説明

半導体受光素子およびその製造方法

【課題】高速且つ高密度の光配線を低コストで構築するため、簡易な光結合系でも大きな実装余裕と動作余裕が得られる半導体受光素子およびその製造方法の提供。
【解決手段】基板上に設けられた半導体からなる受光部と、基板上に設けられた樹脂層と、樹脂層に周囲を囲まれて受光部の上に位置し、開口径が、受光部近傍で受光部より小さく、基板から離れるに従って連続的に広くなり、樹脂層の表面側で受光部より大きい逆錐体型開口と、逆錐体型開口の斜面に設けられ、且つ受光部の電極とは電気絶縁された金属からなる光反射膜とを備え、基板上の受光部以外の部分が遮光されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送に用いる半導体受光素子およびその製造方法に関し、特に、受光部上に逆錐体型集光器を集積して光結合トレランスを改善した半導体受光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ等の電子デバイスの性能向上により、大規模集積回路(LSI)においては飛躍的な動作速度向上が図られてきている。しかしながら、LSI内部動作が高速化されても、それを実装するプリント基板レベルの配線はLSI内部より配線速度が低く抑えられ、そのプリント基板を装着したラックレベルでは更に配線速度が低く抑えられている。これらは動作周波数上昇に伴う電気配線の伝送損失や雑音、電磁障害の増大に起因するものであり、信号品質を確保するため長い配線ほど動作周波数を低く抑える必然性によるものである。このため、電気配線装置においてはLSI速度より実装技術がシステム性能を支配するという傾向が近年益々強まってきている。
【0003】
このような電気配線装置の問題を鑑み、LSI間を光で接続する光配線装置がいくつか提案されている(例えば特許文献1)。光配線は、直流から100GHz以上の周波数領域で損失の周波数依存性が殆ど無く、配線路の電磁障害や接地電位変動雑音も無いため、数十Gbpsの配線が容易に実現できる。光配線においては、低コスト化のため簡易な構成で大きな実装余裕と動作余裕が確保可能な光伝送系を構築する必要がある。しかしながら、上述の従来技術は半導体受光素子の受光部における集光性能を高めるものであって、半導体受光素子の外部との光結合における実装余裕を確保するうえでは未だ十分ではない。
【特許文献1】特開2004−241630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高速且つ高密度の光配線を低コストで構築するため、簡易な光結合系でも大きな実装余裕と動作余裕が得られる半導体受光素子およびその製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、基板上に設けられた半導体からなる受光部と、前記基板上に設けられた樹脂層と、前記樹脂層に周囲を囲まれて前記受光部の上に位置し、開口径が、前記受光部近傍で前記受光部より小さく、前記基板から離れるに従って連続的に広くなり、前記樹脂層の表面側で前記受光部より大きい逆錐体型開口と、前記逆錐体型開口の斜面に設けられ、且つ前記受光部の電極とは電気絶縁された金属からなる光反射膜と、を備え、前記基板上の前記受光部以外の部分が遮光されていることを特徴とする半導体受光素子が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、基板上に半導体からなる受光部を設ける工程と、前記受光部上に少なくとも1層の中間層を設ける工程と、前記中間層上に樹脂層を設ける工程と、前記樹脂層における前記受光部の上に位置する部分に、開口径が、前記受光部近傍で前記受光部より小さく、前記基板から離れるに従って連続的に広くなり、前記樹脂層の表面側で前記受光部より大きい逆錐体型開口を形成する工程と、前記樹脂層上及び前記逆錐体型開口内に金属からなる光反射膜を設ける工程と、前記逆錐体型開口の底部の前記中間層を除去することで前記逆錐体型開口の底部の前記光反射膜を選択的に除去する工程と、を備えたことを特徴とする半導体受光素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な光結合系でも大きな実装余裕と動作余裕が得られる半導体受光素子およびその製造方法を実現することができ、高速且つ高密度の光配線を低コストで構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
特許文献1の従来技術は、半導体受光素子の受光部上に小型のレンズを備えるものであり、これにより受光部において広い角度での受光を可能にする。しかしながら、受光部上にレンズを設ける従来技術の構成では、光伝送路(光ファイバなど)との光結合部において反射戻り光防止のための屈折率整合材を導入した際に、レンズと屈折率整合材との屈折率差が小さくなってレンズ効果が得にくくなる。
【0009】
このため、従来技術による光配線では、半導体レーザを光源とする場合に重要な反射戻り光の対策が困難、即ち、高速光配線が困難であったりするといった問題があった。また更に、上述した従来例では、発光素子側の光結合が容易なマルチモードファイバを用いる場合に、全ての伝送モードが半導体受光素子で受光可能な範囲が狭く、結果としてモーダルノイズを発生し易いため動作余裕または実装余裕が小さくなるという問題もあった。
【0010】
これに対し、本発明実施形態では、半導体受光素子に逆錐体型開口による光集光器を設け、これにより光結合ずれに対する光結合低下の抑制を図り、更にはその逆錐体型開口による光集光器を再現性良く形成するための光反射膜形成の際、受光部領域に孤立したパターンの中間層を設けて選択除去するものである。
【0011】
このような本発明実施形態によれば、光配線を高密度多並列に構成する事が容易で、半導体レーザを光源とする場合の反射戻り光対策も容易であり、更に、発光素子の光結合が容易なマルチモードファイバを用いる場合でも、全ての伝送モードを受光可能な範囲が広く、結果としてモーダルノイズを発生し難いため動作余裕や実装余裕の大きな半導体受光素子が得られる。これにより、光配線装置の実用性と低コスト化を大幅に促進し、情報通信機器などの高度化に大きく貢献することができる。
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明実施形態を詳細に説明する。ここでは幾つかの具体的材料を示して説明を行っていくが、これは半導体受光素子に適合する材料であれば同様に実施可能であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、ここでは受光素子を抽出した形で示していくが、これは勿論、トランスインピーダンスアンプを集積するなど、本発明実施形態に記述していない周辺構成が付加されることは任意である。また、半導体受光素子の機能的構造として、所謂PINフォトダイオードを中心に説明するが、これはMSM(Metal Semiconductor Metal)フォトダイオードやフォトコンダクタ、フォトトランジスタなど、種々の半導体受光素子に対して適用可能である。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる半導体受光素子の概略構成を示す斜視図であり、図2は図1の実施形態の構成断面図、図3、図4は、図1の実施形態の光線路(光ファイバ、光導波路など)との光結合状態の模式図である。ここでは、具体的な構成材料の例としてGaInAs/InP系材料を用いて説明していくが、これは前述のように他の材料でも構わず、例えばGaAlAs/GaAs系、SiGe/Si系、GaN/Si系、SiC/Si系等の材料であっても構わない。また、光受光部は上記したような半導体材料により構成し、その基板を剥離してガラス基板やセラミック基板に貼り付けた構成であっても構わない。
【0014】
図1において、1はn型InP基板、2は受光部、3はp側電極(例えばAu/Pt/Ti、Au/Crなど)、4はn側電極(例えばAuGe、AuSnなど)、5は樹脂層(例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂など)、6はp側貫通電極(例えばAuなど)、7はp側パッド電極(例えばAu/Pt/Ti、Au/Crなど)、8はn側貫通電極(例えばAuなど)、9はn側パッド電極(例えばAu/Pt/Ti、Au/Crなど)、10は光反射膜(例えばAu/Pt/Ti、Au/Crなど)である。また、図2、図3、図4の11はn型InPバッファー層、12は低濃度GaInAs受光層、13はn型InPウィンドウ層、14は窒化シリコン(パッシベーション膜)を最下層に有する絶縁層、15はp型拡散層(例えばZn拡散層)、16は裏面電極(裏面n側電極、例えばAuGe、AuSnなど)、17はクラッド(光線路光閉じ込め部)、18はコア(光線路光導波部)であり、図3、図4の破線は光線路からの光経路(光線軌跡)を模式的に示したものである。また、2の受光部は、p型拡散層15の下部に位置するGaInAs受光層12の電界印加された領域がこれに相当するが、ここでは、p型拡散層15を通じて光入射することから、p型拡散層15とその下部の電界印加されたGaInAs受光層12をまとめて受光部2と記すものとする。
【0015】
本実施形態に係る半導体受光素子は、基板1上に半導体からなる受光部2を有する半導体受光素子において、基板1上に設けられた樹脂層5と、受光部2上に位置し、開口径が受光部2近傍で受光部2より小さく、基板1から離れるに従って連続的に広くなり、樹脂層5表面においては受光部2より大きい開口端となる樹脂層5の逆錐体型開口30と、該逆錐体型開口30の開口斜面に設けられ且つ受光部2の電極3とは電気絶縁された金属の光反射膜10を具備してなることを特徴とする半導体受光素子であり、樹脂層5の一部または全部が不透明な樹脂からなり、基板2上の受光部2以外の部分が遮光されてなることが望ましく、樹脂層5の逆錐体型開口30内に透明樹脂を更に充填してなることが望ましいものである。
【0016】
図1に示すように、光反射膜10は逆錐体型開口30(テーパー開口)の表面に形成され、光集光器を構成している。ここで、逆錐体型開口とは、多角錐体、円錐体などの頂部を切り取った形(多角錐台、円錐台)を上下反転した形状の開口部や、これらの形状の斜面の断面が直線以外(例えば放物線)の形状の開口部のことを総称するものとする。以下においては、逆円錐台型の開口を例にとって説明していく。
【0017】
逆錐体型開口30としては、例えば、樹脂層5の厚さを70μm、基板1表面に対する斜面角度を65°、受光部2近傍の開口径を70μm(頂部開口径約135μm)とし、p型拡散層15の拡散領域直径を80μmとする。このp型拡散領域径の場合、n型InPバッファー層11と低濃度GaInAs受光層12の不純物濃度や厚さを最適化することで、10Gbps以上の光信号を受信する事が可能となる。
【0018】
また、このように構成することで、受光径70μmの半導体受光素子と同等な受光部2となるが、図3に示すように、受光径(受光部近傍の逆錐体型開口径)からはみ出すような入射光もある程度の角度のものまでは反射されて受光部2に導入されるようになる。例えば、標準的なGI(Graded Index)型光ファイバ(コア径50μm、NA=0.21)は出力光の最大広がり角が約12°であるが、その光ファイバが図3のように本実施形態の半導体受光素子の表面近傍から光を入射した場合、受光面での広がり距離は約15μmであり、光ファイバコア18の端から出力される光で最大の広がりの光は中心から約40μmとなるため、直接受光部2には入射しない。ところが、この最大広がりの光は、逆錐体型開口30による光集光器斜面で反射されて受光部2に戻され、結果的に光損失は生じない。
【0019】
また、図4に示すように、光を入射する光ファイバが軸ずれを起こした場合、ある程度の軸ずれまでは逆錐体型開口30による光集光器の集光効果により光結合損失を防ぐ事が可能である。上記した標準的なGI型光ファイバの場合、最大20μm以上の軸ずれまで光損失の発生を防止することが可能である。
【0020】
このように、本発明実施形態の半導体受光素子では、光を入射する光線路の位置ずれ許容度が非常に大きい。しかも、従来例のレンズ結合のように軸ずれに対して連続的に光損失が増減するのではなく、ある軸ずれ量まではほとんど光結合損失の変化しない実質無損失領域が存在する。このことは、非常に多数の光伝播モードを有する所謂マルチモード光ファイバなどで光伝送を行った場合、マルチモード光伝送で問題となり易いモーダルノイズがある軸ずれ量まで全て抑制できるという大きな特徴を持つ。レンズ結合の場合などは、比較的光損失が小さい領域が存在するものの、その時点での光損失は、そのまま光モード損失に相当し、所謂モーダルノイズの発生要因となる。従って、レンズ結合では光損失量が問題とならない場合にも、モーダルノイズが問題となる欠点があったが、本実施形態ではこの欠点が解消されて、且つ、光線路の軸ずれに対する許容性が確保可能という利点を有する。即ち、本実施形態では、光線路の軸ずれに対する実装余裕とともに、モーダルノイズに対する動作余裕も兼ね備えており、光線路と半導体受光素子との結合を簡易構成、例えば図3に示したような所謂バットジョイント結合構成で十分な特性を発揮可能である。
【0021】
また、図1から図4では、逆錐体型開口30による光集光器内部を空隙のままで用いているが、光送信側に半導体レーザを用い、本実施形態の光受信側と同様なバットジョイント結合を行っている場合、光ファイバなどの光線路端部での残留反射(数%)が光送信側の半導体レーザに光帰還されてしまい、半導体レーザが所謂戻り光雑音を発生してしまう。この現象を防止するため、光線路と光受光部の間に光線路の等価屈折率に近い屈折率の屈折率整合樹脂を充填しても良い。この場合でも、上記してきた効果は同様に得られ、むしろ、光学的な距離が充填樹脂の屈折率倍だけ短縮されて前述した軸ずれ許容量が大きくなる効果を持っている。
【0022】
ちなみに、特許文献1のように受光部上に小型レンズを形成した半導体受光素子の場合、上述のように屈折率整合樹脂を充填すると、レンズと周囲との屈折率差が極端に小さくなり、実質的にレンズ効果が損なわれて機能しなくなってしまう。これに対し本実施形態の半導体受光素子では、金属の光反射膜10で光集光器を構成しているため周囲媒体が空気か樹脂かに関わらずその機能が保持されるという特徴を持っている。
【0023】
また、上記した屈折率整合樹脂の充填は、予め半導体受光素子の製造段階において逆錐体型開口30内を充填させておく事が望ましく、これにより光ファイバなどの光線路を近接させてその周囲を充填する際に、逆錐体型開口30内に気泡が残留することを防止することができる。
【0024】
尚、樹脂層5は、透明樹脂であるよりは不透明樹脂である方が望ましい。図2の光反射膜10と絶縁層14との間には、光反射膜10による電気的な寄生容量の増加を防止するためのギャップ(光反射膜不在部)がある程度必要である。このギャップ部分から漏れる光は一種の迷光となり、p型拡散層15から離れた部分に照射された場合、pn接合への逆バイアスによる電界が加わっていない非電界印加領域での拡散電流となり、電界印加部でのドリフト電流よりかなり応答の遅い受光電流となる。この漏れ光または上部の逆錐体型開口30による光集光器に入射しなかった光による拡散電流を防止するため、樹脂層5は不透明樹脂である事が望ましい。また、樹脂層5は透明、または半透明で、絶縁層14と樹脂層5との間に光遮断層が設けられた構造であっても構わない。例えば、絶縁層14と樹脂層5との間にカーボンブラックを含む遮光樹脂を導入するなどの構成であっても良い。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、本発明の実施形態に係る半導体受光素子の製造工程の例について説明する。ここでは、説明の簡単化のため受光部周囲のみを切り出した図面により説明を行っていく。また、図1から図4で示した貫通電極6、8やパッド電極7、9の製造過程は図示を省略するが、これは一般的なパターニング工程やメタル形成工程(蒸着、メッキなど)、エッチング工程などにより実施可能なものであり、適宜組み合せれば良いものである。
【0026】
図5から図8は、逆錐体型開口による光集光器の製造過程を示す工程断面図であり、図1から図4と共通するものは共通の符号を付してある。
【0027】
本実施形態に係る半導体受光素子の製造方法は、基板1上に半導体からなる受光部を設ける工程と、該受光部上に少なくとも1層の中間層143を設ける工程と、該中間層143上に樹脂層5を設けるとともに、受光部上の中間層143上に受光部より小さい開口端を有し且つ基板1から離れるに従い開口が広くなって樹脂層5表面においては受光部より大きい開口端となる逆錐体型開口30を樹脂層5に設ける工程と、該逆錐体型開口30を含む樹脂層5上に光反射膜10を設ける工程と、しかる後、逆錐体型開口30の底部の中間層143を除去することで逆錐体型開口30の底部の光反射膜10を選択的に除去する工程を少なくとも有してなることを特徴とする半導体受光素子の製造方法であり、中間層143が、受光部上において孤立パターンに形成されてなり、光反射膜10を設ける前に中間層143の一部を除去してなることが望ましいものである。
【0028】
まず、図5(a)に示すように、n型InP(基板)1上に、n型InPバッファー層11、GaInAs受光層12、n型InPウィンドウ層13をMO−CVD(有機金属気相堆積法)などの結晶成長方法により結晶成長させる。次に、窒化シリコン(SiNx)膜141をプラズマCVDなどの方法によりn型InPウィンドウ層13上に形成し、フォトリソグラフィーによって受光部pn接合を形成する部分の窒化シリコン膜141に開口を設ける。その後、p型不純物(例えばZn)の熱拡散を行い、p型拡散層15を選択的に形成する。
【0029】
次に、上記の工程の後、表面に窒化シリコンのARコート(無反射コート)膜142と酸化シリコン(SiO)の中間層143を設ける(図5)。ARコート膜142は、受光する光の波長λに対し、屈折率と膜厚の積が略λ/4となるように形成すれば良く、また、膜の屈折率が受光部半導体(p型InP15)の屈折率n1と外側の屈折率n2(空気の場合n2=1)の積の平方根、即ち、n1n2の平方根に一致すれば最も反射率が低くなる。例えば、1.3μmの波長に対しp型InPの屈折率は約3.3程度であり、外側が空気の場合にはARコート膜142の屈折率が1.8程度となることが望ましい。窒化シリコンは上記の波長で屈折率が1.8となるよう調整が可能であり、その場合には約180nmの窒化シリコン膜を堆積すれば良い。
【0030】
また、ARコート膜142として導電性の透明膜(例えばITO:Indium Tin Oxide)を用い、受光部の補助電極として用いて実効的な受光面積の最大化を図ることも可能である。
【0031】
中間層143は、例えば酸化シリコンを熱CVDにより約1μmの厚さに堆積する。中間層143は、後で選択除去できるようにARコート膜142および樹脂層5に対してエッチング選択比が大きく、樹脂層5の処理温度(キュア温度)に耐えうる材料であれば良く、上記した酸化シリコン以外のものであっても構わない。また、中間層143は、エッチング特性の異なる2種以上の多層膜で構成し、後述する途中までのエッチングを行うような場合に多層膜の一部の膜を選択的に除去するようにしてもよい。
【0032】
次に、図5(b)に示すように、中間層143とARコート膜142の一部を選択的に除去してp型拡散層15を露出させ、その部分にp側電極3を蒸着などの膜形成法により形成する。前述したように、ARコート膜142に導電性の透明膜(透明電極)を用いる場合は、透明電極142が窒化シリコン膜141(p型不純物拡散マスク)に一部重なる位置で孤立パターンとなるように中間層143とともにエッチング分離し、その孤立化した透明電極142の一部を露出させてp側電極3を設ける。
【0033】
次に、樹脂層5を形成し、同時に受光部上に逆錐体型開口の形成を行う。樹脂層5としては前述したようにポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが適用でき、形成方法として、感光性樹脂の露光と現像によるパターニングを用いることができる。ここでは、厚膜樹脂に任意形状の逆錐体型開口を形成できる方法として、ナノインプリント技術による形成方法を示す。
【0034】
まず、図5(b)の状態の半導体受光素子ウェハに樹脂層5として例えばポリイミド樹脂をスピンコート、ロールコート、ディスペンスコート等の手法で平坦にコーティングする(図6(a))。次に、図6(b)に示すように、Ni電鋳技術による逆錐体型開口の金型100を位置合わせして押し付け、熱処理などの樹脂硬化処理を行い逆錐体型開口30のプリント転写を行う。金型100をガラスなどの透明材料で構成し、樹脂層5に紫外線硬化樹脂を用いると、型基板を通した紫外線照射を行って瞬時に樹脂硬化を行うことも可能である。これらの金型100の平坦部(樹脂層5表面)高さは、樹脂層5の厚さが樹脂硬化処理の後で70μmとなるよう硬化収縮の影響を加味して決定しておく。
【0035】
次に、光反射膜10の形成を行う。光反射膜10は、樹脂層5の逆錐体型開口30の斜面のみに必要なものであるが、受光部の径が小さい場合など、逆錐体型開口30の底部、即ち、受光部表面部分を選択的にエッチング除去することが難しくなる。そこで、本実施形態においては、前述した中間層143をスペーサとしたリフトオフを行って、微小開口の光反射膜10を選択除去する。
【0036】
具体的には、樹脂層5をマスクとして受光部上面の中間層143を選択的にエッチング除去して光反射膜10を選択除去するが、これを確実に実施するため、図6(b)の工程のあと、図7(a)に示すように、受光部上の中間層143を半分ほど予めエッチング処理を施す(ハーフエッチング)。エッチング処理としては、例えば弗化アンモニウム溶液によるウェットエッチングにより行えばよい。
【0037】
このハーフエッチングにより、前工程のナノインプリント処理による中間層143表面の樹脂残渣を取り除くとともに、樹脂層5との境界部に中間層143のアンダーカットで段差を設ける。この状態で光反射膜10を蒸着などにより形成すれば、受光部上の光反射膜10は、前述の段差により逆錐体型開口30の斜面の光反射膜10と分離された状態で形成される(図7(b))。
【0038】
この後、受光部上に残った中間層143を完全にエッチング除去することで、受光部上の光反射膜10が除去され、下地に設けたARコート膜142が露出する(図8)。中間層143の除去には、例えば前述した弗化アンモニウム溶液によるウェットエッチングにより行うことができる。この弗化アンモニウム溶液によるウェットエッチングでは、酸化シリコンのエッチング速度より窒化シリコンのエッチング速度が遅くなるため、所謂選択エッチングが可能である。このとき、前述したように受光部上の中間層143を孤立パターンとして形成しておくことにより、エッチングが丁度終了する時間より多めにエッチングする、所謂オーバーエッチングを行うことができ、これにより中間層143の残渣を確実に除去し易くなる。
【0039】
最後に、逆錐体型開口30以外の部分の光反射膜10を選択エッチング除去し、工程完了となる(図8)。このとき、光反射膜10と、前述したパッド電極7、9に同じ金属を用いると、光反射膜10の選択エッチングと同時にパッド電極7、9の形成も完了できる。また、用いる金属によってはエッチング除去が困難な場合もあるが、その場合、樹脂層5の上にフォトレジストによる光反射膜除去部分のパターンを形成しておいてから前述の受光部上の中間層143のハーフエッチングを行い、光反射膜10の形成を行うこともできる。この場合、光反射膜10の選択除去はフォトレジストによるリフトオフによって実施可能となる。
【0040】
尚、図8には図示してないが、逆錐体型開口30の内側には前述したように屈折率整合のための透明樹脂を充填硬化させることが望ましい。
【0041】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば上述した本発明実施形態はいくつかの具体例を示しているが、これはあくまで構成例であり、本発明の主旨に従い個々の要素に他の手段(材料、寸法など)を用いても構わないものである。例えば、中間層143を2層以上の多層膜としておき、前述した中間層143のハーフエッチングの代りに多層膜の選択エッチングを行っても同様な効果が得られる。即ち、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる半導体受光素子の概略構成を示す斜視図。
【図2】図1の実施形態の構成断面図。
【図3】図1の実施形態の光線路(光ファイバ、光導波路など)との光結合状態の模式図。
【図4】図1の実施形態の光線路(光ファイバ、光導波路など)との光結合状態の模式図。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる半導体受光素子の製造過程を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる半導体受光素子の製造過程を示す断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる半導体受光素子の製造過程を示す断面図。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかる半導体受光素子の製造過程を示す断面図。
【符号の説明】
【0043】
1…n型InP基板、2…受光部、3…p電極、4…n電極、5…樹脂層、6、8…貫通電極、7、9…電極パッド、10…光反射膜、15…p型拡散層、30…逆錐体型開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた半導体からなる受光部と、
前記基板上に設けられた樹脂層と、
前記樹脂層に周囲を囲まれて前記受光部の上に位置し、開口径が、前記受光部近傍で前記受光部より小さく、前記基板から離れるに従って連続的に広くなり、前記樹脂層の表面側で前記受光部より大きい逆錐体型開口と、
前記逆錐体型開口の斜面に設けられ、且つ前記受光部の電極とは電気絶縁された金属からなる光反射膜と、を備え、
前記基板上の前記受光部以外の部分が遮光されていることを特徴とする半導体受光素子。
【請求項2】
前記樹脂層の一部または全部が不透明樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の半導体受光素子。
【請求項3】
前記逆錐体型開口内に透明樹脂が充填されたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体受光素子。
【請求項4】
基板上に半導体からなる受光部を設ける工程と、
前記受光部上に少なくとも1層の中間層を設ける工程と、
前記中間層上に樹脂層を設ける工程と、
前記樹脂層における前記受光部の上に位置する部分に、開口径が、前記受光部近傍で前記受光部より小さく、前記基板から離れるに従って連続的に広くなり、前記樹脂層の表面側で前記受光部より大きい逆錐体型開口を形成する工程と、
前記樹脂層上及び前記逆錐体型開口内に金属からなる光反射膜を設ける工程と、
前記逆錐体型開口の底部の前記中間層を除去することで前記逆錐体型開口の底部の前記光反射膜を選択的に除去する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体受光素子の製造方法。
【請求項5】
前記受光部上に孤立したパターンの前記中間層を設け、前記光反射膜を設ける前に前記中間層の一部を除去することを特徴とする請求項4記載の半導体受光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−16707(P2009−16707A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179410(P2007−179410)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】