説明

半導体発光素子

【課題】低電圧で高輝度の半導体発光素子を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、第1、第2電極層、第1、第2半導体層、発光層及び第1中間層を含む半導体発光素子が提供される。第1電極層は、金属部を有する。金属部には、円相当直径が10nm以上5μm以下の複数の貫通孔が設けられている。第2電極層は光反射性である。第1半導体層は、第1電極層と第2電極層との間に設けられ第1導電形である。第2半導体層は第1半導体層と第2電極層との間に設けられ第2導電形である。発光層は、第1半導体層と第2半導体層との間に設けられる。第1中間層は、第2半導体層と第2電極層との間に設けられ、光透過性である。第1中間層は、複数の第1コンタクト部と、第1非コンタクト部と、を含む。第1非コンタクト部は、積層方向に対して垂直な平面内において第1コンタクト部と並置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子において、高い輝度と共に低い順方向電圧が望まれる。Thin film型の構造のLEDにおいて、ドット状の電極を設け、これにより電流密度を上げることで高輝度を得ようとする構成がある。しかしながら、高輝度と低順方向電圧とを得るためには改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6784462B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、低電圧で高輝度の半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、第1電極層と、第2電極層と、第1半導体層と、第2半導体層と、発光層と、第1中間層と、を含む半導体発光素子が提供される。前記第1電極層は、金属部を有する。前記金属部には、円相当直径が10ナノメートル以上5マイクロメートル以下の開口部を有する複数の貫通孔が設けられている。前記第2電極層は、前記第1電極層と積層され、光反射性である。前記第1半導体層は、前記第1電極層と前記第2電極層との間に設けられ、第1導電形である。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第2電極層との間に設けられ、前記第1導電形とは異なる第2導電形である。前記発光層は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられる。前記第1中間層は、前記第2半導体層と前記第2電極層との間に設けられる。前記第1中間層は、前記発光層から放出される光に対して透過性を有する。前記第1中間層は、複数の第1コンタクト部と、第1非コンタクト部と、を含む。前記複数の第1コンタクト部は、前記第2電極層と前記第2半導体層とを電気的にコンタクトさせる。前記第1非コンタクト部は、前記第2電極層から前記第1電極層に向かう積層方向に対して垂直な第1平面内において前記複数の第1コンタクト部と並置され、前記第2電極層と前記第2半導体層との間の電気抵抗を前記第1コンタクト部よりも高くする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式的斜視図である。
【図3】参考例の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図4】半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図5】第2の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(f)は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示す工程順模式的図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図1(b)は、透視平面図である。図1(a)は、図1(b)のA1−A2線断面図である。
【0009】
図1(a)及び図1(b)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110は、第1電極層50と、第2電極層60と、第1半導体層10と、第2半導体層20と、発光層30と、第1中間層40と、を含む。
【0010】
第1電極層50は、金属部51を有する。金属部51には、複数の貫通孔52が設けられている。第1電極層50の例については後述する。図1(b)においては、図を見やすくするために、貫通孔52は省略されている。
【0011】
第2電極層60は、第1電極層50と積層される。本願明細書において、「積層」とは、互いに接して重ねられる場合の他に、間に他の層が挿入されて重ねられる場合も含む。
【0012】
第2電極層60は、光反射性である。第2電極層60は、発光層30から放出される光に対して反射性を有する。
【0013】
ここで、第2電極層60から第1電極層50に向かう方向を積層方向とする。積層方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向とX軸方向とに対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0014】
例えば、第1電極層50は、X−Y平面に対して平行な層面を有する。例えば、第2電極層60は、X−Y平面に対して平行な層面を有する。
【0015】
第1半導体層10は、第1電極層50と第2電極層60との間に設けられる。第1半導体層10は、第1導電形を有する。
【0016】
第2半導体層20は、第1半導体層10と第2電極層60との間に設けられる。第2半導体層20は、第2導電形を有する。第2導電形は、第1導電形とは異なる導電形である。
【0017】
例えば、第1導電形はn形であり、第2導電形はp形である。第1導電形がp形であり、第2導電形がn形でも良い。以下では、第1導電形がn形であり、第2導電形がp形である場合として説明する。
【0018】
発光層30は、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられる。発光層30の構成の例については後述する。
【0019】
第1中間層40は、第2半導体層20と第2電極層60との間に設けられる。第1中間層40は、発光層30から放出される光に対して透過性を有する。第1中間層40は、複数の第1コンタクト部41と、第1非コンタクト部42と、を有する。複数の第1コンタクト部41のそれぞれは、第2電極層60と第2半導体層20とを電気的にコンタクトさせる。第1非コンタクト部42は、積層方向(Z軸方向)に対して垂直な第1平面40a内(X−Y平面内)において、複数の第1コンタクト部41と並置される。第1平面40aは、例えば、第1中間層40と第2半導体層20との間の界面である。第1非コンタクト部42は、第2電極層60と第2半導体層20との間の電気抵抗を、第1コンタクト部41よりも高くする。
これにより、低電圧で高輝度の半導体発光素子を提供することができる。
【0020】
この例では、第2電極層60は、支持基板70の上に設けられる。本願明細書において、「上に設けられる」とは、直接接して設けられる場合の他に、間に他の層が挿入されて設けられる場合も含む。
【0021】
支持基板70の下面に、p側電極71が設けられている。すなわち、p側電極71と第2電極層60との間に支持基板70が配置されている。p側電極71は、支持基板70とオーミック接触している。支持基板70には、熱伝導率の高い材料を用いることが好ましい。支持基板70には、例えば、半導体または金属を用いることができる。支持基板70には、例えばシリコンを用いることができる。さらに具体的には、支持基板70には、例えばp形のシリコン基板などが用いられる。
【0022】
第2電極層60は、支持基板70とオーミック接触している。第2電極層60には、発光層30の発光波長に対して高反射率の材料を用いることが好ましい。第2電極層60には、Au、Ag及びAl、または、Au、Ag及びAlの少なくともいずれかを主成分とする合金を用いることが好ましい。第2電極層60として、例えばAg層が用いられる。第2電極層60の厚さは、例えば、約200ナノメートル(nm)である。
【0023】
第2電極層60の上に、第1中間層40の一部となる例えば光透過導電層41aが設けられている。光透過導電層41aには、例えばITO(Indium Tin Oxide)などが用いられる。光透過導電層41aの厚さは、例えば、約150nmである。
【0024】
光透過導電層41aの上面に、第1非コンタクト部42となる絶縁層が設けられている。この絶縁層には、例えば、SiOなどが用いられる。この絶縁層に、例えばドット状の複数の開口部が設けられており、この開口部において、光透過導電層41aが露出している。開口部に露出している光透過導電層41aが、複数の第1コンタクト部41となる。
【0025】
この例では、第1非コンタクト部42と第2電極層60との間に、光透過導電層41aの一部が設けられているが、実施形態はこれに限らない。第1非コンタクト部42は第2電極層60と接していても良い。第1中間層40において、X−Y平面内において複数の第1コンタクト部と第1非コンタクト部とが並置されていれば、他の構成は任意である。
【0026】
実施形態において、第1コンタクト部41には、半導体または透明導電性材料を用いることができる。第1非コンタクト部42には、例えば、不純物濃度の低い半導体、または、絶縁性材料を用いることができる。例えば、上記のように、第1コンタクト部41としてITOを用い第1非コンタクト部42としてSiOを用いる。
【0027】
第1中間層40の上に、例えば、p側コンタクト層22となるp形のGaP層が設けられる。p側コンタクト層22の厚さは、例えば、100nmである。p側コンタクト層22の上に、例えば、第2クラッド層21となるp形のInAlP層が設けられる。p側コンタクト層22及び第2クラッド層21は、第2半導体層20に含まれる。
【0028】
第2半導体層20の上に、発光層30が設けられる。発光層30には、例えば、InGaP層が用いられる。
【0029】
発光層30の上に、第1クラッド層11となるn形のInAlP層が設けられる。このように、p側コンタクト層22の上に、第2クラッド層21(p形のInAlP層)、発光層30(InGaP層)、及び、第1クラッド層11(n形のInAlP層)を含むヘテロ構造が設けられる。
【0030】
第1クラッド層11の上に、電流拡散層12が設けられている。電流拡散層12には、例えば、n形のInGaAlPの4元元素の層が用いられる。電流拡散層12は、第1クラッド層11の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する。
【0031】
電流拡散層12の上に、n側コンタクト層13となる、例えば、n形のGaP層が設けられている。n側コンタクト層13には、例えば、n形のGaAsなどを用いても良い。
【0032】
n側コンタクト層13の上に、第1電極層50が設けられる。
このように、第1半導体層10は、第1クラッド層11と、電流拡散層12と、を含む。電流拡散層12は、第1クラッド層11と第1電極層50との間に設けられる。第1半導体層10は、電流拡散層12と第2電極層50との間に設けられたn側コンタクト層13をさらに含んでも良い。
【0033】
この例では、発光層30から放出される光のピーク波長は、例えば約635nmである。ただし、実施形態において、発光層30から放出される光のピーク波長は、任意である。
【0034】
第1電極層50の一部の上にn側パッド電極55が設けられている。なお、積層方向(Z軸方向)に見たときに、第1非コンタクト部42(例えば、SiO層)は、n側パッド電極55と重なる部分を有している。
【0035】
図2は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図2に表したように、第1電極層50は、金属部51を有する。金属部51には、複数の貫通孔52が設けられている。貫通孔52は、金属部51をZ軸方向に沿って貫通している。貫通孔52は、開口部52oを有する。開口部52oの円相当直径は、10nm以上5マイクロメートル(μm)以下である。
【0036】
開口部52oをZ軸方向に沿ってみたときの面積をSとすると、円相当直径は、2×(S/π)1/2 で表される(ここで、πは円周率である)。
【0037】
実施形態において、開口部52oをX−Y平面で切断したときの形状は、円形、扁平円形、多角形、角が丸い多角形など、任意である。開口部52oの形状が円形でない場合は、上記の円相当直径の定義を用いて開口部52oを規定する。
【0038】
第1電極層50(金属部51)は、例えば、Ag、Au、Al、Zn、Zr、Si、Ge、Pt、Rh、Ni、Pd、Cu、Sn、C、Mg、Cr、Te、Se及びTiの少なくとも1つを含む。金属部51にこのような金属を用いることで、ITOなどの酸化物透明電極と比較して1桁から2桁以上高い導電率が得られる。また、第1電極層50においては、高い熱伝導性も得られる。そして、第1電極層50の金属部51には、円相当直径が10nm以上5μm以下の開口部52oを有する貫通孔52が設けられている。これにより、第1電極層50は、光透過性である。このような構成を便宜的にメッシュ電極ということにする。
【0039】
第1電極層50の厚さは、例えば、10nm以上50nm以下とすることが好ましい。これにより、高い導電率と、高い光透過率とが得られ、貫通孔52の良好な加工特性が得られる。
【0040】
例えば、第1電極層50のシート抵抗は、10(Ω/□:オーム/square)以下とすることができる。上記の構成により、このような低いシート抵抗が実現できる。
【0041】
また、第1電極層50のZ軸方向に沿ってみたときの面積は、1平方ミリメートル(mm)以上とすることができる。上記の構成により、このような広い面積においても、高い導電率と、高い光透過率とを得ることができる。
【0042】
第1電極層50と第2電極層60との間(n側パッド電極55とp側電極71との間)に所定の電圧を印加することで、発光層30から光が放出される。この光は、主として第1電極層50の側から外部に放出される。すなわち、光の一部は、第1半導体層10及び第1電極層50を介して、外部に出射する。光の別の一部は、反射性の第2電極層60で反射し、第2半導体層20、発光層30、第1半導体層10及び第1電極層50を介して外部に出射する。このように、半導体発光素子110においては、第1電極層50が形成された面が、主たる発光面として利用される。
【0043】
実施形態においては、第1中間層40において、複数の第1コンタクト部41と、第1非コンタクト部42と、が設けられることで、第1電極層50と第2電極層60とを流れる電流が狭窄される。
【0044】
図1(a)に表したように、第1電極層50と第2電極層60とを流れる電流は、非コンタクト部42を通過せず、複数の第1コンタクト部41を通る電流経路I1を流れる。このため、電流密度が上昇する。電流密度が上昇することで高い輝度が得られる。
【0045】
第1電極層50の高い導電率により、第1電極層50内でX−Y平面で十分に広がって電流が流れ、第1電極層50から第2電極層60に向けてほぼZ軸方向に沿う電流経路I1に沿って電流が流れる。第1電極層50により、電流をX−Y平面内で十分に均一に広げることができるため、例えば、電流拡散層12を薄く設定することが可能でなる。これにより、例えば順方向電圧の上昇などの悪影響を発生させることなく、複数の第1コンタクト部41における電流狭窄効果により電流密度を高めることができる。
このように、半導体発光素子110によれば、低電圧で高輝度の半導体発光素子が提供できる。
【0046】
図3は、参考例の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図3に表したように、第1参考例の半導体発光素子191においては、第1電極層50(メッシュ電極)が設けられていない。そして、第1半導体層10(この例ではn側コンタクト層13)の上に細線電極56が設けられている。図3では図示していないが、細線電極56は、n側パッド電極55と接続されている。この例では、Z軸方向に沿ってみたときに、複数の第1コンタクト部41は、細線電極56と重なっていない。
【0047】
また、図3に例示した構成において、非コンタクト部42を設けない構成を第2参考例の半導体発光素子192とする。この構成においては、ドット状の複数の第1コンタクト部41が設けられず、第2半導体層20の全面が第2電極層60と電気的にコンタクトする。
【0048】
このような構成を有する第1参考例の半導体発光素子191においては、ドット状の第1コンタクト部41を設けることで、電流経路I2で示したように、電流が狭窄される。これにより、第1参考例の半導体発光素子191においては、第2参考例の半導体発光素子192に比べて、電流密度が増加する。これにより効率が上昇する。しかしながら、この構成においては、細線電極56の直下に第1コンタクト部41が設けられていないため、抵抗損が発生する。このため、順方向電圧が上昇してしまう。
【0049】
図4は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
図4には、実施形態に係る半導体発光素子110、第1参考例の半導体発光素子191、及び、第2参考例の半導体発光素子192の特性が例示されている。図4の横軸は、順方向電圧Vfである。縦軸は、電流Icである。
【0050】
図4に表したように、半導体発光素子191においては、半導体発光素子192よりも順方向電圧Vfが上昇する。これは、上記のように、細線電極56の直下に第1コンタクト部41が設けられていないため、抵抗損が発生するためである。
【0051】
これに対して、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、順方向電圧Vfは、上昇しない。例えば、半導体発光素子110における順方向電圧Vfは、半導体発光素子192よりも低くできる。そして、電流狭窄の効果も大きく、より効率が向上し、高輝度の発光が得られる。
【0052】
すなわち、図1に関して既に説明したように、第1電極層50内でX−Y平面に十分に広がって電流が流れ、電流はほぼZ軸方向に沿う電流経路I1に沿って電流が流れるため、順方向電圧Vfが上昇しない。
半導体発光素子110によれば、低電圧で高輝度の半導体発光素子が提供できる。
【0053】
半導体発光素子110において、電流拡散層12のドーピング濃度にもよるが、電流拡散層12のシート抵抗がある程度高いと電流の広がりを抑制できて電流密度を高めることが可能となる。そのため、n側の電流拡散層12の厚さは、5μm以下が好ましい。また、電流拡散層12が薄いほうが電流の広がりをより抑えられるため1μm以下がより好ましい。電流拡散層12の厚さが薄すぎると電流をうまく注入できないため10nm以上が好ましい。
【0054】
このように、本実施形態において、第1半導体層10が、第1クラッド層11と電流拡散層12とを含む場合、電流拡散層12の厚さは、例えば、10nm以上5μm以下に設定される。または、電流拡散層12の厚さは、例えば、10nm以上1μm以下に設定される。n側の電流拡散層12のシート抵抗は、例えば、10Ω/□以上10Ω/□以下とすることができる。
【0055】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。 図5は、図1(b)のA1−A2線断面に相当する断面図である。
図5に表したように、第2の実施形態に係る半導体発光素子120は、第1の実施形態に関して説明した第1電極層50、第2電極層60、第1半導体層10、第2半導体層20、発光層30及び第1中間層40に加え、第2中間層80をさらに含む。第1電極層50、第2電極層60、第1半導体層10、第2半導体層20、発光層30及び第1中間層40に関しては既に説明したのと同様の構成を適用できるので、説明を省略する。
【0056】
第2中間層80は、第1電極層50と第1半導体層10との間に設けられる。第2中間層80は、第2コンタクト部81と、第2非コンタクト部82と、を含む。第2コンタクト部81は、積層方向(Z軸方向)に対して平行な平面に射影したときに、複数の第1コンタクト部41と重なる部分を有する。第2コンタクト部81は、第1半導体層10と第1電極層50とを電気的にコンタクトさせる。第2非コンタクト部82は、積層方向に対して垂直な第2平面80a内(X−Y平面内)において第2コンタクト部81と並置される。第2平面80aは、例えば、第2中間層80と第1電極層50との間の界面である。第2非コンタクト部82は、第1電極層50と第1半導体層10との間の電気抵抗を第2コンタクト部81よりも高くする。
【0057】
すなわち、半導体発光素子120においては、例えば、p側の第1コンタクト部41に対向する位置に、n側の第2コンタクト部81が設けられる。例えば、第2コンタクト部81は、Z軸方向に沿って第1コンタクト部41と対向する。n側の第2中間層80において、第1コンタクト部41の上方に第2コンタクト部81によるコンタクト領域を設け、それ以外の領域を第2非コンタクト部82(非コンタクト領域)とする。
【0058】
これにより、電流狭窄の効果がより高まる。これにより、より低電圧で、より高輝度の半導体発光素子を得ることができる。
【0059】
半導体発光素子120においては、n側の電流拡散層12の電流広がりを抑制するため、電流拡散層12のシート抵抗を大きく設定することできる。これにより、電流をZ軸方向に沿って実質的に直線的に流すことができ、電流密度を効果的に上げることが可能になる。さらに、余分な抵抗損は発生しないため、低い順方向電圧Vfを維持できる。
【0060】
なお、図5に示した例では、X−Y平面において連続的なn側コンタクト層13が設けられているが、n側コンタクト層13は部分的に設けても良い。例えば、電流拡散層12の上に、部分的にn側コンタクト層13となる層を設け、そのn側コンタクト層13を第2コンタクト部81として用い、n側コンタクト層13が設けられていない部分を第2非コンタクト部82として用いても良い。この場合、部分的に設けられたn側コンタクト層13以外の部分においては、例えば、電流拡散層12と第1電極層50とが接する。この領域の抵抗は、n側コンタクト層13が設けられた部分よりも高く、第2非コンタクト部82として機能する。例えば、第1半導体層10と第1電極層50とが接する界面部分が第2非コンタクト部82となる。
【0061】
すなわち、第1半導体層10は、Z軸方向に対して平行な平面に射影したときに複数の第1コンタクト部41と重なる部分を有する第2コンタクト部(部分的に設けられたn側コンタクト層13)と、X−Y平面内において第2コンタクト部と並置され第1電極層50と第1半導体層10との間の電気抵抗を第2コンタクト部よりも高くする第2非コンタクト部(n側コンタクト層13が設けられていない部分)と、を含むことができる。
【0062】
また、第2非コンタクト部82として、第1半導体層10とは別に、例えば、SiOなどの絶縁層を設けても良い。
【0063】
半導体発光素子120においても、電流拡散層12のシート抵抗がある程度高いと電流の広がりを抑制できて電流密度を高めることが可能となる。そのため、電流拡散層12の厚さは、例えば10nm以上5μm以下に設定されることが好ましい。または、電流拡散層12の厚さは、例えば10nm以上1μm以下に設定されることが好ましい。
【0064】
以下、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の例として、半導体発光素子120の製造方法の1つの例について説明する。
【0065】
図6(a)〜図6(f)は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示する工程順模式的図である。
図6(a)に表したように、p側電極71、支持基板70、第2電極層60、第1中間層40(光透過導電層41a、第1コンタクト部41及び第1非コンタクト部42)、第2半導体層20(p側コンタクト層22及び第2クラッド層21)、発光層30、及び、第1半導体層10(第1クラッド層11、電流拡散層12及びn側コンタクト層13)の積層体を形成する。この例では、支持基板70としてp形シリコンを用い、第2電極層60としてAgを用い、光透過導電層41aとしてITOを用い、第1コンタクト部41としてITOを用い、第1非コンタクト部42としてSiOを用い、p側コンタクト層22としてp形のGaPを用い、第2クラッド層21としてp形のInAlPを用い、発光層30としてInGaPを用い、第1クラッド層11としてn形のInAlPを用い、電流拡散層12としてn形のInGaAlP層を用いる。n側コンタクト層として、10nmのn形のGaP層が用いられている。
【0066】
n側コンタクト層13(n形のGaP層)の上にi線用レジスト膜を形成して、露光、現像してドット状のレジストパターン80rを形成する。このドット状のレジストパターンは、第1非コンタクト部42(SiO)のパターンと、少なくとも一部が重なっている。
【0067】
図6(b)に表したように、レジストパターン80rをマスクとして用い、レジストパターン80rに覆われていない部分のn側コンタクト層13(n形のGaP層)を、エッチャントによって除去する。除去後、レジストパターン80rを有機溶媒によって除去する。これにより、第2コンタクト部81(GaPのドットパターン)が形成される。
【0068】
図6(c)に表したように、第1コンタクト部81及び第1半導体層10の上に、第1電極層50となる金属膜50f(例えばAg膜)を40nmの厚さで蒸着法により形成する。第1コンタクト部81が設けられず、第1半導体層10と第1電極層50(金属膜50f)とが接する界面部分が第2非コンタクト部82となる。
【0069】
図6(d)に表したように、金属膜50f(Ag膜)の上に電子線用のレジスト膜(例えば、富士フイルム株式会社製:商品名FEP−301)を300nmの厚さで形成する。そして、パターンジェネレータを装備した50kVの加速電圧を持つ電子線露光装置で、開口径が100nmで200nmの間隔を有するレジスト開口部50qをレジスト膜に形成する。これによりレジスト開口部50qを有するレジスト層50rが形成される。
【0070】
図6(e)に表したように、イオンミリング装置を用いて、加速電圧500ボルト(V)、イオン電流40ミリアンペア(mA)の条件で70秒間、金属膜50f(Ag膜)のエッチングを行う。これにより、開口部52o(貫通孔52)が形成される。これにより、開口部52o(貫通孔52)を有する金属部51、すなわち、第1電極層50が形成される。エッチング後、レジスト層50rを除去するために有機溶媒で洗浄する。
【0071】
図6(f)に表したように、n側パッド電極55を形成する。ダイシングによって、切断する。これにより、半導体発光素子120が得られる。半導体発光素子120のサイズは、例えば300μm角である。
【0072】
半導体発光素子120においては、電流値が50mAの場合の順方向電圧Vfは、半導体発光素子191の順方向電圧Vfよりも、例えば、約0.2V低い。
【0073】
実施形態において、発光層30は、例えば、障壁層および井戸層が交互に繰り返し設けられたMQW(Multiple Quantum Well)構成を有することができる。また、発光層30は、井戸層を挟む障壁層の組みが1組み設けられたSQW(Single Quantum Well)構成を有することができる。
【0074】
第1半導体層10、第2半導体層20及び発光層30には、例えば、窒化物半導体を用いても良い。
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0075】
実施形態によれば、低電圧で高輝度の半導体発光素子が提供される。
【0076】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれる第1電極層、第2電極層、第1半導体層、第2半導体層、発光層、第1中間層、第2中間層及び支持基板などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0077】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0078】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0079】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
10…第1半導体層、 11…第1クラッド層、 12…電流拡散層、 13…n側コンタクト層、 20…第2半導体層、 21…第2クラッド層、 22…p側コンタクト層、 30…発光層、 40…第1中間層、 40a…第1平面、 41…第1コンタクト部、 41a…光透過導電層、 42…第2非コンタクト部、 50…第1電極層、 50f…金属膜、 50q…レジスト開口部、 50r…レジスト層、 51…金属部、 52…貫通孔、 52o…開口部、 55…n側パッド電極、 56…細線電極、 60…第2電極層、 70…支持基板、 71…p側電極、 80…第2中間層、 80a…第2平面、 80r…レジストパターン、 81…第2コンタクト部、 82…第2非コンタクト部、 110、120、191、192…半導体発光素子、 I1、I2…電流経路、 Ic…電流、 Vf…順方向電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円相当直径が10ナノメートル以上5マイクロメートル以下の開口部を有する複数の貫通孔が設けられた金属部を有する第1電極層と、
前記第1電極層と積層された光反射性の第2電極層と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間に設けられ第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2電極層との間に設けられ前記第1導電形とは異なる第2導電形の第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、
前記第2半導体層と前記第2電極層との間に設けられ前記発光層から放出される光に対して透過性を有する第1中間層であって、
前記第2電極層と前記第2半導体層とを電気的にコンタクトさせる複数の第1コンタクト部と、
前記第2電極層から前記第1電極層に向かう積層方向に対して垂直な第1平面内において前記複数の第1コンタクト部と並置され前記第2電極層と前記第2半導体層との間の電気抵抗を前記第1コンタクト部よりも高くする第1非コンタクト部と、
を有する第1中間層と、
を備えた半導体発光素子。
【請求項2】
前記第第1半導体層は、
前記積層方向に対して平行な平面に射影したときに、前記複数の第1コンタクト部と重なる部分を有する第2コンタクト部と、
前記積層方向に対して垂直な第2平面内において前記第2コンタクト部と並置され前記第1電極層と前記第1半導体層との間の電気抵抗を前記第2コンタクト部よりも高くする第2非コンタクト部と、
を含む請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1電極層と前記第1半導体層との間に設けられた第2中間層をさらに備え、
前記第2中間層は、
前記積層方向に対して平行な平面に射影したときに、前記複数の第1コンタクト部と重なる部分を有する第2コンタクト部と、
前記積層方向に対して垂直な第2平面内において前記第2コンタクト部と並置され前記第1電極層と前記第1半導体層との間の電気抵抗を前記第2コンタクト部よりも高くする第2非コンタクト部と、
を含む請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1半導体層は、
第1クラッド層と、
前記第1クラッド層と前記第1電極層との間に設けられ前記第1クラッド層の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する電流拡散層と、
を含み、
前記電流拡散層の厚さは、10ナノメートル以上5マイクロメートル以下である請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1半導体層は、
第1クラッド層と、
前記第1クラッド層と前記第1電極層との間に設けられ前記第1クラッド層の不純物濃度よりも低い不純物濃度を有する電流拡散層と、
を含み、
前記電流拡散層の厚さは、10ナノメートル以上1マイクロメートル以下である請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1電極層は、Ag、Au、Al、Zn、Zr、Si、Ge、Pt、Rh、Ni、Pd、Cu、Sn、C、Mg、Cr、Te、Se及びTiの少なくとも1つを含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記第1電極層の厚さは、10ナノメートル以上50ナノメートル以下である請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1電極層の前記積層方向に沿ってみたときの面積は、1平方ミリメートル以上である請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記第1電極層のシート抵抗は、10オーム/□以下である請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69941(P2013−69941A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208279(P2011−208279)
【出願日】平成23年9月24日(2011.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】