説明

半導体発光素子

【課題】半導体発光素子に関し、特に均一な発光を可能とする電極構造を有する半導体発光素子を提供する。
【解決手段】電子と正孔の再結合を利用して光を生成する半導体発光素子において、前記電子と前記正孔のいずれか一方を供給する第1枝電極71と、前記電子と前記正孔のうち残りの一方を供給して、前記第1枝電極と第1間隔をおいて設けられた第2枝電極72と、前記第1枝電極と電気的に接続しており、前記第2枝電極と第1間隔より小さい第2間隔をおいて設けられた第3枝電極73とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関し、特に均一な発光を可能とする電極構造を有する半導体発光素子に関する。
ここで、半導体発光素子とは、電子と正孔の再結合により光を生成する半導体光素子を意味し、III族窒化物半導体発光素子を例に挙げることができる。III族窒化物半導体は、例えば、Al(x)Ga(y)In(1-x-y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)を含む化合物から成り立っている。また、上記以外にも、III族窒化物半導体は、赤色発光に使われるGsAs系の半導体発光素子等を含んで成り立っていてもよい。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のIII族窒化物半導体発光素子の一例を示す図面である。III族窒化物半導体発光素子は、基板100、基板100上に成長したバッファ層200、バッファ層200の上に成長したn型窒化物半導体層300、n型窒化物半導体層300の上に成長した活性層400、活性層400の上に成長したp型窒化物半導体層500、p型窒化物半導体層500上に形成されたp側電極600、p側電極600の上に形成されたp側ボンディングパッド700、p型窒化物半導体層500と活性層400とがメサエッチングされて露出したn型窒化物半導体層の上に形成されたn側電極800、及び保護膜900を含む。
【0003】
基板100は、同種基板としてGaN系基板が用いられ、異種基板としてサファイア基板、シリコンカーバイド基板またはシリコン基板が用いられるが、窒化物半導体層が成長し得る基板であれば、いかなる種類であってもよい。シリコンカーバイド基板が用いられる場合には、n側電極800はシリコンカーバイド基板側に形成され得る。
基板100上にエピタキシャル成長する窒化物半導体層は、主にMOCVD(有機金属気相成長法)によって成長させられる。
【0004】
バッファ層200は、異種基板100と窒化物半導体間の格子定数及び熱膨脹係数の差を解決するためのものであり、米国特許第5,122,845号明細書には、サファイア基板上に380℃〜800℃の温度で厚さ10nm〜50nmのAlNバッファ層を成長させる技術が開示されている。米国特許第5,290,393号明細書には、サファイア基板上に200℃〜900℃の温度で厚さ1nm〜500nmのAl(x)Ga(1-x)N(0≦x<1)バッファ層を成長させる技術が開示されており、国際公開公報WO05/053042号パンフレットには600℃〜990℃の温度でSiCバッファ層(seed
layer)を成長させた後、その上にIn(x)Ga(1-x)N(0<x≦1)層を成長させる技術が開示されている。
【0005】
n型窒化物半導体層300は、少なくともn側電極800が形成された領域(n型コンタクト層)が不純物でドーピングされ、n型コンタクト層は、好ましくはGaNからなり、Siでドーピングされる。米国特許第5,733,796号明細書には、Siと他のソース物質の混合比を調節することによって所望のドーピング濃度でn型コンタクト層をドーピングする技術が開示されている。
【0006】
活性層400は、電子と正孔の再結合により光子(光)を生成する層であって、一般In(x)Ga(1-x)N(0<x≦1)からなり、単一量子井戸層(single quantum well)または多重量子井戸層(multiple quantum wells)を有する。
p型窒化物半導体層500は、Mgのような適切な不純物を利用してドーピングされ、活性化されることによりp型導電性を有するようになる。米国特許第5,247,533号明細書には、電子ビーム照射によりp型窒化物半導体層を活性化させる技術が開示されており、米国特許第5,306,662号明細書には、400℃以上の温度でアニールすることによりp型窒化物半導体層を活性化させる技術が開示されている。さらに、国際公開公報WO05/022655号パンフレットには、p型窒化物半導体層成長の窒素前駆体として、NH3とヒドラジン系原料物質を共に使用することで活性化させなくてもp型伝導性を有するp型窒化物半導体層が得られる技術が開示されている。
【0007】
p側電極600は、p型窒化物半導体層500全体に電流がよく供給されるようにするために備えられるが、米国特許第5,563,422号明細書には、p型窒化物半導体層のほぼ全面にわたって形成され、p型窒化物半導体層とオーミック接触し、NiとAuからなる透光性電極(light−transmitting electrode)に関する技術が開示されている。さらに、米国特許第6,515,306号明細書には、p型窒化物半導体層の上にn型超格子層を形成した後、その上にITO(Indium Tin Oxide)からなる透光性電極を形成した技術が開示されている。
【0008】
また、p側電極600は、光を透過しないように、すなわち、光を基板100側に反射するように、厚さを大きくして形成することができる。このような技術をフリップチップ(flip chip)技術という。米国特許第6,194,743号明細書には、20nm以上の厚さを有するAg層、Ag層を覆う拡散防止層、及び拡散防止層を覆うAuとAlとからなるボンディング層を含む電極構造に関する技術が開示されている。
【0009】
p側ボンディングパッド700及びn側電極800は、電流の供給と外部へのワイヤーボンディングを行うためのものであり、米国特許第5,563,422号明細書には、n側電極800をTiとAlとで構成した技術が開示されている。
保護膜900は、二酸化ケイ素のような物質で形成されるが、省略されてもよい。
【0010】
n型窒化物半導体層300及びp型窒化物半導体層500は、単一の層や複数個の層から構成することができ、最近では、レーザーまたは湿式エッチングによって、基板100を窒化物半導体層などから分離して垂直型発光素子を製造する技術が導入されている。
図2は、米国特許第5,563,422号明細書に開示された電極構造の一例を示す図面である。p側ボンディングパッド700とn側電極800とが、発光素子のコーナーから対角方向に位置しており、発光素子内で最も遠く離れて位置することにより、電流の拡散を改善している。
図3は、米国特許第6,307,218号明細書に開示された電極構造の一例を示す図面である。p側ボンディングパッド700とn側電極800との間に、等間隔で配置された枝電極710、810を備えることによって、発光素子が大面積化に伴う電流の拡散を改善している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、電流拡散を改善し得る半導体発光素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、等しく発光がなされる半導体発光素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、発光素子の寿命を延長し得る半導体発光素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、広い発光面積にかけて等しく発光される半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、本発明は、電子と正孔の再結合を利用して光を生成する半導体発光素子において、前記電子と前記正孔のいずれか一方を供給する第1枝電極と、前記電子と前記正孔の他方を供給して、前記第1枝電極と第1間隔をおいて設けられた第2枝電極と、前記第1枝電極と電気的に接続しており、前記第2枝電極と第1間隔より小さい第2間隔をおいて設けられた第3枝電極とを含むことを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記第2枝電極と電気的に接続しており、前記第3枝電極と第1間隔より小さい第3間隔をおいて設けられた第4枝電極を含むことを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0014】
また、本発明は、第3間隔が第2間隔より小さいことを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0015】
また、本発明は、第1枝電極が発光素子の最外郭に位置することを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0016】
また、本発明は、第1枝電極が正孔を供給することを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0017】
また、本発明は、III族窒化物半導体発光素子であることを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0018】
また、本発明は、電子と正孔の再結合を利用して光を生成する半導体発光素子において、前記電子と前記正孔のいずれか一方を供給する複数個の第1枝電極と、前記電子と前記正孔の他方を供給して、複数個の前記第1枝電極と交互に配置される少なくとも一つの第2枝電極とを含み、少なくとも一つの前記第1枝電極と複数個の前記第2枝電極のうち、発光素子の最外郭に位置する枝電極間の間隔が、残りの間隔よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記残りの間隔が、前記発光素子の内部へ行くほど小さくなることを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0020】
また、本発明は、複数個の前記第1枝電極が前記正孔を供給することを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【0021】
また、本発明は、複数個の前記第1枝電極が正孔を供給するIII族窒化物半導体発光素子であることを特徴とする半導体発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る半導体発光素子によれば、発光素子内の電流拡散を改善することができる。
また、本発明に係る半導体発光素子によれば、発光素子内でバラツキなく発光が行われるようになる。
また、本発明に係る半導体発光素子によれば、発光素子の寿命を延長することができる。
また、本発明に係る半導体発光素子によれば、広い発光面積において発光を均等にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下では、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
図4は、等間隔に配置された電極構造の一例を示す図面である。図4において、p側ボンディングパッド70とn側電極80とが備えられており、p側ボンディングパッド70から枝電極71、72、73が延びており、n側電極80から枝電極81、82が延びている。
【0024】
枝電極71、72、73と枝電極81、82が交互に配置されることで、発光素子全体に電流が供給される。枝電極71、72、73と枝電極81、82との間の間隔a,b,c,dは一定とされている。
図5は、図4の電極構造を有する発光素子において、200mA、300mA、400mAの電流がそれぞれ供給された時の発光分布の一例を示している。ここで、間隔a,b,c,d(図4参照)は、いずれも約89μmに維持されている。図4及び図5に示されるように、p側ボンディングパッド70から延びている枝電極71とn側電極80から延びている枝電極81との間における発光は、枝電極81と枝電極72との間の発光、枝電極72と枝電極82との間の発光、枝電極82と枝電極73との間の発光よりも強いことが分かる。このような発光の偏り又は電流密度のバラツキは、発光素子の全体発光効率及び発光素子の寿命によくない影響を与えるため、改善する必要がある。図4において、供給電流が大きくなればなるほど(一般に、発光素子の面積が大きくなるほど、供給電流も大きくなる。)、発光の偏り状態が大きくなることから、このような電流の集中状態は、大面積発光素子において特に問題視される。
【0025】
図6は、本発明に係る電極構造の一例を示す図面である。図6に示されるように、p側ボンディングパッド70とn側電極80とが備えられており、p側ボンディングパッド70から枝電極71、72、73が延びており、n側電極80から枝電極81、82が延びている。枝電極71、72、73と枝電極81、82とが交互に配置されることで、発光素子全体に電流が供給される。図4の発光素子において、p側ボンディングパッド70とn側電極80とがそのまま維持された状態で、枝電極71、72、73と枝電極81、82との間の間隔a,b,c,dが、それぞれ発光素子の内側へ行くほど相対的に狭くなるように、枝電極71、72、73及び枝電極81、82が配置されている。
【0026】
図7は、図6の電極構造を有する発光素子において、200mA、300mA、400mAの電流がそれぞれ供給された時の発光分布の一例を示している。ここで間隔a,b,c,d(図6参照)は、例えば、各々118μm、88μm、79μm、70μmとされている。図7に示すように、図5に示した発光分布に比べて、枝電極71と枝電極81との間の発光、枝電極81と枝電極72との間の発光、枝電極72と枝電極82との間の発光、及び枝電極82と枝電極73との間の発光が、均等であることが分かる。このように、枝電極間の間隔を調節することにより、発光素子の発光分布をバラツキのないようにすることができる。400mAの電流が供給される時、枝電極82と枝電極73との間の発光が強くなることが分かるが、これは間隔dを若干広くすることにより解消することができる。したがって、本発明の技術的思想は、間隔a,b,c,dを漸進的に狭めることに限定されるわけではない。換言すると、枝電極が等間隔に配置される時の発光の偏り又は電流の集中問題を改善するために、発光分布において、発光の偏りが現れる領域の間隔を相対的に広くし、発光が足りない領域では発光に偏りのある領域に比べて適切に間隔を狭く配置することも、本発明の技術的思想の範囲内といえる。
【0027】
図6に示す発光素子において、p側ボンディングパッド70と枝電極71とが発光素子の最外郭に位置し、n側電極80と枝電極81とがその内側に位置することが好ましい。例えば、エッチングを要するn側電極80と枝電極81とが発光素子の最外郭に位置する場合には、発光素子がエッチングされることから、発光面積が減少する。しかしながら、図6に示すように、p側ボンディングパッド70と枝電極71とを最外郭に位置させることで、最外郭におけるエッチングを不要とすることができ、発光面積の減少を防ぐことができるという更なる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のIII族窒化物半導体発光素子の一例を示す図面である。
【図2】米国特許第5,563,422号明細書に開示された電極構造の一例を示す図面である。
【図3】米国特許第6,307,218号明細書に開示された電極構造の一例を示す図面である。
【図4】等間隔で配置された電極構造の一例を示す図面である。
【図5】図4の電極構造を有する発光素子での発光分布を示す図面である。
【図6】本発明による電極構造の一例を示す図面である。
【図7】図6の電極構造を有する発光素子における発光分布を示す図面である。
【符号の説明】
【0029】
70 p側ボンディングパッド
71,72,73 枝電極
80 n側電極
81,82 枝電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子と正孔の再結合を利用して光を生成する半導体発光素子において、
前記電子と前記正孔のいずれか一方を供給する第1枝電極と、
前記電子と前記正孔の他方を供給して、前記第1枝電極と第1間隔をおいて設けられた第2枝電極と、
前記第1枝電極と電気的に接続しており、前記第2枝電極と第1間隔よりも小さい第2間隔をおいて設けられた第3枝電極と
を含むことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第2枝電極と電気的に接続しており、前記第3枝電極と第1間隔より小さい第3間隔をおいて設けられた第4枝電極を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第3間隔が前記第2間隔より小さいことを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1枝電極は、発光素子の最外郭に位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1枝電極は、前記正孔を供給することを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
III族窒化物半導体発光素子であることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
電子と正孔の再結合を利用して光を生成する半導体発光素子において、
前記電子と前記正孔のいずれか一方を供給する複数個の第1枝電極と、
前記電子と前記正孔の他方を供給して、複数個の前記第1枝電極と交互に配置される少なくとも一つの第2枝電極と
を含み、
少なくとも一つの前記第1枝電極と複数個の前記第2枝電極のうち、発光素子の最外郭に位置する枝電極間の間隔が、残りの間隔よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項8】
前記残りの間隔は、前記発光素子の内部へ行くほど小さくなることを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
複数個の前記第1枝電極は、前記正孔を供給することを特徴とする請求項7に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
複数個の前記第1枝電極が正孔を供給するIII族窒化物半導体発光素子であることを特徴とする請求項8に記載の半導体発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−278056(P2009−278056A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236302(P2008−236302)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(506387339)エピヴァレー カンパニー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】