、ゾルおよびスラリー、ならびにこれらを製造する通常の方法が使用されてもよい。セラミックは、通常の量で含まれる。典型的に、セラミックは、組成物の20重量%〜80重量%の量で含まれる。
【0033】
1以上のセラミックに加えて、ペースト、ゾルおよびスラリーは、1以上の結合剤、ビヒクル、可塑剤、分散剤、焼結助剤、および当分野でよく知られている様々な通常の処理助剤のような成分の混合物を含む。これらの各成分の量は、通常どおりであり、それがペーストであるか、ゾルであるか、それともスラリーであるかに依存し変化する。各量は、当分野の技術者にはよく知られている。
【0034】
典型的に、結合剤は有機物である。かかる有機結合剤には、これらに限らないが、ワックス、熱硬化性樹脂、ゴム、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、セルロース、ポリカルボシラン、ポリエチレングリコール、熱可塑性樹脂、およびこれらの混合物が含まれる。典型的に、かかる結合剤は、1以上のメチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、およびデキストリンである。結合剤は、0.5重量%から50重量%まで範囲の量とすることができる。
【0035】
分散剤は、セラミック材料を分散させ、懸濁させるのに使用される。かかる分散剤には、これらに限らないが、ポリアクリル酸、アクリル/マレイン酸共重合体、ラウリルスルフェート、ドデシルベンゼンスルホネート、ピロホスフェート、およびアンモニウム塩やアルカリ塩などの水溶性塩が含まれる。典型的に、分散剤は、0.5重量%から10重量%の量で使用される。
【0036】
可塑剤には、水溶性可塑剤と水不溶性可塑剤の両方が含まれる。かかる可塑剤には、これらに限らないが、水、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジブチルフタレート、ジメチルフタレート、およびこれらの混合物が含まれる。典型的に、可塑剤は、1重量%から15重量%の量で含まれる。
【0037】
焼結助剤には、典型的に、結合剤として使用される有機化合物の多く、およびその他の通常の有機焼結助剤が含まれる。その他の焼結助剤には、これらに限らないが、無機化合物、例えば炭化ホウ素、Mg、AlNなど、および様々な酸化物、例えば、MgO、CeO、ZrO、BeO、Y、Laなどが含まれる。典型的に、焼結助剤は、0.5重量%から10重量%の量で含まれる。
【0038】
ビヒクルには、水、有機溶剤、およびこれらの混合物が含まれる。かかる有機溶剤には、これらに限らないが、ジメチルホルムアミド、メトキシエタノール、酢酸、アルコールおよびグリコールが含まれる。典型的には、ビヒクルは水溶性である。組成物には、組成物を所望の容積および粘度にするのに十分な量のビヒクルが加えられる。
【0039】
成分は、通常の装置を使って混合され得る。成分の混合は、室温でなされてもよく、又は、混合物中の成分を均一に分散させ、様々な成分をより混合しやすくするのに十分な温度まで加熱されてもよい。セラミック材料は、粉末または粒の形状で使用され、均一な、または均質な分散の形成を可能にする任意の粒子サイズのものとすることができる。粒子サイズは、通常通りのものである。典型的に、粒子サイズは、0.05μmから1000μmまでの範囲にわたり、例えば、10μmから500μmまで、あるいは25μm250μmまでなどである。前述のその他の成分の場合と同様に、粒子の多くは商業的に入手可能であり、または文献に開示されている方法にしたがって製造することもできる。
【0040】
ペースト、ゾルまたはスラリーは、当分野で知られている任意の好適な手段によって適用され得る。典型的に、これらは、結合部を構成する部品間の間隙に適用されると共に、部品の結合部分を覆う。セラミックは、例えばブラシやへらなど任意の好適な道具で適用される。セラミックは、部品間の間隙にいかなるギャップもないなめらかの表面が形成され、突出する任意の部品を覆うように適用される。いかなるギャップも、追加のセラミック材料で被覆され、滑らかにならされ得る。かかるギャップは、結合部に弱点を生じ、処理および使用に際して、物品部品の位置合わせ不良をもたらし得る。2つ以上のCVD−SiC部品が、セラミックペースト、ゾルまたはスラリーで結合されてもよい。結合部の部品のいずれかがうまく適合しない場合、それらは、セラミック材料で覆うことができる。したがって、各部品は、厳しい公差を必要とする従来の物品とは対照的に、相互に接する必要がない。したがって、厳しい寸法公差は不要である。
【0041】
セラミックは適用された後、室温で乾燥して乾燥した組成物が形成される。次いで、なめらかな移行部となるまで研磨される。研磨は、任意の通常の方法でなされ得る。通常の等級の研磨紙が使用されても、任意の動力研磨工具が使用されてもよい。様々な肌理を有するダイアモンド工具が使用されてもよい。
【0042】
通常の固定具を使って、セラミックが適用される間に2つ以上の部品が保持され、位置合わせされてもよい。これらの部品は、結合部の焼結後、最も重要な位置合わせのTPが、3mm以下、言い換えれば0より上に維持されるように保持され、かつ位置合わせされる。典型的に、最も重要な位置合わせのTPは、±0.5から1mmの寸法公差では、1.5mmから2mmまでである。縦型ウエハーボートでは、、最も重要な位置合わせは、上部端板およびレールの、下部端板に対するTPである。例えばウェットベンチウエハーキャリアやリフタなどのその他の物品では、重要な寸法は、ロッドの背板に対する直角度、およびロッド同士の平行度である。任意の通常の方法を使って、物品のTPを測定することができる。方法には、これらに限らないが、座標測定機(CMM)、Faro Technologies, Inc.から入手可能なFaroArm(商標)測定器、レーザトラッカ、またはその他の従来の3D測定技術が含まれる。
【0043】
焼結は、当分野で知られている任意の好適な方法でなされ得る。通常の方法が使用され得る。一般に、セラミックが結合部に適用された後で、まだ固定具に固定されたままの物品が、焼結炉に入れられる。炉は、1500℃から2100℃の温度まで加熱される。焼結は、30分から24時間にわたって行われる。焼結は、セラミックを含有するペースト、ゾルまたはスラリー中のいかなる水分をも除去し、任意の有機結合剤およびその他の有機材料を炭化させて、結合部を固めさせる。結合部を形成するのに使用され得る焼結方法のさらなる例には、これらに限らないが、米国特許第4351787号明細書、米国特許第6065615号明細書、Dattaら、「炭化ホウ素を用いたドーピングによるナノ結晶性α炭化ケイ素の焼結(Sintering of nano crystalline α silicon carbide by doping with boron carbide)」、Bull. Mater. Sci.、第25巻、第3号、2002年6月、第181〜189頁、およびZhouら、「希土酸化物添加剤を用いて高密度化された炭化ケイ素の熱伝導率(Thermal conductivity of silicon carbide densified with rare−earth oxide additives)」、Journal of the European Ceramic Society 24(2004)、265〜270頁に開示されている方法が含まれる。
【0044】
2つ以上のCVD−SiC部品を結合する焼結セラミック結合部は、CVD−SiCでできたもの、あるいは当分野で知られている他のタイプのSiCでできたものの何れのでも多くの従来のSiCに優る改善された強度および安定性を有する。物品のTPは、多くの従来の物品のTPより狭い許容範囲内に維持される。したがって、大きな位置合わせ誤差の確率が低減される。これは、結合部内に、結合部を弱くするギャップが形成されるのを防ぎ、厳しい条件下での処理および使用の過程における物品への損傷の確率を低減する。さらに、TP範囲が3mm以下に維持されるため、製造時に±0.01から0.05mmの厳密な寸法公差を維持するという困難性が回避される。
【0045】
任意選択で、少なくとも結合部にCVD−SiCの被覆が堆積され得るが、物品全体がCVD−SiCの層で被覆されてもよい。被覆は、0.5mmから3mmまでの範囲の厚さを有し得る。典型的に、CVD−SiC被覆の厚さは、1mmから2mmまでの範囲とすることができる。CVD−SiC被覆は、当分野で知られている、CVD−SiCを堆積させる任意の好適な方法で適用することができる。かかる方法の例は、米国特許第5354580号明細書および米国特許第5374412号明細書に開示されている。
【0046】
CVD−SiC被覆の適用後に、軽微な機械加工を使って、物品表面上の任意の望ましくないでこぼこの部分を平滑化し、除去することができる。かかる軽微な機械加工は、物品のTPを有意に変更することはない。所望のTPを提供するために物品を正しく揃える微細な修正が必要とされることもあり得る。
【0047】
これらの方法によって製造され得る物品の種類には、これらに限らないが、ウエハーボート、ウェットベンチ洗浄で使用されるウエハーキャリア、半導体処理チャンバ内で使用される備品、光学望遠鏡構造、光学ベンチ、ならびに挿入および取り出しの過程においてウエハーを保持するエンドエフェクタが含まれる。
【0048】
図1、図2および図3に、半導体ウエハー処理のために複数の半導体ウエハーを保持するモノリシックなCVD−SiC部品からなるウエハーボートの一実施形態を示す。ウエハーボート100は、端板114の側面にある受口に挿入された複数のロッド112を含む。ロッド112は、焼結セラミック結合部116によって端板114に固定されている。図1、図2および図3に示す焼結セラミック結合部116は、閉じた結合部である。端板は、その中央に、半導体ウエハー処理時にガスを通すための穴118および120含む。焼結セラミック結合部116は、端板とロッドの結合部において凹面のフィレット半径(fillet radius)rを形成する。フィレット半径rは、3つの面122を有する。焼結セラミック結合部116は、2mmのCVD−SiC被覆を有する。ロッド112は、半導体ウエハーを保持する交互の溝126を有する複数の歯124を含む。
【0049】
図1、図2および図3には、ウエハーボートの一実施形態が開示されている。ウエハーボートは、これらの図に開示されている実施形態だけに限定されるものではない。歯と溝の数および寸法は、様々なものとすることができる。通常の機械加工技術を使って、歯と溝の数および寸法を変えることもできる。また、穴も任意選択であり、ロッドの数も2から4まで変化し得る。ウエハーボートは、ロッドと板の結合部でフィレット半径を形成しない結合部を有していてもよい。
【0050】
図4に、ウエハーボートの開いた結合部の一実施形態を示す。開いた結合部200は、4つの面204を有する角型ロッド202を含み、図にはそのうちの2面だけが示されている。ロッド202は、板208の受口206に、受口の3つの側面210のいずれにも接しないように挿入されている。受口内のロッドの部分は、0.05μmから0.5μmのRを有する。結合が完成すると、開いた結合部200は、焼結セラミック材料(図示していない)で封止される。結合部は、結合部にさらなる強度と耐久性を提供するために、CVD−SiCで被覆され得る。
【0051】
図5に、ウエハーボートの開いた結合部の別の実施形態を示す。開いた結合部300は、4つの面304を有する角型ロッド302を含み、図にはそのうちの2面だけが示されている。角型ロッド302は、基部306を有する。基部306は、基部の2つの対向する側面に2つの凹面裂溝308を含む。凹面裂溝308は、基部の長手方向に沿って延在し、角型ロッドの長手方向と直角をなす。各裂溝308は、角型ロッドの基部306の下部分にある平面309で終わる。角型ロッドは、端板312の側面にある受口310に挿入されている。角型ロッド302は、受口310の3つの側面314に接しないように受口に挿入されている。3つの側面314はそれぞれ、3つの連続する面316を有する。凹面裂溝および受口の側面の3つの面は、結合部の表面積を増大させ、よって、受口が焼結セラミック材料で埋められて完全な閉じた結合部が形成された後の結合部の強度を増大させる。想像線318は、セラミック材料が開いた結合部300を埋める部分を示すものである。任意選択で、結合部に含まれる角型ロッドと受口の側面の部分は、0.05μmから0.5μmのRの表面粗度を有し得る。
【0052】
図6に、ウエハーボートの開いた結合部の別の実施形態を示す。開いた結合部400は、4つの面404を有する角型ロッド402を含む。角型ロッド402の基部406は、角型ロッド402の対向する側面上に2つのくさび形裂溝408を含む。各くさび形裂溝408は、基部406の長手方向に延在し、角型ロッド402の長手方向と直角をなす。各くさび形裂溝は、2つの対向する面、すなわち上面410と下面412を含む。各面は、くさび形裂溝の開口部とは逆側の共通結合部414で結合されている。各下部裂溝412は、基部406の下部の各側面上のそれぞれの面416で終わる。角型ロッドは、端板420の受口418の3つの側面422のいずれにも接しないように、端板420の受口418に挿入されている。各側面422は、3つの連続する面424を有する。開いた結合部は、セラミック材料のペースト、ゾルまたはスラリーで埋められ、乾燥され、次いで、焼結されて、結合組成物を固定する。くさび形裂溝と、受口を画定する側面の各面とは、セラミック材料が適用される表面積を増大させ、結合部の強度を増大させる。任意選択で、結合部を構成する部品が、0.05μmから0.5μmの粗度を有するように機械加工されてもよく、これにより結合部はさらに強化される。結合部は、CVD−SiCで被覆されてもよい。
【0053】
図7に、閉じた結合部の断面を示す。閉じた結合部500は、3つの面、すなわち上面506、下面508、および上面と下面が交わる側面510を有するくさび形裂溝504を備える円形ロッド502を含み、くさび形裂溝は、ロッドを囲んでいる。くさび形裂溝は、ロッドの主要部分とその基部512とを隔てる。円形ロッド502は、端板514の側面にある受口に挿入されている。ロッドは、受口の各側面に接しない。受口は、その3つの側面516によって画定され、図7にはそのうちの2面が示されている。各側面は3つの連続する面518を有する。ロッドと、受口の各側面との間の間隙は、焼結セラミック520で埋められている。結合部全体、ならびにロッドおよび端板は、CVD−SiCの層322で被覆されている。ロッドと端板の結合部には、フィレット半径rが形成されている。任意選択で、結合部に含まれるロッドの部分と、受口の各面が、0.05μmから0.5μmの粗度Rを提供するように機械加工されてもよい。
【0054】
図8に、閉じた結合部の別の実施形態を示す。このタイプの結合部は、図9に示すようなウェットベンチキャリアまたはリフタにおいて見られる。閉じた結合部600は、フラットロッド602を含み、フラットロッド602は、フラットロッド602の基部606近くにある受口604と、フラットロッド602の基部606にある2つの矩形裂溝608を含む。フラットロッド602は、受口604および矩形裂溝608と共に焼結セラミック612で埋められている背板610の背板受口に挿入されている。任意選択で、結合部を構成する部品は、所望の表面粗度Rまで粗され、およびCVD−SiCで被覆されてもよい。
【0055】
図9に、半導体ウエハー処理の過程において半導体ウエハーを支持するためのウェットベンチキャリアまたはリフタ700を示す。背板702は、背板702の上端部に、ウエハー処理時にリフタを化学溶液に出し入れする機構にリフタを取り付けるための器具設置穴704および706を含む。ロッド708および710は、一端部において、図8に示すような焼結セラミック結合部によって背板702の基部に結合されている。ロッド708および710は、半導体ウエハー(図示せず)を支持するための複数の交互の歯712とギャップ714を含む。ロッドは、背板と反対の端部において、支持レール716で固定されており、支持レール716は、ロッドの長手方向と直角をなす。レールは、セラミック結合部でロッドに結合されている。
【0056】
物品および結合部を、典型的な実施形態を用いて説明しているが、物品および結合部品は、前述の形状だけに限定されるものではなく、様々な幾何学的形状の部品を有する物品を含むことが想定されている。例えば、端板は、楕円形状のものだけでなく、矩形や三角形などの多角形とすることもできる。ロッドは、2面または4面を有し、あるいは円形であるのみならず、2面、3面またはそれ以上の面を有していてもよい。ロッドは、一般には、多角形である。さらに、ロッドの基部の表面、および受口を画定する端板の側面は、表面積を増大させ、焼結セラミック材料で埋められたときに結合部をさらにしっかり固定する任意の突出部を含むものも想定される。
【0057】
図1〜図7で示すようなウエハーボートの最も重要な位置合わせの問題は、端板の相互に対するTPである。リフタに関しては、図8および図9に示すように、重要寸法は、ロッドの背板に対する直角度、およびロッドの相互に対する平行度である。典型的に、TPは、±0.5から1mmの寸法公差では、2mm以下である。例えば、ウエハーボートが縦型ボートであるとき、TPは、FaroArm(商標)測定器を使って、下部端板によって生じる中央線に対する上部端板の位置を測定することによって決定される。測定器は、ボートが異なる位置で接触することを許容し、異なる空間的位置が、空間内の定常点(基準点)に対して計算される。下部板と下部板表面のODが測定されて、下部板の中心を通り、下部板表面と直角をなす中心が求められる。次いで、上部板ODが測定され、この中心線に対する上部板の中心位置が決定される。次いで、上部板が中心線からずれている距離に2を掛けてTPが計算される。横型ボートは、縦型ボートと同じ手順で測定される。横型ボートは、縦の位置に置かれ、FaroArm(商標)測定器を使って、下部端板によって生じる中心線に対する上部端板の位置を測定することによってTPが決定される。
【0058】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【実施例】
【0059】
実施例1(比較)
3種類の結合部を調製し、結合部の強度を試験するための標準的な試験法を用いてそれらの強度を試験した。2種類の結合部は、各端板の側方受口に挿入するための対応する角型CVD−SiCロッドと共に円形CVD−SiC端板を含むものであった。第3の種類の結合部は、円形の焼結炭化ケイ素端板、および各端板の側方受口に挿入するための対応する角型焼結炭化ケイ素ロッドで構成されていた。CVD−SiC端板およびロッドは、従来のCVD−SiC法で製造され、ローム・アンド・ハース・カンパニーの、米国マサチューセッツ州ウォバーン所在の同社Advanced Materials事業部から入手した。焼結炭化ケイ素端板およびロッドは、焼結炭化ケイ素に含浸させたケイ素を用いて従来の焼結法によって製造された。
【0060】
第1の種類の結合部は、CVD−SiC端板の受口にCVD−SiCロッドを挿入して、従来の雄/雌型結合部を形成することにより形成した。公差は、ロッドと受口の間の側方ギャップが0.01から0.05mmまでの範囲内になるように選択した。このギャップは、毛管作用が溶融ケイ素を側方ギャップに押し込むのに適するものであった。
【0061】
ケイ素粉末を使って、結合部品を結合した。粉末は、Johnson Matthey(Asear)から購入した。若干量のケイ素粉末を、受口内の板の下部に置き、ロッドを受け口に挿入した。各アセンブリを、4箱生産工程(four−box production run)のうちの1つの堆積箱に入れた。従来の固定具で部品を共に固定した。サンプルをアルゴン雰囲気中で1360℃の温度まで加熱した。堆積領域にメチルトリクロロシラン(MTS)、水素ガスおよびアルゴンの混合物を通すことにより、炭化ケイ素を結合部上で堆積させた。以下の表1に堆積パラメータを示す。結合部上に2mmの被覆が形成されるまで炭化ケイ素堆積を続行した。
【0062】
【表1】

【0063】
炭化ケイ素の堆積が完了した後、堆積チャンバ温度を1485℃まで上げて、ケイ素を溶融状態にした。結合部を、1485℃で0.5時間維持した。次いで、堆積チャンバを冷却させ、結合部をチャンバから取り出した。次いで、すべての結合部を、割れがないかどうか目視検査した。どの結合部にも、目に見える、いかなる割れも傷もなかった。結合部を、220グリットのダイアモンド含浸研削砥石および工具を使って機械加工し、0.5μmRMSまで粗した結合部を形成した。
【0064】
第2の結合部のセットを、75重量%の炭化ケイ素粉末、結合剤としての7重量%のメチルセルロース、および18重量%の水の混合によるスラリーから調製した。スラリーを、スリップキャストにより石膏型で成形し、次いで、成形されたスラリーを切断して、素地(green body)の端板およびバーを得た。結合部品を調製するのに使用したのと同じスラリーから作られた接着剤を、ロッドと端板の受口の結合部に適用した。従来の固定具を使って結合部の組み立てを行った。組み立て時の寸法公差を、0.01から0.05mmに維持した。次いで、固定具に固定された結合部を焼結炉に入れ、1800℃で60分間焼き、焼結炭化ケイ素結合部を得た。
【0065】
焼結が完了した後、炉を冷却させ、結合部を取り出し、検査した。傷も割れも見られなかった。次いで、220グリットのダイアモンド含浸研削砥石を使って結合部を機械加工して、0.5μmのRMSまで粗した結合部を形成した。
【0066】
第3の結合部のセットを、CVD−SiCロッドをCVD−SiC端板の受口に挿入することにより形成した。ロッドの基部と、受口の側面を、220ダイアモンド含浸研削砥石を使って、Rが0.1から0.5μmになるように機械加工した。部品を、固定具を使って、寸法公差が0.1から0.5mmになるように位置合わせした。75重量%の炭化ケイ素、7重量%のメチルセルロースおよび18重量%の水からなる炭化ケイ素スラリーを、へらで結合部に適用した。結合部に余分に適用して、結合組成物間の間隙を埋め、結合部を構成するロッドおよび端板の部分を覆った。結合部の周囲のスラリーを平滑化して、フィレット半径を形成した。スラリーを室温で乾燥させ、次いで、結合部に滑らかな移行部がもたらされるまで乾燥組成物を研磨した。
【0067】
固定具で固定されたままの結合部を、焼結炉に入れた。焼結は、2000℃で24時間にわたって行った。次いで、炉を冷却させ、結合部を炉から取り出した。結合部には割れも傷も観測されなかった。
【0068】
次いで、露出されたままである、結合部を除くロッドと端板上にGraphoil(商標)マスク(黒鉛の薄いシート)を置いた。次いで、結合部を堆積チャンバに入れ、2mmのCVD−SiCで被覆した。堆積条件および反応物は、上記表1に開示したとおりであった。チャンバが冷却した後、結合部を取り出し、結合部上のCVD−SiC被覆を、220グリットのダイアモンド砥石を使って、0.5μmのRMSまで機械加工した。
【0069】
次いで、3種類の結合部のそれぞれを標準的なInstron Mechanical Tester(インストロン機械的試験機)(商標)に入れて、結合部が破壊前に耐え得る負荷量を試験した。各結合部の端板を固定具に固定し、端板から、負荷(力)が加わるロッド上の点までの距離が2.5インチ(6.3cm)になるように、固定具から水平に突出するロッドを有する端板を保持した。次いで、Instron Mechanical Tester(商標)のヘッド(ロードセル)を、0.02インチ/分(0.05cm/分)の速度で動いてロッド部分を押し下げるようにセットした。ポンド単位の負荷値と負荷速度(インチ/分)を、従来のチャート式記録計に記録し、結合部が破損した点をチャート式記録計上で識別し、それを使って、ロッドを破損させたロッドにかかる負荷(力)を決定した。
【0070】
結果は、平均で、焼結炭化ケイ素で結合されたCVD−SiC部品を有するCVD−SiC被覆結合部は、溶融ケイ素結合部を有するCVD−SiC被覆結合部より35%強く、全部が焼結炭化ケイ素からなる結合部よりも20%を上回る強さであることを示した。したがって、焼結炭化ケイ素で結合された部品を有するCVD−SiC被覆結合部は、従来の結合部に優る改善された強度を有していた。
【0071】
実施例2(比較)
それぞれの部品を結合する結合部の種類で区別される3種類のウエハーボートをCVD−SiCで調製し、それらのTPを比較した。CVD−SiC部品は、化学気相堆積炉内で、適切な形状およびサイズを有する黒鉛マンドレル上に炭化ケイ素を堆積することにより調製した。使用した反応成分およびパラメータは、以下の表2に開示するとおりである。
【0072】
【表2】

【0073】
マンドレル上で部品を形成した後、それらを取り出し、220グリットのダイアモンド工具を使って機械加工して、堆積時に形成された望ましくない粗面を除去し、部品を成形した。次いで、部品を組み立てて、それぞれが異なる種類の結合アセンブリを有する3つのウエハーボートを形成した。各ボートは、その両端で端板により結合された3本の角型ロッドを含んでいた。すべてのボートを、通常の固定具で組み立てて、それらの部品を所望の寸法公差になるように適正に位置合わせした。
【0074】
第1の種類のボードは、ロッドを端板に保持するくさび形結合部を有した。各ロッドの両端に傾斜を付け、端板の矩形受口に挿入した。ロッドの傾斜の付いた端部と補完し合うCVD−SiCウェッジを、端板の対向する側面に挿入して、ロッドを端板に固定する。組み立て後、すべての結合部においてロッドと端板の間に小さいギャップが観測された。
【0075】
第2の種類のボートは、端板の側面に開いた補完的受口に挿入されたロッド端部を有するものであった。ロッドを、ロッドの長手方向と直角にロッドの穴に挿入されるCVD−SiCピンで端板に固定した。補完的な端板の穴は、ピンを、ロッドの穴を通って端板自体まで貫通させて、ロッドを端板に固定するものである。組み立て後、すべての結合部においてロッドと端板の間の小さいギャップが観測された。
【0076】
第3の種類のボードは、相互に補完し合わない端板の側面受口に入るロッド端部を有するものであった。それら部品は、ロッドが、他の2種類の結合部の場合のような、受口の側面に接するように嵌合し合うものではなかった。ロッドと、端板の側面の間には空間が生じた。それら部品を、結合部において、75重量%の炭化ケイ素粉末、7重量%のメチルセルロースおよび18重量%の水からなる過剰のスラリーを適用することによって固定した。結合部全体をスラリーで被覆し、次いで、平滑化して結合部の周りにフィレット半径を形成した。スラリーを室温で乾燥させ、次いで、研磨してなめらかな移行面を形成した。次いで、ボートを固定具で固定して焼結炉に入れ、2000℃で24時間加熱した。炉が冷却した後、ボートを取り出した。焼結炭化ケイ素で固定されたどの結合部の周りにも、傷も割れもギャップも観測されなかった。
【0077】
全3種類のボートのそれぞれに対する端板のTPを、従来のFaroArm(商標)3D測定技術を使って決定した。測定プロセスでは、各ボートを縦型ウエハーボートとして扱った。上部端板の位置を、下部端板によって生じる中心線に対して測定した。下部端板および下部端板表面のODを測定して、下部端板の中心を通り、下部端板表面と直角をなす中心を決定した。次いで、上部端板ODを決定し、この中心線に対する上部端板の中心位置を決定した。くさび形結合ボートのTPは5.10mmと決定され、ピン留め結合部を有するボートのTPは3.06mmであり、焼結結合部を有するボートのTPは2.27mmであった。この結果は、焼結結合部が、ピン止め結合部より35%優れ、くさび形結合部より125%優れていることを示した。
【0078】
さらに、焼結結合部には、くさび形結合部およびピン留め結合部の場合のような割れも傷もギャップも観測されなかった。くさび形結合およびピン止め結合の結合部で観測されたギャップは、ロッドが端板に対して移動させることができ、ボートが傾斜し、または端板を別の中心線上にくる余地を与える。言い換えれば、これは、上記結果に示すように、各ボートのTPを望ましくなく増大させる。また、ギャップは、ロッドおよび端板の膨張により、実装、処理および加熱に際しての位置合わせ不良も引き起こし得る。これに対して、焼結結合部を有するボートにはギャップがない。したがって、TPがより適切であり、位置合わせ不良の確率が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】レールが焼結セラミックによって端板に固定されている化学気相堆積炭化ケイ素ウエハーボートを示す斜視図である。
【図2】化学気相堆積炭化ケイ素ウエハーボートの、端板と焼結セラミックによって端板に固定されたレールとをレールの歯と溝が見えるように示す図である。
【図3】フィレット半径を有する結合部を示す正面図である。
【図4】長方形のロッドが端板の受口に挿入されている開いた結合部を示す図である。
【図5】その基部に裂溝を有するロッドと、その側面のそれぞれに3つの面を有する端板とを備える、開いた結合部を示す図である。
【図6】くさび形の裂溝を有するロッドと、その側面のそれぞれに3つの面を有する端板とを備える、他の開いた結合部を示す図である。
【図7】セラミック結合剤およびCVD−SiCの被覆を示す閉じた結合部の断面図である。
【図8】結合部のセラミック結合剤の位置が示された、閉じた結合部の別の実施形態を示す正面図である。
【図9】半導体ウエハーを保持するリフタを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
100 ウェーハボート
112 ロッド
114 端板
116 焼結セラミック接合部
118 穴
120 穴
122 面
124 歯
126 溝
200 接合部
202 角型ロッド
204 面
206 受口
208 板
210 側面
300 接合部
302 角型ロッド
304 面
306 基部
308 凹面裂溝
309 平面
310 受口
312 端板
314 側面
316 面
318 想像線
400 接合部
402 角型ロッド
404 面
406 基部
408 くさび形裂溝
410 上面
412 下面
414 共通接合部
416 面
418 受口
420 端板
422 側面
424 面
500 接合部
502 円形ロッド
504 くさび形裂溝
506 上面
508 下面
510 側面
512 基部
514 端板
516 側面
518 面
520 焼結セラミック
600 接合部
602 フラットロッド
604 受口
606 基部
608 矩形裂溝
610 背板
612 焼結セラミック
700 リフタ
702 背板
704 器具設置穴
706 器具設置穴
708 ロッド
710 ロッド
712 歯
714 ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結セラミックによって結合された少なくとも2つの化学気相堆積炭化ケイ素部品を含む物品。
【請求項2】
少なくとも前記焼結セラミックが化学気相堆積炭化ケイ素で被覆されている請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記化学気相堆積炭化ケイ素被覆が0.5〜3mmの厚さである請求項2記載の物品。
【請求項4】
両端において焼結セラミックによりそれぞれの端板に結合された複数のロッドを含み、該複数のロッドおよび該端板が化学気相堆積炭化ケイ素から成る物品。
【請求項5】
少なくとも前記焼結セラミックが化学気相堆積炭化ケイ素で被覆されている請求項4記載の物品。
【請求項6】
前記端板の相互に対する真位置が2mm以下である請求項4記載の物品。
【請求項7】
それぞれの端部の一方において、焼結セラミック結合部により背板の基部に結合された複数のロッドを含み、該複数のロッドの両端が、焼結セラミック結合部により支持レールに結合されており、該複数のロッド、該背板および該支持レールが化学気相堆積炭化ケイ素から成る物品。
【請求項8】
a)1以上のセラミックを含むペースト、ゾルまたはスラリーを提供し;
b)前記1以上のセラミックを含むペースト、ゾルまたはスラリーを2つの化学気相堆積炭化ケイ素部品に適用して前記部品を結合し;
c)前記ペースト、ゾルまたはスラリーを乾燥して、前記2つの化学気相堆積炭化ケイ素部品の周りに前記1以上のセラミックを含む乾燥した組成物を形成し;および
d)前記2つの化学気相堆積炭化ケイ素部品の周りの前記1以上のセラミックを含む乾燥した組成物を焼結して、焼結セラミック結合部を形成すること;
を含む方法。
【請求項9】
前記1以上のセラミックが、炭化ケイ素、金属酸化物および原料鉱物材料を含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも前記焼結セラミック結合部上に化学気相堆積炭化ケイ素の層を堆積する工程をさらに含む請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−260677(P2008−260677A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−55287(P2008−55287)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【出願人】(508068858)
【氏名又は名称原語表記】ACG Electronic Materials
【住所又は居所原語表記】4375 NW 235 Avenue,Hillsboro,Oregon 97124,United States of America
【Fターム(参考)】