説明

半導体素子及び半導体素子の製造方法

【課題】p型化が容易で、且つ発光特性を損なわないZnO系の半導体素子及び半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】MgxZn1-xO(0≦x<1)を主成分とする半導体層2を備え、半導体層2に含まれる不純物としてのマンガン(Mn)の濃度が1×1016cm-3以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛系の半導体素子に係り、特にアクセプタドーピングが行われる半導体素子及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)系の半導体は、ホールと電子の結合体である励起子の結合エネルギーが大きい(60meV)。このため、励起子が室温でも安定して存在でき、高効率で、かつ単色性に優れた光子の放出が可能である。そのため、照明やバックライト等の光源として用いられる発光ダイオード(LED)、高速電子デバイス、或いは表面弾性波デバイス等へのZnO系半導体の応用が進められている。ここで、「ZnO系」とは、ZnOをベースとした混晶材料であり、Zn(亜鉛)の一部をIIA族若しくはIIB族で置き換えたもの、O(酸素)の一部をVIB族で置き換えたもの、またはその両方の組み合わせを含むものをいう。
【0003】
しかし、p型不純物を含む、例えばMgxZn1-xO(0≦x<1)からなるZnO系半導体をp型半導体として利用する場合には、ZnO系半導体にドープしたアクセプタドーパントの活性化が困難であり、p型のZnO系半導体を得ることが難しいという問題があった。技術の進歩により、p型のZnO系半導体を得ることができるようになり、発光も確認されるようになってきたが、これらではScAlMgO4という特殊な基板を使用しなければならない等の制約がある(例えば、非特許文献1、2参照。)。このため、ZnO基板上に形成されたp型のZnO系半導体膜を実現することが産業上望まれている。
【非特許文献1】ツカザキ(A.Tsukazaki)、他 著、「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス、第44巻 (Japanese Journal of Applied Physics vol.44) 」、2005年、p.643
【非特許文献2】ツカザキ(A.Tsukazaki)、他 著、「ネイチャー・マテリアルズ、4巻 (Nature Materials 4) 」、2005年、p.42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ZnO基板を用いた場合にもp型のZnO系半導体を容易に得ることはできない。ZnO系半導体に発生した自由キャリアを捕獲する捕獲中心が存在する場合、この捕獲中心によりZnO系半導体のp型化が阻害される。一般に、遷移金属は半導体中で捕獲中心であることが多い。発明者らは金属材料を固くする目的でよく使われるマンガン(Mn)がZnO中によく取り込まれることを見出した。つまり、ZnO系半導体中のMn原子数が多い場合に、ZnO系半導体のp型化が困難であるという問題がある。更に、ZnO系半導体を発光層として使用した場合の発光特性や、キャリア輸送特性にも悪影響がある。
【0005】
上記問題点を鑑み、本発明は、p型化が容易で、且つ発光特性を損なわないZnO系の半導体素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、MgxZn1-xO(0≦x<1)を主成分とする半導体層を備え、半導体層に含まれる不純物としてのマンガンの濃度が1×1016cm-3以下である半導体素子が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、Mn濃度が5000ppm以下の材料からなる基板ホルダーに基板を搭載するステップと、基板ホルダーに搭載された基板上に、MgxZn1-xO(0≦x<1)からなる半導体層を結晶成長させるステップとを含む半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、p型化が容易で、且つ発光特性を損なわないZnO系の半導体素子及び半導体素子の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本発明の実施の形態に係る半導体素子は、図1に示すように、MgxZn1-xO(0≦x<1)を主成分とする半導体層2を備え、半導体層2に不純物として含まれるマンガン(Mn)の濃度が1×1016cm-3以下である。半導体層2は、意図しない不純物を除けば、アンドープのMgxZn1-xO、或いは、n型不純物若しくはp型不純物を含むMgxZn1-xOからなる。
【0012】
半導体層2に含まれるp型不純物は半導体層2にアクセプタドーピングされた不純物であり、例えば窒素(N)、銅(Cu)、リン(P)等が採用可能である。半導体層2に含まれるn型不純物には、例えばアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)等のIII族半導体等が採用可能である。
【0013】
半導体層2は、基板1の基板主面111上に配置される。基板1は、例えばMgyZn1-yO(0≦y<1)等が採用可能である。ZnO系半導体は、窒化ガリウム(GaN)等と同様に、ウルツァイトと呼ばれる六方晶構造を有する。したがって、基板1及び半導体層2の結晶構造は六方晶系される。ここで、基板主面111はc面とする。そのため、基板主面111上にMgxZn1-xOを成長して形成される半導体層2の主面はc面となる。図2に、六方晶の結晶構造を示す。図2は、六方晶の結晶構造のユニットセルを示す模式図である。
【0014】
図2に示すように、六方晶系のc軸(0001)は六角柱の軸方向に延伸し、このc軸を法線とする面(六角柱の頂面)がc面{0001}である。c面は、+c軸側と−c軸側とで異なる性質を示し、極性面(Polar Plane)と呼ばれる。六方晶構造の結晶では、分極方向がc軸に沿っている。
【0015】
六方晶系においては、六角柱の側面がそれぞれm面{1−100}であり、隣り合わない一対の稜線を通る面がa面{11−20}である。m面やa面は、c面に対して垂直な結晶面であり、分極方向に対して直交しているため、極性のない平面、すなわち、非極性面(Nonpolar Plane)である。
【0016】
半導体層2のMnの濃度、二次イオン強度は、例えば四重極型質量分析を用いた2次イオン質量分析(SIMS)によって測定される。図3に、四重極型質量分析を用いてSIMSを行う装置の構成例を示す。一次イオンが照射された固体試料50から、スパッタリング現象により固体試料を構成する物質が真空中に放出される。放出された物質は、磁場を通過することで特定質量の二次イオンのみが四重極分析計60を通過して検出器70に入射され、元素分析が行われる。四重極型質量分析を使用したSIMSの場合、固体試料を設置する試料台の電位は通常接地されるため、一次イオン引き出しエネルギーがそのまま入射エネルギーとなる。このため、高い深さ分解能が要求される場合に、一次イオンの加速エネルギーを極限まで低くして分析することが可能である。
【0017】
既に説明したように、自由キャリアを捕獲する捕獲中心となるMn原子が半導体層2に多く含まれる場合、半導体層2のp型化が阻害される。そのため、半導体層2に含まれるMnの原子数を抑制することにより、半導体層2のp型化が容易になる。
【0018】
現在、MgxZn1-xO膜を含むZnO系半導体膜を高純度に形成するために、分子線エピタキシー(MBE)法を採用するのが一般的である。MBE法は、原料として元素材料を使用するため、化合物材料を使用する有機金属気相成長(MOCVD)法に比べて、原料の時点での純度を上げることができる。
【0019】
本発明の実施の形態に係る半導体素子を形成するMBE法に使用可能な薄膜形成装置の例を図4に示す。図4に示す薄膜形成装置は、基板1を加熱する加熱源10、基板1を保持する基板ホルダー20、基板1上に形成する半導体層2の原料を供給するセル11及びセル12を備える。加熱源10には、赤外線ランプ等が採用可能である。
【0020】
図4に示した例では、セル11から亜鉛(Zn)が供給される。セル12はラジカル発生器であり、ZnO膜等の気体元素を含む化合物の結晶成長についてMBE法を適用する場合に使用される。ラジカル発生器は、通常、PBN(pyrolytic boron nitiride)や石英からなる放電管121の外側周囲を高周波コイル122が取り巻いた構造であり、高周波コイル122は高周波電源(不図示)に接続する。図4に示した例では、セル12内部に供給された酸素(O)に高周波コイル122によって高周波電圧(電界)が印加されてプラズマが発生し、プラズマ粒子(O*)がセル12から供給される。
【0021】
基板ホルダー20の材料には、一般的に、耐熱性や耐酸化性に優れたニッケル(Ni)ベースの合金であるインコネルや、セラミック等が採用可能である。結晶成長装置の基板ホルダーに使用されることの多いステンレス鋼(SUS)材は、ZnO等の酸化物結晶成長においては高温化で腐食するため、本発明の実施の形態に係る半導体素子を形成するMBE法では使用できない。インコネルには多数の種類があるが、鉄(Fe)が主体のSUSと異なり、Niが主体であることが共通しており、Mn、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、Fe等とNiとの合金である。ただし、基板ホルダー20に含まれるMnが結晶成長時に半導体層2に混入して半導体層2のp型化を阻害することを防止するため、以下に説明するように基板ホルダー20に使用するインコネルの材料には注意が必要である。
【0022】
図5(a)〜図5(d)に、インコネル板を大気中で1000℃に熱して表面が黒くなるまで酸化させた後、その断面を走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置を組み合わせたSEM−EDXで観測した結果を示す。図5(a)〜図5(d)は、インコネル板断面の酸素(O)、Cr、Mn、Niの各元素をそれぞれ示したものであり、各図の上側がインコネル板の表面である。図5(a)〜図5(d)に示すように、酸化されたCrとMnがインコネル板の表面に存在している。Cr酸化物が非常に昇華しにくい材料であるのに対し、Mn酸化物は昇華しやすい材料である。
【0023】
図6(a)及び図6(b)に、Mnを含むインコネルを基板ホルダー20に採用した薄膜形成装置を用いてZnOからなる基板1上にMgZnOからなる半導体層2を形成し、この半導体層2の元素濃度及び2次イオン強度を、四重極型質量分析を用いたSIMSによって測定した結果の例を示す。図6(a)は、加熱源10として用いたヒータの入力電力を740Wとして、基板ホルダー20の温度が1043℃であった場合の分析結果である。図6(b)は、ヒータの入力電力を510Wとして、基板ホルダー20の温度が860℃であった場合の分析結果である。図6(a)、図6(b)において、グラフ右端側のMgの2次イオン強度が低い領域がZnO基板のデータである。図6(a)、図6(b)のいずれの場合も、基板1と半導体層2との間にMnが高濃度で存在している。そして、ヒータの入力電力が高く、基板ホルダー20が高温になるほど、半導体層2中のMn濃度が高い。薄膜形成装置では、基板ホルダー20が基板1の最も近くに存在する。このため、基板ホルダー20からMnが基板1に供給されると考えられる。
【0024】
図6(a)及び図6(b)において、基板1との界面と比べて成膜中のMn濃度が低いのは、酸素が供給されている状態ではMn酸化物が昇華されにくいためと考えられる。基板1は、水分等を除去するために、基板ホルダー20に保持された状態で、成膜前に真空中で結晶成長温度より高い温度でアニールされる。そのため、このアニール時に基板ホルダー20の表面のMn酸化物が昇華して、基板1の表面に付着すると考えられる。
【0025】
以上に説明したように、図5(a)〜図5(d)及び図6(a)〜図6(b)から、Mnを含むインコネルを図4に示した薄膜形成装置の基板ホルダー20に採用して基板1上にZnO系半導体からなる半導体層2を結晶成長させる場合に、基板ホルダー20から半導体層2にMnが意図しない不純物として供給されることが明らかとなった。
【0026】
Mnが混入したZnO膜ではキャリアが欠乏し、且つ、通常は150cm2/Vs程度のキャリア移動度が数十cm2/Vs程度に低下する。図7(a)、図7(b)に、Mn不純物濃度が異なる、ZnO基板上の半導体層2を積層したサンプルの室温フォトルミネセンス(PL)積分強度を比較する。ここでいうPL積分強度とは、340nm〜420nmの範囲でPL強度を積分した室温での積分強度である。図7(a)はPL積分強度が1700のサンプルの、図7(b)はPL積分強度が8300のサンプルの、Mnの二次イオン強度とAl濃度を示す。図7(a)、図7(b)から、Mnの二次イオン強度が小さいほど、PL積分強度が大きいことがわかる。つまり、半導体層2のMnの二次イオン強度が大きいほど、発光特性が低下する。
【0027】
以上に示したような、Mnが多く混入したZnO膜ほどキャリア移動度や発光特性が低下することは、Mnが自由キャリアの捕獲中心になっていることを示している。したがって、アンドープ、n型、p型のZnO系半導体の発光特性やキャリア輸送特性を劣化させないため、及びZnO系半導体のp型化のためには、ZnO系半導体が含有するMn数が少ないほど好ましい。
【0028】
含有するMn数が抑制されたZnO系半導体からなる半導体層2は、シリコンカーバイト(SiC)等のセラミックからなる基板ホルダー20を採用することで、実現可能である。図8に、基板ホルダー20にSiCを採用した薄膜形成装置によって図1に示した半導体素子を形成し、四重極型質量分析を用いたSIMSによって半導体層2の2次イオン強度を測定した結果の例を示す。図8に示すように、半導体素子には炭素(C)、シリコン(Si)及び水素(H)が存在するが、Mn濃度は1×1016cm-3以下である。更に、図6(a)及び図6(b)の場合のような基板1と半導体層2との間にMnが高濃度で存在するという現象もみられない。つまり、SiCからなる基板ホルダー20を採用することで、半導体層2のp型化が容易である。
【0029】
或いは、インコネルの耐熱性、耐酸化性の要因であるNiからなる基板ホルダー20を採用することで、含有するMn数が抑制された半導体層2を実現可能である。図5(d)に示したように、インコネル中のNiはほとんど酸化されない。図9に、Niからなる基板ホルダー20を採用した薄膜形成装置によって図1に示した半導体素子を形成し、四重極型質量分析を用いたSIMSによって半導体層2に含まれる元素の濃度、2次イオン強度を測定した結果の例を示す。図9中のMgの2次イオン強度は、基板1と半導体層2との境界を示すマーカーの役目を果たす。図9に示すように、Mn濃度は1×1016cm-3以下である。更に、図6(a)及び図6(b)の場合のような基板1と半導体層2との間にMnが高濃度で存在するという現象もみられない。このため、半導体層2のp型化が容易である。
【0030】
本発明の実施の形態に係る半導体素子では、半導体層2に意図しない不純物として含まれるMn原子数が抑制され、四重極型質量分析を用いたSIMSによって測定されるMn濃度は1×1016cm-3以下である。つまり、半導体層2には自由キャリアを捕獲する捕獲中心となるMnが少ないため、窒素等のアクセプタドーピングによって容易に半導体層2のp型化ができる。そして、Mnを含まないアンドープ、n型或いはp型化された半導体層2を用いて、照明、バックライト等の光源として使用される紫外LED、ZnOを使用した高速電子デバイス、表面弾性波デバイス等が実現可能である。
【0031】
以下に、Niからなる基板ホルダー20を採用した薄膜形成装置を用いた図1に示した半導体素子の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体素子の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。ここで、基板ホルダー20のMn濃度は3000ppm以下である。
【0032】
(イ)+c面を主面とする、例えばZnOからなる基板1を塩酸でエッチングし、純水洗浄した後、ドライ窒素で乾燥させる。
【0033】
(ロ)基板1を基板ホルダー20にセットし、ロードロックから薄膜形成装置に入れる。
【0034】
(ハ)1×10-7Pa程度の真空中で、900℃、30分の条件で基板1を加熱する。
【0035】
(ニ)基板温度を800℃まで下げ、NOガス、O2ガスをセル12に供給してプラズマを発生させ、予め所望の組成になるように調整したMg、Znと共にプラズマを供給して基板1上にMgxZn1-xOからなる半導体層2を成長させる。
【0036】
(ホ)その後、半導体層2にp型不純物をドープする。例えば、p型不純物として窒素を採用したアクセプタドーピングを行う。
【0037】
上記の説明では、Niからなる基板ホルダー20を採用する例を示したが、Mn濃度が、結晶成長中に半導体素子にMnが混入しない程度、例えば5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下の金属或いはセラミックからなる基板ホルダー20であれば、本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造に採用可能である。例えば、SiCからなる基板ホルダー20等が採用可能である。
【0038】
上記に説明した方法で製造したMgZnOの窒素ドープ量が5×1018cm-3程度の場合に、ZnO上にMgZnOとシリコン酸化膜(SiO2)を積層したMOS構造のCV測定によって測定したアクセプタ濃度(NA)とドナー濃度(ND)との濃度差「NA−ND」の値は、6×1015原子/cm3〜2×1016原子/cm3程度で安定している。一方、Mnを含むインコネルを基板ホルダー20に採用した薄膜形成装置によって製造したMgZnOを含む上記MOS構造では、CV測定によって測定される濃度差「NA−ND」の値が1×1013原子/cm3〜1×1014原子/cm3程度であり、明らかにキャリア欠乏が生じており、MgZnO中に捕獲中心があると考えられる。
【0039】
以上に説明したように、本発明の実施の形態に係る半導体素子の製造方法によれば、Mnを含まない或いはMn濃度の低い基板ホルダー20を採用した薄膜形成装置を使用することにより、意図しない不純物として含まれるMn濃度が1×1016cm-3以下に抑制された半導体層2を有する半導体素子を製造できる。この半導体層2は、自由キャリアを捕獲する捕獲中心となるMnが少ないため、窒素等のアクセプタドーピングによるp型化が容易である。
【0040】
本発明では、ZnO系半導体のp型化を阻害する捕獲中心となるMnが基板ホルダー20から半導体素子に供給されることを明らかにし、Mnを含まない、若しくは含まれるMnが少ない基板ホルダー20を採用することで、容易にp型化ができる半導体素子を実現できることを示した。
【0041】
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体素子の構成を示す模式図である。
【図2】六方晶構造を説明するための模式図である。
【図3】四重極型質量分析を用いてSIMSを行う装置の構成例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る半導体素子を製造する薄膜形成装置の例を示す模式図である。
【図5】酸化させたインコネル板の断面をSEM−EDXで観察した結果を示す写真である。
【図6】Mnを含む基板ホルダー20を用いて形成したMgZnOをSIMSにより分析した結果の例を示すグラフである。
【図7】Mnの二次イオン強度とPL積分強度との関係を説明するためのグラフである。
【図8】SiCからなる基板ホルダー20を用いて形成したMgZnOをSIMSにより分析した結果の例を示すグラフである。
【図9】Niからなる基板ホルダー20を用いて形成したMgZnOをSIMSにより分析した結果の例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1…基板
2…半導体層
10…加熱源
11、12…セル
20…基板ホルダー
50…固体試料
60…四重極分析計
70…検出器
111…基板主面
121…放電管
122…高周波コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgxZn1-xO(0≦x<1)を主成分とする半導体層を備え、前記半導体層に含まれる不純物としてのマンガンの濃度が1×1016cm-3以下であることを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記半導体層がp型不純物を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
MgyZn1-yO(0≦y<1)からなる基板を更に備え、前記半導体層が前記基板上に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記p型不純物が窒素であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体素子。
【請求項5】
マンガン濃度が5000ppm以下の材料からなる基板ホルダーに基板を搭載するステップと、
前記基板ホルダーに搭載された前記基板上に、MgxZn1-xO(0≦x<1)からなる半導体層を結晶成長させるステップ
とを含むことを特徴とする半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−60098(P2009−60098A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204716(P2008−204716)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】