説明

半導体発光装置の製造方法

【課題】光取り出し効率が高く、高出力、高効率で信頼性に優れた半導体発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】AlGaInP多重量子井戸からなる活性層13を有する発光ダイオードにおいて、光取り出し層であるn型AlGaInPクラッド層12の表面に光取り出し効率向上のための凹凸構造を設ける。凹凸構造は臭化水素酸を含む水溶液をエッチャントとして用い、マスクを形成する工程を用いることなく異方性エッチングにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置の製造方法に関し、特に、光取り出し効率の高いAlGaInP系化合物半導体の発光ダイオード(LED)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(AlGa1−zIn1−xP(0≦x≦1,0≦z≦1)系の化合物半導体(以下、単にAlGaInP系半導体とも称する。)は赤色から緑色の発光が可能であり、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD:Laser Diode)などの半導体発光素子等に幅広く利用されている。これらの化合物半導体層は、一般に、格子整合するGaAs基板上にMOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いてエピタキシャル成長される。
【0003】
発光ダイオードの高輝度化を図るためには、素子からの光取り出し効率を向上させることが重要である。例えば、GaAs基板上にAlGaInP系半導体層を積層して構造においては、活性層で発光した光のうち基板方向に放射された光はGaAs基板によって吸収され、光取り出し効率の低下を招く。
【0004】
従来、例えば、仮基板上に成長した半導体発光層構造に反射金属層を設けた後、金属基板などの永久基板を貼り合わせ、光吸収基板である上記仮基板を除去する方法がある(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、発光素子の光取り出し面における全反射による光取り出し効率の低下を回避するために、光取り出し面に凹凸構造を形成して粗面化する方法がある。光取り出し面に凹凸構造を形成する方法としては、例えば塩酸、硫酸、過酸化水素、もしくはこれらの混合液を用いて粗面化する方法が知られている(例えば、特許文献2)。しかし、ウェットエッチングを用いる場合では、基板の結晶性の影響を受けるため、光取り出し面の面方位及びエッチャントの組成等にも左右され、良好な粗面化を行えるとは限らない。上記文献に記載されているGaP層はLEDの光取り出し層に広く用いられ、粗面化のための異方性エッチングも比較的容易である。しかしながら、Alを含むAlGaInP系化合物半導体のエッチングにおいては、エッチング液等の条件による影響が大きく、その調整は難しい。従って、安定的に良好な粗面化を行うのが困難であるという問題があった。
【0006】
また、ドライエッチングにより凹凸構造を形成する方法もある。例えば、SiO2等の絶縁膜を成膜した後にフォトリソグラフィ等により所望のパターンを形成し、絶縁膜をエッチングし、それをマスクにして半導体層をエッチングする一連の工程を必要とする。従って、工程が複雑である等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−98336号公報
【特許文献2】特開2000−299494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光取り出し効率が高く、高出力、高効率で信頼性に優れた半導体発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の製造方法は、臭化水素酸を含む水溶液をエッチャントとして用い、III−V族化合物半導体層からなる半導体積層構造体の光取り出し面に凹凸構造を形成することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例による発光ダイオード(LED)を示す断面図である。
【図2】本実施例による発光ダイオード10を製造する方法を示す断面図である。
【図3】光取り出し面の凹凸構造のSEMによる平面像(上面図)を示す図である。
【図4】光取り出し面の凹凸構造のSEMによる斜視像(俯瞰図)を示す図である。
【図5】光取り出し面の凹凸構造のSEMによる断面像を示す図である。
【図6】n型クラッド層の表面(光取り出し面)に形成された凹凸構造を模式的に示す断面図である。
【図7】本実施例により作製したLEDの光取り出し効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下においては、MOCVD法を用いて、GaAs基板上に第1導電型のクラッド層、AlGaInP系半導体の活性層、第2導電型のクラッド層を含む半導体積層構造体を形成した半導体発光素子及びその製造方法について図面を参照して詳細に説明する。 また、半導体層の層構造、導電型(p型、n型)、キャリア濃度、組成、層厚等は例示であり、特に示さない限り、適宜改変して適用することができる。なお、以下に説明する図において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本実施例による発光素子層を有する発光ダイオード(LED)10を示す断面図である。図2は、本実施例による発光ダイオード10を製造する方法を示す断面図である。
【0013】
図2(a)に示すように、シリコン(Si)がドープされたn型GaAs基板11上に、n型(第1導電型)の(AlzGa1-z)0.5In0.5Pクラッド層12(0≦z≦1、層厚3.0μm)を成長した。n型クラッド層12上に、活性層(発光層)13(層厚0.5μm)、p型(第2導電型)の(AlzGa1-z)0.5In0.5Pクラッド層14(0≦z≦1、層厚1.0μm)を順次成長した。ここで、n型クラッド層12、活性層13及びp型クラッド層14はGaAs成長基板11に格子整合するように成長した。
【0014】
活性層13には、多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)を用いたが、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)又は単層で構成してもよい。さらには、活性層13(量子井戸構造の場合は、ウエル層)のAl組成は0≦z≦0.4、n型クラッド層12及びp型クラッド層14のAl組成は0.4≦z≦1.0が好適に用いられる。ここでは、n型クラッド層12にはz=0.6、活性層13のウエル層にはz=0.15、p型クラッド層14にはz=0.7の(AlzGa1-z)0.5In0.5Pを用いた。そして、p型クラッド層14上にはp型GaP電流拡散層15を成長した。
【0015】
GaAs基板11には、表面モフォロジーや安定性の観点から、一般的に(100)面もしくは(100)から0〜15°傾いた面が主面(成長面)として使用される。ここでは、GaAs基板11は、(100)面が (011)A方向に15°傾いた基板、いわゆる15°オフ基板を用いた。GaAs基板11上に成長された各半導体層の表面もGaAs基板と同じオフ角を有する。なお、本発明は、上記オフ角に限定されず、0〜25°のオフ角のGaAs成長基板を用いることができる。
【0016】
次に、図2(b)に示すように、p型GaP電流拡散層15上に、SiO2層16を形成した。熱CVD法によりSiO2を成膜後、フォトリソグラフィ及びバッファードフッ酸(BHF)を用いたエッチングにより所望の形状にパターニングした。なお、SiO2層16は熱CVD法により形成したが、その他、プラズマCVD、スパッタ等により成膜することができる。また、ウェットエッチングの他、ドライエッチングを用いてSiO2膜のパターニングを行ってもよい。
【0017】
SiO2層16は、後述する反射電極層17とともに、活性層13から出射される光のうち光取り出し側とは反対側に向かう光を反射し、光取り出し効率を向上させるための反射層を構成する。なお、反射層を金属膜のみで構成した場合には、オーミック接触を得るための合金化工程において、半導体と電極金属界面での合金層の形成によってモフォロジーの悪化を招来し、又は電極材料の拡散によって反射率の低下を招来する。SiO2層16の層厚は、高反射率が得られるようにシミュレーションにより求め、ここでは、90nm(ナノメートル)とした。
【0018】
SiO2膜のパターニングによりSiO2層16を形成後、反射電極層17を形成した。上述したように、製造後の半導体発光素子において、反射電極層17は電極としてのみならず、SiO2層16とともに反射層として機能する。
【0019】
反射電極層17は、電流拡散層15とのオーミック接合を形成可能な金属を用い、スパッタ法により、AuZnを厚さ300nmに成膜した。なお、スパッタ法に限らず、抵抗加熱蒸着法、EB(電子ビーム)蒸着法、などを用いて反射電極層17を形成してもよい。
【0020】
なお、SiO2層16は、Al23やSiNxなどの他の透明な誘電体層で置き換えても良い。その場合は、反射率を考慮して、適宜層厚を決定する。また、反射電極層17も、他の高反射性金属材料で形成してもよい。
【0021】
次に、反射電極層17上にバリア層18を形成した。より詳細には、スパッタ法により、TaN,TiW,TaNを順次積層した。層厚は、例えばそれぞれ100nmである。バリア層18は、Ta,Ti,W等の高融点金属もしくはそれらの窒化物(TaN等)からなる単層又は多層膜で構成することができる。成膜法としては、スパッタ法の他、EB蒸着法などを用いることができる。
【0022】
バリア層18は、AuZn中のZnが外方拡散するのを防ぐと同時に、後工程において共晶材料が反射電極層17に拡散することを防止する。すなわち、共晶材料の拡散によって順方向電圧(Vf)の上昇等の電気特性の劣化や、反射率の低下による輝度の低下を招来する。
【0023】
次に、窒素雰囲気下で約500℃の温度で熱処理(合金工程)を行った。これにより、SiO2層16の開口部において電流拡散層15と反射電極層17間の良好なオーミック接合が形成された。
【0024】
合金工程の後、接着層19をEB蒸着法により形成した。ここでは、接着層19としてNi,Au(膜厚はそれぞれ300nm、30nm)を用いた。なお、抵抗加熱法、スパッタ法により蒸着してもよい。接着層19は、半導体積層体20Aと導電性支持基板20Bとを熱圧着する工程(後述する)において、導電性支持基板20Bの共晶接合層25との濡れ性を良くし、良好な接合層29を形成するためのものである。なお、ここで、GaAs成長基板11、半導体積層構造15A(すなわち、n型クラッド層12、活性層13、p型クラッド層14及び電流拡散層15)、SiO2層16、反射電極層17、バリア層18及び接着層19の積層構造を半導体積層体20Aと称する。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、導電性支持基板20Bを形成した。より詳細には、導電性基板21の一方の主面にオーミック金属層22Aを蒸着し、もう一方の面にオーミック金属層22B、密着層23、接着層24、共晶接合層25を順次蒸着した。導電性基板21としてp型不純物を高濃度にドープしたSi基板を用い、オーミック金属層22A、22BにはPt(膜厚200nm)を用いた。オーミック金属層22A、22Bの膜厚は、例えば25〜300nmとすることができる。この組合せにおいては、オーミック金属層22A、22Bを蒸着するのみでオーミック特性が得られるが、後述する熱圧着の工程で加熱されることにより導電性基板21への密着性が向上する。
【0026】
なお、導電性基板21はSi基板に限らず、導電性で熱伝導率が高い材料、例えばAl,Cuなどを用いることができる。また、オーミック金属層22A、22BはPtの他に、Au,Ni,Ti等の導電性基板21とのオーミック接合が形成可能な金属を用いることができる。その場合、導電性基板21とのオーミック接合を得るため、窒素雰囲気下における合金化工程を行ってもよい。
【0027】
密着層23、接着層24は、例えば、Ti、Niとし、膜厚はそれぞれ150nm、100nmとした。尚、Ti及びNiの膜厚はそれぞれ100−200nm、50−150nmとしてもよい。また、接着層24は、Niに代えてNiV、Pt等を使用することができる。
【0028】
これらの層を具備することにより、導電性基板21の密着信頼性を高めるとともに、後述する半導体積層体20Aと熱圧着する工程において濡れ性を向上させ、AuSn層のボールアップを防止することができる。
【0029】
また、共晶接合層25にはAuSnを用い、膜厚は600nmとしたが、300−3000nmの範囲内であってもよい。AuSnの組成は、Au:Sn=80wt%:20wt%(=約70at%:30at%)であることが好ましい。また、共晶接合層25は、AuSnを主成分として添加物が加えられていてもよく、あるいはSnを含まないAuのみでもよい。なお、蒸着法は、抵抗加熱法、EB蒸着法、スパッタ法などを用いることができる。
【0030】
次に、図2(d)に示すように、半導体積層体20Aと導電性支持基板20Bとを、例えば熱圧着により接合する。熱圧着とは、共晶材料が溶融する温度と圧力を加えることにより、共晶接合層25(AuSn層)と接着層19(NiAu層)が新たな接合層29(AuSnNi)を形成し、半導体積層体20Aと導電性支持基板20Bとを接合する方法である。図2(d)に示すように、接合は、半導体積層体20Aの接着層19と導電性支持基板20Bの共晶接合層25を対向して密着させ、330℃、窒素雰囲気下で1MPa(Pa:パスカル)の圧力で10分間保持することにより行った。
【0031】
なお、上記した接合材料、接合時の雰囲気、接合温度、及び接合時間は例示に過ぎず、これらに限定されない。すなわち、使用する共晶材料が溶融し、その特性に変化(例えば、酸化等による接合強度の低下)を及ぼすことが無く、半導体積層体20Aと導電性支持基板20Bとを接合するのに十分であればよい。
【0032】
次に、図2(e)に示すように、半導体積層体20Aと導電性支持基板20Bとを接合した後に成長基板11を除去した。ここでは、アンモニア・過酸化水素混合エッチャントを用いたウェットエッチングにより除去した。なお、成長基板11の除去はウェットエッチングに限らず、ドライエッチング、機械研磨法、化学機械研磨(CMP)、又はこれらの組合せにより行うことができる。
【0033】
次に、図2(f)に示すように、成長基板11を除去した後、n型AlGaInPクラッド層12の表面(すなわち、光取り出し面)に光取り出し効率向上のための凹凸構造31を形成した。すなわち、本実施例の場合、n型AlGaInPクラッド層12を光取り出し層としてその表面に凹凸構造31を形成した。
【0034】
エッチャントとして臭化水素酸(HBr:48%)を含む水溶液を用いて粗面化を行った。臭化水素酸と水の配合比率(体積比)を、臭化水素酸:水=1:4とし、20℃で25分間のエッチングを行った。
【0035】
MOCVD法で表面モフォロジー等を悪化させることなく成長可能なn型AlGaInPクラッド層12の最大層厚(例えば、3μm)以上エッチングされない範囲で適宜エッチング時間を調整した。具体的には、エッチング量が少ないと凹凸構造31の形状が不完全となり、エッチング量が多すぎるとn型AlGaInPクラッド層12の層厚が薄くなり、電流拡散が悪くなる。例えば、エッチング量は0.5〜1.0μmが好適に用いられる。なお、SiO2を用いて、後述する電極が形成される領域に保護マスクを形成してエッチングを行った。
【0036】
続いて、n型AlGaInPクラッド層12上に、オーミック接合を形成する表面電極(n電極)32を形成した。ここでは、n型半導体とオーミック接合を形成する材料としてAuGeNiを用いた。なお、これに限らず、AuGe、AuSn、AuSnNi等を用いることもできる。より詳細には、表面電極32の金属材料は、抵抗加熱法により蒸着した。なお、EB蒸着法、スパッタ法等により蒸着してもよい。次に、リフトオフ法を用いて、n型AlGaInPクラッド層12上の凹凸構造31を形成していない領域に表面電極32を形成した。さらに、窒素雰囲気下で約400℃の熱処理による合金化を行い、n型AlGaInPクラッド層12と表面電極(n電極)32との間の良好なオーミック接合を形成した。上記工程を経て、半導体発光素子(LED)用ウエハを作製し、ダイシングにより個々の素子に分離してLEDを作製した。
【0037】
[粗面化による凹凸構造]
上記した本実施例の異方性エッチングにより形成された、n型AlGaInPクラッド層12の表面(すなわち、光取り出し面)上の凹凸構造31の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)像を図3−5に示す。図3は凹凸構造31の平面像(上面図)であり、図4は45°斜視像(俯瞰図)であり、図5は断面像である。さらに、図6はn型AlGaInPクラッド層12の表面(光取り出し面)に形成された凹凸構造31を模式的に示す断面図である。なお、図6は、半導体積層構造体の(0−11)面に沿った断面を模式的に示している。
【0038】
これらの図を参照して異方性エッチング及び凹凸構造31について以下に説明する。化合物半導体結晶の表面に、ウェットエッチングにより凹凸構造31が形成されるためには、用いるエッチング液が特定方位の結晶面と他の方位の結晶面とに対してエッチング速度が異なること、すなわちエッチング速度が面方位に依存した異方性エッチングが行われなければならない。異方性エッチングが進行した結晶表面は、結晶構造特有の幾何学に由来した凹凸構造を生じる。閃亜鉛鉱型(Zincblende)結晶構造を有するIII−V族化合物半導体の場合、異方性エッチングにより、一般的に{111}面が露出しやすい傾向にある。このようなエッチング液を用いて形成される凹凸構造は、エッチング液組成やエッチング条件(エッチング温度や時間)により異なる形状に形成される。
【0039】
図3−5に示すように、前述のエッチング液を用いて光取り出し面に形成された凹凸構造31の各凸部33は、複数の平面から形成された多面体形状を有している。より詳細には、図6に模式的に示すように、凹凸構造31の各凸部33は、エッチングによって露出した2つの結晶面(ファセット)33A及び33Bを含む複数の面からなっている。そして、当該2つのファセット33A及び33Bは、光取り出し面である(−100)オフ面(すなわち、(−100)面からオフ角だけ傾斜した面。図中、(−100)offと表記)とそれぞれφ1及びφ2の角度をなしている。なお、前述のエッチング液を用いて光取り出し面に形成された凹凸構造31を構成する結晶格子面は主に{111}面であるが、{221}面等の高次面もしくは{111}と高次面との複合面であってもよい。
【0040】
(−100)オフ面とある角度φ1,φ2(すなわち、0°<φ1,φ2<90°、φ1<φ2)をなすように2つのファセット(斜面)33A及び33Bが形成される場合、素子の主表面(光取り出し面)における全反射が低減されて、光取り出し効率が増加する。なお、図中において(−100)ジャスト面(図中、(−100)justと表記)を一点鎖線で示している。そして、(−100)ジャスト面と(−100)オフ面とのなす角度が基板のオフ角である。
【0041】
図7は、本実施例により作製したLEDの光取り出し効率を示すグラフである。より詳細には、前述のエッチャントの配合比率(すなわち、濃度)に対する光取り出し効率及び凸部33のファセット33Aの(−100)オフ面となす角度の関係を示している。なお、光取り出し効率は、光取り出し面が未加工(すなわち、凹凸構造を形成しない場合)の場合を1.0として示している。
【0042】
より詳細には、臭化水素酸(48%)と水との配合比率が1:2、1:3、1:4、1:5の場合、光取り出し面(素子の主表面)とのなす角φ1は、それぞれ12.4°、19.2°、19.6°、20.3°(deg)であった。臭化水素酸の濃度を低くするとφ1は増加し、配合比率が1:3ないし1:5の範囲では、一定となる。
【0043】
図7に示すように、光取り出し効率についても、光取り出し面(素子の主表面)とのなす角φ1と同様な傾向を示している。臭化水素酸(48%)と水との配合比率が1:2の場合、光取り出し効率は1.35(すなわち、凹凸構造を形成しない場合より、35%増加)であるが、配合比率を1:3ないし1:5(臭化水素酸(100%に換算)では、配合比率が1:6〜1:10)として濃度を低くすると光取り出し効率は増加し、この範囲で光取り出し効率は約1.50とほぼ一定の値を示している。
【0044】
従って、臭化水素酸(100%)と水の比率は1:6〜1:10が好ましい。また、エッチングによって露出したファセット33A又は33Bが光取り出し面とのなす角φ1は15°以上が好ましい。また、φ1の具体的な測定値は上記した通りであるが、測定誤差を考慮すると、φ1は15°ないし21°の範囲内であることがさらに好ましい。また、より一層好ましくは、φ1は19°ないし21°の範囲内である。
【0045】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、Alを含むAlGaInP系化合物半導体のエッチングにおいて、異方性エッチングにより、安定的に光取り出し効率の高い光取り出し構造を形成することが可能である。また、AlGaInP系化合物半導体からなる半導体素子の表面に、異方性エッチングにより、特にマスクを形成する工程を必要とせず凹凸構造(光取り出し構造)を形成することが可能である。従って、高輝度の発光素子(LED)を提供することができる。製造工程も簡略であり、製造歩留まりも高く、低コスト化にも寄与する。
【符号の説明】
【0046】
11 成長基板
12 n型クラッド層
13 活性層
14 p型クラッド層
15 電流拡散層
15A 半導体積層構造
20A 半導体積層体
20B 支持基板
31 凹凸構造
33 凹凸構造の凸部
33A,33B ファセット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
III−V族化合物半導体層の半導体積層構造体からなる発光素子の製造方法であって、
臭化水素酸を含む水溶液をエッチャントとして用い、前記半導体積層構造体の光取り出し面に凹凸構造を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記エッチャントにおける、臭化水素酸と水の比率が1:6〜1:10の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記エッチャントによるエッチングによって露出したファセットが前記光取り出し面となす角が15°以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記III−V族化合物半導体はアルミニウム(Al)を組成として含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記III−V族化合物半導体はAlGaInP系化合物半導体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1に記載の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−175052(P2012−175052A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38451(P2011−38451)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】