説明

半導体用接着剤組成物、接着剤層及びパッケージ

【課題】チップ圧着時の空隙発生を抑制可能な、凹凸差の小さい膜形状を形成できる印刷用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂、硬化促進剤、高分子量成分および溶剤を含む接着剤組成物において、25℃における蒸気圧が4.0×10Pa未満の溶剤と、4.0×10Pa以上、1.34×10Pa未満の溶剤とを、2種類以上併用する接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体接着剤組成物、接着剤層、半導体パッケージ及び多段パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材の接合には銀ペーストが主に使用されてきた。しかし、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化・細密化が要求されている。銀ペーストを用いた場合、所望の位置に接着剤を付設することができるものの、樹脂のはみ出し、半導体素子の傾きに起因するワイヤボンディング時の不具合、接着剤層膜厚の制御が困難であること、接着剤層にボイドが生じるなどの問題がある。したがって、銀ペーストによる接合では、上記要求に対して十分対処しきれなくなってきている。
【0003】
上記要求に対処するべく、近年、シート状の接着剤からなる接着シートが使用されるようになってきた。このような接着シートとしては、個片貼付け方式、あるいはウエハ裏面貼付け方式のものがあり、銀ペーストに比べて接着剤層の膜厚の制御性などに優れる。
【0004】
個片貼付け方式の接着シートを用いて半導体パッケージを製造する場合、リールに巻かれた状態の接着シートをカッティング又はパンチングによって個片に切り出した後、その個片を所望の位置に接着し、その上に個片化された半導体素子を接着する。その後、必要に応じてワイヤボンド、封止などの工程を経ることによって半導体パッケージが製造される。しかし、個片貼付け方式の接着シートを用いるためには、上記の通り、接着シートを切り出して所望の位置に接着する専用の装置が必要であることから、銀ペーストを使用する方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
一方、ウエハ裏面貼付け方式の接着シートを用いて半導体パッケージを製造する場合、まず、半導体素子が表面に形成されているウエハ(以下、半導体ウエハと称す)の裏面に接着シートを貼り合わせ、更に接着シートの他面にダイシングテープを貼り合せる。そして、ダイシングによって半導体ウエハを個片化(以下、半導体チップと称す)し、この接着シート付き半導体チップをピックアップして支持部材上に貼り付ける。その後、加熱、硬化、ワイヤボンドなどの工程を経ることにより、半導体パッケージが製造される(特許文献1〜3を参照)。
【0006】
ところで、半導体ウエハ上に形成されている半導体素子を個片化する際、所定の箇所で容易に切断できるようにする技術が知られている。例えば、半導体ウエハを完全に切断せずに、切断予定箇所に溝を加工する技術(ハーフダイシング)、レーザ照射により半導体ウエハ内部に選択的に改質層を形成するレーザ加工技術(ステルスダイシング)などである(例えば、特許文献4及び5を参照)。これらの切断技術は、特に、ウエハの厚みが薄い場合にチッピングなどの不良を低減する効果がある。
【0007】
しかしながら、上記のような切断技術は、前述の半導体ウエハ表面上に接着剤が存在する場合に適用しにくく、半導体ウエハその支持部材等が接着シートで接合された半導体ウエハの切断に採用することは困難であった。
【0008】
また、従来の接着シートを用いた半導体パッケージの製造方法自体も以下の点において改善の余地があった。すなわち、接着シートを用いて半導体パッケージを製造するに際しては、半導体ウエハ表面の所定位置に接着シートを貼り付ける工程が必要である。かかる工程において、接着シートを所定位置のみに付設することは必ずしも容易なことではなく、また、既に基板などに実装済みの半導体素子上に接着シートを貼り付けることは困難であった。更に、半導体ウエハと接着シートとをダイシングによって同時に切断すると、半導体ウエハにクラックが生じやすいなどの課題があった。特に、厚さ50μm以下の極薄半導体ウエハにはクラックが生じやすく、このクラックが信頼性低下の一因となるなどの問題があった。また、半導体ウエハと接着シートとを同時に切断するためには、切断速度を遅くする必要があり、作業効率の低下を招いていた。
【0009】
なお、接着シートを用いた場合であっても、半導体ウエハと接着シートとを同時に切断することを回避するため、基材フィルムと、その表面上に形成された接着剤層とを有し、この接着剤層の所定位置に溝が設けられた接着シートが知られている(例えば、特許文献6を参照)。しかし、上記接着シートでは、接着剤層に形成された溝の位置と半導体ウエハの切断予定箇所又は切断箇所との位置合わせが必要であり、この点において改善の余地があった。
【0010】
そこで、切断予定位置を避けて接着剤層を付設する手法として印刷法があげられる。印刷法を用いて接着剤を付設した場合、半導体ウエハ切断予定箇所を避けることが可能であり、チッピング等の不良低減に効果的である。また、上記印刷法としては製造コスト削減、多品種対応といったことから無版印刷であることが好ましい。無版印刷の例としてはインクジェット印刷法があげられる。加えて、近年薄型化が進む多段チップパッケージでは接着層の更なる薄膜化が求められているが、インクジェット印刷法では20μm以下の接着層の付設が可能である。
【0011】
インクジェット印刷法によって付設される接着剤層は、緩やかに中央部が突起している、上に凸の形状を形成しやすい。かかる形状の接着層でも、十分に柔らかければ、チップ圧着時に樹脂が中央部から端部へと流動し、空隙を充填し良好な接着層を形成する。
【0012】
ただし、印刷面中央部の突起の厚みが平均膜厚とかけはなれすぎると、チップ圧着時の樹脂流動が端部まで行き渡らず空隙が充填されない。この空隙の存在は、封止工程においてチップ端部で封止材の流入を招き、表面に形成されている半導体素子を破損する危険性があるとともに、耐湿耐熱性の低下原因であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−226796号公報
【特許文献2】特開2002−158276号公報
【特許文献3】特開平2−32181号公報
【特許文献4】特開2002−192367号公報
【特許文献5】特開2003−1457号公報
【特許文献6】特開2004−266163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、チップ圧着時の空隙発生を抑制可能な、凹凸差の小さい膜形状を形成できる印刷用接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下に関する。
1. 熱硬化性樹脂、硬化促進剤、高分子量成分および溶剤を含む接着剤組成物において、25℃における蒸気圧が4.0×10Pa未満の溶剤と4.0×10Pa以上、1.34×10Pa未満溶剤を2種類以上併用する接着剤組成物。
2. 25℃における蒸気圧が4.0×10Pa以上、1.34×10Pa未満の溶剤の沸点が、120℃以上、160℃以下である項1記載の接着剤組成物。
3. 25℃における蒸気圧が4.0×10Pa以上、1.34×10Pa未満の溶剤を溶剤総量中に30質量%以上〜70質量%以下含有する項1又は2記載の接着剤組成物。
4. 25℃での粘度が50mPa・s以下である項1〜3いずれかに記載の接着剤組成物。
5. 表面張力が、20mN/m以上、45mN/m未満である、項1〜4いずれかに記載の接着剤組成物。
6. 項1〜5いずれかに記載の接着剤組成物を、基材表面に印刷法によって付設する第1工程と、前記第1工程で付設した前記接着剤組成物に含まれる溶剤を揮発させる第2工程によって作製されてなる接着剤層。
7. 印刷法として無版印刷法によって基材表面に付設してなる項6記載の接着剤層。
8. 印刷法としてインクジェット装置を用いて基材表面に付設してなる項6記載の接着剤層。
9. 項6〜8のいずれかに記載の基材が、半導体ウエハである接着剤層。
10. 項6〜8のいずれかに記載の基材が、半導体ウエハが個片化されてなる半導体チップである接着剤層。
11. 項6〜8のいずれかに記載の基材が、半導体素子搭載用支持部材上に搭載された半導体チップである接着剤層。
12. 接着剤層の厚さが、0.5μm以上20μm以下である、項6〜11いずれかに記載の接着剤層。
13. 項6〜12いずれかに記載の接着剤層を半導体チップの接着固定に使用した半導体パッケージ。
14. 項6〜13いずれかに記載の接着剤層を、半導体チップ−半導体チップ間の接着固定に用いてなる多段パッケージ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体チップ圧着時の空隙なく積層可能な、薄膜接着層を形成できる印刷用接着剤組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る接着剤層付きウエハの第1実施形態を示す上面図である。
【図2】本発明に係る接着剤層付きウエハの第2実施形態を示す上面図である。
【図3】本発明に係る接着剤層付きウエハの第3実施形態を示す上面図である。
【図4】本発明に係る接着剤層付きウエハの第4実施形態を示す工程図である。
【図5】本発明に係る接着剤層付きウエハの第5実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の接着剤組成物は熱硬化性樹脂、硬化促進剤、高分子量成分および溶剤を含み、溶剤の25℃における蒸気圧が4.0×10Pa未満の溶剤(以下、第1の溶剤とする。)と、4.0×10Pa以上、1.34×10Pa未満の溶剤(以下、第2の溶剤とする。)とを2種類以上併用する。また、接着剤組成物全量に対する全溶剤の含有割合は特に制限はないが、接着剤組成物の25℃における粘度が50mPa・s以下となるように、適宜調整することが好ましい。ただし、印刷当りの接着剤組成物の厚みを確保するために、第一の溶剤と第二の溶剤をあわせた溶剤量は組成物重量の90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。
【0019】
(溶剤)
本発明の接着剤組成物に含まれる溶剤は、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満である。蒸気圧が上記範囲内の溶剤を用いることで、溶剤の揮発による接着剤組成物の粘度上昇を十分に抑制することができる。したがって、粘度上昇に起因したインク印刷トラブルを十分に回避できる。これに対し、例えば、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤を単独で使用した場合にあっては、液滴が乾燥しやすく、例えばインクジェット装置のノズルから液滴を適正に吐出することが困難となりやすく、また、ノズルの目詰まりが生じやすくなる。
【0020】
接着剤組成物においては、第1の溶剤と第2の溶剤を併用する。第1と第2の溶剤を併用することで、塗布後の溶剤を段階的に揮発させ、塗布後のインク粘度の増大を促進し、B−ステージ化工程時の樹脂流動による極端な凸部形成を抑制できる。これら溶剤は上記の蒸気圧範囲であれば2種類以上を混合し用いても良い。
【0021】
本接着剤組成物において使用される第2の溶剤の沸点は120℃以上160℃未満が好ましい。沸点が120℃未満であると樹脂をB−ステージ化する際の加熱で印刷膜表面に凹凸を生じる可能性がある。また、沸点が160℃以上であると、溶剤が段階的に揮発せず、樹脂流動により極端な凸部を形成する場合がある。
【0022】
本接着剤組成物において使用される第2の溶剤の含有量は、溶剤全量100質量%に対して、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。上記範囲内だと、第2の溶剤の揮発によるインク粘度増大によりB−ステージ化工程時の樹脂流動を抑制することができ、また、印刷膜からの溶剤の揮発速度が速すぎて印刷膜に凹凸を形成してしまう恐れがない。
【0023】
接着剤組成物においては、第1の溶剤と第2の溶剤の他に、25℃の蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤とを併用してもよい。ただし、前述のような接着剤組成物の粘度上昇に起因する問題を回避する観点から、25℃の蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤の含有量は、溶剤全量100質量%に対して、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0024】
第1の溶剤として具体的にはγ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N−メチル−2−ピロリドン、アニソール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホオキシド等を挙げることができる。第2の溶剤として、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。これらの溶剤はそれぞれを1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
接着剤組成物の調製に使用する溶剤は、25℃における蒸気圧が所望の範囲であると共に、後述する絶縁性の樹脂を分散又は溶解可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0026】
他方、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤として、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
接着剤組成物全量に対する全溶剤の含有割合は特に制限はないが、接着剤組成物の25℃における粘度が50mPa・s以下となるように、適宜調整することが好ましい。
【0028】
(熱硬化性樹脂)
接着剤組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂及びその硬化剤等が挙げられる。また、接着力確保の点で接着剤組成における溶剤重量を除いた重量(以下、固形分とする)の40質量%以上含有することが好ましく、
60質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0029】
(エポキシ樹脂)
耐熱性が高い点から、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂揮発によるワニス変質を抑制するため、25℃で単独の粘度が1.0Pa・s以上の液状エポキシ樹脂もしくは常温(25℃)固形のエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、二官能以上であることが好ましい。また、エポキシ樹脂は、ワニス固形分を極端に低減せずに、ワニス粘度を印刷に好適な粘度範囲(50mPa・s以下)に容易に調整可能な点から、重量平均分子量5,000未満が好ましく、3,000未満がより好ましい。好適なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物、多官能エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等などが挙げられる。これらは併用してもよく、エポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0030】
市販のエポキシ樹脂としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。エポキシ樹脂としては、1種又は2種以上を併用することもできる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート807,エピコート815,エピコート825,エピコート827,エピコート828,エピコート834,エピコート1001,エピコート1002,エピコート1003,エピコート1055,エピコート1004,エピコート1004AF,エピコート1007,エピコート1009,エピコート1003F,エピコート1004F(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、DER−330,DER−301,DER−361,DER−661,DER−662,DER−663U,DER−664,DER−664U,DER−667,DER−642U,DER−672U,DER−673MF,DER−668,DER−669(以上、ダウケミカル社製、商品名)、YD8125,YDF8170(以上、東都化成株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0031】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、YDF−2004(東都化成株式会社製、商品名)等が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピコート152,エピコート154(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、EPPN−201(日本化薬株式会社製、商品名)、DEN−438(ダウケミカル社製、商品名)N−865(DIC株式会社、商品名)等が挙げられる。
【0032】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピコート180S65(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、アラルダイトECN1273,アラルダイトECN1280,アラルダイトECN1299(以上、チバジャパン社製、商品名)、YDCN−701,YDCN−702,YDCN−703,YDCN−704(以上、東都化成株式会社製、商品名)、EOCN−102S,EOCN−103S,EOCN−104S,EOCN−1012,EOCN−1020,EOCN−1025,EOCN−1027(以上、日本化薬株式会社製、商品名)、ESCN−195X,ESCN−200L,ESCN−220(以上、住友化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0033】
多官能エポキシ樹脂としては、エポン1031S,エピコート1032H60,エピコート157S70(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、アラルダイト0163(チバジャパン社製、商品名)、デナコールEX−611,デナコールEX−614,デナコールEX−614B,デナコールEX−622,デナコールEX−512,デナコールEX−521,デナコールEX−421,デナコールEX−411,デナコールEX−321(以上、ナガセケムテックス株式会社製、商品名)、EPPN501H,EPPN502H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0034】
アミン型エポキシ樹脂としては、エピコート604(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、YH−434(東都化成株式会社製、商品名)、TETRAD−X,TETRAD−C(以上、三菱ガス化学株式会社製、商品名)、ELM−120(住友化学株式会社製、商品名)等が挙げられる。
複素環含有エポキシ樹脂としては、アラルダイトPT810(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、ERL4234,ERL4299,ERL4221,ERL4206(以上、UCC社製、商品名)等が挙げられる。
【0035】
上記エポキシ樹脂のなかでも室温(25℃)で固体であり且つ環球式で測定した軟化点が50℃以上であれば、半導体パッケージの耐熱性の観点からより好適である。かかるエポキシ樹脂の含有量は、接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂の全量100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、60質量部以上であることが更に好ましい。
【0036】
(硬化剤)
エポキシ樹脂を含有する接着剤組成物は、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を更に含有してもよい。エポキシ樹脂を硬化させることが可能なものであれば、特に限定されないが、硬化剤としては、例えば、多官能フェノール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物及びこれらのハロゲン化物、ポリアミド、ポリスルフィド、三ふっ化ほう素などが挙げられる。
【0037】
多官能フェノール類の例としては、単環二官能フェノールであるヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール,多環二官能フェノールであるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフタレンジオール類、ビフェノール類、及びこれらのハロゲン化物、アルキル基置換体などが挙げられる。また、これらのフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるフェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0038】
市販されている好ましいフェノール樹脂硬化剤としては、例えば、フェノライトLF2882,フェノライトLF2822,フェノライトTD−2090,フェノライトTD−2149,フェノライトVH4150,フェノライトVH4170(以上、DIC株式会社製、商品名)などが挙げられる。
【0039】
本発明における接着剤組成物は、水酸基当量100g/eq以上のフェノール樹脂を含有することが好ましい。水酸基当量が100g/eq未満のフェノール樹脂を用いると軟化点、粘度が低く作業性が低下する。このようなフェノール樹脂としては、上記値を有する限り特に制限はないが、吸湿時の耐電食性に優れることから、ノボラック型又はレゾール型の樹脂を用いることが好ましい。上記フェノール樹脂の具体例として、例えば、下記一般式(I)で示されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0040】
【化1】

(式中、Rは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、環状アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、nは、1〜3の整数を表し、mは、0〜50の整数を表す。)
【0041】
フェノール樹脂は、例えば、フェノール化合物と2価の連結基であるキシリレン化合物を、無触媒又は酸触媒の存在下に反応させて得ることができる。また、フェノール樹脂として、市販のものでは、ミレックスXLC−シリーズ、同XLシリーズ(以上、三井化学株式会社製、商品名)などを挙げることができる。
【0042】
フェノール樹脂としては、耐湿性の観点から、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に48時間投入後の吸水率が2質量%以下であることが好ましい。また、熱重量分析計(TGA)で測定した350℃での加熱重量減少率(昇温速度:5℃/分、雰囲気:窒素)が5質量%未満のものを使用することが好ましい。加熱重量減少率が上記範囲内のものを使用すると、加熱加工時などにおいて揮発分の発生が抑制され、耐熱性、耐湿性などの諸特性の信頼性が高くなると共に、揮発分による機器の汚染を十分に低減できる。
【0043】
上記エポキシ樹脂と上記フェノール樹脂を組合せて使用する場合、両者の配合量は、エポキシ当量と水酸基当量の当量比(エポキシ当量/水酸基当量)で0.70/0.30〜0.30/0.70とするのが好ましく、0.65/0.35〜0.35/0.65とするのがより好ましく、0.60/0.40〜0.40/0.60とするのが更に好ましく、0.55/0.45〜0.45/0.55とするのが特に好ましい。両者の配合量が上記当量比の範囲外であると、硬化性が不十分となる傾向がある。
【0044】
(硬化促進剤)
本発明の接着剤組成物において、硬化時の反応速度調整のため硬化促進剤を含有することが好ましい。本発明では、硬化促進剤にアミン系化合物を含むことが好ましく、特に硬化性や保存安定性の観点から、イミダゾール類やジアミン類が好ましい。例としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル4メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノ1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、3,3‘−メジレンジアニリン、4,4’−メチレンジアニリン、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体などが挙げられる。これらは単独または2種以上を併用してもよい。また、これらをマイクロカプセル化して潜在性を高めたものを用いてもよい。これらは、常温(25℃)で固形であり、作業性に優れる。
【0045】
本発明の接着剤組成物において、添加する硬化促進剤の量は、高分子量成分を除く熱硬化性樹脂100質量部に対し、好ましくは1.0質量部未満であり、0.5質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下であることが特に好ましい。仮に、1.0質量部以上添加した場合、乾燥工程での樹脂が硬化してしまう可能性があり、チップ積層時の貼り合わせ性の低下が懸念される。
【0046】
(高分子量成分)
高分子量成分としてはポリイミド樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネート樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂等が挙げられるがこれに限定するものではない。これらの樹脂は基本骨格のみでもかまわないが、側鎖を熱硬化性官能基で修飾したものが好ましい。ここでいう熱硬化性反応基とはエポキシ基、アクリル基、イソシアネート基及びメタアクリル基が挙げられるが、前述の熱硬化性樹脂と硬化機構が異なる官能基を有するものが硬化反応を段階的に進行させ、樹脂の溶融粘度の調整をしやすい点でさらに好ましい。
【0047】
上記、高分子量成分の重量平均分子量は、15,000以上が好ましい。また、80,000未満であることが好ましい。重量平均分子量が15,000未満であると、高温条件で接着力が低く、封止工程において積層チップが封止材の流動に抗することができず、位置ずれを起こす場合がある。また、重量平均分子量が80,000以上であるとインクジェット印刷における液の吐出性が低下する場合がある。
【0048】
上記、高分子量成分に好適な市販の樹脂としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種又は2種以上を併用することもできる。高分子量成分としては、YP−50、YP−50S、YP−55、YP−70、FX−293(東都化成株式会社製、商品名)、フォレットMIS-115、フォレットMIS-115LL(綜研化学社製、商品名)等が挙げられる。
高分子量成分は、インクジェット印刷に好適な粘度範囲にインクを容易に調整可能であり、硬化後の接着力を十分に確保する点から、熱硬化性樹脂100質量部に対し、10以上質量部60質量部未満含有することが好ましい。
【0049】
(反応性希釈剤)
本発明の接着剤組成物は粘度を所望の値に制御するために反応性希釈剤を含んでいてもよい。後述する絶縁性の樹脂を分散又は溶解可能なものであれば、特に限定されるものではない。このような反応性希釈剤の例としては、YED111N、YED111AN、YED122、YED188、YED205、YED216N(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、エポニットA−6、エポニット016、エポニット017、エポニット012、エポニット028、エポニット014(以上、日東化成株式会社製、商品名)EPICLON520、EPICLON703、EPICLON705、EPICLON707、EPICLON720、EPICLON725、EPICLON726(以上、DIC株式会社製、商品名)デコナールEX−111、デコナールEX−121、デコナールEX−141、デコナールEX−145、デコナールEX−146、デコナールEX−192、デコナールEX−211、デコナールEX−212、デコナールEX−313、デコナールEX−314、デコナールEX−321(以上、ナガセケムテックス株式会社製、商品名)が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。反応性希釈剤は、インクジェット吐出性の観点から25℃の蒸気圧が1.34×10Pa未満であることが好ましい。反応性希釈剤の25℃の蒸気圧が1.34×10未満であって、使用する樹脂を溶解するものであれば、第1の溶剤又は第2の溶剤と同様に用いることができ、各溶剤の一部またはすべてと置き換えて使用しても良い。
【0050】
(表面調整剤)
本発明の接着剤組成物の表面張力は20mN/m以上45mN/m以下が好ましい。表面張力が上記範囲より外れた場合、インクジェット吐出性が損なわれる可能性がある。インクジェットのような比較的低粘度のインクであっても、表面張力を上記の範囲に調整することにより、インクが指定した領域よりはみ出すことがなく、印刷用基材に良好に付設可能である。
【0051】
本発明の接着剤組成物は表面張力を上記範囲に調整するために、表面調整剤を含んでも良い。このような表面調整剤としては、シリコン系、ビニル系、アクリル系などが挙げられる。市販されているこのような表面調整剤としては,BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−340、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−392、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−3570、BYK−Silclean3700(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)、OX−880EF、OX−881、OX−883、OX−883HF、OX−70、OX−77EF、OX−60、OX−710、OX−720、OX−720EF、OX−750HF、LAP−10、LAP−20、LAP−30、1970、230、LF−1980、LF−1982、LF−1983、LF−1984、LF−1985、LHP−90、LHP−91、LHP−95、LHP−96、1711、1751N、1761、LS−001、LS−050(以上、楠本化学社製、商品名)、SH200−100CS、SH7PA、11ADDITIVE、SH28PA、SH−29PA,SH−30PA、ST80PA、ST83PA、ST86PA、ST90PA、ST97PA、ST105PA(東レ・ダウコーニング社製、商品名)、ポリフローNo.3、ポリフローNo.7、ポリフローNo.50E,ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.55、ポリフローNo.64、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.S、ポリフローNo.90、ポリフローNo.90D−50、ポリフローNo.95、ポリフローNo.300、ポリフローNo.460、ポリフローWS、ポリフローWS−30、ポリフローWS−314(以上、共栄社化学社製、商品名)などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0052】
(添加剤等)
本発明の接着剤組成物は、上記成分の他、紫外線などの放射線の照射によって硬化する樹脂、硬化促進剤、触媒、添加剤、フィラー、カップリング剤等を含んでもよい。
【0053】
(接着剤組成物)
本発明の接着剤組成物(印刷用接着剤組成物)は、通常、印刷法によってウエハもしくは半導体ウエハ、半導体チップ等の基材表面上に付設される。ここで、「半導体ウエハ」とは、表面に半導体素子が形成されたウエハであり、半導体パッケージにおける基板をなす薄い板状のものを意味し、半導体パッケージの製造過程におけるダイシング前の状態のみを意味する。また、「半導体チップ」とは、上記半導体ウエハが個片化されたもので、ダイシング後に支持台等に固定された状態、個片化されたチップの状態及び個片化後に支持部材等に実装された状態のいずれのものも包含する。
【0054】
本発明の接着剤組成物によれば、接着剤層の形成位置や大きさ、厚みなどを印刷法によって任意に付設できるため、接着シートを用いる必要がなく、その結果、接着シートとウエハの位置合わせのための工程を省略できる。
【0055】
例えば、ダイシング時の切断予定箇所を避けて接着剤層(以下、接着剤とも表す)を付設すれば、ダイシング時におけるウエハと接着剤との同時切断を回避でき、ダイシング時の切断速度を遅くしなくてもよい。また、予めダイシングしたウエハの切断箇所を避けて接着剤を半導体ウエハの表面に付設してもよく、このような状態の接着剤付きウエハは、所定のチップごとに接着剤が付設されたものとなっている。また、かかる接着剤付きウエハは、切断箇所を介して隣接するウエハとは既に分離された状態となっているため、接着シートを貼り付けた後にこれを切断して得られたものと比較すると、クラックの発生が十分に低減される。
【0056】
本発明において、印刷法によって付設された接着剤組成物は付設した後、そのままの状態で使用してもよいが、パッケージ作製後の信頼性向上のため、付設後これに含まれる溶剤を揮発させる工程を経ることが好ましい。また、接着剤に含まれる熱硬化性樹脂をBステージ化する工程を溶剤を揮発させる工程と同時に行っても良い。
【0057】
本発明において、溶剤を揮発させる工程では、20℃〜300℃であるが好ましく、20℃〜250℃であることが好ましく、20℃〜200℃であることが特に好ましい。
【0058】
以下、さらに、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の接着剤組成物は、半導体ウエハと、この半導体ウエハの表面上の任意位置に所望のパターンが形成されるように接着剤層を付設することができる。
接着剤のパターンは特に制限はなく、接着剤付きウエハの用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、図1に示す接着剤付きウエハ10Aは、電気的回路が加工された半導体ウエハ1の表面のラインL1で囲まれた領域に接着剤2がそれぞれ付設されている。破線で示したラインL1は、半導体ウエハ1の切断予定ライン(切断予定箇所)を示し、このラインL1に重ならないように接着剤2が付設されている。
【0059】
接着剤付きウエハ10Aによれば、半導体ウエハ1のラインL1に重ならないように接着剤2が付設されているため、ダイシング時において半導体ウエハ1と接着剤2の双方ではなく、半導体ウエハ1のみを切断でき、切断速度を遅くする必要がない。なお、半導体ウエハ1のラインL1に沿った領域には、予めハーフダイシング又はステルスダイシングなどの加工を施してもよい。
【0060】
更に、図2に示す接着剤付きウエハ10Cは、半導体ウエハ1が予め切断され、その状態で固定されている各々のチップ(半導体ウエハ)1C上に、接着剤2がそれぞれ付設されている。各々の接着剤2は、半導体ウエハ1の切断ラインL2に重ならないように付設されている。接着剤付きウエハ10Cによれば、切断ラインL2に重ならないように接着剤2が付設されているため、チップ1Cと支持台との接着や隣接するチップ1C同士の接着を防止でき、ピックアップ時のクラック発生を低減できる。
【0061】
また、多段チップパッケージのように、基板上に実装した半導体ウエハの上に個片化した半導体ウエハを積み重ねる場合は、積み重ねる半導体ウエハのサイズに合わせて所望の位置に接着剤を付設することが好ましい。これにより、接着剤材料のロスを削減することができる。
【0062】
ウエハもしくは半導体ウエハ表面の所定位置に接着剤を付設する方法としては、ウエハ上の任意の場所に接着剤を印刷する方法(スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、ディスペンス法、インクジェット法)、ウエハ表面を覆うように接着剤組成物の塗布又はシート状の接着剤とラミネートを行った後、エッチングや金型によって接着剤層を打ち抜く方法などが挙げられる。
【0063】
上記の付設方法の中でも、スクリーンなどの版が不要であることから、無版印刷法であるディペンス印刷法及びインクジェット印刷法が好ましい。ウエハに直接接することなく且つ厚み精度よく接着剤を付設できる点を考慮すると、インクジェット印刷法がより好ましい。また、インクジェット印刷法は、既に個片化されたウエハなどの表面上にも印刷できる点でも好適な方法である。つまり、インクジェット印刷法は、ダイシング前のウエハ面上に接着剤を精度よく付設できるのみならず、チップスタックで多段チップパッケージを作製する工程において、二段目以降のチップを実装するため、その下段のウエハ表面に直接接着剤を付設する場合にも適用できる。
【0064】
ウエハ表面に付設する接着剤の厚さは特に制限はないが、半導体パッケージの薄型化の要請から、接着剤を極薄に付設することが求められており、0.5以上〜20μm以下であることが好ましい。接着剤の厚さが0.5μm未満であると応力緩和効果が不十分となる傾向があり、その下限は0.5μmであることがより好ましく、1.0μm以上であることが更に好ましい。他方、接着剤層の厚さが20μmを超えると、経済的でなくなると共に半導体パッケージの薄型化の要求に十分に対応できなくなる傾向があり、その上限が20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0065】
接着剤組成物は、25℃での粘度が50mPa・s以下であることが好ましい。接着剤組成物の粘度が上記範囲内であると、これをインクジェット装置のインクとして用いた場合、ノズルの目詰まりを十分に防止できると共に、インクジェット印刷時においてインクを吐出しないノズルを十分に低減できる。その結果、良好な印刷性を得ることができる。より安定した吐出性を達成する観点から、接着剤組成物の25℃での粘度は1〜30mPa・sであることがより好ましく、1〜20mPa・sであることが更に好ましい。
【0066】
本発明の接着剤組成物は、接着剤層として利用できるだけでなく、図3のように半導体ウエハの回路面を保護するバッファーコート層としても利用できる。図3によると、チップ1Cは切断予定ラインL1により囲まれ、チップ1Cは回路形成領域D1及び電極D2を有する。また、接着剤組成物印刷ウエハD3は、切断予定ラインL1によりチップが囲まれ、チップは電極D2及び接着剤組成物印刷領域D4を有する。切断予定ラインL1上及びその周辺を接着剤が付設されていない領域3とし、切断予定ラインL1で囲まれたチップ内の領域に接着剤が印刷される。このため、B−ステージの状態で使用すれば、接着機能付きバッファーコート層を形成できる。またB−ステージを経ずに使用することも可能である。さらに、インクジェット印刷によれば、半導体ウエハ上の電極を避けてパターニングが可能であるため、図4に示すように現状の感光性のバッファーコート材と比較して、現像、露光などの工程を必要とせず工程数及び接着剤材料のロスを削減することができる。図4によると、切断予定ラインL1によりチップが囲まれた半導体ウエハ1に本願発明の接着剤組成物を印刷して接着剤組成物印刷ウエハD3とし、硬化処理、ダイシングを経て、切断ラインL2にて切断して接着剤層付き半導体チップE1を作製し、これを半導体素子搭載用支持部材上E2に搭載し、さらに、封止樹脂により封止し半導体パッケージを作製することができる。
その上、絶縁性を有するため、図5のようにその表面に配線を形成することが可能で、再配線形成層としても用いることができる。図5によると、チップ1C上に再配線形成層F1を3層有し、その間に再配線層F2を有する。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は実施例によって制限されるものではない。
以下に実施例及び比較例における評価方法を示す。
<粘度測定>
本実施例及び比較例においては、接着剤組成物の粘度を振動式粘度計(商品名:SV−10、株式会社エー・アンド・ディー社製)を用いて25℃で測定した。
【0068】
<接着剤の付設>
ブレードダイシングによって、ポリイミドがコートされたウエハを10mm角に切断した。バックグラインドテープ上に固着された状態のウエハのポリイミドコート面に、接着剤組成物Aをインクジェット印刷法で付設した。すなわち、インクジェット印刷装置(商品名:Nano Printer1000、マイクロジェット社製)で平均厚さ:3.3μmの接着剤層を付設した。接着剤組成物Aが付設された各々のチップを90℃で3分間乾燥し、接着剤付きチップを得た。
【0069】
<評価試験>
各種の評価試験を行うため、接着剤付きチップと、接着剤が付設されていない半導体チップ(ダミーチップ5mm□)とを接着させた積層体を複数準備した。両者の接着は、日立化成テクノプラント製熱圧着機を用いて、接着温度120℃で200gを1秒間かけることで行った。半導体チップをピックアップしたところ、接着剤付きチップと半導体チップは接着剤の粘着力によって貼り付いており、接着剤付きチップが脱落することはなかった。これらの積層体を温度180℃にて1時間加熱して接着剤を硬化させ、評価試験用の試料を得た。
【0070】
<膜形状>
精密表面形状測定装置(Ambios社製、商品名「XP−2」)を用いて接着剤付き半導体素子の接着剤層の断面を3箇所測定し、平均最大膜厚及び平均膜厚を算出した。また、平均最大膜厚と平均膜厚の差を樹脂流動高さとした。さらに、上に凸の形状を有するものを○、凹部を有するものを×とした。
<貼付け性>
圧着により接着剤組成物が溶融し流動してチップ-ウエハ間の空隙が充填され、接着面積が広がることで、チップ−ウエハ間に空隙が無く良好な接着層が形成できる。すなわち前述の樹脂流動高さが小さいほど接着面積の確保が容易となる。これをダミーチップに対する接着剤の接着面積により調べた。すなわち、接着剤とダミーチップの接着面積は、ダミーチップを接着後、ダミーチップを引き剥がした際にできる接着痕の面積から測定し、80%以上の接着面積を有するものを○とし、それ以外を×とした。
【0071】
<封止材の流入>
スタックチップ端部の封止材の流入はパッケージのスタック断面を研磨し、SEMで観察することで判断した。封止材の流入が無いものを○、流入があったものを×とした。
評価に用いたパッケージは以下の手順で作製した。レジスト材を塗布した実装基板上に6.5mm□のポリイミドコートチップをダイボンドフィルム(日立化成工業製品名 HS−23)で接着し一段目を形成した。この上にインクジェット印刷により接着層を形成後、加温して溶剤を揮発させた。続いて5mm□のチップを圧着した後180℃に加熱したプレス機を用いて封止し、175℃の乾燥機で5時間硬化した。
【0072】
<接着剤組成物の調製>
(実施例1)
次の各成分を混合し、本実施例の接着剤組成物Aを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.43g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050)2.06g
(iii)フォレットMIS-115(綜研化学社製品名、アクリル樹脂、重量平均分子量35,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液/固形分35.2質量%)2.56g
(iv)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(硬化促進剤):キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(v)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(vi)溶剤:γ−ブチルラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)12.3gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(25℃における蒸気圧5.1×10Pa)10.7g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Aを得た。この接着剤組成物Aの25℃における粘度は、7.5mPa・sであり、インクジェット吐出性は良好であった。また、表面張力を測定したところ、21mN/mであった。表面張力の測定には協和界面科学製の表面張力計(型式:CBVP-Z)を使用した。
【0073】
(実施例2)
次の各成分を混合し、本実施例の接着剤組成物Bを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.43g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050)2.06g
(iii)フォレットMIS-115(綜研化学社製品名、アクリル樹脂、重量平均分子量35,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液/固形分35.2質量%)2.54g
(iv)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(硬化促進剤):キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(v)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(vi)溶剤:γ−ブチルラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)17.2gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(25℃における蒸気圧5.1×10Pa)5.7g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Bを得た。この接着剤組成物Bの25℃における粘度は、8.0mPa・sであり、表面張力は21.0mN/mであり、インクジェット吐出性は良好であった。調製した接着剤組成物Bを用いて接着剤の付設及び評価試験を行った。
【0074】
(実施例3)
次の各成分を混合し、本実施例の接着剤組成物Cを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.43g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050)2.06g
(iii)フォレットMIS-115(綜研化学社製品名、アクリル樹脂、重量平均分子量35,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液/固形分35.2質量%)2.56g
(iv)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(硬化促進剤):キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(v)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(vi)溶剤:γ−ブチルラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)8.6gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(25℃における蒸気圧5.1×10Pa)16.0g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Cを得た。この接着剤組成物Cの25℃における粘度は、7.2mPa・sであり、インクジェット吐出性は良好であった。また、表面張力を測定したところ、21mN/mであった。表面張力の測定には協和界面科学製の表面張力計(型式:CBVP-Z)を使用した。
【0075】
(実施例4)
次の各成分を混合し、本実施例の接着剤組成物Dを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.43g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050)2.06g
(iii)フォレットMIS-115(綜研化学社製品名、アクリル樹脂、重量平均分子量35,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液/固形分35.2質量%)2.56g
(iv)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(硬化促進剤):キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(v)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(vi)溶剤:γ−ブチルラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)6.2gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(25℃における蒸気圧5.1×10Pa)18.5g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Dを得た。この接着剤組成物Dの25℃における粘度は、6.8mPa・sであり、インクジェット吐出性は良好であった。また、表面張力を測定したところ、21mN/mであった。表面張力の測定には協和界面科学製の表面張力計(型式:CBVP-Z)を使用した。
【0076】
(実施例5)
次の各成分を混合し、本実施例の接着剤組成物Eを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.43g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050)2.06g
(iii)フォレットMIS-115(綜研化学社製品名、アクリル樹脂、重量平均分子量35,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液/固形分35.2質量%)2.56g
(iv)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(硬化促進剤):キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(v)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(vi)溶剤:γ−ブチルラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)16.0gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(25℃における蒸気圧5.1×10Pa)8.5g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Eを得た。この接着剤組成物Eの25℃における粘度は、7.8mPa・sであり、インクジェット吐出性は良好であった。また、表面張力を測定したところ、21mN/mであった。表面張力の測定には協和界面科学製の表面張力計(型式:CBVP-Z)を使用した。
【0077】
(比較例1)
次の各成分を混合し、接着剤組成物Fを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.42g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050) 2.07g
(iii)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト:キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(iv)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(v)溶剤:γ−ブチルラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)7.38g
およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(25℃における蒸気圧5.1×10Pa)15.6g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Fを得た。この接着剤組成物Fの25℃における粘度は、7.00mPa・sであり、表面張力は21.0mN/mであった。ただしインクジェット吐出性は良好であった。調製した接着剤組成物Fを用いて接着剤の付設及び評価試験を行った。
【0078】
(比較例2)
次の各成分を混合し、本実施例の接着剤組成物Gを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.4g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050)2.07g
(iii)フォレットMIS-115(綜研化学社製品名、アクリル樹脂、重量平均分子量35,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液/固形分35.2mass%)2.56g
(iv)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(硬化促進剤):キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(v)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(vi)溶剤:γ−ブチルラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)21.8g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Gを得た。この接着剤組成物Gの25℃における粘度は、8.3mPa・sであり、表面張力は21.0mN/mであり、インクジェット吐出性は良好であった。調製した接着剤組成物Gを用いて接着剤の付設及び評価試験を行った。
【0079】
(比較例3)
次の各成分を混合し、本実施例の接着剤組成物Hを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.43g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050)2.07g
(iii)フォレットMIS-115(綜研化学社製品名、アクリル樹脂、重量平均分子量35,000)0.90g
(iv)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(硬化促進剤):キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(v)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(vi)溶剤:γ−ブチルラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)21.8gおよびイソホロン(25℃における蒸気圧3.5×101Pa)2.83g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Hを得た。この接着剤組成物Hの25℃における粘度は、10.4mPa・sであり、表面張力は21.0mN/mであり、インクジェット吐出性は良好であった。調製した接着剤組成物Hを用いて接着剤の付設及び評価試験を行った。
【0080】
(比較例4)
次の各成分を混合し、本実施例の接着剤組成物Iを調製した。
(i)o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、エポキシ当量210、軟化点70℃、重量平均分子量1200)2.4g
(ii)フェノールアラルキル樹脂:XLC−LL(三井化学株式会社製商品名、ザイロック樹脂、水酸基当量174g/eq、吸水率1.0%、5%加熱重量減少温度391℃、重量平均分子量1050)2.07g
(iii)フォレットMIS-115(綜研化学社製品名、アクリル樹脂、重量平均分子量35,000、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液/固形分35.2mass%)2.56g
(iv)1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(硬化促進剤):キュアゾール2PZ−CNS(四国化成工業株式会社製、商品名)0.003g
(v)表面調整剤:BYK−310(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.014g
(vi)溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(25℃における蒸気圧5.1×10Pa)21.8g
各成分を混合し十分に溶解させた後、真空脱泡して接着剤組成物Iを得た。この接着剤組成物Iの25℃における粘度は、6.5mPa・sであり、表面張力は21.0mN/mであった。ただし、インクジェット吐出性は不良であった。
表1及び2上記実施例及び比較例の評価結果を示した。
【表1】

【表2】

【0081】
表1に示したように、実施例1〜5による本願発明の接着剤組成物は、膜形状、貼り付け性および封止材の流入抑制がいずれも優れている。特に、第2の溶剤の併用割合が30以上〜70%以下である実施例1〜3及び5による接着剤組成物は、インクジェット吐出性が非常に優れている。
これに対して、表2に示したように、比較例1による高分子量樹脂を含まない接着剤組成物は、貼り付け性及び封止材の流入抑制において劣る。また、比較例2〜3による第2の溶剤を含まない接着剤組成物は、貼り付け性及び封止材の流入抑制において劣る。さらに、比較例4による第1の溶剤を含まない接着剤組成物は、膜を形成せず、インクジェット吐出性は不良であった。
本発明によれば、積層チップ圧着時の空隙発生を抑制可能な、薄膜接着層を形成できる印刷用接着剤組成物を提供するが可能となった。
【符号の説明】
【0082】
1…半導体ウエハ
1C…チップ(半導体ウエハ)
2…接着剤、10A,10B,10
C…接着剤付きウエハ
L1…切断予定ライン(切断予定箇所)
L2…切断ライン(切断箇所)
3…接着剤が付設されていない領域
D1…回路形成領域
D2…電極
D3…接着剤組成物印刷ウエハ
D4…接着剤組成物印刷領域
E1…接着剤層付き半導体チップ
E2…半導体素子搭載用支持部材上
F1…再配線形成層
F2…再配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂、硬化促進剤、高分子量成分および溶剤を含む接着剤組成物において、25℃における蒸気圧が4.0×10Pa未満の溶剤と、4.0×10Pa以上、1.34×10Pa未満の溶剤とを、2種類以上併用する接着剤組成物。
【請求項2】
25℃における蒸気圧が4.0×10Pa以上、1.34×10Pa未満の溶剤の沸点が、120℃以上、160℃以下である請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
25℃における蒸気圧が4.0×10Pa以上、1.34×10Pa未満の溶剤を、溶剤総量中に30質量%以上〜70質量%以下含有する請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
25℃での粘度が50mPa・s以下である請求項1〜3いずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
表面張力が20mN/m以上、45mN/m未満である、請求項1〜4いずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の接着剤組成物を、基材表面に印刷法によって付設する第1工程と、前記第1工程で付設した前記接着剤組成物に含まれる溶剤を揮発させる第2工程によって作製されてなる接着剤層。
【請求項7】
印刷法として無版印刷法によって基材表面に付設してなる請求項6記載の接着剤層。
【請求項8】
印刷法としてインクジェット装置を用いて基材表面に付設してなる請求項6記載の接着剤層。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載の基材が、半導体ウエハである接着剤層。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれかに記載の基材が、半導体ウエハが個片化されてなる半導体チップである接着剤層。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれかに記載の基材が、半導体素子搭載用支持部材上に搭載された半導体チップである接着剤層。
【請求項12】
接着剤層の厚さが、0.5μm以上20μm以下である、請求項6〜11いずれかに記載の接着剤層。
【請求項13】
請求項6〜12いずれかに記載の接着剤層を半導体チップの接着固定に使用した半導体パッケージ。
【請求項14】
請求項6〜13いずれかに記載の接着剤層を、半導体チップ−半導体チップ間の接着固定に用いてなる多段パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−57825(P2011−57825A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208200(P2009−208200)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】