説明

化粧品および皮膚におけるPPAR受容体活性化剤の使用

本発明は、化粧品組成物における、または、医薬組成物の製造のための、PPAR型受容体の少なくとも1つの活性化剤の使用であって、前記PPAR受容体活性化剤または前記組成物が脂腺の大きさを調節すること、特に皮脂産生を阻害することを意図する使用に関する。
本発明は、特に、皮脂の過剰産生に関連した病状を治療するための医薬組成物の製造のための、または、脂っぽい皮膚および/もしくはふけを生じやすい頭皮を治療するための医薬組成物における、PPAR受容体の活性化剤の使用を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品組成物における、または、医薬組成物の製造のための、少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用であって、前記PPAR受容体活性化剤または前記組成物が脂腺の大きさを調節することを意図する使用に関する。
【0002】
特に、前記PPAR受容体活性化剤または前記組成物は、脂腺による皮脂の産生を阻害することを意図する。
【0003】
本発明は、また、皮脂の過剰産生に関連した病状を治療するための医薬組成物の製造のための、前記PPAR受容体活性化剤の使用、更には、つや消し剤または抗ふけ剤としての、化粧品組成物における前記活性化剤の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
皮脂は、脂腺の細胞、すなわち脂腺細胞(sebocyte)からホロクリン分泌される。脂腺細胞の成熟は、脂質の産生によって特徴付けられる。ヒトの皮脂は、圧倒的な量のトリグリセリド、ワックス、スクアレン、コレステロールエステル、脂肪酸と、少量の他の脂質からなる。多くの因子が、皮脂の分泌に影響を及ぼすことができる。
【0005】
脂腺は、一般的に、頭髪および他の体毛の毛包に関連しており、その機能にも関与して、毛包脂腺単位を形成する。脂腺は体全体にわたって観察されるが、特に顔、額および頭皮に集中している。脂腺は頭髪および他の体毛と会合しているわけではない。動物種に関わり無く、全ての脂腺は、類似した構造を有している。脂腺は、単一の小葉もしくは腺房、または毛穴に面している小葉の集まりからなる。脂腺それ自身は、皮膚の表面に直接面している。
【0006】
脂腺細胞は、最初に非分化の状態で増殖し、その後に、基底層および傍基底層で分化する特殊な上皮細胞である(Mednieks et al., J. Invest. Dermatil., 97:517-523, 1991)。分化は、成熟の最後に、ホロクリン分泌による皮脂の破壊および放出によって終了する脂質でチャージされた細胞として生じる。
【0007】
脂腺機能に関連した障害は、美容に関する病気を誘導する:皮脂の過剰な分泌および排出によって特徴付けられる、脂っぽい皮膚の場合である。このような皮膚は、テカテカし、厚ぼったい外観を有し、皮膚の毛包口は開いてるか、微量の硬いスピクラ(spicule)または面皰で満たされている。脂っぽい皮膚は、たびたび、落屑欠陥および粗い皮膚表面と関連している。過剰な皮脂は、また、細菌フローラの無秩序な増殖のための支持体として機能し、面皰および/またはニキビの原因となり、または、代替的に、頭皮上で、ふけの産生を担う酵母Malassseziaの存在と関連した異常な落屑の原因となりうる。
【0008】
脂腺機能に関連した障害は、また、皮膚病疾患、特に、口囲皮膚炎、遺伝性の脂腺の異常増殖などの脂腺の異常増殖と関連した病状、および、内分泌系起源の過剰アンドロゲンなどの内分泌障害と関連した皮脂の過剰産生をもたらす可能性がある。
【0009】
先行技術においては、皮脂吸収剤、またはα-またはβ-ヒドロキシ酸などの角質溶解剤、皮脂の産生に直接作用する活性化剤の使用が開示されている。
【特許文献1】WO 98/08089
【非特許文献1】Mednieks et al., J. Invest. Dermatil., 97:517-523, 1991
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それにもかかわらず、皮脂の過剰産生、ならびに、過剰産生がもたらす美容への効果および皮膚への効果を避けるのに有効である化合物を見出すための要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、出願人は、驚くべきことに、先行技術の教示に反して、PPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)活性化剤の使用が、脂腺の大きさを減少させ、そのために、皮脂の産生を減少させるという結果を有することを見出した。
【0012】
Arch Developmentによる特許出願WO 98/08089には、特に、チアゾリジンジオンなどのPPARガンマアゴニストが、包皮の脂腺細胞の培養物において皮脂産生を刺激することが示されており、それゆえ、本発明とは対照的に、脂腺による皮脂の産生を阻害するための、これら受容体のアンタゴニストの使用が提案されている。
【0013】
ペルオキシソームは、ミトコンドリアに類似した小器官であり、過酸化水素の代謝に特徴的である一連の酵素(カタラーゼ、尿酸オキシダーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼ)と、脂肪酸のβ-酸化のための酵素を含む。ペルオキシソーム増殖因子は、主に、主にクロフィブレートのような低脂血症因子、除草剤、およびフタル酸エステルのような工業プラスチックを含む化学的産物の群である。これらのペルオキシソーム増殖因子は、ステロイド核受容体スーパーファミリーの一部である受容体(PPARと称される)を活性化する。これらの受容体は、ペルオキシソーム増殖因子によって活性化でき、また天然の脂肪酸によっても活性化でき、それ故ペルオキシソームおよびミトコンドリアのβ-酸化に関与する酵素をコードする、またはP450-4A6脂肪酸β-ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子の発現を刺激する。
【0014】
PPAR受容体は、レチノイドX受容体(RXRと称される)とのヘテロダイマーの形態において、ペルオキシソーム増殖因子応答エレメント(PPRE)と称されるDNA配列エレメントへの結合によって転写を活性化する。
【0015】
ヒトPPARの3種のサブタイプが同定され開示されている:PPARアルファ(α)、PPARガンマ(γ)およびPPARデルタ(δ)(またはNUC1)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
それゆえ、本発明の1つの主題は、化粧品組成物における、または、医薬組成物の製造のための、PPAR型受容体の少なくとも1つの活性化剤の使用であって、前記PPAR受容体活性化剤または前記組成物が脂腺の大きさを調節することを意図する使用に関する。
【0017】
特に、前記PPAR受容体活性化剤または前記組成物が、皮脂の産生を阻害することを意図している。
【0018】
本発明による化粧品または医薬組成物は、生理学的に許容可能な媒体を含む。
【0019】
用語「生理学的に許容可能な媒体」とは、皮膚、場合によっては、その外皮(まつげ、爪、髪)および/または粘膜と適用可能である媒体を意味する。
【0020】
本発明によれば、用語「PPAR受容体」は、特に、サブタイプPPAR-α、PPAR-δおよびPPAR-γを意味する。
【0021】
本発明による化合物は、PPAR型受容体に対して活性化する特性を示す。このPPAR受容体に対して活性化する特性は、解離定数Kdapp(見かけ)を用いた、トランス活性化試験で測定することができる。
【0022】
本発明によれば、用語「PPAR型受容体の活性化剤」は、特に、PPAR受容体に結合し、実施例1に記載のトランス活性化試験で、サブタイプPPARα、γまたはδの少なくとも1つについて、1μM以下の解離定数Kdappを有する任意のアゴニスト化合物を意味する。
【0023】
本発明の好ましい化合物は、サブタイプPPARα、γまたはδの少なくとも1つについて、500nM以下の、有利には、100nM以下の解離定数Kdappを有する。
【0024】
少なくともサブタイプPPAR-γについては、500nM以下の、有利には100nM以下の解離定数Kdappを有するPPAR活性化剤を、より好ましくは使用する。
【0025】
挙げることができるこのような化合物の例は、以下の化合物:
1.5-{4-[2-メチルピリド-2-イルアミノ)エトキシ]ベンジル}-チアゾリジン-2,4-ジオン(サブタイプαおよびγ)、
8.2-(4-{2-[3-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-ヘプチルウレイド]-エチル}フェニルスルファニル)-2-メチルプロピオン酸
を含む。
【0026】
更により好ましくは、PPAR-γ型受容体の活性化剤は特異的である、すなわち、PPARαに関してのKdappに対するPPAR-γに関するKdappの比率Rが10-1以下となる。好ましくは、Rは0.05以下であり、より有利には、0.02以下である。
【0027】
挙げることができるPPAR-γ受容体の特異的な活性化剤の例は、以下の化合物:
2.N-メチル-N-[4’-(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イルメチル)-ビフェニル-3-イルメチル]-6-(2-メトキシエトキシメトキシ)-ナフタレン-2-カルボキサミド、
3.(S)-3-[3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-[2-(1-フェニルメタノイル)フェニルアミノ]プロピオン酸、
4.N-メチル-N-[4’-(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イルメチル)-ビフェニル-3-イルメチル]-6-プロポキシナフタレン-2-カルボキサミド、
5.(S)-2-エトキシ-3-{3’-[(メチルオクタノイルアミノ)メチル]-ビフェニル-4-イル}プロピオン酸、
6.2-{3’-[({1-[6-(2-メトキシエトキシメトキシ)ナフタレン-2-イル]メタノイル}メチルアミノ)メチル]ビフェニル-4-イルアミノ}-安息香酸、
7.(S)-3-{3’-[3-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-メチルウレイド]ビフェニル-4-イル}-2-[2-(1-フェニルメタノイル)フェニルアミノ]プロピオン酸、
9.1-[4’-(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イルメチル)ビフェニル-3-イル]-3-ヘプチル-1-メチルウレア
10.{3-[4-(3-シクロヘキシル-1-フェネチルウレイド)フェニルスルファニル]フェニル}酢酸、
11.{3-[4-(3-ヘキシル-1-フェネチルウレイド)フェニルスルファニル]フェニル}酢酸、
12.{3-[4-(1-ブチル-3-シクロヘキシルウレイド)フェニルスルファニル]フェニル}酢酸、
13.{3-[4-(3-ベンジル-1-ブチルウレイド)フェニルスルファニル]フェニル}酢酸、
14.(S)-3-[3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)-ビフェニル-4-イル]-2-[2-(1-フェニルメタノイル)フェニルアミノ]プロピオン酸、
15.エチル(S)-3-[3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド]ビフェニル-4-イル)-2-[2-(1-フェニルメタノイル)フェニルアミノ]プロピオン酸
を含む。
【0028】
本発明の他の特徴、態様、主題および利点は、以下に続く記載、ならびに、それを説明することを企図した非制限的である各種の具体的な実施例を読むことで、より明らかとなるであろう。
【0029】
本発明による組成物の投与は、経口、非経口、または局所的に行うことができる。組成物は、好ましくは、局所的または経口投与、より好ましくは局所的投与に適した形態で実装されている。
【0030】
経口経路を介する場合、組成物、より具体的には医薬組成物は、タブレット、ゲルカプセル、糖衣錠、シロップ、懸濁剤、液剤、散剤、顆粒剤、エマルジョンあるいは制御放出が可能な脂質もしくはポリマーミクロ粒子またはナノ粒子またはベシクルの形態であることができる。非経口経路を介する場合、組成物は、注入または注射用の溶液または懸濁液の形態であることができる。
【0031】
本発明による化合物は、1から3回の用量摂取で体重1kg当たり約0.001mgから100mgの1日量で一般的に投与する。
【0032】
局所経路を介する場合、本発明による組成物は、皮膚および粘膜の治療をより具体的に意図し、軟膏、クリーム、乳液、ポマード、粉末、含浸パッド、合成石鹸、溶液、ジェル、スプレー、フォーム、懸濁液、ローション、スティック、シャンプーまたは洗浄ベースの形態であることができる。それはまた、制御放出が可能な脂質もしくはポリマーミクロ粒子またはナノ粒子またはベシクルの懸濁液、またはポリマーパッチおよびヒドロゲルの形態であることができる。この局所経路組成物は、無水形態、水性形態またはエマルジョンの形態であることができる。
【0033】
化合物は、組成物の総重量に対して、一般的に0.001重量%から10重量%の間、好ましくは0.01重量%から1重量%の間の濃度で局所的に使用する。
【0034】
前記した化粧品および皮膚用組成物は、医薬組成物に関して不活性または薬力学的に活性添加物も、またはこれらの添加剤の組み合わせ、特に:
- 湿潤剤、
- 香味増強剤、
- 保存剤、例えばパラ-ヒドロキシ安息香酸エステル、
- 安定剤、
- 湿潤調整剤、
- pH調整剤、
- 浸透圧調節剤、
- 乳化剤、
- UV-AおよびUV-B遮断剤、
- 落屑剤
- 酸化防止剤、例えばα-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソールまたはブチルヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノール、または一定の金属キレート剤、
- 脱色剤、例えばヒドロキノン、アゼライン酸、コーヒー酸またはコジック酸、
- 皮膚軟化剤、
- 保湿剤、例えばグリセロール、PEG400、チアモルホリノンおよびその誘導体、または尿素、
- 抗脂漏剤または抗座瘡剤、例えばS-カルボキシメチルシステイン、S-ベンジルシステアミン、それらの塩またはそれらの誘導体、あるいは過酸化ベンゾイル、
- 抗生物質、例えばエリスロマイシンおよびそのエステル、ネオマイシン、クリンダマイシンおよびそのエステル、ならびにテトラサイクリン、
- 抗真菌剤、例えばケトコナゾールまたはポリメチレン-4,5-イソチアゾリドン-3、
- 非ステロイド系抗炎症剤、
- 抗乾癬剤、例えばアントラリンおよびその誘導体、
- エイコサ-5,8,11,14-テトライノン酸およびエイコサ-5,8,11-トリイノン酸ならびにそれらのエステルおよびアミド、
- レチノイド、すなわち、天然または合成のRARまたはRXR受容体リガンド、
- コルチコステロイドまたはエストロゲン、
- α-ヒドロキシ酸およびα-ケト酸またはそれらの誘導体、例えば乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、グリセリン酸またはアスコルビン酸、ならびにそれらの塩、アミドまたはエステル、あるいはβ-ヒドロキシ酸またはその誘導体、例えばサリチル酸およびその塩、アミドまたはエステル、
- イオンチャネル遮断剤、例えばカリウムチャネル遮断剤、
- 頭皮の落屑条件に効果的な剤、例えば亜鉛ピリチオン、ピロクトン・オラミン、二硫化セレニウム、クリンバゾール、ウンデシレン酸、ケトコナゾール、ピロクトン・オラミン(オクトピロックス)またはシクロピロクトン(シクロピロックス)、特に、「抗-ふけ剤」組成物のために、
- 他のつや消し剤、例えば無機粒子(例えばシリカ)のコロイド懸濁液からなる粉末または剤、特に、「つや消し」化粧品組成物のために、
- あるいは、より特に医薬組成物について、免疫系を妨害することが知られている医薬品(例えば、シクロスポリン、FK506、グルココルチコイド、モノクローナル抗体、サイトカインまたは成長因子など)
も含んでいてもよい。
【0035】
当然のことながら、当業者は、望ましい効果(つや消し、抗ふけ、または、皮脂の過剰産生に関連した病状を治療することを意図した効果)に関して、本発明に本質的に備わる有利な特性が、想定される添加によって悪影響を受けないまたは実質的に悪影響を受けないように、これらの化粧品または皮膚用組成物に加える任意選択の化合物の選択に注意する。
【0036】
本発明は、口囲皮膚炎、遺伝性の脂腺の異常増殖などの脂腺の異常増殖と関連した病状、または、内分泌系起源の過剰アンドロゲンなどの内分泌障害と関連した皮脂の過剰産生の病状を治療するための、少なくとも1つの前記したPPAR型受容体の活性化剤の使用に関する。
【0037】
本発明は、また、つや消し剤または代替的には抗ふけ剤としての、少なくとも1つの前記したPPAR型受容体の活性化剤の化粧品的使用に関する。
【0038】
本発明のもう1つの主題は、少なくとも1つの前記したPPAR型受容体の活性化剤を含む組成物を皮膚、粘膜またはケラチン繊維に投与または適用することを特徴とする、脂っぽい皮膚を処理するための美容方法である。
【0039】
本発明は、また、少なくとも1つの前記したPPAR型受容体の活性化剤を含む組成物を皮膚、粘膜またはケラチン繊維に投与または適用することを特徴とする、ふけを生じやすい頭皮を予防および/または処理するための美容方法に関する。
【0040】
本発明の組成物は、経口で投与することができ、または、治療すべき部位に局所的に塗布することができる。投与または塗布は、数週間にわたって、毎日行うことができ、治療は、治療すべき個人にしたがって、定期的に再開することができる。
【0041】
本発明の例示を意図したいくつかの例を、本質を限定することなく以下に示す。
【実施例】
【0042】
(実施例1:PPARトランス活性化試験の結果)
HeLN細胞内のアゴニスト(活性化剤)でのPPAR受容体の活性化によって、基質の存在下で光を生じるレポーター遺伝子、ルシフェラーゼの発現がもたらされる。PPAR受容体の調節は、リファレンスアゴニストの存在下で細胞をインキュベートした後に生成したルミネセンスを定量化することによって測定する。リガンドはアゴニストをその位置から移動させる。活性の測定は生成した光を定量化することによって実施する。この測定によって、PPAR受容体に対する分子の親和性を表す定数を判定することにより本発明による化合物の調節活性を判定することを可能にする。この値は、受容体の定常活性と発現に依存して変動し得るので、見かけのKd値(KdApp(nM))と呼ばれる。
【0043】
この定数を求めるために、細胞を、一定の濃度のテスト生成物および一定の濃度のリファレンスアゴニスト、PPARαについては2-(4-{2-[3-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-ヘプチルウレイド]エチル}フェニルスルファニル)-2-メチルプロピオン酸、PPARδについては{2-メチル-4-[4-メチル-2-(4-トリフルオロメチルフェニル)チアゾール-5-イル-メチルスルファニル]フェノキシ}酢酸、および、PPARγについては5-{4-[2-メチルピリド-2-イルアミノ]エトキシ}ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオンで接触させる。測定は、また、同じ生成物との全アゴニストコントロールについても行う。
【0044】
使用したHeLN細胞系は、プラスミドERE-βGlob-Luc-SV-Neo(レポーター遺伝子)およびPPAR(α、δ、γ)Gal-hPPARを含む安定な形質変換体である。これらの細胞は、フェノールレッドを含まず10%の脱脂した仔ウシ血清を追加したDMEM媒体100μl中で、ウェル1個当たり細胞10000個の割合で、96ウェルプレートに接種する。次いでプレートを37℃、7%のCO2で16時間インキュベートする。
【0045】
テスト生成物の種々の希釈液およびリファレンスリガンドの種々の希釈液を、ウェル1個当たり5μlの割合で加える。次いでプレートを18時間、37℃および7%のCO2でインキュベートする。逆さにすることによって培養培地を除去し、1:1のPBS/ルシフェリン混合物100μlを各ウェルに加える。5分後、ルミネセンス検出器でプレートを読み取る。
【0046】
以下の表における例1から8として称されるテスト化合物は:
例1:5-{4-[2-メチルピリド-2-イルアミノ)エトキシ]ベンジル}-チアゾリジン-2,4-ジオン、
例2:N-メチル-N-[4’-(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イルメチル)-ビフェニル-3-イルメチル]-6-(2-メトキシエトキシメトキシ)-ナフタレン-2-カルボキサミド、
例3:(S)-3-[3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-[2-(1-フェニルメタノイル)フェニルアミノ]プロピオン酸、
例4:N-メチル-N-[4’-(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イルメチル)-ビフェニル-3-イルメチル]-6-プロポキシナフタレン-2-カルボキサミド、
例5:(S)-2-エトキシ-3-{3’-[(メチルオクタノイルアミノ)メチル]ビフェニル-4-イル}プロピオン酸、
例6:2-{3’-[({1-[6-(2-メトキシエトキシメトキシ)ナフタレン-2-イル]メタノイル}メチルアミノ)メチル]ビフェニル-4-イルアミノ}-安息香酸、
例7:(S)-3-{3’-[3-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-メチルウレイド]ビフェニル-4-イル}-2-[2-(1-フェニルメタノイル)フェニルアミノ]プロピオン酸、
例8:2-(4-{2-[3-(2,4-ジフルオロフェニル)-1-ヘプチルウレイド]エチル}フェニルスルファニル)-2-メチルプロピオン酸
である。
【0047】
【表1】

【0048】
これらの結果は、PPAR受容体についての化合物のアフィニティと、より具体的には、本発明の特定の化合物のPPARγサブタイプについての、および、他の化合物のPPARαサブタイプについてのアフィニティ特異性を示す。
【0049】
(実施例2:脂腺の大きさに対するPPAR活性化剤の活性の評価)
本発明による化合物の活性の評価は、4週間にわたる、雌のFuzzyまたはOFAラットの背中の皮膚への毎日の局所的塗布(一日一回、週末を含む)によって行った。9/10週齢の30匹のラットを、6匹のグループに分けた。
【0050】
評価方法は、試験の最初と最後に動物の体重を測定し、表皮の小葉状部分で脂腺の大きさを評価することからなる。
【0051】
ラットを安楽死させ、その後、処置した領域(背中)について、毛をそって脱脂した。その後、8mm生検サンプルを、1M NaBr中でインキュベートした。表皮を分離した後で、脂腺の写真を撮り、その後、Raytest GmbH社によって販売されているTinaソフトウェア(脂腺の領域の定量、任意の領域単位[mm2])version 2.09gを用いて、得られたイメージを分析した。
【0052】
統計分析は、Studentのt検定にしたがって行った(Microsoftによって販売されているXLソフトウェア)。
【0053】
(結果)
アンドロゲン5a-アンドロスタン-17β-オル-3-オン(皮脂産生の刺激因子)を用いたポジティブコントロール、および、PPARγアンタゴニスト化合物1-{2-[(S)-2-{4-[2-(5-メチル-2-フェニルオキサゾール-4-イル)エトキシ]フェニル}-1-(5-プロピル-[1,3,4]オキサジアゾール-2-イル)エチルアミノ]フェニル}-1-フェニルメタノンを用いたネガティブコントロールと比較して、前記の方法による、実施例1のナンバー1から3のPPARγアゴニスト化合物を用いて、4つの実験を行った。
【0054】
コントロールにおいては、ラットは活性成分で処理しなかった:コントロールはアセトン。
【0055】
結果を、相対的な誘導の平均値(「平均RI」)と平均値の標準偏差の値(「SEM」)として表す。
【0056】
studentのt検定(「stat」):NSは有意差なし
p<0.05
**p<0.01
***p<0.001
【0057】
【化1】

【0058】
【化2】

【0059】
【化3】

【0060】
【化4】

【0061】
【化5】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
これらの結果は、ポジティブコントロールと比較して、PPAR-活性化化合物、特に、特異的なPPARγ活性剤が、PPARγアンタゴニストとは対照的に、脂腺の大きさを有意に減少させたことを明確に示している。
【0067】
(実施例3:配合実施例)
本実施例においては、本明細書の化合物に基づく様々な具体的な配合を例示する。
【0068】
A-経口経路
(a) 0.2g錠剤
- 例1の化合物 0.001g
- 澱粉 0.114g
- リン酸二カルシウム 0.020g
- シリカ 0.020g
- ラクトース 0.030g
- タルク 0.010g
- ステアリン酸マグネシウム 0.005g
【0069】
(b) 5mlアンプルの飲用懸濁剤
- 例2の化合物 0.001g
- グリセロール 0.500g
- 70%ソルビトール 0.500g
- ナトリウムサッカリン 0.010g
- パラ-ヒドロキシ安息香酸メチル 0.040g
- 香味料 適量
- 精製水 適量 5ml
【0070】
B-局所経路
(a) 軟膏
- 例6の化合物 0.300g
- 白色ワセリン規格 適量 100g
【0071】
(b) ローション
- 例8の化合物 0.100g
- ポリエチレングリコール(PEG 400) 69.900g
- 95%エタノール 30.000g
【0072】
(f) 非イオン性水中油型クリーム
- 例5の化合物 1.000g
- セチルアルコール 4.000g
- モノステアリン酸グリセリル 2.500g
- ステアリン酸PEG-50 2.500g
- シアバター 9.200g
- プロピレングリコール 2.000g
- パラ-ヒドロキシ安息香酸メチル 0.075g
- パラ-ヒドロキシ安息香酸プロピル 0.075g
- 無菌脱塩水 適量 100g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品組成物における、または、医薬組成物の製造のための、少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用であって、前記PPAR受容体の活性化剤または前記組成物が脂腺の大きさを調節することを意図する使用。
【請求項2】
前記PPAR型受容体の活性化剤または前記組成物が、脂腺による皮脂の産生を阻害することを意図することを特徴とする、請求項1に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用。
【請求項3】
前記PPAR型受容体の活性化剤が、サブタイプPPARα、γまたはδの少なくとも1つについて、500nM以下の、有利には、100nM以下の解離定数Kdappを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用。
【請求項4】
前記PPAR活性化剤が、少なくともサブタイプPPARγについて、500nM以下の、有利には、100nM以下の解離定数Kdappを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用。
【請求項5】
前記PPAR-γ型受容体の活性化剤が特異的であることを特徴とする、請求項4に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用。
【請求項6】
前記組成物が、局所適用に適した形態で実装されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用。
【請求項7】
前記PPAR型受容体の活性化剤を、組成物の総重量に対して、0.001重量%から10重量%の間、好ましくは0.01重量%から1重量%の間の濃度で使用することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用。
【請求項8】
口囲皮膚炎、遺伝性の脂腺の異常増殖などの脂腺の異常増殖、および、内分泌系起源の過剰アンドロゲンなどの内分泌障害と関連した皮脂の過剰産生に関連した病状を治療するための医薬組成物の製造のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤の使用。
【請求項9】
化粧品組成物における、つや消し剤としての、請求項1から7のいずれか一項に記載のPPAR型受容体の少なくとも1つの活性化剤の非治療的使用。
【請求項10】
化粧品組成物における、抗ふけ剤としての、請求項1から7のいずれか一項に記載のPPAR型受容体の少なくとも1つの活性化剤の非治療的使用。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤を含む組成物を、皮膚、粘膜またはケラチン繊維に投与または適用することを特徴とする、脂っぽい皮膚を処理するための美容方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのPPAR型受容体の活性化剤を含む組成物を皮膚、粘膜またはケラチン繊維に投与または適用することを特徴とする、ふけを生じやすい頭皮を予防および/または処理するための美容方法。

【公表番号】特表2007−512386(P2007−512386A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541976(P2006−541976)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003069
【国際公開番号】WO2005/053632
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント・エス・エヌ・セ (117)
【Fターム(参考)】