説明

医療機器の移動装置

【課題】作業効率を損なわずに安全に医療機器を移動させる。
【解決手段】X線発生器14とX線検出器15は、臥位撮影位置と立位撮影位置の間で移動自在に設けられている。X線検出器15の操作パネル41には、X線検出器15を操作するメイン操作部43に加えて、X線発生器14の駆動部57に対して移動又は停止の指示を入力するサブ操作部44が設けられている。X線検出器15は、手動操作によって臥位撮影位置又は立位撮影位置に移動される。スタッフは、その場所からサブ操作部44を通じてX線発生器14を操作して、X線発生器14をX線検出器15の位置まで移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の医療機器を移動させる医療機器の移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者に向けてX線を曝射するX線発生器、被検者を透過したX線を検出するX線検出器からなるX線撮影装置が知られている。X線撮影装置には、被検者が寝台に横たわる臥位の姿勢で撮影する臥位撮影装置や、被検者が立位の姿勢で撮影する立位撮影装置などがあり、これらは目的に応じて使い分けられる。
【0003】
特許文献1及び2には、立位撮影と臥位撮影の両方の撮影が可能なX線撮影装置が記載されており、このX線撮影装置では、X線発生器及びX線検出器の少なくとも一方を立位撮影と臥位撮影の両方で共用しており、共用される機器の、立位撮影位置と臥位撮影位置の間の移動には、移動装置が用いられる。立位撮影位置は、立位姿勢の被検者を挟んで、X線発生器とX線検出器が対向させる位置であり、臥位撮影位置は、臥位姿勢の被検者を挟んで、X線発生器とX線検出器が対向する位置である。
【0004】
移動装置は、床や天井に敷設されたレールを有し、レールに沿ってX線発生器やX線検出器を移動させる。特許文献1の移動装置では、X線発生器とX線検出器の両方がモータなどの駆動手段によって自動で移動するようになっており、コンソールからの移動指示が入力されると、X線発生器とX線検出器の両方が、臥位撮影位置又は立位撮影位置の一方から他方に向けて一緒に移動する。駆動手段に指示を与えるコンソールは、撮影室に隣接した操作室に配置されているのが一般的である。また、特許文献2の移動装置では、X線検出器を手動又は自動で立位撮影位置又は臥位撮影位置に移動させると、それに連動してX線発生器が自動で移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−024313号公報(段落[0032])
【特許文献2】特開平11−070102号公報(段落[0065]〜[0067])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の移動装置のように、操作室のコンソールからX線発生器及びX線検出器のそれぞれに対して移動指示を与える場合、X線発生器とX線検出器が同時に移動するときに、一方を注視していると他方の監視がおろそかになり、移動中のX線発生器やX線検出器と被検者の衝突を防止するという安全性の観点からはデメリットがあった。また、被検者がいる撮影室からスタッフが離れることになるため、スタッフの咄嗟の対処が困難になるという点で安全性に欠ける。被検者は傷病のため身体が不自由で行動に制限があったり、また、動作が緩慢であったりする場合も多く、医療現場においては、このような安全性について特に配慮されるべきである。
【0007】
特許文献2の移動装置のようにX線検出器を動かすとX線発生器が連動して追従する場合、決められた移動ルートに障害物があった時にX線検出器のみ先に動かすといった対応や、X線発生器の移動ルートに人が入ってきた時に、X線発生器の移動だけ緊急停止するといった臨機応変の対応ができず、必ずX線発生器とX線検出器の両方を停止して安全性を確保する必要があるため、作業効率を落とすものであった。
【0008】
安全性を確保する対策としては、X線発生器及びX線検出器のそれぞれを1つずつ順番に手動操作で移動する方法があるが、この方法は、X線発生器とX線検出器のそれぞれの場所に赴く必要があり、作業効率が悪いという問題があった。例えば、立位撮影位置にあるX線発生器とX線検出器を臥位撮影位置に移動させる場合には、医師や診療放射線技師などのスタッフは、一方を立位撮影位置から臥位撮影位置に移動させた後、他方を移動させるために再び立位撮影位置まで赴き、臥位撮影位置に移動させる必要がある。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、作業効率を損なわずに安全に医療機器を移動させることが可能な医療機器の移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の医療機器の移動装置は、第一及び第二の医療機器をそれぞれ独立に移動可能に保持する第一及び第二の移動機構と、第一医療機器を移動させるための駆動手段と、前記駆動手段に対して第一医療機器の移動又は停止の指示を入力するための操作指示手段であり、第二医療機器と一緒に移動し、かつ、第二医療機器が手動操作される場所から操作可能な位置に配置された操作指示手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
前記第一及び第二の医療機器は、一方が放射線を発生する放射線発生器で、他方が前記放射線発生器からの放射線を検出する放射線検出器であることが好ましい。
【0012】
前記第一及び第二の移動機構は、立位撮影位置と臥位撮影位置との間で、前記放射線発生器及び前記放射線検出器を移動可能に保持することが好ましい。
【0013】
前記第一医療機器の移動状況を報知する報知手段が設けられていることが好ましい。
【0014】
さらに、第三医療機器を移動可能に保持する第三移動機構を備えており、前記操作指示手段は、第一医療機器の駆動手段に対する指示と同様の指示を第三医療機器の駆動手段に対して入力することが好ましい。
【0015】
前記第三医療機器は天板であり、第三移動機構は、天板を昇降自在又は回動自在に保持し、天板とともに寝台を構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1つの医療機器が手動操作される場所から別の医療機器の移動又は停止をコントロールすることができるから、作業効率を損なわずに安全に複数の医療機器を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】X線撮影システムの外観斜視図である。
【図2】操作パネルの正面図である。
【図3】移動装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】移動装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図5】別形態の制御ブロック及び寝台を示す図である。
【図6】回動する形態の寝台の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態のX線(放射線)撮影システム11は、撮影装置12及び移動装置13からなり、病院の撮影室に設置される。撮影システム11は、立位撮影と臥位撮影の両方の撮影が可能である。
【0019】
撮影装置12は、X線発生器14及びX線検出器15を有する。X線発生器14は、X線を発するX線管とX線の照射範囲を限定するX線可動絞りとからなる。X線検出器15の検出面は、被検者の胸部全体をカバーする程度の面積を有している。X線検出器15には、例えばイメージングプレート、フラットパネルディテクタなどの周知のものが用いられる。
【0020】
移動装置13は、X線発生器14及びX線検出器15を、XY平面及びZ軸方向に移動して、立位姿勢の被検者を挟んで、X線発生器14とX線検出器15が対向する立位撮影位置(実線で示す)と、臥位姿勢の被検者を挟んで、X線発生器14とX線検出器15が対向する臥位撮影位置(二点鎖線で示す)との間で、X線発生器14及びX線検出器15を移動可能に保持する。
【0021】
立位撮影位置では、X線検出器15の検出面がY軸に対して垂直な方向に向き、X線発生器14の照射口が検出面と対向する。臥位撮影では、X線検出器15は、被検者を寝かせる寝台20の天板20aと検出面が平行になる姿勢で、天板20aの下に配置され、天板20aを挟んでその上方に、検出面に照射口が対向するようにX線発生器14が配置される。寝台20は、天板20aが昇降自在に設けられており、高さ調節が可能である。
【0022】
移動装置13は、X線発生器14を移動する第一移動機構16と、X線検出器15を移動する第二移動機構17からなり、第一及び第二の各移動機構16、17は、X線発生器14、X線検出器15をそれぞれ独立に移動可能に保持する。
【0023】
第一移動機構16は、天井に固定されY軸方向に延びた固定レール21と、Y軸方向と直交するX軸方向に延び、固定レール21に沿って可動する可動レール22とからなる天井吊り下げ式の移動機構である。固定レール21、可動レール22は、それぞれ平行な一対のレール部材からなる。
【0024】
可動レール22は、可動レール22に固定された一対の走行部24によって固定レール21に移動可能に取り付けられている。各走行部24は、回転自在なローラ(図示省略)を備えており、このローラが固定レール21のガイド溝内で回転することにより、固定レール21に沿って走行する。
【0025】
可動レール22は、可動レール22に沿って走行する台車26を保持する。台車26には、走行部24と同様の走行部29が設けられており、走行部29が可動レール22に沿って走行することにより、台車26がX軸方向に移動する。
【0026】
台車26には、Z軸方向に伸縮自在な支柱18が固定されており、支柱18の下端にX線発生器14が設けられている。X線発生器14は、台車26及び可動レール22の移動によってXY平面内を移動し、支柱18の伸縮によりZ軸方向に昇降する。走行部24、走行部29、及び支柱18は、モータなどの駆動部(図3の符号57参照)によって電動で駆動されるようになっており、移動指示の入力によってX線発生器14を臥位撮影位置と立位撮影位置との間で、自動で移動させることができる。
【0027】
第一移動機構16は、X線発生器15が停止中に不用意に移動しないように、可動レール22、台車26、支柱18の移動を規制するブレーキ機構(図3の符号58参照)が設けられており、移動指示が入力されると、ブレーキ機構58が解除され、停止指示が入力されると、ブレーキ機構58が作動(ロック)するようになっている。ブレーキ機構58は、例えば、固定レール21や可動レール22に圧接して摩擦力を発生させるブレーキ板と、このブレーキ板をロック位置と解除位置の間で移動させるアクチュエータからなる。
【0028】
また、X線発生器14は、支柱18の下端に、Z軸及び水平軸回りに回転自在に設けられており、X線発生器14の角度調整が可能になっている。X線発生器14には、操作ハンドル33や操作パネル34からなる操作部32が設けられている。操作パネル34には、走行部24、走行部29、支柱18の駆動部57に対する移動及び停止の指示を入力する操作ボタンが設けられている。X線発生器14の細かな位置調整や角度調整は、操作ハンドル33を手動操作することによって行われる。
【0029】
第二移動機構17は、床に敷設されY軸方向に延びたレール36と、Z軸方向に直立しレール36に沿って走行する支柱37と、支柱37に沿ってZ軸方向に昇降自在に設けられX軸方向に延びるアーム38とからなる床上式移動装置である。なお、図示しないが、支柱37は、その下端がレール36で支持されるとともに、例えば、壁に敷設されたレールによってもう1点支持される。
【0030】
支柱37の下端には、走行部24と同様のローラ式の走行部が設けられており、この走行部がレール36を走行することによって支柱37が移動する。アーム38には、X線検出器15が取り付けられている。X線検出器15は、支柱37とアーム38を移動させることにより、臥位撮影位置と立位撮影位置の間で移動する。また、アーム38は、X軸回りに回転自在に設けられており、アーム38が回転することで、アーム38の先端に取り付けられたX線検出器15がX軸回りに回転する。これにより、臥位撮影位置と立位撮影位置のそれぞれの位置におけるX線検出器15の姿勢変化や細かな角度調整が可能になっている。X線検出器15の移動や角度調整は、手動操作によって行われる。第一移動機構16と異なり、第二移動機構17によるX線検出器15の移動は、手動操作によって行われるが、操作力を軽減するためにアクチュエータなどによるアシスト機構を設けてもよい。
【0031】
第二移動機構17にも、第一移動機構16と同様に、支柱37やアーム38の不用意な移動を規制するためのブレーキ機構(図3の符号59参照)が設けられている。X線検出器15を移動する場合には、ブレーキ機構59を解除した状態で手動操作が行われる。アーム38には、X線検出器15の近傍位置に操作パネル41が設けられている。操作パネル41は、アーム38に設けられているので、X線検出器15と一緒に移動し、かつ、スタッフがX線検出器15の移動や角度調整などの手動操作をしている場所から操作可能な位置に配置されている。
【0032】
図2に示すように、操作パネル41には、X線検出器15のブレーキを解除するためのブレーキ解除ボタン42が設けられている。ブレーキ解除ボタン42は、押下されると、解除指示が入力されてブレーキによる規制が解除され、X線検出器15の移動や回転が許容される。押下されていない状態ではブレーキの作動指示がアクチュエータに対して入力されてブレーキが作動し、X線検出器15の移動や回転が禁止される。ブレーキ解除ボタン42は、押下されない状態ではブレーキが作動する初期位置に付勢されており、押下されている間だけ、ブレーキが解除され、ブレーキ解除ボタン42から手を離すと初期位置に復帰して直ちにブレーキが作動する。
【0033】
操作パネル41には、X線検出器15を操作するためのブレーキ解除ボタン42が設けられたメイン操作部43の他に、X線発生器14を操作するための操作ボタンなどが設けられたサブ操作部44が設けられており、サブ操作部44は、X線発生器14に対する移動及び停止の指示を入力する操作指示手段として機能する。
【0034】
サブ操作部44には、自動運転ボタン46、停止ボタン47、撮影位置切替えボタン48、49、モニターランプ50などが設けられている。自動運転ボタン46は、第一移動機構16の駆動部57に対する移動指示を入力するボタンであり、自動運転ボタン46が押下されると、X線発生器14の移動が開始される。停止ボタン47は、第一移動機構17の駆動部に対する停止指示を入力するボタンであり、停止ボタン47が押下されると、移動中のX線検出器15が停止する。このように、X線発生器14の移動及び停止を、X線検出器15の操作パネル41から操作できるようになっている。
【0035】
撮影位置切替えボタン48及び49は、択一的に押下されるボタンであり、一旦押下されると他方が押下されるまで押下された状態が保たれる切替えスイッチとして機能する。例えば、一方の撮影位置切替えボタン48が押下されると、押下されていた他方の撮影位置切替えボタン49の押下が解除される。
【0036】
撮影位置切替えボタン48が押下されている状態で、自動運転ボタン46が押下されると、X線発生器14は、臥位撮影位置に向けて移動する。一方、撮影位置切替えボタン48が押下されている状態で、自動運転ボタン46が押下されると、X線発生器14は、立位撮影位置に向けて移動する。
【0037】
モニターランプ50は、点灯又は点滅することでX線発生器14の移動状況を報知して、操作者であるスタッフの注意を喚起する。例えば、X線発生器14の移動中に緑色で点灯する。
【0038】
図3に示すように、移動装置13は、コントローラ56を備えている。コントローラ56は、操作パネル34、41から入力される操作信号にしたがって、移動装置13全体を統括的に制御する。コントローラ56は、例えば、制御プログラムを実行するCPUからなる。コントローラ56には、操作パネル34、41の他に、第一移動機構16の駆動部57及びブレーキ機構58、第二移動機構17のブレーキ機構59が制御可能に接続されている。
【0039】
コントローラ56は、第二移動機構17に対しては、操作パネル41のメイン操作部43からの指示に基づいて、図4(A)に示す制御を行う。ブレーキ解除ボタン42が押下された場合(ステップ(以下、Sと略す)11)、ブレーキ機構59の規制を解除する。これにより、X線検出器15の移動が許容される状態となり、X線検出器15を手動操作による移動が可能となる(S12)。ブレーキ解除ボタン42の押下が解除された場合(S13)、ブレーキ機構59を作動させ、X線検出器15の移動を規制する(S14)。
【0040】
また、第一移動機構16に対しては、操作パネル34の他に、操作パネル41のサブ操作部44から操作できるようになっている。コントローラ56は、第一移動機構16に対しては、操作パネル34及び操作パネル41からの指示に基づいて、図4(B)に示す制御を行う。コントローラ56は、自動運転ボタン46が押下された場合(S21)、ブレーキ機構58の規制を解除し、駆動部57に対して駆動信号を出力して、X線発生器14の移動を開始させる(S22)。X線発生器14の移動方向は、撮影位置切替えボタン48、49の選択状態に応じて決定する。停止ボタン47が押下された場合(S23)、駆動部57に停止信号を出力し、X線発生器14の移動を停止する(S24)。
【0041】
以下、上記構成の撮影システム11による撮影準備作業について、1人の被検者に対して、臥位撮影の後、引き続いて立位撮影を行う場合を例に説明する。
【0042】
スタッフは、臥位撮影が終了した後、被検者をX線発生器14及びX線検出器15の移動経路から退避するように誘導する。この後、操作パネル41のブレーキ解除ボタン42を押下してブレーキ機構59を解除し、図1に二点鎖線で示す臥位撮影位置から実線で示す立位撮影位置に、X線検出器15を手動操作によって移動する。X線検出器15とX線発生器14は、それぞれ独立に移動し、X線検出器15の移動に追従してX線発生器14が連動しない。
【0043】
そのため、スタッフは、X線検出器15のみを監視して、その移動経路内に被検者が入っていないことを確認しながら、移動させることができる。X線検出器15及びその移動経路に対して監視を集中することができるので、移動中のX線検出器15と被検者の衝突事故の危険が少ない安全な移動が可能である。スタッフは撮影室にいるので、被検者が不用意に移動経路内に進入するような場合でも、咄嗟の対処が可能になり安全である。
【0044】
X線検出器15を立位撮影位置に移動した後、操作パネル41の自動運転ボタン46が押下されて、第一移動機構16に対してX線発生器14の移動指示が入力される。これにより、X線発生器14が立位撮影位置に向けて移動を開始する。
【0045】
X線検出器15は、立位撮影位置にあるので、移動しているのはX線発生器14のみである。このため、スタッフは、X線発生器14及びその移動経路に対してだけに監視を集中することができるので、X線検出器15と同様に、移動中のX線発生器14を安全に移動させることができる。X線発生器14の移動経路内に被検者が進入したり、X線発生器14に被検者が不用意に近づいたりするなどの衝突の危険が生じた場合には、停止ボタン47によってX線発生器14の移動を停止させることができる。
【0046】
また、操作パネル41はX線検出器15の近傍位置に設けられているので、X線検出器15を立位撮影位置に移動した後、X線発生器14を操作するためにわざわざX線発生器14の場所に赴く必要がなく、X線検出器15の場所から操作ができるので、作業効率も向上する。
【0047】
また、X線検出器15を立位撮影位置に移動した後も、X線検出器15に対して角度調整などの細かな調整が必要となる。スタッフは、X線検出器15の操作パネル41からX線発生器14を操作しているので、手動操作によるX線検出器15の細かな調整を行うこともできる。これは作業効率の向上に寄与する。
【0048】
このようにX線検出器15に細かな調整を行う場合でも、移動しているのはX線発生器14のみであるので、X線検出器15とX線発生器14が同時に移動する従来の方法と比べれば、X線発生器14及びその移動経路への監視がおろそかになることはない。さらに、モニターランプ50によって、X線発生器14が移動中であることが報知されるので、X線発生器14への注意をより喚起することができる。
【0049】
上記実施形態では、操作パネル41には、操作対象が異なるメイン操作部43とサブ操作部44の二つの操作部が設けられるので、誤操作を防止するために、それぞれの操作部のボタンを視覚的あるいは触覚的に識別可能なように、形状、材質、色などを変えて形成してもよい。
【0050】
例えば、メイン操作部43及びサブ操作部44の一方のボタンを金属製で形成し、他方のボタンをプラスチック製で形成するというように材質を変更する方法、一方を、丸みを帯びた形状で形成し、他方を角形で形成するというように形状を変更する方法、一方の表面を粗面化して、他方の表面を平滑化する方法、両者の色を変える方法などが考えられる。
【0051】
また、X線発生器14を操作するサブ操作部44は、X線検出器15と一緒に移動して、かつ、X線検出器15が手動操作される場所から操作可能な位置に配置されていればよいので、X線検出器15の操作パネル41とは別の専用の操作パネルに設けてもよい。また、サブ操作部44は、X線検出器15のアーム38に着脱自在に設けられていてもよい。そして、サブ操作部44からの操作信号を無線送信できるようにすれば、必要に応じてサブ操作部44をアーム38から取り外して、X線発生器14を操作するリモコンとして機能させることができるので、便利である。
【0052】
また、移動中か停止中かを報知する報知手段としてモニターランプ50を例に説明したが、モニターランプ50の代わりに音声で報知するスピーカを使用してもよい。
【0053】
また、自動で移動するX線発生器14に障害物検知センサを設けて、被検者がX線発生器14に接近したり接触したりした場合に、このセンサからの信号に基づいて、警告を発するようにしてもよい。障害物検知センサとしては、例えば、周囲の障害物を検知する赤外線センサや、障害物との接触を検知する振動センサや、音波によって障害物を探知するソナーなどが使用される。こうした障害物検知センサは、X線発生器14の要所に複数箇所設けられる。障害物検知センサが障害物を検知すると、検知信号がコントローラ56に入力される。コントローラ56は、検知信号に基づいて、第一移動機構16の駆動部57に停止信号を出力して、X線発生器14を停止させたり、警告手段を通じて警告を発したりする。
【0054】
障害物検知用の警告手段としては、例えば、モニターランプやスピーカが使用される。また、モニターランプ42を警告手段に兼用してもよい。この場合には、移動中であることを報知する点灯状態と区別できるように、障害物を検知した場合には、点灯色を変える。
【0055】
上記第1実施形態では、X線検出器とX線発生器は、それぞれ独立に移動し、X線検出器の移動に追従してX線発生器が連動しない場合を説明したが、X線検出器の移動に追従してX線発生器が連動してもよい。
【0056】
この場合、例えばX線検出器の操作ハンドルの近傍に、X線発生器を動作させるためのボタンを配置し、スタッフは操作ハンドルを握るとともにボタンを押下することでX線発生器を一緒に動かすことができる。スタッフはX線発生器の移動ルートを目視で確認しながらX線検出器を動かすことができる。X線発生器の移動ルートに障害物があることに気付いた場合にはボタンの押下をはずすことでX線発生器の移動だけ止め、X線検出器を所定の場合へ先に動かす。その後、障害物を除去しX線発生器を手動で所定の場所へ動かすことができ、作業効率を向上することができる。
【0057】
なお、上記はボタン押下でX線発生器を動作させるとしたが、X線発生器はX線検出器の移動に自動追従するようにしてもよい。この場合、ボタンは緊急停止ボタンの役割をもち、例えば連動中にX線発生器の移動ルートに人が入った場合、ボタンを押下することでX線発生器の移動を緊急停止することができる。その後、危険がなくなったことを確認してからX線発生器を所定の場所へ移動することができ、安全性、効率性を向上することができる。
【0058】
上記第1実施形態では、X線検出器15が手動で移動し、X線発生器14が自動で移動する例で説明したが、その反対に、X線発生器14が手動で移動し、X線検出器15が自動で移動する態様でもよい。
【0059】
[第2実施形態]
第1実施形態では、X線検出器15の操作パネル41からX線発生器14の移動指示をする例で説明したが、第2実施形態に示すように、X線発生器14に加えて、さらに、寝台20の天板20aの移動指示ができるようにしてもよい。なお、第1実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。
【0060】
図5に示すように、寝台20の脚部20bは、高さ方向に伸縮する。脚部20bは、天板20aを昇降自在に保持する。駆動部61は、アクチュエータからなり、コントローラ56からの駆動指示に基づいて脚部20bを伸縮させて天板20aを昇降する。脚部20bと駆動部61が第三移動機構を構成し、天板20aが第三医療機器を構成する。X線検出器15の操作パネル41には、駆動部61に対して移動及び停止の指示を入力するサブ操作部62が設けられている。天板20aは、被検者の体型や撮影部位に応じて昇降され、天板20aの高さに応じてX線検出器15の高さも調節される。そのため、X線検出器15の操作パネル41から天板20aの高さも調節できれば、作業効率がよく便利である。
【0061】
また、図6に示す寝台66のように、天板66aが起倒自在に設けられていてもよい。寝台66の天板66aは、ヒンジ67を介して、脚部68に回動自在に設けられている。天板66aは、天板66aの上面が水平になる使用位置(実線で示す)と、90度回転して上面が垂直になる不使用位置(二点鎖線で示す)との間で回動する。この回動と停止が、サブ操作部62の指示に基づいて、駆動部61によって自動で行われる。天板66aを使用しない間は不使用位置にしておけば、省スペース化が可能になる。
【0062】
また、上記各実施形態では、医療機器として撮影装置を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば治療用機器であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
11 X線撮影システム
12 撮影装置
13 移動装置
14 X線発生器
15 X線検出器
16 第一移動機構
17 第二移動機構
20、66 寝台
20a、66a 天板
20b 脚部
41 操作パネル
42 ブレーキ解除ボタン
46 自動運転ボタン
47 停止ボタン
50 モニターランプ
56 コントローラ
61 駆動部
67 ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一及び第二の医療機器をそれぞれ独立に移動可能に保持する第一及び第二の移動機構と、
第一医療機器を移動させるための駆動手段と、
前記駆動手段に対して第一医療機器の移動又は停止の指示を入力するための操作指示手段であり、第二医療機器と一緒に移動し、かつ、第二医療機器が手動操作される場所から操作可能な位置に配置された操作指示手段とを備えたことを特徴とする医療機器の移動装置。
【請求項2】
前記第一及び第二の医療機器は、一方が放射線を発生する放射線発生器で、他方が前記放射線発生器からの放射線を検出する放射線検出器であることを特徴とする請求項1記載の医療機器の移動装置。
【請求項3】
前記第一及び第二の移動機構は、立位撮影位置と臥位撮影位置との間で、前記放射線発生器及び前記放射線検出器を移動可能に保持することを特徴とする請求項2記載の医療機器の移動装置。
【請求項4】
前記第一医療機器の移動状況を報知する報知手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療機器の移動装置。
【請求項5】
さらに、第三医療機器を移動可能に保持する第三移動機構を備えており、
前記操作指示手段は、第一医療機器の駆動手段に対する指示と同様の指示を第三医療機器の駆動手段に対して入力することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の医療機器の移動装置。
【請求項6】
前記第三医療機器は天板であり、第三移動機構は、天板を昇降自在又は回動自在に保持し、天板とともに寝台を構成することを特徴とする請求項5に記載の医療機器の移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−30686(P2011−30686A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178642(P2009−178642)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】