医用運動解析装置、医用運動解析方法および医用運動解析プログラム
【課題】 心臓病の診断に有用な心臓の収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの運動成分を解析できるようにする。
【解決手段】 主成分分析部104は、速度ベクトル取得部103で得られる心臓の輪郭上の追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して、追跡点の運動の第1成分方向および第2成分方向を求めて、それぞれ第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106に送る。第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106は、それぞれ速度ベクトル取得部103で得られる追跡点の速度ベクトルデータの第1成分方向の運動成分および第2成分方向の運動成分を算出する。速度ベクトルの第1成分方向の運動成分および第2成分方向の運動成分は、表示部107において表示される。
【解決手段】 主成分分析部104は、速度ベクトル取得部103で得られる心臓の輪郭上の追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して、追跡点の運動の第1成分方向および第2成分方向を求めて、それぞれ第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106に送る。第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106は、それぞれ速度ベクトル取得部103で得られる追跡点の速度ベクトルデータの第1成分方向の運動成分および第2成分方向の運動成分を算出する。速度ベクトルの第1成分方向の運動成分および第2成分方向の運動成分は、表示部107において表示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用運動解析装置、医用運動解析方法および医用運動解析プログラムに係わり、特に心臓の収縮/拡張方向の運動成分とともに、ねじれや回転などの、心臓の収縮/拡張方向とは異なる方向の運動成分が得られるようにした医用運動解析装置、医用運動解析方法および医用運動解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、心筋梗塞や狭心症のような心臓病の早期診断のため、心臓を被写体とする時系列の画像データから心臓の運動を正確に測定し、解析する医用運動解析装置が知らされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、心臓の心室壁の典型的な運動は、心臓の収縮/拡張方向の運動と、ねじれや回転などによる(すなわち、収縮/拡張方向とは異なる方向の)運動とに分けて考えることができる。心臓の収縮/拡張方向の運動は、心筋の収縮によって成し遂げられる運動であるため、その運動に異常が見られる場合、例えば、心筋梗塞などの早期診断につながることも多い。さらに、一般に、心臓の収縮/拡張方向の運動は、ねじれや回転などによる運動よりも大きいため、従来の医用運動解析装置では、この心臓の収縮/拡張方向の運動成分を測定し、解析することに主眼が置かれていた(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
しかし、心臓の部位によっては、心臓の運動の異常が、心臓の収縮/拡張方向の運動よりも、ねじれや回転などによる運動に鋭敏に表れる場合がある。そのため、このような部位では、心臓のねじれや回転などの、収縮/拡張とは異なる方向の運動成分を検出したほうが、診断にとって有用な場合もあるが、上述した従来の医用運動解析装置では、心臓の収縮/拡張方向の運動とともに、このようなねじれや回転などによる運動を測定、解析することはできなかった。
【特許文献1】特開平10−99334号公報(4頁、図2)
【特許文献2】特開2003−265480公報(3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の医用運動解析装置では、心臓の収縮拡張方向の運動成分とともに、ねじれや回転などの、心臓の収縮/拡張方向とは異なる方向の運動成分を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、心臓の収縮/拡張方向の運動成分とともに、ねじれや回転などの、心臓の収縮/拡張方向以外の診断上有用な運動成分を得ることを可能とする医用運動解析装置、医用運動解析方法および医用運動解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の医用運動解析装置は、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の医用運動解析方法は、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析方法であって、前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得ステップと、前記追跡点座標取得ステップで得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得ステップと、前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出ステップと、前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の医用運動解析プログラムは、コンピュータに、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析させる医用運動解析プログラムであって、前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得機能と、前記追跡点座標取得機能で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得機能と、前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出機能と、前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出機能と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、心臓の収縮/拡張方向の運動成分とともに、ねじれや回転などの、心臓の収縮/拡張方向とは異なる方向の運動成分を測定できるので、診断上より有用な運動成分を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる医用運動解析装置を示すブロック図である。
【0013】
この第1の実施形態に係わる医用運動解析装置は、心臓を被写体とした時系列の画像データを蓄積する画像データ蓄積部101と、画像データ蓄積部101に蓄積された時系列の画像データから、心臓上の追跡点の座標の時系列データを取得する追跡点座標取得部102と、追跡点座標取得部102で取得された追跡点の座標の時系列データから、時系列運動情報として、追跡点の速度ベクトルの時系列データを求める速度ベクトル取得部103と、速度ベクトル取得部103で取得された追跡点の速度ベクトルの時系列データを主成分分析する主成分分析部104と、速度ベクトル取得部103で得られる追跡点の速度ベクトルから、主成分分析部104で得られる第1成分方向(主成分方向)の運動成分を、心臓の収縮/拡張方向の運動成分として算出する第1運動成分算出部105と、速度ベクトル取得部103で得られる追跡点の速度ベクトルから、主成分分析部104で得られる第2成分方向の運動成分を、心臓のねじれや回転などの方向の運動成分として算出する第2運動成分算出部106と、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106で得られる運動成分を表示する表示部107とを備えている。
【0014】
次に図1および図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係わる医用運動解析装置の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係わる医用運動解析装置の動作を示すフローチャートである。
【0015】
画像データ蓄積部101には、心臓を被写体とした時系列の画像データが蓄積されている。ここで、画像データ蓄積部101に蓄積される画像データは、例えば、超音波診断装置、MRI、CTなどの手段によって得ることができる。また、画像データ蓄積部101としては、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RAM,DVD−RWなどを適用できる。
【0016】
この画像データ蓄積部101に蓄積された時系列の画像データは、追跡点座標取得部102に送られる。
【0017】
追跡点座標取得部102では、画像データ蓄積部101より送られた画像に表れた追跡点を取得する(ステップS101)。ここで追跡点とは、画像に表れた心臓上の追跡対象となる点であり、例えば、文献「西浦ほか、“部分形状拘束輪郭モデルによる超音波心壁動的輪郭抽出法”、電子情報通信学会論文誌(D−II)、vol.J83−D−II、no.1、pp.183−190、Jan.2000」に開示されている方法を用いて、心臓の輪郭を抽出し、その輪郭から心尖部や弁輪部といった輪郭上の特徴点を検出して、これらの点を追跡点とすればよい。また、心臓の輪郭を抽出することなく、マウスなどを用いて、各時刻の画像ごとに手動で追跡点を設定していってもよい。
【0018】
なお、追跡点は必ずしも一つである必要はなく、例えば、上述した方法を用いて抽出した心臓の輪郭上の複数の特徴点を追跡点としてもよい。ただし、以下の説明では、簡単のため、追跡点は一つであるとして説明する。
【0019】
追跡点は、上述した方法により、画像データ蓄積部101に蓄積された時系列の画像データから時刻ごとに取得される。このようにして取得された時刻tの追跡点の座標は、2次元座標(xt,yt)で表される。この追跡点の座標(xt,yt)は、次に、速度ベクトル取得部103に送られる。
【0020】
速度ベクトル取得部103では、追跡点座標取得部102より送られた追跡点の座標(xt,yt)の時系列データから追跡点の速度ベクトルの時系列データを算出する(ステップS102)。
【0021】
ここで、時刻tの追跡点の速度ベクトル(vxt,vyt)は、例えば、(1)式によって求めることができる。
【数1】
ここでΔtは、時刻tと時刻t+1の時間間隔である。
【0022】
なお、(1)式では、連続する2つの時刻の追跡点の座標から速度ベクトル(vxt,vyt)を求めたが、(2)式に示すように、適当な時間間隔の追跡点の座標から速度ベクトル(vxf,vyf)を求めてもよい。
【数2】
ここでΔt´は、時刻tと時刻t+iの時間間隔である。
【0023】
次に、速度ベクトル取得部103で得られた追跡点の速度ベクトル(vxt,vyt)の時系列データは、主成分分析部104、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106に送られる。
【0024】
主成分分析部104は、速度ベクトル取得部103より送られた追跡点の速度ベクトル(vxt,vyt)の時系列データを主成分分析して、追跡点の運動の第1成分方向および第2成分方向を求める(ステップS103)。
【0025】
ここで、速度ベクトル(vxt,vyt)の時系列データを主成分分析して得られる追跡点の運動の第1成分方向および第2成分方向は、(3)式で定まる共分散行列Cの固有ベクトルを求めることにより得ることができる。
【数3】
ここで、Vtは、速度ベクトル(vxt,vyt)を表し、Tはベクトルの転置を表す。
【0026】
すなわち、共分散行列Cの固有ベクトルp1およびp2を(4)式のように定めると、p1が追跡点の運動の第1成分方向を表す単位ベクトル(以下、第1成分ベクトルと呼ぶ)、p2が第2成分方向を表す単位ベクトル(以下、第2成分ベクトルと呼ぶ)となる。
【数4】
なお、(4)式において、λ1およびλ2は、それぞれ固有ベクトルp1およびp2に対応する固有値である。
【0027】
ここで、時系列ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分方向とは、時系列ベクトルデータの分散が最大となる方向を意味する。時系列ベクトルデータとして、心臓の追跡点の速度ベクトルデータを用いた場合には、速度ベクトルデータの分散が最大となる方向とは、追跡点の速度ベクトルの変化が最大となる方向となる。したがって、時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分方向とは、多くの場合、心臓の収縮/拡張方向であると考えることができる。
【0028】
一方、第2成分方向は、第1成分方向に直交する方向を表すため、時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第2成分方向とは、多くの場合、収縮/拡張方向に対して直交する、ねじれや回転などの運動方向であると考えることができる。
【0029】
したがって、速度ベクトル取得部103で得られる速度ベクトルの時系列データの第1成分方向および第2成分方向の運動成分を算出して表示すれば、追跡点の速度ベクトルの収縮/拡張方向の運動成分とねじれや回転などの方向の運動成分を同時に把握することが可能になる。
【0030】
次に、主成分分析部104は、速度ベクトルの第1成分ベクトルp1を、第1運動成分算出部105に送る。また、同様に、主成分分析部104は、速度ベクトルの第2成分ベクトルp2を第2運動成分算出部106に送る。
【0031】
第1運動成分算出部105は、主成分分析部104から送られる速度ベクトルの第1成分ベクトルp1を用いて、速度ベクトル取得部103より送られる速度ベクトルVtの第1成分方向の運動成分vMtを算出する(ステップS104)。
【0032】
速度ベクトルVtの第1成分方向の運動成分vMtは、時刻tごとに(5)式に基づいて、速度ベクトルVtと第1成分ベクトルp1との内積をとることによって求めることができる。
【数5】
(5)式により求まる速度ベクトルの第1成分方向の運動成分vMtは、次に、時系列データとして表示部107に送られる。
【0033】
第2運動成分算出部106は、主成分分析部104から送られる速度ベクトルの第2成分ベクトルp2を用いて、速度ベクトル取得部103より送られる速度ベクトルVtの第2成分方向の運動成分vStを算出する(ステップS105)。
【0034】
速度ベクトルVtの第2成分方向の運動成分vStは、時刻tごとに(6)式に基づいて、速度ベクトルVtと第2成分ベクトルp2との内積をとることによって求めることができる。
【数6】
(6)式により求まる速度ベクトルの第2成分方向の運動成分vStは、次に、時系列データとして表示部107に送られる。
【0035】
表示部107は、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106からそれぞれ送られる、追跡点の速度ベクトルの第1成分方向の運動成分vMtおよび第2成分方向の運動成分vStを表示する(ステップS106)。表示部107には、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどを適用できる。
【0036】
表示部107における各運動成分の表示は、例えば、図3に示すように、心臓の画像上に追跡点の第1成分方向および第2成分方向を表示するとともに、各運動成分をグラフとして表示すればよい。
【0037】
このように、追跡点の第1成分方向および第2成分方向の運動成分を同時にグラフとして表示することによって、追跡点における心臓の収縮/拡張方向の運動とねじれや回転などの方向の運動の様子を同時に観察することができる。
【0038】
このように本発明の第1の実施形態によれば、心臓を被写体とした画像データから追跡点の速度ベクトルデータを取得し、この速度ベクトルデータを主成分分析して、その第1成分方向の運動成分と第2成分方向の運動成分を算出して表示することにより、心臓の収縮/拡張方向の運動成分とねじれや回転などの運動成分を同時に把握でき、診断上より有用な運動成分を得ることが可能となる。
【0039】
なお、上述した実施形態では、ステップS104において、第1運動成分算出部105で速度ベクトルVtの第1成分方向の運動成分vMtを算出した後に、ステップS105において、第2運動成分算出部106で速度ベクトルVtの第2成分方向の運動成分vStを求めていたが、各方向の運動成分を算出する順序を逆にすることも可能である。すなわち、図2において、ステップS104とステップS105を入れ替え、まず第2運動成分算出部106で速度ベクトルVtの第2成分方向の運動成分vStを算出した後に、第1運動成分算出部105で速度ベクトルVtの第1成分方向の運動成分vMtを算出してもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、時系列運動情報を追跡点の速度ベクトルの時系列データとしたが、追跡点の変位ベクトルの時系列データを時系列運動情報とすることもできる。ここで、追跡点の変位ベクトルDt=(dxt,dyt)は、追跡点の座標の時系列データから、例えば、時刻tと時刻t+iの間の追跡点座標の変位として、(7)式を用いて求めることができる。
【数7】
(7)式で求まる追跡点の変位ベクトルDtを上述した追跡点の速度ベクトルVtの代わりに用いて主成分分析を行い、追跡点の変位ベクトルDtの第1成分方向および第2成分方向の運動成分を求めれば、追跡点の収縮/拡張方向の運動成分と、ねじれや回転などの運動成分を同時に求めることができる。
【0041】
また上述した実施形態では、心臓の収縮/拡張方向を、追跡点の速度ベクトルの時系列データを主成分分析して得られる第1成分方向であるとしたが、追跡点の座標の時系列データを主成分分析して得られる第1成分方向を、心臓の収縮/拡張方向とすることも可能である。すなわち、追跡点の座標の時系列データのうち、その分散が最大となる方向とは、追跡点の座標の変化が最大となる方向と考えることができるので、この方向を心臓の収縮/拡張方向であると考えることができる。そこで、主成分分析部104において、追跡点の座標(xt,yt)を速度ベクトル(vxt,vyt)の代わりに用いて、(3)式で定まる共分散行列Cの固有ベクトルを求めれば、その第1成分方向が心臓の収縮/拡張方向、第2成分方向がねじれや回転などの運動方向となる。このようにして求めた第1成分方向および第2成分方向を表す単位ベクトルp1およびp2を用いて第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106において、収縮/拡張方向およびねじれや回転などの運動方向の運動成分を算出し、表示部107に表示させれば、追跡点におけるこれらの運動成分を同時に把握することが可能になる。
【0042】
また、上述した実施形態では、追跡点の座標は2次元としたが、例えば、超音波診断装置、MRI、CTなどの手段によって得られた画像から、追跡点座標取得部102において追跡点の3次元座標を求め、これを用いて速度ベクトル取得部103で速度ベクトルを求めることも可能である。
【0043】
なお、上述した実施形態では、表示部107において、図3に示すように、速度ベクトルVtの第1成分方向および第2成分方向の運動成分vMt、vStを、心臓の画像上に追跡点の第1成分方向と第2成分方向を表示するとともに、グラフで表示していた。上述したように、追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分方向とは、多くの場合、心臓の収縮/拡張方向であると考えることができるが、心臓の部位によっては、心臓の収縮/拡張方向の速度ベクトルの変化よりも、心臓のねじれや回転などの運動方向の速度ベクトルの変化の方が大きい場合もある。このような部位では、追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分方向が心臓のねじれや回転などの運動方向を表し、第2成分方向が心臓の収縮/拡張方向を表すことになる。
【0044】
そこで、主成分分析部104において、追跡点の速度ベクトルの第1成分ベクトルp1および第2成分ベクトルp2を求めたのちに、別途、それぞれのベクトルが表す運動方向が心臓の収縮/拡張方向であるか、ねじれや回転などの運動方向であるかを検出して、図4のように、表示部107において、追跡点の速度ベクトルの運動成分を心臓の収縮/拡張およびねじれや回転などと関連付けて表示するとよい。
【0045】
このように表示することによって、心臓の部位によらず、心臓の収縮/拡張方向およびねじれや回転などの運動方向の運動成分を容易に把握することが可能になる。
【0046】
なお、追跡点の速度ベクトルの第1成分ベクトルおよび第2成分ベクトルが表す運動方向が心臓の収縮/拡張方向であるか、ねじれや回転などの運動方向であるかの検出は、例えば、図5(a)に示すように、あらかじめ心臓の中心点を定めておき、この中心点に向かう方向のベクトルを心臓の収縮/拡張方向と定めればよい。また図5b)および(c)に、この方法によって各ベクトルが表す運動方向が心臓の収縮/拡張方向であるか、ねじれや回転などの運動方向であるかを検出した例を表す。図5(b)には、追跡点の速度ベクトルの変化が最大となる方向が心臓の収縮/拡張方向であり、追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分ベクトルの方向が心臓の収縮/拡張方向となる例を示している。一方、図5(c)には、追跡点の速度ベクトルの変化が最大となる方向が心臓のねじれや回転などの運動方向であり、追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分ベクトルの方向が心臓のねじれや回転などの運動方向となる例を示している。
【0047】
また、上述した実施形態では、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106で得られる追跡点の速度ベクトルの第1成分方向の運動成分vMtおよび第2成分方向の運動成分vStを表示部107に表示しているが、これらのデータを表示部107に表示することなく、別途記憶媒体などに記憶しておき、別のデータ処理装置あるいはデータ処理ソフトウェアなどを用いて解析できるようにすることも可能である。
【0048】
また、上述した実施形態では、図3に示すように、追跡点の速度ベクトルの第1成分方向の運動成分vMtおよび第2成分方向の運動成分vStを、表示部107に同時にグラフとして表示しているが、別途、表示を切り替える手段を設けて、これらの運動成分を個別に表示部107に表示できるようにすることも可能である。このようにすることで、心臓の収縮/拡張方向の運動と、ねじれや回転などの方向の運動を個別に把握することができるようになる。
【0049】
なお、この医用運動解析装置は、例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用いることでも実現することが可能である。すなわち、追跡点座標取得部102、速度ベクトル取得部103、主成分分析部104、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106は、上記のコンピュータ装置に搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することができる。このとき、医用運動解析装置は、上記のプログラムをコンピュータ装置にあらかじめインストールすることで実現してもよいし、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶して、あるいはネットワークを介して上記のプログラムを配布して、このプログラムをコンピュータ装置に適宜インストールすることで実現してもよい。また、画像データ蓄積部101は、上記のコンピュータ装置に内蔵あるいは外付けされたメモリ、ハードディスクもしくはCD−R、CD−RW、DVD−RAM、DVD−Rなどの記憶媒体を適宜利用して実現することができる。また、表示部107は、上記のコンピュータ装置に内臓あるいは外付けされたディスプレイなどの表示装置を適宜利用して実現することができる。
【実施例2】
【0050】
実施例1では、追跡点の速度ベクトルの時系列データを主成分分析し、その第1成分方向を心臓の収縮/拡張方向、第2成分方向を心臓のねじれや回転などの運動方向であるとした。
【0051】
実施例2では、まず、心臓の輪郭線を抽出し、その輪郭線の法線方向を心臓の収縮/拡張の運動方向、輪郭線の接線方向を心臓のねじれや回転などの運動方向として、これらの方向の追跡点の運動成分を求める方法について説明する。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施形態に係わる医用運動解析装置を示すブロック図である。
【0053】
この第2の実施形態に係わる医用運動解析装置は、心臓を被写体とした時系列の画像データを蓄積する画像データ蓄積部201と、画像データ蓄積部201に蓄積された時系列の画像データから、心臓上の追跡点の座標の時系列データを取得する追跡点座標取得部202と、追跡点座標取得部202で取得された追跡点の座標の時系列データから、時系列運動情報として追跡点の速度ベクトルの時系列データを求める速度ベクトル取得部203と、画像データ蓄積部201に蓄積された時系列の画像データから、心臓の輪郭線を抽出する輪郭抽出部204と、輪郭抽出部204で抽出された心臓の輪郭線から、追跡点における輪郭線に対する法線方向および接線方向の運動方向を取得する運動方向取得部205と、速度ベクトル取得部203で得られる追跡点の速度ベクトルから、運動方向取得部205で得られる輪郭線に対する法線方向の運動成分を、心臓の収縮/拡張方向の運動成分として算出する第1運動成分算出部206と、速度ベクトル取得部203で得られる追跡点の速度ベクトルから、運動方向取得部205で得られる輪郭線に対する接線方向の運動成分を、心臓のねじれや回転などの方向の運動成分として算出する第2運動成分算出部207と、第1運動成分算出部206および第2運動成分算出部207で得られる運動成分を表示する表示部208とを備えている。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態に係わる医用運動解析装置の動作について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の主成分分析部104の代わりに、輪郭抽出部104および運動方向取得部105を備える点が異なるのみである。したがって、以下では、第1の実施形態と共通の動作を行う部分(画像データ蓄積部201、追跡点座標取得部202、速度ベクトル算出部203)については、説明を省略する。
【0055】
輪郭抽出部204は、画像データ蓄積部201に蓄積された画像データから、心臓の輪郭線を抽出する。心臓の輪郭線を抽出する方法としては、例えば、前述した文献「西浦ほか、“部分形状拘束輪郭モデルによる超音波心壁動的輪郭抽出法”、電子情報通信学会論文誌(D−II)、vol.J83−D−II、no.1、pp.183−190、Jan.2000」に開示されている方法を用いることができる。また、別途マウスやキーボードなど、手動で輪郭線をトレースできる装置を設けて、輪郭線を手動で設定できるようにしてもよい。
【0056】
ここで、本実施形態では、輪郭線の抽出は、画像データ蓄積部201に蓄積された時系列画像データのうち、心臓拡張末期と収縮末期の画像データについて行うものとする。
【0057】
次に、輪郭抽出部204は、抽出された心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線を、運動方向取得部205に送る。
【0058】
運動方向取得部205は、輪郭抽出部204から送られた心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線から、追跡点における輪郭線に対する法線方向および接線方向の運動成分を取得する。ここでは、輪郭線の法線方向および接線方向とは、図7に示すような、心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線から得られるセンターライン上の点における、センターラインに対する法線方向および接線方向であるとする。
【0059】
そこで、運動方向取得部205は、まず輪郭抽出部204から送られた心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線から、図7に示すような、これらの輪郭線のセンターラインを求める。
【0060】
次に、運動方向取得部205は、追跡点座標取得部202で得られた追跡点座標の時系列データから、センターライン上に存在する座標を探索する。なお、追跡点座標取得部202で得られた追跡点座標の中に、センターライン上に存在する座標が存在しなければ、運動方向取得部205は、追跡点座標にもっとも近いセンターライン上の点を探索する。ここで、追跡点座標にもっとも近いセンターライン上の点(xc,yc)は、時刻tの追跡点座標を(xt,yt)とすると、例えば、(8)式を満たす点(xc,yc)として求めることができる。
【数8】
ここで、図8に示すように、センターライン上の各点のセンターラインに対する法線方向の運動は、心臓の収縮/拡張方向の運動であると考えることができる。そこで、運動方向取得部205において、図9に示すように、センターライン上の点(xc,yc)について、センターラインの法線方向と接線方向の単位ベクトルを求め、これらの方向の追跡点の運動成分を求めれば、近似的に追跡点の収縮/拡張方向の運動成分とねじれや回転など方向の運動成分を求めることが可能になる。
【0061】
センターライン上の点(xc,yc)の法線方向と接線方向の単位ベクトルr1およびr2は、例えば、図10に示すように、センターライン上の点(xc,yc)から、あらかじめ定めた所定の距離にあるセンターライン上の別の点(xc1,yc1)および(xc2,yc2)から、(9)式によって求めることができる。
【数9】
運動方向取得部205は、このようにして求めた心臓の輪郭線の法線方向を表す単位ベクトルr1を第1運動成分算出部206に送り、心臓の輪郭線の接線方向を表す単位ベクトルr2を第2運動成分算出部207に送る。
【0062】
第1運動成分算出部206は、運動方向取得部205から送られる心臓の輪郭線に対して法線方向の単位ベクトルr1を用いて、速度ベクトル取得部203より送られる速度ベクトルVtの心臓の輪郭線に対する法線方向の運動成分vMtを算出する。
【0063】
心臓の輪郭線に対する法線方向の運動成分vMtは、時刻tごとに、(10)式に基づいて、速度ベクトルVtと単位ベクトルr1との内積をとることによって求めることができる。
【数10】
同様に、第2運動成分算出部207は、運動方向取得部205から送られる心臓の輪郭線に対して接線方向の単位ベクトルr2を用いて、速度ベクトル取得部203より送られる速度ベクトルVtの心臓の輪郭線に対して接線方向の運動成分vStを算出する。
【0064】
心臓の輪郭線に対する接線方向の運動成分vStは、時刻tごとに(11)式に基づいて、速度ベクトルVtと単位ベクトルr2との内積をとることによって求めることができる。
【数11】
(10)式および(11)式で求められた追跡点の心臓の輪郭線に対する法線方向の運動成分vMtおよび接線方向の運動成分vStは、次に、表示部208において表示される。この表示を確認することにより、心臓の収縮/拡張方向の運動成分と、ねじれや回転などの運動成分を同時に把握することが可能になる。
【0065】
このように本発明の第2の実施形態によれば、心臓を被写体とした画像データから追跡点の速度ベクトルデータを取得し、この速度ベクトルデータの心臓の輪郭線に対する法線方向の運動成分と、接線方向の運動成分を算出して表示することにより、心臓の収縮/拡張方向の運動成分と、ねじれや回転などの運動成分を同時に把握でき、診断上より有用な運動成分を得ることが可能となる。
【0066】
なお、上述した実施の形態では、心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線から定まるセンターラインの法線方向および接線方向を、それぞれ心臓の輪郭線に対する法線方向および接線方向としたが、画像データ蓄積部201に蓄積された時系列画像データから時刻ごとに心臓の輪郭線を抽出し、各時刻の輪郭線から法線方向および接線方向を取得することも可能である。この場合、各時刻で抽出された輪郭線上の点のうち、その時刻の追跡点の座標と最も近い点を検出し、その点における輪郭線に対する法線方向および接線方向を、それぞれ追跡点の収縮/拡張方向およびねじれや回転などの運動方向とすればよい。
【実施例3】
【0067】
実施例1では、追跡点の速度ベクトルの時系列データを主成分分析し、その第1成分方向を心臓の収縮/拡張方向であるとした。また、実施例2では、心臓の輪郭線を抽出し、その輪郭線の法線方向を心臓の収縮/拡張方向であるとした。
【0068】
実施例3では、手動で設定された心臓の収縮/拡張方向に基づいて、追跡点の運動情報の収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの方向の運動成分を算出する方法について説明する。
【0069】
図11は、本発明の第3の実施形態に係わる医用運動解析装置を示すブロック図である。
【0070】
この第3の実施形態に係わる医用運動解析装置は、心臓を被写体とした時系列の画像データを蓄積する画像データ蓄積部301と、画像データ蓄積部301に蓄積された時系列の画像データから、心臓上の追跡点の座標の時系列データを取得する追跡点座標取得部302と、追跡点座標取得部302で取得された追跡点の座標の時系列データから、時系列運動情報として追跡点の速度ベクトルの時系列データを求める速度ベクトル取得部303と、追跡点における心臓の収縮/拡張方向を設定する方向設定部304と、速度ベクトル取得部303で得られる追跡点の速度ベクトルから、方向設定部304で設定される収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1運動成分算出部305と、速度ベクトル取得部303で得られる追跡点の速度ベクトルから、方向設定部304で設定される収縮/拡張方向と垂直な方向の運動成分を算出する第2運動成分算出部306と、第1運動成分算出部305および第2運動成分算出部306で得られる運動成分を表示する表示部307とを備えている。
【0071】
次に、本発明の第3の実施形態に係わる医用運動解析装置の動作について説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態の主成分分析部104の代わりに、追跡点における心臓の収縮/拡張方向を設定する方向設定部304を備える点が異なるのみである。したがって、以下では、第1の実施形態と共通の動作を行う部分(画像データ蓄積部301、追跡点座標取得部302、速度ベクトル算出部303)については、説明を省略する。
【0072】
方向設定部304では、手動によって追跡点の収縮/拡張方向が設定される。方向設定部304における方向の設定は、図12に示すように、例えば心臓を表示したディスプレイ上で、ユーザがマウスやキーボードなどによって、心臓の収縮/拡張方向であると考えられる方向に線分を描くことによって行うことができる。
【0073】
方向設定部304は、このようにして描かれた線分から、心臓の収縮/拡張方向を示す単位ベクトルm1を算出する。心臓の収縮/拡張方向を示す単位ベクトルm1は、例えば、図13のように、ユーザによって描かれた線分上の2点(x1,y1)および(x2,y2)から、(12)式によって求めることができる。
【数12】
さらに方向設定部304は、上述した線分上の2点(x1,y1)および(x2,y2)から、(13)式によって、心臓の収縮/拡張方向と垂直な方向、すなわち、ねじれや回転などの運動方向の単位ベクトルm2を求める。
【数13】
このようにして方向設定部304において求められた心臓の収縮/拡張方向の単位ベクトルm1および心臓の収縮/拡張方向と垂直な方向の単位ベクトルm2は、それぞれ第1運動成分算出部305および第2運動成分算出部306に送られる。
【0074】
第1運動成分算出部305および第2運動成分算出部306では、方向設定部304から送られた単位ベクトルm1およびm2を用いて、それぞれ、速度ベクトル取得部303から送られる追跡点の速度ベクトルの収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの方向の運動成分を算出する。
【0075】
追跡点の速度ベクトルの収縮/拡張方向の運動成分は、上述したように、追跡点の速度ベクトルと心臓の収縮/拡張方向の単位ベクトルm1との内積を求めることによって算出することができる。また、追跡点の速度ベクトルのねじれや回転などの方向の運動成分も、同様に、追跡点の速度ベクトルと心臓のねじれや回転などの方向の単位ベクトルm2との内積を求めることによって算出することができる。
【0076】
このようにして算出された収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの方向の運動成分は、表示部307において表示される。
【0077】
このように本発明の第3の実施形態によれば、心臓の収縮/拡張方向の設定を手動で行って、心臓の収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの運動成分を算出することで、診断上より有用な運動成分を得ることが可能となる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる医用運動解析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明の第1の実施形態に係わる運動成分の表示方法の一例を示す図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係わる運動成分の表示方法の一例を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係わる追跡点の運動成分と運動方向の関係を説明するための図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係わる医用運動解析装置の構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係わる心臓の輪郭線(センターライン)を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係わる心臓の輪郭線の法線方向を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係わる心臓の輪郭線の法線方向および接線方向を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係わる法線方向および接線方向の単位ベクトルの算出方法を示す図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係わる医用運動解析装置の構成を示すブロック図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係わる心臓の収縮/拡張方向の設定方法を示す図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係わる法線方向および接線方向の単位ベクトルの算出方法を示す図。
【符号の説明】
【0080】
101、201、301・・・画像データ蓄積部
102、202、302・・・追跡点座標取得部
103、203、303・・・速度ベクトル取得部
104・・・主成分分析部
105、206、305・・・第1運動成分算出部
106、207、306・・・第2運動成分算出部
107、208、307・・・表示部
205・・・輪郭抽出部
206・・・運動方向取得部
304・・・方向設定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用運動解析装置、医用運動解析方法および医用運動解析プログラムに係わり、特に心臓の収縮/拡張方向の運動成分とともに、ねじれや回転などの、心臓の収縮/拡張方向とは異なる方向の運動成分が得られるようにした医用運動解析装置、医用運動解析方法および医用運動解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、心筋梗塞や狭心症のような心臓病の早期診断のため、心臓を被写体とする時系列の画像データから心臓の運動を正確に測定し、解析する医用運動解析装置が知らされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ここで、心臓の心室壁の典型的な運動は、心臓の収縮/拡張方向の運動と、ねじれや回転などによる(すなわち、収縮/拡張方向とは異なる方向の)運動とに分けて考えることができる。心臓の収縮/拡張方向の運動は、心筋の収縮によって成し遂げられる運動であるため、その運動に異常が見られる場合、例えば、心筋梗塞などの早期診断につながることも多い。さらに、一般に、心臓の収縮/拡張方向の運動は、ねじれや回転などによる運動よりも大きいため、従来の医用運動解析装置では、この心臓の収縮/拡張方向の運動成分を測定し、解析することに主眼が置かれていた(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
しかし、心臓の部位によっては、心臓の運動の異常が、心臓の収縮/拡張方向の運動よりも、ねじれや回転などによる運動に鋭敏に表れる場合がある。そのため、このような部位では、心臓のねじれや回転などの、収縮/拡張とは異なる方向の運動成分を検出したほうが、診断にとって有用な場合もあるが、上述した従来の医用運動解析装置では、心臓の収縮/拡張方向の運動とともに、このようなねじれや回転などによる運動を測定、解析することはできなかった。
【特許文献1】特開平10−99334号公報(4頁、図2)
【特許文献2】特開2003−265480公報(3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の医用運動解析装置では、心臓の収縮拡張方向の運動成分とともに、ねじれや回転などの、心臓の収縮/拡張方向とは異なる方向の運動成分を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、心臓の収縮/拡張方向の運動成分とともに、ねじれや回転などの、心臓の収縮/拡張方向以外の診断上有用な運動成分を得ることを可能とする医用運動解析装置、医用運動解析方法および医用運動解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の医用運動解析装置は、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の医用運動解析方法は、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析方法であって、前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得ステップと、前記追跡点座標取得ステップで得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得ステップと、前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出ステップと、前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の医用運動解析プログラムは、コンピュータに、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析させる医用運動解析プログラムであって、前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得機能と、前記追跡点座標取得機能で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得機能と、前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出機能と、前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出機能と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、心臓の収縮/拡張方向の運動成分とともに、ねじれや回転などの、心臓の収縮/拡張方向とは異なる方向の運動成分を測定できるので、診断上より有用な運動成分を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる医用運動解析装置を示すブロック図である。
【0013】
この第1の実施形態に係わる医用運動解析装置は、心臓を被写体とした時系列の画像データを蓄積する画像データ蓄積部101と、画像データ蓄積部101に蓄積された時系列の画像データから、心臓上の追跡点の座標の時系列データを取得する追跡点座標取得部102と、追跡点座標取得部102で取得された追跡点の座標の時系列データから、時系列運動情報として、追跡点の速度ベクトルの時系列データを求める速度ベクトル取得部103と、速度ベクトル取得部103で取得された追跡点の速度ベクトルの時系列データを主成分分析する主成分分析部104と、速度ベクトル取得部103で得られる追跡点の速度ベクトルから、主成分分析部104で得られる第1成分方向(主成分方向)の運動成分を、心臓の収縮/拡張方向の運動成分として算出する第1運動成分算出部105と、速度ベクトル取得部103で得られる追跡点の速度ベクトルから、主成分分析部104で得られる第2成分方向の運動成分を、心臓のねじれや回転などの方向の運動成分として算出する第2運動成分算出部106と、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106で得られる運動成分を表示する表示部107とを備えている。
【0014】
次に図1および図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係わる医用運動解析装置の動作について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係わる医用運動解析装置の動作を示すフローチャートである。
【0015】
画像データ蓄積部101には、心臓を被写体とした時系列の画像データが蓄積されている。ここで、画像データ蓄積部101に蓄積される画像データは、例えば、超音波診断装置、MRI、CTなどの手段によって得ることができる。また、画像データ蓄積部101としては、例えば、半導体メモリ、ハードディスク、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RAM,DVD−RWなどを適用できる。
【0016】
この画像データ蓄積部101に蓄積された時系列の画像データは、追跡点座標取得部102に送られる。
【0017】
追跡点座標取得部102では、画像データ蓄積部101より送られた画像に表れた追跡点を取得する(ステップS101)。ここで追跡点とは、画像に表れた心臓上の追跡対象となる点であり、例えば、文献「西浦ほか、“部分形状拘束輪郭モデルによる超音波心壁動的輪郭抽出法”、電子情報通信学会論文誌(D−II)、vol.J83−D−II、no.1、pp.183−190、Jan.2000」に開示されている方法を用いて、心臓の輪郭を抽出し、その輪郭から心尖部や弁輪部といった輪郭上の特徴点を検出して、これらの点を追跡点とすればよい。また、心臓の輪郭を抽出することなく、マウスなどを用いて、各時刻の画像ごとに手動で追跡点を設定していってもよい。
【0018】
なお、追跡点は必ずしも一つである必要はなく、例えば、上述した方法を用いて抽出した心臓の輪郭上の複数の特徴点を追跡点としてもよい。ただし、以下の説明では、簡単のため、追跡点は一つであるとして説明する。
【0019】
追跡点は、上述した方法により、画像データ蓄積部101に蓄積された時系列の画像データから時刻ごとに取得される。このようにして取得された時刻tの追跡点の座標は、2次元座標(xt,yt)で表される。この追跡点の座標(xt,yt)は、次に、速度ベクトル取得部103に送られる。
【0020】
速度ベクトル取得部103では、追跡点座標取得部102より送られた追跡点の座標(xt,yt)の時系列データから追跡点の速度ベクトルの時系列データを算出する(ステップS102)。
【0021】
ここで、時刻tの追跡点の速度ベクトル(vxt,vyt)は、例えば、(1)式によって求めることができる。
【数1】
ここでΔtは、時刻tと時刻t+1の時間間隔である。
【0022】
なお、(1)式では、連続する2つの時刻の追跡点の座標から速度ベクトル(vxt,vyt)を求めたが、(2)式に示すように、適当な時間間隔の追跡点の座標から速度ベクトル(vxf,vyf)を求めてもよい。
【数2】
ここでΔt´は、時刻tと時刻t+iの時間間隔である。
【0023】
次に、速度ベクトル取得部103で得られた追跡点の速度ベクトル(vxt,vyt)の時系列データは、主成分分析部104、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106に送られる。
【0024】
主成分分析部104は、速度ベクトル取得部103より送られた追跡点の速度ベクトル(vxt,vyt)の時系列データを主成分分析して、追跡点の運動の第1成分方向および第2成分方向を求める(ステップS103)。
【0025】
ここで、速度ベクトル(vxt,vyt)の時系列データを主成分分析して得られる追跡点の運動の第1成分方向および第2成分方向は、(3)式で定まる共分散行列Cの固有ベクトルを求めることにより得ることができる。
【数3】
ここで、Vtは、速度ベクトル(vxt,vyt)を表し、Tはベクトルの転置を表す。
【0026】
すなわち、共分散行列Cの固有ベクトルp1およびp2を(4)式のように定めると、p1が追跡点の運動の第1成分方向を表す単位ベクトル(以下、第1成分ベクトルと呼ぶ)、p2が第2成分方向を表す単位ベクトル(以下、第2成分ベクトルと呼ぶ)となる。
【数4】
なお、(4)式において、λ1およびλ2は、それぞれ固有ベクトルp1およびp2に対応する固有値である。
【0027】
ここで、時系列ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分方向とは、時系列ベクトルデータの分散が最大となる方向を意味する。時系列ベクトルデータとして、心臓の追跡点の速度ベクトルデータを用いた場合には、速度ベクトルデータの分散が最大となる方向とは、追跡点の速度ベクトルの変化が最大となる方向となる。したがって、時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分方向とは、多くの場合、心臓の収縮/拡張方向であると考えることができる。
【0028】
一方、第2成分方向は、第1成分方向に直交する方向を表すため、時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第2成分方向とは、多くの場合、収縮/拡張方向に対して直交する、ねじれや回転などの運動方向であると考えることができる。
【0029】
したがって、速度ベクトル取得部103で得られる速度ベクトルの時系列データの第1成分方向および第2成分方向の運動成分を算出して表示すれば、追跡点の速度ベクトルの収縮/拡張方向の運動成分とねじれや回転などの方向の運動成分を同時に把握することが可能になる。
【0030】
次に、主成分分析部104は、速度ベクトルの第1成分ベクトルp1を、第1運動成分算出部105に送る。また、同様に、主成分分析部104は、速度ベクトルの第2成分ベクトルp2を第2運動成分算出部106に送る。
【0031】
第1運動成分算出部105は、主成分分析部104から送られる速度ベクトルの第1成分ベクトルp1を用いて、速度ベクトル取得部103より送られる速度ベクトルVtの第1成分方向の運動成分vMtを算出する(ステップS104)。
【0032】
速度ベクトルVtの第1成分方向の運動成分vMtは、時刻tごとに(5)式に基づいて、速度ベクトルVtと第1成分ベクトルp1との内積をとることによって求めることができる。
【数5】
(5)式により求まる速度ベクトルの第1成分方向の運動成分vMtは、次に、時系列データとして表示部107に送られる。
【0033】
第2運動成分算出部106は、主成分分析部104から送られる速度ベクトルの第2成分ベクトルp2を用いて、速度ベクトル取得部103より送られる速度ベクトルVtの第2成分方向の運動成分vStを算出する(ステップS105)。
【0034】
速度ベクトルVtの第2成分方向の運動成分vStは、時刻tごとに(6)式に基づいて、速度ベクトルVtと第2成分ベクトルp2との内積をとることによって求めることができる。
【数6】
(6)式により求まる速度ベクトルの第2成分方向の運動成分vStは、次に、時系列データとして表示部107に送られる。
【0035】
表示部107は、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106からそれぞれ送られる、追跡点の速度ベクトルの第1成分方向の運動成分vMtおよび第2成分方向の運動成分vStを表示する(ステップS106)。表示部107には、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどを適用できる。
【0036】
表示部107における各運動成分の表示は、例えば、図3に示すように、心臓の画像上に追跡点の第1成分方向および第2成分方向を表示するとともに、各運動成分をグラフとして表示すればよい。
【0037】
このように、追跡点の第1成分方向および第2成分方向の運動成分を同時にグラフとして表示することによって、追跡点における心臓の収縮/拡張方向の運動とねじれや回転などの方向の運動の様子を同時に観察することができる。
【0038】
このように本発明の第1の実施形態によれば、心臓を被写体とした画像データから追跡点の速度ベクトルデータを取得し、この速度ベクトルデータを主成分分析して、その第1成分方向の運動成分と第2成分方向の運動成分を算出して表示することにより、心臓の収縮/拡張方向の運動成分とねじれや回転などの運動成分を同時に把握でき、診断上より有用な運動成分を得ることが可能となる。
【0039】
なお、上述した実施形態では、ステップS104において、第1運動成分算出部105で速度ベクトルVtの第1成分方向の運動成分vMtを算出した後に、ステップS105において、第2運動成分算出部106で速度ベクトルVtの第2成分方向の運動成分vStを求めていたが、各方向の運動成分を算出する順序を逆にすることも可能である。すなわち、図2において、ステップS104とステップS105を入れ替え、まず第2運動成分算出部106で速度ベクトルVtの第2成分方向の運動成分vStを算出した後に、第1運動成分算出部105で速度ベクトルVtの第1成分方向の運動成分vMtを算出してもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、時系列運動情報を追跡点の速度ベクトルの時系列データとしたが、追跡点の変位ベクトルの時系列データを時系列運動情報とすることもできる。ここで、追跡点の変位ベクトルDt=(dxt,dyt)は、追跡点の座標の時系列データから、例えば、時刻tと時刻t+iの間の追跡点座標の変位として、(7)式を用いて求めることができる。
【数7】
(7)式で求まる追跡点の変位ベクトルDtを上述した追跡点の速度ベクトルVtの代わりに用いて主成分分析を行い、追跡点の変位ベクトルDtの第1成分方向および第2成分方向の運動成分を求めれば、追跡点の収縮/拡張方向の運動成分と、ねじれや回転などの運動成分を同時に求めることができる。
【0041】
また上述した実施形態では、心臓の収縮/拡張方向を、追跡点の速度ベクトルの時系列データを主成分分析して得られる第1成分方向であるとしたが、追跡点の座標の時系列データを主成分分析して得られる第1成分方向を、心臓の収縮/拡張方向とすることも可能である。すなわち、追跡点の座標の時系列データのうち、その分散が最大となる方向とは、追跡点の座標の変化が最大となる方向と考えることができるので、この方向を心臓の収縮/拡張方向であると考えることができる。そこで、主成分分析部104において、追跡点の座標(xt,yt)を速度ベクトル(vxt,vyt)の代わりに用いて、(3)式で定まる共分散行列Cの固有ベクトルを求めれば、その第1成分方向が心臓の収縮/拡張方向、第2成分方向がねじれや回転などの運動方向となる。このようにして求めた第1成分方向および第2成分方向を表す単位ベクトルp1およびp2を用いて第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106において、収縮/拡張方向およびねじれや回転などの運動方向の運動成分を算出し、表示部107に表示させれば、追跡点におけるこれらの運動成分を同時に把握することが可能になる。
【0042】
また、上述した実施形態では、追跡点の座標は2次元としたが、例えば、超音波診断装置、MRI、CTなどの手段によって得られた画像から、追跡点座標取得部102において追跡点の3次元座標を求め、これを用いて速度ベクトル取得部103で速度ベクトルを求めることも可能である。
【0043】
なお、上述した実施形態では、表示部107において、図3に示すように、速度ベクトルVtの第1成分方向および第2成分方向の運動成分vMt、vStを、心臓の画像上に追跡点の第1成分方向と第2成分方向を表示するとともに、グラフで表示していた。上述したように、追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分方向とは、多くの場合、心臓の収縮/拡張方向であると考えることができるが、心臓の部位によっては、心臓の収縮/拡張方向の速度ベクトルの変化よりも、心臓のねじれや回転などの運動方向の速度ベクトルの変化の方が大きい場合もある。このような部位では、追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分方向が心臓のねじれや回転などの運動方向を表し、第2成分方向が心臓の収縮/拡張方向を表すことになる。
【0044】
そこで、主成分分析部104において、追跡点の速度ベクトルの第1成分ベクトルp1および第2成分ベクトルp2を求めたのちに、別途、それぞれのベクトルが表す運動方向が心臓の収縮/拡張方向であるか、ねじれや回転などの運動方向であるかを検出して、図4のように、表示部107において、追跡点の速度ベクトルの運動成分を心臓の収縮/拡張およびねじれや回転などと関連付けて表示するとよい。
【0045】
このように表示することによって、心臓の部位によらず、心臓の収縮/拡張方向およびねじれや回転などの運動方向の運動成分を容易に把握することが可能になる。
【0046】
なお、追跡点の速度ベクトルの第1成分ベクトルおよび第2成分ベクトルが表す運動方向が心臓の収縮/拡張方向であるか、ねじれや回転などの運動方向であるかの検出は、例えば、図5(a)に示すように、あらかじめ心臓の中心点を定めておき、この中心点に向かう方向のベクトルを心臓の収縮/拡張方向と定めればよい。また図5b)および(c)に、この方法によって各ベクトルが表す運動方向が心臓の収縮/拡張方向であるか、ねじれや回転などの運動方向であるかを検出した例を表す。図5(b)には、追跡点の速度ベクトルの変化が最大となる方向が心臓の収縮/拡張方向であり、追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分ベクトルの方向が心臓の収縮/拡張方向となる例を示している。一方、図5(c)には、追跡点の速度ベクトルの変化が最大となる方向が心臓のねじれや回転などの運動方向であり、追跡点の時系列速度ベクトルデータを主成分分析して得られる第1成分ベクトルの方向が心臓のねじれや回転などの運動方向となる例を示している。
【0047】
また、上述した実施形態では、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106で得られる追跡点の速度ベクトルの第1成分方向の運動成分vMtおよび第2成分方向の運動成分vStを表示部107に表示しているが、これらのデータを表示部107に表示することなく、別途記憶媒体などに記憶しておき、別のデータ処理装置あるいはデータ処理ソフトウェアなどを用いて解析できるようにすることも可能である。
【0048】
また、上述した実施形態では、図3に示すように、追跡点の速度ベクトルの第1成分方向の運動成分vMtおよび第2成分方向の運動成分vStを、表示部107に同時にグラフとして表示しているが、別途、表示を切り替える手段を設けて、これらの運動成分を個別に表示部107に表示できるようにすることも可能である。このようにすることで、心臓の収縮/拡張方向の運動と、ねじれや回転などの方向の運動を個別に把握することができるようになる。
【0049】
なお、この医用運動解析装置は、例えば、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして用いることでも実現することが可能である。すなわち、追跡点座標取得部102、速度ベクトル取得部103、主成分分析部104、第1運動成分算出部105および第2運動成分算出部106は、上記のコンピュータ装置に搭載されたプロセッサにプログラムを実行させることにより実現することができる。このとき、医用運動解析装置は、上記のプログラムをコンピュータ装置にあらかじめインストールすることで実現してもよいし、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶して、あるいはネットワークを介して上記のプログラムを配布して、このプログラムをコンピュータ装置に適宜インストールすることで実現してもよい。また、画像データ蓄積部101は、上記のコンピュータ装置に内蔵あるいは外付けされたメモリ、ハードディスクもしくはCD−R、CD−RW、DVD−RAM、DVD−Rなどの記憶媒体を適宜利用して実現することができる。また、表示部107は、上記のコンピュータ装置に内臓あるいは外付けされたディスプレイなどの表示装置を適宜利用して実現することができる。
【実施例2】
【0050】
実施例1では、追跡点の速度ベクトルの時系列データを主成分分析し、その第1成分方向を心臓の収縮/拡張方向、第2成分方向を心臓のねじれや回転などの運動方向であるとした。
【0051】
実施例2では、まず、心臓の輪郭線を抽出し、その輪郭線の法線方向を心臓の収縮/拡張の運動方向、輪郭線の接線方向を心臓のねじれや回転などの運動方向として、これらの方向の追跡点の運動成分を求める方法について説明する。
【0052】
図6は、本発明の第2の実施形態に係わる医用運動解析装置を示すブロック図である。
【0053】
この第2の実施形態に係わる医用運動解析装置は、心臓を被写体とした時系列の画像データを蓄積する画像データ蓄積部201と、画像データ蓄積部201に蓄積された時系列の画像データから、心臓上の追跡点の座標の時系列データを取得する追跡点座標取得部202と、追跡点座標取得部202で取得された追跡点の座標の時系列データから、時系列運動情報として追跡点の速度ベクトルの時系列データを求める速度ベクトル取得部203と、画像データ蓄積部201に蓄積された時系列の画像データから、心臓の輪郭線を抽出する輪郭抽出部204と、輪郭抽出部204で抽出された心臓の輪郭線から、追跡点における輪郭線に対する法線方向および接線方向の運動方向を取得する運動方向取得部205と、速度ベクトル取得部203で得られる追跡点の速度ベクトルから、運動方向取得部205で得られる輪郭線に対する法線方向の運動成分を、心臓の収縮/拡張方向の運動成分として算出する第1運動成分算出部206と、速度ベクトル取得部203で得られる追跡点の速度ベクトルから、運動方向取得部205で得られる輪郭線に対する接線方向の運動成分を、心臓のねじれや回転などの方向の運動成分として算出する第2運動成分算出部207と、第1運動成分算出部206および第2運動成分算出部207で得られる運動成分を表示する表示部208とを備えている。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態に係わる医用運動解析装置の動作について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態の主成分分析部104の代わりに、輪郭抽出部104および運動方向取得部105を備える点が異なるのみである。したがって、以下では、第1の実施形態と共通の動作を行う部分(画像データ蓄積部201、追跡点座標取得部202、速度ベクトル算出部203)については、説明を省略する。
【0055】
輪郭抽出部204は、画像データ蓄積部201に蓄積された画像データから、心臓の輪郭線を抽出する。心臓の輪郭線を抽出する方法としては、例えば、前述した文献「西浦ほか、“部分形状拘束輪郭モデルによる超音波心壁動的輪郭抽出法”、電子情報通信学会論文誌(D−II)、vol.J83−D−II、no.1、pp.183−190、Jan.2000」に開示されている方法を用いることができる。また、別途マウスやキーボードなど、手動で輪郭線をトレースできる装置を設けて、輪郭線を手動で設定できるようにしてもよい。
【0056】
ここで、本実施形態では、輪郭線の抽出は、画像データ蓄積部201に蓄積された時系列画像データのうち、心臓拡張末期と収縮末期の画像データについて行うものとする。
【0057】
次に、輪郭抽出部204は、抽出された心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線を、運動方向取得部205に送る。
【0058】
運動方向取得部205は、輪郭抽出部204から送られた心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線から、追跡点における輪郭線に対する法線方向および接線方向の運動成分を取得する。ここでは、輪郭線の法線方向および接線方向とは、図7に示すような、心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線から得られるセンターライン上の点における、センターラインに対する法線方向および接線方向であるとする。
【0059】
そこで、運動方向取得部205は、まず輪郭抽出部204から送られた心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線から、図7に示すような、これらの輪郭線のセンターラインを求める。
【0060】
次に、運動方向取得部205は、追跡点座標取得部202で得られた追跡点座標の時系列データから、センターライン上に存在する座標を探索する。なお、追跡点座標取得部202で得られた追跡点座標の中に、センターライン上に存在する座標が存在しなければ、運動方向取得部205は、追跡点座標にもっとも近いセンターライン上の点を探索する。ここで、追跡点座標にもっとも近いセンターライン上の点(xc,yc)は、時刻tの追跡点座標を(xt,yt)とすると、例えば、(8)式を満たす点(xc,yc)として求めることができる。
【数8】
ここで、図8に示すように、センターライン上の各点のセンターラインに対する法線方向の運動は、心臓の収縮/拡張方向の運動であると考えることができる。そこで、運動方向取得部205において、図9に示すように、センターライン上の点(xc,yc)について、センターラインの法線方向と接線方向の単位ベクトルを求め、これらの方向の追跡点の運動成分を求めれば、近似的に追跡点の収縮/拡張方向の運動成分とねじれや回転など方向の運動成分を求めることが可能になる。
【0061】
センターライン上の点(xc,yc)の法線方向と接線方向の単位ベクトルr1およびr2は、例えば、図10に示すように、センターライン上の点(xc,yc)から、あらかじめ定めた所定の距離にあるセンターライン上の別の点(xc1,yc1)および(xc2,yc2)から、(9)式によって求めることができる。
【数9】
運動方向取得部205は、このようにして求めた心臓の輪郭線の法線方向を表す単位ベクトルr1を第1運動成分算出部206に送り、心臓の輪郭線の接線方向を表す単位ベクトルr2を第2運動成分算出部207に送る。
【0062】
第1運動成分算出部206は、運動方向取得部205から送られる心臓の輪郭線に対して法線方向の単位ベクトルr1を用いて、速度ベクトル取得部203より送られる速度ベクトルVtの心臓の輪郭線に対する法線方向の運動成分vMtを算出する。
【0063】
心臓の輪郭線に対する法線方向の運動成分vMtは、時刻tごとに、(10)式に基づいて、速度ベクトルVtと単位ベクトルr1との内積をとることによって求めることができる。
【数10】
同様に、第2運動成分算出部207は、運動方向取得部205から送られる心臓の輪郭線に対して接線方向の単位ベクトルr2を用いて、速度ベクトル取得部203より送られる速度ベクトルVtの心臓の輪郭線に対して接線方向の運動成分vStを算出する。
【0064】
心臓の輪郭線に対する接線方向の運動成分vStは、時刻tごとに(11)式に基づいて、速度ベクトルVtと単位ベクトルr2との内積をとることによって求めることができる。
【数11】
(10)式および(11)式で求められた追跡点の心臓の輪郭線に対する法線方向の運動成分vMtおよび接線方向の運動成分vStは、次に、表示部208において表示される。この表示を確認することにより、心臓の収縮/拡張方向の運動成分と、ねじれや回転などの運動成分を同時に把握することが可能になる。
【0065】
このように本発明の第2の実施形態によれば、心臓を被写体とした画像データから追跡点の速度ベクトルデータを取得し、この速度ベクトルデータの心臓の輪郭線に対する法線方向の運動成分と、接線方向の運動成分を算出して表示することにより、心臓の収縮/拡張方向の運動成分と、ねじれや回転などの運動成分を同時に把握でき、診断上より有用な運動成分を得ることが可能となる。
【0066】
なお、上述した実施の形態では、心臓拡張末期および収縮末期の輪郭線から定まるセンターラインの法線方向および接線方向を、それぞれ心臓の輪郭線に対する法線方向および接線方向としたが、画像データ蓄積部201に蓄積された時系列画像データから時刻ごとに心臓の輪郭線を抽出し、各時刻の輪郭線から法線方向および接線方向を取得することも可能である。この場合、各時刻で抽出された輪郭線上の点のうち、その時刻の追跡点の座標と最も近い点を検出し、その点における輪郭線に対する法線方向および接線方向を、それぞれ追跡点の収縮/拡張方向およびねじれや回転などの運動方向とすればよい。
【実施例3】
【0067】
実施例1では、追跡点の速度ベクトルの時系列データを主成分分析し、その第1成分方向を心臓の収縮/拡張方向であるとした。また、実施例2では、心臓の輪郭線を抽出し、その輪郭線の法線方向を心臓の収縮/拡張方向であるとした。
【0068】
実施例3では、手動で設定された心臓の収縮/拡張方向に基づいて、追跡点の運動情報の収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの方向の運動成分を算出する方法について説明する。
【0069】
図11は、本発明の第3の実施形態に係わる医用運動解析装置を示すブロック図である。
【0070】
この第3の実施形態に係わる医用運動解析装置は、心臓を被写体とした時系列の画像データを蓄積する画像データ蓄積部301と、画像データ蓄積部301に蓄積された時系列の画像データから、心臓上の追跡点の座標の時系列データを取得する追跡点座標取得部302と、追跡点座標取得部302で取得された追跡点の座標の時系列データから、時系列運動情報として追跡点の速度ベクトルの時系列データを求める速度ベクトル取得部303と、追跡点における心臓の収縮/拡張方向を設定する方向設定部304と、速度ベクトル取得部303で得られる追跡点の速度ベクトルから、方向設定部304で設定される収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1運動成分算出部305と、速度ベクトル取得部303で得られる追跡点の速度ベクトルから、方向設定部304で設定される収縮/拡張方向と垂直な方向の運動成分を算出する第2運動成分算出部306と、第1運動成分算出部305および第2運動成分算出部306で得られる運動成分を表示する表示部307とを備えている。
【0071】
次に、本発明の第3の実施形態に係わる医用運動解析装置の動作について説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態の主成分分析部104の代わりに、追跡点における心臓の収縮/拡張方向を設定する方向設定部304を備える点が異なるのみである。したがって、以下では、第1の実施形態と共通の動作を行う部分(画像データ蓄積部301、追跡点座標取得部302、速度ベクトル算出部303)については、説明を省略する。
【0072】
方向設定部304では、手動によって追跡点の収縮/拡張方向が設定される。方向設定部304における方向の設定は、図12に示すように、例えば心臓を表示したディスプレイ上で、ユーザがマウスやキーボードなどによって、心臓の収縮/拡張方向であると考えられる方向に線分を描くことによって行うことができる。
【0073】
方向設定部304は、このようにして描かれた線分から、心臓の収縮/拡張方向を示す単位ベクトルm1を算出する。心臓の収縮/拡張方向を示す単位ベクトルm1は、例えば、図13のように、ユーザによって描かれた線分上の2点(x1,y1)および(x2,y2)から、(12)式によって求めることができる。
【数12】
さらに方向設定部304は、上述した線分上の2点(x1,y1)および(x2,y2)から、(13)式によって、心臓の収縮/拡張方向と垂直な方向、すなわち、ねじれや回転などの運動方向の単位ベクトルm2を求める。
【数13】
このようにして方向設定部304において求められた心臓の収縮/拡張方向の単位ベクトルm1および心臓の収縮/拡張方向と垂直な方向の単位ベクトルm2は、それぞれ第1運動成分算出部305および第2運動成分算出部306に送られる。
【0074】
第1運動成分算出部305および第2運動成分算出部306では、方向設定部304から送られた単位ベクトルm1およびm2を用いて、それぞれ、速度ベクトル取得部303から送られる追跡点の速度ベクトルの収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの方向の運動成分を算出する。
【0075】
追跡点の速度ベクトルの収縮/拡張方向の運動成分は、上述したように、追跡点の速度ベクトルと心臓の収縮/拡張方向の単位ベクトルm1との内積を求めることによって算出することができる。また、追跡点の速度ベクトルのねじれや回転などの方向の運動成分も、同様に、追跡点の速度ベクトルと心臓のねじれや回転などの方向の単位ベクトルm2との内積を求めることによって算出することができる。
【0076】
このようにして算出された収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの方向の運動成分は、表示部307において表示される。
【0077】
このように本発明の第3の実施形態によれば、心臓の収縮/拡張方向の設定を手動で行って、心臓の収縮/拡張方向の運動成分およびねじれや回転などの運動成分を算出することで、診断上より有用な運動成分を得ることが可能となる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる医用運動解析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明の第1の実施形態に係わる運動成分の表示方法の一例を示す図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係わる運動成分の表示方法の一例を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係わる追跡点の運動成分と運動方向の関係を説明するための図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係わる医用運動解析装置の構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係わる心臓の輪郭線(センターライン)を示す図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係わる心臓の輪郭線の法線方向を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係わる心臓の輪郭線の法線方向および接線方向を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係わる法線方向および接線方向の単位ベクトルの算出方法を示す図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係わる医用運動解析装置の構成を示すブロック図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係わる心臓の収縮/拡張方向の設定方法を示す図。
【図13】本発明の第3の実施形態に係わる法線方向および接線方向の単位ベクトルの算出方法を示す図。
【符号の説明】
【0080】
101、201、301・・・画像データ蓄積部
102、202、302・・・追跡点座標取得部
103、203、303・・・速度ベクトル取得部
104・・・主成分分析部
105、206、305・・・第1運動成分算出部
106、207、306・・・第2運動成分算出部
107、208、307・・・表示部
205・・・輪郭抽出部
206・・・運動方向取得部
304・・・方向設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項2】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報を主成分分析する主成分分析手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析手段で得られる第1成分方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析手段で得られる第2成分方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項3】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データを主成分分析する主成分分析手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析手段で得られる第1成分方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析手段で得られる第2成分方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項4】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の輪郭線を抽出する輪郭抽出手段と、
前記輪郭抽出手段で抽出された心臓の輪郭線から前記追跡点における前記心臓の輪郭線に対する法線方向と接線方向を取得する運動方向取得手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記運動方向取得手段で得られる前記心臓の輪郭線の法線方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記運動方向取得手段で得られる前記心臓の輪郭線の接線方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項5】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記追跡点における心臓の収縮/拡張方向を設定する方向設定手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記方向設定手段で定めた方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記方向設定手段で定めた方向に対して垂直な方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項6】
前記第2の運動成分算出手段は、前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓のねじれや回転などの方向の運動成分を算出することを特徴とする請求項1に記載の医用運動解析装置。
【請求項7】
前記第1および第2の運動成分算出手段から得られた前記両運動成分を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医用運動解析装置。
【請求項8】
前記追跡点の時系列運動情報が前記追跡点の速度ベクトルの時系列データであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医用運動解析装置。
【請求項9】
前記追跡点の時系列運動情報が前記追跡点の変位ベクトルの時系列データであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医用運動解析装置。
【請求項10】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析方法であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得ステップと、
前記追跡点座標取得ステップで得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出ステップと、
を有することを特徴とする医用運動解析方法。
【請求項11】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析方法であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得ステップと、
前記追跡点座標取得ステップで得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報を主成分分析する主成分分析ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析ステップで得られる第1成分方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析ステップで得られる第2成分方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出ステップと、
を有することを特徴とする医用運動解析方法。
【請求項12】
前記第1および第2の運動成分算出ステップから得られた前記両運動成分を表示する表示ステップをさらに有することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の医用運動解析方法。
【請求項13】
コンピュータに、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析させる医用運動解析プログラムであって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得機能と、
前記追跡点座標取得機能で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出機能と、
を備えることを特徴とする医用運動解析プログラム。
【請求項14】
コンピュータに、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析プログラムであって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得機能と、
前記追跡点座標取得機能で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報を主成分分析する主成分分析機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析機能で得られる第1成分方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析機能で得られる第2成分方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出機能と、
を備えることを特徴とする医用運動解析プログラム。
【請求項15】
前記第1および第2の運動成分算出機能で得られた前記両運動成分を表示する表示機能をさらに備えることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の医用運動解析プログラム。
【請求項1】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項2】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報を主成分分析する主成分分析手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析手段で得られる第1成分方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析手段で得られる第2成分方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項3】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データを主成分分析する主成分分析手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析手段で得られる第1成分方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析手段で得られる第2成分方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項4】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の輪郭線を抽出する輪郭抽出手段と、
前記輪郭抽出手段で抽出された心臓の輪郭線から前記追跡点における前記心臓の輪郭線に対する法線方向と接線方向を取得する運動方向取得手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記運動方向取得手段で得られる前記心臓の輪郭線の法線方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記運動方向取得手段で得られる前記心臓の輪郭線の接線方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項5】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析装置であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得手段と、
前記追跡点座標取得手段で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得手段と、
前記追跡点における心臓の収縮/拡張方向を設定する方向設定手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記方向設定手段で定めた方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出手段と、
前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記方向設定手段で定めた方向に対して垂直な方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出手段と、
を備えることを特徴とする医用運動解析装置。
【請求項6】
前記第2の運動成分算出手段は、前記運動情報取得手段で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓のねじれや回転などの方向の運動成分を算出することを特徴とする請求項1に記載の医用運動解析装置。
【請求項7】
前記第1および第2の運動成分算出手段から得られた前記両運動成分を表示する表示手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医用運動解析装置。
【請求項8】
前記追跡点の時系列運動情報が前記追跡点の速度ベクトルの時系列データであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医用運動解析装置。
【請求項9】
前記追跡点の時系列運動情報が前記追跡点の変位ベクトルの時系列データであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の医用運動解析装置。
【請求項10】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析方法であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得ステップと、
前記追跡点座標取得ステップで得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出ステップと、
を有することを特徴とする医用運動解析方法。
【請求項11】
心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析方法であって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得ステップと、
前記追跡点座標取得ステップで得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報を主成分分析する主成分分析ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析ステップで得られる第1成分方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出ステップと、
前記運動情報取得ステップで得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析ステップで得られる第2成分方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出ステップと、
を有することを特徴とする医用運動解析方法。
【請求項12】
前記第1および第2の運動成分算出ステップから得られた前記両運動成分を表示する表示ステップをさらに有することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の医用運動解析方法。
【請求項13】
コンピュータに、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析させる医用運動解析プログラムであって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得機能と、
前記追跡点座標取得機能で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から心臓の収縮/拡張方向とは異なる第2の方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出機能と、
を備えることを特徴とする医用運動解析プログラム。
【請求項14】
コンピュータに、心臓を被写体とした時系列の画像データから前記心臓の運動を解析する医用運動解析プログラムであって、
前記時系列の画像データから前記心臓上の追跡点の座標の時系列データを得る追跡点座標取得機能と、
前記追跡点座標取得機能で得られた前記追跡点の座標の時系列データから前記追跡点の時系列運動情報を取得する運動情報取得機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報を主成分分析する主成分分析機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析機能で得られる第1成分方向の運動成分を算出する第1の運動成分算出機能と、
前記運動情報取得機能で得られた前記追跡点の時系列運動情報から前記主成分分析機能で得られる第2成分方向の運動成分を算出する第2の運動成分算出機能と、
を備えることを特徴とする医用運動解析プログラム。
【請求項15】
前記第1および第2の運動成分算出機能で得られた前記両運動成分を表示する表示機能をさらに備えることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の医用運動解析プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−61581(P2006−61581A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250465(P2004−250465)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]