説明

半導体チップ選択方法、半導体チップ及び半導体集積回路装置

【課題】 DRAMチップ選択方法において、選択対象であるDRAMチップの数よりも貫通配線の本数を減らすこと。
【解決手段】 貫通配線を複数の貫通配線群に分ける。この際、各貫通配線群における配線数は他の貫通配線群における配線数との関係において互いに素であるという条件を満たすようにして定められる。そのうえで、貫通配線群毎に一本の貫通配線選定した場合における選定された貫通配線の組み合わせのそれぞれを各DRAMチップに対応付ける。このようにすると、貫通配線の本数よりも多い個数のDRAMチップを選択対象とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体チップを積層してなる半導体集積回路装置における半導体チップ選択方法及びその方法に使用可能な半導体チップ及び半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の半導体チップを積層してなる半導体集積回路装置において動作させたい半導体チップを選択するために、複数の半導体チップを貫通するようにして配置・形成された複数の貫通配線を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)
【0003】
【特許文献1】特開2002−305283
【特許文献2】特開2003−60053
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では選択対象である半導体チップの数よりも貫通配線の本数を減らすことができない。例えば、特許文献1記載の技術によれば、n個(nは正の整数)の半導体チップに対してn本の貫通配線が必要であり、特許文献2記載の技術によればn個の半導体チップに対してn+1本の貫通配線が必要である。
【0005】
そこで、本発明は、選択対象である半導体チップの数よりも貫通配線の本数を減らしてなる半導体チップ選択方法及びその方法に使用可能な半導体チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、複数の半導体チップを積層してなる半導体集積回路装置において前記複数の半導体チップに貫通するようにして配置・形成された複数の貫通配線を用いて少なくとも一つの半導体チップを選択する半導体チップ選択方法であって、
前記複数の貫通配線を、複数の貫通配線群であって各貫通配線群の配線数が他の貫通配線群の配線数との関係において互いに素であるような複数の貫通配線群によって構成し、
前記貫通配線群毎に、該貫通配線群に含まれる前記貫通配線の中から少なくとも一つの前記貫通配線をアサートし、
前記各貫通配線群においてアサートされた前記貫通配線の組み合わせを利用して前記半導体チップを選択する
ことを特徴とする半導体チップ選択方法が得られる。
【0007】
また、本発明によれば、前記半導体チップ選択方法に使用可能な第1の半導体チップであって、
第1及び第2面を有しており、且つ、前記貫通配線群毎に、前記第1面上に形成された複数の第1端子からなる第1端子群及び前記第2面上に形成された第2端子であって対応する前記第1端子と同数の前記第2端子からなる第2端子群を備えており、
前記各貫通配線群に対応する前記第1端子群における前記第1端子の数は、当該貫通配線群の配線数に等しく、
前記各貫通配線群に対応する前記第1端子群における前記第1端子は、当該貫通配線群の配線数に等しいノードを有し且つ当該ノードを当該ノードと同数の有向辺で有向サイクルを構成するように連結してなる有向サイクルグラフにおいて、前記ノードと一対一に対応付けられるようにして配置されており、
前記各貫通配線群に対応する前記第2端子群における前記第2端子は、前記対応する第1端子と同じ配置状態をとり、
前記第2端子群における前記第2端子の夫々は、対応する前記第1端子群における前記第1端子の一つであって、当該第2端子群に関連した前記有向サイクルグラフにおける当該第2端子に対応する前記ノードの次のノードに対応する前記第1端子に接続されている
ことを特徴とする半導体チップが得られる。
【0008】
更に、本発明によれば、前記第1の半導体チップを複数個積層してなる第1の半導体集積回路装置であって、
前記半導体チップは、互いに同一構造を備えており、
前記複数の半導体チップは、一の前記半導体チップの前記第1面と他の一の前記半導体チップの前記第2面とを対向させるようにして、且つ、当該半導体集積回路装置を前記半導体チップの積層方向から見た場合に、対応する前記有向サイクルグラフが一致するようにして、積層されている、
ことを特徴とする半導体集積回路装置が得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第2の半導体チップとして、
第1及び第2面を有しており、且つ、前記第1面上に形成された複数の第1端子からなる第1端子群及び前記第2面上に形成された前記第1端子と同数の前記第2端子からなる第2端子群を備えており、
前記第1端子群における前記第1端子は、当該第1端子の数に等しいノードを有し且つ当該ノードを当該ノードと同数の有向辺で有向サイクルを構成するように連結してなる有向サイクルグラフにおいて、前記ノードと一対一に対応付けられるようにして配置されており、
前記第2端子群における前記第2端子は、前記第1端子群における前記第1端子と同じ配置状態をとり、
前記第2端子群における前記第2端子の夫々は、前記第1端子群における前記第1端子の一つであって、当該第2端子群に前記有向サイクルグラフにおける当該第2端子に対応する前記ノードの次のノードに対応する前記第1端子に接続されている
ことを特徴とする半導体チップが得られる。
【0010】
更に、本発明によれば、前記第2の半導体チップを複数個積層してなる第2の半導体集積回路装置であって、
前記半導体チップは、互いに同一構造を備えており、
前記複数の半導体チップは、一の前記半導体チップの前記第1面と他の一の前記半導体チップの前記第2面とを対向させるようにして積層されており、
一の前記半導体チップの前記第1面上の前記第1端子は、当該半導体集積回路装置を前記半導体チップの積層方向から見た場合に、対応する前記有向サイクルグラフが一致するようにして、他の一の前記半導体チップの前記対向する第2面上の前記第2端子と接続され、それによって前記複数の半導体チップを貫通する貫通配線であって前記第1端子と同数の貫通配線からなる貫通配線群が形成されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体チップ選択方法によれば、貫通配線の総数よりも大きい数の半導体チップを選択することができる。例えば、n+m(n,mは互いに素である整数)本の貫通配線によってnm個の半導体チップを選択対象とすることができる。
【0012】
本発明の第1の半導体チップ及び第1の半導体集積回路装置においては、例えば、各貫通配線群に含まれる貫通配線が互いに交わることのない複数の螺旋のような関係を満たしつつ配される。そのため、各半導体チップ上において貫通配線用に確保すべき領域を減らすことができる。
【0013】
なお、本発明の第2の半導体チップ及び第2の半導体集積回路装置においても、同様の効果が得られる。
【0014】
更に、本発明の第1の半導体チップ及び第1の半導体集積回路装置によれば、本発明による半導体チップ選択方法が、同一構成の半導体チップを複数個積層することにより実現できる。すなわち、各層毎に異なる構成の半導体チップを用いる必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、積層される半導体チップはDRAMチップであり、半導体集積回路装置はDRAM装置であるものとして説明を行うが、本発明の概念は他の半導体集積回路装置にも適用可能である。
【0016】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態によるDRAM装置は、図1に示されるように、インターフェースチップ100の上に8個のDRAMチップ10〜80が積層されてなるものである。このDRAM装置にはDRAMチップ10〜80の選択・識別のためにDRAMチップ10〜80を貫通する貫通配線が設けられている。
【0017】
ここで、本実施の形態における貫通配線は複数の貫通配線群に分けられており、各貫通配線群における配線数は他の貫通配線群における配線数との関係において互いに素であるという条件を満たしている。加えて、本実施の形態においては、各貫通配線それら自体が各DRAMチップの選択に対応付けられているのではなく、貫通配線群毎に一本の貫通配線を選定し、選定された貫通配線の多数の組み合わせのそれぞれを各DRAMチップの選択に対応付けている。
【0018】
例えば、7本の貫通配線をそれぞれDRAMチップの選択に対応付ける従来のやり方では、最も多くて7個のDRAMチップしか選択できない。しかし、7本の貫通配線を4本の貫通配線X1〜X4からなる貫通配線群と3本の貫通配線Y1〜Y3からなる貫通配線群の2つのグループに分けた場合、図2の表に示されるように、最高で12個(=3×4)のDRAMチップを選択することができる。また、9本の貫通配線を4本の貫通配線X1〜X4からなる貫通配線群と5本の貫通配線Y1〜Y5からなる貫通配線群の2つのグループに分けた場合、図3の表に示されるように、最高で20個(=4×5)のDRAMチップを選択することができる。更に、10本の貫通配線を2本の貫通配線X1,X2からなる貫通配線群と3本の貫通配線Y1〜Y3からなる貫通配線群と5本の貫通配線Z1〜Z5からなる貫通配線群の3つの貫通配線群に分けた場合、最高で30個(=2×3×5)のDRAMチップを選択することができる。
【0019】
このように、貫通配線群毎に一本の貫通配線を選定し、選定された貫通配線の多数の組み合わせのそれぞれを各DRAMチップの選択に対応付けることとし、その対応関係に基づいて、アサートすべき貫通配線の組を選定することとすれば、選択・認識可能なDRAMチップの個数を増やすことが可能となる。
【0020】
以下、図4〜図9を更に用いて、本実施の形態によるDRAM装置について、より具体的に説明する。なお、本実施の形態においては、バンクアドレスで示されるメモリバンクとDRAMチップ10〜80とが一対一に対応しており、選択すべきDRAMチップ10〜80はバンクアドレスBA0,BA1,BA2の3つのアドレスの値の組み合わせによって示されている。
【0021】
図4に示されるように、インターフェースチップ100上には、これらバンクアドレスBA0〜BA2の値から選択すべきDRAMチップ10〜80に対応する貫通配線の組み合わせを選定し、その選定した貫通配線の組み合わせをアサートする貫通配線選定回路110が設けられている。詳しくは、貫通配線選定回路110は、図5に示される真理値表に従ってアサートすべき貫通配線のみをアサートするように構成されている。
【0022】
なお、図4の貫通配線選定回路110の出力部から明らかなように、本実施の形態によるDRAM装置は、4本の貫通配線X1〜X4からなる貫通配線群と3本の貫通配線Y1〜Y3からなる貫通配線群の2つの貫通配線群を備えている。従って、理論上は12個のDRAMチップを選択することができる。そのため、例えば、貫通配線選定回路110を含めインターフェースチップ100の構成を変更すれば、12個のDRAMチップを選択することも可能である。例えば、バンクアドレスBA3も選択すべきDRAMチップを示すために用いられるものとした場合、バンクアドレスBA0〜BA2に加え、バンクアドレスBA3も貫通配線選定回路110に引き込むこととすると共に、バンクアドレスBA0〜BA3に基づいて貫通配線X1〜X4と貫通配線Y1〜Y3との組み合わせを決定することが可能なように、貫通配線選定回路110の構成に若干の変更を加えればよい。
【0023】
図6及び図7に、貫通配線選定回路110の例を示す。 }6に示される貫通配線選定回路110aは、バンクアドレスBA3をもMOD3回路及びMOD4回路に入力することとすれば12個のDRAMチップまで対応可能なものであるが、図7に示される貫通配線選定回路110bは、9個以上のDRAMチップを備えているものには対応できない。勿論、いずれの貫通配線選定回路110a及び110bも、本実施の形態のように8個のDRAMチップ10〜80の選択には対応可能である。
【0024】
図8及び図9に示されるように、各DRAMチップ10〜80における端子は同じ配置状態を採用しており、4A,4B,4C,4Dに各DRAMチップの層番号1〜8を添え字として付した参照符号で示されている。本実施の形態における貫通配線X1〜X4は、真っ直ぐ上方に向けて延びており、DRAMチップ10〜80上において対応する端子4A〜端子4A、端子4B〜4B、端子4C〜4C、端子4D〜4Dをそれぞれ貫いている。他の貫通配線群における貫通配線Y1〜Y3についても同様に構成されている。
【0025】
この場合、一組のアサートされた貫通配線に対応する一組の端子の位置は、DRAMチップ10〜80毎に異なっている。従って、各DRAMチップ10〜80は、自己の層番号に対応して自己が選択される場合にアサートされるはずの端子をチェックするように構成されていなければならない。具体的には、各DRAMチップ10〜80は、自己が選択されているか否かを自己判定し選択されていた場合には内部信号を生成する信号生成回路を備えているが、判定材料としてチェックする端子は各DRAMチップ10〜80毎に異なっている。例えば、DRAMチップ10においては、端子4Aと端子3Aとが同時に“1”となるときに自己が選択されたことを示す内部信号11aを発行する。また、DRAMチップ20においては、端子4Bと端子3Bとが同時に“1”となるときに自己が選択されたことを示す内部信号21aを発行する。このように、本実施の形態におけるDRAMチップは各層毎に異なる構成を採らなければならない。しかしながら、この場合にも、貫通配線の本数削減という効果は得ることができる。
【0026】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態によるDRAM装置は、互いに同一構造を備えるDRAMチップを積層してなるものである。その他の点(例えば、インターフェースチップ100の構成など)は上述した第1の実施の形態と同様であるが、すべてのDRAMチップを同一構成とするために、本実施の形態においては貫通配線の貫通ルートに工夫を凝らしてある。
【0027】
本実施の形態においては、貫通ルートを説明するために、有向サイクルグラフという概念を導入する。有向サイクルグラフとは、複数のノードを当該ノードと同数の有向辺によって連結されてなるサイクルグラフであって、すべての有向辺がサイクル内の同一方向に向いているようなグラフをいう。また、すべての有向辺が同一方向に向いているようなサイクルを有向サイクルという。
【0028】
本実施の形態においては、各DRAMチップ上の端子は、有向サイクルグラフ上のノードと一対一に対応付けられて配置されている。図10には、様々な有向サイクルグラフの例が示されている。図10(a)に示されているのは端子数が2の場合であり、図10(b)に示されているのは端子数が3の場合である。有向サイクルグラフ上のノード遷移というのは論理的なものであるので、図10(c)に示されるような5つの端子5A〜5Eを図示された順番で巡回するような有向サイクルグラフも考えられる。また、各端子はかならずしも単純多角形の頂点上に配置されていなくても良い。例えば、図10(d)において端子5Bは、端子5Aと端子5Cとを結ぶ直線上に位置している。なお、単純多角形とは、各辺を構成する線分が頂点以外で交差しない多角形をいう。但し、物理的な配置と論理的な有向サイクルグラフ上の遷移との対応を分かりやすくし、設計を容易なものとするには、物理的に単純な閉路上にすべての端子が配置されているか(例えば、図10(a)又は図10(d))、貫通配線数(端子数)に応じた単純多角形の頂点上に各端子が配置されている(例えば、図10(b))ことが好ましい。
【0029】
具体的には、貫通配線X1〜X4に対応する端子4A〜4Dは図11に示されるように配置され、貫通配線Y1〜Y3に対応する端子3A〜3Cは図12に示されるように配置されている。なお、以下において、端子4A〜4D及び端子3A〜3Cは各DRAMチップの下面に形成された下部端子を言うこととし、DRAMチップの上面に形成された上部端子には“’(ダッシュ)”を付し下部端子と区別することとする。
【0030】
図11及び図12から明らかなように、下部端子4A〜4D及び下部端子3A〜3Cと上部端子4A’〜4D’及び上部端子3A’〜3C’互いに同一の配置状態を採っており、従って、上部端子4A’〜4D’及び上部端子3A’〜3C’は対応する下部端子4A〜4D及び下部端子3A〜3Cの直上に位置している。しかしながら、下部端子4A〜4D及び下部端子3A〜3Cとその直上に位置する上部端子4A’〜4D’及び上部端子3A’〜3C’とは、各DRAMチップ内部では接続されていない。
【0031】
図11及び図12に示されるように、下部端子4A〜4D及び下部端子3A〜3Cは、夫々、上部端子4D’〜4C’及び上部端子3C’〜3B’に接続されている。すなわち、図11においては、“4D→4C→4B→4A→4D”と巡回する有向サイクルグラフにおいて、各下部端子4A,4B,4C,4Dとそれらに対応するノードの次ノードに対応する4D’,4A’,4B’,4C’とが接続されている。同様に、図12においては、“3C→3B→3A→3C”と巡回する有向サイクルグラフにおいて、各下部端子3A,3B,3Cとそれらに対応するノードの次ノードに対応する3C’,3A’,3B’とが接続されている。
【0032】
各DRAMチップにおける上部端子と下部端子との間の接続は、DRAMチップを積層した際に貫通配線の一部を構成するものである。従って、このようなDRAMチップを積層して得られたDRAM装置における貫通配線は、第1の実施の形態とは異なり、常に直上の端子を貫通し続けるわけではない。
【0033】
本実施の形態においては、下側に位置するDRAMチップの上部端子4A’〜4D’及び上部端子3A’〜3C’が、その直上に位置するDRAMチップの下部端子4A〜4D及び下部端子3A〜3Cと夫々接続されている。例えば、図13に示されるように、DRAMチップ10の上部端子4A’〜4D’及び上部端子3A’〜3C’とDRAMチップ20の下部端子4A〜4D及び下部端子3A〜3Cとが接続され、DRAMチップ20の上部端子4A’〜4D’及び上部端子3A’〜3C’とDRAMチップ30の下部端子4A〜4D及び下部端子3A〜3Cとが接続されている。即ち、DRAM装置をDRAMチップ10〜80の積層方向(即ち、チップの主面に対して垂直な方向)から見た場合(例えば、上から見た場合)に、対応する有向サイクルグラフが一致している。
【0034】
上述したようにしてDRAMチップ10〜80を積層すると、DRAMチップ10〜80を貫通する貫通配線X1〜X4及びY1〜Y3が形成される。これら各貫通配線は、図14に示されるように、DRAM装置をDRAMチップの積層方向から見た場合に、層番号が一つ変化するごとに、有向サイクルグラフ上のノードを当該有向サイクルグラフで定められる方向に一つずつ移動しつつ、関連する下部端子を貫いている。なお、貫通配線Y1〜Y3についても同様である。このように各貫通配線を構成すると、それぞれの層において各貫通配線は図15に示されるようにして貫通対象である端子を移動する。
【0035】
図9及び図15を比較すると、本実施の形態において各DRAMチップが自己判定用に用いなければならない下部端子は、いずれの層においても下部端子4A及び3Aである。4層以降についても図5を用いて確認すれば明らかなように、チェック対象である下部端子4A及び3Aに変化はない。ここで、いずれの層においても直接的なチェック対象となる下部端子を特定端子とよぶこととする。
【0036】
本実施の形態においては、図15に示されるように、各DRAMチップに搭載される信号生成回路12,22,32は、特定端子4A,4A,4A及び3A,3A,3Aがアサートされているかどうかをチェックすればよい。従って、本実施の形態においては、各層において同一構成のDRAMチップを用いることができる。
【0037】
なお、図15に示されるDRAMチップ10〜30に設けられている信号生成回路12〜32は、信頼性を高めるため、特定端子以外の下部端子がアサートされていないこともチェック対象としている。従って、各信号生成回路12〜32においては、特定端子がアサートされており、且つ、特定端子以外の下部端子がアサートされていない場合に限り、内部信号12a〜32aが発行される。
【0038】
これに対して、図16に示されるように、各信号生成回路13〜33においては、特定端子の状態のみをチェック対象とするようにすることも可能である。この場合、特定端子以外の端子の状態はチェックしていないので、特定端子以外の端子はアサートされていてもされていなくても良い。従って、図5に示される表を満たすようにして、適切な貫通配線をアサートすれば複数のDRAMチップを同時に選択することができる。例えば、貫通配線X1と貫通配線Y1及びY2の3本を同時にアサートすると、DRAMチップ10とDRAMチップ50とを同時に選択することができる。
【0039】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態によるDRAM装置においては、インターフェースチップに貫通配線選定回路を設けていない。その代わりに、貫通配線X1及びY1のみをVDDに固定し他の貫通配線X2〜X4及びY2,Y3をGND固定とする。即ち、正論理の場合、本実施の形態においては貫通配線X1及びY1のみが常時アサートされていることとなる。
【0040】
下部端子及び上部端子の配列並びに下部端子と上部端子との接続を第2の実施の形態の場合と同様にすると、各層ごとにアサートされている下部端子が夫々の有向サイクルに従って4A→4D→4C→4B→4A、3A→3C→3B→3Aと変化していく。この変化を考慮し、すべての下部端子の組み合わせをチェックすると、アサートされている下部端子の組み合わせによって自己の層番号を知ることができる。
【0041】
具体的には、本実施の形態における各DRAMチップには図17に示されるような層番号認識回路105が設けられている。層番号認識回路105は、アサートされている下部端子の組み合わせから自己の層番号を認識し、認識信号ID1〜ID8のいずれか一つをLレベルとする。この層番号認識回路105の出力は、図18に示される信号生成回路106に入力される。
【0042】
図18に示される信号生成回路106は、接点106aと電源との間に接続されたpチャネルトランジスタ106bと、接点106aとGNDとの間に並列接続された8個の2入力NAND回路106cと、接点106aのレベルを維持すると共に内部信号線106eに伝達するラッチ回路106dを備えている。pチャネルトランジスタ106bのゲートには、信号αが入力されている。信号αは接点106aをプリチャージすべきときにLレベルとなってpチャネルトランジスタ106bをオンさせる。各NAND回路106cは、接点106aとGNDとの間に従属接続された2つのnチャネルトランジスタから構成されている。各NAND回路の一方の入力(GNDに接続されるnチャネルトランジスタのゲート)には層番号認識回路105のID1〜ID8がインバータを介して接続されている。各NAND回路の他方の入力(接点106aに接続されるnチャネルトランジスタのゲート)には、各層がバンクアドレスBA0〜BA2によって選択指示された層である場合にアサートされるような層選択信号(BA0N1N2Nなど)が入力されている。ここで、図18において、“N”とはNot(=偽:0)を示し、“T”とはTrue(=真:1)を示す。また、N又はTの直前に記載された数値はバンクアドレスの番号である。従って、例えば、一層目のチップが選択されている場合には、層選択信号BA0N1N2Nのみがアサートされ、二層目のチップが選択されている場合には、層選択信号BA0T1N2Nのみがアサートされる。なお、層選択信号BA0N1N2Nのような信号は、例えば、インターフェースチップで生成して各DRAMチップに分配することとしても良いし、各DRAMチップにバンクアドレスBA0〜BA2も引き込み、各DRAMチップ内で生成させることとしても良い。
【0043】
図19には、一層目のDRAMチップ10に搭載されている信号生成回路106の動作が示されている。一層目のDRAMチップ10の場合、認識信号ID1のみがLレベルであり、他の認識信号ID2〜ID8はHレベルである。この状態で、信号αがアサートされる(信号αがLレベルになる)と、接点106aが電源と一時的に接続されて接点106aがプリチャージされる。接点106aがプリチャージされた状態は、ラッチ回路106dによって保持されると共に、内部信号線106eに伝達される。その状態で、バンクアドレスが発行されると、そのバンクアドレスに対応する層選択信号(BA0N1N2Nなど)のみがアサートされる。例えば、バンクアドレスにより一層目のDRAMチップ10が選択されている場合には、層選択信号BA0N1N2NのみがHレベルになり、他の層選択信号(例えば、BA0T1N2Nなど)はLレベルとなる。この場合、認識信号ID1に対応するNAND回路106cがLレベルを出力する。即ち、接点106aがGNDに接続されて、内部信号線106eがLレベルを出力する。一方、バンクアドレスにより選択されたチップが一層目ではなく例えば二層目のDRAMチップ20であった場合、層選択信号BA0T1N2NのみがHレベルとなり、他の層選択信号(例えば、BA0N1N2Nなど)はLレベルとなる。この場合、いずれのNAND回路106cもNAND条件を満たさない。従って、接点106aのレベルは信号αに応じてプリチャージされたHレベルに維持され、同様にして内部信号線106eもHレベルに維持される。
【0044】
他の層のDRAMチップ20〜80に搭載されている信号生成回路106も、上述した一層目のDRAMチップに搭載されている信号生成回路106と同様にして動作する。即ち、バンクアドレスによって自己の層が選択された場合のみ、内部信号線106e(接点106a)のレベルがLレベルとなり、一方、自己の層が選択されない場合には、内部信号線106e(接点106a)のレベルはHレベルに維持される。
【0045】
以上説明してきた本発明の実施の形態によるDRAM装置は様々な変形が可能である。例えば、第1の実施の形態におけるインターフェースチップ及び貫通配線と第3の実施の形態における層番号認識回路及び信号生成回路とを組み合わせれば、第1の実施の形態のように直上に延びるような貫通配線の場合でも同一構成のチップでチップ選択を実現することができる。なお、この場合、層番号認識回路105aと下部端子との接続関係は、図20に示されるようになる。
【0046】
また、上述した実施の形態においては、貫通配線群が複数あった場合についてのみ例示してきたが、例えば、第2又は第3の実施の形態において、貫通配線群を一組のみ備えていることとしても良い。
【0047】
更に、上述した実施の形態においては、層選択とバンクアドレスとを対応させた場合の例について説明してきたが、いずれの層を選択すべきかの信号はアドレス信号だけには限られず、例えばチップセレクト信号などを利用することとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、上に例示したDRAM装置のみならず、複数層の半導体チップを積層し且つチップ選択を行う必要性のある半導体集積回路装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるDRAM装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるDRAMチップ選択方法の一例を説明するための表である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるDRAMチップ選択方法の他の例を説明するための表である。
【図4】図1に示されるインターフェースチップ100の構成を示す図である。
【図5】図4に示される貫通配線選定回路の動作を規定する表である。
【図6】図4に示される貫通配線選定回路の一例を示す図である。
【図7】図4に示される貫通配線選定回路の他の例を示す図である。
【図8】第1の実施の形態における貫通配線がどのように延びているかを示す図である。
【図9】図1に示されるDRAMチップの構成を例示した図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態において導入した有向サイクルグラフを説明するための図である。
【図11】第2の実施の形態における各DRAMチップ上の一組の端子(端子数4)の接続関係を示す図である。
【図12】第2の実施の形態における各DRAMチップ上の他の組の端子(端子数3)の接続関係を示す図である。
【図13】図11及び図12に示されるDRAMチップが積層されたときに貫通配線がどのような形態をとるかを示す図である。
【図14】第2の実施の形態におけるDRAMチップの下部端子(端子数4)と貫通配線との関係を示す図である。
【図15】第2の実施の形態におけるDRAMチップの構成の例を示す図である。
【図16】第2の実施の形態におけるDRAMチップの構成の他の例を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態において各DRAMチップ上に設けられる層番号認識回路の構成を示す図である。
【図18】第3の実施の形態において層番号認識回路の後段に接続される信号生成回路の構成を示す図である。
【図19】図18に示される信号生成回路であって一層目のチップに搭載されたものの動作を示すタイミングチャートである。
【図20】第1の実施の形態と第3の実施の形態とを組み合わせる場合の層番号認識回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10〜80 DRAMチップ
11,21,31,12,22,32,13,23,33 信号生成回路
100 インターフェースチップ
110 貫通配線選定回路
105 層番号認識回路
106 信号生成回路
X1〜X4,Y1〜Y3 貫通配線
4A〜4D,3A〜3C 端子(下部端子)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体チップを積層してなる半導体集積回路装置において前記複数の半導体チップに貫通するようにして配置・形成された複数の貫通配線を用いて少なくとも一つの半導体チップを選択する半導体チップ選択方法であって、
前記複数の貫通配線を、複数の貫通配線群であって各貫通配線群の配線数が他の貫通配線群の配線数との関係において互いに素であるような複数の貫通配線群によって構成し、
前記貫通配線群毎に、該貫通配線群に含まれる前記貫通配線の中から少なくとも一つの前記貫通配線をアサートし、
前記各貫通配線群においてアサートされた前記貫通配線の組み合わせを利用して前記半導体チップを選択する
ことを特徴とする半導体チップ選択方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体チップ選択方法に使用可能な半導体チップであって、
第1及び第2面を有しており、且つ、前記貫通配線群毎に、前記第1面上に形成された複数の第1端子からなる第1端子群及び前記第2面上に形成された第2端子であって対応する前記第1端子と同数の前記第2端子からなる第2端子群を備えており、
前記各貫通配線群に対応する前記第1端子群における前記第1端子の数は、当該貫通配線群の配線数に等しく、
前記各貫通配線群に対応する前記第1端子群における前記第1端子は、当該貫通配線群の配線数に等しいノードを有し且つ当該ノードを当該ノードと同数の有向辺で有向サイクルを構成するように連結してなる有向サイクルグラフにおいて、前記ノードと一対一に対応付けられるようにして配置されており、
前記各貫通配線群に対応する前記第2端子群における前記第2端子は、前記対応する第1端子と同じ配置状態をとり、
前記第2端子群における前記第2端子の夫々は、対応する前記第1端子群における前記第1端子の一つであって、当該第2端子群に関連した前記有向サイクルグラフにおける当該第2端子に対応する前記ノードの次のノードに対応する前記第1端子に接続されている
ことを特徴とする半導体チップ。
【請求項3】
請求項2記載の半導体チップであって、前記貫通配線群毎に前記第2端子のいずれか一つを特定端子と定義した場合において、
すべての前記貫通配線群における前記特定端子に接続され、当該特定端子のすべてがアサートされている場合に自己が選択されたことを示す信号を生成する信号生成回路を更に備えている
ことを特徴とする半導体チップ。
【請求項4】
請求項2記載の半導体チップであって、複数個積層されて半導体集積回路装置として用いられる際には、一の半導体チップにおける前記第2端子であって前記貫通配線群毎に一つずつのみ選択された前記第2端子を固定的にアサートされる半導体チップにおいて、
アサートされた前記第2端子の組み合わせから前記半導体集積回路装置における自己の層番号を認識するための層番号認識回路と、
いずれの層番号の前記半導体チップを選択すべきかを示す信号と前記層番号認識回路の認識結果を受けて、前記信号により示される層番号と前記層番号認識回路の認識結果とが一致している場合に自己が選択されたことを示す内部信号を生成する信号生成回路を
更に備えている、ことを特徴とする半導体チップ。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の半導体チップであって、
一の前記第2端子群を構成する前記第2端子は、単純多角形の頂点に相当する位置に夫々配置されている、
ことを特徴とする半導体チップ。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載の半導体チップを複数個積層してなる半導体集積回路装置であって、
前記半導体チップは、互いに同一構造を備えており、
前記複数の半導体チップは、一の前記半導体チップの前記第1面と他の一の前記半導体チップの前記第2面とを対向させるようにして、且つ、当該半導体集積回路装置を前記半導体チップの積層方向から見た場合に、対応する前記有向サイクルグラフが一致するようにして、積層されている、
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体集積回路装置において、
前記各貫通配線群に含まれる前記貫通配線の各々は、当該半導体集積回路装置を前記半導体チップの積層方向から見た場合に、前記層番号が一つ変化するごとに、前記有向サイクルグラフ上の前記ノードを当該有向サイクルグラフで定められる方向に一つずつ移動するようにして、配置されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項8】
請求項3記載の半導体チップを複数個積層してなる半導体集積回路装置であって、
前記半導体チップは、互いに同一構造を備えており、
前記複数の半導体チップは、一の前記半導体チップの前記第1面と他の一の前記半導体チップの前記第2面とを対向させるようにして、且つ、当該半導体集積回路装置を前記半導体チップの積層方向から見た場合に、対応する前記有向サイクルグラフが一致するようにして、積層されている半導体集積回路装置において、
いずれの層番号の前記半導体チップを選択すべきかを示す信号の内容に基づいて前記貫通配線毎に少なくとも一つの貫通配線を選定し、当該選定した貫通配線をアサートする貫通配線選定回路を更に備える
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体集積回路装置において、
前記貫通配線選定回路は、前記半導体集積回路装置を構成する前記半導体チップから二以上の前記半導体チップを同時に選択する場合には、前記複数の貫通配線群のうちの少なくとも一つの貫通配線群に含まれる二以上の貫通配線を同時に選定し、且つ、当該選定された貫通配線を同時にアサートする
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項10】
第1及び第2面を有しており、且つ、前記第1面上に形成された複数の第1端子からなる第1端子群及び前記第2面上に形成された前記第1端子と同数の前記第2端子からなる第2端子群を備えており、
前記第1端子群における前記第1端子は、当該第1端子の数に等しいノードを有し且つ当該ノードを当該ノードと同数の有向辺で有向サイクルを構成するように連結してなる有向サイクルグラフにおいて、前記ノードと一対一に対応付けられるようにして配置されており、
前記第2端子群における前記第2端子は、前記第1端子群における前記第1端子と同じ配置状態をとり、
前記第2端子群における前記第2端子の夫々は、前記第1端子群における前記第1端子の一つであって、当該第2端子群に前記有向サイクルグラフにおける当該第2端子に対応する前記ノードの次のノードに対応する前記第1端子に接続されている
ことを特徴とする半導体チップ。
【請求項11】
請求項10記載の半導体チップを複数個積層してなる半導体集積回路装置であって、
前記半導体チップは、互いに同一構造を備えており、
前記複数の半導体チップは、一の前記半導体チップの前記第1面と他の一の前記半導体チップの前記第2面とを対向させるようにして積層されており、
一の前記半導体チップの前記第1面上の前記第1端子は、当該半導体集積回路装置を前記半導体チップの積層方向から見た場合に、対応する前記有向サイクルグラフが一致するようにして、他の一の前記半導体チップの前記対向する第2面上の前記第2端子と接続され、それによって前記複数の半導体チップを貫通する貫通配線であって前記第1端子と同数の貫通配線からなる貫通配線群が形成されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体集積回路装置において、
前記貫通配線の各々は、前記貫通配線群の配線数が3以上の場合には、一層毎に前記有向サイクルグラフにおける隣接ノードを当該有向サイクルで定められる順番に従って通ってなる有向多角螺旋状の電気的パスを形成する
ことを特徴とする半導体集積回路装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−313607(P2006−313607A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136659(P2005−136659)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】