説明

半導体搬送装置

【課題】安全かつ簡易な構成の半導体搬送装置のメンテナンスにおいて行うロボット遠隔教示作業のインターロック系統切替機構を備えた半導体搬送装置を提供する。
【解決手段】点検調整用の開口部10と、この開口部10を蔽う開閉自在のカバー2と、このカバー2が開状態のときインターロック3が作動し、装置の駆動を停止させるインターロック回路3と、を備えた搬送用ロボットによって半導体試料を搬送する半導体搬送装置1であって、さらに、カバー2が開状態のときに、操作できるキースイッチ4を有し、キースイッチ4は、ノーマルモードNとメンテナンスモードMを選択することができ、ノーマルモードNは、インターロック3を有効とし、メンテナンスモードMは、インターロック3を無効にするとともに、さらに搬送ロボットの搬送位置を調整する遠隔教示用のティーチングペンダント5の使用を有効とさせる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体搬送装置に関する。詳しくは、半導体搬送装置のメンテナンスにおいて行うロボット遠隔教示作業のインターロック系統切替機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体搬送装置は、半導体検査装置に半導体試料であるウェハを搬入する装置である。ウェハを検査する時間を短縮するには、位置的な誤差をより少なくして、ウェハを半導体検査装置へ搬入することが好ましい。こうすることによって、半導体検査装置内においてウェハの位置を補正する時間が短縮され、検査時間の短縮につながる。
【0003】
ウェハ半導体搬送装置は、前記のように高い位置精度でもってウェハを半導体検査装置に搬入するように構成されているが、ウェハの形状、サイズに対応した搬入作業に関わる位置補正が必要であり、また経時による誤差が蓄積された際には、位置精度を回復させるために、メンテナンス作業において位置補正を行う必要がある。
【0004】
一方、半導体搬送装置のメンテナンス作業は、安全を期すため、半導体搬送装置のカバー等を開いた際にインターロックスイッチが作動し、駆動関連の電源を遮断する構成となっている(例えば、特許文献1もしくは特許文献2)。
【0005】
前記した位置補正作業では、通常、ウェハを搬送するロボット(半導体搬送装置の構成)に、ウェハおよびこれを搬送する経路・位置を教示する遠隔教示が必要となる。この遠隔教示作業を行うためには、カバー等を開いた状態で、駆動部、詳しくは遠隔教示端末装置であるティーチングペンダントを作動させる必要がある。しかし、前記したように、カバー等を開いた際にインターロックスイッチが作動し、駆動関連の電源を遮断する構成となっているため、メンテナンス時にはインターロックスイッチの作動を無効等にする機能が必要となっていた(例えば、特許文献1もしくは特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−164480号公報
【特許文献2】特開2000−64676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インターロックスイッチを適宜無効にできるように新たなスイッチを設けたとしても、メンテナンス終了時にインターロックスイッチの機能回復作業が漏れるおそれがあり、安全性の低下につながるおそれがあった(例えば、特許文献1の構成)。また、キースイッチを設け、このキースイッチによって、インターロックスイッチを無効化した状態からでも、再度カバーを閉じることでインターロックスイッチの機能を自動的に回復させる装置も考案されているが(例えば、特許文献2)、半導体半装置の一部機能(電子システム制御盤等)を対象としており、安全性の低下につながるおそれがあった。
【0007】
本発明は、安全かつ簡易な構成の半導体搬送装置のメンテナンスにおいて行うロボット遠隔教示作業のインターロック系統切替機構を備えた半導体搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、点検調整用の開口部と、この開口部を蔽う開閉自在のカバーと、このカバーが開状態のときインターロックが作動し、装置の駆動を停止させるインターロック回路と、を備えた搬送用ロボットによって半導体試料を搬送する半導体搬送装置であって、さらに、前記カバーが開状態のときに、操作できるキースイッチを有し、前記キースイッチは、ノーマルモードとメンテナンスモードを選択することができ、前記ノーマルモードは、前記インターロックを有効とし、前記メンテナンスモードは、前記インターロックを無効にするとともに、さらに前記搬送ロボットの搬送位置を調整する遠隔教示用のティーチングペンダントの使用を有効とすることを特徴としている。
【0009】
前記構成によれば、本発明に係る半導体搬送装置は、キースイッチでメンテナンスモードに切替えることによって、カバーのインターロックを無効にし、ティーチングペンダントのインターロックを有効にし、一方、キースイッチで通常作動モード(ノーマルモード)に切替えることによってカバーのインターロックを有効にし、ティーチングペンダントのインターロックを無効にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
このような半導体搬送装置によれば、簡単な構成であって、半導体搬送装置の通常の作動時に必要なインターロックとメンテナンス時に必要な搬送ロボット遠隔教示用のティーチングペンダントのインターロックとを、容易な操作で確実に切替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態に係る半導体搬送装置の構成を表す斜視図であり、図2は半導体搬送装置に備えられたインターロック回路の系統図である。
本実施形態に係る半導体搬送装置1は、半導体試料であるウェハを検査する半導体検査装置にウェハを搬送する機能を有するものであり、内部にウェハ搬送用ロボット(図示せず)や、ウェハを載置するロードポート(図示せず)等を備えている。なお、図1の半導体搬送装置は、一例であり、大きいサイズのものでは、後記するように装置内部に人が入り、作業ができるものもある。
【0012】
半導体搬送装置1は、背面に搬出口20が開口形成された本体部13と、制御機器や駆動装置等が収挿された収挿部14とから構成されている。
半導体検査装置に搬送されるウェハは、極めて高い清浄環境が要求されていることから、通常、箱状のFOUP(Front Opening Unified Pod 図示せず)に梱入されている。ウェハは、このような状態で搬入口(図示せず)から半導体搬送装置1内へ搬送される。
【0013】
そして、半導体搬送装置1に備えられたウェハ搬送用ロボットが、FOUPからウェハを取り出し、適切な搬送位置にウェハを載置する。その後、適切な搬送位置を保持しながら、搬出口20から、半導体検査装置(図示せず)に搬出される。かかる機能を具現するため、本体部13には、ウェハを搬送するコンベア(図示せず)や、搬送位置を誤差なく搬送させるための搬送用ロボット(図示せず)等の駆動部(図示せず)が備えられている。
【0014】
収挿部14には、図1に示すように前面と後面に開閉自在なカバー2,2が配設されている。半導体搬送装置1の内部には、前記したウェハ搬送用ロボット等の機器が配設されているおり、カバー2,2は、作業者の安全を図るため設けられている。
【0015】
図1に示すように、前面側のカバー2は、半導体搬送装置1の側縁に設けられたヒンジ等を回転軸として、手前側に水平に回転するように開閉する(矢印A参照)。カバー2を開くと、半導体搬送装置1の内部には、二つのカバーインターロックスイッチ3(3a,3b)と、キースイッチ4が配設されている。一方のインターロックスイッチ3aとキースイッチ4は、半導体搬送装置1の前面の開口部10の角部に装着されたブロック11に並んで備えられ、他方のインターロックスイッチ3bは、開口部10の下部に設けられたパネル12に備えられている。後面側のカバー2も前記のような構成としている。
【0016】
メンテナンス作業時には、作業者は、カバー2を開け、開口部10から半導体搬送装置1の内部に入り、もしくは手を入れ、本体部13に配設された機器(図示せず)を取外したり、交換する。このとき、作業安全をはかるため、カバー2を開くことによって、カバーインターロックスイッチ3が作動し、半導体搬送装置1の駆動部の電源が遮断され、駆動部は停止する。そして、作業者は、駆動部停止を確認後、半導体搬送装置1の主電源をOFFにし、作業中に誤って主電源がONとならないように、電源部7(図2参照)は南京錠等でロックアウトされている。
【0017】
ウェハの搬送に係る本体部13に配設された機器が取り外された場合は、再取付後ウェハの搬送位置がずれるおそれがあるため、搬送用ロボットの搬送位置を教示する必要がある。この教示方法として、遠隔教示端末装置であるティーチングペンダント5を使用する。具体的には、ティーチングペンダント5を携えた作業者が、開口部10から半導体搬送装置1の内部に侵入し、搬送用ロボットとウェハの搬送位置との相対的位置を確認しながら誤差を是正するように搬送用ロボットを教示している。確認作業においては、カバー2が開き、開口部10が開口した状態で、搬送用ロボットを駆動させる必要がある。
【0018】
次に、前記した内容と多少重複するが、本実施形態に係る半導体搬送装置1の搬送用ロボットの教示作業を含むメンテナンス作業の流れを図1および図2を参照して説明する。
最初に、作業者は、カバー2を開く。カバー2を開くことによって、ブロック11とパネル12に配設されたインターロックスイッチ3が、カバー2の押圧から開放され、作動する。インターロックスイッチ3の作動により、駆動部が停止する。作業者は、駆動部の停止を確認した後、半導体搬送装置1の主電源をOFFにし、電源部7を南京錠等でロックアウトする。
【0019】
次に、具体的なメンテナンス作業に入り、機器等の取外し、交換を行う。なお、機器等の取外し、交換等を行わず、ウェハの搬送位置の補正が必要でない場合は、カバー2を閉じ、作業は終了する。この場合は、従来技術と同様な作業となる。
【0020】
ウェハの搬送位置の補正が必要な場合は、キースイッチ4を作動させる。キースイッチ4は、図2に示すように、通常の作動を行うノーマルモードNからメンテナンスモードMに切替えるスイッチである。キースイッチ4には、鍵穴43(図1参照)が形成されており、ここにキー(図示せず)を差込み、回転させることで、モードの切替えを行っている。
【0021】
メンテナンスモードMに回路系統が切替えられると、モード切替リレー6が作動し、リレーの接点は、N1からM1へ切替えられる。この切替えによって、インターロックスイッチ3は無効化され、電源Vccと接続され、ティーチングペンダント5は有効となり、作動できる状態となる。ここで、GNDは接地(グラウンド)である。
【0022】
この状態において、作業者は、半導体搬送装置1の内部に入り、ティーチングペンダント5を使って、搬送用ロボットの教示作業を行う。教示作業が終了したら、キースイッチ4によって、メンテナンスモードMからノーマルモードNに切替える。ノーマルモードNに切替えることで、半導体搬送装置1のインターロック系統は、インターロックスイッチ3が有効となり、ティーチングペンダント5は無効となる。
【0023】
本実施形態は、キースイッチ4の切替えという簡易な構成を採用することにより、確実にメンテナンスモードとノーマルモードとの切替えを具現できる。例えば、メンテナンス終了時に、ノーマルモードNの状態で、ティーチングペンダント5を誤って作動させたとしても、無効となっており、ティーチングペンダント5は作動しない。
【0024】
また、このようなキースイッチ4を備えることにより、ティーチングペンダント5をコネクタ等を介して半導体搬送装置1に接続して使用する構成にすれば、1台のティーチングペンダント5によって、複数台の半導体搬送装置1の搬送ロボットの教示作業を実施することも可能となる。
【0025】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る半導体搬送装置の第2実施形態について説明する。本実施形態における半導体搬送装置において、前記した第1実施形態(図1等参照)と同一構成の部分は、同一の符号を付して重複する説明は省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。図3は、本実施形態に係る半導体搬送装置100のカバー2を開いた状態の側面の一部を示した斜視図である。
【0026】
ここで、カバー2は、キースイッチ40の鍵穴43にキー41を挿入した状態では、鍵穴43から突出したキー41の高さHがあるため、閉じることはできない。そして、キー41は、ノーマルモードN(図2参照)のときにのみ、抜き差しできるようにしている。
【0027】
かかる構成によって、キースイッチ40によってメンテナンスモードM(図2参照)の解除を忘れた場合であっても、カバー2は、キー41に当接し、カバー2を閉じることはできないため、予防安全を図ることができる。なお、図3では、開口部10に備えられたブロックを2つとし、一つは、インターロックスイッチ3c用のブロック30と、他は、キースイッチ40用のブロック42として、別体としているが、第1実施形態のようにインターロックスイッチとキースイッチとが一つのブロックを共有する構成としても問題ない。
【0028】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。本発明は、図面に記載したものに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態に係る半導体搬送装置の構成を表す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る半導体搬送装置に備えられたインターロック回路の系統図である。
【図3】第2実施形態に係る半導体搬送装置のカバーを開いた状態の側面の一部を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 半導体搬送装置(第1実施形態)
2 カバー
3,30 インターロックスイッチ
4,40 キースイッチ
5 ティーチングペンダント
6 モード切替リレー
7 電源部
10 開口部
11,41 ブロック
12 パネル
13 本体部
14 収挿部
20 搬入部
42 キー
43 鍵穴
100 半導体搬送装置(第2実施形態)
N ノーマルモード
M メンテナンスモード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検調整用の開口部と、この開口部を蔽う開閉自在のカバーと、このカバーが開状態のときインターロックが作動し、装置の駆動を停止させるインターロック回路と、を備えた搬送用ロボットによって半導体試料を搬送する半導体搬送装置であって、
さらに、前記カバーが開状態のときに、操作できるキースイッチを有し、
前記キースイッチは、ノーマルモードとメンテナンスモードを選択することができ、
前記ノーマルモードは、前記インターロックを有効とし、
前記メンテナンスモードは、前記インターロックを無効にするとともに、さらに前記搬送ロボットの搬送位置を調整する遠隔教示用のティーチングペンダントの使用を有効とすることを特徴とする半導体搬送装置。
【請求項2】
前記キースイッチは、鍵穴を有し、別体のキーをこの鍵穴に挿入して回転させることによって前記ノーマルモードと前記メンテナンスモードとを切替えて選択することができ、
前記キーは、前記ノーマルモードが選択されているときに鍵穴から抜挿自在であり、
前記カバーは、前記キーが鍵穴から抜出されているときに開閉自在であることを特徴とする請求項1に記載の半導体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−190103(P2009−190103A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31500(P2008−31500)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】