説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】SiC基板上に、通常のシリコン酸化膜形成技術によってゲート絶縁膜を形成した場合、良好な電気的な特性を持つゲート酸化膜が得られない。
【解決手段】SiC基板上におけるゲート絶縁膜中の炭素含有量を減少させることによって、ヒステリシスが小さく、高耐圧の膜を得ることができた。このため、プラズマ処理装置を用いて、SiC基板上にシリコン酸化膜を形成した後、窒素原子を含むラジカルに、形成されたシリコン酸化膜を曝して改質を行うことにより、電気的特性の優れたゲート絶縁膜を得ることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関し、特にSiCを主成分とする半導体領域上にゲート絶縁膜を有する半導体装置およびかかる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスとして現在広く使われているのは、Si(シリコン)を用いたMOSデバイスであるが、パワーデバイスとして用いるには、耐圧が低いという欠点がある。耐圧を増加させるにはドリフト領域を長くしかつその濃度を下げる手段がとられるが、それにも上げられる耐圧には限度があるし、またそれによってON抵抗が高くなるという問題がある。そのためシリコンを用いたIGBTが商用化されているが、スイッチング速度が遅いという問題がある。そのため、シリコンに比べて約10倍の耐圧を有するSiCが注目されている。オン抵抗も、同一耐圧で比較すればSiデバイスの100〜500分の一であり、また熱伝導率もSiCはSiの約3.3倍であるから高温動作デバイスとしても優れている。特許文献1(WO97/39476)には、高パワーデバイス・高温デバイス・耐環境性デバイスなどの半導体素子に応用可能なSiC素子及びその製造方法について開示されている。
【0003】
SiCを用いてMOS(金属/絶縁膜/SiC)構造のトランジスタを実現する場合に、そのゲート絶縁膜には、低リーク電流特性、低界面準位密度、高耐圧性など、様々な高性能電気特性および高信頼性特性が要求される。
【0004】
これらの要求を満たすゲート絶縁膜形成技術を確立しようと、従来は、酸素分子や水分子を使用した約1200℃程度以上の熱酸化、ウェット酸化技術が用いられてきた。
【0005】
従来、このような熱酸化、ウェット酸化技術を使用してSiC表面にシリコン酸化膜を形成した場合、シリコン表面のシリコン酸化膜に比べて界面準位密度が著しく高いことからチャネル抵抗が大きくなってしまい、高移動度の高性能SiC MOSトランジスタの実現が阻害されていた。すなわち、SiCは六方晶であり、シリコンの(100)面に相当する面は存在せず、従来の熱処理による方法で絶縁膜を形成した場合、界面準位が著しく大きいものしか得られない。
【0006】
こうした、従来の熱酸化工程における課題を解決しようとして様々なプロセスが試みられている。なかでも、特許文献2(特開2004−319907)記載の技術では、プラズマ中に不活性ガスと酸素気体分子を導入して、大きな準安定準位を有する不活性ガスに酸素分子の原子状化を効率的に行わせることで、原子状酸素Oラジカルによるシリコン表面の酸化を行っている。この技術はシリコンにおいては、不活性ガスのクリプトン(Kr)と酸素(O)混合ガスにマイクロ波を照射し、KrとO混合プラズマを発生させ原子状酸素Oラジカルを大量に生成して400℃程度の温度でシリコンの酸化を行い、従来の熱酸化に匹敵する低リーク電流特性、低界面準位密度、高耐圧を実現している。また、この酸化技術によれば(100)面以外のほかの面方位を有するシリコン表面にも高品質な酸化膜が得られる。
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO97/39476
【特許文献2】特開 2004−319907
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、こうしたマイクロ波励起プラズマによるSiC表面のシリコン酸化膜形成技術では、従来の熱酸化、ウェット酸化技術で形成したシリコン酸化膜と比べて良好な電気的特性を得ることができなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、SiCを主成分とする半導体領域上に低界面準位密度のゲート絶縁膜を有する半導体装置を提供することにある。
【0010】
本発明者等は、マイクロ波励起プラズマによるSiC表面のシリコン酸化膜形成技術では、良好な電気的特性を得ることができない理由を解明し、その結果、本発明を達成するに至った。以下にまず、当該理由について説明する。
【0011】
図1は、SiC表面を直接ラジカル酸化したゲート絶縁膜を有するMOSキャパシタの高周波CV特性を示す。ゲート絶縁膜の形成条件は、後に説明するプラズマ処理装置を用い、310.5/16.3sccmのKr/O混合ガスを導入し、基板の温度を400℃、処理室内の圧力を133Pa(1Torr)程度に設定したまま、マイクロ波を供給し、SiC表面を酸素(O)ラジカルにより直接酸化して厚さ9nmのシリコン酸化膜界面を形成した。その後、2段シャワープレート型マイクロ波励起高密度プラズマ装置でCVD酸化膜を堆積した。これは、膜をC−V特性測定に耐える厚さにするためである。
【0012】
成膜条件はKr/O混合ガスを400/80sccm、SiHガスを0.2sccm導入する。処理室内の温度は400℃、圧力は133Pa(1Torr)で行った。膜厚は25.6nmである。図1を参照するに、CV特性は正の方向に大きくシフトしており、しかもヒステリシスが存在する。このことは、ゲート絶縁膜中に1012/cm以上という非常に大量の界面固定電荷密度、界面準位密度が存在していることを示している。
【0013】
図2はSiC表面を上記のように直接ラジカル酸化した絶縁膜中に存在する炭素の深さ方向分布をSIMS分析により測定した結果を示す。測定条件は、Csイオン、加速電圧0.75kVで測定した。図2を参照するに、多量の炭素が絶縁膜中に残留していることが分かる。この残留炭素が負の電荷として働くことにより、CV特性の劣化に影響を及ぼしていると考えられる。
【0014】
そこで、本発明者等は、SiC表面を直接酸窒化して酸窒化膜を形成し、さらにその膜をアニールすることでゲート絶縁膜の特性が改善されるかどうか実験を行った。図3は、その結果を示すもので、SiC表面を直接酸窒化してアニールしたゲート絶縁膜を有するMOSキャパシタの高周波CV特性である、ゲート絶縁膜の形成条件は、後に説明するプラズマ処理装置を用い、1000/30/0.001sccmのKr/O/NO混合ガスを導入し、基板の温度を600℃、処理室内の圧力を133Pa(1Torr)程度に設定したままマイクロ波を供給し、SiC表面を酸素(O)ラジカルおよびNOラジカルにより直接酸窒化して厚さ3nmのシリコン酸窒化膜を形成した。その後、膜をC−V特性測定に耐える厚さにするため、2段シャワープレート型マイクロ波励起高密度プラズマ装置でCVD酸化膜を堆積した。成膜条件はKr/O2混合ガスを400/80sccm、SiH4ガスを0.2sccm導入する。処理室内の温度は室温、圧力は133Pa(1Torr)で行った。膜厚はEOTで、図3のグラフ(a)で示すものが14.5nm、グラフ(b)で示すものが30.4nm、グラフ(c)で示すものが30.0nm、である。図3のグラフ(a)で示すものは、上記のようにして得た膜をAr雰囲気中1000℃でアニールしたもの、グラフ(b)で示すものは、Ar雰囲気中1100℃でアニールしたもの、グラフ(c)で示すものは、Ar/O雰囲気中1100℃でアニールしたものである。
【0015】
図3を参照するに、CV特性のVfbシフトは改善されたものの、ヒステリシスについては改善がみられない。図4には、上記の各絶縁膜中に存在する炭素の深さ方向濃度を測定した結果を示す。図4(a)が図3のグラフ(a)で示す膜であり、炭素を5×1021atoms/cm以上含有している。図4(b)が図3のグラフ(b)で示す膜であり、炭素量は減少しているものの、依然1×1021atoms/cm以上含有している。図4(c)が図3のグラフ(c)で示す膜であり、炭素量はさらに減少しているものの、依然1×1020atoms/cmを越える量が残留している。結局、上記の方法でも、CV特性の劣化が改善されないことが判明した。
【0016】
また、SiC表面に単にCVD膜を形成するだけでは、形成温度等によってCVD膜に1×1020atoms/cmを越える炭素が含まれてしまうことも判明した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による、SiCを主成分とする半導体領域上にゲート絶縁膜を有する半導体装置は、ゲート絶縁膜の炭素含有量が1×1020atoms/cm以下であることを特徴とする。特に前記ゲート絶縁膜の界面固定電荷が1×1011cm−2以下、界面準位密度が1×1011cm−2以下であることを特徴とする。本発明によれば、SiCを主成分とする半導体領域上にゲート絶縁膜を有する半導体装置において、前記半導体領域表面に堆積されたシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物の膜を少なくとも窒素原子を含むラジカルで改質された膜を含むようにしたことを特徴とする半導体装置が得られる。前記ゲート絶縁膜は、珪素、酸素および窒素を含むことが好ましい。
【0018】
本発明によるゲート絶縁膜は、前記半導体領域表面に堆積されたシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物の膜を酸素ラジカルおよび窒素原子を含むラジカルで改質した膜であることも特徴とする。
【0019】
前記窒素原子を含むラジカルは、窒素ラジカル、NOラジカルおよびNH3ラジカルの少なくとも一つを含む。
【0020】
前記ゲート絶縁膜の厚さは5〜50nmであることが好ましい。
【0021】
前記ゲート絶縁膜上には、好ましくはゲート電極を有し、半導体領域には好ましくはソース領域およびドレイン領域を有する。
【0022】
また、本発明によれば、SiCを主成分とする半導体領域表面にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記ゲート絶縁膜を形成する工程が、前記SiCを主成分とする半導体領域表面にシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物の少なくとも一方からなる第1の膜を堆積する第1の工程と、前記第1の膜を少なくとも窒素原子を含むラジカルに曝して前記第1の膜に窒素原子を導入する第2の工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0023】
前記第2の工程は、前記第1の膜を酸素ラジカルおよび窒素原子を含むラジカルで改質する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0024】
前記第1の膜はシリコン酸化物膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0025】
前記第1の膜はシリコン酸窒化物膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0026】
前記窒素原子を含むラジカルは、窒素ラジカル、NOラジカルおよびNH3ラジカルの少なくとも一つであることを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0027】
前記第1の膜の厚さを5〜50nmとしたことを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0028】
前記第2の工程は少なくとも窒素を含むガスからマイクロ波励起のプラズマで前記窒素原子を含むラジカルを形成する工程をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0029】
前記第1の工程は、マイクロ波励起のプラズマを発生させる工程と、該プラズマに成膜用のガスを導入する工程と、それによってシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物の少なくとも一方をCVDで成膜する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0030】
前記マイクロ波励起のプラズマは、下記の(a)乃至(d)を有するプラズマ処理装置を用いて下記の処理室内に発生させることを特徴とする半導体装置の製造方法が得られる。
【0031】
(a)前記SiCを主成分とする半導体領域を有する実質的に平らな被処理基板を保持する保持台。
【0032】
(b)前記保持台に対向するように設けられ、プラズマ励起ガスを処理室内に放出する複数のガス放出口を有する、前記被処理基板よりも面積の大きいシャワープレートであって、前記ガス放出口は該シャワープレートの、前記被処理基板よりも大きい面積の部分全体にわたって前記プラズマ励起ガスが処理室内の空間に前記面積にわたって実質的に均一に放出されるように設けられている、シャワープレート。
【0033】
(c)前記シャワープレートの保持台と反対側に設けられた誘電体板。
【0034】
(d)前記誘電体板の外側に設けられたアンテナ板であって、面積が前記シャワープレートの前記面積以上であって、マイクロ波を前記誘電体板と前記シャワープレートとを透過して、前記シャワープレートの前記面積の部分の処理室内の側の空間に前記面積にわたって実質的に均一に放射し、それによって、前記シャワープレートの前記面積の部分の処理室内の側の空間において、そこに放出された前記プラズマ励起ガスが前記マイクロ波を照射されて、前記面積にわたって実質的に均一にプラズマが発生するようにされている、アンテナ板。
【0035】
前記アンテナ板は、好ましくは、同心円状に線形のスロットを配置したアンテナ板である。また前記窒素を含むガスは、好ましくは、窒素ガス、NOガス、NH4ガス、NF3ガスの少なくとも一つである。また、前記窒素を含むガスは、好ましくは、窒素ガス、NOガス、NH4ガス、NF3ガスの少なくとも一つである。
【0036】
前記第2の工程は、好ましくは、前記窒素を含むガスおよび希ガスの少なくとも一方から前記マイクロ波励起のプラズマを発生する工程または、前記窒素を含むガス、希ガスおよび酸素ガスから前記マイクロ波励起のプラズマを発生する工程をさらに含む。
【0037】
前記半導体領域にソース領域およびドレイン領域を形成する工程をさらに含むことも好ましい。
【0038】
好ましくは、前記希ガスとして、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)の少なくとも何れか1つを含有する。例えば、酸素ガスとクリプトン(Kr)の組み合わせでは、成膜中の酸素ラジカルとクリプトン(Kr)が形成された酸化膜中に残り、絶縁膜としての特性(絶縁特性、界面特性)が向上する。
【0039】
前記改変された絶縁膜中には窒素を含有する。窒素濃度が絶縁膜表面、絶縁膜とSiC界面において、絶縁膜中央部よりも増大するような濃度分布を含むことによって絶縁膜としての特性(絶縁特性、界面特性)が向上する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、界面準位密度の小さいゲート絶縁膜が得られ、トランジスタの高性能化、高信頼性が実現できる。また本発明によれば、あらゆる面方位に良好な絶縁膜形成が可能となる。その結果、界面準位の増大を抑制でき、優れたデバイス特性を有する半導体装置の製造が可能となる。本発明の半導体装置は、高い耐圧が要求されるパワーデバイスに特に適しており、デバイスの特性を劣化させることなく、絶縁膜の膜厚を約30nmや50nmの厚さにすることが可能となる。これは、プラズマCVDによる膜堆積を行うので、絶縁膜としての膜厚を容易に増加させることが出来るためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を適用した好適な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
まず図5を参照して、本発明に用いられるプラズマ処理装置100の構成例を説明する。プラズマ処理装置100は、被処理基板としてのSiC基板114を保持する基板保持台115が備えられた減圧容器101を有する。処理容器101内の気体(ガス)は排気ポート116から図示されない排気ポンプを介して排気される。なお、基板保持台115は、SiC基板114を加熱するヒータ機能を有している。基板保持台115の周囲に排気を効率化する空間101Aが設けられている。
【0043】
容器101の上方には、基板保持台115上のSiC基板114に対応して開口部が設けられている。この開口部は、石英やAlからなる誘電体板102により塞がれている。誘電体板102の上部(処理容器101の外側)には、平面アンテナ110Cが配置されている。この平面アンテナ110Cには、導波管110Aから供給されたマイクロ波を均一に放射するための複数の線状スロット110aおよび110bが同心円上に形成されている(同図(b)参照)。平面アンテナ110Cの更に上部(外側)には、波長短縮板110Bと導波管110Aが配置されている。波長短縮板110Bの上部に図示しない冷却手段が配置されている。処理容器101内部のプラズマ処理室は、この図の例(2段シャワープレート構造)ではプラズマ発生空間101Bとプラズマ処理空間101Cとを含んでいる。なお、1段シャワープレート構造(図の構造から下段シャワープレート111およびその付帯部分を取り去ったもの)では、SiC基板114の上はプラズマ空間兼プラズマ処理空間となる。
【0044】
処理容器101の内部には、SiC基板114に対向するように、保持台115と誘電体板102との間に、マイクロ波を透過するセラミック等の材料から成り多数のガス放出口107を備える上段シャワープレート103が配置されている。プラズマガス供給ポート105から導入されるプラズマ励起用ガスは、ガス供給通路106を介して誘電体板102と上段シャワープレート103との間の隙間へ導入され、そこから上段シャワープレート103のガス放出口107を経て、上段シャワープレート103下部のプラズマ発生空間101Bに均一に放出される。なお、図示しないガスフローコントローラが流量調整手段としてプラズマガス供給ポート105に接続されている。一方、プラズマを励起するための数ギガヘルツのマイクロ波は、図示されない電磁波発生器で発生され、この電磁波発生器で発生したマイクロ波が、導波管110A、遅波板110Dを通って、平面アンテナ110Cにて均一に放射され、誘電体板102および上段シャワープレート103を透過して、プラズマ発生空間101Bに均一に照射され、そこに導入されているプラズマ励起ガスを励起する。この結果、プラズマ発生空間101Bに低電子温度の高密度プラズマが均一に発生する。1段シャワープレート構造では、このプラズマでSiC基板114表面が処理される。
【0045】
図示の2段シャワープレート構造では、下段シャワープレート111がプラズマ発生空間101BとSiC基板114との間に設置されていて、そのメッシュ状のパイプ113(パイプ以外の構造でも良い)の間の開口部を経て、プラズマ発生空間101Bのプラズマがプラズマ処理空間101Cへ拡散し、そこでウエハ114表面へのプラズマ処理が行われる。下段シャワープレート111には、処理ガス供給ポート112から処理用のガスがパイプ113へ導入され、パイプ113に設けた多数の小孔(図示せず)から、プラズマ処理用ガスがプラズマ処理空間101Cへ放出される。
【0046】
(第1の実施形態)
図6乃至図10を参照して、本発明の第1の実施形態により、プラズマを用いた低温での酸化膜形成工程および酸化膜改質工程によってゲート絶縁膜を形成した半導体装置を説明する。本実施例においては、酸化膜形成工程に図5に示すラジアルラインスロットアンテナを用いた2段シャワープレート型プラズマ処理装置を使用する。
【0047】
本実施形態においては、まず、図6に示すSiC基板114表面の未結合手を終端している水素を除去する。より具体的に説明すると、本実施形態では、次の酸化膜形成工程でプラズマ励起ガスとして使われるKrを使用し、図5の同一処理室内で連続して表面終端水素除去処理と酸化膜形成処理とを行う。
【0048】
まず、図5のプラズマ処理装置100において減圧容器101内を排気し、次に上段シャワープレート103から最初にArガスを導入し、それをKrガスに切り替える。さらに、前記減圧容器101内の圧力を133Pa(1Torr)程度に設定する。
【0049】
次に、図6に示されたSiC基板114を保持台115上に置く。SiC基板114は、直前の前処理工程において希フッ酸洗浄が施され、その結果、表面のSiC未結合手が水素で終端されている。SiC基板114としては表面がどの結晶構造、面方位のものを用いても構わない。
【0050】
続いて、先に述べた方法でラジアルラインスロットアンテナ110cからマイクロ波を処理室101内のプラズマ発生空間101Bに導入する。導入されたマイクロ波はプラズマ発生空間101Bにシャワープレート103から導入されたKrガスを励起し、その結果、シャワープレート直下のプラズマ発生空間101Bに高密度のKrプラズマが均一に形成される。供給するマイクロ波の周波数が900MHz程度以上約10GHz程度以下の範囲にあれば、結果はほとんど同様のものとなる。
【0051】
本実施形態では、ラジアルラインスロットアンテナ110Cを用いたプラズマ装置を用いて成膜した例を示しているが、他の方法を用いてマイクロ波を処理室内に導入してプラズマを励起してもよい。Krガスで励起されたプラズマはプラズマ処理空間101Cに拡散で移動し、保持台115上のSiC基板114は該プラズマに曝されて、その表面は低エネルギのKrイオン照射を受け、その表面終端水素が除去される。
【0052】
次に、図5の上段シャワープレート103から400/80sccmのKr/O混合ガスを導入する。同時に、下段シャワープレート111からSiHガスを0.2sccm導入する。この際、処理室内の圧力は133Pa(1Torr)程度に維持しておく。温度は室温のままでよい。KrガスとOガスが混合された高密度励起プラズマ中では、中間励起状態にあるKrラジカルとO分子が衝突し、原子状酸素Oラジカルを効率よく大量に発生できる。
【0053】
本実施例では、この原子状酸素OラジカルとSiHガスを用いたCVD反応により、前記SiC基板114の表面上に図7に示すように約30nm厚のシリコン酸化膜71が堆積形成される。従来のSiC表面の熱酸化法では、O分子やHO分子により酸化が行われ、1,200℃以上の極めて高い処理温度が必要であったが、本発明の原子状酸素Oラジカルによる酸化処理では、室温という非常に低い温度で酸化膜形成が可能である。
【0054】
所望の膜厚のシリコン酸化膜71が形成されたところでマイクロ波パワーの導入を一時停止しプラズマ励起を終了し、OガスとSiHガスの導入を停止する。さらに、処理室101内をKrでパージした後、上段シャワープレート103から1000/30/0.001sccmのKr/O/NO混合ガスを導入し、処理室101内の圧力を133Pa(1Torr)程度に、SiC基板114温度を600℃に設定したまま、再びマイクロ波を供給し、処理室101内に高密度のプラズマを生成して、図8に示すようにシリコン酸化膜71の膜質を改質し、結果として、図9に示すように酸窒化膜(SiON)から成る絶縁膜81とする。酸化膜の改質工程の処理時間は3分間とし、絶縁膜81の膜厚はEOTで約30nmとなった。
【0055】
次に、改質された絶縁膜81が形成されたところでマイクロ波パワーの導入を停止してプラズマ励起を終了し、さらにKr/O/NO混合ガスをArガスに置換して酸化膜改質工程を終了する。本工程の前後にArガスを使用するのはKrより安価なガスをパージガスに使用するためである。本工程に使用されたKrガスは回収再利用する。その後、熱処理炉によりArガス雰囲気において1,100℃、3時間の熱処理を行う。
【0056】
上記のゲート絶縁膜形成工程に続いて図10に示すように、以上の工程で得られた酸窒化膜からなる絶縁膜81をゲート絶縁膜とし、その上にゲート電極91として多結晶シリコンを堆積し、さらにパターニング工程、イオン注入工程、保護膜形成工程、配線層形成工程、水素シンタ処理工程等を施すことにより、トランジスタやキャパシタを含む半導体集積回路を形成することができる。
【0057】
なお、上記の説明では、プロセス簡略化のために、絶縁膜改質工程を絶縁膜形成工程と同じ図5の2段シャワープレート型プラズマ処理装置を用いたが、先に説明した1段シャワープレート型プラズマ処理装置を用いて絶縁膜改質工程を行ってよいのは勿論である。
【0058】
図11は上記の絶縁膜形成方法で形成したゲート絶縁膜を有するMOSキャパシタの高周波CV特性を示す。比較としてNOガスを用いた表面処理を行っていないCVD酸化膜を有するMOSキャパシタの特性を示す。
【0059】
図11を参照するに、本発明による絶縁膜形成方法で形成したゲート絶縁膜を有するMOSキャパシタのCV特性はほとんどシフトしておらず、ヒステリシス幅も小さく理想値に近い特性を示している。NOガスを用いた表面処理を行っていないCVD酸化膜と比べてもCV特性のシフト、ヒステリシス幅が小さくなっていることから絶縁膜改質工程によってゲート絶縁膜/SiC界面特性が改善されていることが分かる。
【0060】
図12は上記の絶縁膜形成方法で形成したゲート絶縁膜を有するMOSキャパシタのJE特性を示す。比較としてNOガスを用いた表面処理を行っていないCVD酸化膜を有するMOSキャパシタとKr/O/NO混合ガスを用いてSiC表面を直接ラジカル酸窒化し、Arガス雰囲気における1,100℃で熱処理を行い、その後、CVD酸化膜を堆積したゲート絶縁膜を有するMOSキャパシタの特性を示す。
【0061】
図12を参照するに、SiC表面を直接ラジカル酸窒化した絶縁膜の絶縁破壊電界は8MV/cmに満たない。一方、上記の絶縁膜形成方法で形成したゲート絶縁膜では12MV/cm以上まで改善された。
【0062】
図13は、上記の絶縁膜形成方法で形成したゲート絶縁膜−SiC基板の炭素含有量を示す。図13を参照するに、絶縁膜の炭素含有量は1×1020atoms/cmよりも小さく、6×1019atoms/cm程度の検出限界以下となっていることがわかる。またゲート絶縁膜のSiC界面近傍の部分においても、図2や図4の場合よりも遥かにシャープに炭素含有量が減少していることが確認された。
【0063】
図12および図13から、SiC表面を直接反応させ形成した絶縁膜よりも絶縁膜中に炭素の存在しないゲート絶縁膜のほうが、絶縁破壊電界においてより高耐圧となることが分かるが、図14〜図16を参照すると、本発明の絶縁膜の優位性が明確になる。
【0064】
図14は、上記の絶縁膜形成方法で形成したゲート絶縁膜の界面固定電荷(Oxide fixed charge)および界面準位密度(Interface trap density)を示す。比較としてKr/O/NO混合ガスを用いてSiC表面を直接ラジカル酸窒化し、Arガス雰囲気における1,100℃で熱処理を行い、その後CVD酸化膜を堆積したゲート絶縁膜の特性と、NOガスを用いた表面処理を行っていないCVD酸化膜の特性を示す。
【0065】
図14を参照すると、本発明によれば、界面固定電荷が2.23×10cm−2、界面準位密度が3.34×1010cm−2と劇的に低い数値となっており、それぞれ約1桁から2桁改善されていることがわかる。このように、本発明によって初めて、炭素含有量が1×1020atoms/cmで、界面固定電荷が1×1011cm−2以下、界面準位密度も1×1011cm−2以下のゲート絶縁膜を有するSiCデバイスが実現可能になった。炭素含有量が1×1020atoms/cmを超えると、界面固定電荷を1×1011cm−2以下、界面準位密度も1×1011cm−2以下とすることは困難である。また、界面固定電荷が1×1011cm−2、界面準位密度が1×1011cm−2を超えると、ヒステリシスのほとんどない、高耐圧のSiCデバイスを得ることは不可能であることが判明した。
【0066】
図15および図16は、上記の絶縁膜形成方法で形成したゲート絶縁膜のストレス耐性を示す。比較として、図14の場合と同じ2つの絶縁膜の特性を示した。図15および図16から、本発明のゲート絶縁膜の耐圧のストレス耐性も優れていることが分かる。
【0067】
図17は、上記の絶縁膜形成方法で形成したゲート絶縁膜(酸窒化膜)の窒素分布プロファイルを概略的に示す。図17を参照するに、窒素は前記酸窒化膜の表面と、前記酸窒化膜と下地のSiC基板との界面に濃集する。その結果、前記酸窒化膜は全体としては酸窒化膜の組成を有していても、膜厚方向上の中心部は酸化膜に近い組成を有し、一方表面および、前記酸窒化膜とSiC基板との界面は窒化膜に近い組成を有することになる。
【0068】
なお、上記の実施例では不活性ガスとしてクリプトン(Kr)を用いたが、アルゴン(Ar)またはキセノン(Xe)、またはそれらとの混合でもよい。特に、酸素ガスとクリプトン(Kr)の組み合わせが好ましい。これは、成膜中の酸素ラジカルとクリプトン(Kr)が形成された酸化膜中に残り、絶縁膜としての特性(絶縁特性、界面特性)が向上するためである。
【0069】
また、上記の実施例では、SiOをPECVDで形成し、それをKrと酸素とNOとの混合ガスのプラズマで改質してSiON膜を得ているが、NOガスの代わりにアンモニアガスまたは窒素ガス、あるいはそれらの混合ガスを用いても良い。また、PECVDで形成したSiOを、不活性ガスと窒素ガスまたはアンモニアガスとの混合ガスのプラズマで改質してもよいし、不活性ガスと窒素ガスと水素ガスとの混合ガスのプラズマで改質してもよい。NHラジカルで改質すればSiON膜を得ることが出来、Nラジカルで改質すれば表面がSiON膜に変換したSiO膜が得られる。不活性ガスを用いずに窒素ガスでプラズマを発生させてもよい。また、PECVDでSiON膜を形成し、それを不活性ガスと窒素原子を含むガスとの混合ガスのプラズマで改質してもよい。いずれにしても、得られたSiON膜は、炭素含有量の少ない、ヒステリシスが小さくVbfシフトの少ない高耐圧の膜を得ることができる。
【0070】
(第2の実施形態)
次に、上述したプラズマを用いた低温での酸窒化膜の形成技術を使用した本発明の第2の実施形態による半導体素子について図18〜図20に示す概略断面構造図を用いて説明する。
【0071】
図20を参照するに、前記半導体素子はSiC基板200上に形成されており、SiC基板200はどの結晶構造、面方位を用いても構わない。本例ではキャリア濃度が約1016cm−3の厚さ15μmのn型領域202をドリフト領域としてSiC基体201にエピタキシャル成長させたものをSiC基板200として用いた。
【0072】
前記SiC基板200上に形成されたゲート絶縁膜203と、チャンネル領域およびドリフト領域上に前記ゲート絶縁膜203を介して形成されたゲート電極204と、ゲート電極204を覆うように設けられた絶縁層205と、p領域206、n+ソース領域207、n−ドリフト領域202、n+ドレイン領域201、ソース電極208、ドレイン電極209とから構成されている。前記ゲート絶縁膜203は第1の実施形態で説明したシリコン酸窒化膜形成方法により形成する。
【0073】
図18、19は本実施形態の半導体素子の製造方法を段階的に説明するための概略断面図である。
【0074】
図18の工程において、前記p領域206、前記n+ソース領域207を形成する。p領域206はAl、n+ソース領域207はNを前記SiC基板200にイオン注入して形成する。本例ではAlはキャリア濃度が約1018cm−3、厚さが1μm、Nはキャリア濃度が約1019cm−3、厚さが0.3μmとなるようにイオン注入する。シート抵抗低減のためイオン注入の際の基板の温度は500℃以上に設定する。その後、Arガスを導入し、1500℃、60分間活性化アニールを行う。
【0075】
本実施形態においては、表面終端水素除去、酸窒化膜形成のためにKrをプラズマ励起ガスとして使用する。酸窒化膜形成装置は図5と同じである。
【0076】
次に、図19の工程において、前記SiC基板200表面を犠牲酸化した後、その犠牲酸化膜を除去し、希フッ酸洗浄によりSiC表面を水素終端する。さらに先の実施の形態1と同様にして、ゲート絶縁膜203を形成する。本例ではチャネル長を2μmとする。
【0077】
すなわち、先の実施形態1と同様に、真空容器(処理室)内を真空にし、前記上段シャワープレートから最初にArガスを導入し、それをKrガスに切り替える。さらに、前記処理室内の圧力を133Pa(1Torr)程度に設定する。
【0078】
次に、SiC基板200を基板保持台に置く。同軸導波管からラジアルラインスロットアンテナにマイクロ波を供給し、前記マイクロ波を前記ラジアルラインスロットアンテナから誘電体板、上段シャワープレートを通して、前記処理室内に導入する。前記SiC基板200をKrガスで励起されたプラズマに曝すことにより、前記SiC基板200の表面は低エネルギのKrイオン照射を受け、その表面終端水素が除去される。
【0079】
次に、前記上段シャワープレート〜から400/80sccmのKr/O混合ガスを導入する。また、前記下段シャワープレートからSiHガスを0.2sccm導入する。この際、処理室内の圧力は133Pa(1Torr)程度に維持しておく。所望の膜厚のシリコン酸化膜が形成されたところでマイクロ波パワーの導入を一時停止しプラズマ励起を終了し、OガスとSiHガスの導入を停止する。さらに処理室内をKrでパージした後、上段シャワープレートから1000/30/0.001sccmのKr/O/NO混合ガスを導入し、処理室内の圧力を133Pa(1Torr)程度に設定したまま、再びマイクロ波を供給し、前記処理室内に高密度のプラズマを生成して、前記シリコン酸化膜の膜質を改質し結果として酸窒化膜203とする。酸化膜の改質工程の処理時間は3分間とし、絶縁膜の膜厚は約30nmとする。次に、所望の膜質の絶縁膜が形成されたところでマイクロ波パワーの導入を停止してプラズマ励起を終了し、さらにKr/O/NO混合ガスをArガスに置換して酸化膜改質工程を終了する。その後、熱処理炉によりArガス雰囲気において1,100℃、3時間の熱処理を行う。
【0080】
次に、図20に示すように、多結晶シリコン層204を前記ゲート絶縁膜203の上に堆積する。膜厚は500nmとする。その後標準的な半導体工程に準拠して、多結晶シリコン層204を絶縁層205で覆うように形成すると共に、n+ソース領域207上、n+ドレイン領域201上にAlの蒸着により1μmの厚さの電極208、209の形成などを行って素子を完成させる。
【0081】
以上、本発明の実施の形態例及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
上記のように製造された半導体装置は、あらゆる面方位に良好な絶縁膜を備え、界面準位の増大を抑制でき、優れたデバイス特性を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】SiC表面を直接ラジカル酸化したゲート絶縁膜を有するMOSトランジスタの高周波CV特性を示す図である。
【図2】SiC表面を直接ラジカル酸化したゲート絶縁膜中に存在する炭素の深さ方向分布を示す図である。
【図3】SiC表面を直接酸窒化した酸窒化膜をアニールすることによって得られたゲート酸化膜を有するMOSトランジスタの高周波CV特性を示すグラフである。
【図4(a)】図3に示されたゲート酸化膜を有するMOSトランジスタにおける炭素の深さ方向濃度を測定した結果を示すグラフである。
【図4(b)】図3に示された他のゲート酸化膜を有するMOSトランジスタにおける炭素の深さ方向濃度を測定した結果を示すグラフである。
【図4(c)】図3に示された別のゲート酸化膜を有するMOSトランジスタにおける炭素の深さ方向濃度を測定した結果を示すグラフである。
【図5】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の半導体装置の製造に用いるプラズマ処理装置の構成の一例を示す概略断面図及びそれに使用された平面アンテナを示す平面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る酸化膜形成工程のSiC基板の準備工程を説明する図である。
【図7】SiC基板にシリコン酸化膜を形成する工程を説明する図である。
【図8】シリコン酸化膜の膜質を改質する工程を説明する図である。
【図9】改質された絶縁膜を説明する図である。
【図10】絶縁膜改質後に行われるゲート電極の形成工程を示す図である。
【図11】上記した絶縁膜形成工程によって得られたゲート絶縁膜を有するMOSキャパシタの特性を他の工程で得られたMOSキャパシタの特性と比較して説明するグラフである。
【図12】上記した絶縁膜形成工程によって得られたゲート絶縁膜を有するMOSキャパシタのJE特性を他のMOSキャパシタのJE特性と比較して説明するグラフである。
【図13】上記した絶縁膜形成工程によって得られたゲート絶縁膜−SiC基板の炭素含有量を示す図である。
【図14】上記した絶縁膜形成工程によって得られたゲート絶縁膜の界面固定電荷および界面準位密度を示す図である。
【図15】上記した絶縁膜形成工程によって得られたゲート絶縁膜のストレス耐圧を説明する図である。
【図16】上記した絶縁膜形成工程によって得られたゲート絶縁膜のブレークダウン特性を説明する図である。
【図17】上記した絶縁膜形成工程によって得られたゲート絶縁膜の窒素分布を説明する図である。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る半導体素子の製造方法の一工程を示す図である。
【図19】図18の工程の後に行われる工程を示す図である。
【図20】本発明の第2の実施形態によって得られた半導体素子の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
100 プラズマ処理装置
101 減圧容器
114 SiC基板
101A、101B、101C 空間
102 誘電体板
103 上段シャワープレート
105 プラズマガス供給ポート
106 ガス供給通路
107 ガス放出口
110C 平面アンテナ
110A 導波管
110a、110c 線状スロット
110B 波長短縮板
110D 遅波板
111 下段シャワープレート
113 パイプ
115 基板保持台
116 排気ポート
71 シリコン酸化膜
81 酸窒化膜
91 ゲート電極
200 SiC基板
201 SiC基体(n+ドレイン領域)
202 n型領域
203 ゲート絶縁膜
204 ゲート電極
205 絶縁層
206 p型領域
207 n+ソース領域
208 ソース電極
209 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCを主成分とする半導体領域上にゲート絶縁膜を有する半導体装置において、前記ゲート絶縁膜の炭素含有量が1×1020atoms/cm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜の界面固定電荷が1×1011cm−2以下、界面準位密度が1×1011cm−2以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート絶縁膜は、前記半導体領域表面に堆積されたシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物の膜を少なくとも窒素原子を含むラジカルで改質された膜を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート絶縁膜は、珪素、酸素および窒素を含むことを特徴とする請求項1乃至3の一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート絶縁膜は、前記半導体領域表面に堆積されたシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物の膜を酸素ラジカルおよび窒素原子を含むラジカルで改質した膜であることを特徴とする請求項1乃至4の一つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜は、前記半導体領域表面に堆積されたシリコン酸化物膜を少なくとも窒素原子を含むラジカルで改質した膜を含むことを特徴とする請求項1乃至4の一つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート絶縁膜は、前記半導体領域表面に堆積されたシリコン酸化物膜を酸素ラジカルおよび窒素原子を含むラジカルで改質した膜を含むことを特徴とする請求項1乃至4の一つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記窒素原子を含むラジカルは、窒素ラジカル、NOラジカルおよびNHラジカルの少なくとも一つであることを特徴とする請求項3乃至7の一つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲート絶縁膜の厚さは5〜50nmであることを特徴とする請求項1乃至8の一つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を有することを特徴とする請求項1乃至9の一つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体領域にソース領域およびドレイン領域を有することを特徴とする請求項1乃至10の一つに記載の半導体装置。
【請求項12】
SiCを主成分とする半導体領域表面にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを含む半導体装置の製造方法において、前記ゲート絶縁膜を形成する工程が、前記SiCを主成分とする半導体領域表面にシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物の少なくとも一方からなる第1の膜を堆積する第1の工程と、前記第1の膜を少なくとも窒素原子を含むラジカルに曝して前記第1の膜に窒素原子を導入する第2の工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2の工程は、前記第1の膜を酸素ラジカルおよび窒素原子を含むラジカルで改質する工程であることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1の膜はシリコン酸化物膜であることを特徴とする請求項12または13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1の膜はシリコン酸窒化物膜であることを特徴とする請求項12または13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記窒素原子を含むラジカルは、窒素ラジカル、NOラジカルおよびNHラジカルの少なくとも一つであることを特徴とする請求項12乃至15の一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第1の膜の厚さを5〜50nmとしたことを特徴とする請求項12乃至16の一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2の工程は少なくとも窒素を含むガスからマイクロ波励起のプラズマで前記窒素原子を含むラジカルを形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項12乃至17の一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1の工程は、マイクロ波励起のプラズマを発生させる工程と、該プラズマに成膜用のガスを導入する工程と、それによってシリコン酸化物またはシリコン酸窒化物の少なくとも一方をCVDで成膜する工程とを有することを特徴とする請求項12乃至18の一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記マイクロ波励起のプラズマは、下記の(a)乃至(d)を有するプラズマ処理装置を用いて下記の処理室内に発生させることを特徴とする請求項18または19に記載の半導体装置の製造方法。
(a)前記SiCを主成分とする半導体領域を有する実質的に平らな被処理基板を保持する保持台。
(b)前記保持台に対向するように設けられ、プラズマ励起ガスを処理室内に放出する複数のガス放出口を有する、前記被処理基板よりも面積の大きいシャワープレートであって、前記ガス放出口は該シャワープレートの、前記被処理基板よりも大きい面積の部分全体にわたって前記プラズマ励起ガスが処理室内の空間に前記面積にわたって実質的に均一に放出されるように設けられている、シャワープレート。
(c)前記シャワープレートの保持台と反対側に設けられた誘電体板。
(d)前記誘電体板の外側に設けられたアンテナ板であって、面積が前記シャワープレートの前記面積以上であって、マイクロ波を前記誘電体板と前記シャワープレートとを透過して、前記シャワープレートの前記面積の部分の処理室内の側の空間に前記面積にわたって実質的に均一に放射し、それによって、前記シャワープレートの前記面積の部分の処理室内の側の空間において、そこに放出された前記プラズマ励起ガスが前記マイクロ波を照射されて、前記面積にわたって実質的に均一にプラズマが発生するようにされている、アンテナ板。
【請求項21】
前記アンテナ板は、同心円状に線形のスロットを配置したアンテナ板であることを特徴とする請求項20に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記窒素を含むガスは、窒素ガス、NOガス、NHガス、NFガスの少なくとも一つであることを特徴とする請求項18乃至21の一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記第2の工程は、前記窒素を含むガスおよび希ガスの少なくとも一方から前記マイクロ波励起のプラズマを発生する工程をさらに含むことを特徴とする請求項18乃至22の一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項24】
前記第2の工程は、前記窒素を含むガス、希ガスおよび酸素ガスから前記マイクロ波励起のプラズマを発生する工程をさらに含むことを特徴とする請求項18乃至22の一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項25】
前記半導体領域にソース領域およびドレイン領域を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項12乃至24の一つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−147365(P2008−147365A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332003(P2006−332003)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000173658)財団法人国際科学振興財団 (31)
【Fターム(参考)】