説明

半導体発光素子

【課題】基板の側面からの光取り出し効率を向上させた半導体発光素子を提供する。
【解決手段】窒化物半導体発光素子10では、基板11は対向する第1および第2の面11a、11bと、第1および第2の面11a、11bに略直交する側面11cを有している。基板11の側面11cには、第1の面11aから第1の距離Lo1だけ離間した位置から第2の面11b側に向かって、第1の粗さR1と第1の幅aを有する第1の領域12と、第1の粗さR1より小さい第2の粗R2さと第1の幅aより小さい第2の幅bを有する第2の領域13が交互に形成されている。第1の領域12の繰り返しピッチは、一定である。基板11の第1の面11a上に、第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体15が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窒化物半導体発光素子には、C面サファイア基板上に窒化物半導体層を形成し、窒化物半導体層側だけでなくサファイア基板の側面からも光を取り出すように構成されているものがある。
【0003】
この窒化物半導体発光素子では、サファイア基板の側面からの光取り出し効率を向上させるために、サファイア基板はある程度厚く、且つサファイア基板の側面が粗面化されていることが必要である。
【0004】
然しながら、C面サファイア基板はC面に対して垂直なへき開面を持たないこと、且つ硬度が高く化学的に安定な材料であるため、厚いサファイア基板をチップに分割し、且つ側面を粗面化することが難しいという問題がある。
【0005】
例えば、サファイア基板をポイントスクライブした後、ブレーキングにより分割する場合、分離の起点がサファイア基板の表面より10μm程度にとどまるため、サファイア基板の厚さは100μm程度が限界である。
【0006】
サファイア基板の表面にレーザを集光してアブレーション加工した後、ブレーキングによりチップに分割する場合、分離の起点がサファイア基板の表面より30μm程度にとどまるため、サファイア基板の厚さは130μm程度が限界である。
【0007】
更に、ブレーキングによりチップに分割されたサファイア基板の側面は、クラック状の側面となるため、粗面化されにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−163403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、基板の側面からの光取り出し効率を向上させた半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの実施形態によれば、半導体発光素子では、基板は対向する第1および第2の面と、前記第1および第2の面に略直交する側面を有している。前記側面には、前記第1の面から第1の距離だけ離間した位置から前記第2の面側に向かって、第1の粗さと第1の幅を有する第1の領域と、前記第1の粗さより小さい第2の粗さと前記第1の幅より小さい第2の幅を有する第2の領域が交互に形成されている。前記第1の領域の繰り返しピッチが一定である。前記基板の前記第1の面上に、第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例に係る半導体発光素子を示す図。
【図2】実施例に係る半導体発光素子の特性を示す図。
【図3】実施例に係る半導体発光素子の特性を示す図。
【図4】実施例に係る半導体発光素子を比較例と対比して示す図。
【図5】実施例に係る半導体発光素子の特性を比較例と対比して示す図。
【図6】実施例に係る半導体発光素子の特性を示す図。
【図7】実施例に係る半導体発光素子の製造工程の要部を示すフローチャート。
【図8】実施例に係る半導体発光素子の製造工程の要部を順に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0013】
本実施例に係る半導体発光素子について図1を用いて説明する。本実施例の半導体発光素子は窒化物半導体発光素子である。図1は窒化物半導体発光素子を示す図で、図1(a)はその平面図、図1(b)はその側面図、図1(c)は図1(b)の要部を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施例の窒化物半導体発光素子10では、サファイア基板11は対向する第1および第2の面11a、11bと、第1および第2の面11a、11bに略直交する4つの側面11cを有し、例えば250μm×250μm角で厚さL0が200μmの直方体状である。
【0015】
サファイア基板11の側面11cには、第1の面11aから第1の距離L1、例えば30μm以上離間した位置から第2の面11b側(紙面の−Z方向)に向かって、粗さおよび幅が異なる第1の領域12と第2の領域13が交互に4段形成されている。
【0016】
各段において、第1の領域12は、第1の粗さR1と第1の幅aを有している。第2の領域13は、第1の荒さR1より小さい第2の粗さR2と第1の幅aより小さい第2の幅bを有している。
【0017】
各段において、第1および第2の領域12、13は、第1の幅aおよび第2の幅bの和(a+b)が一定になるように、即ち第1の領域12の繰り返しピッチが一定になるように形成されている。
【0018】
第2の幅bは0より大きく、第1の幅aの1/2以下になるように形成されている(0<b≦a/2)。第1の幅aは、例えば30μm〜40μmである。第2の幅bは、例えば15μm〜20μmである。
【0019】
第1および第2の領域12、13は、第1の面11aに平行な方向(紙面のX方向)に側面11cの一端から他端まで延在している。
【0020】
サファイア基板11の第1の面11a上には、N型(第1導電型)の第1窒化物半導体層と、窒化物活性層と、P型(第2導電型)の第2窒化物半導体層が順に積層された窒化物半導体積層体15が形成されている。
【0021】
第1窒化物半導体層は、例えばN型GaN層21とN型GaNクラッド層22を含み、窒化物活性層は、例えばMQW層23を含み、第2窒化物半導体層は、例えばP型GaNクラッド層24とP型GaNコンタクト層25を含んでいる。
【0022】
窒化物半導体積層体15上には、電流を広げるとともにP型GaNコンタクト層25側から取り出される光が電極材で遮られるのを防止するために透明導電膜16が形成されている。透明導電膜16の一部に第1電極(P側電極)17、例えばアルミニウム(Al)膜が形成されている。
【0023】
窒化物半導体積層体15の一部が除去され、露出したN型GaN層21上に第2電極(N側電極)18、例えばチタン(Ti)/白金(Pt)/金(Au)の積層膜が形成されている。
【0024】
第1電極17および第2電極18はサファイア基板11の対角線に沿って対向するように形成されている。
【0025】
第1の領域12および第2の領域13は、以下のようにして形成された領域である。サファイアに対して半透明な波長を有するレーザをサファイア基板の内部に集光し、分割予定ラインに沿って離散的に、例えば5μmステップで相対移動させることにより、サファイア基板の内部に加工変質層を形成する。
【0026】
加工変質層とはレーザのエネルギーによりサファイアが溶融して再固化した領域であり、熱歪により生じたき裂などにより強度が低下した領域である。加工変質層のサイズは、レーザのビーム形状および光出力などに依存する。レーザを離散的に相対移動させる間隔は、レーザのビーム径より大きく、レーザのビーム径の2倍以下とすることが適当である。
【0027】
内部に加工変質層が形成されたサファイア基板をブレーキングすることにより、加工変質層に含まれるき裂がサファイア基板の両面に伸展し、サファイア基板がチップに分離される。
【0028】
サファイア基板が分離されて露出した加工変質層が第1の領域12になる。サファイア基板が分離されて加工変質層が形成されていなかった部分が第2の領域13になる。
【0029】
第1の領域12は加工変質層のサイズに応じた凹凸を有する側面となり、第1の粗さR1と第1の幅aを有する。
【0030】
一方、第2の領域13はき列に応じた凹凸を有する筋状の側面となり、第1の粗さR1より小さい第2の粗さR2と加工変質層を形成するピッチに応じて第1の幅aより小さい第2の幅bを有する。
【0031】
サファイア基板11の第1の面11aから初段の第1の領域12までの第3の領域14はクラック状の側面で、テラス状の平坦面を含んでいる。そのため、第3の領域14の粗さは、第2の粗さR2より小さくなっている。
【0032】
第3の領域14は、サファイア基板11の内部にレーザを集光する際に、窒化物半導体積層体15への熱的ダメージを防止するために設けられている。
【0033】
窒化物半導体積層体15については周知であるが、以下簡単に説明する。N型GaN層21は、N型クラッド層22乃至P型GaNコンタクト層25までを成長させるための下地単結晶層であり、例えば約3μmと厚く形成されている。N型GaNクラッド層22は、例えば厚さ2μm程度に形成されている。
【0034】
MQW層23は、例えば厚さが5nmのGaN障壁層と厚さが2.5nmのInGaN井戸層とが交互に積層され、最上層がInGaN井戸層である多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造に形成されている。
【0035】
P型GaNクラッド層24は、例えば厚さ100nm程度に形成され、P型GaNコンタクト層25は、例えば厚さ10nm程度に形成されている。
【0036】
InGaN井戸層(InGa1−xN層、0<x<1)のIn組成比xは、窒化物半導体層11から取り出される光のピーク波長が、例えば約450nmになるように0.1程度に設定されている。
【0037】
上述した窒化物半導体発光素子10は、サファイア基板11の厚さL0および側面11cの粗面化パターンを最適化することにより、信頼性を確保しつつ側面11cからの光の取り出し効率を高めるように構成されている。
【0038】
次に、窒化物半導体発光素子10の特性について、図2乃至図6を用いて説明する。図2は第1の距離L1と窒化物半導体発光素子10の初期光出力(Po)の残存率の関係を示す図である。図2において、横軸は第1の距離L1、縦軸は500時間経過後のPo残存率を示している。Po残存率は、第1の距離L1が60μmのときに得られたPo残存率で規格化されている。
【0039】
図2に示すように、第1の距離L1が10μmのときの残存率は10%以下であり、第1の距離L1が20μmのときの残存率は70%程度である。第1の距離L1が短くなると、急速にPo残存率が低下している。
【0040】
一方、第1の距離L1が30μm以上では、Po残存率は略100%である。これから、サファイア基板11の内部にレーザを集光する際に、第1の距離L1が30μm以上であればサファイア基板11の厚さに拘わらず窒化物半導体積層体15へのダメージを回避することが可能である。
【0041】
図3は第1および第2の領域12、13の段数と発光効率の関係を示す図である。図3において、横軸は段数、縦軸は発光効率を示している。発光効率は、段数が4のときに得られた発光効率で規格化されている。
【0042】
図3に示すように、段数が多くなるほど発光効率が向上し、段数が4以上では飽和する傾向を示した。段数は多いほど、サファイア基板11の側面11cが粗面化される割合が大きくなるので、側面11cからの光取り出し効率が向上し、発光効率を向上させることが可能である。
【0043】
図4は第1および第2の領域12、13を配置するパターンを示す図で、図4(a)が本実施例のパターンを示す図、図4(b)が第1比較例のパターンを示す図、図4(c)が第2比較例のパターンを示す図である。
【0044】
ここで、第1および第2比較例のパターンとは、各段において0<b≦a/2なる関係を満たさない第2の幅bを有するパターンのことである。
【0045】
図4(a)に示すように、本実施例のパターンは、各段における第1の幅aおよび第2の幅bが一定で、0<b≦a/2なる関係を満たしている。
【0046】
図4(b)に示すように、第1比較例のパターンは、1段目の第2の幅bが第1の幅aより大きく(b>a)、0<b≦a/2なる関係を満たしていない。
【0047】
図4(c)に示すように、第2比較例のパターンは、2段目の第2の幅bが第1の幅aより大きく(b>a)、0<b≦a/2なる関係を満たしていない。
【0048】
即ち、本実施例のパターンは、側面11cが均等に粗面化されているパターンである。第1比較例のパターンは、上部の粗面化が少ないパターンである。第2比較例のパターンは、中央部の粗面化が少ないパターンである。
【0049】
図5は第1および第2の領域12、13を配置するパターンと発光効率の関係を示す図である。図5において、横軸はパターンの種類、縦軸は発光効率を示している。発光効率は、本実施例のパターンのときに得られた発光効率で規格化されている。
【0050】
図5に示すように、本実施例のパターンでは、第1および第2比較例のパターンより高い発光効率が得られた。
【0051】
これは、本実施例のパターンでは、隣接する加工変質層の間隔(第2の幅bに相当)が加工変質層の幅(第1の幅aに相当)より小さいので、ブレーキングの際の引張り応力によりき裂がうまく伸展し、第2の粗さR2を有して粗面化されるためである。
【0052】
一方、第1および第2比較例のパターンでは、隣接する加工変質層の間隔が加工変質層の幅より大きいため、ブレーキングの際クラックキングされたような側面となり、第2の粗さR2がうまく形成されず、粗面化されにくくなるためである。
【0053】
図6はサファイア基板11の厚さL0と発光効率の関係を示す図である。図6において、横軸はサファイア基板11の厚さL0、縦軸は発光効率を示している。発光効率は、サファイア基板11の厚さL0が200μmのときの発光効率で規格化されている。
【0054】
図6に示すように、発光効率はサファイア基板11の厚さL0が大きくなる増加し、サファイア基板11の厚さL0が150μm以上で飽和する傾向を示している。
【0055】
次に、窒化物半導体発光素子10の製造方法について、図7および図8を用いて説明する。図7は窒化物半導体発光素子10の製造工程の要部を示すフローチャート、図8は窒化物半導体発光素子10の製造工程の要部を示す断面図である。
【0056】
始に、サファイア基板上にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、窒化物半導体積層体15を形成する。
【0057】
窒化物半導体積層体15の形成方法は周知であるが、以下簡単に説明する。例えば直径150mmで、面方位がC面のサファイア基板に前処理として、例えば有機洗浄、酸洗浄を施した後、MOCVD装置の反応室内に収納する。
【0058】
次に、例えば窒素(N)ガスと水素(H)ガスの常圧混合ガス雰囲気中で、高周波加熱により、サファイア基板の温度を、例えば1100℃まで昇温する。これにより、サファイア基板の表面が気相エッチングされ、表面に形成されている自然酸化膜が除去される。
【0059】
次に、NガスとHガスの混合ガスをキャリアガスとし、プロセスガスとして、例えばアンモニア(NH)ガスとトリメチルガリウム(TMG:Tri-Methyl Gallium)を供給し、N型ドーパントとして、例えばシラン(SiH)ガスを供給し、厚さ3μmのN型GaN層21を形成する。
【0060】
次に、同様にして厚さ2μmのN型GaNクラッド層22を形成した後、NHガスは供給し続けながらTMGおよびSiHガスの供給を停止し、サファイア基板の温度を1100℃より低い温度、例えば800℃まで降温し、800℃で保持する。
【0061】
次に、Nガスをキャリアガスとし、プロセスガスとして、例えばNHガスおよびTMGを供給し、厚さ5nmのGaN障壁層を形成し、この中にトリメチルインジウム(TMI:Tri-Methyl Indium)を供給することにより、厚さ2.5nm、In組成比が0.1のInGaN井戸層を形成する。
【0062】
次に、TMIの供給を断続することにより、GaN障壁層とInGaN井戸層の形成を、例えば7回繰返す。これにより、MQW層23が得られる。
【0063】
次に、TMG、NHガスは供給し続けながらTMIの供給を停止し、アンドープで厚さ5nmのGaNキャップ層を形成する。
【0064】
次に、NHガスは供給し続けながらTMG、TMAの供給を停止し、Nガス雰囲気中で、サファイア基板の温度を800℃より高い温度、例えば1030℃まで昇温し、1030℃で保持する。
【0065】
次に、NガスとHガスの混合ガスをキャリアガスとし、プロセスガスとしてNHガスおよびTMG、P型ドーパントとしてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を供給し、Mg濃度が1E20cm−3、厚さが100nm程度のP型GaNクラッド層24を形成する。
【0066】
次に、CpMgの供給を増やして、Mg濃度が1E21cm−3、厚さ10nm程度のP型GaNコンタクト層25を形成する。
【0067】
次に、NHガスは供給し続けながらTMGの供給を停止し、キャリアガスのみ引き続き供給し、サファイア基板を自然降温する。NHガスの供給は、サファイア基板の温度が500℃に達するまで継続する。
【0068】
これにより、サファイア基板上に窒化物半導体積層体15が形成され、P型GaNコンタクト層25が表面になる。
【0069】
次に、P型GaNコンタクト層25上に透明導電膜16として、例えばスパッタリング法によりITO(Indium Tin Oxide)膜を形成する。
【0070】
次に、透明導電膜16の一部を、例えば硝酸と塩酸の混酸を用いたウエットエッチングにより除去し、窒化物半導体積層体15の一部を露出させる。
【0071】
次に、露出した窒化物半導体積層体15の一部を、例えば塩素系ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法により異方性エッチングし、N型GaN層21を露出させる。
【0072】
次に、残った透明導電膜16の一部上に第1電極17を形成し、露出したN型GaN層21上に第2電極18を形成する。
【0073】
この段階で、複数の窒化物半導体発光素子が格子状に配列されたサファイア基板が得られる。
【0074】
次に、図7に示すフローチャートに従って、サファイア基板をチップに分割し、個々の窒化物半導体発光素子を得る。
【0075】
始に、窒化物半導体積層体15側を粘着シートに対向させ、サファイア基板をステンレスリングに取り付けられた粘着シート上に貼り付け(ステップS01)、サファイア基板をレーザダイング装置のステージに載置する(ステップS02)。
【0076】
次に、レーザ照射条件等の初期設定を行う。使用するレーザは、例えば波長1.06μm、出力300mW、パルス幅10〜15fs、繰り返し周波数100kHzである。加工条件は、例えば送り速度600mm/s、照射間隔5μmである(ステップS03)。
【0077】
図8に示すように、Z方向の位置を調整して第1の面11a側から30μmの深さLf1にレーザ30を照射する光学系の焦点をあわせた後、サファイア基板の第2の面11b側からレーザ30を照射し、X方向に5μm間隔で相対的にステップスキャンすることにより、第1加工変質層31を形成する(ステップS04)。
【0078】
以下ステップS04と同様に、第1の面11a側から75μmの深さLf2に焦点をあわせた後、第2加工変質層32を形成する(ステップS05)。
【0079】
第1の面11a側から120μmの深さLf3に焦点をあわせた後、第3加工変質層33を形成する(ステップS06)。
【0080】
第1の面11a側から165μmの深さLf4に焦点をあわせた後、第4加工変質層34を形成する(ステップS07)。
【0081】
次に、レーザダイング装置のステージを回して、サファイア基板を90°回転させる(ステップS08)。
【0082】
次に、ステップS04からステップS07と同様にして、サファイア基板のY方向に5μm間隔でステップスキャンすることにより、第1乃至第4加工変質層31、32、33、34を形成する(ステップS09)。
【0083】
次に、サファイア基板をステンレスリングから取り外し、粘着シートをブレーキングして、サファイア基板をチップに分割する。これにより、窒化物半導体発光素子10が得られる。
【0084】
なお、ステップS07の後に、サファイア基板をチップサイズ分、例えば250μmだけY方向に移動させてステップS04からステップS07を繰り返す。同様に、ステップS09の後に、サファイア基板をチップサイズ分だけX方向に移動させてステップS09を繰り返すことはいうまでもない。
【0085】
以上説明したように、本実施例の窒化物半導体発光素子10では、サファイア基板11の厚さL0を厚くし、側面11cには第1の面11aから第1の距離L1だけ離間した位置から第2の面11b側に向かって、第1の粗さR1と第1の幅aを有する第1の領域12と、第1の荒さR1より小さい第2の粗さR2と第1の幅aより小さい第2の幅bを有する第2の領域13を交互に4段形成している。
【0086】
これにより、サファイア基板11の厚さL0および側面11cの粗面化パターンの最適化を図っている。
【0087】
その結果、信頼性を確保しつつ側面11cからの光の取り出し効率を高めることができる。従って、基板の側面からの光取り出し効率を向上させた窒化物半導体発光素子が得られる。
【0088】
ここでは、各段の第1の幅aが互いに等しく、各段の第2の幅bが互いに等しい場合について説明したが、各段において0<b≦a/2なる関係を満たしていればよく、特に等しくなくても本実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0089】
基板がサファイアである場合について説明したが、その他の基板、例えばSiCに適用することも可能である。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0091】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 前記基板はサファイアであり、前記半導体積層体は窒化物半導体積層体である請求項1に記載の半導体発光素子。
【0092】
(付記2) 前記第1および第2の領域は、前記第1の面に平行な方向に前記側面の一端から他端まで延在している請求項1に記載の半導体発光素子。
【符号の説明】
【0093】
10 窒化物半導体発光素子
11 サファイア基板
11a 第1の面
11b 第2の面
11c 側面
12 第1の領域
13 第2の領域
14 第3の領域
15 窒化物半導体積層体
16 透明導電膜
17 第1電極
18 第2電極
21 N型GaN層
22 N型GaNクラッド層
23 MQW層
24 P型GaNクラッド層
25 P型GaNコンタクト層
30 レーザ
31 第1加工変質層
32 第2加工変質層
33 第3加工変質層
34 第4加工変質層
L1 第1の距離
R1 第1の粗さ
R2 第2の粗さ
a 第1の幅
b 第2の幅
L11、Lf2、Lf3、Lf4 深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2の面と、前記第1および第2の面に略直交する側面を有し、前記側面には、前記第1の面から第1の距離だけ離間した位置から前記第2の面側に向かって、第1の粗さと第1の幅を有する第1の領域と、前記第1の粗さより小さい第2の粗さと前記第1の幅より小さい第2の幅を有する第2の領域が交互に形成され、且つ前記第1の領域の繰り返しピッチが一定である基板と、
前記基板の前記第1の面上に形成され、第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体と、
を具備することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1および第2の面間の距離が150μm以上であり、前記第1の距離が30μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第2の幅は0より大きく、前記第1の幅の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1および第2の領域は、レーザを前記第2の面側から前記基板の内部に集光し、分割予定ラインに沿って離散的に相対移動させて加工変質層を形成した後、前記基板をブレーキングすることにより分離されて露出した領域であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記レーザを離散的に相対移動させる間隔は、前記レーザのビーム径より大きく、2倍以下であることを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−4741(P2013−4741A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134427(P2011−134427)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】