説明

半導体レーザ素子の作製方法および半導体レーザ素子

【課題】n型InP基板を用い且つ発光効率を向上させ得る半導体レーザ素子の作製方法および半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】半導体レーザ素子10は、n型InP基板37と、n型InP基板37上に設けられたn型InPからなる第1クラッド層27と、第1クラッド層27上に設けられたn型GaInAsPからなる第1光閉じ込め層13と、第1光閉じ込め層13上に設けられ、GaInAsP活性層21、および該活性層21上に設けられたp型GaInAsPからなる第2光閉じ込め層23を有し、周期的に配列された複数の細線領域15と、複数の細線領域15間に設けられたi型InPからなる中間半導体領域17と、第2光閉じ込め層23と隣接するように複数の細線領域15上および中間半導体領域17上に設けられたp型InPからなる第2クラッド層29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ素子の作製方法および半導体レーザ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、周期的に配列された細線状の活性領域を有する分布帰還型(DFB)半導体レーザ素子が記載されている。この半導体レーザ素子では、p型InP基板上に上記活性領域を含む埋め込みヘテロ構造を作製している。また、非特許文献2にも、細線状活性領域を有する半導体レーザ素子が記載されている。この文献には、細線状の活性領域をエッチングにより形成して活性領域間を埋め込むことにより半導体レーザ素子を作製する場合、n型InP基板を用いるよりもp型InP基板を用いるほうが閾値電流密度が低減されることが記載されている。なお、周期的に配列された細線状の活性領域を有するDFB半導体レーザ素子は、複素結合型(または活性層分離型)DFBレーザ素子と呼ばれることがある。
【非特許文献1】N.Nunoya et al., “High-Performance1.55-μm Wavelength GaInAsP-InP Distributed-Feedback Lasers With Wirelike ActiveRegions”, IEEE JOURNAL ON SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS, VOL. 7, NO.2, MARCH/APRIL (2001)
【非特許文献2】Y.Miyake et al., “ThresholdCurrent Reduction of GaInAs/GaInAsP/InP SCH Quantum-Well Lasers with Wire-Like ActiveRegion by Using p-Type Substrates”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL 4,NO 9, SEPTEMBER (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献2には、細線状の活性領域をエッチングにより形成して活性領域間を埋め込む場合、p型InP基板を用いることが好ましい旨が述べられている。図13は、従来の複素結合型DFBレーザ素子の構造を示す断面図であり、細線状の活性領域を含む発光層およびその周辺構造のレーザ発振方向に沿った断面を拡大して示している。図13に示すように、従来の複素結合型DFBレーザ素子100は、p型InP基板102、p型InPクラッド層104、p型GaInAsP光閉じ込め層106、n型GaInAsP光閉じ込め層108、およびn型InPクラッド層110を備えている。そして、p型GaInAsP光閉じ込め層106とn型GaInAsP光閉じ込め層108との間には発光層112が設けられており、発光層112は、周期的に配列された複数の細線状の活性領域114と、該複数の活性領域114の間に設けられたアンドープInPからなる中間半導体領域116とを有している。各活性領域114は、障壁層および井戸層が交互に積層されて成る量子井戸構造114aを含んで構成されている。
【0004】
図14は、図13に示した複素結合型DFBレーザ素子100におけるバンド構造を示す図である。図14において、BG1は活性領域114のバンドギャップを示し、BG2はp型GaInAsP光閉じ込め層106のバンドギャップを示し、BG3はp型InPクラッド層104のバンドギャップを示し、BG4はn型GaInAsP光閉じ込め層108のバンドギャップを示し、BG5はn型InPクラッド層110のバンドギャップを示している。
【0005】
複素結合型DFBレーザ素子100を作製する際には、活性領域114をエッチングにより形成し、活性領域114同士の隙間を中間半導体領域116により埋め込む方法が採用されることがある。この場合、中間半導体領域116の構成材料(アンドープInP)が活性領域114上にも薄く堆積してしまう。これにより活性領域114とn型GaInAsP光閉じ込め層108との間に堆積層が形成されると、この堆積層によって複素結合型DFBレーザ素子100のバンド構造が変化することとなる。なお、図14に示すBG6は、この堆積層のバンドギャップを示している。例えば当該堆積層がInPからなる場合、InPの伝導帯側のバンドオフセットは価電子帯側より小さく、また、電子は正孔に比べ移動度が大きいので、当該堆積層によるバンド構造変化は、活性領域114へ向けて移動する電子にとって障壁とはなりにくい。
【0006】
これに対し、図15はn型InP基板上に複素結合型DFBレーザ素子が形成された場合のバンド構造を示す図である。この場合、BG7はn型GaInAsP光閉じ込め層のバンドギャップを示し、BG8はn型InPクラッド層のバンドギャップを示し、BG9はp型GaInAsP光閉じ込め層のバンドギャップを示し、BG10はp型InPクラッド層のバンドギャップを示す。図15に示すように、InP堆積層(BG6)の価電子帯側のバンドオフセットは伝導帯側より大きく、また正孔は電子に比べ移動度が小さい。したがって、n型InP基板上に複素結合型DFBレーザ素子を形成した場合、上記堆積層によるバンド構造変化は、活性領域114へ向けて移動する正孔の障壁となってしまう。これが、従来の複素結合型DFBレーザ素子においてp型のInP基板が用いられてきた理由である。
【0007】
しかしながら、n型InP基板を用いた複素結合型DFBレーザ素子も実用化されることが望ましい。InP基板の導電型に拘わらず複素結合型DFBレーザ素子を作製可能であれば、あらゆる作製プロセスに対し、柔軟に対応できる。また、変調器等を集積する場合には、素子分離の観点から、n型InP基板を用いて移動度の小さい正孔を供給するp型InPクラッド層を活性層の上方に配置する方が有利である。n型InP基板を用いた複素結合型DFBレーザ素子を実用化するためには、n型InP基板上に形成した複素結合型DFBレーザ素子の発光効率を向上させる必要がある。
【0008】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、n型InP基板を用い且つ発光効率を向上させ得る半導体レーザ素子の作製方法および半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明による半導体レーザ素子の作製方法は、n型InP基板上に、n型InP系化合物半導体を含む第1クラッド層および第1光閉じ込め層、InP系化合物半導体を含む活性層、並びにp型InP系化合物半導体を含む第2光閉じ込め層を成長させる第1の成長工程と、第2光閉じ込め層上に周期的に配列された複数のマスクパターンを有するマスクを用いて第2光閉じ込め層および活性層をエッチングすることにより、周期的に配列された複数の細線領域を形成する細線形成工程と、複数の細線領域に含まれる活性層の側面をInP系化合物半導体により埋め込む埋込工程と、複数の細線領域に含まれる第2光閉じ込め層と隣接するように、p型InP系化合物半導体を含む第2クラッド層を成長させる第2の成長工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
この半導体レーザ素子の作製方法においては、第1の成長工程の際に、本来細線領域となるべき活性層に加え、更に第2光閉じ込め層をその上に成長させている。そして、細線形成工程において活性層および第2光閉じ込め層をエッチングして複数の細線領域を形成するので、各細線領域には第2光閉じ込め層が含まれる。その後、細線領域に含まれる活性層の側面が埋込工程において埋め込まれるが、このとき細線領域上に形成される薄い堆積層は、細線領域に含まれる第2光閉じ込め層上に形成される。そして、第2の成長工程において第2光閉じ込め層と隣接するように第2クラッド層が形成されるので、上述した薄い堆積層は、第2光閉じ込め層と第2クラッド層との間に位置することとなる。したがって、細線領域に含まれる活性層と第2光閉じ込め層との間に堆積層は形成されないので、堆積層によるバンド構造変化は正孔の障壁とは成り難い。すなわち、この半導体レーザ素子の作製方法によれば、n型InP基板を用いつつ発光効率を向上させることができる。
【0011】
また、半導体レーザ素子の作製方法は、第2クラッド層がp型InPからなり、第2光閉じ込め層および活性層がInPのバンドギャップより狭いバンドギャップを有し、埋込工程におけるInP系化合物半導体がアンドープInPからなることを特徴としてもよい。活性層および第2光閉じ込め層のバンドギャップがInPのバンドギャップより狭く、且つ埋込工程におけるInP系化合物半導体がアンドープInPからなる場合、図13に示した従来の複素結合型DFBレーザ素子ではInP堆積層による障壁作用が顕著となる(図15参照)。これに対し、上記した半導体レーザ素子の作製方法における堆積層は第2光閉じ込め層と第2クラッド層との間に形成されるので、同じ組成の堆積層(InP)と第2クラッド層(p型InP)とが互いに接することとなり、堆積層は正孔に対する障壁とはなりにくい。したがって、発光効率をより向上させることができる。
【0012】
また、半導体レーザ素子の作製方法は、第1の成長工程の際に、第2光閉じ込め層上にp型InP層を更に成長させ、細線形成工程の際に、p型InP層、第2光閉じ込め層および活性層をマスクを用いてエッチングすることにより複数の細線領域を形成することを特徴としてもよい。この場合、細線形成工程により形成される各細線領域にはp型InP層が含まれる。そして、埋込工程の際には、このp型InP層から細線領域の隙間へInPが移動(マストランスポート)する。これにより、例えば細線領域の隙間が狭く深い場合であっても、埋め込まれるInPの結晶性の劣化(例えばボイドの発生など)を抑えることができる。
【0013】
また、半導体レーザ素子の作製方法は、埋込工程の際に、活性層の側面を埋め込むInP系化合物半導体にRuまたは/及びFeをドープすることを特徴としてもよい。これにより、活性層の側面を埋め込むInP系化合物半導体を半絶縁性とし、細線領域内にキャリアをより一層効果的に閉じ込めることができる。また、Feをドープする場合には、当該InP系化合物半導体上にアンドープInP系化合物半導体を更に成長させることが好ましい。活性層の側面を埋め込むInP系化合物半導体にFeをドープすると、第2クラッド層に含まれるp型ドーパントであるZnとFeとの相互拡散によって当該InP系化合物半導体の層厚方向に抵抗分布が生じ、活性層へ注入されるキャリアの密度にも分布が生じてしまう。このような場合、当該InP系化合物半導体と第2クラッド層との間にアンドープInP系化合物半導体層を更に設けることによって、ZnとFeとの相互拡散を好適に抑制できる。
【0014】
また、本発明による半導体レーザ素子は、n型InP基板と、n型InP基板上に設けられたn型InP系化合物半導体を含む第1クラッド層と、第1クラッド層上に設けられたn型InP系化合物半導体を含む第1光閉じ込め層と、第1光閉じ込め層上に設けられ、InP系化合物半導体による活性層、および該活性層上に設けられたp型InP系化合物半導体を含む第2光閉じ込め層を有し、周期的に配列された複数の細線領域と、複数の細線領域間に設けられたInP系化合物半導体を含む中間半導体領域と、第2光閉じ込め層と隣接するように複数の細線領域上および中間半導体領域上に設けられたp型InP系化合物半導体を含む第2クラッド層と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この半導体レーザ素子においては、各細線領域が、活性層に加えて第2光閉じ込め層を含んでいる。前述したように、このような半導体レーザ素子を作製する際には、細線領域の隙間を埋め込む際に細線領域上に形成される薄い堆積層が、第2光閉じ込め層上に形成される。そして、第2光閉じ込め層と隣接するように第2クラッド層が設けられているので、上述した薄い堆積層は、第2光閉じ込め層と第2クラッド層との間に位置することとなる。したがって、細線領域に含まれる活性層と第2光閉じ込め層との間に堆積層は形成されないので、堆積層によるバンド構造変化は正孔の障壁とは成り難い。すなわち、この半導体レーザ素子によれば、n型InP基板を備えつつ発光効率を向上させることができる。
【0016】
また、半導体レーザ素子は、第2クラッド層がp型InPからなり、第2光閉じ込め層および活性層がInPのバンドギャップより狭いバンドギャップを有し、中間半導体領域がアンドープInPからなることを特徴としてもよい。活性層および第2光閉じ込め層のバンドギャップがInPのバンドギャップより狭く、且つ中間半導体領域がアンドープInPからなる場合、従来の複素結合型DFBレーザ素子ではInP堆積層による障壁作用が顕著となる(図15参照)。これに対し、上記した半導体レーザ素子を作製する際には、堆積層は第2光閉じ込め層と第2クラッド層との間に形成されるので、同じ組成の堆積層(InP)と第2クラッド層(p型InP)とが互いに接することとなり、堆積層は正孔に対する障壁とはなりにくい。したがって、発光効率をより向上させることができる。
【0017】
また、半導体レーザ素子は、中間半導体領域にRuまたは/及びFeがドープされていることを特徴としてもよい。これにより、中間半導体領域を半絶縁性とし、細線領域内にキャリアをより一層効果的に閉じ込めることができる。また、Feがドープされている場合には、中間半導体領域と第2クラッド層との間にアンドープInP系化合物半導体層を更に備えることが好ましい。中間半導体領域にFeがドープされていると、第2クラッド層に含まれるp型ドーパントであるZnとFeとの相互拡散によって中間半導体領域の層厚方向に抵抗分布が生じ、活性層へ注入されるキャリアの密度にも分布が生じてしまう。このような場合、中間半導体領域と第2クラッド層との間にアンドープInP系化合物半導体層を更に設けることによって、ZnとFeとの相互拡散を好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る半導体レーザ素子の作製方法および半導体レーザ素子によれば、n型InP基板を用い且つ発光効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明による半導体レーザ素子の作製方法および半導体レーザ素子の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体レーザ素子の構造を示す一部切欠き斜視図である。また、図2は、図1に示すA部分を拡大して示す側面断面図である。本実施形態の半導体レーザ素子10は複素結合型DFBレーザの構成を備えており、所定波長のレーザ光を出力する。図1を参照すると、半導体レーザ素子10は、主面37aを有するn型InP基板37を備えている。
【0021】
また、半導体レーザ素子10は、第1光閉じ込め層13、複数の細線領域15、中間半導体領域17、第1クラッド層27、および第2クラッド層29を備えている。このうち、第1光閉じ込め層13、複数の細線領域15、および中間半導体領域17は、所定方向(レーザ発振方向)に沿って延びる半導体メサ25を構成している。第1光閉じ込め層13は第1クラッド層27上に設けられており、第1クラッド層27よりバンドギャップが狭いn型InP系化合物半導体を主に含む。一実施例としては、第1光閉じ込め層13はn型GaInAsPからなる。
【0022】
複数の細線領域15は、第1光閉じ込め層13上においてレーザ発振方向と直交する方向を長手方向としてそれぞれ形成され、レーザ発振方向に周期的に配列されている。なお、細線領域15の細線幅W(図2参照)は、半導体レーザ素子10がより少ない電流で動作するために例えば80〜90[nm]に設定され、細線領域15を量子細線構造とする場合には高い微分利得を得るために例えば30[nm]以下に設定される。また、細線領域15の周期Λ(図2参照)は、出力しようとするレーザ光の波長に応じて設定され、例えばレーザ光の波長が1550[nm]である場合には240[nm]に設定され、レーザ光の波長が1300[nm]である場合には200[nm]に設定される。
【0023】
図2に示すように、複数の細線領域15それぞれは、第1光閉じ込め層13上に設けられた活性層21と、活性層21上に設けられた第2光閉じ込め層23とを有している。活性層21はInP系化合物半導体を主に含んで構成され、一実施例としては、活性層21は多重量子井戸構造を有しており、アンドープ(すなわち、積極的に不純物がドープされていない)GaInAsPからなる障壁層(バリア層)21aおよび井戸層21bが交互に積層されて成る。一実施例としては、井戸層21bが2層、障壁層21aが3層設けられる。また、井戸層21bの層厚は例えば6[nm]、障壁層21aの層厚は例えば9[nm]である。
【0024】
なお、活性層21の多重量子井戸構造は、圧縮歪の井戸層21b及び引張り歪の障壁層21aを含む歪補償量子井戸構造であることが好ましい。また、この場合、井戸層21bの圧縮歪量が1.0%程度、障壁層21aの引張り歪量が−0.15%程度であると尚良い。
【0025】
第2光閉じ込め層23は、第2クラッド層29よりバンドギャップが狭いp型InP系化合物半導体を主に含む。一実施例としては、第2光閉じ込め層23はp型GaInAsPからなる。第2光閉じ込め層23の層厚は、活性層21の層厚(すなわち多重量子井戸構造における障壁層21aおよび井戸層21bの数)に応じて調整されることが好ましく、例えば上述のように厚さ6[nm]の井戸層21bが2層、厚さ9[nm]の障壁層21aが3層それぞれ設けられる場合には、第2光閉じ込め層23の層厚を140[nm]以下とするとよい。すなわち、当該半導体レーザ素子10の作製過程(後述)においてはエッチングにより細線領域15を形成するが、そのエッチング深さを所定の深さ以下(例えば200[nm]以下)とする為に、第2光閉じ込め層23の層厚は、該エッチング深さから活性層21の層厚および第1光閉じ込め層13に対するエッチング深さを差し引いた値以下に設定される。
【0026】
複数の細線領域15同士の隙間は、中間半導体領域17によって埋め込まれている。中間半導体領域17はInP化合物半導体を主に含んで構成され、一実施例としては、中間半導体領域17はアンドープInPからなる。或いは、中間半導体領域17は、Fe及びRuのうち少なくとも一方がドープされた半絶縁性領域であってもよい。中間半導体領域17の層厚は、活性層21の層厚より厚く、活性層21と第2光閉じ込め層23とを合わせた層厚より薄い範囲で設定される。すなわち、中間半導体領域17は活性層21の側面の全てを埋め込むと共に、第2光閉じ込め層23の側面の一部を埋め込んでいる。
【0027】
図1を再び参照する。第1クラッド層27は、n型InP系化合物半導体を主に含んで構成されており、第1光閉じ込め層13とn型InP基板37との間に設けられている。一実施例としては、第1クラッド層27はn型InPからなる。第2クラッド層29は、p型InP系化合物半導体を主に含んで構成されており、複数の細線領域15上および中間半導体領域17上に設けられ、第2光閉じ込め層23と隣接している。一実施例としては、第2クラッド層29はp型InPからなる。第1クラッド層27及び第2クラッド層29は、n型InP基板37の主面37a上の全面に亘って設けられており、半導体メサ25を上下から挟んでいる。
【0028】
また、半導体メサ25は、埋め込み領域31によってその側面が埋め込まれている。埋め込み領域31は、例えば第1のp型電流狭窄層31a、n型電流狭窄層31b、及び第2のp型電流狭窄層31cによって構成される。第1のp型電流狭窄層31aは、半導体メサ25が設けられた領域を除く第1クラッド層27上の領域に設けられ、第1クラッド層27の該領域及び半導体メサ25の側面を覆っている。n型電流狭窄層31bは、第1のp型電流狭窄層31a上に設けられている。第2のp型電流狭窄層31cは、n型電流狭窄層31bと、前述した第2クラッド層29との間に設けられている。これらの電流狭窄層31a〜31cは、例えばn型(またはp型)InPからなる。
【0029】
また、第2クラッド層29上には、絶縁膜33及び第1の(アノード)電極膜35が形成されている。絶縁膜33は半導体メサ25に対応する開口を有しており、第2クラッド層29と電極膜35とが該開口を介してオーミック接触を成している。n型InP基板37の主面37aとは反対側の裏面には第2の(カソード)電極膜39が設けられており、第2の電極膜39とn型InP基板37とがオーミック接触を成している。
【0030】
続いて、図3〜図7を参照しながら、本実施形態に係る半導体レーザ素子を作製する方法における主要な工程について説明する。
【0031】
[第1の成長工程]
まず、図3(a)に示すように、n型InP基板51上に、n型InP系半導体を主に含む第1クラッド層53および第1光閉じ込め層55を成長させる。この成長は、例えば有機金属気相成長炉を用いて行われる。一実施例としては、第1クラッド層53はn型InPからなり、第1光閉じ込め層55はn型GaInAsPからなる。次いで、第1光閉じ込め層55上に、量子井戸構造のための半導体積層(活性層)57を形成する。半導体積層57は、InP系半導体(例えばGaInAsP)からなる多重量子井戸構造を含み、交互に積層された複数の井戸層及び障壁層を有する。半導体積層57内の各層は、例えば有機金属気相成長炉を用いて成長される。一実施例としては、井戸層が2層、障壁層が3層設けられる。また、井戸層の層厚は例えば6[nm]、障壁層の層厚は例えば9[nm]である。半導体積層57の一例では、多重量子井戸構造を圧縮歪の井戸層及び引張り歪の障壁層を含む歪補償量子井戸構造とすることが好ましい。これにより、再成長界面における非発光再結合電流成分を低減できる。この場合、井戸層の圧縮歪量を1.0%、障壁層の引張り歪量を−0.15%とすると尚良い。
【0032】
そして、半導体積層57上に、p型InP系半導体を主に含む第2光閉じ込め層59を成長させる。この成長は、例えば有機金属気相成長炉を用いて行われる。第2光閉じ込め層59は、後の工程において形成される第2クラッド層よりバンドギャップが小さいInP系半導体からなり、一実施例としてはp型GaInAsPからなる。第2光閉じ込め層59の層厚は、半導体積層57の層厚に応じて調整されることが好ましく、上述のように厚さ6[nm]の井戸層が2層、厚さ9[nm]の障壁層が3層それぞれ設けられる場合には、第2光閉じ込め層59の層厚を例えば140[nm]以下とするとよい。すなわち、後の工程においてエッチングにより細線領域を形成するが、そのエッチング深さを所定の深さ以下(例えば200[nm]以下)とする為に、第2光閉じ込め層59の層厚は、該エッチング深さから半導体積層57の層厚および第1光閉じ込め層55に対するエッチング深さ(例えば20[nm])を差し引いた値以下に設定されるとよい。
【0033】
[細線形成工程]
続いて、細線領域を形成するためのマスクを第2光閉じ込め層59上に形成する。図3(b)に示すように、マスクのために絶縁膜63、例えばシリコン酸化膜といったシリコン系無機化合物膜を堆積する。この堆積は、例えば化学的気相成長法によって行われる。この絶縁膜63上に、レジスト65を塗布する。
【0034】
続いて、図4(a)に示すように、周期的に配列された複数のパターンをレジスト65に転写することにより、レジストマスク67を形成する。この工程において、レジストマスク67は、図2に示した複数の細線領域15に対応するパターンを有するように形成される。レジストマスク67の形成は、例えば、電子ビーム露光法、またはナノインプリント等のリソグラフィー技術を用いて行われる。
【0035】
続いて、レジストマスク67を用いて絶縁膜63(シリコン酸化膜)をエッチングする。このエッチングは、例えば、CFガスを用いた反応性イオンエッチング等を用いることができる。なお、この工程においてレジストマスク67と絶縁膜63(シリコン酸化膜、例えばSiO)との選択比を確保するために、先の工程において絶縁膜63の膜厚を15〜20[nm]とすることが好ましい。エッチングの後に、レジストマスク67を除去すると、図4(b)に示すように細線領域を形成するための複数のマスクパターン69が形成される。マスクパターン69の配列周期は、細線領域15の周期Λと等しく設定される。すなわち、マスクパターン69の配列周期は出力しようとするレーザ光の波長に応じて設定され、例えばレーザ光の波長が1550[nm]である場合には240[nm]に設定され、レーザ光の波長が1300[nm]である場合には200[nm]に設定される。また、マスクパターン69の幅は、図2に示した細線領域15の細線幅Wと等しく設定される。すなわち、マスクパターン69の幅は、半導体レーザ素子がより少ない電流で動作するために例えば80〜90[nm]に設定され、細線領域を量子細線構造とする場合には高い微分利得を得るために例えば30[nm]以下に設定される。
【0036】
続いて、図5(a)に示すように、マスクパターン69を用いて第2光閉じ込め層59および半導体積層57をエッチングし、細線領域71を形成する。このエッチングの一例では、CH/Hを用いたRIEが用いられる。例えば、CH/Hを用いたRIEエッチングとこのエッチング中に半導体表面に堆積する炭素重合物を除去するためのOアッシングとを繰り返すことにより、垂直性に優れた多層細線領域構造を形成できる。このエッチングの結果、第1光閉じ込め層55上には、複数の細線領域71が配列される。細線領域71は、第2光閉じ込め層59と半導体積層(活性層)57とを含む。細線領域71は上述した周期Λで配列され、細線領域71の細線幅はWとされる。
【0037】
その後、ドライエッチングによる損傷層を除去するために、ウェットエッチングを行う。このエッチングは、例えば硫酸系の溶液を用いる。ウェットエッチングの後、図5(b)に示すようにマスクパターン69を除去する。例えば、シリコン酸化物からなるマスクパターン69はバッファードフッ酸を用いて除去される。
【0038】
[埋込工程]
続いて、図6(a)に示すように、複数の細線領域71に含まれる半導体積層57の側面をInP系化合物半導体により埋め込む。一実施例としては、この埋め込みはアンドープInPにより行われる。また、この埋め込みは、半導体積層57の側面を全て埋め込むとともに、第2光閉じ込め層59の側面の半分が埋め込まれる程度の厚さになるまで行うことが好ましい。この埋込工程によって、各細線領域71により提供される利得領域と、利得の無い中間半導体領域73とが所定方向に交互に配列された周期構造が形成される。なお、この埋込工程においては、細線の隙間を均一に埋め込んで平坦な再成長界面を得るために、InP系化合物半導体の成長速度は500[nm/h]以下の低速であることが望ましい。また、InP系化合物半導体の成長温度は600[℃]程度とされることが望ましい。
【0039】
また、この埋込工程の際には、InP系化合物半導体にRu及びFeの少なくとも一方をドープしつつ、半導体積層57の側面を埋め込んでもよい。これにより、半導体積層57の側面を埋め込む中間半導体領域73を半絶縁性とし、半導体積層57内にキャリアをより一層効果的に閉じ込めることができる。なお、ドープされるRuまたはFeの好適な濃度は、例えばRuは2×1018[cm−3]、Feは6×1016[cm−3]である。
【0040】
[第2の成長工程]
続いて、図6(b)に示すように、p型InP系化合物半導体を含む第2クラッド層75を細線領域71上および中間半導体領域73上に亘って成長させる。この工程においては、第2クラッド層75を、細線領域71に含まれる第2光閉じ込め層59と隣接するように、第2光閉じ込め層59を埋め込む形で形成する。一実施例としては、第2クラッド層75はp型InPからなる。なお、中間半導体領域73と第2クラッド層75とが同じ組成のInP系化合物半導体(例えばInP)からなる場合、前述した埋込工程においてFeやRuをドープしつつ、或いは何らドープせずに該InP系化合物半導体を成長させ、第2光閉じ込め層59の途中まで埋め込まれた時点で、それまでのドーパントに代えてp型ドーパント(例えばZn)のドープを開始し、引き続き該InP系化合物半導体を成長させるとよい。そして、細線領域71を埋め込んだ後には成長速度を速め(例えば1[μm/h])、第2クラッド層75を完成させるとよい。
【0041】
第2の成長工程ののち、図7に示すように、例えばp型GaInAsからなるコンタクト層77を成長させる。コンタクト層77の成長速度は、通常の成長速度、例えば1[μm/h]程度である。この後に、必要な場合には、埋め込みヘテロ構造といった屈折率導波構造を形成するとよい。すなわち、半導体メサ(例えば幅1.0[μm])を形成後、第1のp型InP電流狭窄層、n型電流狭窄層、及び第2のp型InP電流狭窄層によって半導体メサの側面を埋め込む。これにより、図1及び図2に示した構成の半導体レーザ素子が完成する。
【0042】
本実施形態による半導体レーザ素子10およびその作製方法によって得られる効果について説明する。上述した半導体レーザ素子10の作製方法においては、図3(a)に示した第1の成長工程の際に、本来細線領域71となるべき半導体積層(活性層)57に加え、更に第2光閉じ込め層59をその上に成長させている。そして、図4(a),(b)および図5(a)に示した細線形成工程において半導体積層57および第2光閉じ込め層59をエッチングして複数の細線領域71を形成するので、各細線領域71には第2光閉じ込め層59が含まれる。その後、細線領域71に含まれる半導体積層(活性層)57の側面が埋込工程(図6(a))において埋め込まれるが、このとき細線領域71上に形成される薄い堆積層は第2光閉じ込め層59上に形成される。そして、第2の成長工程(図6(b))において、第2光閉じ込め層59と隣接するように第2クラッド層75が形成されるので、上述した薄い堆積層は、第2光閉じ込め層59と第2クラッド層75との間に位置することとなる。すなわち、細線領域71に含まれる半導体積層(活性層)57と第2光閉じ込め層59との間に堆積層は形成されない。したがって、堆積層によるバンド構造変化は正孔の障壁とは成り難く、本実施形態による半導体レーザ素子10の作製方法によれば、n型InP基板51を用いつつ発光効率を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の半導体レーザ素子10においては、図2に示したように、各細線領域15が活性層21に加えて第2光閉じ込め層23を含んでいる。先に述べたように、このような半導体レーザ素子10を作製する際には、細線領域15の隙間を埋め込む際に細線領域15上に形成される薄い堆積層は、第2光閉じ込め層23上に形成される。そして、第2光閉じ込め層23と隣接するように第2クラッド層29が設けられているので、上述した薄い堆積層は、第2光閉じ込め層23と第2クラッド層29との間に位置することとなる。すなわち、細線領域15に含まれる活性層21と第2光閉じ込め層23との間に堆積層は形成されない。したがって、堆積層によるバンド構造変化は正孔の障壁とは成り難く、本実施形態の半導体レーザ素子10によれば、n型InP基板37を備えつつ発光効率を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態のように、半導体レーザ素子10およびその作製方法においては、第2クラッド層29(75)がp型InPからなり、第2光閉じ込め層23(59)および活性層21(57)がInPのバンドギャップより狭いバンドギャップを有し、細線領域15(71)の間に埋め込まれる中間半導体領域17(73)がアンドープInPからなることが好ましい。活性層21(57)および第2光閉じ込め層23(59)のバンドギャップがInPのバンドギャップより狭く、且つ中間半導体領域17(73)がアンドープInPからなる場合、図13に示した従来の複素結合型DFBレーザ素子ではInP堆積層による障壁作用が顕著となる(図15参照)。これに対し、本実施形態ではInP堆積層が第2光閉じ込め層23(59)と第2クラッド層29(75)との間に形成されるので、同じ組成の堆積層(i型InP)と第2クラッド層(p型InP)とが互いに接することとなり、堆積層は正孔に対する障壁とはなりにくい。したがって、発光効率をより向上させることができる。
【0045】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明による半導体レーザ素子およびその作成方法の第2実施形態を示す側面断面図である。図8は、第1実施形態の図2に相当する断面を示している。本実施形態による半導体レーザ素子20と第1実施形態の半導体レーザ素子10との相違点は、中間半導体領域17にFeがドープされており、且つ、中間半導体領域17と第2クラッド層29との間にアンドープInP系化合物半導体からなるオフセット層41を備えている点である。一実施例としては、このオフセット層41はアンドープInPからなる。また、オフセット層41の層厚は、例えば50[nm]である。オフセット層41は、例えば第2光閉じ込め層23の側面を途中まで埋め込むように形成される。
【0046】
本実施形態の半導体レーザ素子20を作製する方法は、次のとおりである。すなわち、第1実施形態における第1の成長工程および細線形成工程を終えたのち(図5(b)の状態)、FeをドープしつつInP系化合物半導体(例えばInP)を細線領域15の隙間に成長させて、中間半導体領域17を形成する。そして、活性層21の側面を覆う程度の厚さに中間半導体領域17を成長させたのち、Feのドープを停止してInP系化合物半導体の成長を継続させることにより、オフセット層41を形成する。このとき、第2光閉じ込め層23の側面の半分程度を覆う厚さまでオフセット層41を成長させるとよい。その後、p型ドーパント(例えばZn)のドープを開始し、引き続き該InP系化合物半導体を成長させることにより、第2クラッド層29を形成する。
【0047】
活性層21の側面を埋め込む中間半導体領域17にFeがドープされていると、第2クラッド層29に含まれるp型ドーパントであるZnとFeとの相互拡散によって中間半導体領域17の層厚方向に抵抗分布が生じ、活性層21へ注入されるキャリアの密度にも分布が生じてしまう。このような場合、本実施形態のように中間半導体領域17と第2クラッド層29との間にアンドープInP系化合物半導体層(オフセット層41)を設けることによって、ZnとFeとの相互拡散を好適に抑制できる。
【0048】
(第3の実施の形態)
続いて、本発明による半導体レーザ素子の作成方法に関する第3実施形態について説明する。いま、図9に示すように活性層21の層数が多い場合を考える。このような場合、細線領域15同士の隙間が深くなり、中間半導体領域17を厚く形成する必要が生じるが、中間半導体領域17の厚さが或る程度(例えば200[nm])より厚くなると、中間半導体領域17の内部に空孔(ボイド)Vが発生し易くなる。
【0049】
そこで、本実施形態の作製方法においては、図10に示すように、第1の成長工程においてn型InP基板51上に第1クラッド層(n型InP)53、第1光閉じ込め層(n型GaInAsP)55、活性層(GaInAsP)57、および第2光閉じ込め層(p型GaInAsP)59を成長させたのち、第2光閉じ込め層59上にp型InP層61を更に成長させる。p型InP層61の層厚は、例えば30[nm]である。そして、細線形成工程の際に、p型InP層61、第2光閉じ込め層59および活性層57をエッチングすることにより、複数の細線領域43を形成する(図11)。したがって、この細線領域43には、活性層57および第2光閉じ込め層59に加え、p型InP層61が含まれることとなる。
【0050】
埋込工程において、細線領域43同士の隙間を、アンドープ(FeドープまたはRuドープでもよい)InPによって第2光閉じ込め層23の途中まで埋め込むことにより、中間半導体領域73が形成される(図12)。このとき、PH雰囲気の中でInPを成長させると、p型InP層61から細線領域43の隙間へInPが移動(マストランスポート)する。これにより、例えば細線領域43の隙間が狭く深い場合であっても、埋め込まれるInPの結晶性の劣化(ボイドの発生など)を抑えることができる。また、活性層57の側面を、InPのマストランスポートにより保護することができる。なお、本実施形態における第2の成長工程以降の工程は、第1実施形態と同様である。
【0051】
本発明による半導体レーザ素子の作製方法および半導体レーザ素子は、上記した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記した実施形態では第1クラッド層、第2クラッド層、および中間半導体領域を構成するInP系化合物半導体としてInPを例示したが、これらの層はInおよびPを含む様々な組成によって構成されることができる。また、上記した実施形態では第1光閉じ込め層、第2光閉じ込め層、および活性層を構成するInP系化合物半導体としてGaInAsPを例示したが、これらの層もまたInおよびPを含む様々な組成によって構成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体レーザ素子の構造を示す一部切欠き斜視図である。
【図2】図2は、図1の一部を拡大して示す側面断面図である。
【図3】図3(a)は、半導体レーザ素子を作製する方法における第1の成長工程を示す図である。図3(b)は、半導体レーザ素子を作製する方法における細線形成工程を示す図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、半導体レーザ素子を作製する方法における細線形成工程を示す図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は、半導体レーザ素子を作製する方法における細線形成工程を示す図である。
【図6】図6(a)は、半導体レーザ素子を作製する方法における埋込工程を示す図である。図6(b)は、半導体レーザ素子を作製する方法における第2の成長工程を示す図である。
【図7】図7は、半導体レーザ素子を作製する方法における第2の成長工程の後工程を示す図である。
【図8】図8は、本発明による半導体レーザ素子およびその作成方法の第2実施形態を示す側面断面図である。
【図9】図9は、半導体レーザ素子において活性層の層数が多い場合を示す図である。
【図10】図10は、半導体レーザ素子の作製方法の第3実施形態における第1の成長工程を示す図である。
【図11】図11は、半導体レーザ素子の作製方法の第3実施形態における細線形成工程を示す図である。
【図12】図12は、半導体レーザ素子の作製方法の第3実施形態における埋込工程を示す図である。
【図13】図13は、従来の複素結合型DFBレーザ素子の構造を示す断面図である。
【図14】図14は、図13に示した複素結合型DFBレーザ素子におけるバンド構造を示す図である。
【図15】図15は、n型InP基板上に従来の複素結合型DFBレーザ素子が形成された場合のバンド構造を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10,20…半導体レーザ素子、13,55…第1光閉じ込め層、15,43,71…細線領域、17,73…中間半導体領域、21…活性層、23,59…第2光閉じ込め層、25…半導体メサ、27,53…第1クラッド層、29,75…第2クラッド層、31…埋め込み領域、33…絶縁膜、35…第1の電極膜、37,51…n型InP基板、39…第2の電極膜、41…オフセット層、57…半導体積層(活性層)、61…p型InP層、63…絶縁膜、65…レジスト、67…レジストマスク、69…マスクパターン、77…コンタクト層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子を作製する方法であって、
n型InP基板上に、n型InP系化合物半導体を含む第1クラッド層および第1光閉じ込め層、InP系化合物半導体を含む活性層、並びにp型InP系化合物半導体を含む第2光閉じ込め層を成長させる第1の成長工程と、
前記第2光閉じ込め層上に周期的に配列された複数のマスクパターンを有するマスクを用いて前記第2光閉じ込め層および前記活性層をエッチングすることにより、周期的に配列された複数の細線領域を形成する細線形成工程と、
前記複数の細線領域に含まれる前記活性層の側面をInP系化合物半導体により埋め込む埋込工程と、
前記複数の細線領域に含まれる前記第2光閉じ込め層と隣接するように、p型InP系化合物半導体を含む第2クラッド層を成長させる第2の成長工程と
を備えることを特徴とする、半導体レーザ素子の作製方法。
【請求項2】
前記第2クラッド層がp型InPからなり、
前記第2光閉じ込め層および前記活性層がInPのバンドギャップより狭いバンドギャップを有し、
前記埋込工程における前記InP系化合物半導体がアンドープInPからなることを特徴とする、請求項1に記載の半導体レーザ素子の作製方法。
【請求項3】
前記第1の成長工程の際に、前記第2光閉じ込め層上にp型InP層を更に成長させ、
前記細線形成工程の際に、前記p型InP層、前記第2光閉じ込め層および前記活性層を前記マスクを用いてエッチングすることにより前記複数の細線領域を形成することを特徴とする、請求項2に記載の半導体レーザ素子の作製方法。
【請求項4】
前記埋込工程の際に、前記活性層の側面を埋め込む前記InP系化合物半導体にRuをドープすることを特徴とする、請求項1に記載の半導体レーザ素子の作製方法。
【請求項5】
前記埋込工程の際に、前記活性層の側面を埋め込む前記InP系化合物半導体にFeをドープすることを特徴とする、請求項1に記載の半導体レーザ素子の作製方法。
【請求項6】
Feがドープされた前記InP系化合物半導体上にアンドープInP系化合物半導体を更に成長させることを特徴とする、請求項5に記載の半導体レーザ素子の作製方法。
【請求項7】
n型InP基板と、
前記n型InP基板上に設けられたn型InP系化合物半導体を含む第1クラッド層と、
前記第1クラッド層上に設けられたn型InP系化合物半導体を含む第1光閉じ込め層と、
前記第1光閉じ込め層上に設けられ、InP系化合物半導体を含む活性層、および該活性層上に設けられたp型InP系化合物半導体を含む第2光閉じ込め層を有し、周期的に配列された複数の細線領域と、
前記複数の細線領域間に設けられたInP系化合物半導体を含む中間半導体領域と、
前記第2光閉じ込め層と隣接するように前記複数の細線領域上および前記中間半導体領域上に設けられたp型InP系化合物半導体を含む第2クラッド層と、
を備えることを特徴とする、半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記第2クラッド層がp型InPからなり、
前記第2光閉じ込め層および前記活性層がInPのバンドギャップより狭いバンドギャップを有し、
前記中間半導体領域がアンドープInPからなることを特徴とする、請求項7に記載の半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記中間半導体領域にRuがドープされていることを特徴とする、請求項7に記載の半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記中間半導体領域にFeがドープされていることを特徴とする、請求項7に記載の半導体レーザ素子。
【請求項11】
前記中間半導体領域と前記第2クラッド層との間にアンドープInP系化合物半導体層を更に備えることを特徴とする、請求項10に記載の半導体レーザ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−87994(P2009−87994A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252133(P2007−252133)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】