説明

化学的機械的平坦化方法

【課題】半導体素子などに層間絶縁膜として用いられる低比誘電率のシリカ系被膜に損傷を与えずに研磨するための化学的機械的平坦化方法を提供する。
【解決手段】加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂と、第2級アルコール又は第3級アルコールと、を含有してなる被膜形成用組成物を塗設して得られたシリカ系皮膜を層間絶縁膜として用いた半導体集積回路を、ジカルボン酸を含む研磨液で研磨することを特徴とする化学的機械的平坦化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布により形成されるシリカ系膜を層間絶縁膜として有する半導体集積回路の化学的機械的平坦化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、CVD法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO2)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。また、半導体素子などの高集積化に伴い、有機SOGと呼ばれるポリオルガノシロキサンを主成分とする低比誘電率の層間絶縁膜が開発されている。更に、比誘電率が2.5以下の絶縁材料としては、膜中に空隙を有するポーラス材が有力と考えられており、LSIの層間絶縁膜に適用するための検討・開発が盛んに行われている。
【0003】
そのようなポーラス材の形成方法として、有機SOG材の低誘電率化が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。この方法は、金属アルコキシドの加水分解縮重合物と共に加熱することにより揮発又は分解する特性を有するポリマーを含有してなる組成物から被膜を形成し、この被膜を加熱することによって空孔を形成するものである。
一方、半導体素子などのさらなる高集積化や多層化を達成するために、半導体製造工程において化学機械研磨(CMP)が行われるようになってきているが、研磨工程で生じる負荷により低比誘電率の層間絶縁膜に欠陥が生じることが問題である。より低比誘電率でかつ機械的強度に優れる層間絶縁膜材料が求められると共に、それらに悪影響がない低負荷で研磨することが必要となってきている。
【特許文献1】特開平10−283843号公報
【特許文献2】特開平11−322992号公報
【特許文献3】特開平11−310411号公報
【特許文献4】特開2004−277508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来における問題点に鑑みなされたものであり、半導体素子などに層間絶縁膜として用いられる低比誘電率のシリカ系被膜に損傷を与えずに研磨するための化学的機械的平坦化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の金属用研磨液に関わる問題点について、下記の<1>〜<5>の化学的機械的平坦化方法により問題を解決できることを見出して課題を達成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
<1> 加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂と、第2級アルコール又は第3級アルコールと、を含有してなる被膜形成用組成物を塗設して得られたシリカ系皮膜を層間絶縁膜として用いた半導体集積回路を、ジカルボン酸を含む研磨液で研磨することを特徴とする化学的機械的平坦化方法。
<2> 前記シラン化合物(A)が、下記一般式(I)、下記一般式(II)及び下記一般式(III)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の化学的機械的平坦化方法。
【化1】

一般式(I)中、Rは水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表し、R1は1価の有機基を表し、xは1又は2の整数を表す。
【化2】

一般式(II)中、R2は1価の有機基を表す。
【化3】

一般式(III)中、R3〜R6は、各々独立に1価の有機基を表し、y及びzは、各々独立に0〜2の整数を表し、R7は、酸素原子、フェニレン基、又は−(CH2n−で表される基(ここで、nは1〜6の整数を表す)を表し、dは0又は1の整数を表す。
<3> 前記ジカルボン酸がマレイン酸であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化学的機械的平坦化方法。
<4> 過硫酸アンモニウムを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化学的機械的平坦化方法。
<5> キナルジン酸を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化学的機械的平坦化方法。
【0006】
本発明に係るシロキサン樹脂を含有する被膜形成用組成物は、ウエハ等の基板上に塗布された後、加熱によって硬化され、低誘電率を発現するシリカ系被膜(Low−k膜)が形成される。更に、本発明においては、該被膜形成用組成物に含有される溶剤が、第2級アルコール又は第3級アルコールであることから、得られるシリカ系被膜が充分な機械特性を発揮し、より優れた電気特性を有する被膜となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体素子などに層間絶縁膜として用いられる低比誘電率のシリカ系被膜に損傷を与えずに研磨するための化学的機械的平坦化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の具体的態様について説明する。
本発明の化学的機械的平坦化方法は、加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂と、第2級アルコール又は第3級アルコールと、を含有してなる被膜形成用組成物を塗設して得られたシリカ系皮膜を層間絶縁膜として用いた半導体集積回路を、ジカルボン酸を含む研磨液で研磨することを特徴とする。
ここで、本発明における「半導体集積回路」とは、トランジスタ等の半導体部品と金属配線とが一体になって形成された回路である。本発明は、かかる半導体集積回路において層間絶縁膜として用いられる低比誘電率のシリカ系被膜を、損傷を与えずに研磨することができるという優れた効果を発揮するものである。
以下に、前記シリカ系被膜を形成するために用いる被膜形成用組成物について記載する。
【0009】
<被膜形成用組成物>
まず、本発明に係る被膜形成用組成物について説明する。
本発明に係る被膜形成用組成物は、加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂(以下、適宜「特定シロキサン樹脂」と称する。)と、第2級アルコール又は第3級アルコールと、を含有してなる。
【0010】
〔特定シロキサン樹脂〕
本発明に係る被膜形成用組成物は、加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂(特定シロキサン樹脂)を含有する。
【0011】
前記シラン化合物(A)が置換基として有する加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子(ハロゲン基)、アセトキシ基、イソシアネート基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これらの中でも、アルコキシ基が好ましい。
加水分解性基であるアルコキシ基を置換基として有するシラン化合物(A)としては、下記一般式(I)、下記一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物からなる群より選ばれた化合物の少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
【化4】

一般式(I)中、Rは水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表し、R1は1価の有機基を表し、xは1又は2の整数を表す。
【0013】
【化5】

一般式(II)中、R2は1価の有機基を表す。
【0014】
【化6】

一般式(III)中、R3〜R6は、各々独立に1価の有機基を表し、y及びzは、各々独立に0〜2の整数を表し、R7は、酸素原子、フェニレン基、又は−(CH2n−で表される基(ここで、nは1〜6の整数を表す)を表し、dは0又は1の整数を表す。
【0015】
特定シロキサン樹脂は、上記一般式(I)、上記一般式(II)及び上記一般式(III)からなる群より選ばれたシラン化合物(A)を、塩基性化合物、及び第2級アルコール又は第3級アルコールの存在下に、加水分解、縮合して得られる。シラン化合物(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
一般式(I)で表される化合物について説明する。
一般式(I)中、Rは、水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表す。R1は1価の有機基を表す。
【0017】
一般式(I)において、R及びR1で表される1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基、ビニル基などを挙げることができる。
R及びR1としては、1価の有機基であることが好ましく、特に、アルキル基又はアリ
ール基であることが好ましい。
ここで、R又はR1で表されるアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基は、鎖状でも、分岐していてもよく、さらにアルキル基が有する水素原子が、フッ素原子などの置換基により置換されていてもよい。
【0018】
また、R又はR1で表されるアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。
R及びR1で表される1価の有機基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
xは1又は2の整数を表す。
【0019】
一般式(I)で表される化合物の具体例として、メチルトリメトキシシラン、メチルト
リエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を、好ましい例として挙げることができる。
【0020】
一般式(I)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても
よい。
【0021】
一般式(II)で表される化合物について説明する。
一般式(II)中、R2は1価の有機基を表す。一般式(II)中、R2で表される1価の有機基としては、先に一般式(I)におけるRとして挙げた有機基と同様の有機基を挙げることができる。
【0022】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等を、好ましい例として挙げることができる。
【0023】
一般式(II)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
一般式(III)で表される化合物について説明する。
一般式(III)中、R3〜R6は、各々独立に1価の有機基を表す。
3〜R6で表される1価の有機基としては、一般式(I)におけるRとして挙げた有機基と同様の有機基を挙げることができる。
【0025】
一般式(III)中、R7は、酸素原子、フェニレン基、又は−(CH2n−で表される基を表す。ここで、nは1〜6の整数を表す。
dは0又は1の整数を表す。
【0026】
一般式(III)で表される化合物の具体例としては、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン等を、好ましい例として挙げることができる。
【0027】
一般式(III)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
これらのシラン化合物(A)は、適宜選択することができ、2種を併用する場合の好ましい組合せとしては、メチルトリエトキシシランとテトラエトキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシランとテトラエトキシシランが挙げられ、中でもメチルトリエトキシシランとテトラエトキシシランの組合せが特に好ましい。
【0029】
シラン化合物(A)が1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、シラン化合物(A)の総含有量は、基板に塗布する直前の被膜形成用組成物の総量に対し、1〜60質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。
【0030】
〔塩基性化合物〕
本発明に係る特定シロキサン樹脂は、上記シラン化合物(A)の加水分解、縮合により
製造されるが、縮合する際に塩基性化合物を用いる。
特定シロキサン樹脂の製造に塩基性化合物を用いることにより、得られた特定シロキサン樹脂を含有する被膜形成用組成物は、低比誘電率、高弾性率であり、さらに基板との密着性に優れたシリカ系被膜を形成することができる。
【0031】
本発明で使用することのできる塩基性化合物としては、無機塩基のほか、有機塩基などが挙げられる。
ここで、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウムなどを挙げることができる。
また、有機塩基としては、例えば、アンモニア、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、メトキシメチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリンなどを挙げることができる。これらの中でも、メチルアミン、エタノールアミン、エチルアミン、トリブチルアミンが好ましく、メチルアミンが特に好ましい。
これらの塩基性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
シラン化合物(A)を加水分解、縮合させる際には、シラン化合物1モル当たり5モルより多く150モル以下の水を用いることが好ましく、5モルより多く130モル以下の水を加えることが特に好ましい。添加する水の量が5モル以下であると、被膜形成用組成物により形成された塗膜の耐クラック性が劣る場合があり、150モルを越えると加水分解及び縮合反応中のポリマーの析出やゲル化が生じる場合がある。
【0033】
塩基性化合物の使用量は、例えば、シラン化合物(A)として、一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物を用いる場合であれば、これらの化合物中における、R1O−基、R2O−基、R4O−基、及びR5O−基で表される基の総量1モルに対して、0.00001〜10モルが好ましく、0.00005〜5モルがより好ましい。塩基性化合物の使用量が上記範囲内であれば、反応中のポリマーの析出やゲル化の恐れが少ない。
【0034】
特定シロキサン樹脂の合成に際しては、シロキサン化合物(A)、好ましくは、一般式(I)、一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物の少なくとも1種を、塩基性化合物の存在下に、加水分解、縮合して、加水分解縮合物を含む反応液を得た後、この反応液をpH7以下に調整することが好ましい。
pHの調整方法としては、反応液をpH調整剤に添加する方法が挙げられる。pH調整剤としては、無機酸や有機酸が挙げられる。その他の、pHの調整方法としては、常圧又は減圧下で塩基性化合物を留去する方法、ガスをバブリングすることにより塩基性化合物を除去する方法、イオン交換樹脂により塩基性化合物を除く方法、抽出や洗浄によって塩基性化合物を系外に除去する方法等が挙げられる。
【0035】
〔第2級アルコール又は第3級アルコール〕
本発明において、シラン化合物(A)の加水分解時に使用する溶媒には特に制限はないが、第2級アルコール又は第3級アルコールが好ましい。アルコール類の他にグリコール類が包含される。
前記第2級アルコール又は第3級アルコールは、反応時の溶媒として使用されるのみならず、被膜形成用組成物の溶剤として用いられる。
アルコール類としては、例えば、イソプロパノール、t−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−オクタノール、3−オクタノールを挙げることができる。また、グリコール類としては、例えば、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルを挙げることができる。これらの中でも、特に、イソプロパノール、t−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0036】
第2級アルコール又は第3級アルコ−ルの使用量としては、シラン化合物(A)1モルに対して1〜100モルであることが好ましく、5〜30モルであることが特に好ましい。
第2級アルコール又は第3級アルコ−ルの使用量が上記範囲内であれば、反応中のポリマーの析出やゲル化の恐れが少ない。
【0037】
本発明における被膜形成用組成物の調製の際、有機溶剤で抽出したり置換したりする場合には、その有機溶剤としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、及び非プロトン系極性溶媒が挙げられる。
【0038】
(その他の添加剤)
本発明における被膜形成用組成物には、さらに、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、有機ポリマー、界面活性剤、シランカップリング剤、ラジカル発生剤、トリアゼン化合物などの成分を添加してもよい。
【0039】
コロイド状シリカとは、例えば、高純度の無水ケイ酸を前記親水性有機溶媒に分散した分散液であり、通常、平均粒径が5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が10〜40質量%程度のものである。このような、コロイド状シリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製のメタノールシリカゾル及びイソプロパノールシリカゾル;触媒化成工業(株)製のオスカルなどが挙げられる。
【0040】
コロイド状アルミナとしては、平均粒径が5〜100nm、好ましくは10〜50nm、固形分濃度が0.05〜10質量%の分散液であることが挙げられる。例えば、日産化学工業(株)製のアルミナゾル520、同100、同200;川研ファインケミカル(株)製のアルミナクリアーゾル、アルミナゾル10、同132などが挙げられる。
【0041】
有機ポリマーとしては、例えば、糖鎖構造を有する化合物、ビニルアミド系重合体、(メタ)アクリル系重合体、芳香族ビニル化合物、デンドリマー、ポリイミド,ポリアミック酸、ポリアリーレン、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物などを挙げることができる。
【0042】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、さらには、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤などを挙げることができ、好ましくはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0043】
本発明に係る被膜形成用組成物の全固形分濃度は、好ましくは、2〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。なお、この全固形分濃度の調整は、必要であれば、濃縮及び前記した有機溶剤、特に好ましくは第2級アルコール又は第3級アルコールによる希釈によって行われる。
【0044】
本発明に係る被膜形成用組成物を、シリコンウエハ、SiO2ウエハ、SiCウエハ、
SiNウエハ、SiCNウエハなどの基板に塗設することにより、シリカ系被膜が形成される。当該シリカ系被膜は半導体集積回路の層間絶縁膜として用いられる。
本発明に係る被膜形成用組成物を、上記基板に塗設する際には、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗布手段を用いることができる。
【0045】
被膜形成用組成物の基板上への塗布は、形成されるシリカ系被膜が乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜2.5μm、2回塗りでは厚さ0.1〜5.0μmの塗膜となるように行われる。
【0046】
基板上に被膜形成用組成物を塗布した後は、常温で乾燥するか、或いは、80〜600℃程度の温度で、通常、5〜240分程度加熱して乾燥することにより、ガラス質又は巨大高分子の絶縁膜(シリカ系被膜)を形成することができる。
この際の加熱方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することができ、加熱雰囲気としては、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行うことができる。
また、基板上に被膜形成用組成物を塗布後、電子線や紫外線を照射することによっても塗膜を形成させることができる。
得られる塗膜の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的に加熱したり、窒素、空気、酸素、減圧などの雰囲気を選択することができる。
【0047】
本発明に係るシリカ系被膜の比誘電率としては、通常、1.2〜3.2、好ましくは1.5〜3.0、さらに好ましくは1.7〜2.8である。
弾性率としては、通常、2.0GPa以上、好ましくは2.1GPa以上、さらに好ましくは2.2GPa以上である。
[研磨液]
次に、本発明に係る研磨液について説明する。
本発明の研磨液は、十分な研磨速度を得る観点から、ジカルボン酸を有する。ジカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、及びそれらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等の塩が挙げられる。中でも、特にマレイン酸が好ましい。
【0048】
前記ジカルボン酸の含有量は、研磨液の総量に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0049】
本発明の研磨液は、砥粒を含有することが好ましい。
該砥粒としては、例えば、珪素,アルミニウム,セリウム,チタン,ジルコニウム,マンガン,クロム,鉄,スズ,タンタルなどの酸化物や窒化物及びこれらの複合粒子などを使用することができる。また用途によって,ダイヤモンドなどの硬質粒子を使用する場合もある。また,スチレン,アクリル,メタクリル,メタクリレート,エチレン,プロピレン,ビニルピロリドン,ウレタン,PVC,PVA(PVF),フェノール,エポキシ,シリコーンなどの有機粒子の使用も有効である。
【0050】
これらの粒子は良く知られている製造法によって得ることができる。金属酸化物粒子の湿式製造法として例えば,金属アルコキシドを出発物質として,これを加水分解する方法によってコロイダル粒子が得られており,具体的には,アルコールを混合したアルカリ水溶液中に正珪酸メチルをある決まった速度で滴下して加水分解を起こさせ,粒成長の時期とクエンチによって粒成長を止める時期を経てコロイダルシリカを作成することができる。その他にアルミニウムやチタンなどのアルコキシドを用いてコロイド粒子が作成されている。この場合一般的にはシリコンアルコキシドを用いるよりも加水分解速度が速く,超微細粒子を作成する際には都合が良い。
また金属酸化物の乾式製造法としては,金属の塩化物を酸水素火炎中へ導入し,この脱塩素化された金属を酸化させる反応によってヒュームド粒子を得ることができる。更には目的物質に含有させたい金属あるいは合金を粉砕して粉体とし,これを支燃性ガスを含む酸素火炎中に投入して,金属の酸化熱によって連続的な反応を起こさせ,微細な酸化物粒子を得る方法も実用化されている。これら燃焼法によって作成された粒子は,製造過程で高熱を経験するため粒子がアモルファス化しており,また湿式粒子に比較すると内部に水酸基などの不純物が少ないために一般的に固体の密度が高く,また表面の水酸基の密度も低いことが特徴である。
前述の窒化物は,例えば前記酸化物をカーボンなどの還元剤と共に窒素雰囲気中で昇温させることによって得ることができる。この場合,還元反応を起こさせながらも粒子間の溶着を起こさないように反応器内の温度分布を如何に均一にさせるかが非常に重要である。溶着を起こした粒子を含んでいる場合は,これらの粉体に速度エネルギーを与え,遮蔽版に衝突させることによって分散させる方法や,強固な凝集体の場合は,溶媒中に分散させてスラリー化したものを高圧ホモジナイザーなどの装置を用いて物理エネルギーを与え分散させる方法が一般的に行われている。
【0051】
砥粒の好ましい含有量は、0.01重量%以上10重量%以下であり、更に好ましくは0.1重量%以上2重量%以下である。
【0052】
〔酸化剤、複素芳香環化合物〕
本発明に係る研磨液は、さらに、酸化剤、有機酸を含有することが好ましい。
(酸化剤)
酸化剤として具体的には、過酸化水素、過酸化物、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン水、銀(II)塩、及び鉄(III)塩が挙げられ、好ましくは過硫酸塩であり、特に好ましくは過硫酸アンモニウムである。
酸化剤の添加量は、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.003mol〜8molとすることが好ましく、0.03mol〜6molとすることがより好ましく、0.1mol〜4molとすることが特に好ましい。即ち、酸化剤の添加量としては、金属の酸化を充分に高くしてCMP速度を確保する点からは0.003mol以上が好ましく、研磨面の荒れ防止の点からは8mol以下が好ましい。
【0053】
酸化剤は、研磨液を使用して研磨を行う際に混合して使用することが好ましい。酸化剤を混合する時期としては、研磨液を使用する直前の1時間以内が好ましく、更に好ましくは5分以内、特に好ましくは、研磨装置にて研磨液を供給する直前に混合器を設け、被研磨面へ供給する直前5秒以内に混合することである。
【0054】
(複素芳香環化合物)
本発明に係る研磨液には、ディッシング低減の観点から複素芳香環化合物を用いることが好ましい。
即ち、ベンズイミダゾール−2−チオール、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオプロピオン酸、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオブチル酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾール、4−メトキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、4−ブトキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、4−オクチルオキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、5−ヘキシルベンゾトリアゾール、N−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル)−N−(1,2,4−トリアゾリル−1−メチル)−2−エチルヘキシルアミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等のアゾール、トリアジンジチオール、ベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾールブチルエステル、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、キナルジン酸、等が高いCMP速度と低いエッチング速度を両立する観点から好ましい。中でもベンゾトリアゾールとキナルジン酸が好ましく、特に好ましくはキナルジン酸である。
【0055】
これら複素芳香環化合物の添加量は、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0001mol〜0.5molとすることが好ましく0.001mol〜0.2molとすることがより好ましく、0.005mol〜0.1molとすることが特に好ましい。即ち、複素芳香環化合物の添加量は、エッチング抑制の点からは0.0001mol以上が好ましく、CMP速度低下防止の点からは0.5mol以下が好ましい。
【0056】
〔界面活性剤/親水性ポリマー〕
本発明に係る研磨液は、上記した以外にも、さらに他の成分を含有してもよく、例えば、界面活性剤、及び、親水性ポリマーを含有することが好ましい。
【0057】
界面活性剤及び親水性ポリマーは、いずれも被研磨面の接触角を低下させる作用を有して、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤や親水性ポリマーとしては、以下の群から選ばれたものが好適である。
【0058】
陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、陽イオン界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩が挙げられ、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができ、非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、また、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0059】
親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール等のポリグリコール類、ポリビニルアルコール、ポロビニルピロリドン、アルギン酸等の多糖類、ポリメタクリル酸等のカルボン酸含有ポリマー等が挙げられる。
【0060】
これらの界面活性剤及び親水性ポリマーの重量平均分子量としては、500〜100000が好ましく、特には2000〜50000が好ましい。
【0061】
界面活性剤及び/又は親水性ポリマーの添加量は、総量として、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
【0062】
〔pH調整剤〕
研磨液のpH調製剤は、例えば、アルカリ、緩衝剤、無機酸の添加により行うことができる。
【0063】
アルカリ、緩衝剤としては、アンモニア、水酸化アンモニウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドなどの有機水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのようなアルカノールアミン類などの非金属アルカリ剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸三ナトリウムなどのリン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩等を好ましく挙げることができる。特に好ましいアルカリ剤としてアンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドである。
無機酸としては、硝酸、硫酸、りん酸等を添加することが好ましい。
【0064】
アルカリ、又は緩衝剤の添加量としては、pHが好ましい範囲に維持される量であればよく、特に制限はないが、例えば、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0001mol〜1.0molとすることが好ましく0.003mol〜0.5molとすることがより好ましい。
【0065】
本発明に係る研磨液のpHとしては、2〜14が好ましく、3〜12が特に好ましい。この範囲において本発明の研磨液は特に優れた効果を発揮する。
【0066】
〔キレート剤〕
本発明の研磨液は、混入する多価金属イオンなどの悪影響を低減させるために、必要に応じてキレート剤を含有していてもよい。キレート剤としては、カルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤である汎用の硬水軟化剤やその類縁化合物を用いることができ、必要に応じてこれらを2種以上併用してもよい。キレート剤の添加量は混入する多価金属イオンなどの金属イオンを封鎖するのに充分な量であればよく、例えば、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0003mol〜0.07molになるように添加することができる。
【0067】
本発明においては、研磨面への吸着性や反応性、研磨体の溶解性、被研磨面の電気化学的性質、化合物官能基の解離状態、液としての安定性などにより、適宜、化合物種、添加量やpH、分散媒を設定することが好ましい。
【0068】
なお、研磨液の濃縮液作製時に添加する成分の内、室温での溶媒に対する溶解度が5質量%未満の物の配合量は、室温での溶媒に対する溶解度の2倍以内とすることが好ましく、1.5倍以内とすることがより好ましい。この添加量が2倍以上では濃縮液を5℃に冷却した際の析出を防止するのが困難となる。
【0069】
以下、本発明の化学的機械的平坦化方法における研磨について詳細に説明する。
本発明においては、研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨する研磨方法を用いることが好ましい。
【0070】
研磨する装置としては、被研磨面を有する半導体基板等を保持するホルダーと研磨パッドを貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)研磨定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などが使用でき、特に制限がない。
【0071】
研磨条件には制限はないが、研磨定盤の回転速度は基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。被研磨面(被研磨膜)を有する半導体基板の研磨パッドへの押しつけ圧力が9.8〜98.1kPa(100〜1000gf/cm2)であること
が好ましく、研磨速度の基板面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、9.8から49.0KPa(100〜500gf/cm2)であることがより好ましい。
【0072】
研磨している間、研磨パッドには研磨液をポンプ等で連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。研磨終了後の半導体基板は、流水中で良く洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
[実施例1〜3]
1.シリカ系被膜を形成した基板(ウエハ)の作製
<被膜形成用組成物の調製>
石英製セパラブルフラスコに蒸留プロピレングリコールモノエチルエーテル410g、イオン交換水180gと25%メチルアミン水溶液14gを入れ、60℃で攪拌を行った。この混合液にメチルトリエトキシシラン45.3gとテトラエトキシシラン69.2gの混合物を一定速度で2時間かけて添加した。この溶液を60℃で更に4時間反応させた。この溶液に10%マレイン酸のプロピレングリコールモノプロピルエーテル溶液を添加し、溶液のpHを7以下とし、50℃のエバポレーターを用いて溶液を10%(完全加水分解縮合物換算)となるまで濃縮し、反応液を得た。この反応液を0.2μm径のテフロン(登録商標)製フィルターでろ過を行い、被膜形成用組成物を得た。
【0075】
<シリカ系被膜の形成>
8インチシリコンウエハ上に、スピンコート法を用いて、回転数2000rpmにて被膜形成用組成物を塗布した。塗布後、被膜中の溶媒除去のため、大気雰囲気中ホットプレート上で80℃で1分間保持し、続いて200℃で1分間ウエハを乾燥した後、さらに425℃真空の条件で1時間ウエハを焼成し、シリカ系被膜を形成した。
【0076】
−比誘電率の評価−
上記により得られたシリカ系被膜に対して、蒸着法によりアルミニウム電極パターンを形成させ比誘電率測定用サンプルを作製した。このサンプルの比誘電率を、カスケード・マイクロテック(株)製マニュアル・ステーション(SUMMIT11751HT)、ヒューレットパッカード(株)製HP4285AプレシジョンLCRメータを用いて100kHzの周波数でCV法により測定した。このようにして作製したシリカ系被膜の比誘電率は2.7であり、低比誘電率であることが確認された。
【0077】
−機械的強度(弾性率)の評価−
上記により得られたシリカ系被膜の弾性率を、ナノインデンターXP(MTSシステムズ社製)を用いて、連続剛性測定法により測定した。このようにして作製したシリカ系被膜の弾性率は7.4GPaであった。
【0078】
2.研磨液の調製
本発明で使用する研磨液の組成を以下に示す。
コロイダルシリカ(平均粒子80nm): 2wt.%
ジカルボン酸又は有機酸(表1に記載): 2wt.%
複素芳香環化合物(表1に記載): 0.05wt.%
過硫酸アンモニウム: 2wt.%
pH: 9.5
【0079】
前記コロイダルシリカの平均粒径は、LASER PARTICLE ANALYZER PAR−III(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。
【0080】
3.研磨
上記により得られたシリカ系被膜を表1に示した研磨液を用いて研磨を行った。
研磨機としては、ラップマスターSFT社製の研磨装置(型式「LFP612」)を用い、定盤にロデール・ニッタ社製のパッド(品番「IC1400」)を貼り付け、このパッドに、上記によりシリカ系被膜(層間絶縁膜)を形成したウエハを押し付けて10分間研磨した。研磨条件は、加工圧力70g/cm2、定盤回転数65rpm及び研磨剤供給量200cc/秒とした。研磨後、ウエハを洗浄し、乾燥した。
各実施例に用いたシリカ系被膜を形成したウエハの種類と研磨液との組み合わせの詳細を表1に示す。
【0081】
4.評価
研磨後の各ウエハについて、研磨傷の個数を評価した。研磨傷の個数は、KLAテンコール社製のSP−1を用いて計測した。表1に結果を示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示されるように、実施例の化学的機械的平坦化方法によれば、シリカ系被膜に与える損傷を低く抑える研磨が可能である。
即ち、本発明によれば、通常は機械的強度が弱くなるシリカ絶縁膜を研磨する際に、ジカルボン酸を含む研磨液を用いて研磨することによって、特異的に研磨傷の少ない仕上がりが実現できることが分かる。
これに対し、ジカルボン酸を含有しない比較例1では、研磨傷が多数発生することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性基を置換基として有するシラン化合物(A)を塩基性化合物の存在下で縮合させたシロキサン樹脂と、第2級アルコール又は第3級アルコールと、を含有してなる被膜形成用組成物を塗設して得られたシリカ系皮膜を層間絶縁膜として用いた半導体集積回路を、ジカルボン酸を含む研磨液で研磨することを特徴とする化学的機械的平坦化方法。
【請求項2】
前記シラン化合物(A)が、下記一般式(I)、下記一般式(II)及び下記一般式(III)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の化学的機械的平坦化方法。
【化1】

[一般式(I)中、Rは水素原子、フッ素原子、又は1価の有機基を表し、R1は1価の有機基を表し、xは1又は2の整数を表す。]
【化2】

[一般式(II)中、R2は1価の有機基を表す。]
【化3】

[一般式(III)中、R3〜R6は、各々独立に1価の有機基を表し、y及びzは、各々独立に0〜2の整数を表し、R7は、酸素原子、フェニレン基、又は−(CH2n−で表される基(ここで、nは1〜6の整数を表す)を表し、dは0又は1の整数を表す。〕
【請求項3】
前記ジカルボン酸がマレイン酸であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化学的機械的平坦化方法。
【請求項4】
前記研磨液が過硫酸アンモニウムを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化学的機械的平坦化方法。
【請求項5】
前記研磨液がキナルジン酸を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化学的機械的平坦化方法。

【公開番号】特開2007−266502(P2007−266502A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92316(P2006−92316)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】