説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置

【課題】 膜中の酸素濃度を制御しつつ、良好な段差被覆性を有する酸化タンタル系の膜を形成する。
【解決手段】 基板を収容した処理室内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスと窒化剤とを供給して、基板上に窒化タンタル層を形成する工程と、処理室内に酸化剤を供給して、窒化タンタル層の酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、窒化タンタル層を酸化する工程と、を交互に複数回繰り返すことで、基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理室内で基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法、基板処理方法及びその工程において好適に用いられる基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAMの代替となりうる新型RAMとして、例えば、SOI(Silicon On
Insulator)基板を使ったキャパシタレスDRAM(SOI型RAM)、MRAM(Magneto−resistive RAM)、PRAM(Phase change RAM)、ReRAM(Resistive RAM)等が挙げられる。
【0003】
このうちReRAMは、遷移金属酸化物からなる薄膜(以下、遷移金属酸化膜)を金属電極で挟んだキャパシタ構造を備えており、金属電極間に電圧を加えることで生じる遷移金属酸化膜の抵抗変化(電界誘起抵抗変化)を記憶情報として利用する。ReRAMは、既存のNOR型フラッシュメモリに比べて1ビット当りの消費電力が1/1000以下と低く、読み出し時間及び書き換え時間がいずれも10ns程度と高速であることから、次世代の不揮発性メモリとして期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ReRAMでは、遷移金属酸化膜として、膜中の酸素濃度の制御が可能な酸化タンタル(TaO)膜等の酸化タンタル系の膜が用いられている。ReRAMデバイスの開発段階では、酸化タンタル膜の成膜法はPVD(Physical Vapor Deposition)法が主流となっている。しかしながら、ReRAMの構造上、遷移金属酸化膜には高い段差被覆性が求められるため、量産段階ではPVD法の採用は困難になってくる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決し、膜中の酸素濃度を制御しつつ、良好な段差被覆性を有する酸化タンタル系の膜を形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板を収容した処理室内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスと窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する工程と、
前記処理室内に酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する工程と、
を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容した処理室内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスと窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する工程と、
前記処理室内に酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する工程と、
を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成する工程を有する基板処理方法が提供
される。
【0008】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内にタンタルを含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内に窒化剤を供給する窒化剤供給系と、
前記処理室内に酸化剤を供給する酸化剤供給系と、
基板を収容した前記処理室内にCVD反応が生じる条件下で前記原料ガスと前記窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する処理と、前記処理室内に前記酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する処理と、を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成するように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒化剤供給系および前記酸化剤供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膜中の酸素濃度を制御しつつ、良好な段差被覆性を有する酸化タンタル系の膜を形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系および排気系の構成図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【図5】本発明の他の実施形態で好適に用いられる縦型CVD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は処理炉302部分を(a)のA−A線断面図で示す。
【図6】本発明の実施形態における成膜工程のガス供給のタイミング図であり、酸化剤として酸素ガスを単体で供給する例を示している。
【図7】本発明の他の実施形態における成膜工程のガス供給のタイミング図であり、酸化剤として酸素ガスと水素ガスとの混合ガスを供給する例を示している。
【図8】本発明の実施例1に係る窒化タンタル膜の成膜レートを比較例と共に示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施例2に係る窒化タンタル膜の抵抗率を比較例と共に示すグラフ図である。
【図10】比較例に係るタンタル膜の組成を示すグラフ図である。
【図11】本発明の実施例3に係る窒化タンタル膜の組成を示すグラフ図である。
【図12】本発明の実施例4に係る酸窒化タンタル膜の酸素濃度及び抵抗率とサイクル数との関係を示すグラフ図である。
【図13】本発明の更に他の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図14】本発明の更に他の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図15】本発明の更に他の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図3、図4を参照しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図であり、図4は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【0012】
<処理室>
図3、図4に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウェハ等のウェハ200を処理する処理室201が形成されている。
【0013】
<支持台>
処理室201内には、ウェハ200を支持する支持台203が設けられている。ウェハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、ウェハ200を加熱する加熱手段(加熱源)としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、処理容器202の底部を貫通している。
【0014】
<昇降機構>
処理室201の外部には、支持台203を昇降させる昇降機構207bが設けられている。この昇降機構207bを作動させて支持台203を昇降させることにより、サセプタ217上に支持されるウェハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウェハ200の搬送時には図4で示される位置(ウェハ搬送位置)まで下降し、ウェハ200の処理時には図3で示される位置(ウェハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203下端部の周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0015】
<リフトピン>
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に立ち上がるように設けられている。また、支持台203(サセプタ217も含む)には、かかるリフトピン208bを貫通させる貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた時には、図4に示すように、リフトピン208bの上端部がサセプタ217の上面から突出して、リフトピン208bがウェハ200を下方から支持するようになっている。また、支持台203をウェハ処理位置まで上昇させたときには、図3に示すようにリフトピン208bはサセプタ217の上面から埋没して、サセプタ217がウェハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン208bは、ウェハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0016】
<ウェハ搬送口>
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、処理室201の内外にウェハ200を搬送するウェハ搬送口250が設けられている。ウェハ搬送口250にはゲートバルブ251が設けられており、ゲートバルブ251を開くことにより、処理室201内と搬送室(予備室)271内とが連通するようになっている。搬送室271は搬送容器(密閉容器)272内に形成されており、搬送室271内にはウェハ200を搬送する搬送ロボット273が設けられている。搬送ロボット273には、ウェハ200を搬送する際にウェ
ハ200を支持する搬送アーム273aが備えられている。支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ251を開くことにより、搬送ロボット273により処理室201内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。処理室201内に搬送されたウェハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。なお、搬送室271のウェハ搬送口250が設けられた側と反対側には、図示しないロードロック室が設けられており、搬送ロボット273によりロードロック室内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。なお、ロードロック室は、未処理もしくは処理済のウェハ200を一時的に収容する予備室として機能する。
【0017】
<排気系>
処理室201(処理容器202)の内壁側面であって、ウェハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気チャンバ260aを介して排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、及び真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気チャンバ260a、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0018】
<ガス導入口>
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0019】
<シャワーヘッド>
ガス導入口210と処理室201との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させる分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウェハ200の表面に供給するシャワー板240bと、を備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面及びシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウェハ200と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させる第1バッファ空間(分散室)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させる第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0020】
<排気ダクト>
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウェハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウェハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成されている。
【0021】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレ
ート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられている。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0022】
支持台203がウェハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウェハ処理位置まで上昇する。その結果、ウェハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204及びロワープレート205)及び支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合(セルフクリーニングする場合)を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0023】
ここで、ウェハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、第1バッファ空間(分散室)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウェハ200上に均一に供給される。そして、ウェハ200上に供給されたガスは、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウェハ200に接触した後の余剰なガスは、ウェハ200外周部に位置する排気ダクト259上、すなわち、コンダクタンスプレート204上を、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、コンダクタンスプレート204に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。このようにガスを流すことで、処理室下部、すなわち、支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0024】
<ガス供給系>
続いて、上述したガス導入口210に接続されるガス供給系の構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系および排気系の構成図である。
【0025】
本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系は、常温で液体状態であるタンタル(Ta)を含む液体原料を気化する気化部としてのバブラ220aと、バブラ220aにて液体原料を気化させて得た原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給系と、処理室201内に窒化剤を供給する窒化剤供給系と、処理室201内に酸化剤を供給する酸化剤供給系と、処理室201内にパージガスを供給するパージガス供給系と、を有している。さらに、本発明の実施形態にかかる基板処理装置は、バブラ220aからの原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスするよう排気するベント(バイパス)系を有している。以下に、各部の構成について説明する。
【0026】
<バブラ>
処理室201の外部には、液体原料を収容する原料容器としてのバブラ220aが設け
られている。バブラ220aは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)として構成されており、また、液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させる気化部としても構成されている。なお、バブラ220aの周りには、バブラ220aおよび内部の液体原料を加熱するサブヒータ206aが設けられている。原料としては、例えば、タンタル(Ta)元素を含む有機金属液体原料であるTBTDET(トリス(ジエチルアミノ)ターシャリーブチルイミノタンタル、Ta[NC(CH][N(C)、TBTEMT(トリス(エチルメチルアミノ)ターシャリーブチルイミノタンタル、Ta[NC(CH][N(C)CH)、または、TBTDMT(トリス(ジメチルアミノ)ターシャリーブチルイミノタンタル、Ta[NC(CH][N(CH)等の原料が用いられる。なお、TBTDET、TBTEMT、TBTDMTは、ブチルイミノ基、すなわち、ターシャリーブチルイミノ基を含む原料であり、さらに、エチル基およびメチル基のうち少なくとも一つと、アミノ基とを含む原料でもある。原料を構成する元素に着目すると、これらの原料は、タンタル(Ta)、窒素(N)、炭素(C)および水素(H)を含む原料ともいえる。原料としては、これらの他、五塩化タンタル(TaCl)や五弗化タンタル(TaF)やPET(ペンタエトキシタンタル、Ta(OC)等を用いることもできる。本実施形態では、原料として、有機系原料であるTBTDETが用いられる。
【0027】
バブラ220aには、キャリアガス供給管237aが接続されている。キャリアガス供給管237aの上流側端部には、図示しないキャリアガス供給源が接続されている。また、キャリアガス供給管237aの下流側端部は、バブラ220a内に収容した液体原料内に浸されている。キャリアガス供給管237aには、キャリアガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222aと、キャリアガスの供給を制御するバルブva1,va2とが設けられている。なお、キャリアガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばNガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが好適に用いられる。主に、キャリアガス供給管237a、MFC222a、バルブva1,va2により、キャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)が構成される。
【0028】
上記構成により、バルブva1,va2を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された液体原料をバブリングにより気化させて原料ガス(TBTDETガス)を生成させることが可能となる。
【0029】
<原料ガス供給系>
バブラ220aには、バブラ220a内で生成された原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給管213aが接続されている。原料ガス供給管213aの上流側端部は、バブラ220aの上部に存在する空間に連通している。原料ガス供給管213aの下流側端部は、ガス導入口210に接続されている。原料ガス供給管213aには、上流側から順にバルブva5,va3が設けられている。バルブva5は、バブラ220aから原料ガス供給管213a内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、バブラ220aの近傍に設けられている。バルブva3は、原料ガス供給管213aから処理室201内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、ガス導入口210の近傍に設けられている。バルブva3と後述するバルブve3は高耐久高速ガスバルブとして構成されている。高耐久高速ガスバルブは、短時間で素早くガス供給の切り替えおよびガス排気ができるように構成された集積バルブである。なお、バルブve3は、原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の空間を高速にパージしたのち、処理室201内をパージするパージガスの導入を制御するバルブである。
【0030】
上記構成により、バブラ220aにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとと
もに、バルブva5,va3を開くことにより、原料ガス供給管213aから処理室201内へ原料ガスを供給することが可能となる。主に、原料ガス供給管213a、バルブva5,va3により原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。
【0031】
また、主に、キャリアガス供給系、バブラ220a、原料ガス供給系により、原料供給系(原料供給ライン)が構成される。
【0032】
<窒化剤供給系>
また、処理室201の外部には、窒化剤としての窒素含有ガス(還元性ガス)を供給する窒素含有ガス供給源220bが設けられている。窒素含有ガス供給源220bには、窒素含有ガス供給管213bの上流側端部が接続されている。窒素含有ガス供給管213bの下流側端部は、バルブvb3を介してガス導入口210に接続されている。窒素含有ガス供給管213bには、窒素含有ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222bと、窒素含有ガスの供給を制御するバルブvb1,vb2,vb3が設けられている。窒素含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアジン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、または、Nガス等が用いられ、本実施形態では、例えばアンモニア(NH)ガスが用いられる。主に、窒素含有ガス供給源220b、窒素含有ガス供給管213b、MFC222b、バルブvb1,vb2,vb3により、窒化剤供給系としての窒素含有ガス供給系(窒素含有ガス供給ライン)が構成される。
【0033】
<酸化剤供給系>
また、処理室201の外部には、酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給源220gが設けられている。酸素含有ガス供給源220gには、酸素含有ガス供給管213gの上流側端部が接続されている。酸素含有ガス供給管213gの下流側端部は、バルブvg3を介してガス導入口210に接続されている。酸素含有ガス供給管213gには、酸素含有ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222gと、酸素含有ガスの供給を制御するバルブvg1,vg2,vg3が設けられている。酸素含有ガスとしては、例えば、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、水蒸気(HO)等が用いられ、本実施形態では、例えば酸素(O)ガスが用いられる。
【0034】
また、処理室201の外部には、水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給源220hが設けられている。水素含有ガス供給源220hには、水素含有ガス供給管213hの上流側端部が接続されている。水素含有ガス供給管213hの下流側端部は、バルブvh3を介してガス導入口210に接続されている。水素含有ガス供給管213hには、水素含有ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222hと、水素ガスの供給を制御するバルブvh1,vh2,vh3が設けられている。水素含有ガスとしては、例えば、水素(H)ガス、重水素(D)ガス、アンモニア(NH)ガス、メタン(CH)ガス等が用いられ、本実施形態では、例えば水素(H)ガスが用いられる。
【0035】
主に、酸素含有ガス供給源220g、酸素含有ガス供給管213g、MFC222g、バルブvg1,vg2,vg3により、酸素含有ガス供給系(酸素含有ガス供給ライン)が構成される。また、主に、水素含有ガス供給源220h、水素含有ガス供給管213h、MFC222h、バルブvh1,vh2,vh3により、水素含有ガス供給系(水素含有ガス供給ライン)が構成される。また、主に、酸素含有ガス供給系、または、酸素含有ガス供給系及び水素含有ガス供給系により、酸化剤供給系(酸化剤供給ライン)が構成される。酸化剤としては、酸素含有ガスを単体で用いるか、酸素含有ガスと水素含有ガスとの混合ガス(例えばO+H)を用いることができる。なお、酸素含有ガスに水素含有ガスを添加しない場合、すなわち、酸化剤として酸素含有ガスを単体で用いる場合には、
水素含有ガス供給系は設けなくてもよい。
【0036】
<パージガス供給系>
また、処理室201の外部には、パージガスを供給するパージガス供給源220c,220eが設けられている。パージガス供給源220c,220eには、パージガス供給管213c,213eの上流側端部がそれぞれ接続されている。パージガス供給管213cの下流側端部は、バルブvc3を介してガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213eの下流側端部は、バルブve3を介して原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の部分に合流し、ガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213c,213eには、パージガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222c,222eと、パージガスの供給を制御するバルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3と、がそれぞれ設けられている。パージガスとしては、例えばNガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが用いられる。主に、パージガス供給源220c,220e、パージガス供給管213c,213e、MFC222c,222e、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3により、パージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0037】
<ベント(バイパス)系>
また、原料ガス供給管213aのバルブva3よりも上流側には、ベント管215aの上流側端部が接続されている。また、ベント管215a下流側端部は排気管261の圧力調整器262よりも下流側であって原料回収トラップ263よりも上流側に接続されている。ベント管215aには、ガスの流通を制御するバルブva4が設けられている。
【0038】
上記構成により、バルブva3を閉じ、バルブva4を開くことで、原料ガス供給管213a内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく、ベント管215aを介して処理室201をバイパスさせ、排気管261より排気することが可能となる。主に、ベント管215a、バルブva4によりベント系(ベントライン)が構成される。
【0039】
なお、バブラ220aの周りには、サブヒータ206aが設けられることは上述した通りだが、この他、キャリアガス供給管237a、原料ガス供給管213a、パージガス供給管213e、ベント管215a、排気管261、処理容器202、シャワーヘッド240等の周囲にもサブヒータ206aが設けられている。サブヒータ206aは、これらの部材を例えば100℃以下の温度に加熱することで、これらの部材内部での原料ガスの再液化を防止するように構成されている。
【0040】
<制御部>
本実施形態にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御する制御部としてのコントローラ280を有している。コントローラ280は、ゲートバルブ251、昇降機構207b、搬送ロボット273、ヒータ206、サブヒータ206a、圧力調整器(APC)262、真空ポンプ264、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc3,ve1〜ve3,vg1〜vg3,vh1〜vh3、マスフローコントローラ222a,222b,222c,222e,222g,222h等の動作を制御する。
【0041】
(2)基板処理工程
続いて、半導体装置の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置を用いて、処理室201内でウェハ200上に酸化タンタル系の膜として化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した酸窒化タンタル膜を形成する基板処理工程について、図1、図6を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。図6は、本発明の実施形態における成膜工程のガス供給のタイミング図である。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280によ
り制御される。
【0042】
なお、ここでは、ウェハ200を収容した処理室201内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスとしてのTBTDETガスと、窒化剤としてのNHガスとを供給して、ウェハ200上に窒化タンタル層(CVD−TaN層)を形成する工程と、処理室201内に酸化剤としてのOガスを供給して、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、CVD−TaN層を酸化する工程と、を交互に複数回繰り返すことで、ウェハ200上に、化学量論的にタンタル(Ta)および窒素(N)に対し酸素(O)が不足した導電性の酸窒化タンタル膜(TaN膜)を形成する例について説明する。
【0043】
<基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)>
まず、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図4に示すウェハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ251を開き、処理室201と搬送室271とを連通させる。そして、搬送ロボット273により、搬送室271内から処理室201内へ、処理対象のウェハ200を搬送アーム273aで支持した状態で搬入する(S1)。処理室201内に搬入したウェハ200は、支持台203の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。搬送ロボット273の搬送アーム273aが処理室201内から搬送室271内へ戻ると、ゲートバルブ251が閉じられる。
【0044】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図3に示すウェハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没し、ウェハ200は、支持台203上面のサセプタ217上に載置される(S2)。
【0045】
<圧力調整工程(S3)、温度調整工程(S4)>
続いて、圧力調整器(APC)262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する(S3)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S4)。なお、温度調整工程(S4)は、圧力調整工程(S3)と並行して行うようにしてもよいし、圧力調整工程(S3)よりも先行して行うようにしてもよい。ここで、所定の処理温度、処理圧力とは、後述するCVD−TaN層形成工程(S5a)において、CVD法によりCVD−TaN層を形成可能な処理温度、処理圧力である。すなわち、CVD−TaN層形成工程(S5a)で用いる原料が自己分解する程度の処理温度、処理圧力である。なお、ここでいう所定の処理温度、処理圧力は、後述する酸化工程(S5c)において、ウェハ200上に形成したCVD−TaN層に対して酸化処理がなされ得る処理温度、処理圧力でもある。
【0046】
なお、基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)、圧力調整工程(S3)、及び温度調整工程(S4)においては、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3,vb3,vg3,vh3を閉じ、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開くことで、処理室201内にNガスを常に流しておく。これにより、ウェハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0047】
工程S1〜S4と並行して、原料(TBTDET)を気化させて原料ガス(TBTDETガス)を生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブva1,va2,va5を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させておく(予備気化工程)。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3を閉じたまま、バルブva4を開くことにより、原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。バブラにて原料ガスを安定して生成させるには所定の時間を要する。このた
め、本実施形態では、原料ガスを予め生成させておき、バルブva3,va4の開閉を切り替えることにより、原料ガスの流路を切り替える。その結果、バルブの切り替えにより、処理室201内への原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0048】
<成膜工程(S5)>
〔CVD−TaN層形成工程(S5a)〕
続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブva4を閉じ、バルブva3を開いて、処理室201内への原料ガス(TBTDETガス)の供給を開始する。原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。また、同時に、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブvb1,vb2,vb3を開いて、処理室201内への窒化剤としての窒素含有ガス(NHガス)の供給を開始する。なお、窒素含有ガスの供給は、原料ガスの供給よりも先行して開始するようにしてもよい。すなわち、原料ガスと窒素含有ガスとを同時に供給する前に、窒素含有ガスを単独で流す工程(第1窒素含有ガスパージ工程)を設けるようにしてもよい。窒素含有ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な窒素含有ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。なお、窒素含有ガスは、シャワーヘッド240内にて原料ガスと混合されることとなる。すなわち、シャワーヘッド240からは窒素含有ガスと原料ガスとの混合ガスが供給され、この混合ガスがウェハ200に対して均一に供給されることとなる。
【0049】
このとき、処理温度(ウェハ温度)、処理圧力(処理室内圧力)は、原料ガスが自己分解する程度の処理温度、処理圧力とされるので、処理室201内或いはウェハ200表面において、原料ガスと窒素含有ガスとの気相反応が生じる。その結果、ウェハ200上には、原料ガスが単独で熱分解することにより形成される熱分解タンタル層ではなく、原料ガスと窒素含有ガスとによるCVD反応が生じることで窒化タンタル層としてのCVD−TaN層が形成される。
【0050】
このように、CVD−TaN層形成工程(S5a)では、ウェハ200を収容した処理室201内にCVD反応が生じる条件下で、原料ガスと窒素含有ガスとを供給し排気して、ウェハ200上に、熱分解タンタル層ではなく、CVD−TaN層を形成する。
【0051】
なお、原料ガスが熱分解することで形成される熱分解タンタル層中には、原料ガスに由来する炭素(C)成分等が、不純物として多量に混入してしまうことがある。この傾向は、特に、有機系の原料を用いる場合に顕著となり、中でも特に、ブチルイミノ基、すなわち、ターシャリーブチルイミノ基を含む原料を用いる場合に顕著となる。さらには、ブチルイミノ基、すなわち、ターシャリーブチルイミノ基と、エチル基およびメチル基のうち少なくとも一つと、アミノ基とを含む原料を用いる場合に特に顕著となる。なお、TBTDETは、ブチルイミノ基と、エチル基と、アミノ基とを含む原料であり、TBTEMTは、ブチルイミノ基と、エチル基と、メチル基と、アミノ基とを含む原料であり、TBTDMTは、ブチルイミノ基と、メチル基と、アミノ基とを含む原料である。
【0052】
これに対し、本実施形態では、処理室201内に原料ガスを供給する際、窒素含有ガスを併せて供給することで、係る不純物のタンタル層中への混入を抑制したり、係る不純物をタンタル層中から除去したりすることができる。すなわち、ウェハ200上にCVD−TaN層を形成する過程において、すなわちCVD反応が進行する過程において、窒素含有ガスの作用によりCVD−TaN層中への不純物の混入を抑制できる。また、その際、ウェハ200上に熱分解タンタル層が一時的に形成されたとしても、窒素含有ガスと熱分
解タンタル層とを反応(窒化反応)させることができるので、その反応が進行する過程において熱分解タンタル層中に混入していた不純物を除去でき、不純物の少ないCVD−TaN層を形成することができる。そして、後述する所定回数実施工程(S5e)で形成するTaN膜中の不純物濃度を低減させることができる。なお、これらの作用は、原料として、TBTDET、TBTEMT、TBTDMTなどの有機系の原料を用いる場合に特に顕著に働くこととなる。
【0053】
CVD−TaN層形成工程(S5a)にて形成するCVD−TaN層の厚さは、後述する酸化工程(S5c)で用いる酸化剤の酸化力や、TaN膜の目標とする酸素濃度等に応じて適宜決定される。例えば、酸化力を一定とした場合、CVD−TaN層の厚さを薄くすると、後述する酸化工程(S5c)にて、CVD−TaN層の酸化量を増やすことができ、所定回数実施工程(S5e)で形成するTaN膜中の酸素濃度を上昇させることができる。また、例えば、同じく酸化力を一定とした場合、CVD−TaN層の厚さを厚くすると、後述する酸化工程(S5c)にてCVD−TaN層の酸化量を抑えることができ、所定回数実施工程(S5e)で形成するTaN膜中の酸素濃度を低減させることができる。
【0054】
処理室201内への原料ガスと窒素含有ガスとの供給時には、処理室201内における原料ガス及び窒素含有ガスの拡散を促すように、バルブve1,ve2,ve3,vc1,vc2,vc3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0055】
処理室201内への原料ガスと窒素含有ガスとの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブva3を閉じ、バルブva4を開いて、処理室201内への原料ガスの供給を停止すると共に、バルブvb1,vb2,vb3を閉じ、処理室201内への窒素含有ガスの供給を停止する。なお、窒素含有ガスの供給は、原料ガスの供給を停止した後に、停止するようにしてもよい。すなわち、原料ガスと窒素含有ガスとを同時に供給した後に、継続して窒素含有ガスを単独で流す工程(第2窒素含有ガスパージ工程)を設けるようにしてもよい。上述の第1窒素含有ガスパージ工程や第2窒素含有ガスパージ工程を設けることにより、処理室201内に原料ガスが単独で存在する状態になることを避けることができ、成膜の始めや終わりに熱分解タンタル層が形成されてしまうことを防止することができる。
【0056】
〔パージ工程(S5b)〕
バルブva3,vb1,vb2,vb3を閉じ、原料ガス及び窒素含有ガスの供給を停止した後は、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3が開いた状態を維持し、処理室201内へのNガスの供給を継続する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留している原料ガス、窒素含有ガス、反応副生成物等を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。
【0057】
〔酸化工程(S5c)〕
処理室201内をパージしたら、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブvg1,vg2,vg3を開いて、処理室201内への酸化剤の供給を開始する。上述したように、本実施形態では酸化剤としてOガスを単体で用いる。酸化剤は、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な酸化剤は、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。このとき、ウェハ200上に供給された酸化剤が、ウェハ200上に形成されているCVD−TaN層を酸化させることで、酸窒化タンタル層(TaN層)がウェハ200上に形成
される。このとき、CVD−TaN層の酸化は、ノンプラズマの雰囲気下で熱的に行われ、さらに、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で行われる。なお、CVD−TaN層の酸化はプラズマを用いて行うこともできるが、その場合、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応を不飽和とするのが難しくなる。一方、CVD−TaN層の酸化をノンプラズマの雰囲気下で熱的に行うようにすると、酸化をソフトに行うことができ、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応を不飽和とするのが容易となる。よって、本実施形態では、CVD−TaN層の酸化を、ノンプラズマの雰囲気下で熱的に行うようにしている。
【0058】
なお、酸化工程(S5c)を実施することで、CVD−TaN層を酸化させる以外に、CVD−TaN層(すなわちTaN層)中の窒素濃度を低減させることができる。すなわち、ウェハ200上に供給された酸化剤が、CVD−TaN層中に含まれるTa−N結合の少なくとも一部を切り離す。タンタル(Ta)原子との結合を切り離された窒素(N)原子は、CVD−TaN層中から除去され、N等として排出される。また、窒素原子との結合が切られることで余ったタンタル原子の結合手は、酸化剤に含まれる酸素(O)原子と結びつく。このように、CVD−TaN層中から窒素が除去され、これにより、後述する所定回数実施工程(S5e)にて形成するTaN膜中の窒素濃度を低減させることができる。
【0059】
なお、酸化工程(S5c)で用いる酸化剤の酸化力を高めたり、酸化時間を長くしたり、CVD−TaN層形成工程(S5a)にて形成するCVD−TaN層の厚さを薄くしたりすることで、CVD−TaN層からの窒素の除去を促進できる。これにより、組成に窒素を殆ど含まないTaO層を形成でき、後述する所定回数実施工程(S5e)にてTaO膜を形成できる。なお、この場合、化学量論的にタンタル(Ta)に対し酸素(O)が不足した導電性の酸化タンタル膜(TaO膜)が形成されることとなる。
【0060】
処理室201内への酸化剤の供給時には、原料ガス供給管213a内への酸化剤の侵入を防止するように、また、処理室201内における酸化剤の拡散を促すように、バルブve1,ve2,ve3,vc1,vc2,vc3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0061】
処理室201内への酸化剤の供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvg1,vg2,vg3を閉じ、処理室201内への酸化剤の供給を停止する。
【0062】
〔パージ工程(S5d)〕
バルブvg1,vg2,vg3を閉じ、酸化剤の供給を停止した後は、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3が開いた状態を維持し、処理室201内へのNガスの供給を継続する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留している酸化剤や反応副生成物等を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。
【0063】
〔所定回数実施工程(S5e)〕
以上のCVD−TaN層形成工程(S5a)、パージ工程(S5b)、酸化工程(S5c)、パージ工程(S5d)を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回行うことで、ウェハ200上に、所定膜厚の酸窒化タンタル膜(TaN膜)を形成する。なお、このとき、化学量論的にタンタル(Ta)に対し酸素(O)が不足すると共に、窒素(N)に対し酸素(O)が不足した導電性のTaN膜が形成されることとなる。本実施形態の手法によれば、膜中の酸素とタンタルとの比が、1:1〜1:30の範囲内にあり、膜中の酸素と窒素との比が、1:5〜1:50の範囲内にあ
る導電性のTaN膜を形成できることを確認した。なお、このときのTaN膜の膜中酸素濃度は1〜15%であることを確認した。また、本実施形態の手法によれば、抵抗値が、1〜10000mmΩ・cmであるTaN膜を形成できることを確認した。
【0064】
なお、サイクル数は、TaN膜の目標膜厚と、1サイクル毎に形成するCVD−TaN層の厚さと、によって定まる。例えば、TaN膜の目標膜厚が50nmであるとき、1サイクルあたりに形成するCVD−TaN層の厚さを1nm、5nm、10nmとすれば、サイクル数はそれぞれ50回、10回、5回となる。なお、上述したように、1サイクル毎に形成するCVD−TaN層の厚さは、酸化剤の酸化力や目標とする酸素濃度等に応じて適宜決定される。
【0065】
なお、本実施形態では、原料をパルス状に流すだけでなく、連続的に流すようにしてもよく、CVD−TaN層形成工程(S5a)、パージ工程(S5b)、酸化工程(S5c)、パージ工程(S5d)のサイクルを1回実施するのがこのケース(原料を連続供給するケース)に相当する。ただし、化学量論的な組成に対し酸素が極めて不足したTaN膜を形成するような場合、すなわち、TaN膜中の酸素と窒素との比を、1:5〜1:50の範囲内とするような微量組成制御を行う場合には、上述のサイクルを複数回繰り返す必要がある。すなわち、薄いTaN層を形成し、その薄いTaN層を僅かに酸化させ、これを複数回繰り返すことで、TaN層に少しずつ酸素をドープしていく必要がある。このようにサイクリックに成膜することで、微量組成制御を行う場合であっても深さ方向に均一な組成を有するTaN膜を形成することができることとなる。一方、微量組成制御を行う場合に上述のサイクルを1回だけ実施する場合には、上述のサイクルを複数回実施する場合のような微妙なコントロールができず、深さ方向に均一な組成を有するTaN膜を形成することは難しい。
【0066】
〔残留ガス除去工程(S6)〕
ウェハ200上に所定膜厚のTaN膜が形成された後、処理室201内の真空引きを行い、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3が開いた状態を維持し、処理室201内へのNガスの供給を継続する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留しているガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。
【0067】
<基板搬出工程(S7)>
その後、上述した基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)に示した手順とは逆の手順により、所定膜厚のTaN膜を形成した後のウェハ200を、処理室201内から搬送室271内へ搬出し、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。
【0068】
なお、本実施形態における成膜工程(S5)でのウェハ200の処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):300〜450℃、
処理圧力(処理室内圧力):20〜1330Pa、
バブリング用キャリアガス供給流量:10〜1000sccm、
(原料(TBTDET)ガス供給流量:10〜200sccm)
窒素含有ガス(NHガス)供給流量:50〜1000sccm、
1サイクル毎の原料ガス及び窒素含有ガス供給時間:10秒〜30分、好ましくは、10〜600秒、
酸化剤(Oガス)供給流量:10〜500sccm、
1サイクル毎の酸化剤供給時間:10〜600秒、
パージガス(N)供給流量:1000〜3000sccm、
1サイクル毎のパージ時間:0.1〜600秒、
サイクル数:1〜400回、
TaN膜の膜厚:10〜50nm
が例示される。
【0069】
なお、上述の処理圧力帯で、処理温度を300℃未満とすると、CVD−TaN層形成工程(S5a)において、原料(TBTDET)が自己分解せず、CVDによる成膜反応が生じなくなる。また、上述の処理圧力帯で、処理温度が450℃を超えると、成膜レートが上昇し過ぎ、膜厚を制御するのが難しくなり、段差被覆性が低下する。よって、CVD−TaN層形成工程(S5a)において、CVDによる成膜反応を生じさせ、膜厚を制御可能とし、段差被覆性を向上させるには、処理温度を300℃以上、450℃以下とする必要がある。なお、この処理圧力帯、処理温度帯であれば、酸化工程(S5c)においてCVD−TaN層がノンプラズマの雰囲気下で熱的に酸化され得ることを確認しており、さらに、上述の処理条件(酸化条件)下であれば、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応が不飽和となることを確認している。よって、本実施形態では、CVD−TaN層形成工程(S5a)と酸化工程(S5c)とを、同様の処理温度帯、同様の処理圧力帯に設定して行っている。これにより、CVD−TaN層形成工程(S5a)と酸化工程(S5c)との間に、処理温度を変更する工程や処理圧力を変更する工程を設けることが不要となり、スループット、すなわち生産性を向上させることができる。なお、生産性向上の観点では、CVD−TaN層形成工程(S5a)と酸化工程(S5c)とを、同様の処理温度帯で行うことは重要であるが、処理圧力の変更については生産性に及ぼす影響は小さい。よって、酸化工程(S5c)では、酸化処理に最適な圧力帯を選択するようにしてもよい。
【0070】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0071】
(a)本実施形態によれば、ウェハ200上にCVD−TaN層を形成するCVD−TaN層形成工程(S5a)と、CVD−TaN層をその酸化反応が不飽和となる条件下で酸化する酸化工程(S5c)と、を交互に複数回行う。これにより、化学量論的にタンタル(Ta)に対し酸素(O)が不足すると共に、窒素(N)に対し酸素(O)が不足した導電性のTaN膜、すなわち、化学量論的な組成に対し酸素が極めて不足したTaN膜を形成することができる。例えば、本実施形態の手法によれば、膜中の酸素とタンタルとの比が1:1〜1:30の範囲内にあり、膜中の酸素と窒素との比が、1:5〜1:50の範囲内にある導電性のTaN膜を形成することができる。
【0072】
(b)また、本実施形態によれば、ウェハ200上にCVD−TaN層を形成するCVD−TaN層形成工程(S5a)と、CVD−TaN層をその酸化反応が不飽和となる条件下で酸化する酸化工程(S5c)と、を交互に複数回行う。これにより、所定回数実施工程(S5e)で形成するTaN膜を、厚さ方向全域に渡り均一に酸化させることができる。
【0073】
例えば、形成するTaN膜の目標膜厚が50nmであるとき、厚さが50nmのCVD−TaN層を形成し、1回の酸化工程(S5c)により厚さが50nmのCVD−TaN層全体を酸化させようとしても、酸化剤の酸化力によっては、CVD−TaN層の表面近傍は酸化されるものの、表面から離れた内側部分では充分に酸化させることができない場合がある。このような場合、CVD−TaN層形成工程(S5a)にて形成するCVD−TaN層の厚さを例えば5nmと薄くし、所定回数実施工程(S5e)におけるサイクル数を10回とすれば、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下であっても、CVD−TaN層の酸化量を増加させることができ、TaN膜を
厚さ方向全域に渡って均一に酸化させることが容易となる。すなわち、1サイクル毎に酸化させるCVD−TaN層の厚さを薄くして、形成したCVD−TaN層を酸化させ易くすることで、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下であっても、CVD−TaN層の酸化反応を促すことができ、TaN膜を厚さ方向全域に渡り均一に酸化させることができる。
【0074】
(c)本実施形態によれば、1サイクル毎に形成するCVD−TaN層の厚さを変化させることで、TaN膜中の酸素濃度を制御することができ、さらにはTaN膜の抵抗率を制御することができる。
【0075】
例えば、上述の場合において、CVD−TaN層形成工程(S5a)にて形成するCVD−TaN層の厚さを5nmから1nmへと更に薄くし、所定回数実施工程(S5e)におけるサイクル数を10回から50回に増やすことで、TaN膜中の酸素濃度を上昇させることができる。すなわち、1サイクル毎に酸化させるCVD−TaN層の厚さをより薄くして、CVD−TaN層をより酸化させ易くすることで、CVD−TaN層それぞれの酸化反応を更に促し、TaN膜中の酸素濃度を上昇させることができ、さらにはTaN膜中の抵抗率を上昇させることができる。
【0076】
また例えば、CVD−TaN層形成工程(S5a)にて形成するCVD−TaN層の厚さを例えば5nmから10nmと厚くし、所定回数実施工程(S5e)におけるサイクル数を10回から5回に減らすことで、TaN膜中の酸素を意図的に欠損させ、酸素濃度を低減させることができる。すなわち、1サイクル毎に酸化させるCVD−TaN層の厚さを厚くして、CVD−TaN層の酸化反応を抑えることで、CVD−TaN層それぞれの酸化量を抑え、TaN膜中の酸素濃度を低減させることができ、さらにはTaN膜中の抵抗率を低下させることができる。
【0077】
また例えば、CVD−TaN層の厚さを1サイクル毎に変化させることで、TaN膜中の酸素濃度分布を、厚さ方向に任意に変化させることができる。
【0078】
(d)本実施形態にかかるCVD−TaN層形成工程(S5a)では、CVD反応が生じる条件下で、原料ガスと窒素含有ガスとを供給する。このように、CVD反応を利用してCVD−TaN層を形成することで、CVD−TaN層の段差被覆性、すなわちTaN膜の段差被覆性を向上させることができる。なお、処理温度を300〜450℃、処理圧力を20〜1330Paの範囲内とすることで、CVDによる成膜反応を確実に発生させつつ、成膜レートの過度な上昇を抑えることができ、CVD−TaN層の段差被覆性、すなわち、TaN膜の段差被覆性をより確実に向上させることができる。
【0079】
(e)本実施形態に係るCVD−TaN層形成工程(S5a)では、ウェハ200を収容した処理室201内にCVD反応が生じる条件下で、原料ガスと窒素含有ガスとを同時に供給する。そして、ウェハ200上に、熱分解タンタル層ではなく、CVD−TaN層を形成する。これにより、CVD−TaN層中への不純物の混入を抑制したり、CVD−TaN層中から不純物を除去したりすることができ、TaN膜中の不純物濃度を低減させることができ、さらには抵抗率を低下させることができる。
【0080】
なお、原料ガスを熱分解させることで形成される熱分解タンタル層中には、原料ガスに由来する炭素(C)成分等が、不純物として多量に混入してしまうことがある。そのため、原料ガスを熱分解させて熱分解タンタル層を形成する工程と、酸化剤により熱分解タンタル層を酸化させる工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを1回以上行うことで酸化タンタル膜を形成する方法では、酸化タンタル膜中の不純物濃度が上昇し、さらには抵抗率が上昇し易くなる。
【0081】
これに対し、本実施形態では、処理室201内に原料ガスを供給する際、窒素含有ガスを併せて供給することで、係る不純物のCVD−TaN層中への混入を抑制したり、係る不純物をCVD−TaN層中から除去したりすることができる。すなわち、ウェハ200上にCVD−TaN層を形成する過程において、すなわちCVD反応が進行する過程において、窒素含有ガスの作用によりCVD−TaN層中への不純物の混入を抑制できる。また、その際、ウェハ200上に熱分解タンタル層が一時的に形成されたとしても、窒素含有ガスと熱分解タンタル層とを反応させることができるので、その反応が進行する過程において熱分解タンタル層中に混入していた不純物を除去でき、不純物の少ないCVD−TaN層を形成することができる。そして、これらの作用により、TaN膜中の不純物濃度を低減させることができる。なお、本実施形態では、係る不純物のCVD−TaN層中への混入抑制や、不純物のCVD−TaN層中からの除去処理を1サイクル毎に行っており、これにより、TaN膜中の不純物濃度を、厚さ方向全域に渡ってより確実に低減させることができる。なお、これらの作用は、原料として、TBTDET、TBTEMT、TBTDMTなどの有機系の原料を用いる場合に特に顕著に働くこととなる。
【0082】
(f)本実施形態によれば、酸化工程(S5c)を実施することで、CVD−TaN層を酸化させる以外に、CVD−TaN層(すなわちTaN層)中から窒素を除去することができ、TaN膜中の窒素濃度を低減させることができる。
【0083】
すなわち、本実施形態に係る酸化工程(S5c)では、ウェハ200上に供給された酸化剤が、CVD−TaN層中に含まれるTa−N結合の少なくとも一部を切り離す。タンタル(Ta)原子との結合を切り離された窒素(N)原子は、CVD−TaN層中から除去されてN等として排出される。窒素原子との結合が切られることで余ったタンタル原子の結合手は、酸化剤に含まれる酸素(O)原子と結びつく。このように、CVD−TaN層中から窒素が除去され、これにより、所定回数実施工程(S5e)にて形成するTaN膜中の窒素濃度が低減される。なお、本実施形態では、CVD−TaN層中からの窒素の除去を1サイクル毎に行っており、これにより、TaN膜中の窒素濃度を、厚さ方向全域に渡ってより確実に低減させることができる。
【0084】
なお、酸化工程(S5c)で用いる酸化剤の酸化力を高めたり、酸化時間を長くしたり、CVD−TaN層形成工程(S5a)にて形成するCVD−TaN層の厚さを薄くしたりすることで、CVD−TaN層からの窒素の除去を促進でき、これにより、組成に窒素を殆ど含まないTaO層(すなわちTaO膜)を形成できる。なお、この場合、化学量論的にタンタル(Ta)に対し酸素(O)が不足した導電性の酸化タンタル膜(TaO膜)が形成されることとなる。
【0085】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では酸化剤として酸素(O)ガスを単体で用いる例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、酸化剤として、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスと水素含有ガスとしての水素(H)ガスとの混合ガスを用いるようにしてもよい。以下、酸化剤としてOガスとHガスとの混合ガスを用いる例について説明する。図7は、本実施形態における成膜工程(S5)のガス供給のタイミング図であり、酸化剤として酸素ガスと水素ガスとの混合ガスを供給する例を示している。なお、本実施形態は、上述の実施形態とは使用する酸化剤と酸化工程(S5c)が異なるだけなので、ここでは、酸化工程(S5c)についてのみ説明する。なお、他の工程は、上述の実施形態と同様である。
【0086】
すなわち、本実施形態に係る酸化工程(S5c)では、バルブvg1,vg2,vg3と共にバルブvh1,vh2,vh3を開いて、処理室201内へ、酸素ガスと水素ガス
との混合ガスを供給する。そして、加熱された減圧雰囲気下において酸素ガスと水素ガスとを反応させて原子状酸素(O)等の酸素原子を含む酸化種を生成させ、この酸化種を用いてCVD−TaN層を酸化させる。また、酸化種の持つエネルギーにより、CVD−TaN層中に含まれるTa−N結合の少なくとも一部を切り離す。タンタル原子との結合を切り離された窒素原子は、CVD−TaN層中から除去され、N等として排出される。また、窒素原子との結合が切られることで余ったタンタル原子の結合手は、酸化種に含まれる酸素原子と結びつく。このように、CVD−TaN層中から窒素が除去され、これにより、所定回数実施工程(S5e)にて形成するTaN膜中の窒素濃度を低減させることができる。
【0087】
この加熱された減圧雰囲気下での酸素ガスと水素ガスとの混合ガスを用いた酸化処理(以下、O+H酸化処理)によれば、CVD−TaN層の酸化を更に促進できると共に、CVD−TaN層からの窒素原子の除去を促進でき、所定回数実施工程(S5e)にて形成するTaN膜中の窒素濃度低減効果を更に高めることができる。
【0088】
なお、O+H酸化処理と、酸化剤として酸素ガスを単体で用いた酸化処理(以下、O酸化処理)と、酸化剤としてオゾン(O)ガスを単体で用いた酸化処理(以下、O酸化処理)と、を比較したところ、400℃以上の温度帯では、O+H酸化処理による酸化力は、O酸化処理による酸化力およびO酸化処理による酸化力を上回ることを確認した。また、O酸化処理やO酸化処理にも窒素濃度を低減する効果はあるが、400℃以上の温度帯においては、O+H酸化処理による窒素濃度低減効果は、O酸化処理による窒素濃度低減効果やO酸化処理による窒素濃度低減効果を上回ることを確認した。すなわち、このO+H酸化処理は、このような温度帯では非常に有効であることが判明した。なお、O酸化処理の場合、オゾナイザが必要となるが、このO+H酸化処理によれば、これらが不要となり、O酸化処理を行う場合に比べ、装置コストを低減することができる等のメリットがある。
【0089】
<本発明の更に他の実施形態>
上述の実施形態では、基板処理装置(成膜装置)として1度に1枚の基板を処理する枚葉式のCVD装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、基板処理装置として1度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型CVD装置を用いて成膜するようにしてもよい。以下、この縦型CVD装置について説明する。
【0090】
図5は、本実施形態で好適に用いられる縦型CVD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉302部分を図5(a)のA−A線断面図で示す。
【0091】
図5(a)に示されるように、処理炉302は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ307を有する。ヒータ307は円筒形状であり、保持板としてのヒータベースに支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0092】
ヒータ307の内側には、ヒータ307と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ303が配設されている。プロセスチューブ303は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ303の筒中空部には処理室301が形成されており、基板としてのウェハ200を、後述するボート317によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0093】
プロセスチューブ303の下方には、プロセスチューブ303と同心円状にマニホール
ド309が配設されている。マニホールド309は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド309は、プロセスチューブ303に係合しており、プロセスチューブ303を支持するように設けられている。なお、マニホールド309とプロセスチューブ303との間には、シール部材としてのOリング320aが設けられている。マニホールド309がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ303は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ303とマニホールド309とにより反応容器が形成される。
【0094】
マニホールド309には、第1ガス導入部としての第1ノズル333aと、第2ガス導入部としての第2ノズル333bとが、マニホールド309の側壁を貫通するように接続されている。第1ノズル333aと第2ノズル333bは、それぞれ水平部と垂直部とを有するL字形状であり、水平部がマニホールド309に接続され、垂直部がプロセスチューブ303の内壁とウェハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ303の下部より上部の内壁に沿って、ウェハ200の積載方向に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル333a、第2ノズル333bの垂直部の側面には、ガスを供給する供給孔である第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bがそれぞれ設けられている。この第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bは、それぞれ下部から上部にわたって同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0095】
第1ノズル333a、第2ノズル333bに接続されるガス供給系は、上述の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、第1ノズル333aに原料ガス供給系が接続され、第2ノズル333bに窒素含有ガス供給系及び酸化剤供給系(酸素含有ガス供給系及び水素含有ガス供給系)が接続される点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、原料ガスと、窒素含有ガス及び酸化剤とを、別々のノズルにより供給する。なお、原料ガスと窒素含有ガス及び酸化剤とは同一のノズルにより供給するようにしてもよい。
【0096】
マニホールド309には、処理室301内の雰囲気を排気する排気管331が設けられている。排気管331には、圧力検出器としての圧力センサ345及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ342を介して、真空排気装置としての真空ポンプ346が接続されており、圧力センサ345により検出された圧力情報に基づきAPCバルブ342を調整することで、処理室301内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ342は、真空ポンプ346を作動させた状態で弁を開閉することにより処理室301内の真空排気・真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ346を作動させた状態で弁開度を調整することにより、処理室301内の圧力を調整することができるように構成されている開閉弁である。
【0097】
マニホールド309の下方には、マニホールド309の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ319が設けられている。シールキャップ319は、マニホールド309の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ319は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ319の上面には、マニホールド309の下端と当接するシール部材としてのOリング320bが設けられている。シールキャップ319の処理室301と反対側には、後述するボート317を回転させる回転機構367が設置されている。回転機構367の回転軸355は、シールキャップ319を貫通して、ボート317に接続されており、ボート317を回転させることでウェハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ319は、プロセスチューブ303の外部に配置された昇降機構としてのボートエレベータ315によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート317を処理室301内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0098】
基板保持具としてのボート317は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなり、複数枚のウェハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート317の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱部材318が設けられており、ヒータ307からの熱がシールキャップ319側に伝わりにくくなるように構成されている。プロセスチューブ303内には、温度検出器としての温度センサ363が設置されており、温度センサ363により検出された温度情報に基づきヒータ307への通電具合を調整することにより、処理室301内の温度が所定の温度分布となるように構成されている。温度センサ363は、第1ノズル333a及び第2ノズル333bと同様に、プロセスチューブ303の内壁に沿って設けられている。
【0099】
制御部(制御手段)であるコントローラ380は、APCバルブ342、ヒータ307、温度センサ363、真空ポンプ346、回転機構367、ボートエレベータ315、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc3,ve1〜ve3,vg1〜vg3,vh1〜vh3、マスフローコントローラ222a,222b,222c,222e,222g,222h等の動作を制御する。
【0100】
次に、上記構成にかかる縦型CVD装置の処理炉302を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、ウェハ200上にTaN膜を形成する基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、縦型CVD装置を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0101】
複数枚のウェハ200をボート317に装填(ウェハチャージ)する。そして、図5(a)に示すように、複数枚のウェハ200を保持したボート317を、ボートエレベータ315によって持ち上げて処理室301内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ319はOリング320bを介してマニホールド309の下端をシールした状態となる。
【0102】
処理室301内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ346によって処理室301内を真空排気する。この際、処理室301内の圧力を圧力センサ345で測定して、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ342をフィードバック制御する。また、処理室301内が所望の温度となるように、ヒータ307によって加熱する。この際、処理室301内が所望の温度分布となるように、温度センサ363が検出した温度情報に基づきヒータ307への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構367により、ウェハ200の回転を開始させる。
【0103】
その後、上述の実施形態における成膜工程(S5)と同様な手順で、ウェハ200上に、所定膜厚のTaN膜を形成する。すなわち、ウェハ200を収容した処理室301内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスとしてのTBTDETガスと、窒化剤としてのNHガスとを供給して、ウェハ200上にCVD−TaN層を形成するCVD−TaN層形成工程(S5a)と、処理室301内に残留している原料ガス、窒化剤、反応副生成物等を除去するパージ工程(S5b)と、処理室301内に酸化剤としてのOガスを供給して、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、CVD−TaN層を酸化する酸化工程(S5c)と、処理室301内に残留している酸化剤や反応副生成物等を除去するパージ工程(S5d)と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで(S5e)、ウェハ200上に、化学量論的にタンタル(Ta)および窒素(N)に対し酸素(O)が不足した導電性のTaN膜を形成する。ウェハ200上に、所定膜厚のTaN膜が形成された後、上述の実施形態における残留ガス除去工程(S6)と同様な手順で残留ガス除去工程を行う。
【0104】
その後、ボートエレベータ315によりシールキャップ319を下降させて、マニホールド309の下端を開口させるとともに、所定膜厚のTaN膜が形成された後のウェハ200を、ボート317に保持させた状態でマニホールド309の下端からプロセスチューブ303の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウェハ200をボート317より取り出す(ウェハディスチャージ)。
【0105】
<本発明の更に他の実施形態>
上述の実施形態では、処理室内でウェハ上に化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性のTaN膜を形成する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、図13、図14、図15に示すように、処理室内でウェハ上に化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性のTaN膜を形成した後、TaN膜形成後のウェハを処理室内から取り出すことなく処理室内に収容したままの状態で、同一処理室内で連続的に、TaN膜上に、絶縁性の酸化タンタル膜(Ta膜)を形成するようにしてもよい。すなわち、処理室内でウェハ上に導電性のTaN膜と絶縁性のTa膜とを、in−situで連続的に形成するようにしてもよい。
【0106】
なお、Ta膜は、TaN膜形成後のウェハを収容した処理室内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスと、酸化剤とを供給することにより、形成することができる。この場合、原料ガス、酸化剤は、それぞれ、上述の原料ガス供給系、酸化剤供給系より供給することができる。原料ガスと酸化剤は同時に供給してもよいし、交互に供給してもよい。
【0107】
原料ガスと酸化剤とを同時に供給する場合、TaN膜上にCVD−Ta膜が形成されることとなる(図13参照)。このとき、処理温度(ウェハ温度)、処理圧力(処理室内圧力)は、原料ガスが自己分解する程度の処理温度、処理圧力とされ、処理室内或いはウェハ表面において、原料ガスと酸化剤との気相反応が生じ、TaN膜上にCVD−Ta膜が形成される。なおこのとき、化学量論的な組成を有するTa膜が形成されるような条件下で、CVD成膜が行われることとなる。
【0108】
また、原料ガスと酸化剤とを交互に供給する場合は、TaN膜上へのCVD−Ta層の形成と、酸化剤によるCVD−Ta層の酸化と、を交互に行うことで、TaN膜上にTa膜が形成されることとなる(図14参照)。このとき、酸化剤によるCVD−Ta層の酸化反応が飽和するような条件下で酸化が行われる。この場合、図14に示すように、原料ガスを供給する工程と、酸化剤を供給する工程とを、その間に処理室内をパージする工程を挟んで交互に複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、原料ガス供給工程と、パージ工程と、酸化剤供給工程と、パージ工程と、で構成されるサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0109】
また、原料ガスと酸化剤とを交互に供給する場合に、TaN膜上への原料吸着層(原料の化学吸着層)の形成と、酸化剤による原料吸着層の酸化と、を交互に行うことで、TaN膜上にTa膜を形成するようにしてもよい(図15参照)。このとき、酸化剤による原料吸着層の酸化反応が飽和するような条件下で酸化を行うこととなる。この場合、図15に示すように、原料ガスを供給する工程と、酸化剤を供給する工程とを、その間に処理室内をパージする工程を挟んで交互に複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、原料ガス供給工程と、パージ工程と、酸化剤供給工程と、パージ工程と、で構成されるサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0110】
原料ガスとしては、上述の実施形態と同様な原料ガスを用いることができ、酸化剤とし
ては上述の実施形態と同様な酸化剤を用いることができる。ただし、酸化剤としては、TaN膜を形成する場合に用いる酸化剤よりも酸化力の高い酸化剤を用いるのが好ましい。TaN膜を形成する場合は、CVD−TaN層の酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、CVD−TaN層を酸化する必要があったが、Ta膜を形成する場合には、その必要がなく、寧ろ、酸化反応が飽和するような条件下で成膜する必要があるからである。また、酸化力の高い酸化剤を用いることで、CVD−Ta膜中への不純物の混入を抑制する効果や、CVD−Ta層中や原料吸着層中からの不純物除去効果を高めることが可能となり、更に、成膜速度を向上させることも可能となるからである。例えば、TaN膜を形成する場合に酸化剤としてOガスを用い、Ta膜を形成する場合に酸化剤としてOや、O+Hを用いるのが好ましい。
【0111】
原料ガスと酸化剤との同時供給によりCVD−Ta膜を形成する場合、処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):300〜450℃、
処理圧力(処理室内圧力):20〜1330Pa、
バブリング用キャリアガス供給流量:10〜1000sccm、
(原料ガス供給流量:10〜200sccm)
酸化剤供給流量:10〜1000sccm、
Ta膜の膜厚:1〜50nm
が例示される。
【0112】
また、原料ガスと酸化剤との交互供給により、CVD−Ta層の形成と、CVD−Ta層の酸化と、を交互に行うことで、Ta膜を形成する場合、処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):300〜450℃、
処理圧力(処理室内圧力):20〜1330Pa、
バブリング用キャリアガス供給流量:10〜1000sccm、
(原料ガス供給流量:10〜200sccm)
1サイクル毎の原料ガス供給時間:10秒〜30分、好ましくは、10〜600秒、
酸化剤(Oガス)供給流量:10〜1000sccm、
1サイクル毎の酸化剤供給時間:10〜600秒、
パージガス(N)供給流量:500〜3000sccm、
1サイクル毎のパージ時間:0.1〜600秒、
サイクル数:1〜400回、
Ta膜の膜厚:1〜50nm
が例示される。
【0113】
また、原料ガスと酸化剤との交互供給により、原料吸着層の形成と、原料吸着層の酸化と、を交互に行ことで、Ta膜を形成する場合、処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):200〜400℃、
処理圧力(処理室内圧力):20〜1330Pa、
バブリング用キャリアガス供給流量:10〜1000sccm、
(原料ガス供給流量:10〜200sccm)
1サイクル毎の原料ガス供給時間:10秒〜30分、好ましくは、10〜600秒、
酸化剤(Oガス)供給流量:10〜1000sccm、
1サイクル毎の酸化剤供給時間:10〜600秒、
パージガス(N)供給流量:500〜3000sccm、
1サイクル毎のパージ時間:0.1〜600秒、
サイクル数:1〜1000回、
Ta膜の膜厚:1〜50nm
が例示される。
【0114】
上述の原料ガスと酸化剤とを同時に供給する場合、および、原料ガスと酸化剤とを交互に供給する場合のいずれの場合においても、TaN膜の成膜と、Ta膜の成膜とを、同様の処理温度帯、同様の処理圧力帯で行うことが可能である。なお、Ta膜を形成する場合も、TaN膜を形成する場合と同様、コントローラにより基板処理装置を構成する各部の動作が制御されることで、成膜処理が行われる。
【0115】
このように、処理室内でウェハ上に導電性のTaN膜を形成した後、TaN膜形成後のウェハを処理室内に収容したままの状態で、TaN膜上に、in−situで連続的に絶縁性のTa膜を形成するようにすることで、TaN膜およびTa膜形成後のウェハを処理室内から外部に取り出したとしても、Ta膜がバリア層となり、TaN膜が大気に晒されないようにすることができる。すなわち、TaN膜は酸素の影響を受けやすく、大気に晒されることで酸化され易いが、その表面にTa膜を形成することで、Ta膜が酸素ブロック層として作用し、その表面の酸化を防止することが可能となる。これにより、TaN膜の膜特性の劣化を防止することが可能となる。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
<CVD法による成膜レートに関する検証>
上述の実施形態で説明した基板処理装置を用い、処理室内にTBTDETガスを単独で供給してCVD法により形成したタンタル膜(比較例)、処理室内にTBTDETガスとHガスとを同時に供給してCVD法により形成したタンタル膜(比較例)、及び処理室内にTBTDETガスとNHガスとを同時に供給してCVD法により形成した窒化タンタル膜(実施例)の成膜レートをそれぞれ測定した。いずれも、処理圧力を100Paとし、処理温度は350℃〜450℃の間で変化させた。また、TBTDETが収容されたバブラ内温度を100℃、バブリングに用いるキャリアガスの流量を100sccm、Hガス及びNHガスの流量をそれぞれ300sccmとした。また、成長の下地となるウェハ上にはSiN膜(下地膜)を予め形成しておき、その膜厚を100nmとした。
【0117】
図8は、本実施例に係る窒化タンタル膜の成膜レートを、比較例に係るタンタル膜の成膜レートと共に示すグラフ図である。図8の横軸は、成膜時間、すなわちTBTDETガス、Hガス、NHガスの供給時間[min]を示している。図8の縦軸は、ウェハ上に形成されたタンタル膜或いは窒化タンタル膜の膜厚[nm]を示している。なお、図8の●印、□印、○印(比較例)は、処理温度をそれぞれ450℃、400℃、350℃とし、TBTDETガスを単独で供給してCVD法により形成したタンタル膜を示している。また、図8の△印(比較例)は、処理温度を400℃とし、TBTDETガスとHガスとを同時供給してCVD法により形成したタンタル膜を示している。また、図8の◇印、■印(実施例)は、処理温度をそれぞれ400℃、450℃とし、TBTDETガスとNHガスとを同時供給してCVD法により形成した窒化タンタル膜を示している。
【0118】
図8によれば、特に400℃以下の処理温度では、成膜レートに大きな差はないことが分かる。すなわち、TBTDETガスにNHガスを混ぜても、成膜レートは変化しないことが分かる。なお、450℃の処理温度では、TBTDETガスにNHガスを混ぜることで成膜レートが若干低下しているが(■印)、これは、処理室内での気相反応(すなわちウェハ表面から離れた場所での気相反応)が増加するためであると考えられる。
【0119】
(実施例2)
<抵抗率に関する検証>
上述の実施形態で説明した基板処理装置を用い、TBTDETガスを単独で供給してC
VD法により形成したタンタル膜(比較例)、及びTBTDETガスとNHガスとを同時に供給してCVD法により形成した窒化タンタル膜(実施例)の抵抗率をそれぞれ測定した。タンタル膜及び窒化タンタル膜の膜厚はそれぞれ50nmとした。他の処理条件は実施例1と同様とした。
【0120】
図9は、本実施例に係る窒化タンタル膜の抵抗率を、比較例と共に示すグラフ図である。図9の横軸は、処理温度、すなわちウェハ温度(℃)を示している。図9の縦軸は、ウェハ上に形成されたタンタル膜或いは窒化タンタル膜の抵抗率[mΩ・cm]を示している。なお、図9の□印(比較例)は、TBTDETガスを単独で供給してCVD法により形成したタンタル膜を示している。また、図9の■印(実施例)は、TBTDETガスとNHガスとを同時供給してCVD法により形成した窒化タンタル膜を示している。
【0121】
図9によれば、TBTDETガスを単独で供給してCVD法により形成したタンタル膜(□印)に比べて、TBTDETガスとNHガスとを同時供給してCVD法により形成した窒化タンタル膜(■印)の抵抗率は、桁違いに小さいことが分かる。すなわち、TBTDETガスにNHガスを混ぜることにより、窒化タンタル膜中の不純物濃度を大幅に低減することができ、これにより、抵抗率が大幅に低下することが分かる。なお、比較例においては処理温度が350℃、400℃、450℃と高くなると抵抗率は2631mΩ・cm、856mΩ・cm、35mΩ・cmと低くなり、実施例においては、処理温度が400℃、450℃と高くなると抵抗率は14mΩ・cm、1.8mΩ・cmと低くなる。すなわち、いずれの場合も、処理温度が高くなると抵抗率が低下することが分かる。
【0122】
(実施例3)
<不純物濃度に関する検証>
上述の実施形態で説明した基板処理装置を用い、TBTDETガスを単独で供給してCVD法により形成したタンタル膜(比較例)、及びTBTDETガスとNHガスとを同時に供給してCVD法により形成した窒化タンタル膜(実施例)の抵抗率をそれぞれ検証した。処理温度はいずれも400℃とし、タンタル膜及び窒化タンタル膜の膜厚はそれぞれ50nmとした。他の処理条件は実施例1と同様とした。
【0123】
図10は、比較例に係るタンタル膜の組成を示すグラフ図であり、図11は、本実施例に係る窒化タンタル膜の組成を示すグラフ図である。図10、図11の横軸は、タンタル膜或いは窒化タンタル膜の表面からの深さ[Å]をそれぞれ示している。図10、図11の縦軸は、蛍光X線分析(XRF)にて測定した原子濃度[atom%]をそれぞれ示している。
【0124】
図10(比較例)によれば、深さ0〜500[Å]付近の領域では、タンタルの原子濃度が25.6[atom%]であるのに対し、窒素、炭素、酸素の原子濃度はそれぞれ24.6、21.1、28.7[atom%]である。すなわち、TBTDETガスを単独で供給して形成したタンタル膜中には、TBTDETガスに由来する窒素(N)、炭素(C)、酸素(O)が多量に混入していることが分かる。
【0125】
これに対し、図11(実施例)によれば、深さ0〜500[Å]付近の領域では、タンタル、窒素の原子濃度がそれぞれ39、61[atom%]であるのに対し、炭素、酸素の原子濃度はそれぞれ0[atom%]である。すなわち、TBTDETガスとNHガスとを同時に供給して形成した窒化タンタル膜中には、炭素(C)、酸素(O)等の不純物が殆ど混入していないことが分かる。
【0126】
従って、TBTDETガスにNHガスを混ぜることにより、窒化タンタル膜中の不純物を除去することができ、窒化タンタル膜の不純物濃度を大幅に低減できることが分かる
。なお、図10に示すタンタル膜(厚さ50nm)の抵抗率は856[mΩ・cm]であるのに対し、図11に示す窒化タンタル膜(厚さ50nm)の抵抗率は14[mΩ・cm]であり、不純物濃度の低減に伴い、抵抗率も大幅に低下することが分かる。
【0127】
(実施例4)
<酸素濃度及び抵抗率とサイクル数との関係>
上述の実施形態で説明した基板処理装置を用い、CVD−TaN層形成工程(S5a)、パージ工程(S5b)、酸化工程(S5c)、パージ工程(S5d)を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回行うことで、ウェハ上に、所定膜厚のTaN膜を形成した。なお、処理圧力を100Pa、処理温度を325℃、TBTDETが収容されたバブラ内温度を100℃、バブリングに用いるキャリアガスの流量を100sccm、NHガスの流量を300sccm、酸化剤としてのOガスの流量を200sccm、1サイクル毎の酸化剤の供給時間を5秒とした。また、形成するTaN膜の膜厚を50nmに固定しつつ、1サイクル毎に形成するCVD−TaN層の厚さを50nm、25nm、16.7nm、8.3nmと変化させ、また、サイクル数をそれぞれ1回、2回、3回、6回と変化させて評価サンプルを作成し、それぞれの場合について酸素濃度及び抵抗率を測定した。
【0128】
図12は、本実施例に係るTaN膜の酸素濃度及び抵抗率とサイクル数との関係を示すグラフ図である。図12の横軸は、所定回数実施工程(S5e)におけるサイクル数(回)を示している。図12の右側の縦軸は、蛍光X線分析(XRF)にて測定したTaN膜の酸素強度(すなわち酸素濃度)を、図12の左側の縦軸は、TaN膜の抵抗率[mΩ・cm]をそれぞれ示している。また、図12でサイクル数が0回とは、CVD−TaN層形成工程(S5a)の後、酸化工程(S5c)を行わなかった場合を示している(参考例)。
【0129】
図12によれば、1サイクル毎に形成するCVD−TaN層の厚さを薄くして、サイクル数を多くすることで、TaN膜の酸素強度(酸素濃度)が上昇し(図中□印)、さらに抵抗率も上昇することが分かる(図中○印)。すなわち、1サイクル毎に形成するCVD−TaN層の厚さ、及びサイクル数を変化させることで、TaN膜の中の酸素濃度を制御でき、さらに抵抗率も制御できることが分かる。例えば、1サイクル毎に形成するCVD−TaN層の厚さを厚くすることで、TaN膜中の酸素を意図的に欠損させ、TaN膜の抵抗率を低下させることができる。
【0130】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0131】
本発明の一態様によれば、
基板を収容した処理室内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスと窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する工程と、
前記処理室内に酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する工程と、
を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0132】
好ましくは、前記原料ガスは、ブチルイミノ基を含む。
【0133】
また好ましくは、前記原料ガスは、ターシャリーブチルイミノ基を含む。
【0134】
また好ましくは、前記原料ガスは、エチル基およびメチル基のうち少なくとも一つと、アミノ基とをさらに含む。
【0135】
また好ましくは、前記原料ガスは、Ta[NC(CH][N(C、Ta[NC(CH][N(C)CH、または、Ta[NC(CH][N(CH、を含む。
【0136】
また好ましくは、前記窒化剤は、NH、N、N、または、Nを含む。
【0137】
また好ましくは、前記酸化剤は、O、O、HO、または、O+Hを含む。
【0138】
また好ましくは、前記酸窒化タンタル膜を形成する工程では、膜中の酸素とタンタルとの比が、1:1〜1:30の範囲内にある前記酸窒化タンタル膜を形成する。
【0139】
また好ましくは、前記酸窒化タンタル膜を形成する工程では、膜中の酸素と窒素との比が、1:5〜1:50の範囲内にある前記酸窒化タンタル膜を形成する。
【0140】
また好ましくは、前記酸窒化タンタル膜を形成した後、前記酸窒化タンタル膜が形成された前記基板を前記処理室内に収容したままの状態で、前記処理室内にタンタルを含む原料ガスと酸化剤とを供給して、前記酸窒化タンタル膜上に絶縁性の酸化タンタル膜を形成する工程をさらに有する。
【0141】
また好ましくは、前記酸窒化タンタル膜を形成した後、前記酸窒化タンタル膜が形成された前記基板を前記処理室内に収容したままの状態で、前記酸窒化タンタル膜上に、in−situで連続的に絶縁性の酸化タンタル膜を形成する工程をさらに有する。
【0142】
また好ましくは、前記窒化タンタル層を酸化する工程では、ノンプラズマの雰囲気下で熱的に前記窒化タンタル層を酸化する。
【0143】
また好ましくは、前記窒化タンタル層を形成する工程1回あたりに形成する前記窒化タンタル層の厚さを制御することで、前記酸窒化タンタル膜の膜中酸素濃度を制御する。
【0144】
また好ましくは、前記酸窒化タンタル膜を形成する工程では、前記基板の温度を300〜450℃とし、前記処理室内の圧力を20〜1330Paとする。
【0145】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容した処理室内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスと窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する工程と、
前記処理室内に酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する工程と、
を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成する工程を有する基板処理方法が提供される。
【0146】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内にタンタルを含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内に窒化剤を供給する窒化剤供給系と、
前記処理室内に酸化剤を供給する酸化剤供給系と、
基板を収容した前記処理室内にCVD反応が生じる条件下で前記原料ガスと前記窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する処理と、前記処理室内に前記酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する処理と、を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成するように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒化剤供給系および前記酸化剤供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0147】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0148】
200 ウェハ(基板)
201 処理室
202 処理容器
203 支持台
206 ヒータ
213a 原料ガス供給管
213b 窒素含有ガス供給管
213c パージガス供給管
213e パージガス供給管
213g 酸素含有ガス供給管
213h 水素含有ガス供給管
237a キャリアガス供給管
220a バブラ
261 排気管
280 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容した処理室内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスと窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する工程と、
前記処理室内に酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する工程と、
を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板を収容した処理室内にCVD反応が生じる条件下で、タンタルを含む原料ガスと窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する工程と、
前記処理室内に酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する工程と、
を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成する工程を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内にタンタルを含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内に窒化剤を供給する窒化剤供給系と、
前記処理室内に酸化剤を供給する酸化剤供給系と、
基板を収容した前記処理室内にCVD反応が生じる条件下で前記原料ガスと前記窒化剤とを供給して、前記基板上に窒化タンタル層を形成する処理と、前記処理室内に前記酸化剤を供給して、前記窒化タンタル層の前記酸化剤による酸化反応が不飽和となる条件下で、前記窒化タンタル層を酸化する処理と、を交互に複数回繰り返すことで、前記基板上に、化学量論的にタンタルおよび窒素に対し酸素が不足した導電性の酸窒化タンタル膜を形成するように、前記ヒータ、前記原料ガス供給系、前記窒化剤供給系および前記酸化剤供給系を制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−62569(P2012−62569A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131509(P2011−131509)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】