化学蒸気センサー測定に影響を及ぼす環境変動を補償するためのトレーサー
【課題】安全システムで使用するため、高感度で着目化学種状物を受動的に測定し、選択領域で化学的特異性を受動的に測定できる化学蒸気センサーが提供される。
【解決手段】蒸気濃縮器は化学物質蒸気状物の濃度を赤外線検出器で使用するため検出可能レベルまで増幅する。化学蒸気センサーの受動的測定に影響を及ぼす環境変動の補償が提供される。環境変動には、周囲の空気中の外来的な蒸気又はサンプル蒸気が蒸気状物源から化学物質センサーのサンプリング用吸引口へとドリフトするときサンプル蒸気の少なくとも一部分を逸らす空気流れが含まれ得る。一例では、エタノール蒸気が測定され、二酸化炭素トレーサー測定値が環境変動に対して調整されるエタノール蒸気測定値を計算するため使用される。一態様では、血液アルコール濃度を計算するため人工時間フィルターが二酸化炭素センサーの出力をエタノールセンサーの時間依存性に合致させるように設定される。
【解決手段】蒸気濃縮器は化学物質蒸気状物の濃度を赤外線検出器で使用するため検出可能レベルまで増幅する。化学蒸気センサーの受動的測定に影響を及ぼす環境変動の補償が提供される。環境変動には、周囲の空気中の外来的な蒸気又はサンプル蒸気が蒸気状物源から化学物質センサーのサンプリング用吸引口へとドリフトするときサンプル蒸気の少なくとも一部分を逸らす空気流れが含まれ得る。一例では、エタノール蒸気が測定され、二酸化炭素トレーサー測定値が環境変動に対して調整されるエタノール蒸気測定値を計算するため使用される。一態様では、血液アルコール濃度を計算するため人工時間フィルターが二酸化炭素センサーの出力をエタノールセンサーの時間依存性に合致させるように設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して化学蒸気センサーに係り、より詳しくは、安全システムで使用するため、着目する化学種を測定し、化学蒸気センサー測定値に影響を及ぼし得る環境変動を補償するための化学蒸気センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
酔ったドライバーは、アメリカ合衆国内で交通事故の死亡の主要な原因となっている。近年のNHTSA報告は、2003年度の合衆国内での総事故死亡者の40%がアルコールに関係していることを示している。より詳しくは、0.08g/dL以上の血液アルコール濃度(BAC)を含んだ12,373人もの自動車の乗員が、衝突で亡くなっている。これは、2003年度において37,132人ものアメリカ合衆国の自動車事故死亡者の33%以上にも上っている。社会への衝撃に加えて、アメリカ合衆国内でのそのような衝突のコストは、年間約400億ドルである。移動したマイル当たりの致死交通事故の率は、ドライバーのBACに関連し、運転技術の低減とドライバーのBACとの間に相関関係が存在することは、良く確立されている。アメリカ合衆国内での飲酒運転の定義は、特定の州の法律に依存し、0.08g/dL又は0.10g/dLのいずれかのBACレベルとなることを含んでいる。その上、現在0.10g/dLのBAC限界を有する合衆国の州は、効果を直ぐにあげるため、BAC限界を0.08g/dLに低下させる法律を通過させた。合衆国内での飲酒運転と争うための主要な対抗策は、犯罪裁判システムであり、これは、酔ったドライバーに対して、抑止及び制裁を用いる。飲酒運転と争うための他の様々なアプローチが利用された。
【0003】
飲酒運転と戦う一つの現存するアプローチは、空気中のエタノール濃度を測定する電子化学的センサーを利用する。人間の息内のエタノール濃度は、BACの良好な示度である。人間の肺内の空気嚢の内部には、空気中のエタノール濃度と、個人の血液中のエタノール濃度との間に化学的な平衡状態が存在している。法律施行目的のため、電子化学的センサーは、警察官が幾つかの状況下で車両内に正当に挿入することができるクリップボード又は懐中電灯等の物体内に構築される。しかし、現在利用可能な電子化学的センサーは、寿命が制限されており、約3年後には交換されなければならない。安全システムに搭載される構成要素として使用されるためには、エタノールセンサーは、少なくとも10年から15年の寿命を持っていなければならない。使用される別の電子化学的センサーは、ドライバーの皮膚から蒸発するエタノールの遠隔検出を通してアルコール酩酊状態を決定するため、個々人の皮膚に対して押し付けられる装置を備えている。他のアプローチは、例えば指等のドライバーの末端を通して赤外線を通過させる工程又はドライバーの眼の表面で流体中のエタノール濃度を測定するためラマン分光計を使用する工程を備えている。これらのアプローチも、車両に搭載する使用法には実用的ではない。
【0004】
飲酒運転と戦うための別のアプローチは、エタノール濃度に応答して電気抵抗を変化させる金属酸化物の加熱されたフィルムを使用する。そのようなセンサーは、飲酒運転を確信した後に時折指令される、市販されている「呼吸連動装置」で使用される。これは、ドライバーに、車両が始動する前に息内の過度のアルコールをチェックするためチューブ内へ息をはき出すことを要求する。しかし、そのようなセンサーは、車両の車室の空気中のエタノール蒸気を測定することに関して酔ったドライバーを受動的に検出する上では十分な感度を持っていない。チューブ内にはき出された呼吸サンプルは、希釈化されず、その結果、必要とされる検出レベルは、エタノールの体積にして約210の百万分の一濃度(ppm)しかない。受動的な検出システムは、約1000倍もの感度であることを必要としている。また、金属酸化物膜で高い信頼性で検出することができる最小のエタノール濃度は、典型的には、10乃至50ppmの範囲にある。更なる欠点は、エタノール濃度への応答は、エタノール濃度の関数として非線形であるということである。
【0005】
法律施行目的のため赤外線検出も息内のエタノール濃度を定量化するために使用されたが、使用される器具は、典型的には約1mの経路長さを持ち、大きく嵩張るものとなっている。車両車室中で受動検出するため必要とされるエタノールに対する増大した感度を達成するため、この形式の器具を利用して、経路長さを増大させることができた。しかし、赤外線検出を使用し、受動検出のための要求された感度を達成するためには、100mのオーダーの経路長さが必要となる。これは、車内搭載センサーには実用的ではない。
【0006】
2003年1月21日に出願され、デルファイ・テクノロジー社に譲り受けされた米国特許出願番号2004/0141171号は、蒸気濃縮器を使用することによりエタノールへの増大した化学感度を提供する。エタノール蒸気は、吸着器に亘ってエタノールを含む空気を通過させることにより収集され、続いて、吸着器はエタノール蒸気を解放するため加熱される。化学的センサーが利用され、該センサーは、セラミック基板上の加熱金属酸化膜の電気伝導度へのエタノール蒸気の効果を測定することによってエタノール蒸気を検出する。
【0007】
2005年1月12日に出願され、デルファイ・テクノロジー社に譲り受けされた米国特許出願シリアル番号11/033,677号は、蒸気濃縮器と赤外線検出器とを利用するエタノール蒸気の受動的検出を提供する。2005年1月12日に出願され、デルファイ・テクノロジー社に譲り受けされた更なる米国特許出願シリアル番号11/033,703号は、活性呼吸分析器に加えて、蒸気濃縮器及び赤外線検出器を利用してエタノール蒸気の受動的及び能動的な検出を提供する。
【0008】
上記システムは、エタノール蒸気の測定を提供しているが、環境因子が、化学的センサー吸引口により拾い上げられる前のドライバーの息からの蒸気(エタノール蒸気及びCO2)の濃度に影響を及ぼし得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
安全システムで使用するため、高感度で着目する化学種状物を受動的に測定し、選択された領域で化学的特異性を受動的に測定することができる化学蒸気センサーが提供される。本発明は、化学蒸気センサーの受動的測定に影響を及ぼし得る環境変動の補償を更に提供する。測定値に影響を与える環境変動には、周囲の空気中の外来的な蒸気、又は、サンプル蒸気が蒸気状物源から化学物質センサーのサンプリング用吸引口へとドリフトするときサンプル蒸気の少なくとも一部分を逸らす空気流れが含まれ得る。一実施例では、本発明は、自動車安全システムに搭載して使用するためエタノールの選択的検出を提供する。車両車室中のエタノール蒸気は、受動的に測定され、十分な感度が、血液アルコール濃度(BAC)の法的限界を超える自動車ドライバーを受動的に検出するため提供される。
【0010】
飲酒の閾値において、一つの幅広く普及している法的定義によれば、息内のエタノールの濃度は、息の210リットル当たりエタノールの0.08グラムとして定義され、1気圧では、体積にして210ppmのエタノールと等価である。息内のエタノールの濃度は、人間のBACに比例している。エタノールの受動的検出のために、エタノールの体積にして210ppmより遥かに低い濃度の検出が必要とされている。本発明は、化学物質蒸気センサーの感度を向上させる。一実施例では、本発明は、体積にして0.1ppmから10ppmの範囲のエタノール濃度及び車両車室中のCO2濃度の両方を測定するため受動的化学物質蒸気センサーを用い、ドライバーのBACを推定するためエタノール及びCO2の測定値を使用することによってドライバーの飲酒の受動的検出を提供する。更に加えて、ドライバーは0.08g/dLよりも遥かに大きいBACを示しかねず、車両車室の空気は、大して希釈されないので、本発明は、10ppmよりも大きいエタノール濃度を測定する工程を更に提供する。
【0011】
一実施例では、エタノール蒸気濃度を測定するため赤外線を使用する既知のシステムと比較すると、本発明は、作動パラメータに応じて、50から1000の範囲であり得る因子でエタノール蒸気の検出感度を増大させる。更には、本センサーは、目立たない位置に配置することができ、ドライバーによる能動的な介入を必要とすることなく独立に作動することができる。
【0012】
本発明の特徴は、赤外線(IR)検出器で使用するため、検知可能なレベルにまで化学蒸気状物の濃度を増幅させるように蒸気濃縮器を部分的に利用することにより達成される。更には、環境変動の補償は、蒸気濃度測定値を調整することにより提供される。当該調整は、首尾一貫した濃度を持つことが知られているトレーサー蒸気を使用してなされる。一実施例では、CO2測定値、CO2定数及び環境空気中のCO2が、人間の息からくるガスサンプルの割合を決定するため使用される。本発明は、血液アルコール濃度(BAC)を計算するため、エタノールセンサーの時間依存性とマッチングするようにCO2センサーの出力に対して人工時間フィルターを更に提供する。
【0013】
蒸気濃縮器に関して、エタノールを検出する場合には、空気は、エタノール蒸気を収集するため所定時間に亘って吸着器を通って通過させられる。空気の流れは停止され、吸着器は加熱され、より高い濃度のエタノール蒸気を赤外線吸収室へと解放する。一実施例では、エタノール濃度は、吸着器を加熱したことに起因して約2のオーダーの大きさで増幅される。赤外線源による赤外線検出器への赤外線伝達がエタノールを検出するため使用される。赤外線フィルターは、赤外線検出器の応答をエタノール蒸気により吸着される帯域に制限する。更に加えて、マイクロコントローラは、所定濃度の化学種が超えられた場合、適切な安全システム応答を指令し、実行する。一実施例では、エタノール蒸気濃度検出の場合に関して、呼び出された安全システム応答は、先行する車両の後の最小の運転間隔を増大させ、車両性能を制限し、乗員にシートベルトを締めるように警告する、各要求を含む要求を課する。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の開示内容を研究した当業者には明らかとなろう。従って、本発明の範囲は、次の図面に関して与えられた、一実施例の一例を参照することによって、より良く理解される。
【0015】
本発明の前記した態様及び付随する利点の多くは、添付図面と関連させて次の詳細な説明を参照することによってより容易に認められるようになる。
【実施例】
【0016】
一例としての実施例を特定の構成を参照して説明する。当業者は、添付された請求項の範囲内に含まれたままで、様々な変更及び変形をなし得ることを理解している。更には、周知された要素、装置、構成部品、方法、プロセス工程等は、本発明を不明瞭にすることを回避するため詳細には記載されていない。更には、反対のことが示されない限り、次の明細書及び請求の範囲に記載された数値は、本発明により得られることを求められた所望の特徴に応じて変り得る近似値である。
【0017】
現在のところアメリカ合衆国では、自動車のドライバーは、血液アルコール濃度(BAC)が0.08g/dLを示したとき、飲酒であると法的にみなされ、よって、飲酒である間に自動車を運転すれば法律を犯したものとみなされる。自動車のドライバーのBACを受動的に監視することは、飲酒ドライバーにより引き起こされる自動車事故を回避することを促進することができる。BAC測定値を、車両に停止するように指令したり、ドライバーの反応時間へのBACの効果を補償するため利用することができる。受動的監視工程(能動的ではない)は、車両ドライバーの能動的な介在無しに車両ドライバーのBACを検知する。自動車ドライバーのBACを能動的に監視することは、飲酒した人が自動車を操縦することを防止することを更に促進させることができる。
【0018】
赤外線伝達に基づいた蒸気センサーは、適切な経路長さを必要とする。経路長さが短か過ぎる場合、検出された強度の変化は、検出された強度の揺らぎに対して小さくなる。経路長さが長過ぎる場合、吸収線の中心における検出強度は、小さくなる。最適な経路長さは、測定されるべき化学物質の濃度に依存している。例えば、最適な周波数の固定帯域内で伝達される光の一部を測定するセンサーを想定する。精度を改善するため、着目する化学種は、帯域内で10%の吸収のオーダーを維持するべきである。従来の化学物質センサーでは、1070cm−1(9.4μm波長)付近の吸収帯域が、典型的には、エタノール蒸気を検出するため使用される。1070cm−1帯域のピーク近傍では、吸収係数は約2.5×10−4(μモル/モル)m−1となる。その結果、250ppmのエタノール濃度の場合、10%の吸収を得るためには0.7mの経路長さが必要とされる。飲酒の閾値では、息内のエタノール濃度は、総合して1大気圧で約210ppm(体積にして)となる。比較のため、呼吸サンプル中のエタノール蒸気の濃度を決定するため、法律の施行によって、典型的には、呼吸サンプルを通して1mの経路長さを有する赤外線に基づく器具が使用される。
【0019】
しかし、エタノールを受動的に監視するため、車両車室の空気が監視される(ドライバーの息の直接的な監視ではない)が、その結果、エタノールセンサーは、かなり減少したエタノール濃度をも監視する能力を必要とする。更に後述されるように、法的飲酒の閾値の近傍にあるBACを示すドライバーを検知するため、受動的監視を用いるエタノールセンサーは、車両の車室内で0.1ppmから10ppmの範囲にあるエタノールを測定することができなければならない。更に加えて、ドライバーが、0.08g/dLより遥かに大きいBACを示す可能性があり、車両の車室空気を大して希釈することができないので、受動的なエタノールセンサーは、10ppmよりも大きいエタノール濃度を測定することができなければならない。1ppmのオーダーでエタノール濃度を測定するため赤外線センサーが使用されるべきである場合、市販のセンサーのための最適な経路長さは、100mのオーダーとなる。100mの経路長さの必要性は、車両でのその使用を制限する。よって、そのようなエタノール蒸気センサーは、車両搭載用途にとって非常に嵩張るものとなり、赤外線検出のための長い経路長を必要とする。
【0020】
安全システムで使用するため、着目する化学種を測定する実用的なサイズに定められた受動車両搭載式化学物質蒸気センサーを提供するシステム及び方法を本明細書で説明する。本発明は、車両車室空気を用いて受動検出するため赤外線(IR)検出器により必要とされるレベルにまでエタノール濃度を増加させ、これによってエタノールのサブppmオーダーの濃度の検出を可能にした蒸気濃縮器を利用している。化学物質の感度の改善も得られている。本発明は、更に、化学物質蒸気センサー測定値に影響を及ぼし得る環境変動を更に補償する。後述されるような実施例としての一実施例では、エタノール濃度、息内のCO2及び環境空気のCO2が、ドライバーのBACを監視するため、自動車ドライバーの近傍でサンプリングされる。本発明は、能動化学物質蒸気センサーと共に利用することができることが理解されるべきである。例えば、能動検出吸引口が、赤外線吸収室120に連結されてもよい。
【0021】
図面を参照すると、様々な図面を通して同一の参照番号は同じ構成要素を指し示されている。このうち図1は、化学物質センサー100の構成部品を示し、該センサーは、受動検出吸引口110と、吸着器114及び加熱器116を備える蒸気濃縮器と、二要素の赤外線検出器126と、マイクロコントローラ140と、を備えている。
【0022】
空気は、空気ポンプ130により受動検出吸引口110へと引き込まれる。空気は、吸着器114と、赤外線吸収室120と、空気ポンプ130と、チェックバルブ128と、を通過し、空気出口134を通って解放される。空気ポンプ130は、例えば、ブレイルスフォード社からのモデルTD−3LSである。チェックバルブ128は、空気ポンプ130がオフであるとき空気の流れを妨害するため直列に配置されている。吸着器114は、エタノール蒸気を吸着し、加熱器116により加熱される。吸着器114は、炭素分子ふるい、活性炭素、及び、カーボンナノチューブ等の炭素から構成することができる。代替例として、吸着器114は、多孔性有機ポリマーと、ゼオライト等の高表面積を有する無機材料とから構成することができる。吸着器114は、例えば、スペルコから入手可能なガラス管内のカーボキセン1003の3mm長のベッドである。加熱器116は、吸着器114を覆うガラス管の周りに抵抗性ワイヤを巻き、エポキシを利用して該抵抗性ワイヤをガラス管に固定することにより構成することができる。赤外線源118は、赤外線吸収室120を横切って赤外線波を通過させ、二要素赤外線検出器126へと至らせる。二要素赤外線検出器126は、例えば、デクスター開発研究所のモデルDR−34により提供された二要素の熱電対検出器である。個々の赤外線検出器は、異なる赤外線透過フィルター124A及び124Bにより覆われている。赤外線源118は、例えば、電流を制御することにより活動させることができる電気ヒーターである。エタノールを検出するため9.4ミクロンの波長帯域を用いるとき、例えば、イオン光学系源の部品番号NL5NCC等の広帯域放射器を赤外線源118として用いることができる。NL5NCCは、フッ化カルシウム窓を備えた加熱フィラメント(空気中)から構成され、該窓は、赤外線室からフィラメントを分離している。フッ化カルシウム窓は、この波長では透明である。ワイヤ又は膜を高温度まで上昇させるように電力を使用することにより赤外線を放射する類似の装置が、他の製造業者から入手可能である。エタノールを検知するため3.4ミクロンの波長帯域を用いるとき、赤外線源118は、例えば、白熱灯であってもよい。赤外線フィルター124は、エタノールにより吸収される赤外線周波数又は波長の範囲を選択するため使用される。一例では、9.4ミクロン波長でエタノールを検出するため利用される赤外線フィルターは、スペクトラゴン部品番号NB−9460−220である。一例では、3.4ミクロン波長でエタノールを検出するため利用される赤外線フィルターは、デックススター開発研究所から入手可能なストックフィルターFHC1である。一例では、赤外線フィルター124Bは、CO2により吸収される赤外線周波数又は波長の範囲を選択するため使用されるOCLI部品番号N04249.8である。二要素赤外線検出器126は、赤外線を検出するため用いられる二要素熱電対であってもよい。熱電対検出器は、入射した赤外線を熱に変換し、誘導された温度上昇を測定するため、一連の熱電対列を使用する。二要素赤外線検出器126は、時間の関数として各検出器から出力電圧を提供する。赤外線フィルターの選択を通して、二要素赤外線検出器126からの2つのチャンネルは、多数の異なる化学物質、又は、エタノール及びCO2を含む物質を検出するように構成することができる。一例では、二要素赤外線検出器126は、エタノールに感度を持つチャンネルと、CO2に感度を持つチャンネルと、を備える。マイクロコントローラ140は、空気ポンプ130と加熱器116と赤外線源118とを備える化学物質センサー100の各構成要素の所定の作動を指令し、調整し(信号ライン142を介して)、二要素赤外線検出器126の出力を受け取る。
【0023】
蒸気濃縮器は、本発明の一実施例において、サンプルガスの分圧を増幅させる。僧服因子は、着目する化学種を収集する吸着器114の能力により限界付けられる。この限界が超えられたとき、吸着器114は飽和し始め、ブレークスルーが発生する。VBをブレークスルー前に吸着器114を通過することができるサンプルガスの体積とする。VSを吸着器114内のガス体積とする。最大の可能な増幅因子はA=VB/VSとなる。よって、Aを最適化するため、ブレークスルー体積は、サンプル体積に対して最大にされるべきである。一つのアプローチは、吸着器114が加熱されるとき、例えば、空気の流れを停止させることにより、該吸着器を孤立させることである。推定として、最大のAは、吸着器114それ自体の体積に対するブレークスルー体積の比率である。代替例として、蒸気濃縮器を通した空気の一定流れで吸着器114を急激に加熱することにより濃度を増幅することができる。これがなされたとき、最大濃度は、加熱されている間に空気が交換される回数に依存しており、それにより、吸着器114を急激に加熱することが重要となる。
【0024】
飲酒運転の安全な帰結は、酔っ払った運転技術及び特別のリスクを取り上げることから生じる。一つのアプローチは、酔っ払ったドライバーが反応するための時間をより多く与えることである。本発明は、酔っ払ったドライバーのゆっくりとした反応時間のための安全システムによる自動補償を提供している。化学物質センサー100(即ち、赤外線センサー)により測定されたとき、例えば、所定濃度のエタノールが超えられた場合、適切な安全システム応答をマイクロコントローラ140により実行することができる。安全システムは、先行する車両の背後で最小の運転間隔を要求するか又は増加させることを始めとした拘束的要求及び制限を課し、並びに、車両性能を拘束することができる。更には、暗是応答は、警告を発し、シートベルトを締めるように乗員に要求することができる。加えて、安全システムは、ワイヤレス送信器を介して、測定されたエタノール濃度を示すメッセージか又は車両車室内のエタノール濃度若しくは車両ドライバーのBACが予めセットしたレベルを超えたことを示すメッセージを警官に送信することができる。更には、一実施例では、交通事故の場合には、安全システムは、エタノールが検出されたことをEMS応答者又は警官に警告することができる。加えて、安全システムは、第三者によりダウンロードするためのフライトレコーダーに所定レベルのエタノール検知を送信することができる。
【0025】
本発明のエタノール検知は、車両始動の前に用いることができ、車両操縦中に繰り返し実行することができる。繰り返し検出工程は、本発明をして、前に消費されたアルコールに関してドライバーを監視することを可能にし、このアルコールは、ドライバーの息内のエタノール濃度を、時間の経過と共に、おそらくは法的制限を超えて増大させる。
【0026】
赤外線吸収室120が特別の低温度に達した場合、水は赤外線吸収室120内で凝結し得る。これによって、赤外線吸収室120の壁に付いた液体水が、送出された赤外線の強度を減少させ得るので、赤外線伝達による特別の化学物質蒸気の小さい濃度の検出においてエラーを引き起こすおそれがある。本実施例では、本発明は、化学物質センサー100への次の調整を提供する。即ち、赤外線吸収室102は吸着器114から又は能動検出吸引口108から該赤外線吸収室内に解放された蒸気の露点を超えた温度へと加熱される。代替例として、吸着器114(カーボン)が、エタノールが吸着されている間、環境温度を10℃のオーダーで超えた温度となるように加熱される。これは、吸着された蒸気が赤外線吸収室120へと排気されたとき露点を超えることを回避するため吸着器114によって吸着された水の体積を制限する。露点に近い場合、カーボンが、水を吸着できることがあり得ることである。代替例として、赤外線吸収室120の内部は、水滴が付くことを防止する材料、例えば類似の機能を奏する車両の風防ガラスのための現存するコーティング等で被覆される。代替例として、蒸気濃縮器からの排気物が赤外線吸収室120の中心を流れ下るが、それが凝結し得る冷却壁と接触することを回避するように、空気流れが、赤外線吸収室120を通して変えられる。代替例として、カーボンよりも更に疎水性を示す吸着材料が利用されるが、まだエタノール蒸気を吸着する。
【0027】
図2は、高感度及び化学物質の特異性を備えたエタノール蒸気濃度の受動的測定方法の各工程を示している。エタノール蒸気は、環境空気を受動検出吸引口110へと吸着器114を通して通過させることにより収集される(方法工程210と示される)。二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルは、赤外線源118をオフにした状態で、出力電圧(Voffと示される)を提供する(方法工程212と示される)。吸着器114は、捕捉されたエタノール蒸気を解放するため加熱器116により加熱される(方法工程214と示される)。赤外線源118が作動され、二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルの出力電圧(Vonと示される)が、赤外線吸収室120内で濃縮されたエタノール蒸気を有することなく測定される(方法工程216と示される)。所定の時刻で、吸着器114から赤外線吸収室120へと濃縮エタノール蒸気を輸送するのに十分に長く空気流れが付勢される(方法工程218と示される)。代替例として、濃縮されたエタノール蒸気は、所定の時刻で、吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通して通過させられる。次に、追加の赤外線吸収により引き起こされる、Vonに対する二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルの出力電圧(Vsigと示される)の変化が測定される(方法工程220と示される)。赤外線吸収室120内のエタノール蒸気の濃度が増大するとき、検出される赤外線強度に減少が存在する。マイクロコントローラ140は、比率Vsig/(Von−Voff)を計算する(方法工程222と示される)。吸着器114から赤外線吸収室120へと濃縮エタノール蒸気を輸送するのに十分に長く空気流れを付勢することによって、赤外線伝達を、所定の時刻で又は長期間に亘って測定することができる。吸着器114及び赤外線吸収室120から濃縮エタノール蒸気を追い出すため再び空気流れが付勢される。
【0028】
上記説明の更なる理解を、図示の目的のため提供される次の実験結果例を参照することにより得ることができるが、本発明はその例に限定されない。
【0029】
図3を参照すると、図1に示されるように二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルから時間の関数として例示された測定電圧についてグラフ的表現が与えられている。この例では、化学物質センサー100は、エタノールに感度を持ち、上述されたように受動的測定方法の各工程(エタノール蒸気が吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通して通過される)を利用している。図示のように、「基準ラインオフ」は、約58秒に延長され、電圧の上昇が観察された。「基準ラインオフ」は、赤外線源118がオフの状態で二要素赤外線検出器126が測定電圧(Voffと示される)を提供する時刻に対応している。約58秒において、赤外線源118が付勢される。約90秒で、赤外線源118の出力が、「基準ラインオン」として示されるように、赤外線吸収室120内に空気を有した状態で横ばい状態となる。この時刻における二要素赤外線検出器126からの出力は、Vonと示される。赤外線源118がオンとなった状態で、所定の時刻で、濃縮エタノール蒸気は、吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通して通過され、赤外線伝達における落ち込みが観察された。二要素赤外線検出器126からの出力における落ち込みは、「脱着ピーク」として示される。二要素赤外線検出器126の出力(Vsigと示される)のエタノール検知チャンネルにおけるVonに対する変化は、発生した追加の赤外線吸収により引き起こされる。
【0030】
エタノール濃度を決定するため赤外線吸収を利用するセンサーのために、当該出力は2つの測定量の比率であることが望ましい。そのような比率は、光源の使用年数又は光学系への赤外線吸収材料の蓄積等の変化に応じて生じ得る較正において漸次的ドリフトを無くす。本発明により提供される化学物質センサー100からのエタノール出力は、比率である。当該比率の分子は、時間に関する「脱着ピーク」(「基準ラインオン」に対して)の積分である。分母は、「基準ラインオン」と「基準ラインオフ」との間の差異である。化学物質センサー100からのCO2出力も比率を使用して決定することができる。
【0031】
図4は、測定された赤外線センサー信号比率に関する上述された方法工程を利用して得られたエタノール濃度の一例としてのグラフであり、該方法では、エタノール蒸気は、吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通って通過させられる。図示のように、エタノール蒸気は、200sccm(標準の毎分立方センチメートル)で5分間に亘って環境空気を吸着器114へと該吸着器を通して通過させることにより収集される。次に、濃縮されたエタノール蒸気が、50sccmで吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通って通過させられる。このプロセスは、図2を参照してより完全に上述されている。
【0032】
データが、0から9ppmの範囲にある既知のエタノール濃度で収集されている。このエタノール濃度範囲は、上記したように0.08g/dLのBACを持つドライバーにより生成されたエタノール濃度を決定するための実験によれば、ドライバーが車両に乗車した後5分で、車両車室内の空気中のエタノール濃度が約0.5ppmから9.8ppmまでの範囲に及んだことが見出された。当該データは、化学物質センサー100の出力の関数として既知のエタノール濃度の最も良く適合された線形関数を得るため使用された。この例では、データは、エタノール濃度が、0.13ppmの残余の標準誤差で測定されたことを示した。受動的測定に関する化学物質センサー100(図1に示されるような)は、0.1ppmから10ppmの範囲のエタノール濃度を測定し、従って、法的飲酒状態の閾値近傍のBACを持つ酔った車両ドライバーの受動検出のために十分な感度を提供している。更に加えて、ドライバーは0.08g/dLよりも遥かに大きいBACを示し得るので、本発明は、10ppmよりも大きいエタノール濃度を測定する工程を更に提供している。
【0033】
図5を参照すると、図1に示されるような二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルから時間の関数として測定された一例としての電圧グラフが与えられている。化学物質センサー100は、図2に示されるような方法工程を利用して、エタノールに感度を有する。この特別の例では、空気中のエタノール濃度は、4.3ppmである。
【0034】
CO2は、空気が吸着器114及び赤外線吸収室120を通って通過されるとき赤外線源118をオンオフ切り替えしてパルス発振することにより本発明によって測定される。CO2は、吸着器114によっては吸着されない。このパルス発振で生じた効果は、電圧が約−0.068Vへと遷移したとき、時刻=0から時刻=120までに亘って観察することができる。図示のように、二要素検出器126のCO2検知出力チャンネル及び二要素検出器126のエタノール検知出力チャンネル(CO2のための基準として使用される)の両方に対して出力がばらついている。赤外線源118のオンと赤外線源118のオフとの間の差異は、各チャンネルに対して決定される。即ち、各々、V(CO2)とV(ref)とである。比率V(CO2)/V(ref)は、CO2濃度の単調関数(ほとんど線形関数)である。CO2濃度と比率V(CO2)/V(ref)との間の関係は、較正によって決定される。次に、図2でより完全に記載されているように、赤外線源118は「基準ラインオフ」の値を得るため約5秒間に亘って消灯される。次に、赤外線源118は点灯され、吸着器114が所定の時間に亘って加熱される。二要素赤外線検出器126の出力電圧は、「基準ラインオン」の値にまで上昇される。約3秒後、空気ポンプ130は、0.2秒間に亘って作動され、濃縮されたエタノール蒸気を赤外線吸収室120へ輸送し、エタノール検知チャンネル内の赤外線伝達を一定値にまで減少させる。赤外線検出器126のこの一定値に減少したエタノール検知チャンネル出力電圧は、所望されたように、濃縮されたエタノール蒸気が赤外線吸収室120内に残っている限り、維持することができる。次に、空気ポンプ130が作動され、吸着器114及び赤外線吸収室120から濃縮エタノール蒸気を取り除く。二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルの出力電圧は、その上昇した「基準ラインオン」の値に戻る。続いて、約195秒では、赤外線源118は、消灯され、二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルの出力電圧は降下する。再び、図5に記載された期間、並びに、本明細書で記載された他の期間は、図示の目的のために提供されており、本発明を制限するものではない。他の期間も用いることができる。
【0035】
図6A乃至図6Dに示されるように、本発明は、図1に示されるような化学物質センサー100のための車両車室内の受動検出吸引口110の代替の配置/取り付けオプションを提供する。本発明は、受動検出吸引口110を1つ以上の車両車室位置に配置することにより車両車室の1つ以上の位置でエタノール蒸気濃度を測定することができる。更には、化学物質センサー100は、目立たない位置に着座させることができ、ドライバーによる能動的な操作を必要とすること無く独立に作動することができる。
【0036】
車両ドライバーに対する受動エタノール感度を最大にするため、当該センサーは、ドライバーの息が車室空気と完全に混合される前にドライバーの息にさらされる。更に加えて、ドライバー及び多くの乗員が車両車室内に居る可能性があるので、本発明の実施例では、受動検出吸引口110は、車両ドライバーに直接隣接して配置される。例えば、図6Aに示されるように、受動検出吸引口110は、車両のハンドル又はハンドルコラム内に組み込まれている。追加の受動検出吸引口110の配置位置が図6B及び図6Cに示されている。図6Bに示された受動検出吸引口110を、車両の天井又はダッシュボード(空気排気口から離れているのが好ましい)内に組み込むことができる。代替例として、受動検出吸引口110を、図6Cに示されるように車両ボディ通気口内に組み込むことができる。更には、受動検出吸引口110を、車両ヘッドレスト、座席、Aピラー又はBピラーに組み込むこともできる。追加の受動検出吸引口110の配置位置が図6Dに示されており、ダッシュボードの頂部に取り付けられているか又はダッシュボード内に組み込まれている。
【0037】
更に加えて、本発明は、車両車室内又は車室外の様々な位置で採用された能動測定モードによりエタノール蒸気濃度を測定する。能動検出吸引口108は、目立たない位置に配置することができる。この位置では、例えば、能動検出吸引口108が、隠しキャップ又はカバーを有する位置から延びたり引っ込められたりする。一実施例では、能動検出吸引口108は、図6A及び図6Dに示されるように配置される。
【0038】
一実施例では、化学物質センサー100は、エタノール蒸気(蒸気状物)及びCO2(トレーサー)の両方の濃度を測定する。環境の変動を補償すること無くエタノール蒸気に対してドライバーの呼吸を監視する際には、本質的な不正確さを経験し得る。CO2トレーサーは、環境変動を補償するため本発明によって利用される。環境変動は、様々な条件により引き起こされる。
【0039】
上記のような条件の一つがエタノール蒸気の損失であり、これは乗員車室からの空気が空気調和機を通して再循環されるとき起こり得る。エタノール蒸気は、空気調和機の蒸発器コアを覆う液体水内で濃縮される。これは、実際のBACよりも少なくBACが測定されることにつながる。類似の損失は、乗員車室からの空気がカーボンキャニスターを通して再循環されるときにも起こり得る。エタノール蒸気のこの損失は、HVACシステム制御部の機能として経験的に決定することができる。例えば温度等の他の測定変数の関数としてのエタノール蒸気の損失も決定することができる。較正により決定されたエタノール濃度の断片的な損失を、HVACシステム制御部及び他の変数入力部の既知のセッティングを用いて、この効果を補償するため使用することができる。
【0040】
車両内での空気の流れは、蒸気濃度測定値に影響を及ぼし得る。HVACシステムは、車両乗員のために快適な環境を提供する。空気流れ制御部が典型的に提供される。ドライバーは、空気温度、ファン速度、空気を出力する通風口、及び、通風口からの空気流の方向を調整することができる。外部空気又は再循環される車室空気の選択を始めとする他の制御オプションが存在する。車両車室内では、ファンがオンに設定されるとき、吐いた息が通風空気流れにより運搬される。空気流れは後述される図8及び図9において更に試験される。更には、低温条件の下では、より暖かい息は、車室の天井へと上昇する傾向を持っている。
【0041】
エラーの可能性のある別の源は、環境のCO2濃度の変動である。環境空気中の通常のCO2濃度は約370ppmである。環境のCO2濃度における大きな変動が報告された。例えば、アリゾナ州のフィーニックス市の繁華街における環境CO2濃度は、650ppmと測定された。これは、空気が自由に循環することができなかった異常気象にも起因していそうである。他の大都市領域に対して報告された最大の濃度は、典型的には、450から500ppmである。燃焼からの排気物は、典型的には、10%のCO2を含んでいる。自動車排気物のかなりの割合が別の車両の空気吸引口から入ることも可能である。1000ppmまで上昇したCO2濃度は、一般に建築物内にも存在する。セメント設備は大量のCO2を発生し得る。更には、環境CO2濃度は減少し得る。一例として、太陽に照らされた草木は環境CO2濃度を50から150ppmにまで減少させることができる(光合成)。本発明は、CO2の環境濃度を測定する。
【0042】
CO2は、少なくとも次の理由のためにエタノール蒸気を測定する際のトレーサーとして使用される。人間の息内のエタノール及びCO2は両方とも、血液から肺の肺胞嚢内部の空気への輸送に由来している。肺胞嚢内部では、CO2濃度に対するエタノール蒸気の濃度の比率は、人間のBACに設定されている。受動センサーを用いると、息からのエタノール蒸気及びCO2の濃度は両方とも幅広い範囲に亘ってばらつくが、それらの比率は人間のBACにより決定されている。人間の吐く息のCO2濃度は、通常、36,000ppmで一定している。
【0043】
図7は、蒸気状物とトレーサーとの受動的測定を利用して、調整された蒸気状物の測定及びこれに続く安全システムの応答の計算を示す方法工程である。本明細書で使用されるように、調整された蒸気状物測定によって、蒸気状物測定に環境変動の補償が適用されることが意図される。
【0044】
一実施例では、蒸気状物エタノール(CES)は、上述した図2の方法工程702に記載されているように受動的に測定される。第1のトレーサーCO2(CCS)も、方法工程704で測定される。更に加えて、第2のトレーサー環境CO2(CCN)も、方法工程706で測定される。次に、後述されるように、調整された蒸気状物測定値が方法工程710で計算される。代替例として、更に後述されるように、BACが方法工程714で計算される。調整された蒸気状物計算値又はBAC計算値が所定の閾値を超えた場合には、方法工程718で安全システム応答が開始される。
【0045】
ドライバーの息内のエタノール濃度CEB(環境変動に対して調整された値)を得るために、次式1が使用される。
【0046】
CEB=CESCCB/(CCS−CCN) (式1)
CEBはドライバーの息内のエタノール濃度(環境変動に対して調整された値)として定義される。CESはドライバーの息からのエタノールの(センサーにおいて)測定された濃度として定義される。CCBはドライバーの吐いた息内のCO2の通常の濃度(約36,000ppm)として定義される。CCSはセンサーにおいて測定されたCO2濃度として定義される。CCN はCO2の測定された背景環境空気中の濃度として定義される。
【0047】
式1をBACの表現へと変換するため、呼吸アルコール濃度とBACとの間の既知の比例関係が使用される。0.08g/dLのBACでは、吐いた息内の等価エタノール濃度CES(1気圧及び37℃)は189.1ppm(体積にして)である。Kは0.08g/dL/189.1ppmに等しく設定される。ドライバーのBACは、CEBに比例している。従って、
BAC=KCESCCB/(CCS−CCN) (式2)
ここで、Kは息内のエタノール蒸気濃度からBACへの変換因子である。
【0048】
個々人は、空気嚢に入る吐いた息の割合を変化させるように浅い呼吸又は深い呼吸のいずれかを実行することにより、一定の範囲でエタノール濃度及びCO2濃度の両方を変化させることができる。あるドライバーは他のドライバーよりも少なく呼吸し、物理的にきつい仕事を経験したドライバーは、他のドライバーよりも高い体積速度で呼吸をする傾向がある。しかし、吐いた息内でのCO2濃度に対するエタノール蒸気濃度の比率は、呼吸の深さ又は呼吸の速度によっては影響を受けない。エタノール濃度及びCO2濃度は両方とも、比例関係で変化し、それによりCEB上のばらつきの効果は式1において相殺される。
【0049】
式2は、ドライバーの息が空気中のエタノールの唯一の源であり、CO2は、吐いた息がドライバーの口から空気が受動センサーによりサンプリングされる位置まで移動するとき、有意には分離しないということを仮定している。空気中のエタノールとCO2との拡散係数は、1気圧及び0℃で、各々、0.099及び0.138cm2/sである。たとえ、これらが拡散したとしても、対流及び浮力が、ドライバーの口からセンサーへのエタノール蒸気及びCO2の両方の輸送を支配する。対流及び浮力は、エタノール蒸気及びCO2の小さな痕跡を有する空気に対して同様に作用する。
【0050】
例えばドライバーの呼吸が開放窓で完全に実行されたとき又は乗員の呼吸が測定に寄与するときなど、正確なBAC測定値を得るには益々困難となる条件が存在し得る。これらの条件の下では、測定された蒸気の読み取り値が、疑わしいものとしてフラグを立てられる。
【0051】
図8は、様々なファン条件の下における車両車室内のエタノール濃度の一例である。車両中の吐いた息のCO2濃度(及びこれによってドライバーの仮定されたBACの人間の息内のエタノール濃度)が試験された。車両が設定され、背景のCO2濃度を最小にするため野外でテストされた。テストは、新鮮な空気で車両を通気した状態で始まった。CO2センサーはミニバンのハンドルの中央部に配置された。ドライバーは、BAC=0.08g/dLを有するものと仮定された。人間のテスト対象が車両に乗車し、ドライバー座席に座った。図8は、テスト対象が車両に乗車した後5分で測定されたCO2濃度から推測されたエタノール濃度を掲げている。
【0052】
テストは、次の条件の各々に対して設定されたHVACシステムで実行された。即ち、(1)ファンオフ、(2)ファンが最小に設定された状態の加熱吸着器モード、(3)ファンが最大に設定された状態の加熱吸着器モード、(4)ファンが最小に設定された状態の除霜モード、(5)ファンが最大に設定された状態の除霜モード、(6)ファンが最大に設定され通気が前方直線方向に向けられた通気モード、(7)ファンが最大に設定され通気が可能な限り上方に向けられた通気モード、(8)ファンが最大に設定され通気が可能な限り下方に向けられた通気モード、並びに、(9)ファンが最大に設定され通気がドライバーの顔に向けられた通気モードである。
【0053】
測定されたCO2濃度に基づいて、センサーにおけるエタノール濃度は、次の形式で表された式(1)から予測される。
【0054】
CES=CEB(CCS−CCN)/CCB (式3)
図8は、同じ被験者、即ち健康な95Kgの男性で3日間で得られたデータを示している。観察された最低のエタノール濃度は0.3ppmであり、この濃度はファン速度を最大に設定した場合に生じた。ハンドルの中央部のセンサーを用いた場合、ドライバーの息は、彼らの頭部の背後に吹き返され、センサーから離れるおそれがある。その結果、息がセンサーに到達する前に、それは車室内の空気と徹底的に混合される。ファン速度を最大に設定した場合、新鮮な空気の車室内への空気流れ速度は、約8×103L/分であり、呼吸速度は約10L/分である。息及び新鮮な空気が完全に混合された場合、希釈因子は、1.25×10−3であり、息内の仮定された189ppmのエタノール濃度は0.24ppmにまで希釈される。
【0055】
加えて、エタノール濃度において30のばらつき因子が観察された。即ち0.3から9.2ppmである。測定されたCO2濃度は、430ppmから2100ppmまでの範囲に及んでいた。サンプリング位置(ハンドルの中央部)は、最適化されていなかったが、たとえ、ばらつきが減少されたとしても、一定に保持された、ばらつきの他の源が存在している。
【0056】
図9A、図9B及び図9Cは、人工呼吸装置及びセダン型車両の車室を利用した実験からの、時間に関連して測定された、エタノール濃度、CO2濃度及びBACを示している。当該実験は、BACが飲酒の法的閾値を丁度超えた状態のドライバーが時刻0で車両に乗車したことを模擬している。HVACシステムは、空気がコンソールの通気口から出た状態で手動制御に設定されている。3つのファンのセッティングが使用される。即ち、オフ、ロー(2)及び最大(7)である。BACが飲酒の閾値となったドライバーをシミュレートするため、圧縮ガスシリンダーからの合成ガス混合物(214ppmエタノール蒸気、体積にして3.54%CO2、21%酸素、平衡窒素)が、人工呼吸装置を通過させられ、ドライバーの口が位置するところで解放された。人工呼吸装置は時刻0で作動オンにされた。ガス混合物中のエタノール蒸気及びCO2の相対濃度は、0.092g/dLのBACに対応している。人工呼吸装置からの平均的な体積流れ速度は16L/分であった。
【0057】
車両は、各テスト前に新鮮な空気で換気された。図9A及び図9Bでは、5分の終了時に観察されたエタノール蒸気及びCO2の濃度は、ファン速度が増加したとき減少する。濃度のプラトーに到達するため要求される時間も、ファン速度が増大したとき減少する。ファンがオフの状態では、1分で応答が観察されず、濃度は5分の期間を通して増加し続けた。ファン速度が最大の場合、CO2の濃度は、1分後にプラトー値の50%を超えた。ドライバーの推測されたBACは、図9Cに示されている。BACを推定するため使用されたアルゴリズムは、上記式2に基づいている。BAC値は、測定されたCO2濃度が背景のCO2濃度を少なくとも所定量(図示のデータに対しては100ppm)超えたときに出力される。この実験のために、有効なBAC推定値は、人工呼吸装置が作動された後1.5分ほどで利用可能となった。
【0058】
本発明は、エタノール蒸気を測定する際に蒸気濃縮器を利用し、その一方でCO2の測定は蒸気濃縮器の使用を省略する。受動化学物質蒸気センサーは、約0.1から10ppmの範囲のアルコール濃度を検出することができなければならず。それにより、本発明は蒸気濃縮器を用いている。蒸気濃縮器は、100から1000のオーダーにあり得る因子だけ化学物質蒸気センサーの感度を増大させ、典型的にはサンプルを収集し解放するため約1分を必要としている。増幅因子は、蒸気濃縮器の作動パラメータに依存している。これらのパラメータには、サンプル収集のために提供される持続時間インターバルと、吸着−脱着サイクルの間に吸着器の温度対時間と、が含まれている。一例では、サイクル時間が1分である場合、エタノール濃度は50の因子で増大されるが、エタノールに対する感度は遥かに大きな因子(定常状態の赤外線伝達測定に比して約1000)で増大される。エタノールは測定サイクルの既知の時間でゼロエタノール背景に比して検出されるからである。測定されたCO2は、遥かに高い濃度、典型的には300から1000ppmであり、蒸気濃縮器を用いること無く、赤外線伝達上のその効果から検出される。
【0059】
CO2のための赤外線センサーからの比較的高速の信号と共にエタノールのための赤外線センサーからの比較的ゆっくりとした信号に基づいて、それらがあたかも同時であるかのようにドライバーのBACを計算するためには、測定に人工的な時間依存性手段が導入される。人工的な時間依存性手段の結果として、推定されたBACは、数分間に亘って正確な値に接近する。
【0060】
本発明は、エタノールセンサーの時間依存性に合致するためCO2センサーの出力に対してフィルター処理するシステム及び方法を提供する。2つの信号(CO2及びエタノールの測定値)は、他の方法では出力中に存在する人工的な時間依存性を回避するため結合される。図10に示されるように、CO2は工程1002で検出され、CO2信号は工程1004で時間フィルター処理される。このようにして、CO2信号は、工程1010でドライバーのBACの計算を提供するため、工程1006で検出されたエタノールと同じ、以前の測定への依存性を有する。蒸気濃縮器からの出力は、以前のエタノール測定値からの寄与を含んでいる。即ち、現在のエタノールの測定をなすとき、以前の測定値の一部は、現在の測定に含まれている。以前の測定からの蒸気濃縮器内のエタノールを蒸気濃縮器から完全に押し流すことはできないからである。
【0061】
一例では、以前のエタノールの測定により、寄与(A=0.25)がなされる。よって、比率に対して使用される現在の測定kからのCO2センサーからの出力V(k)は、次式によって置き換えられる。
【0062】
V’(k)=(1−A)V(k)+AV(k−1)
従って、一例では、kが第2の測定に設定され、A=0.25であるとき、次のことが当てはまる。即ち、V’(2)=0.75V(2)+0.25V(1)となる。現在のエタノール測定値の75%及び以前の測定値の25%が計算されることを観察することができる。
【0063】
第1のセンサー測定に対して、V(k−1)が利用可能ではないとき、
V’(1)=V(1)
となる。
【0064】
その結果発生した2つのセンサー出力、即ちエタノールセンサーからの一つの出力と他のV’とは、ドライバーのBACを予測するため機能的な関係で結合される。ドライバーのBAC対時間の予測の結果は、他の方法では存在したであろう疑わしい時間依存性を含んでいない。その結果、ドライバーのBACの示された値は、正確な値に到達するため数分を要しない。
【0065】
ドライバーの推定されたBACにおける改善は、特にドライバーが最初に車両に乗車したときの期間の間、図11A及び図11Bを比較することで示される。図11A及び図11Bにおける破線は、ドライバーの実際のBACを表し、この例では0.92となる。3つのファンのセッティングが使用される。即ち、オフ、ロー(2)及び最大(7)である。対応するラインは、3つのファンのセッティングに関するBAC測定値を示している。図11Aでは、時間フィルターが省略されおり、観察することができるように、初期に測定されたBAC値は系統的に低くなっている。図11Bでは、時間フィルターが用いられており、系統的に低いBAC測定値は回避されている。
【0066】
工程1004に示されるような時間フィルターを、赤外線分光計とは異なる代替の検出装置で使用することができることが理解されるべきである。例えば、赤外線分光計はCO2の濃度を測定するため使用することができ、金属酸化物センサーと組み合わされた蒸気濃縮器は。エタノール蒸気濃度を測定するため使用される。
【0067】
本発明の他の特徴及び利点は、この開示内容を研究する当業者には明らかとなろう。例えば、搭載型受動エタノール蒸気センサーは、フローティングゲート電解効果トランジスタ、ガスクロマトグラフ、加熱された金属酸化膜センサー、酸化による化学ルミネッセンスを測定するセンサー、ポリマー膜を使用するCMOS容量性センサー、及び、光音響センサーを始めとする代替の検出手段と関連した蒸気濃縮器を使用することができる。更には、より高い感度が、より精巧な分光学的技術を用いて可能となる。狭いラインレーザー光源が使用された場合、その光学的周波数は、スペクトル中の狭い特徴の一方の側へと調整することができ、伝達される強度を調整するためレーザー周波数を前後に走査することができる。分析されるべきガスが1Paのオーダーの圧力である場合には、感度は、大きさのオーダーで改善される。かくして、添付された請求の範囲により画定されたような本発明の精神及び範囲内に含まれつつ、例示実施例、変形及び変更を開示された実施例になすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る、受動サンプリング管、蒸気濃縮器、二要素IR検出器及びマイクロコントローラを備える化学的センサーの構成要素の断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例に係る、図1の化学的センサーによる高感度及び化学的特異性を備えたエタノール蒸気の受動的測定の方法の工程を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施例に係る、図1に示されたような赤外線センサーから時間の関数としてエタノール蒸気が測定されたときの一例としての測定された電圧のグラフである。
【図4】図4は、本発明の一実施例に係る、エタノール濃度対一例としての測定された赤外線センサーの信号の比率を示すグラフである。
【図5】図5は、図1に示されたような赤外線検出器から時間の関数として測定された一例としての電圧を示すグラフであり、濃縮されたサンプル蒸気が所定の所望の時間に亘って赤外線吸収室内に保持され、CO2が赤外線源をパルス発振することにより異なる時刻で測定され、CO2に感度を有するチャンネル(図示せず)及びエタノールに感度を有するチャンネル(基準として使用される)からの信号が、本発明の一実施例に従って、ある比率として設定されている。
【図6A】図6Aは、本発明の一実施例に係る図1に示されたような化学的センサーのための、車両車室内における受動検出吸引の代替配置/取り付けオプションを示す線図である。
【図6B】図6Bは、本発明の一実施例に係る図1に示されたような化学的センサーのための、車両車室内における受動検出吸引の代替配置/取り付けオプションを示す線図である。
【図6C】図6Bは、本発明の一実施例に係る図1に示されたような化学的センサーのための、車両車室内における受動検出吸引の代替配置/取り付けオプションを示す線図である。
【図6D】図6Dは、本発明の一実施例に係る図1に示されたような化学的センサーのための、車両車室内における受動検出吸引の代替配置/取り付けオプションを示す線図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例に係る蒸気状物及びトレーサーの受動的測定を利用した、調整された蒸気状物測定値の計算及び次に続く安全システム応答の方法の工程を示す。
【図8】図8は、様々なファン条件の下で車両車室内のエタノール濃度の例の表である。
【図9A】図9Aは、ファンをオフ、低及び最大に設定した状態で時刻0で乗車した酔った人を模擬した実験において図1に示されたようなセンサー性能を示した、時間に関するエタノール濃度の測定値を示すグラフである。
【図9B】図9Bは、ファンをオフ、低及び最大に設定した状態で時刻0で乗車した酔った人を模擬した実験において図1に示されたようなセンサー性能を示した、時間に関するCO2濃度の測定値を示すグラフである。
【図9C】図9Cは、ファンをオフ、低及び最大に設定した状態で時刻0で乗車した酔った人を模擬した実験において図1に示されたようなセンサー性能を示した、時間に関する赤外線BACの測定値を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の一実施例に従って、エタノール及びCO2が測定され比較されたときに課される人工的な時間依存性手段の補償を示す方法の各工程を示している。
【図11A】図11Aは、図10に示されるような時間フィルター無しで、図1に示されるような化学的蒸気センサーを利用して、時間の関数として測定されたBACの一例のグラフである。
【図11B】図11Bは、図10に示されるような時間フィルターを備えた、図1に示されるような化学的蒸気センサーを利用して、時間の関数として測定されたBACの一例のグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して化学蒸気センサーに係り、より詳しくは、安全システムで使用するため、着目する化学種を測定し、化学蒸気センサー測定値に影響を及ぼし得る環境変動を補償するための化学蒸気センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
酔ったドライバーは、アメリカ合衆国内で交通事故の死亡の主要な原因となっている。近年のNHTSA報告は、2003年度の合衆国内での総事故死亡者の40%がアルコールに関係していることを示している。より詳しくは、0.08g/dL以上の血液アルコール濃度(BAC)を含んだ12,373人もの自動車の乗員が、衝突で亡くなっている。これは、2003年度において37,132人ものアメリカ合衆国の自動車事故死亡者の33%以上にも上っている。社会への衝撃に加えて、アメリカ合衆国内でのそのような衝突のコストは、年間約400億ドルである。移動したマイル当たりの致死交通事故の率は、ドライバーのBACに関連し、運転技術の低減とドライバーのBACとの間に相関関係が存在することは、良く確立されている。アメリカ合衆国内での飲酒運転の定義は、特定の州の法律に依存し、0.08g/dL又は0.10g/dLのいずれかのBACレベルとなることを含んでいる。その上、現在0.10g/dLのBAC限界を有する合衆国の州は、効果を直ぐにあげるため、BAC限界を0.08g/dLに低下させる法律を通過させた。合衆国内での飲酒運転と争うための主要な対抗策は、犯罪裁判システムであり、これは、酔ったドライバーに対して、抑止及び制裁を用いる。飲酒運転と争うための他の様々なアプローチが利用された。
【0003】
飲酒運転と戦う一つの現存するアプローチは、空気中のエタノール濃度を測定する電子化学的センサーを利用する。人間の息内のエタノール濃度は、BACの良好な示度である。人間の肺内の空気嚢の内部には、空気中のエタノール濃度と、個人の血液中のエタノール濃度との間に化学的な平衡状態が存在している。法律施行目的のため、電子化学的センサーは、警察官が幾つかの状況下で車両内に正当に挿入することができるクリップボード又は懐中電灯等の物体内に構築される。しかし、現在利用可能な電子化学的センサーは、寿命が制限されており、約3年後には交換されなければならない。安全システムに搭載される構成要素として使用されるためには、エタノールセンサーは、少なくとも10年から15年の寿命を持っていなければならない。使用される別の電子化学的センサーは、ドライバーの皮膚から蒸発するエタノールの遠隔検出を通してアルコール酩酊状態を決定するため、個々人の皮膚に対して押し付けられる装置を備えている。他のアプローチは、例えば指等のドライバーの末端を通して赤外線を通過させる工程又はドライバーの眼の表面で流体中のエタノール濃度を測定するためラマン分光計を使用する工程を備えている。これらのアプローチも、車両に搭載する使用法には実用的ではない。
【0004】
飲酒運転と戦うための別のアプローチは、エタノール濃度に応答して電気抵抗を変化させる金属酸化物の加熱されたフィルムを使用する。そのようなセンサーは、飲酒運転を確信した後に時折指令される、市販されている「呼吸連動装置」で使用される。これは、ドライバーに、車両が始動する前に息内の過度のアルコールをチェックするためチューブ内へ息をはき出すことを要求する。しかし、そのようなセンサーは、車両の車室の空気中のエタノール蒸気を測定することに関して酔ったドライバーを受動的に検出する上では十分な感度を持っていない。チューブ内にはき出された呼吸サンプルは、希釈化されず、その結果、必要とされる検出レベルは、エタノールの体積にして約210の百万分の一濃度(ppm)しかない。受動的な検出システムは、約1000倍もの感度であることを必要としている。また、金属酸化物膜で高い信頼性で検出することができる最小のエタノール濃度は、典型的には、10乃至50ppmの範囲にある。更なる欠点は、エタノール濃度への応答は、エタノール濃度の関数として非線形であるということである。
【0005】
法律施行目的のため赤外線検出も息内のエタノール濃度を定量化するために使用されたが、使用される器具は、典型的には約1mの経路長さを持ち、大きく嵩張るものとなっている。車両車室中で受動検出するため必要とされるエタノールに対する増大した感度を達成するため、この形式の器具を利用して、経路長さを増大させることができた。しかし、赤外線検出を使用し、受動検出のための要求された感度を達成するためには、100mのオーダーの経路長さが必要となる。これは、車内搭載センサーには実用的ではない。
【0006】
2003年1月21日に出願され、デルファイ・テクノロジー社に譲り受けされた米国特許出願番号2004/0141171号は、蒸気濃縮器を使用することによりエタノールへの増大した化学感度を提供する。エタノール蒸気は、吸着器に亘ってエタノールを含む空気を通過させることにより収集され、続いて、吸着器はエタノール蒸気を解放するため加熱される。化学的センサーが利用され、該センサーは、セラミック基板上の加熱金属酸化膜の電気伝導度へのエタノール蒸気の効果を測定することによってエタノール蒸気を検出する。
【0007】
2005年1月12日に出願され、デルファイ・テクノロジー社に譲り受けされた米国特許出願シリアル番号11/033,677号は、蒸気濃縮器と赤外線検出器とを利用するエタノール蒸気の受動的検出を提供する。2005年1月12日に出願され、デルファイ・テクノロジー社に譲り受けされた更なる米国特許出願シリアル番号11/033,703号は、活性呼吸分析器に加えて、蒸気濃縮器及び赤外線検出器を利用してエタノール蒸気の受動的及び能動的な検出を提供する。
【0008】
上記システムは、エタノール蒸気の測定を提供しているが、環境因子が、化学的センサー吸引口により拾い上げられる前のドライバーの息からの蒸気(エタノール蒸気及びCO2)の濃度に影響を及ぼし得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
安全システムで使用するため、高感度で着目する化学種状物を受動的に測定し、選択された領域で化学的特異性を受動的に測定することができる化学蒸気センサーが提供される。本発明は、化学蒸気センサーの受動的測定に影響を及ぼし得る環境変動の補償を更に提供する。測定値に影響を与える環境変動には、周囲の空気中の外来的な蒸気、又は、サンプル蒸気が蒸気状物源から化学物質センサーのサンプリング用吸引口へとドリフトするときサンプル蒸気の少なくとも一部分を逸らす空気流れが含まれ得る。一実施例では、本発明は、自動車安全システムに搭載して使用するためエタノールの選択的検出を提供する。車両車室中のエタノール蒸気は、受動的に測定され、十分な感度が、血液アルコール濃度(BAC)の法的限界を超える自動車ドライバーを受動的に検出するため提供される。
【0010】
飲酒の閾値において、一つの幅広く普及している法的定義によれば、息内のエタノールの濃度は、息の210リットル当たりエタノールの0.08グラムとして定義され、1気圧では、体積にして210ppmのエタノールと等価である。息内のエタノールの濃度は、人間のBACに比例している。エタノールの受動的検出のために、エタノールの体積にして210ppmより遥かに低い濃度の検出が必要とされている。本発明は、化学物質蒸気センサーの感度を向上させる。一実施例では、本発明は、体積にして0.1ppmから10ppmの範囲のエタノール濃度及び車両車室中のCO2濃度の両方を測定するため受動的化学物質蒸気センサーを用い、ドライバーのBACを推定するためエタノール及びCO2の測定値を使用することによってドライバーの飲酒の受動的検出を提供する。更に加えて、ドライバーは0.08g/dLよりも遥かに大きいBACを示しかねず、車両車室の空気は、大して希釈されないので、本発明は、10ppmよりも大きいエタノール濃度を測定する工程を更に提供する。
【0011】
一実施例では、エタノール蒸気濃度を測定するため赤外線を使用する既知のシステムと比較すると、本発明は、作動パラメータに応じて、50から1000の範囲であり得る因子でエタノール蒸気の検出感度を増大させる。更には、本センサーは、目立たない位置に配置することができ、ドライバーによる能動的な介入を必要とすることなく独立に作動することができる。
【0012】
本発明の特徴は、赤外線(IR)検出器で使用するため、検知可能なレベルにまで化学蒸気状物の濃度を増幅させるように蒸気濃縮器を部分的に利用することにより達成される。更には、環境変動の補償は、蒸気濃度測定値を調整することにより提供される。当該調整は、首尾一貫した濃度を持つことが知られているトレーサー蒸気を使用してなされる。一実施例では、CO2測定値、CO2定数及び環境空気中のCO2が、人間の息からくるガスサンプルの割合を決定するため使用される。本発明は、血液アルコール濃度(BAC)を計算するため、エタノールセンサーの時間依存性とマッチングするようにCO2センサーの出力に対して人工時間フィルターを更に提供する。
【0013】
蒸気濃縮器に関して、エタノールを検出する場合には、空気は、エタノール蒸気を収集するため所定時間に亘って吸着器を通って通過させられる。空気の流れは停止され、吸着器は加熱され、より高い濃度のエタノール蒸気を赤外線吸収室へと解放する。一実施例では、エタノール濃度は、吸着器を加熱したことに起因して約2のオーダーの大きさで増幅される。赤外線源による赤外線検出器への赤外線伝達がエタノールを検出するため使用される。赤外線フィルターは、赤外線検出器の応答をエタノール蒸気により吸着される帯域に制限する。更に加えて、マイクロコントローラは、所定濃度の化学種が超えられた場合、適切な安全システム応答を指令し、実行する。一実施例では、エタノール蒸気濃度検出の場合に関して、呼び出された安全システム応答は、先行する車両の後の最小の運転間隔を増大させ、車両性能を制限し、乗員にシートベルトを締めるように警告する、各要求を含む要求を課する。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の開示内容を研究した当業者には明らかとなろう。従って、本発明の範囲は、次の図面に関して与えられた、一実施例の一例を参照することによって、より良く理解される。
【0015】
本発明の前記した態様及び付随する利点の多くは、添付図面と関連させて次の詳細な説明を参照することによってより容易に認められるようになる。
【実施例】
【0016】
一例としての実施例を特定の構成を参照して説明する。当業者は、添付された請求項の範囲内に含まれたままで、様々な変更及び変形をなし得ることを理解している。更には、周知された要素、装置、構成部品、方法、プロセス工程等は、本発明を不明瞭にすることを回避するため詳細には記載されていない。更には、反対のことが示されない限り、次の明細書及び請求の範囲に記載された数値は、本発明により得られることを求められた所望の特徴に応じて変り得る近似値である。
【0017】
現在のところアメリカ合衆国では、自動車のドライバーは、血液アルコール濃度(BAC)が0.08g/dLを示したとき、飲酒であると法的にみなされ、よって、飲酒である間に自動車を運転すれば法律を犯したものとみなされる。自動車のドライバーのBACを受動的に監視することは、飲酒ドライバーにより引き起こされる自動車事故を回避することを促進することができる。BAC測定値を、車両に停止するように指令したり、ドライバーの反応時間へのBACの効果を補償するため利用することができる。受動的監視工程(能動的ではない)は、車両ドライバーの能動的な介在無しに車両ドライバーのBACを検知する。自動車ドライバーのBACを能動的に監視することは、飲酒した人が自動車を操縦することを防止することを更に促進させることができる。
【0018】
赤外線伝達に基づいた蒸気センサーは、適切な経路長さを必要とする。経路長さが短か過ぎる場合、検出された強度の変化は、検出された強度の揺らぎに対して小さくなる。経路長さが長過ぎる場合、吸収線の中心における検出強度は、小さくなる。最適な経路長さは、測定されるべき化学物質の濃度に依存している。例えば、最適な周波数の固定帯域内で伝達される光の一部を測定するセンサーを想定する。精度を改善するため、着目する化学種は、帯域内で10%の吸収のオーダーを維持するべきである。従来の化学物質センサーでは、1070cm−1(9.4μm波長)付近の吸収帯域が、典型的には、エタノール蒸気を検出するため使用される。1070cm−1帯域のピーク近傍では、吸収係数は約2.5×10−4(μモル/モル)m−1となる。その結果、250ppmのエタノール濃度の場合、10%の吸収を得るためには0.7mの経路長さが必要とされる。飲酒の閾値では、息内のエタノール濃度は、総合して1大気圧で約210ppm(体積にして)となる。比較のため、呼吸サンプル中のエタノール蒸気の濃度を決定するため、法律の施行によって、典型的には、呼吸サンプルを通して1mの経路長さを有する赤外線に基づく器具が使用される。
【0019】
しかし、エタノールを受動的に監視するため、車両車室の空気が監視される(ドライバーの息の直接的な監視ではない)が、その結果、エタノールセンサーは、かなり減少したエタノール濃度をも監視する能力を必要とする。更に後述されるように、法的飲酒の閾値の近傍にあるBACを示すドライバーを検知するため、受動的監視を用いるエタノールセンサーは、車両の車室内で0.1ppmから10ppmの範囲にあるエタノールを測定することができなければならない。更に加えて、ドライバーが、0.08g/dLより遥かに大きいBACを示す可能性があり、車両の車室空気を大して希釈することができないので、受動的なエタノールセンサーは、10ppmよりも大きいエタノール濃度を測定することができなければならない。1ppmのオーダーでエタノール濃度を測定するため赤外線センサーが使用されるべきである場合、市販のセンサーのための最適な経路長さは、100mのオーダーとなる。100mの経路長さの必要性は、車両でのその使用を制限する。よって、そのようなエタノール蒸気センサーは、車両搭載用途にとって非常に嵩張るものとなり、赤外線検出のための長い経路長を必要とする。
【0020】
安全システムで使用するため、着目する化学種を測定する実用的なサイズに定められた受動車両搭載式化学物質蒸気センサーを提供するシステム及び方法を本明細書で説明する。本発明は、車両車室空気を用いて受動検出するため赤外線(IR)検出器により必要とされるレベルにまでエタノール濃度を増加させ、これによってエタノールのサブppmオーダーの濃度の検出を可能にした蒸気濃縮器を利用している。化学物質の感度の改善も得られている。本発明は、更に、化学物質蒸気センサー測定値に影響を及ぼし得る環境変動を更に補償する。後述されるような実施例としての一実施例では、エタノール濃度、息内のCO2及び環境空気のCO2が、ドライバーのBACを監視するため、自動車ドライバーの近傍でサンプリングされる。本発明は、能動化学物質蒸気センサーと共に利用することができることが理解されるべきである。例えば、能動検出吸引口が、赤外線吸収室120に連結されてもよい。
【0021】
図面を参照すると、様々な図面を通して同一の参照番号は同じ構成要素を指し示されている。このうち図1は、化学物質センサー100の構成部品を示し、該センサーは、受動検出吸引口110と、吸着器114及び加熱器116を備える蒸気濃縮器と、二要素の赤外線検出器126と、マイクロコントローラ140と、を備えている。
【0022】
空気は、空気ポンプ130により受動検出吸引口110へと引き込まれる。空気は、吸着器114と、赤外線吸収室120と、空気ポンプ130と、チェックバルブ128と、を通過し、空気出口134を通って解放される。空気ポンプ130は、例えば、ブレイルスフォード社からのモデルTD−3LSである。チェックバルブ128は、空気ポンプ130がオフであるとき空気の流れを妨害するため直列に配置されている。吸着器114は、エタノール蒸気を吸着し、加熱器116により加熱される。吸着器114は、炭素分子ふるい、活性炭素、及び、カーボンナノチューブ等の炭素から構成することができる。代替例として、吸着器114は、多孔性有機ポリマーと、ゼオライト等の高表面積を有する無機材料とから構成することができる。吸着器114は、例えば、スペルコから入手可能なガラス管内のカーボキセン1003の3mm長のベッドである。加熱器116は、吸着器114を覆うガラス管の周りに抵抗性ワイヤを巻き、エポキシを利用して該抵抗性ワイヤをガラス管に固定することにより構成することができる。赤外線源118は、赤外線吸収室120を横切って赤外線波を通過させ、二要素赤外線検出器126へと至らせる。二要素赤外線検出器126は、例えば、デクスター開発研究所のモデルDR−34により提供された二要素の熱電対検出器である。個々の赤外線検出器は、異なる赤外線透過フィルター124A及び124Bにより覆われている。赤外線源118は、例えば、電流を制御することにより活動させることができる電気ヒーターである。エタノールを検出するため9.4ミクロンの波長帯域を用いるとき、例えば、イオン光学系源の部品番号NL5NCC等の広帯域放射器を赤外線源118として用いることができる。NL5NCCは、フッ化カルシウム窓を備えた加熱フィラメント(空気中)から構成され、該窓は、赤外線室からフィラメントを分離している。フッ化カルシウム窓は、この波長では透明である。ワイヤ又は膜を高温度まで上昇させるように電力を使用することにより赤外線を放射する類似の装置が、他の製造業者から入手可能である。エタノールを検知するため3.4ミクロンの波長帯域を用いるとき、赤外線源118は、例えば、白熱灯であってもよい。赤外線フィルター124は、エタノールにより吸収される赤外線周波数又は波長の範囲を選択するため使用される。一例では、9.4ミクロン波長でエタノールを検出するため利用される赤外線フィルターは、スペクトラゴン部品番号NB−9460−220である。一例では、3.4ミクロン波長でエタノールを検出するため利用される赤外線フィルターは、デックススター開発研究所から入手可能なストックフィルターFHC1である。一例では、赤外線フィルター124Bは、CO2により吸収される赤外線周波数又は波長の範囲を選択するため使用されるOCLI部品番号N04249.8である。二要素赤外線検出器126は、赤外線を検出するため用いられる二要素熱電対であってもよい。熱電対検出器は、入射した赤外線を熱に変換し、誘導された温度上昇を測定するため、一連の熱電対列を使用する。二要素赤外線検出器126は、時間の関数として各検出器から出力電圧を提供する。赤外線フィルターの選択を通して、二要素赤外線検出器126からの2つのチャンネルは、多数の異なる化学物質、又は、エタノール及びCO2を含む物質を検出するように構成することができる。一例では、二要素赤外線検出器126は、エタノールに感度を持つチャンネルと、CO2に感度を持つチャンネルと、を備える。マイクロコントローラ140は、空気ポンプ130と加熱器116と赤外線源118とを備える化学物質センサー100の各構成要素の所定の作動を指令し、調整し(信号ライン142を介して)、二要素赤外線検出器126の出力を受け取る。
【0023】
蒸気濃縮器は、本発明の一実施例において、サンプルガスの分圧を増幅させる。僧服因子は、着目する化学種を収集する吸着器114の能力により限界付けられる。この限界が超えられたとき、吸着器114は飽和し始め、ブレークスルーが発生する。VBをブレークスルー前に吸着器114を通過することができるサンプルガスの体積とする。VSを吸着器114内のガス体積とする。最大の可能な増幅因子はA=VB/VSとなる。よって、Aを最適化するため、ブレークスルー体積は、サンプル体積に対して最大にされるべきである。一つのアプローチは、吸着器114が加熱されるとき、例えば、空気の流れを停止させることにより、該吸着器を孤立させることである。推定として、最大のAは、吸着器114それ自体の体積に対するブレークスルー体積の比率である。代替例として、蒸気濃縮器を通した空気の一定流れで吸着器114を急激に加熱することにより濃度を増幅することができる。これがなされたとき、最大濃度は、加熱されている間に空気が交換される回数に依存しており、それにより、吸着器114を急激に加熱することが重要となる。
【0024】
飲酒運転の安全な帰結は、酔っ払った運転技術及び特別のリスクを取り上げることから生じる。一つのアプローチは、酔っ払ったドライバーが反応するための時間をより多く与えることである。本発明は、酔っ払ったドライバーのゆっくりとした反応時間のための安全システムによる自動補償を提供している。化学物質センサー100(即ち、赤外線センサー)により測定されたとき、例えば、所定濃度のエタノールが超えられた場合、適切な安全システム応答をマイクロコントローラ140により実行することができる。安全システムは、先行する車両の背後で最小の運転間隔を要求するか又は増加させることを始めとした拘束的要求及び制限を課し、並びに、車両性能を拘束することができる。更には、暗是応答は、警告を発し、シートベルトを締めるように乗員に要求することができる。加えて、安全システムは、ワイヤレス送信器を介して、測定されたエタノール濃度を示すメッセージか又は車両車室内のエタノール濃度若しくは車両ドライバーのBACが予めセットしたレベルを超えたことを示すメッセージを警官に送信することができる。更には、一実施例では、交通事故の場合には、安全システムは、エタノールが検出されたことをEMS応答者又は警官に警告することができる。加えて、安全システムは、第三者によりダウンロードするためのフライトレコーダーに所定レベルのエタノール検知を送信することができる。
【0025】
本発明のエタノール検知は、車両始動の前に用いることができ、車両操縦中に繰り返し実行することができる。繰り返し検出工程は、本発明をして、前に消費されたアルコールに関してドライバーを監視することを可能にし、このアルコールは、ドライバーの息内のエタノール濃度を、時間の経過と共に、おそらくは法的制限を超えて増大させる。
【0026】
赤外線吸収室120が特別の低温度に達した場合、水は赤外線吸収室120内で凝結し得る。これによって、赤外線吸収室120の壁に付いた液体水が、送出された赤外線の強度を減少させ得るので、赤外線伝達による特別の化学物質蒸気の小さい濃度の検出においてエラーを引き起こすおそれがある。本実施例では、本発明は、化学物質センサー100への次の調整を提供する。即ち、赤外線吸収室102は吸着器114から又は能動検出吸引口108から該赤外線吸収室内に解放された蒸気の露点を超えた温度へと加熱される。代替例として、吸着器114(カーボン)が、エタノールが吸着されている間、環境温度を10℃のオーダーで超えた温度となるように加熱される。これは、吸着された蒸気が赤外線吸収室120へと排気されたとき露点を超えることを回避するため吸着器114によって吸着された水の体積を制限する。露点に近い場合、カーボンが、水を吸着できることがあり得ることである。代替例として、赤外線吸収室120の内部は、水滴が付くことを防止する材料、例えば類似の機能を奏する車両の風防ガラスのための現存するコーティング等で被覆される。代替例として、蒸気濃縮器からの排気物が赤外線吸収室120の中心を流れ下るが、それが凝結し得る冷却壁と接触することを回避するように、空気流れが、赤外線吸収室120を通して変えられる。代替例として、カーボンよりも更に疎水性を示す吸着材料が利用されるが、まだエタノール蒸気を吸着する。
【0027】
図2は、高感度及び化学物質の特異性を備えたエタノール蒸気濃度の受動的測定方法の各工程を示している。エタノール蒸気は、環境空気を受動検出吸引口110へと吸着器114を通して通過させることにより収集される(方法工程210と示される)。二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルは、赤外線源118をオフにした状態で、出力電圧(Voffと示される)を提供する(方法工程212と示される)。吸着器114は、捕捉されたエタノール蒸気を解放するため加熱器116により加熱される(方法工程214と示される)。赤外線源118が作動され、二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルの出力電圧(Vonと示される)が、赤外線吸収室120内で濃縮されたエタノール蒸気を有することなく測定される(方法工程216と示される)。所定の時刻で、吸着器114から赤外線吸収室120へと濃縮エタノール蒸気を輸送するのに十分に長く空気流れが付勢される(方法工程218と示される)。代替例として、濃縮されたエタノール蒸気は、所定の時刻で、吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通して通過させられる。次に、追加の赤外線吸収により引き起こされる、Vonに対する二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルの出力電圧(Vsigと示される)の変化が測定される(方法工程220と示される)。赤外線吸収室120内のエタノール蒸気の濃度が増大するとき、検出される赤外線強度に減少が存在する。マイクロコントローラ140は、比率Vsig/(Von−Voff)を計算する(方法工程222と示される)。吸着器114から赤外線吸収室120へと濃縮エタノール蒸気を輸送するのに十分に長く空気流れを付勢することによって、赤外線伝達を、所定の時刻で又は長期間に亘って測定することができる。吸着器114及び赤外線吸収室120から濃縮エタノール蒸気を追い出すため再び空気流れが付勢される。
【0028】
上記説明の更なる理解を、図示の目的のため提供される次の実験結果例を参照することにより得ることができるが、本発明はその例に限定されない。
【0029】
図3を参照すると、図1に示されるように二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルから時間の関数として例示された測定電圧についてグラフ的表現が与えられている。この例では、化学物質センサー100は、エタノールに感度を持ち、上述されたように受動的測定方法の各工程(エタノール蒸気が吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通して通過される)を利用している。図示のように、「基準ラインオフ」は、約58秒に延長され、電圧の上昇が観察された。「基準ラインオフ」は、赤外線源118がオフの状態で二要素赤外線検出器126が測定電圧(Voffと示される)を提供する時刻に対応している。約58秒において、赤外線源118が付勢される。約90秒で、赤外線源118の出力が、「基準ラインオン」として示されるように、赤外線吸収室120内に空気を有した状態で横ばい状態となる。この時刻における二要素赤外線検出器126からの出力は、Vonと示される。赤外線源118がオンとなった状態で、所定の時刻で、濃縮エタノール蒸気は、吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通して通過され、赤外線伝達における落ち込みが観察された。二要素赤外線検出器126からの出力における落ち込みは、「脱着ピーク」として示される。二要素赤外線検出器126の出力(Vsigと示される)のエタノール検知チャンネルにおけるVonに対する変化は、発生した追加の赤外線吸収により引き起こされる。
【0030】
エタノール濃度を決定するため赤外線吸収を利用するセンサーのために、当該出力は2つの測定量の比率であることが望ましい。そのような比率は、光源の使用年数又は光学系への赤外線吸収材料の蓄積等の変化に応じて生じ得る較正において漸次的ドリフトを無くす。本発明により提供される化学物質センサー100からのエタノール出力は、比率である。当該比率の分子は、時間に関する「脱着ピーク」(「基準ラインオン」に対して)の積分である。分母は、「基準ラインオン」と「基準ラインオフ」との間の差異である。化学物質センサー100からのCO2出力も比率を使用して決定することができる。
【0031】
図4は、測定された赤外線センサー信号比率に関する上述された方法工程を利用して得られたエタノール濃度の一例としてのグラフであり、該方法では、エタノール蒸気は、吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通って通過させられる。図示のように、エタノール蒸気は、200sccm(標準の毎分立方センチメートル)で5分間に亘って環境空気を吸着器114へと該吸着器を通して通過させることにより収集される。次に、濃縮されたエタノール蒸気が、50sccmで吸着器114から赤外線吸収室120へと該室を通って通過させられる。このプロセスは、図2を参照してより完全に上述されている。
【0032】
データが、0から9ppmの範囲にある既知のエタノール濃度で収集されている。このエタノール濃度範囲は、上記したように0.08g/dLのBACを持つドライバーにより生成されたエタノール濃度を決定するための実験によれば、ドライバーが車両に乗車した後5分で、車両車室内の空気中のエタノール濃度が約0.5ppmから9.8ppmまでの範囲に及んだことが見出された。当該データは、化学物質センサー100の出力の関数として既知のエタノール濃度の最も良く適合された線形関数を得るため使用された。この例では、データは、エタノール濃度が、0.13ppmの残余の標準誤差で測定されたことを示した。受動的測定に関する化学物質センサー100(図1に示されるような)は、0.1ppmから10ppmの範囲のエタノール濃度を測定し、従って、法的飲酒状態の閾値近傍のBACを持つ酔った車両ドライバーの受動検出のために十分な感度を提供している。更に加えて、ドライバーは0.08g/dLよりも遥かに大きいBACを示し得るので、本発明は、10ppmよりも大きいエタノール濃度を測定する工程を更に提供している。
【0033】
図5を参照すると、図1に示されるような二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルから時間の関数として測定された一例としての電圧グラフが与えられている。化学物質センサー100は、図2に示されるような方法工程を利用して、エタノールに感度を有する。この特別の例では、空気中のエタノール濃度は、4.3ppmである。
【0034】
CO2は、空気が吸着器114及び赤外線吸収室120を通って通過されるとき赤外線源118をオンオフ切り替えしてパルス発振することにより本発明によって測定される。CO2は、吸着器114によっては吸着されない。このパルス発振で生じた効果は、電圧が約−0.068Vへと遷移したとき、時刻=0から時刻=120までに亘って観察することができる。図示のように、二要素検出器126のCO2検知出力チャンネル及び二要素検出器126のエタノール検知出力チャンネル(CO2のための基準として使用される)の両方に対して出力がばらついている。赤外線源118のオンと赤外線源118のオフとの間の差異は、各チャンネルに対して決定される。即ち、各々、V(CO2)とV(ref)とである。比率V(CO2)/V(ref)は、CO2濃度の単調関数(ほとんど線形関数)である。CO2濃度と比率V(CO2)/V(ref)との間の関係は、較正によって決定される。次に、図2でより完全に記載されているように、赤外線源118は「基準ラインオフ」の値を得るため約5秒間に亘って消灯される。次に、赤外線源118は点灯され、吸着器114が所定の時間に亘って加熱される。二要素赤外線検出器126の出力電圧は、「基準ラインオン」の値にまで上昇される。約3秒後、空気ポンプ130は、0.2秒間に亘って作動され、濃縮されたエタノール蒸気を赤外線吸収室120へ輸送し、エタノール検知チャンネル内の赤外線伝達を一定値にまで減少させる。赤外線検出器126のこの一定値に減少したエタノール検知チャンネル出力電圧は、所望されたように、濃縮されたエタノール蒸気が赤外線吸収室120内に残っている限り、維持することができる。次に、空気ポンプ130が作動され、吸着器114及び赤外線吸収室120から濃縮エタノール蒸気を取り除く。二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルの出力電圧は、その上昇した「基準ラインオン」の値に戻る。続いて、約195秒では、赤外線源118は、消灯され、二要素赤外線検出器126のエタノール検知チャンネルの出力電圧は降下する。再び、図5に記載された期間、並びに、本明細書で記載された他の期間は、図示の目的のために提供されており、本発明を制限するものではない。他の期間も用いることができる。
【0035】
図6A乃至図6Dに示されるように、本発明は、図1に示されるような化学物質センサー100のための車両車室内の受動検出吸引口110の代替の配置/取り付けオプションを提供する。本発明は、受動検出吸引口110を1つ以上の車両車室位置に配置することにより車両車室の1つ以上の位置でエタノール蒸気濃度を測定することができる。更には、化学物質センサー100は、目立たない位置に着座させることができ、ドライバーによる能動的な操作を必要とすること無く独立に作動することができる。
【0036】
車両ドライバーに対する受動エタノール感度を最大にするため、当該センサーは、ドライバーの息が車室空気と完全に混合される前にドライバーの息にさらされる。更に加えて、ドライバー及び多くの乗員が車両車室内に居る可能性があるので、本発明の実施例では、受動検出吸引口110は、車両ドライバーに直接隣接して配置される。例えば、図6Aに示されるように、受動検出吸引口110は、車両のハンドル又はハンドルコラム内に組み込まれている。追加の受動検出吸引口110の配置位置が図6B及び図6Cに示されている。図6Bに示された受動検出吸引口110を、車両の天井又はダッシュボード(空気排気口から離れているのが好ましい)内に組み込むことができる。代替例として、受動検出吸引口110を、図6Cに示されるように車両ボディ通気口内に組み込むことができる。更には、受動検出吸引口110を、車両ヘッドレスト、座席、Aピラー又はBピラーに組み込むこともできる。追加の受動検出吸引口110の配置位置が図6Dに示されており、ダッシュボードの頂部に取り付けられているか又はダッシュボード内に組み込まれている。
【0037】
更に加えて、本発明は、車両車室内又は車室外の様々な位置で採用された能動測定モードによりエタノール蒸気濃度を測定する。能動検出吸引口108は、目立たない位置に配置することができる。この位置では、例えば、能動検出吸引口108が、隠しキャップ又はカバーを有する位置から延びたり引っ込められたりする。一実施例では、能動検出吸引口108は、図6A及び図6Dに示されるように配置される。
【0038】
一実施例では、化学物質センサー100は、エタノール蒸気(蒸気状物)及びCO2(トレーサー)の両方の濃度を測定する。環境の変動を補償すること無くエタノール蒸気に対してドライバーの呼吸を監視する際には、本質的な不正確さを経験し得る。CO2トレーサーは、環境変動を補償するため本発明によって利用される。環境変動は、様々な条件により引き起こされる。
【0039】
上記のような条件の一つがエタノール蒸気の損失であり、これは乗員車室からの空気が空気調和機を通して再循環されるとき起こり得る。エタノール蒸気は、空気調和機の蒸発器コアを覆う液体水内で濃縮される。これは、実際のBACよりも少なくBACが測定されることにつながる。類似の損失は、乗員車室からの空気がカーボンキャニスターを通して再循環されるときにも起こり得る。エタノール蒸気のこの損失は、HVACシステム制御部の機能として経験的に決定することができる。例えば温度等の他の測定変数の関数としてのエタノール蒸気の損失も決定することができる。較正により決定されたエタノール濃度の断片的な損失を、HVACシステム制御部及び他の変数入力部の既知のセッティングを用いて、この効果を補償するため使用することができる。
【0040】
車両内での空気の流れは、蒸気濃度測定値に影響を及ぼし得る。HVACシステムは、車両乗員のために快適な環境を提供する。空気流れ制御部が典型的に提供される。ドライバーは、空気温度、ファン速度、空気を出力する通風口、及び、通風口からの空気流の方向を調整することができる。外部空気又は再循環される車室空気の選択を始めとする他の制御オプションが存在する。車両車室内では、ファンがオンに設定されるとき、吐いた息が通風空気流れにより運搬される。空気流れは後述される図8及び図9において更に試験される。更には、低温条件の下では、より暖かい息は、車室の天井へと上昇する傾向を持っている。
【0041】
エラーの可能性のある別の源は、環境のCO2濃度の変動である。環境空気中の通常のCO2濃度は約370ppmである。環境のCO2濃度における大きな変動が報告された。例えば、アリゾナ州のフィーニックス市の繁華街における環境CO2濃度は、650ppmと測定された。これは、空気が自由に循環することができなかった異常気象にも起因していそうである。他の大都市領域に対して報告された最大の濃度は、典型的には、450から500ppmである。燃焼からの排気物は、典型的には、10%のCO2を含んでいる。自動車排気物のかなりの割合が別の車両の空気吸引口から入ることも可能である。1000ppmまで上昇したCO2濃度は、一般に建築物内にも存在する。セメント設備は大量のCO2を発生し得る。更には、環境CO2濃度は減少し得る。一例として、太陽に照らされた草木は環境CO2濃度を50から150ppmにまで減少させることができる(光合成)。本発明は、CO2の環境濃度を測定する。
【0042】
CO2は、少なくとも次の理由のためにエタノール蒸気を測定する際のトレーサーとして使用される。人間の息内のエタノール及びCO2は両方とも、血液から肺の肺胞嚢内部の空気への輸送に由来している。肺胞嚢内部では、CO2濃度に対するエタノール蒸気の濃度の比率は、人間のBACに設定されている。受動センサーを用いると、息からのエタノール蒸気及びCO2の濃度は両方とも幅広い範囲に亘ってばらつくが、それらの比率は人間のBACにより決定されている。人間の吐く息のCO2濃度は、通常、36,000ppmで一定している。
【0043】
図7は、蒸気状物とトレーサーとの受動的測定を利用して、調整された蒸気状物の測定及びこれに続く安全システムの応答の計算を示す方法工程である。本明細書で使用されるように、調整された蒸気状物測定によって、蒸気状物測定に環境変動の補償が適用されることが意図される。
【0044】
一実施例では、蒸気状物エタノール(CES)は、上述した図2の方法工程702に記載されているように受動的に測定される。第1のトレーサーCO2(CCS)も、方法工程704で測定される。更に加えて、第2のトレーサー環境CO2(CCN)も、方法工程706で測定される。次に、後述されるように、調整された蒸気状物測定値が方法工程710で計算される。代替例として、更に後述されるように、BACが方法工程714で計算される。調整された蒸気状物計算値又はBAC計算値が所定の閾値を超えた場合には、方法工程718で安全システム応答が開始される。
【0045】
ドライバーの息内のエタノール濃度CEB(環境変動に対して調整された値)を得るために、次式1が使用される。
【0046】
CEB=CESCCB/(CCS−CCN) (式1)
CEBはドライバーの息内のエタノール濃度(環境変動に対して調整された値)として定義される。CESはドライバーの息からのエタノールの(センサーにおいて)測定された濃度として定義される。CCBはドライバーの吐いた息内のCO2の通常の濃度(約36,000ppm)として定義される。CCSはセンサーにおいて測定されたCO2濃度として定義される。CCN はCO2の測定された背景環境空気中の濃度として定義される。
【0047】
式1をBACの表現へと変換するため、呼吸アルコール濃度とBACとの間の既知の比例関係が使用される。0.08g/dLのBACでは、吐いた息内の等価エタノール濃度CES(1気圧及び37℃)は189.1ppm(体積にして)である。Kは0.08g/dL/189.1ppmに等しく設定される。ドライバーのBACは、CEBに比例している。従って、
BAC=KCESCCB/(CCS−CCN) (式2)
ここで、Kは息内のエタノール蒸気濃度からBACへの変換因子である。
【0048】
個々人は、空気嚢に入る吐いた息の割合を変化させるように浅い呼吸又は深い呼吸のいずれかを実行することにより、一定の範囲でエタノール濃度及びCO2濃度の両方を変化させることができる。あるドライバーは他のドライバーよりも少なく呼吸し、物理的にきつい仕事を経験したドライバーは、他のドライバーよりも高い体積速度で呼吸をする傾向がある。しかし、吐いた息内でのCO2濃度に対するエタノール蒸気濃度の比率は、呼吸の深さ又は呼吸の速度によっては影響を受けない。エタノール濃度及びCO2濃度は両方とも、比例関係で変化し、それによりCEB上のばらつきの効果は式1において相殺される。
【0049】
式2は、ドライバーの息が空気中のエタノールの唯一の源であり、CO2は、吐いた息がドライバーの口から空気が受動センサーによりサンプリングされる位置まで移動するとき、有意には分離しないということを仮定している。空気中のエタノールとCO2との拡散係数は、1気圧及び0℃で、各々、0.099及び0.138cm2/sである。たとえ、これらが拡散したとしても、対流及び浮力が、ドライバーの口からセンサーへのエタノール蒸気及びCO2の両方の輸送を支配する。対流及び浮力は、エタノール蒸気及びCO2の小さな痕跡を有する空気に対して同様に作用する。
【0050】
例えばドライバーの呼吸が開放窓で完全に実行されたとき又は乗員の呼吸が測定に寄与するときなど、正確なBAC測定値を得るには益々困難となる条件が存在し得る。これらの条件の下では、測定された蒸気の読み取り値が、疑わしいものとしてフラグを立てられる。
【0051】
図8は、様々なファン条件の下における車両車室内のエタノール濃度の一例である。車両中の吐いた息のCO2濃度(及びこれによってドライバーの仮定されたBACの人間の息内のエタノール濃度)が試験された。車両が設定され、背景のCO2濃度を最小にするため野外でテストされた。テストは、新鮮な空気で車両を通気した状態で始まった。CO2センサーはミニバンのハンドルの中央部に配置された。ドライバーは、BAC=0.08g/dLを有するものと仮定された。人間のテスト対象が車両に乗車し、ドライバー座席に座った。図8は、テスト対象が車両に乗車した後5分で測定されたCO2濃度から推測されたエタノール濃度を掲げている。
【0052】
テストは、次の条件の各々に対して設定されたHVACシステムで実行された。即ち、(1)ファンオフ、(2)ファンが最小に設定された状態の加熱吸着器モード、(3)ファンが最大に設定された状態の加熱吸着器モード、(4)ファンが最小に設定された状態の除霜モード、(5)ファンが最大に設定された状態の除霜モード、(6)ファンが最大に設定され通気が前方直線方向に向けられた通気モード、(7)ファンが最大に設定され通気が可能な限り上方に向けられた通気モード、(8)ファンが最大に設定され通気が可能な限り下方に向けられた通気モード、並びに、(9)ファンが最大に設定され通気がドライバーの顔に向けられた通気モードである。
【0053】
測定されたCO2濃度に基づいて、センサーにおけるエタノール濃度は、次の形式で表された式(1)から予測される。
【0054】
CES=CEB(CCS−CCN)/CCB (式3)
図8は、同じ被験者、即ち健康な95Kgの男性で3日間で得られたデータを示している。観察された最低のエタノール濃度は0.3ppmであり、この濃度はファン速度を最大に設定した場合に生じた。ハンドルの中央部のセンサーを用いた場合、ドライバーの息は、彼らの頭部の背後に吹き返され、センサーから離れるおそれがある。その結果、息がセンサーに到達する前に、それは車室内の空気と徹底的に混合される。ファン速度を最大に設定した場合、新鮮な空気の車室内への空気流れ速度は、約8×103L/分であり、呼吸速度は約10L/分である。息及び新鮮な空気が完全に混合された場合、希釈因子は、1.25×10−3であり、息内の仮定された189ppmのエタノール濃度は0.24ppmにまで希釈される。
【0055】
加えて、エタノール濃度において30のばらつき因子が観察された。即ち0.3から9.2ppmである。測定されたCO2濃度は、430ppmから2100ppmまでの範囲に及んでいた。サンプリング位置(ハンドルの中央部)は、最適化されていなかったが、たとえ、ばらつきが減少されたとしても、一定に保持された、ばらつきの他の源が存在している。
【0056】
図9A、図9B及び図9Cは、人工呼吸装置及びセダン型車両の車室を利用した実験からの、時間に関連して測定された、エタノール濃度、CO2濃度及びBACを示している。当該実験は、BACが飲酒の法的閾値を丁度超えた状態のドライバーが時刻0で車両に乗車したことを模擬している。HVACシステムは、空気がコンソールの通気口から出た状態で手動制御に設定されている。3つのファンのセッティングが使用される。即ち、オフ、ロー(2)及び最大(7)である。BACが飲酒の閾値となったドライバーをシミュレートするため、圧縮ガスシリンダーからの合成ガス混合物(214ppmエタノール蒸気、体積にして3.54%CO2、21%酸素、平衡窒素)が、人工呼吸装置を通過させられ、ドライバーの口が位置するところで解放された。人工呼吸装置は時刻0で作動オンにされた。ガス混合物中のエタノール蒸気及びCO2の相対濃度は、0.092g/dLのBACに対応している。人工呼吸装置からの平均的な体積流れ速度は16L/分であった。
【0057】
車両は、各テスト前に新鮮な空気で換気された。図9A及び図9Bでは、5分の終了時に観察されたエタノール蒸気及びCO2の濃度は、ファン速度が増加したとき減少する。濃度のプラトーに到達するため要求される時間も、ファン速度が増大したとき減少する。ファンがオフの状態では、1分で応答が観察されず、濃度は5分の期間を通して増加し続けた。ファン速度が最大の場合、CO2の濃度は、1分後にプラトー値の50%を超えた。ドライバーの推測されたBACは、図9Cに示されている。BACを推定するため使用されたアルゴリズムは、上記式2に基づいている。BAC値は、測定されたCO2濃度が背景のCO2濃度を少なくとも所定量(図示のデータに対しては100ppm)超えたときに出力される。この実験のために、有効なBAC推定値は、人工呼吸装置が作動された後1.5分ほどで利用可能となった。
【0058】
本発明は、エタノール蒸気を測定する際に蒸気濃縮器を利用し、その一方でCO2の測定は蒸気濃縮器の使用を省略する。受動化学物質蒸気センサーは、約0.1から10ppmの範囲のアルコール濃度を検出することができなければならず。それにより、本発明は蒸気濃縮器を用いている。蒸気濃縮器は、100から1000のオーダーにあり得る因子だけ化学物質蒸気センサーの感度を増大させ、典型的にはサンプルを収集し解放するため約1分を必要としている。増幅因子は、蒸気濃縮器の作動パラメータに依存している。これらのパラメータには、サンプル収集のために提供される持続時間インターバルと、吸着−脱着サイクルの間に吸着器の温度対時間と、が含まれている。一例では、サイクル時間が1分である場合、エタノール濃度は50の因子で増大されるが、エタノールに対する感度は遥かに大きな因子(定常状態の赤外線伝達測定に比して約1000)で増大される。エタノールは測定サイクルの既知の時間でゼロエタノール背景に比して検出されるからである。測定されたCO2は、遥かに高い濃度、典型的には300から1000ppmであり、蒸気濃縮器を用いること無く、赤外線伝達上のその効果から検出される。
【0059】
CO2のための赤外線センサーからの比較的高速の信号と共にエタノールのための赤外線センサーからの比較的ゆっくりとした信号に基づいて、それらがあたかも同時であるかのようにドライバーのBACを計算するためには、測定に人工的な時間依存性手段が導入される。人工的な時間依存性手段の結果として、推定されたBACは、数分間に亘って正確な値に接近する。
【0060】
本発明は、エタノールセンサーの時間依存性に合致するためCO2センサーの出力に対してフィルター処理するシステム及び方法を提供する。2つの信号(CO2及びエタノールの測定値)は、他の方法では出力中に存在する人工的な時間依存性を回避するため結合される。図10に示されるように、CO2は工程1002で検出され、CO2信号は工程1004で時間フィルター処理される。このようにして、CO2信号は、工程1010でドライバーのBACの計算を提供するため、工程1006で検出されたエタノールと同じ、以前の測定への依存性を有する。蒸気濃縮器からの出力は、以前のエタノール測定値からの寄与を含んでいる。即ち、現在のエタノールの測定をなすとき、以前の測定値の一部は、現在の測定に含まれている。以前の測定からの蒸気濃縮器内のエタノールを蒸気濃縮器から完全に押し流すことはできないからである。
【0061】
一例では、以前のエタノールの測定により、寄与(A=0.25)がなされる。よって、比率に対して使用される現在の測定kからのCO2センサーからの出力V(k)は、次式によって置き換えられる。
【0062】
V’(k)=(1−A)V(k)+AV(k−1)
従って、一例では、kが第2の測定に設定され、A=0.25であるとき、次のことが当てはまる。即ち、V’(2)=0.75V(2)+0.25V(1)となる。現在のエタノール測定値の75%及び以前の測定値の25%が計算されることを観察することができる。
【0063】
第1のセンサー測定に対して、V(k−1)が利用可能ではないとき、
V’(1)=V(1)
となる。
【0064】
その結果発生した2つのセンサー出力、即ちエタノールセンサーからの一つの出力と他のV’とは、ドライバーのBACを予測するため機能的な関係で結合される。ドライバーのBAC対時間の予測の結果は、他の方法では存在したであろう疑わしい時間依存性を含んでいない。その結果、ドライバーのBACの示された値は、正確な値に到達するため数分を要しない。
【0065】
ドライバーの推定されたBACにおける改善は、特にドライバーが最初に車両に乗車したときの期間の間、図11A及び図11Bを比較することで示される。図11A及び図11Bにおける破線は、ドライバーの実際のBACを表し、この例では0.92となる。3つのファンのセッティングが使用される。即ち、オフ、ロー(2)及び最大(7)である。対応するラインは、3つのファンのセッティングに関するBAC測定値を示している。図11Aでは、時間フィルターが省略されおり、観察することができるように、初期に測定されたBAC値は系統的に低くなっている。図11Bでは、時間フィルターが用いられており、系統的に低いBAC測定値は回避されている。
【0066】
工程1004に示されるような時間フィルターを、赤外線分光計とは異なる代替の検出装置で使用することができることが理解されるべきである。例えば、赤外線分光計はCO2の濃度を測定するため使用することができ、金属酸化物センサーと組み合わされた蒸気濃縮器は。エタノール蒸気濃度を測定するため使用される。
【0067】
本発明の他の特徴及び利点は、この開示内容を研究する当業者には明らかとなろう。例えば、搭載型受動エタノール蒸気センサーは、フローティングゲート電解効果トランジスタ、ガスクロマトグラフ、加熱された金属酸化膜センサー、酸化による化学ルミネッセンスを測定するセンサー、ポリマー膜を使用するCMOS容量性センサー、及び、光音響センサーを始めとする代替の検出手段と関連した蒸気濃縮器を使用することができる。更には、より高い感度が、より精巧な分光学的技術を用いて可能となる。狭いラインレーザー光源が使用された場合、その光学的周波数は、スペクトル中の狭い特徴の一方の側へと調整することができ、伝達される強度を調整するためレーザー周波数を前後に走査することができる。分析されるべきガスが1Paのオーダーの圧力である場合には、感度は、大きさのオーダーで改善される。かくして、添付された請求の範囲により画定されたような本発明の精神及び範囲内に含まれつつ、例示実施例、変形及び変更を開示された実施例になすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る、受動サンプリング管、蒸気濃縮器、二要素IR検出器及びマイクロコントローラを備える化学的センサーの構成要素の断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例に係る、図1の化学的センサーによる高感度及び化学的特異性を備えたエタノール蒸気の受動的測定の方法の工程を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施例に係る、図1に示されたような赤外線センサーから時間の関数としてエタノール蒸気が測定されたときの一例としての測定された電圧のグラフである。
【図4】図4は、本発明の一実施例に係る、エタノール濃度対一例としての測定された赤外線センサーの信号の比率を示すグラフである。
【図5】図5は、図1に示されたような赤外線検出器から時間の関数として測定された一例としての電圧を示すグラフであり、濃縮されたサンプル蒸気が所定の所望の時間に亘って赤外線吸収室内に保持され、CO2が赤外線源をパルス発振することにより異なる時刻で測定され、CO2に感度を有するチャンネル(図示せず)及びエタノールに感度を有するチャンネル(基準として使用される)からの信号が、本発明の一実施例に従って、ある比率として設定されている。
【図6A】図6Aは、本発明の一実施例に係る図1に示されたような化学的センサーのための、車両車室内における受動検出吸引の代替配置/取り付けオプションを示す線図である。
【図6B】図6Bは、本発明の一実施例に係る図1に示されたような化学的センサーのための、車両車室内における受動検出吸引の代替配置/取り付けオプションを示す線図である。
【図6C】図6Bは、本発明の一実施例に係る図1に示されたような化学的センサーのための、車両車室内における受動検出吸引の代替配置/取り付けオプションを示す線図である。
【図6D】図6Dは、本発明の一実施例に係る図1に示されたような化学的センサーのための、車両車室内における受動検出吸引の代替配置/取り付けオプションを示す線図である。
【図7】図7は、本発明の一実施例に係る蒸気状物及びトレーサーの受動的測定を利用した、調整された蒸気状物測定値の計算及び次に続く安全システム応答の方法の工程を示す。
【図8】図8は、様々なファン条件の下で車両車室内のエタノール濃度の例の表である。
【図9A】図9Aは、ファンをオフ、低及び最大に設定した状態で時刻0で乗車した酔った人を模擬した実験において図1に示されたようなセンサー性能を示した、時間に関するエタノール濃度の測定値を示すグラフである。
【図9B】図9Bは、ファンをオフ、低及び最大に設定した状態で時刻0で乗車した酔った人を模擬した実験において図1に示されたようなセンサー性能を示した、時間に関するCO2濃度の測定値を示すグラフである。
【図9C】図9Cは、ファンをオフ、低及び最大に設定した状態で時刻0で乗車した酔った人を模擬した実験において図1に示されたようなセンサー性能を示した、時間に関する赤外線BACの測定値を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の一実施例に従って、エタノール及びCO2が測定され比較されたときに課される人工的な時間依存性手段の補償を示す方法の各工程を示している。
【図11A】図11Aは、図10に示されるような時間フィルター無しで、図1に示されるような化学的蒸気センサーを利用して、時間の関数として測定されたBACの一例のグラフである。
【図11B】図11Bは、図10に示されるような時間フィルターを備えた、図1に示されるような化学的蒸気センサーを利用して、時間の関数として測定されたBACの一例のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境変動を補償する化学物質蒸気センサーであって、
赤外線波を発生するための赤外線源と、
前記赤外線源から発生した赤外線波の強度を測定するための赤外線検出手段と、
サンプル体積の空気からの蒸気を濃縮するため、蒸気吸着手段と、該蒸気吸着手段を加熱するための加熱源と、を備える蒸気濃縮手段であって、濃縮された蒸気が赤外線波の経路内へと通過される、前記蒸気濃縮手段と、
前記サンプル体積の空気を得て、該サンプル体積の空気を前記蒸気濃縮手段に送り込むためのサンプリング用吸引手段と、
を備え、
蒸気状物、第1のトレーサー蒸気及び第2のトレーサー蒸気が前記サンプル体積の空気から測定され、
プロセッサが前記蒸気状物を利用して調整された蒸気状物測定値、前記第1のトレーサー蒸気測定値及び前記第2のトレーサー蒸気測定値を計算する、化学物質蒸気センサー。
【請求項2】
前記サンプル体積の空気は、自動車車室からサンプリングされ、前記蒸気状物は、人間の吐く息からのエタノール蒸気であり、前記第1のトレーサー蒸気は、人間の吐く息からの二酸化炭素であり、前記第2のトレーサー蒸気は、自動車の環境空気からの二酸化炭素である、請求項1に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項3】
前記プロセッサは、測定されたエタノール蒸気状物と典型的に人間の吐く息内の二酸化炭素トレーサーとの積を計算し、該積を測定された前記第1のトレーサー蒸気の二酸化炭素と環境空気から測定された第2のトレーサー蒸気の二酸化炭素との差により除算することにより、前記調整された蒸気状物測定値を計算する、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記調整された蒸気状物測定値を利用して血液アルコール濃度(BAC)を計算する、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項5】
前記環境空気は、前記自動車車室に空気を提供する空気通気口からサンプリングされる、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項6】
血液アルコール濃度(BAC)を計算するため、第1のトレーサー蒸気及び第2のトレーサー蒸気の二酸化炭素の測定値を受け入れ、前記エタノール蒸気測定値の時間依存性とマッチングするための人工時間フィルターを更に備える、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項7】
着目する所定の化学種により吸収される赤外線の周波数及び波長の範囲の一つを選択するための赤外線フィルターと、
前記サンプル体積の空気を吸引するための入口と、前記サンプル体積の空気を吐き出すための出口とを画定する赤外線吸収室と、
前記サンプリング用吸引手段からの前記サンプル体積の空気を、前記蒸気吸着手段及び前記赤外線吸収室を通して通過させるための空気流れ源と、
を更に備える、請求項1に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項8】
前記赤外線検出手段は、少なくとも0.1の百万分の一濃度(ppm)の前記サンプル体積空気内のエタノール濃度を測定する、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項9】
前記調整されたエタノール蒸気濃度の所定値が前記車両車室内で超えられた場合、安全システム応答を指令するためのマイクロコントローラを更に備え、
前記安全システム応答は、先行する車両の後の最小の運転間隔を増大させ、乗員にシートベルトを締めるように警告し、車両性能を制限し、車両車室エタノール測定値を警官及び車両記録手段に送信する、各工程を備える、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項10】
人間からのエタノール蒸気を受動的に測定し、環境変動を補償するための方法であって、
人間の吐く息からエタノール蒸気、人間の吐く息から第1のトレーサーの二酸化炭素、及び、環境空気から第2のトレーサーの二酸化炭素を各々測定し、
前記エタノール蒸気測定値を利用して調整されたエタノール蒸気測定値、前記第1のトレーサー二酸化炭素測定値、及び、前記第2のトレーサー二酸化炭素測定値を計算する、各工程を備える、方法。
【請求項11】
前記調整されたエタノール蒸気測定値を計算する工程は、前記エタノール蒸気測定値と典型的に人間の吐く息内の二酸化炭素測定値との積を計算し、該積を前記第1のトレーサー二酸化炭素測定値と前記第2のトレーサー二酸化炭素の測定値との差により除算する、各工程を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記調整されたエタノール蒸気測定値を利用して血液アルコール濃度(BAC)を計算する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
人間の吐く息からの前記エタノール蒸気は、自動車車室からサンプリングされる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記環境空気は、前記自動車車室に空気を提供する空気通気口からサンプリングされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
血液アルコール濃度(BAC)を計算するため、第1のトレーサー及び第2のトレーサーの二酸化炭素の測定値を受け入れ、前記エタノール蒸気測定値の時間依存性とマッチングするための人工時間フィルターを用いる工程を更に備える、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
化学物質蒸気を受動的に測定し、サンプリング上の環境変動を補償するための方法であって、
赤外線源から発生された赤外線波の強度を赤外線検出手段を利用して測定し、
蒸気吸着手段と該蒸気吸着手段を加熱するための加熱手段とを用いて、サンプル体積の空気からの蒸気を濃縮し、該濃縮された蒸気は前記赤外線波の経路内を通過させられ、
受動サンプリング用吸引口を利用して前記サンプル体積の空気を取得し、該サンプル体積の空気を蒸気濃縮手段に送り込み、
前記サンプル体積の空気からの、蒸気状物、第1のトレーサー蒸気及び第2のトレーサー蒸気を測定し、
前記蒸気状物を利用して調整された蒸気状物測定値、前記第1のトレーサー蒸気測定値及び前記第2のトレーサー蒸気測定値を計算する、各工程を備える方法。
【請求項17】
前記サンプル体積の空気は、自動車車室からサンプリングされ、前記蒸気状物は、人間の吐く息からのエタノール蒸気であり、前記第1のトレーサー蒸気は、人間の吐く息からの二酸化炭素であり、前記第2のトレーサー蒸気は、自動車の環境空気からの二酸化炭素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記調整されたエタノール蒸気測定値を計算する工程は、前記エタノール蒸気測定値と典型的に人間の吐く息内のトレーサー二酸化炭素の測定値との積を計算し、該積を前記第1のトレーサー二酸化炭素測定値と環境空気からの前記第2のトレーサー二酸化炭素の測定値との差により除算する、各工程を備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記調整されたエタノール蒸気測定値を利用して血液アルコール濃度(BAC)を計算する工程を更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記環境空気は、前記自動車車室に空気を提供する空気通気口からサンプリングされる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
血液アルコール濃度(BAC)を計算するため、第1のトレーサー及び第2のトレーサーの二酸化炭素の測定値を受け入れ、前記エタノール蒸気測定値の時間依存性とマッチングするための人工時間フィルターを用いる工程を更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
赤外線フィルターを利用して、着目する所定の化学種により吸収される赤外線の周波数及び波長の範囲の一つを選択し、
前記サンプル体積の空気を吸引するため赤外線吸収室を利用した入口と、前記サンプル体積の空気を吐き出すための出口とを画定し、
前記サンプル体積の空気を、空気流れ源を利用して前記サンプリング用吸引口から前記蒸気吸着手段及び前記赤外線吸収室を通して通過させる、各工程を更に備える、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記調整されたエタノール蒸気濃度の所定値が前記車両車室内で超えられた場合、安全システム応答を指令する工程を更に備え、
前記安全システム応答は、先行する車両の後の最小の運転間隔を増大させ、乗員にシートベルトを締めるように警告し、車両性能を制限し、車両車室エタノール測定値を警官及び車両記録手段に送信する、各工程を備える、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
環境変動を補償する化学物質蒸気センサーであって、
赤外線波を発生するための赤外線源と、
前記赤外線源から発生した赤外線波の強度を測定するための赤外線検出手段と、
サンプル体積の空気からの蒸気を濃縮するため、蒸気吸着手段と、該蒸気吸着手段を加熱するための加熱源と、を備える蒸気濃縮手段であって、濃縮された蒸気が赤外線波の経路内へと通過される、前記蒸気濃縮手段と、
前記サンプル体積の空気を得て、該サンプル体積の空気を前記蒸気濃縮手段に送り込むためのサンプリング用吸引手段と、
を備え、
蒸気状物、第1のトレーサー蒸気及び第2のトレーサー蒸気が前記サンプル体積の空気から測定され、
プロセッサが前記蒸気状物を利用して調整された蒸気状物測定値、前記第1のトレーサー蒸気測定値及び前記第2のトレーサー蒸気測定値を計算する、化学物質蒸気センサー。
【請求項2】
前記サンプル体積の空気は、自動車車室からサンプリングされ、前記蒸気状物は、人間の吐く息からのエタノール蒸気であり、前記第1のトレーサー蒸気は、人間の吐く息からの二酸化炭素であり、前記第2のトレーサー蒸気は、自動車の環境空気からの二酸化炭素である、請求項1に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項3】
前記プロセッサは、測定されたエタノール蒸気状物と典型的に人間の吐く息内の二酸化炭素トレーサーとの積を計算し、該積を測定された前記第1のトレーサー蒸気の二酸化炭素と環境空気から測定された第2のトレーサー蒸気の二酸化炭素との差により除算することにより、前記調整された蒸気状物測定値を計算する、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記調整された蒸気状物測定値を利用して血液アルコール濃度(BAC)を計算する、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項5】
前記環境空気は、前記自動車車室に空気を提供する空気通気口からサンプリングされる、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項6】
血液アルコール濃度(BAC)を計算するため、第1のトレーサー蒸気及び第2のトレーサー蒸気の二酸化炭素の測定値を受け入れ、前記エタノール蒸気測定値の時間依存性とマッチングするための人工時間フィルターを更に備える、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項7】
着目する所定の化学種により吸収される赤外線の周波数及び波長の範囲の一つを選択するための赤外線フィルターと、
前記サンプル体積の空気を吸引するための入口と、前記サンプル体積の空気を吐き出すための出口とを画定する赤外線吸収室と、
前記サンプリング用吸引手段からの前記サンプル体積の空気を、前記蒸気吸着手段及び前記赤外線吸収室を通して通過させるための空気流れ源と、
を更に備える、請求項1に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項8】
前記赤外線検出手段は、少なくとも0.1の百万分の一濃度(ppm)の前記サンプル体積空気内のエタノール濃度を測定する、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項9】
前記調整されたエタノール蒸気濃度の所定値が前記車両車室内で超えられた場合、安全システム応答を指令するためのマイクロコントローラを更に備え、
前記安全システム応答は、先行する車両の後の最小の運転間隔を増大させ、乗員にシートベルトを締めるように警告し、車両性能を制限し、車両車室エタノール測定値を警官及び車両記録手段に送信する、各工程を備える、請求項2に記載の化学物質蒸気センサー。
【請求項10】
人間からのエタノール蒸気を受動的に測定し、環境変動を補償するための方法であって、
人間の吐く息からエタノール蒸気、人間の吐く息から第1のトレーサーの二酸化炭素、及び、環境空気から第2のトレーサーの二酸化炭素を各々測定し、
前記エタノール蒸気測定値を利用して調整されたエタノール蒸気測定値、前記第1のトレーサー二酸化炭素測定値、及び、前記第2のトレーサー二酸化炭素測定値を計算する、各工程を備える、方法。
【請求項11】
前記調整されたエタノール蒸気測定値を計算する工程は、前記エタノール蒸気測定値と典型的に人間の吐く息内の二酸化炭素測定値との積を計算し、該積を前記第1のトレーサー二酸化炭素測定値と前記第2のトレーサー二酸化炭素の測定値との差により除算する、各工程を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記調整されたエタノール蒸気測定値を利用して血液アルコール濃度(BAC)を計算する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
人間の吐く息からの前記エタノール蒸気は、自動車車室からサンプリングされる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記環境空気は、前記自動車車室に空気を提供する空気通気口からサンプリングされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
血液アルコール濃度(BAC)を計算するため、第1のトレーサー及び第2のトレーサーの二酸化炭素の測定値を受け入れ、前記エタノール蒸気測定値の時間依存性とマッチングするための人工時間フィルターを用いる工程を更に備える、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
化学物質蒸気を受動的に測定し、サンプリング上の環境変動を補償するための方法であって、
赤外線源から発生された赤外線波の強度を赤外線検出手段を利用して測定し、
蒸気吸着手段と該蒸気吸着手段を加熱するための加熱手段とを用いて、サンプル体積の空気からの蒸気を濃縮し、該濃縮された蒸気は前記赤外線波の経路内を通過させられ、
受動サンプリング用吸引口を利用して前記サンプル体積の空気を取得し、該サンプル体積の空気を蒸気濃縮手段に送り込み、
前記サンプル体積の空気からの、蒸気状物、第1のトレーサー蒸気及び第2のトレーサー蒸気を測定し、
前記蒸気状物を利用して調整された蒸気状物測定値、前記第1のトレーサー蒸気測定値及び前記第2のトレーサー蒸気測定値を計算する、各工程を備える方法。
【請求項17】
前記サンプル体積の空気は、自動車車室からサンプリングされ、前記蒸気状物は、人間の吐く息からのエタノール蒸気であり、前記第1のトレーサー蒸気は、人間の吐く息からの二酸化炭素であり、前記第2のトレーサー蒸気は、自動車の環境空気からの二酸化炭素である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記調整されたエタノール蒸気測定値を計算する工程は、前記エタノール蒸気測定値と典型的に人間の吐く息内のトレーサー二酸化炭素の測定値との積を計算し、該積を前記第1のトレーサー二酸化炭素測定値と環境空気からの前記第2のトレーサー二酸化炭素の測定値との差により除算する、各工程を備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記調整されたエタノール蒸気測定値を利用して血液アルコール濃度(BAC)を計算する工程を更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記環境空気は、前記自動車車室に空気を提供する空気通気口からサンプリングされる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
血液アルコール濃度(BAC)を計算するため、第1のトレーサー及び第2のトレーサーの二酸化炭素の測定値を受け入れ、前記エタノール蒸気測定値の時間依存性とマッチングするための人工時間フィルターを用いる工程を更に備える、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
赤外線フィルターを利用して、着目する所定の化学種により吸収される赤外線の周波数及び波長の範囲の一つを選択し、
前記サンプル体積の空気を吸引するため赤外線吸収室を利用した入口と、前記サンプル体積の空気を吐き出すための出口とを画定し、
前記サンプル体積の空気を、空気流れ源を利用して前記サンプリング用吸引口から前記蒸気吸着手段及び前記赤外線吸収室を通して通過させる、各工程を更に備える、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記調整されたエタノール蒸気濃度の所定値が前記車両車室内で超えられた場合、安全システム応答を指令する工程を更に備え、
前記安全システム応答は、先行する車両の後の最小の運転間隔を増大させ、乗員にシートベルトを締めるように警告し、車両性能を制限し、車両車室エタノール測定値を警官及び車両記録手段に送信する、各工程を備える、請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2007−147592(P2007−147592A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−273692(P2006−273692)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273692(P2006−273692)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】
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