説明

化粧石鹸組成物

本発明は、化粧石鹸素地、保湿成分、および界面活性剤からなる化粧石鹸組成物に係り、水素添加硬化ヤシ油または硬化パーム核油および遊離脂肪酸からなる化粧石鹸素地、オイルおよび多価アルコール類の液状エモリエントの保湿成分、およびイセチオン酸ココイルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、およびこれらの混合物の界面活性剤からなり、水素添加工程および選択的な遊離脂肪酸を添加して硬度を高めることによって、生産性の低下を発生させず、ヤシ油またはパーム核油の優秀な気泡力と気泡安定性、および洗浄効果の特性を維持しつつ、割れ現象なしに保湿性の向上した化粧石鹸組成物を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧石鹸素地、保湿成分、および界面活性剤からなる化粧石鹸組成物に係り、さらに詳細には、ヤシ脂肪酸若しくはパーム核脂肪酸石鹸分の優秀な気泡力、気泡安定性、および洗浄効果を維持しつつ、水素添加工程および選択的な遊離脂肪酸を添加して硬度を高めることによって、製造時に生産性の低下を防止し、保湿成分および界面活性剤を添加することによって、割れ現象なしに保湿性を向上した化粧石鹸組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、石鹸は、牛脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油などの天然動植物性の油脂やその分解脂肪酸および分別蒸留脂肪酸を使用して、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどで鹸化し、牛脂またはパーム油の鹸化成分とパーム核油またはヤシ油の鹸化成分との混合比率が60から90%および10から40%である石鹸素地を使用して、香料および添加剤を適正量配合し圧出成形して製造される。
【0003】
パーム核油またはヤシ油の鹸化分が高いほど、または炭素数12のラウリン酸石鹸の組成が多いほど気泡の発生が容易になされ、使用上の触感が優秀である。
【0004】
特許文献1では、ヤシ油を蒸留して部分的に鹸化して気泡力を増大させ、特に、冷水でも容易に気泡が発生するように気泡の特性を改善した。また、ヤシ油またはステアリン酸をスーパーファットとして添加し、手の洗浄時にマイルドな効果を与えた。
【0005】
ヤシ油で製造された石鹸は、濃度が低く石鹸の製造時に圧出成形が難しいため、生産性の顕著な低下をもたらし、石鹸素地の水分含量を減少させるか、または高濃度のステアリン酸を多く使用して硬度を改善せねばならないという問題点があった。これを解決するためには、工程上、長時間の石鹸素地の乾燥過程および化粧石鹸の生産時にロールミルを使用して、混合の効率を向上させる過程が必要であるという問題点があった。
【0006】
石鹸にスーパーファットを使用する場合、高密度なクリーム状の気泡の形成を促進し、皮膚への滑らかさおよび軟らかさを増加させる。石鹸にスーパーファットを選択的に使用する場合、硬度の上昇にも効果がある。スーパーファットとして脂肪、油(オイル)およびステアリン酸のような脂肪酸の使用が可能であり、このような内容は、すでに非特許文献1および2に記述されている。
【0007】
一般的な化粧石鹸の製造において、パーム核油およびヤシ油に水酸化ナトリウムを添加して、鹸化工程で生産された石鹸素地のみを単独使用して石鹸を製造する場合、硬度が低く、圧出時の真空状態および成形の冷却条件など機械設備を改善または一部調整するとしても、固形石鹸の製造が難しく、生産効率が低下するという問題点があった。
【0008】
また、このようにして製造された石鹸は、反復使用時に低温溶解度が高いため、石鹸組織が分離して膨らみ柔らかくなる現象が頻繁に発生するという問題点があった。
【0009】
脂肪酸の種類のうち、炭素間二重またはそれ以上の結合のない飽和脂肪酸を鹸化した石鹸素地は、オレイン酸およびリノール酸など石鹸組織に軟性を付与する二重結合を有する脂肪酸がほとんど無いので、使用時に割れ現象が発生するという問題点があった。したがって、ナトリウムイオンの代わりとなるものにカウンターイオン(例えば、カリウムイオンなど)に置き換えて水溶性を向上させ、水分の保有能力を向上させ、乾燥時に水分の過度な蒸発を抑制せねばならず、工程上でも圧出真空状態および成形の条件を改善せねばならないという問題点があった。
【0010】
また、割れ防止剤の使用方法としては、グリセリンなどの多価アルコール類またはトリグリセリド状のオイル類を3%以上過量使用し、石鹸組織の軟性を増して割れ現象を改善する方法があるが、気泡力が減少し、石鹸が柔らかくなる現象が発生するという問題点があった。石鹸素地の水分が13%前後である場合、液状の添加物の使用においても、一般石鹸は、香りを含め5%未満の添加のみが可能であるという問題点があった。
【特許文献1】米国特許第4767560号公報(Colgate−Palmolive社)
【非特許文献1】Thomssen、McCutcheon共著,Soap and Detergents(pp.145〜151),1949年
【非特許文献2】Luis Spitz,Soap Technology For The1990’s(pp217〜218)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記問題点を解決するため、本発明は、一般化粧石鹸と比較して優秀な気泡力、気泡安定性および洗浄効果を維持しつつも、製造時に生産性の低下が発生せず、割れ現象なしに保湿性の向上した化粧石鹸組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の前記目的およびその他の目的は、後述する本発明によって何れも達成されうる。
【0013】
前記目的を達成するため、本発明は、水素添加工程で硬化されたヤシ油若しくはパーム核脂肪酸石鹸分および遊離脂肪酸を含有する化粧石鹸素地75から92重量%、保湿成分5から10重量%、および界面活性剤1から20重量%を含んでなることを特徴とする化粧石鹸組成物を提供する。
【0014】
前記ヤシ脂肪酸若しくはパーム核脂肪酸石鹸分は、炭素数12のラウリン酸の含量が45から60重量%で構成され、二重結合を有する脂肪酸の含量が1から2重量%を超えないことを特徴とする。
【0015】
前記遊離脂肪酸は、パーム脂肪酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0016】
前記保湿成分は、オイルおよび多価アルコール類の液状エモリエントでありうる。
【0017】
前記界面活性剤は、イセチオン酸ココイルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明すれば、次の通りである。
本発明による石鹸素地の組成は、75から92重量%のヤシ油若しくはパーム核油を水素添加硬化により鹸化させることを特徴とする。
【0019】
前記石鹸ヤシ脂肪酸およびパーム核脂肪酸の炭素数12であるラウリン酸の含量は45から60重量%で構成され、オレイン酸およびリノール酸など二重結合を有する脂肪酸の含量は1から2重量%を超えない。
【0020】
本発明によると、ヤシ油およびパーム核油に水素を添加して硬化工程を経た脂肪酸を使用して、オレイン酸およびリノール酸などの炭素間二重結合を有する脂肪酸が、一重結合のステアリン酸に転換され、その結果、脂肪酸の濃度が水素を添加していない場合より高まり、硬度も高まる。
【0021】
これは、ヤシ油およびパーム核油の生産地によって脂肪酸の組成が多少異なるが、ヤシ油は5から8%、パーム核油は13から16%のオレイン酸およびリノール酸などの炭素間二重結合を有する脂肪酸が、一重結合であるステアリン酸に転換される。
【0022】
石鹸素地の製造時、脂肪酸の中和後に、スーパーファットとして牛脂若しくはパーム油を使用するか、または単一脂肪酸としてミリスチン酸若しくはステアリン酸を5から15重量%使用して硬度を高め、高密度のクリーム状の気泡の形成を促進し、皮膚への滑らかさおよび軟らかさを増大させた。
【0023】
5から10重量%の保湿成分およびオイルおよび多価アルコール類の液状エモリエント成分を、イセチオン酸ココイルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、およびこれらの混合物である界面活性剤1から20重量%を混合した。液状の添加剤をクリーム相に転換することにより、コンディショニングプレミックスを製造した。コンディショニングプレミックスを用いる工程による場合と、同量のオイルおよび多価アルコール類の液状エモリエント成分と保湿成分とを直接投入したものと生産効率を比較すると、圧出成形を含む全体的な生産効率が高い。
【0024】
また、本発明は、界面活性剤としてイセチオン酸ココイルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムを使用して刺激が少なく、ナトリウムココエート、パーム核酸ナトリウムなどの脂肪酸カルボン酸塩系列の石鹸と混合して製造した石鹸は、油性汚染の除去に効果的であり、液状のオイルおよび多価アルコール類と混合する時に均一なクリーム相の製造が容易である。
【0025】
このように添加された5から10重量%のオイルおよび多価アルコール類の液状エモリエント成分および保湿成分によって、強い脱脂力および引き締め現象を改善し、保湿効果および洗浄効果に優れた洗浄が可能であるという点が特徴である。
【0026】
以下、下記の実施例を通じて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
【0027】
[実施例1から8および比較例1から3]
下記の表1の組成で、通常の方法により石鹸を製造した。
【0028】
【表1】

【0029】
前記表1による組成比で化粧石鹸を製造するとき、香料、色素および基本添加剤は、通常的な適正量をそれぞれの実施例および比較例において同様に添加して製造した。
【0030】
(実験例1)
気泡力の比較実験
前記実施例および比較例の組成で製造する方法では、通常の方法によって固形化して一般的な製品の形態に製造し、それら固形石鹸の気泡力を比較するためロスマイルス法を使用した。前記石鹸に蒸溜水を添加して0.25%の溶液(無水換算)を製造し、温度を40℃に維持しつつ250mLの体積容器に分取した後、温度が40℃に維持される目盛りシリンダーの90cmの高さから落下させ、250mLの体積容器の石鹸溶液がいずれも落下した直後に気泡の高さを測定して気泡力(mm)を表し、同じ試料に前記の方法を5回適用して最大値と最小値とを除外した3回の平均値を下記表2に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
前記表2に示したように、実施例1から8の硬化ヤシ油またはパーム核油を鹸化した素地に、一般的に気泡生成の阻害となるオイルおよび多価アルコール類を多量配合して石鹸を製造しても、比較例1から3に比べて気泡力が優秀であるということを確認できた。
【0033】
(実験例2)
気泡安定性の比較実験
前記実施例および比較例の組成で製造する方法では、通常の方法によって固形化して一般的な製品の形態に製造し、それら固形石鹸の気泡の安定性を比較するためロスマイルス法を使用した。前記石鹸に蒸溜水を添加して0.25%の溶液(無数換算)を製造し、温度を40℃に維持しつつ250mLの体積容器に分取した後、温度が40℃に維持される目盛りシリンダーの90cmの高さから落下させ、250mLの体積容器の石鹸溶液がいずれも落下した直後に気泡の高さから気泡の初期値(mm)を、3分経過後の気泡の高さから最終値(mm)を測定し、初期値と最終値の差を気泡消滅量で表し、試料に前記の方法を5回適用して最大値と最小値とを除外した3回の平均値を下記の表3に示した。
【0034】
【表3】

【0035】
前記表3に示したように、実施例1から8の硬化ヤシ油またはパーム核油を鹸化した素地にオイルおよび多価アルコール類を多量配合して石鹸を製造しても、比較例1から3に比べて気泡の消滅量が少ないため、気泡安定性に優れるということを確認できた。
【0036】
(実験例3)
割れの比較実験
前記実施例および比較例の組成で製造する方法は、通常の方法により固形化して一般的な製品の形態に製造し、これらの固形石鹸の割れを比較するため、上端部にピンを刺して支持ロッドに固定して30℃の水道水に2時間沈積し、石鹸を完全に浸漬させた。2時間後に固形石鹸を取り出して流れる冷水で軽く洗浄しつつ、石鹸組織から離脱した部分のみを除去した。室温で1時間乾燥して水気を除去した後、前記のような方法を2回反復して30℃の恒温槽で24時間乾燥させ、石鹸表面の間隙の間隔を測定し、5個のサンプルを実験して最大値と最小値とを捨て、3個の平均値を下記の表4の方法で判定して、その結果を下記の表5に示した。
【0037】
【表4】

【0038】
【表5】

【0039】
前記表5に示したように、実施例1から8の硬化ヤシ油またはパーム核油を鹸化した素地にオイルおよび多価アルコール類を多量配合して石鹸組織に軟性を付与した結果、比較例1から3と比較し、割れ現象がほとんど無いということを確認できた。
【0040】
(実験例4)
洗浄効果の実験
前記実施例および比較例の組成で製造する方法は、通常の方法で固形化して一般的な製品の形態に製造し、20〜35歳の女性30人を対象に、これら固形石鹸が汚れおよび油脂を除去する程度を尋ねるアンケートを行い、シンプルモナジック調査(SimpleMonadic Test)方法での品質評価を実施し、洗浄力の結果を5段階評価で示した。
【0041】
【表6】

【0042】
前記表6に示したように、実施例1から8の硬化ヤシ油またはパーム核油を鹸化した素地にオイルおよび多価アルコール類を多量配合して製造した石鹸は、比較例1から3に比べて洗浄力が高く、全般的に4点以上の優秀な点数を獲得し、手および顔の汚染と油気とを除去してさっぱりした洗浄が可能であるということが分かった。
【0043】
(実験例5)
皮膚保湿効果の実験
前記実施例の組成で製造する方法は、通常の方法で固形化して一般的な製品の形態に製造し、これら固形石鹸の保湿力を測定するため、恒温恒湿室で少なくとも10分以上皮膚を安定化させた後、前腕の測定部位に印をつけ、SkinSurface Hygrometer (YAYOI Co.,モデル名:Skincon−200)とCorneometer (CKElectronic GmbH,モデル名:CM 825)で水分量を測定した。その後、水気のある手で固形石鹸を均一に20回擦り、各部位に20回ずつ擦った後、20秒間水ですすいで軽く水気を拭い取り、恒温恒湿室で15分経過後に再び水分量を測定した。このとき、各部位を5回以上測定し、最大値と最小値とは捨て、3回平均値を求めて固形石鹸の処理前後の水分量を測定し、水分変化量を計算した。
【0044】
【表7】

【0045】
前記表7に示したように、実施例1から8の硬化ヤシ油またはパーム核油を鹸化した素地にオイルおよび多価アルコール類を多量配合して製造した石鹸は、比較例1から3に比べて洗浄後の皮膚水分の回復が速く、かつ優秀なスキンケア効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明による化粧石鹸組成物は、ヤシ油またはパーム核油を使用して優秀な気泡力、気泡安定性および洗浄効果を維持し、脂肪酸に水素を添加して硬化し、かつ選択的な遊離脂肪酸を添加して硬度の上昇を誘導して、製造時に生産性の低下が発生せず、割れ現象なしに保湿性を向上した有用な発明である。
【0047】
本発明は、前述された具体例を中心に詳細に説明されたが、当業者ならば、本発明の範囲および技術思想の範囲内で多様な変形および修正が可能であるということが明白に分かり、このような変形および修正は、本特許請求の範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素添加工程で硬化されたヤシ脂肪酸若しくはパーム核脂肪酸石鹸分および遊離脂肪酸を含有する化粧石鹸素地75から92重量%、保湿成分5から10重量%、および界面活性剤1から20重量%を含んでなることを特徴とする化粧石鹸組成物。
【請求項2】
前記ヤシ脂肪酸若しくはパーム核脂肪酸石鹸分は、炭素数12であるラウリン酸の含量が45から60重量%で構成され、二重結合を有する脂肪酸の含量が1から2重量%を超えないことを特徴とする請求項1に記載の化粧石鹸組成物。
【請求項3】
前記遊離脂肪酸は、パーム脂肪酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化粧石鹸組成物。
【請求項4】
前記保湿成分は、オイルおよび多価アルコール類の液状エモリエントであることを特徴とする請求項1に記載の化粧石鹸組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤は、イセチオン酸ココイルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の化粧石鹸組成物。

【公表番号】特表2007−502884(P2007−502884A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523783(P2006−523783)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002063
【国際公開番号】WO2005/017087
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(506058912)
【Fターム(参考)】