説明

半導体リソグラフィー用共重合体及びその製造方法

【課題】半導体の製造において使用されるレジスト用ポリマーにおいて、ラフネスが小さく、現像欠陥が少なく、かつDOFなどのリソグラフィー特性の優れたレジスト用ポリマーとその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の半導体リソグラフィー用共重合体は、少なくとも酸の作用でアルカリ可溶性が増大するカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(A)とカルボキシル基を有する繰り返し単位(B)とを含む共重合体であって、少なくとも繰り返し単位(A)を与える単量体を(共)重合する工程(P)と、繰り返し単位(A)を有する(共)重合体および/または繰り返し単位(A)を与える単量体を酸と共存させて繰り返し単位(B)を生成する工程(Q)とを経て得られることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造に使用されるリソグラフィー用共重合体及びその製造方法に関するものである。更に詳しくは、遠紫外線、X線、電子線などの各種放射線を用いる微細加工に好適な半導体リソグラフィー用共重合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造のために用いられるリソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴い、より微細なパターンの形成が求められている。パターンの微細化には露光光源の短波長化が不可欠であるが、現在ではフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー光(波長248nm)によるリソグラフィーが量産の中心になり、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー光(波長193nm)によるリソグラフィーも量産で導入され始めている。更には、フッ素ダイマー(F)エキシマレーザー光(波長157nm)、極紫外線(EUV)、X線、電子線等によるリソグラフィーも研究段階にある。
【0003】
これらのリソグラフィー技術に用いられるレジスト用ポリマーは、アルカリ現像液に可溶な極性基(以下、アルカリ可溶性基)を酸解離性かつ非極性であってアルカリ現像液に対する溶解性を抑制する置換基(以下、酸解離性溶解抑制基)で保護した構造を有する繰り返し単位と、半導体基板等に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位を必須成分とし、必要に応じてレジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための極性もしくは非極性の置換基を有する繰り返し単位を含んで構成される。露光源としてKrFエキシマレーザーを用いるリソグラフィーにおいては、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と、ヒドロキシスチレン由来のフェノール水酸基を酸解離性溶解抑制基で保護した繰り返し単位、もしくは(メタ)アクリル酸由来のカルボキシル基を酸解離性溶解抑制基で保護した繰り返し単位等を有する共重合体(例えば、特許文献1〜4等参照)が知られている。また、ドライエッチング耐性や、露光部と未露光部の溶解コントラストを高めるために脂環式炭化水素基を酸解離性溶解抑制基とした繰り返し単位を有する共重合体(特許文献5〜6等参照)が知られている。
【0004】
露光源としてより短波長のArFエキシマレーザーなどを用いるリソグラフィーにおいては、193nmの波長に対する吸光係数が高いヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位を有さない共重合体が検討され、半導体基板等に対する密着性を高めるための極性基として、ラクトン構造を繰り返し単位に有する共重合体(例えば、特許文献7〜10等参照)や、極性基含有脂環式炭化水素基を繰り返し単位に有する共重合体(例えば、特許文献11等参照)が知られている。しかし、このような共重合体は現像後にパターン欠陥が発生することが問題となり、様々な改良が検討されてきた。その一つとして、ラクトン構造と脂環式炭化水素基を繰り返し単位とし、さらに(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を有する共重合体(例えば、特許文献12〜13等参照)が知られている。
【0005】
しかし、これらの技術では、現像欠陥を抑制することができても、焦点深度(DOF)などのリソグラフィー特性が十分でなかった。このため、現像欠陥が少なく、かつリソグラフィー特性の優れたレジスト用ポリマーとその製造方法が強く望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−045439号公報
【特許文献2】特開平05−113667号公報
【特許文献3】特開平10−026828号公報
【特許文献4】特開昭62−115440号公報
【特許文献5】特開平09−073173号公報
【特許文献6】特開平10−161313号公報
【特許文献7】特開平09−090637号公報
【特許文献8】特開平10−207069号公報
【特許文献9】特開2000−026446号公報
【特許文献10】特開2001−242627号公報
【特許文献11】特開平11−109632号公報
【特許文献12】特開2000−321771号公報
【特許文献13】特開2000−338673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体の製造において使用されるレジスト用ポリマーにおいて、ラフネスが小さく、現像欠陥が少なく、かつDOFなどのリソグラフィー特性の優れたレジスト用ポリマーとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、少なくとも酸の作用でアルカリ可溶性が増大するカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(A)とカルボキシル基を有する繰り返し単位(B)とを含む共重合体であって、少なくとも繰り返し単位(A)を与える単量体を(共)重合する工程(P)と、繰り返し単位(A)を有する(共)重合体および/または繰り返し単位(A)を与える単量体を酸と共存させて繰り返し単位(B)を生成する工程(Q)とを経て得られる共重合体によって解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明の共重合体を用いることにより、現像欠陥が抑制され、かつDOFが大きいなど、半導体の製造に好適な、微細かつ良好なリソグラフィーパターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、少なくとも酸の作用でアルカリ可溶性が増大するカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(A)とカルボキシル基を有する繰り返し単位(B)とを含む共重合体であって、少なくとも繰り返し単位(A)を与える単量体を(共)重合する工程(P)と、繰り返し単位(A)を有する(共)重合体および/または繰り返し単位(A)を与える単量体を酸と共存させて繰り返し単位(B)を生成する工程(Q)とを経て得られることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体およびその製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明の共重合体はラクトン構造を有する繰り返し単位(C)を含むことが好ましく、酸に安定な脂環式炭化水素基が置換したカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(D)を含むことがさらに好ましい。
【0012】
繰り返し単位(A)の好ましい例として、一般式(a)で表される構造を挙げることができる。
【化11】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R11は炭素数1〜4の炭化水素基であり、R12およびR13はそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、あるいはR12とR13でお互いに結合して形成した炭素数5〜12の単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基を表すか、もしくは、R11およびR12は水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基であり、R13は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基が置換したオキシ基を表す。)
【0013】
繰り返し単位(A)を与える単量体は、一般式(am)で表すことができる。
【化12】

(式中、Rは水素原子もしくはメチル基を表し、R11は炭素数1〜4のアルキル基であり、R12およびR13はそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、あるいはR12とR13でお互いに結合して形成した炭素数5〜12の単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基を表すか、もしくは、R11およびR12は水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基であり、R13は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基が置換したエーテル結合を表す。)
【0014】
一般式(am)の具体的な例として、以下に示す(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらは単独もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【化13】

【化14】

【化15】

【0015】
繰り返し単位(B)の好ましい例として、一般式(b)で表される構造を挙げることができる。
【化16】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)
【0016】
繰り返し単位(B)は、工程(Q)によって少なくとも繰り返し単位(A)もしくは繰り返し単位(A)を与える単量体から生成させることが必須であるが、工程(Q)によって後述する繰り返し単位(C)もしくは繰り返し単位(C)を与える単量体からも生成する場合は、その分も繰り返し単位(B)に含めることができる。
【0017】
工程(Q)によって生成する繰り返し単位(B)の具体例として、少なくとも以下の2例を挙げることができる。
【化17】

【0018】
また、繰り返し単位(C)のラクトン環が開環した場合は、その開環した構造も含めることができる。
【0019】
本発明では、半導体基板や下層膜との密着性やレジスト溶媒への溶解性を高めるため、一般式(c)で表されるラクトン構造を有する繰り返し単位(C)を含むことがより好ましい。
【化18】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aは単結合もしくは炭素数5〜12の単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、Lは一般式(L)で表されるラクトン構造を表し、AとLは1乃至2の連結基で結合している。)
【化19】

(式中、R31〜R36のいずれか1つもしくは2つが一般式(c)のAとの連結基であり、残りは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基またはアルコキシル基を表す。)
【0020】
繰り返し単位(C)は、工程(P)において、一般式(cm)で表される単量体を共重合することによって生成することができる。
【化20】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aは単結合もしくは炭素数5〜12の単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、Lは一般式(L)で表されるラクトン構造を表し、AとLは1乃至2の連結基で結合している。)
【0021】
一般式(cm)で表される単量体の例としては、以下に示す(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらは単独もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【化21】

【0022】
【化22】

【0023】
【化23】

【0024】
【化24】

【0025】
さらに本発明では、レジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節したり、プラズマエッチング耐性を向上させたりするために、一般式(d)で表される酸に安定な脂環式炭化水素基が置換したカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(D)を含むことが好ましい。
【化25】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aはハロゲン原子が置換しても良い炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基、kは0〜3の整数を表す。)
【0026】
繰り返し単位(D)は、工程(P)において、一般式(dm)で表される単量体を共重合することによって生成することができる。
【化26】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aはハロゲン原子が置換しても良い炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基、kは0〜3の整数を表す。)
【0027】
一般式(dm)の具体的な例として、以下に示す(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらは単独もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【化27】

【0028】
【化28】

【0029】
一般式(dm)の中でも、良好なレジストパターン形状を得やすいことや、レジスト膜のプラズマエッチング耐性が高いことから、(d301)〜(d303)および(d351)〜(d353)のヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート類が好ましく、中でも(d301)および(d351)は特に好ましい。
【0030】
この他、溶解性やレジスト膜中の酸の拡散速度を制御する目的で、一般式(em)で表される単量体を共重合させることができる。
【化29】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aはハロゲン原子が置換しても良い炭素数7〜12の有橋環を有する1〜3価の脂環式炭化水素基、jは1〜2の整数を表す。)
【0031】
一般式(em)の具体的な例として、以下に示す(メタ)アクリレートを挙げることができ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【化30】

【0032】
繰り返し単位(B)は、本発明において特に重要であり、この組成比が高いほどディフェクトが低減できる。また、繰り返し単位(B)は、単に一般式(b)を与える単量体を共重合させた場合、DOFが小さいが、工程(Q)を経て生成させた場合、DOFが大きい。従って、本発明では、繰り返し単位(B)の組成比は高い方が好ましい。しかし、繰り返し単位(B)の組成比は、極端に高いと現像時にパターンが膨潤しやすい等の問題があることから、通常1〜20モル%の範囲から選ぶことができ、好ましくは2〜10モル%、特に好ましくは3〜8モル%の範囲から選ぶことができる。この他の繰り返し単位(A)、(C)、(D)の組成比は、半導体リソグラフィーにおける基本性能を損なわない範囲で選択することができる。即ち、各繰り返し単位の組成は、繰り返し単位(A)が10〜60モル%、繰り返し単位(C)が10〜70モル%、繰り返し単位(D)が0〜40の範囲から選ぶことができる。特に好ましくは、繰り返し単位(A)が20〜50モル%、繰り返し単位(C)が20〜60モル%、繰り返し単位(D)が5〜35モル%である。
【0033】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、高すぎるとレジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性が低くなり、一方、低すぎるとレジストの塗膜性能が悪くなることから、2,000〜40,000の範囲内であることが好ましく、3,000〜30,000の範囲内であることがより好ましく、4,000〜25,000の範囲内であることが特に好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜5.0の範囲内であることが好ましく、1.0〜3.0の範囲内であることがより好ましく、1.2〜2.5の範囲内であることが特に好ましい。
【0034】
工程(P)は、有機溶媒中のラジカル重合によって実施することができ、その方法は公知の方法から制限なく選択できる。このような方法として、例えば、(1)単量体を重合開始剤と共に溶媒に溶解し、そのまま加熱して重合させるいわゆる一括法、(2)単量体を重合開始剤と共に必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に滴下して重合させるいわゆる滴下法、(3)単量体と重合開始剤と別々に必要に応じて溶媒に溶解し、加熱した溶媒中に別々に滴下して重合させるいわゆる独立滴下法、(4)単量体を溶媒に溶解して加熱し、別途溶媒に溶解した重合開始剤を滴下して重合させる開始剤滴下法などが挙げられる。ここで、(1)、(4)は重合系内において、(2)は重合系内に滴下する前の滴下液貯槽内において、未反応モノマーの濃度が高い状態で低濃度のラジカルと接触する機会があるため、ディフェクト発生原因のひとつである分子量10万以上の高分子量体(ハイポリマー)が生成しやすい。これに比べて、(3)の独立滴下法は、滴下液貯槽で重合開始剤と共存しないこと、重合系内に滴下した際も未反応モノマー濃度が低い状態を保つことからハイポリマーが生成しない。従って、本発明の重合方法としては(3)の独立滴下法が特に好ましい。
【0035】
本発明においては連鎖移動剤を用いても良い。(1)の一括重合法においては、単量体、重合開始剤と共に溶媒に溶解して加熱することができる。(2)〜(4)の滴下重合法においては、単量体と混合して滴下しても良く、重合開始剤と混合して滴下しても良く、更には予め加熱する溶媒中に溶解しても良い。
【0036】
なお、滴下法において、滴下時間と共に滴下する単量体の組成、単量体、重合開始剤および連鎖移動剤の組成比などを変化させても良い。
【0037】
重合開始剤としては、一般にラジカル発生剤として用いられているものであれば特に制限されないが、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を単独若しくは混合して用いることができる。重合開始剤の使用量は、目的とするMw、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒の種類、組成、重合温度や滴下速度等の条件に応じて選択することができる。
【0038】
連鎖移動剤としては、例えば、ドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸等の公知のチオール化合物を単独若しくは混合して用いることができる。特に好ましい連鎖移動剤として、式(fm)で表されるようなメルカプトアルキルヘキサフルオロプロパノール化合物が挙げられる。このような連鎖移動剤を用いることにより、共重合体の末端にヒドロキシヘキサフルオロプロピリデン構造を含む置換基が導入されるが、この置換基は適度な酸解離定数を有するために、ディフェクトの低減やLER(ラインエッジラフネス=レジストパターンのライン側壁の不均一な凸凹)の低減に有効である。
【化31】

【0039】
連鎖移動剤の使用量は、目的とするMw、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒の種類、組成、重合温度や滴下速度等の条件に応じて選択することができる。
【0040】
溶媒としては、溶剤として公知の化合物であって、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、更には重合して得られた共重合体を溶解させる化合物であれば特に制限されない。このような例として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のエーテルアルコール類;前記エーテルアルコール類と酢酸等とのエステル化合物であるエーテルエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
重合温度は、溶媒、単量体、連鎖移動剤等の沸点、重合開始剤の半減期温度等によって適宜選択することができる。低温では重合が進みにくいため生産性に問題があり、また、必要以上に高温にすると、モノマー及びレジスト用ポリマーの安定性の点で問題がある。従って、好ましくは40〜120℃、特に好ましくは60〜100℃の範囲で選択する。
【0042】
滴下法における滴下時間は、短時間だと分子量分布が広くなりやすいこと、一度に大量の溶液が滴下されるため重合液の温度低下が起こることからため好ましくなく、長時間だと共重合体に必要以上の熱履歴がかかること、生産性が低下することから好ましくない。従って、通常30分から24時間、好ましくは1時間から12時間、特に好ましくは2時間から8時間の範囲から選択する。滴下法における滴下終了後および一括法における重合温度に昇温後は、一定時間温度を維持するか、もしくは昇温して熟成を行い、残存する未反応モノマーを反応させることが好ましい。熟成時間は長すぎると時間当たりの生産効率が低下すること、共重合体に必要以上の熱履歴がかかることから好ましくない。従って、通常12時間以内、好ましくは6時間以内、特に好ましくは1〜4時間の範囲から選択する。
【0043】
工程(Q)は、工程(P)と同時に行っても良く、工程(P)の後に行っても良い。工程(P)と工程(Q)を同時に行う場合は、酸存在下で重合することで、重合と脱保護を並行して進めることができる。酸は重合前の溶媒、単量体、重合開始剤もしくは連鎖移動剤と共存させても良く、重合中に単独で、もしくは溶媒、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤と共に供給しても良い。酸の供給タイミングは、加熱前、滴下中、熟成中、熟成終了後のいずれのタイミングでも良い。工程(P)の後に工程(Q)を行う場合は、工程(P)終了後に引き続き、もしくは工程(P)の後の未反応単量体などの不純物を除去する精製工程など経た後に酸存在下に加熱して行うことができる。
【0044】
酸の種類は、繰り返し単位(A)及び/または繰り返し単位(A)を与える単量体の酸解離性溶解抑制基を解離することができれば特に制限されないが、水中25℃でのpKaが2.0以下の強酸を用いることが好ましい。より好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.5以下の強酸である。このような強酸の具体例として、トリフルオロ酢酸等のパーフルオロカルボン酸類、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびその水和物、ベンゼンスルホン酸およびその水和物のような有機スルホン酸類、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、臭化水素酸等を挙げることができ、これらの強酸を2種類以上混合して用いても良い。
【0045】
酸の濃度、反応温度、時間は、目的とする酸解離性溶解抑制基の解離率、酸や酸解離性溶解抑制基の種類によって適宜選択することができる。酸は、通常、反応液中に0.1〜1000ppm存在させることが好ましく、1〜500ppm存在させることがより好ましい。特に好ましくは2〜200ppmである。反応温度は、通常40℃以上、好ましくは重合温度で、時間は30分以上、好ましくは1時間以上で行う。
【0046】
工程(P)、または工程(P)及び工程(Q)を経て得られた共重合体は、未反応単量体、オリゴマー等の低分子量成分、重合開始剤や連鎖移動剤及びその反応残査物、工程(Q)で用いた酸等の不要物を含むため、工程(R)にて精製することが好ましい。例えば、(R−1):貧溶媒を加えて共重合体を沈殿させた後、溶媒相を分離する方法、(R−1a):(R−1)に続いて貧溶媒を加え、共重合体を洗浄した後、溶媒相を分離する方法、(R−1b):(R−1)に続いて良溶媒を加え、共重合体を再溶解させ、さらに貧溶媒を加えて共重合体を再沈殿させた後、溶媒相を分離する方法、(R−2):貧溶媒を加えて貧溶媒相と良溶媒相の二相を形成し、貧溶媒相を分離する方法、(R−2a):(R−2)に続いて貧溶媒を加え、良溶媒相を洗浄した後、貧溶媒相を分離する方法等が挙げられる。(R−1a)、(R−1b)、(R−2a)は繰り返しても良いし、それぞれ組み合わせても良い。工程(Q)の後は、(R−3):アミンなどの塩基性物質で中和する方法、(R−4):塩基性イオン交換樹脂などに酸性分を吸着させる工程等によって酸を除去する方法を行っても良く、(R−3)および(R−4)は、(R−1)、(R−1a)、(R−1b)、(R−2)、(R−2a)と組み合わせても良い。
【0047】
貧溶媒は、共重合体が溶解しにくい溶媒であれば特に制限されないが、例えば、水やメタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類等を用いることができる。工程(Q)で用いた酸を、(R−1)もしくは(R−2)で除く場合、水やメタノール、イソプロパノールなどのアルコール類を用いることが好ましい。また良溶媒は、共重合体が溶解しやすい溶媒であれば特に制限されず、1種または2種以上の混合溶媒として用いることができる。製造工程の管理上、重合溶媒と同じものが好ましい。良溶媒の例としては、工程(P)および工程(Q)の反応溶媒として例示された溶媒と同じものを挙げることができる。
【0048】
精製後の共重合体は、精製時に用いた溶媒が含まれているため、減圧乾燥によって溶媒分を低減した乾燥固体の共重合体に仕上げるか、乾燥前若しくは乾燥後の共重合体を工程(P)や工程(Q)の反応溶媒として例示された溶媒、もしくは後述するようなレジスト組成物を構成する有機溶媒(以下、レジスト溶媒)に溶解した後、必要に応じてレジスト溶媒を供給しながら、レジスト溶媒以外の低沸点化合物を留去してレジスト溶媒に溶解した共重合体溶液に仕上げることができる。
【0049】
減圧乾燥および溶剤置換の温度は、共重合体が変質しない温度であれば特に制限されないが、通常100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下が特に好ましい。また、溶剤置換に用いるレジスト溶媒の量は、少なすぎると低沸点化合物が十分に除去できず、多すぎると溶剤置換に時間がかかり、共重合体に必要以上に熱履歴を与えるため好ましくない。通常、仕上がり溶液中の溶媒量の1.05倍〜10倍、好ましくは1.1倍〜5倍、特に好ましくは1.2倍〜3倍の範囲から選択できる。
【0050】
こうして得られた乾燥固体の共重合体は1種または2種以上のレジスト溶媒に溶解し、またレジスト溶媒に溶解した共重合体溶液は必要に応じてレジスト溶媒で希釈するか、または他の種類のレジスト溶媒を混合すると共に、感放射線性酸発生剤(X)(以下、成分(X))、放射線に暴露されない部分への酸の拡散を防止するための含窒素有機化合物等の酸拡散抑制剤(Y)(以下、成分(Y))、必要に応じてその他添加剤(Z)(以下、成分(Z))を添加して、レジスト組成物に仕上げることができる。
【0051】
成分(X)は、これまで化学増幅型レジスト用の感放射線性酸発生剤として提案されているものから適宜選択して用いることができる。このような例として、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩、オキシムスルホネート類、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類などのジアゾメタン類、ニトロベンジルスルホネート類、イミノスルホネート類、ジスルホン類等を挙げることができる。中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。共重合体100質量部に対して通常0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部の範囲で用いられる。
【0052】
成分(Y)は、これまで化学増幅型レジスト用の酸拡散抑制剤として提案されているものから適宜選択することができる。このような例として、含窒素有機化合物を挙げることができ、第一級〜第三級のアルキルアミンもしくはヒドロキシアルキルアミンが好ましい。特に第三級アルキルアミン、第三級ヒドロキシアルキルアミンが好ましく、中でもトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが特に好ましい。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。共重合体100重量部に対して通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0053】
レジスト溶媒は、レジスト組成物を構成する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上の混合溶媒として用いることができる。通常、工程(P)や工程(Q)の反応溶媒、工程(R)の良溶媒として例示された溶媒の中から、共重合体以外の組成物の溶解性、粘度、沸点、リソグラフィーに用いられる放射線の吸収等を考慮して選択することができる。特に好ましいレジスト溶媒は、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル(EL)、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であり、中でも、PGMEAと他の極性溶剤との混合溶剤は特に好ましい。さらに混合する極性溶媒としてはELが特に好ましい。
【0054】
レジスト組成物中に含まれるレジスト溶媒の量は特に制限されないが、通常、基板等に塗布可能な濃度であり、塗布膜厚に応じて適当な粘度となるように適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となるように用いられる。
【0055】
その他添加剤(Z)としては、酸発生剤の感度劣化防止やレジストパターンの形状、引き置き安定性などの向上を目的とした有機カルボン酸類やリンのオキソ酸類、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑止剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料など、レジスト用添加剤として慣用されている化合物を必要に応じて適宜添加することができる。有機カルボン酸の例としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等を挙げることができ、これらは単独もしくは2種以上を混合して用いることができる。有機カルボン酸は、共重合体100質量部に対して0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0056】
本発明の半導体リソグラフィー用共重合体を用いることにより、レジストパターン形成におけるディフェクトが低減され、かつDOFなどのリソグラフィー特性に優れたレジスト組成物を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えることができる。即ち、ディフェクトを低減するひとつの手段として、共重合体の繰り返し単位に水酸基、カルボキシル基等の親水性基を導入して現像液との親和性を高めることが考えられる。特にカルボキシル基は親水性が高く、効果が大きいと考えられる。カルボキシル基導入のための手段として、(メタ)アクリル酸を共重合させる方法が挙げられるが、ラジカル重合における(メタ)アクリル酸の反応性比が、他のラクトン構造を有する単量体や脂環式炭化水素基を有する単量体の反応性比に比べて極端に高いため、共重合体中の各繰り返し単位の組成分布が不均一、即ち、(メタ)アクリル酸リッチで親水性が高いポリマー分子鎖と(メタ)アクリル酸プアーで疎水性が高いポリマー分子鎖との混合物になってしまう。このことが、DOFに代表されるリソグラフィー特性を悪化させてしまうと考えられる。
【0057】
しかし、本発明の共重合体は、(メタ)アクリル酸を重合系内で生成させながら共重合させるか、もしくは共重合体中の酸解離性繰り返し単位の酸解離性基を解離させて(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を生成させることによって得られるため、ポリマー分子鎖間の親水性および疎水性に偏りが小さいと考えられる。従って、本発明の共重合体は、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を含んでいるにも関わらず、リソグラフィー特性が良好かつディフェクトが低減されるものと推定される。
【0058】
実施例
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、下記の例においては使用される略号は以下の意味を有する。
G:γ−ブチロラクトンメタクリレートから誘導される繰り返し単位
モノマーG:γ−ブチロラクトンメタクリレート
Ga:γ−ブチロラクトンアクリレートから誘導される繰り返し単位
モノマーGa:γ−ブチロラクトンアクリレート
M:2−メチル−2アダマンチルメタクリレートから誘導される繰り返し単位
モノマーM:2−メチル−2アダマンチルメタクリレート
Ma:2−メチル−2アダマンチルアクリレートから誘導される繰り返し単位
モノマーMa:2−メチル−2アダマンチルアクリレート
O:3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートから誘導される繰り返し単位
モノマーO:3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート
Oa:3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレートから誘導される繰り返し単位
モノマーOa:3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート
MA:メタクリル酸から誘導される繰り返し単位
AA:アクリル酸から誘導される繰り返し単位
【0059】
共重合体のMw、Mw/Mn、繰り返し単位の組成、脱保護率、レジストパターン形成時の感度、ディフェクト、DOFを以下の方法によって求めた。
【0060】
(1)共重合体のMw、Mw/Mnの測定(GPC)
GPCにより測定した。分析条件は以下の通りである。
装 置: 東ソー製GPC8220
検出器: 示差屈折率(RI)検出器
カラム: 昭和電工製KF−804L(×3本)
試 料: 共重合体の粉体約0.1gをテトラヒドロフラン約1mlに溶解して測定用試料を調製した。GPCへの注入量は15μlとした。
【0061】
(2)共重合体の繰り返し単位組成の測定(13C−NMR)
装 置: Bruker製AV400
試 料: 共重合体の粉体約1gとCr(acac) 0.1gをMEK1g、重アセトン1gに溶解して調製した。
測 定: 直径10mmの測定管を使用、温度40℃、スキャン回数10000回
【0062】
(3)繰り返し単位組成の計算
工程(Q)を経て合成した(即ち、脱保護率を求めようとする)共重合体(Q)と、工程(Q)を経ない他は共重合体(Q)と全く同一条件で合成した共重合体(P)の13C−NMRを測定し、以下の通り、各ピークの面積を求めた。
まず、共重合体(P)について、全カルボニル炭素のピーク面積をP、繰り返し単位(A)の4級炭素のピーク面積をP、繰り返し単位(C)のラクトン結合におけるカルボニルでない方の酸素に結合した炭素のピーク面積をP、繰り返し単位(D)のエステル結合におけるカルボニルでない方の酸素に結合した炭素のピーク面積をPとし、重合開始剤由来のカルボニル炭素のピーク面積比pを計算式(1)に従って求めた。
=(P−P−P−P)/{P+(P/2)+P} …計算式(1)
次に、共重合体(Q)について、全カルボニル炭素のピーク面積をQ、繰り返し単位(A)の4級炭素のピーク面積をQ、繰り返し単位(C)のラクトン結合におけるカルボニルでない方の酸素に結合した炭素のピーク面積をQ、繰り返し単位(D)のエステル結合におけるカルボニルでない方の酸素に結合した炭素のピーク面積をQとして、共重合体(Q)中の繰り返し単位(A)、(C)、(D)の和に対する繰り返し単位(A)〜(D)の比率をそれぞれqA、q、q、qとして、計算式(2)〜(5)に従って求めた。
=Q/{Q+(Q/2)+Q} …計算式(2)
=(Q−Q−Q−Q)/{Q+(Q/2)+Q}−p …計算式(3)
=(Q/2)/{Q+(Q/2)+Q} …計算式(4)
=Q/{Q+(Q/2)+Q} …計算式(5)
さらに、共重合体(Q)中の繰り返し単位(A)、(B)、(C)、(D)の組成比をそれぞれq*、q*、q*、q*として、計算式(6)〜(9)に従って求めた。
q*=q/{q+q+q+q} …計算式(6)
q*=q/{q+q+q+q} …計算式(7)
q*=q/{q+q+q+q} …計算式(8)
q*=q/{q+q+q+q} …計算式(9)
【0063】
(4)感度(Eop)評価
有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。該反射防止膜上に、ポジ型レジスト組成物溶液をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、105℃で90秒間プレベーク(PAB)し、乾燥することにより、膜厚220nmのレジスト膜を形成した。
ArF露光装置NSR−S306(ニコン社製;NA(開口数)=0.78,1/2輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(6%ハーフトーン)を介して選択的に照射した。次いで、110℃で90秒間PEB処理を行い、さらに23℃にて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて60秒間パドル現像し、その後20秒間水洗して乾燥した。
直径100nm、ピッチ220nmのコンタクトホールパターンを形成される最適露光量Eop(mJ/cm)を求めた。
【0064】
(5)焦点深度幅(DOF)評価
上記Eopにおいて、焦点を適宜上下にずらし、上記のコンタクトホールパターンが直径100nm±10%の寸法変化率の範囲内で得られる焦点深度(DOF)の幅(μm)を求めた。
【0065】
(6)ディフェクト評価
ポジ型レジスト組成物溶液をスピンナーを用いてヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコンウェーハ上に直接塗布し、ホットプレート上で、105℃で90秒間プレベーク(PAB)し、乾燥することにより、膜厚220nmのレジスト膜を形成した。
ArF露光装置NSR−S306(ニコン社製;NA(開口数)=0.78,σ=0.30)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(バイナリー)を介して選択的に照射した。次いで、110℃で90秒間PEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間パドル現像し、1000回転で1秒間、次に500回転で15秒間の条件(ディフェクトがより発生しやすいような強制条件)でリンス液を滴下して、乾燥してレジストパターンを形成した。パターンは、ホールの直径が300nmのデンスホールパターン(直径300nmのホールパターンを、300nm間隔で配置したパターン)を形成した。
次に、KLAテンコール社製の表面欠陥観察装置 KLA2351(製品名)を用いて測定し、ウェーハ内の欠陥数を測定した。
同様の評価をもう一度行い、ウェーハ2枚の欠陥数の平均値を求めた。
【0066】
実施例1
窒素雰囲気に保った容器にメチルエチルケトン(MEK)1080g、硫酸28mgを溶解したMEK溶液50g、(A)モノマーMa 352g、(C)モノマーG 265g、(D)モノマーOa 186gを溶解させ、均一な「モノマー溶液」を調製した。また窒素雰囲気に保った別の容器に、MEK52g、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)26gを溶解させ、均一な「開始剤溶液」を調製した。撹拌器と冷却器を備え付けた反応槽にMEK680gを仕込んで窒素雰囲気とした後、温度79℃に加熱した。室温(約25℃)に保ったモノマー溶液と開始剤溶液を、それぞれ定量ポンプを用い、一定速度で4時間かけて別々に79〜81℃に保った反応槽中に滴下した。滴下終了後、さらに80〜81℃に保ったまま2時間熟成させたのち、室温まで冷却して重合液を取り出した。
20Lの容器にn−ヘキサン8100gを入れ、撹拌しながら15℃まで冷却し、その状態を維持した。ここに、重合液2700gを滴下して共重合体を析出させ、さらに30分間撹拌した後、ウエットケーキをろ別した。このウエットケーキを容器に戻して、n−ヘキサンとMEKの混合溶媒5400gを加え、30分間撹拌して洗浄し、ろ別した。このウエットケーキの洗浄をもう一度繰り返した。次いでウエットケーキから少量サンプリングして60℃以下で1時間減圧乾燥し、乾燥粉体とした後、GPCでMwとMw/Mnを、13C−NMRで繰り返し単位の組成を求めた。残りのウエットケーキは容器に戻して、MEK2000gを加えて再溶解した後、攪拌機と冷却器を備え付けた置換槽に仕込み、減圧下で加熱して溶媒を留去させながら、PGMEAを加え、PGMEA添加終了後もPGMEAを一定量留去させて、共重合体25質量%を含むPGMEA溶液に仕上げた。
得られたPGMEA溶液に、必要な添加物を加えて混合した後、フィルターに通液し、レジスト組成物を得た。このレジスト組成物の感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価を上記した方法で行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0067】
実施例2
硫酸の使用量を34mgとした以外は合成例1と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0068】
実施例3
硫酸の使用量を39mgとした以外は合成例1と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0069】
実施例4
モノマー溶液に仕込むモノマーを(A)モノマーM 384g、(C)モノマーGa 250g、(D)モノマーO 179g、硫酸 31mgとし、開始剤溶液をMEK 64g、MAIB 32gとした以外は実施例1と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0070】
実施例5
硫酸の代わりにトリフルオロ酢酸(TFA)390mgを用いた他は実施例1と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0071】
比較例1
硫酸を一切添加しない他は、合成例1と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0072】
比較例2
硫酸を添加せず、単量体としてさらにアクリル酸11.5gを加え、モノマーMaの使用量を317gとした他は合成例1と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0073】
比較例3
アクリル酸の添加量を17.3gとし、モノマーMaの使用量を299gとした他は比較合成例2と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0074】
比較例4
硫酸を一切添加しない他は実施例4と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0075】
比較例5
硫酸を添加せず、単量体としてさらにメタアクリル酸13.8gを加え、モノマーMの使用量を347gとした他は実施例4と同様にして行った。共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【0076】
比較例6
硫酸の代わりにクロロ酢酸(CAA)560mgを用いた他は実施例1と同様にして行った。 共重合体を製造する際の工程(Q)に用いた強酸種と反応系内の強酸濃度(質量ppm)、得られた共重合体のMw、Mw/Mnおよび繰り返し単位組成の測定結果を表1にまとめた。また、レジスト組成物中の各成分の配合比と、感度(Eop)、ディフェクト、DOF評価結果を表2にまとめた。
【表1】

【表2】

成分(X)は4−メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、成分(Y)はトリエタノールアミン、成分(Z)はサリチル酸。
レジスト溶媒はPGMEA:EL=6:4(質量比)の混合溶剤
【0077】
上述のように、工程(Q)を経て製造した共重合体を用いた実施例1〜5は、いずれも、DOFが大きいなど、リソグラフィー特性が良好であった。また、ディフェクト数も低減されていた。
【0078】
一方、工程(Q)を経ずに製造した共重合体を用いた比較例1〜6は、リソグラフィー特性、特にDOFが不十分であった。比較例1、2、6はディフェクト数が多かったため、他の項目を評価するに至らなかった。アクリル酸の共重合によって繰り返し単位(B)を導入した共重合体を用いた比較例2、3の内、特に比較例3はディフェクト数が低減されていたものの、DOFが不十分であった。メタクリル酸の共重合によって繰り返し単位(B)を導入した共重合体を用いた比較例5は、ディフェクト数が多く、DOFが不十分であり、かつ感度も低かった。工程(Q)において、水中25℃でのpKaが2.88のクロロ酢酸を用いた比較例6は、ディフェクト数が多く、他の項目を評価するに至らなかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の共重合体によれば、現像欠陥が少なく、かつDOFなどのリソグラフィー特性が優れたレジストパターンが形成できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸の作用でアルカリ可溶性が増大するカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(A)とカルボキシル基を有する繰り返し単位(B)とを含む共重合体であって、少なくとも繰り返し単位(A)を与える単量体を(共)重合する工程(P)と、繰り返し単位(A)を有する(共)重合体および/または繰り返し単位(A)を与える単量体を酸と共存させて繰り返し単位(B)を生成する工程(Q)とを経て得られることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項2】
ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項3】
酸に対して安定な脂環式炭化水素基が置換したカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(D)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項4】
繰り返し単位(A)が、少なくとも一般式(a)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【化1】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R11は炭素数1〜4の炭化水素基であり、R12およびR13はそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、あるいはR12とR13でお互いに結合して形成した炭素数5〜12の単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基を表すか、もしくは、R11およびR12は水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基であり、R13は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基が置換したオキシ基を表す。)
【請求項5】
繰り返し単位(B)が、少なくとも一般式(b)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【化2】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)
【請求項6】
繰り返し単位(C)が、少なくとも一般式(c)で表されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【化3】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aは単結合もしくは炭素数5〜12の単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、Lは一般式(L)で表されるラクトン構造を表し、AとLは1乃至2の連結基で結合している。)
【化4】

(式中、R31〜R36のいずれか1つもしくは2つが一般式(c)のAとの連結基であり、残りは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基またはアルコキシル基を表す)
【請求項7】
繰り返し単位(D)が、少なくとも一般式(d)で表されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【化5】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aはハロゲン原子が置換しても良い炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基、kは0〜3の整数を表す)
【請求項8】
工程(P)と工程(Q)とを同時に行うことによって得られる請求項1〜7のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項9】
工程(Q)を工程(P)の後に行うことによって得られる請求項1〜7のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項10】
工程(Q)における酸として、水中25℃でのpKaが2.0以下の酸を使用して得られる請求項1〜9に記載の半導体リソグラフィー用共重合体。
【請求項11】
少なくとも酸の作用でアルカリ可溶性が増大するカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(A)とカルボキシル基を有する繰り返し単位(B)とを含む共重合体であって、少なくとも繰り返し単位(A)を与える単量体を(共)重合する工程(P)と、繰り返し単位(A)を有する(共)重合体および/または繰り返し単位(A)を与える単量体を酸と共存させて繰り返し単位(B)を生成する工程(Q)とを経て得られることを特徴とする半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項12】
ラクトン構造を有する繰り返し単位(C)を含むことを特徴とする請求項11に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項13】
酸に対して安定な脂環式炭化水素基が置換したカルボン酸エステル構造を有する繰り返し単位(D)を含むことを特徴とする請求項11または12に記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項14】
繰り返し単位(A)が、少なくとも一般式(a)で表されることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【化6】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R11は炭素数1〜4の炭化水素基であり、R12およびR13はそれぞれ独立して炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、あるいはR12とR13でお互いに結合して形成した炭素数5〜12の単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基を表すか、もしくは、R11およびR12は水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基であり、R13は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状または単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基が置換したオキシ基を表す。)
【請求項15】
繰り返し単位(B)が、少なくとも一般式(b)で表されるアルカリ可溶性基を有する構造を含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【化7】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基を表す。)
【請求項16】
繰り返し単位(C)が、少なくとも一般式(c)で表されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【化8】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aは単結合もしくは炭素数5〜12の単環もしくは有橋環を有する脂環式炭化水素基、Lは一般式(L)で表されるラクトン構造を表し、AとLは1乃至2の連結基で結合している。)
【化9】

(式中、R31〜R36のいずれか1つもしくは2つが一般式(c)のAとの連結基であり、残りは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基またはアルコキシル基を表す)
【請求項17】
繰り返し単位(D)が、少なくとも一般式(d)で表されることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【化10】

(式中、Rは水素原子もしくは炭素数1〜4の炭化水素基、Aはハロゲン原子が置換しても良い炭素数7〜12の有橋環を有する脂環式炭化水素基、kは0〜3の整数を表す)
【請求項18】
工程(P)と工程(Q)とを同時に行うことによって得られる請求項11〜17のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項19】
工程(Q)を工程(P)の後に行うことによって得られる請求項11〜17のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。
【請求項20】
工程(Q)における酸として、水中25℃でのpKaが2.0以下の酸を使用して得られる請求項11〜19のいずれかに記載の半導体リソグラフィー用共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2006−316108(P2006−316108A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137557(P2005−137557)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】