説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】 Niを含む膜の下地依存性による表面モフォロジ劣化を解決し、薄膜領域で連続膜を形成することができる半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】 処理容器内に基板を搬入する工程と、処理容器内で基板を加熱する工程と、処理容器内に還元性ガスを供給し排気して、加熱された状態の基板に対して前処理を行う工程と、処理容器内に不活性ガスを供給し排気して、処理容器内に残留する還元性ガスを除去する工程と、還元性ガスを除去した処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気して、前処理がなされた加熱された状態の基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成する処理を行う工程と、処理容器内から処理済基板を搬出する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内で基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法及びその工程において好適に用いられる基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のNiSiプロセスにおいて、Ni膜はPVD(Physical Vapor Deposition)法で成膜するのが主流であったが、近年のデバイス形状の3D化および微細化に伴い、段差被覆性の良いNi膜の成膜が求められている。PVD法は一般的に段差被覆性が非常に悪く、3D形状深さ方向への均一成膜には適していない。そこで、段差被覆性の優れたCVD(Chemical Vapor Deposition)法を適用することによって、次世代形状のデバイスにも適用可能なNiSiプロセスを構築できる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、NiSiプロセスでは、10nm程度の低抵抗であるNiを含む膜としてのNi膜の成膜が必要である。CVD法によるNi膜の成膜における重要点は、薄膜領域でNi膜が連続膜になることである。これには、初期核形成密度が非常に重要であり、下地の状態に大きく左右される。下地の状態によっては、初期核形成密度が粗になり、その結果、薄膜領域でNi膜が連続膜とはならず(不連続となり)、最終的に形成されるNi膜の表面モフォロジが劣化してしまうことがある。
【0005】
また、次世代デバイスにおけるCVD成膜での重要点の一つに膜中の不純物濃度がある。膜中に不純物が多く存在すると、デバイス特性が著しく劣化してしまうため、できる限り低減することが望ましい。ところでCVD原料の中には、原料に含まれる不純物が成膜時に膜中に取り込まれ易いものがあり、このような原料を用いて成膜する場合、膜中の不純物濃度が高くなってしまうことがある。
【0006】
本発明は、従来技術の問題点であるNiを含む膜の下地依存性による表面モフォロジ劣化を解決し、薄膜領域で連続膜を形成することができる半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。また、本発明は、従来技術の問題点である膜中不純物濃度に起因するデバイス特性の劣化を解決し、膜中不純物濃度の低い良質な膜を形成することができる半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
処理容器内に基板を搬入する工程と、
前記処理容器内で前記基板を加熱する工程と、
前記処理容器内に還元性ガスを供給し排気して、加熱された状態の前記基板に対して前処理を行う工程と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して、前記処理容器内に残留する還元性ガスを除去する工程と、
還元性ガスを除去した前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気して、前記前
処理がなされた加熱された状態の前記基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成する処理を行う工程と、
前記処理容器内から処理済基板を搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内に還元性ガスを供給する還元性ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給する原料供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の基板を加熱するヒータと、
前記処理容器内で前記基板を加熱し、前記処理容器内に還元性ガスを供給し排気して、加熱された状態の前記基板に対して前処理を行い、前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して、前記処理容器内に残留する還元性ガスを除去し、還元性ガスを除去した前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気して、前記前処理がなされた加熱された状態の前記基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成するように、前記還元性ガス供給系、前記不活性ガス供給系、前記原料供給系、前記排気系および前記ヒータを制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Niを含む膜の下地依存性による表面モフォロジ劣化を解決し、薄膜領域で連続膜を形成することができる半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することが可能となる。また、本発明によれば、膜中不純物濃度に起因するデバイス特性の劣化を解決し、膜中不純物濃度の低い良質な膜を形成することができる半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系および排気系の構成図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【図5】本発明の他の実施形態で好適に用いられる縦型CVD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は処理炉302部分を(a)のA−A線断面図で示す。
【図6】Ni(PFを使用してCVD法によりウェハ上にNi膜を形成する前に、還元性ガス(HガスあるいはNHガス)を用いてウェハに対して前処理を行った評価サンプルにおけるNi膜の抵抗率の前処理時間依存性を示す図である。
【図7】還元性ガス(Hガス、NHガス)による前処理を行った場合と、行わなかった場合のNi膜の表面モフォロジ(電子顕微鏡画像)を示す図である。
【図8】Ni膜中のP強度の前処理後のパージ時間依存性を示す図である。
【図9】評価サンプル作成におけるガス供給のタイミングを示す図であり、(A)はNi(PFを連続供給する場合、(B)はNi(PFとNとを交互供給する場合、(C)はNi(PFとHとを交互供給する場合をそれぞれ示している。
【図10】各評価サンプルにおけるNi膜のP/Ni蛍光X線強度比を示す図である。
【図11】各評価サンプルにおけるNi膜の表面モフォロジ(電子顕微鏡画像)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図3,4を参照しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ処理時における断面構成図であり、図4は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置のウェハ搬送時における断面構成図である。
【0012】
<処理室>
図3,4に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのシリコンウェハ等のウェハ200を処理する処理室201が形成されている。
【0013】
<支持台>
処理室201内には、ウェハ200を支持する支持台203が設けられている。ウェハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、ウェハ200を加熱する加熱手段(加熱源)としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、処理容器202の底部を貫通している。
【0014】
<昇降機構>
処理室201の外部には、支持台203を昇降させる昇降機構207bが設けられている。この昇降機構207bを作動させて支持台203を昇降させることにより、サセプタ217上に支持されるウェハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウェハ200の搬送時には図4で示される位置(ウェハ搬送位置)まで下降し、ウェハ200の処理時には図3で示される位置(ウェハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203下端部の周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0015】
<リフトピン>
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に立ち上がるように設けられている。また、支持台203(サセプタ217も含む)には、かかるリフトピン208bを貫通させるための貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた時には、図4に示すように、リフトピン208bの上端部がサセプタ217の上面から突出して、リフトピン208bがウェハ200を下方から支持するようになっている。また、支持台203をウェハ処理位置まで上昇させたときには、図3に示すようにリフトピン208bはサセプタ217の上面から埋没して、サセプタ217がウェハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン208bは、ウェハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0016】
<ウェハ搬送口>
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、処理室201の内外にウェハ200を搬送するためのウェハ搬送口250が設けられている。ウェハ搬送口250にはゲート
バルブ251が設けられており、ゲートバルブ251を開くことにより、処理室201内と搬送室(予備室)271内とが連通するようになっている。搬送室271は搬送容器(密閉容器)272内に形成されており、搬送室271内にはウェハ200を搬送する搬送ロボット273が設けられている。搬送ロボット273には、ウェハ200を搬送する際にウェハ200を支持する搬送アーム273aが備えられている。支持台203をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ251を開くことにより、搬送ロボット273により処理室201内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。処理室201内に搬送されたウェハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。なお、搬送室271のウェハ搬送口250が設けられた側と反対側には、図示しないロードロック室が設けられており、搬送ロボット273によりロードロック室内と搬送室271内との間でウェハ200を搬送することが可能となっている。なお、ロードロック室は、未処理もしくは処理済のウェハ200を一時的に収容する予備室として機能する。
【0017】
<排気系>
処理室201(処理容器202)の内壁側面であって、ウェハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気チャンバ260aを介して排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、及び真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気チャンバ260a、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0018】
<ガス導入口>
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するためのガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0019】
<シャワーヘッド>
ガス導入口210と処理室201との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させるための分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウェハ200の表面に供給するためのシャワー板240bと、を備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面及びシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウェハ200と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させるための第1バッファ空間(分散室)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させるための第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0020】
<排気ダクト>
処理室201(処理容器202)の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウェハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウェハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート
204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成されている。
【0021】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられている。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるためのプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0022】
支持台203がウェハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウェハ処理位置まで上昇する。その結果、ウェハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204及びロワープレート205)及び支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合(セルフクリーニングする場合)を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0023】
ここで、ウェハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、第1バッファ空間(分散室)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウェハ200上に均一に供給される。そして、ウェハ200上に供給されたガスは、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウェハ200に接触した後の余剰なガスは、ウェハ200外周部に位置する排気ダクト259上、すなわち、コンダクタンスプレート204上を、ウェハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、コンダクタンスプレート204に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。このようにガスを流すことで、処理室下部、すなわち、支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0024】
<ガス供給系>
続いて、上述したガス導入口210に接続されるガス供給系の構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系および排気系の構成図である。
【0025】
本発明の実施形態にかかる基板処理装置の有するガス供給系は、常温で液体状態であるニッケル(Ni)を含む液体原料を気化する気化部としてのバブラと、バブラにて液体原料を気化させて得た原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給系と、還元性ガスを処理室201内に供給する還元性ガス供給系と、パージガスを処理室201内に供給するパージガス供給系と、を有している。さらに、本発明の実施形態にかかる基板処理装置は、バブラからの原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスするよう排気するベント(バイパス)系を有している。以下に、各部の構成について説明
する。
【0026】
<バブラ>
処理室201の外部には、液体原料を収容する原料容器としてのバブラ220aが設けられている。バブラ220aは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)として構成されており、また、液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させる気化部としても構成されている。なお、バブラ220aの周りには、バブラ220aおよび内部の液体原料を加熱するサブヒータ206aが設けられている。原料としては、例えば、ニッケル(Ni)元素を含む金属液体原料であるテトラキストリフルオロホスフィンニッケル(Ni(PF)が用いられる。
【0027】
バブラ220aには、キャリアガス供給管237aが接続されている。キャリアガス供給管237aの上流側端部には、図示しないキャリアガス供給源が接続されている。また、キャリアガス供給管237aの下流側端部はバブラ220a内に収容した液体原料内に浸されている。キャリアガス供給管237aには、キャリアガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222aと、キャリアガスの供給を制御するバルブva1,va2が設けられている。なお、キャリアガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばNガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが好適に用いられる。主に、キャリアガス供給管237a、MFC222a、バルブva1,va2により、キャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)が構成される。
【0028】
上記構成により、バルブva1,va2を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させることが可能となる。
【0029】
<原料ガス供給系>
バブラ220aには、バブラ220a内で生成された原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給管213aが接続されている。原料ガス供給管213aの上流側端部は、バブラ220aの上部に存在する空間に連通している。原料ガス供給管213aの下流側端部は、ガス導入口210に接続されている。原料ガス供給管213aには上流側から順にバルブva5,va3が設けられている。バルブva5はバブラ220aから原料ガス供給管213a内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、バブラ220aの近傍に設けられている。バルブva3は、原料ガス供給管213aから処理室201内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、ガス導入口210の近傍に設けられている。バルブva3と後述するバルブve3は高耐久高速ガスバルブとして構成されている。高耐久高速ガスバルブは、短時間で素早くガス供給の切り替えおよびガス排気ができるように構成された集積バルブである。なお、バルブve3は、原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の空間を高速にパージしたのち、処理室201内をパージするためのパージガスの導入を制御するバルブである。
【0030】
上記構成により、バブラ220aにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとともに、バルブva5,va3を開くことにより、原料ガス供給管213aから処理室201内へ原料ガスを供給することが可能となる。主に、原料ガス供給管213a、バルブva5,va3により原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。
【0031】
また、主に、キャリアガス供給系、バブラ220a、原料ガス供給系により、原料供給系(原料供給ライン)が構成される。
【0032】
<還元性ガス供給系>
また、処理室201の外部には、還元性ガスを供給する還元性ガス供給源220bが設けられている。還元性ガス供給源220bには還元性ガス供給管213bの上流側端部が接続されている。還元性ガス供給管213bの下流側端部はバルブvb3を介してガス導入口210に接続されている。還元性ガス供給管213bには、還元性ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222bと、還元性ガスの供給を制御するバルブvb1,vb2,vb3が設けられている。還元性ガスとしては水素含有ガスが用いられ、本実施形態では、例えば水素(H)ガスやアンモニア(NH)ガスが用いられる。すなわち、本実施形態では、還元性ガス供給源220bは水素含有ガス供給源として構成される。主に、還元性ガス供給源220b、還元性ガス供給管213b、MFC222b、バルブvb1,vb2,vb3により還元性ガス供給系(還元性ガス供給ライン)、すなわち水素含有ガス供給系(水素含有ガス供給ライン)が構成される。
【0033】
<パージガス供給系>
また、処理室201の外部には、パージガスを供給するためのパージガス供給源220c,220eが設けられている。パージガス供給源220c,220eには、パージガス供給管213c,213eの上流側端部がそれぞれ接続されている。パージガス供給管213cの下流側端部はバルブvc3を介してガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213eの下流側端部はバルブve3を介して、原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の部分に合流して、ガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213c,213eには、パージガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222c,222eと、パージガスの供給を制御するバルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3がそれぞれ設けられている。さらに、メンテナンス用として、還元性ガス供給管213bの還元性ガス供給源220bとバルブvb1との間に、パージガス供給管213fがバルブvc4を介して接続されている。パージガス供給管213fはパージガス供給管213cのマスフローコントローラ222cとバルブvc2との間の部分から分岐して設けられている。パージガスとしては、例えばNガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが用いられる。主に、パージガス供給源220c,220e、パージガス供給管213c,213e,213f、MFC222c,222e、バルブvc1,vc2,vc3,vc4,ve1,ve2,ve3により、パージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0034】
<ベント(バイパス)系>
また、原料ガス供給管213aのバルブva3よりも上流側には、ベント管215aの上流側端部が接続されている。また、ベント管215a下流側端部は排気管261の圧力調整器262よりも下流側であって原料回収トラップ263よりも上流側に接続されている。ベント管215aには、ガスの流通を制御するためのバルブva4が設けられている。
【0035】
上記構成により、バルブva3を閉じ、バルブva4を開くことで、原料ガス供給管213a内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく、ベント管215aを介して処理室201をバイパスさせ、排気管261より排気することが可能となる。主に、ベント管215a、バルブva4によりベント系(ベントライン)が構成される。
【0036】
なお、バブラ220aの周りには、サブヒータ206aが設けられることは上述した通りだが、この他、キャリアガス供給管237a、原料ガス供給管213a、パージガス供給管213e、ベント管215a、排気管261、処理容器202、シャワーヘッド240等の周囲にもサブヒータ206aが設けられている。サブヒータ206aはこれらの部材を、例えば100℃以下の温度に加熱することで、これらの部材内部での原料ガスの再
液化を防止するように構成されている。
【0037】
<制御部>
本実施形態にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御する制御部としてのコントローラ280を有している。コントローラ280は、ゲートバルブ251、昇降機構207b、搬送ロボット273、ヒータ206、サブヒータ206a、圧力調整器(APC)262、真空ポンプ264、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc4,ve1〜ve3、流量コントローラ222a,222b,222c,222e等の動作を制御する。
【0038】
(2)基板処理工程
続いて、半導体装置の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置を用いて処理容器内でウェハ上に金属膜を形成する基板処理工程について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280により制御される。
【0039】
なお、ここでは、処理容器内に基板としてのウェハを搬入して加熱し、その状態で、処理容器内に還元性ガスとしてHガスまたはNHガスを供給し排気して、加熱された状態のウェハに対して前処理を行う工程と、処理容器内に不活性ガスとしてNガスを供給し排気して、処理容器内に残留する還元性ガスを除去する工程と、還元性ガスを除去した処理容器内にニッケル(Ni)を含む原料としてNi(PFを供給し排気して、前処理がなされた加熱された状態のウェハ上にニッケルを含む金属膜としてニッケル膜(Ni膜)を形成する工程と、を行う例について説明する。なお、Ni膜を形成する工程では、処理容器内にNi(PFを供給し排気して、前処理がなされた加熱された状態のウェハ上にNi膜を形成する工程と、処理容器内に不活性ガスとしてNガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、前処理(還元処理)がなされたウェハ上にCVD法により所定膜厚のNi膜を形成する例について説明する。
【0040】
なお、本明細書では、金属膜という用語は、金属原子を含む導電性の物質で構成される膜を意味しており、これには金属単体で構成される導電性の金属単体膜の他、導電性の金属窒化膜、導電性の金属酸化膜、導電性の金属酸窒化膜、導電性の金属複合膜、導電性の金属合金膜、導電性の金属シリサイド膜等も含まれる。なお、Ni膜は金属単体で構成される導電性の金属単体膜である。以下、これを詳細に説明する。
【0041】
<基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)>
まず、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図4に示すウェハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ251を開き、処理室201と搬送室271とを連通させる。そして、搬送ロボット273により搬送室271内から処理室201内へ処理対象のウェハ200を搬送アーム273aで支持した状態で搬入する(S1)。処理室201内に搬入したウェハ200は、支持台203の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。搬送ロボット273の搬送アーム273aが処理室201内から搬送室271内へ戻ると、ゲートバルブ251が閉じられる。
【0042】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図3に示すウェハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没し、ウェハ200は、支持台203上面のサセプタ217上に載置される(S2)。
【0043】
<圧力調整工程(S3)、温度調整工程(S4)>
続いて、圧力調整器(APC)262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力
となるように制御する(S3)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウェハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S4)。なお、温度調整工程(S4)は、圧力調整工程(S3)と並行して行うようにしてもよいし、圧力調整工程(S3)よりも先行して行うようにしてもよい。ここで、所定の処理温度、処理圧力とは、後述する原料供給工程において、CVD法によりNi膜を形成可能な処理温度、処理圧力である。すなわち、原料供給工程で用いる原料が自己分解する程度の処理温度、処理圧力である。なお、ここでいう所定の処理温度、処理圧力は、後述する還元性ガス供給工程において、ウェハ200に対して還元性ガスによる前処理がなされ得る処理温度、処理圧力でもある。
【0044】
なお、基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)、圧力調整工程(S3)、及び温度調整工程(S4)においては、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3,vb3を閉じ、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開くことで、処理室201内にNガスを常に流しておく。これにより、ウェハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0045】
<前処理工程(S5)>
〔還元性ガス供給工程(S5a)〕
続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブvb1,vb2,vb3を開いて、処理室201内への還元性ガスとしてのHガスまたはNHガスの供給を開始する。還元性ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な還元性ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。このときウェハ200上に供給された還元性ガスにより、ウェハ200に対して前処理がなされる。
【0046】
なお、処理室201内への還元性ガスの供給時には、原料ガス供給管213a内への還元性ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における還元性ガスの拡散を促すように、バルブve1,ve2,ve3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい
【0047】
バルブvb1,vb2,vb3を開き還元性ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvb1,vb2,vb3を閉じ、処理室201内への還元性ガスの供給を停止する。その後、還元性ガス供給源220bに設けられた図示しないバルブを閉じた状態で、バルブvc1,vc4,vb1,vb2,vb3を開き、還元性ガス供給管213b内にNガスを供給して、還元性ガス供給管213b内をパージする。
【0048】
〔パージ工程(S5b)〕
その後、処理室201内の真空引きを行い、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開き、処理室201内にNガスを供給する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留している還元性ガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。なお、このパージ工程を省略することも考えられるが、このパージ工程を省略した場合、後述する原料供給工程(S6a)において、還元性ガスと原料(Ni(PF)ガスとが処理室201内で混ざることとなり、Ni(PFの分解が過度に進み、形成されるNi膜中に、原料を構成する元素の一つであるP(リン)が混入し易くなり、Ni膜中のP濃度が上昇してしまうことが判明した。よって、原料としてNi(PFのように還元性ガス(HガスまたはNHガス)と反応し易い原料を用いる場合においては、このパージ工程は省略することはできず、Ni膜中の不純物濃度(P濃度)を低減する上で、不可欠な工程といえる。
【0049】
工程S1〜S5と並行して、原料(Ni(PF)を気化させて原料ガスを生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブva1,va2,va5を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させておく(予備気化工程)。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3を閉じたまま、バルブva4を開くことにより、原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。バブラにて原料ガスを安定して生成させるには所定の時間を要する。このため、本実施形態では、原料ガスを予め生成させておき、バルブva3,va4の開閉を切り替えることにより、原料ガスの流路を切り替える。その結果、バルブの切り替えにより、処理室201内への原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0050】
<Ni膜形成工程(S6)>
〔原料供給工程(S6a)〕
続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブva4を閉じ、バルブva3を開いて、処理室201内への原料ガス(Ni原料)の供給を開始する。原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウェハ200上に均一に供給される。余剰な原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。このとき処理温度、処理圧力は原料ガスが自己分解する程度の処理温度、処理圧力とされるので、ウェハ200上に供給された原料ガスが熱分解することでCVD反応が生じ、これにより還元性ガスによる前処理がなされたウェハ200上にNi膜が形成される。
【0051】
なお、処理室201内への原料ガスの供給時には、還元性ガス供給管213b内への原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における原料ガスの拡散を促すように、バルブvc1,vc2,vc3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0052】
バルブva3を開き原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブva3を閉じ、バルブva4を開いて、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。
【0053】
〔パージ工程(S6b)〕
バルブva3を閉じ、原料ガスの供給を停止した後は、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開き、処理室201内にNガスを供給する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留している原料ガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。
【0054】
〔所定回数実施工程(S6c)〕
以上の原料供給工程、パージ工程、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数実施することにより、前処理がなされたウェハ200上に、所定膜厚のニッケル膜(Ni膜)を形成する。なお、本実施形態では、原料をパルス状に流すだけでなく、連続的に流すようにしてもよく、原料供給工程とパージ工程とのサイクルを1回実施するのがこのケース(原料を連続供給するケース)に相当する。
【0055】
〔残留ガス除去工程(S7)〕
ウェハ200上に、所定膜厚のNi膜が形成された後、処理室201内の真空引きを行い、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開き、処理室201内に
ガスを供給する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留しているガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。
【0056】
<基板搬出工程(S7)>
その後、上述した基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)に示した手順とは逆の手順により、所定膜厚のNi膜を形成した後のウェハ200を処理室201内から搬送室271内へ搬出して、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。なお、ニッケルシリサイド(NiSi)プロセスにおいては、例えば、この後、所定膜厚のNi膜を形成した後のウェハを、アニール装置へと搬送し、アニール装置にてこのウェハに対して不活性雰囲気下でアニールを施し、Ni膜とその下地のSi(ウェハ)とを固相反応させてNiSi膜を形成することとなる。
【0057】
なお、本実施形態における還元性ガスによる前処理工程(S5)でのウェハ200の処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):150〜250℃、
処理圧力(処理室内圧力):50〜5000Pa、
還元性ガス(HガスまたはNHガス)供給流量:50〜1000sccm、
還元性ガス(HガスまたはNHガス)供給時間10〜600秒、
パージガス(N)供給流量:10〜10000sccm、
が例示される。
【0058】
また、本実施形態におけるNi膜形成工程(S6)でのウェハ200の処理条件としては、
処理温度(ウェハ温度):150〜250℃、
処理圧力(処理室内圧力):50〜5000Pa、
バブリング用キャリアガス供給流量:10〜1000sccm、
(ニッケル原料(Ni(PF)ガス供給流量:0.1〜2sccm)
パージガス(N)供給流量:10〜10000sccm、
1サイクルあたりの原料(Ni(PF)供給時間:0.1〜600秒、
1サイクルあたりのパージ時間:0.1〜600秒、
サイクル数:1〜400回、
Ni膜厚:10〜30nm
が例示される。
【0059】
なお、上述の処理圧力帯で、処理温度を150℃未満とすると、原料供給工程(S6a)において、原料(Ni(PF)が自己分解せず、CVDによる成膜反応が生じなくなる。また、上述の処理圧力帯で、処理温度が250℃を超えると、成膜レートが上昇し過ぎ、膜厚を制御するのが難しくなる。よって、原料供給工程(S6a)において、CVDによる成膜反応を生じさせ、膜厚を制御可能とするためには、処理温度を150℃以上、250℃以下とする必要がある。なお、この処理圧力帯、処理温度帯であれば、還元性ガス供給工程(S5a)において、ウェハ200に対して前処理がなされ得ることを確認している。よって、本実施形態では、前処理工程(S5)とNi膜形成工程(S6)とを、同様の処理温度帯、同様の処理圧力帯に設定して行っている。これにより、前処理工程(S5)とNi膜形成工程(S6)との間に、処理温度を変更する工程や処理圧力を変更する工程を設けることが不要となり、スループット、すなわち生産性を向上させることができる。なお、生産性向上の観点では、前処理工程(S5)とNi膜形成工程(S6)とを、同様の処理温度帯で行うことは重要であるが、処理圧力の変更については生産性に及ぼす影響は小さい。よって、前処理工程(S5)では、還元処理に最適な圧力帯を選択
するようにすればよい。
【0060】
本実施形態によれば、Ni膜形成工程(S6)の前に、前処理工程(S5)においてウェハ200に対して還元性ガスを用いた前処理を施すことにより、Ni膜形成工程(S6)においてウェハ200表面上へのNiの吸着が促進され、初期核形成密度が密になり、その結果、薄膜領域での連続膜(低抵抗膜)の形成が可能となり、良好な表面モフォロジを有する良質なNi膜を形成することが可能となる。また、前処理工程(S5)における還元処理により、Ni膜のグレイン密度だけでなく、グレインサイズを制御することも可能となる。更には、段差被覆性、密着性に優れ、良質なNi膜を形成することが可能となる。
【0061】
上述の実施形態では、Niを含む膜としてNi膜を形成する例について説明したが、Niを含む膜は、Ni、NiSi、またはNi(式中、xおよびyは整数または分数を意味する)であってもよい。本発明は、Niを含む膜がこれらの場合にも、同様に適用することができる。
【0062】
上述の実施形態では、温度調整工程(S4)の完了後に前処理工程(S5)を開始する例について説明したが、温度調整工程(S4)の完了前に前処理工程(S5)を開始してもよい。すなわち、ウェハ200の昇温中に還元性ガス供給工程(S5a)を開始してもよい。このようにすることで、前処理工程(S5)の終了時間を早めることが可能となり、基板処理工程のスループットを向上させることが可能となる。
【0063】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、基板処理装置(成膜装置)として1度に1枚の基板を処理する枚葉式のCVD装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、基板処理装置として1度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型CVD装置を用いて成膜するようにしてもよい。以下、この縦型CVD装置について説明する。
【0064】
図5は、本実施形態で好適に用いられる縦型CVD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉302部分を図5(a)のA−A線断面図で示す。
【0065】
図5(a)に示されるように、処理炉302は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ307を有する。ヒータ307は円筒形状であり、保持板としてのヒータベースに支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0066】
ヒータ307の内側には、ヒータ307と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ303が配設されている。プロセスチューブ303は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ303の筒中空部には処理室301が形成されており、基板としてのウェハ200を、後述するボート317によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0067】
プロセスチューブ303の下方には、プロセスチューブ303と同心円状にマニホールド309が配設されている。マニホールド309は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド309は、プロセスチューブ303に係合しており、プロセスチューブ303を支持するように設けられている。なお、マニホールド309とプロセスチューブ303との間には、シール部材としてのOリング320aが設けられている。マニホールド309がヒータベースに支持されることに
より、プロセスチューブ303は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ303とマニホールド309とにより反応容器が形成される。
【0068】
マニホールド309には、第1ガス導入部としての第1ノズル333aと、第2ガス導入部としての第2ノズル333bとが、マニホールド309の側壁を貫通するように接続されている。第1ノズル333aと第2ノズル333bは、それぞれ水平部と垂直部とを有するL字形状であり、水平部がマニホールド309に接続され、垂直部がプロセスチューブ303の内壁とウェハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ303の下部より上部の内壁に沿って、ウェハ200の積載方向に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル333a、第2ノズル333bの垂直部の側面には、ガスを供給する供給孔である第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bがそれぞれ設けられている。この第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bは、それぞれ下部から上部にわたって同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0069】
第1ノズル333a、第2ノズル333bに接続されるガス供給系は、上述の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、第1ノズル333aに原料ガス供給系が接続され、第2ノズル333bに還元性ガス供給系が接続される点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、原料ガスと、還元性ガスとを、別々のノズルにより供給する。なお、原料ガスと還元性ガスは同一のノズルにより供給するようにしてもよい。
【0070】
マニホールド309には、処理室301内の雰囲気を排気する排気管331が設けられている。排気管331には、圧力検出器としての圧力センサ345及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ342を介して、真空排気装置としての真空ポンプ346が接続されており、圧力センサ345により検出された圧力情報に基づきAPCバルブ342を調整することで、処理室301内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ342は弁を開閉して処理室301内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調整して処理室301内の圧力を調整することができるよう構成されている開閉弁である。
【0071】
マニホールド309の下方には、マニホールド309の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ319が設けられている。シールキャップ319は、マニホールド309の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ319は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ319の上面には、マニホールド309の下端と当接するシール部材としてのOリング320bが設けられている。シールキャップ319の処理室301と反対側には、後述するボート317を回転させる回転機構367が設置されている。回転機構367の回転軸355は、シールキャップ319を貫通して、ボート317に接続されており、ボート317を回転させることでウェハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ319は、プロセスチューブ303の外部に配置された昇降機構としてのボートエレベータ315によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート317を処理室301内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0072】
基板保持具としてのボート317は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなり、複数枚のウェハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート317の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱部材318が設けられており、ヒータ307からの熱がシールキャップ319側に伝わりにくくなるように構成されている。プロセスチューブ303内には、温度検出器としての温度センサ363が設置されており、温度センサ363により検出された温度情報に基づきヒータ307への通電具合を調整することにより、処理室301内
の温度が所定の温度分布となるように構成されている。温度センサ363は、第1ノズル333a及び第2ノズル333bと同様に、プロセスチューブ303の内壁に沿って設けられている。
【0073】
制御部(制御手段)であるコントローラ380は、APCバルブ342、ヒータ307、温度センサ363、真空ポンプ346、回転機構367、ボートエレベータ315、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc4,ve1〜ve3、流量コントローラ222a,222b,222c,222d,222e等の動作を制御する。
【0074】
次に、上記構成にかかる縦型CVD装置の処理炉302を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、CVD法によりウェハ200上に金属膜を形成する基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、縦型CVD装置を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0075】
複数枚のウェハ200をボート317に装填(ウェハチャージ)する。そして、図5(a)に示すように、複数枚のウェハ200を保持したボート317を、ボートエレベータ315によって持ち上げて処理室301内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ319はOリング320bを介してマニホールド309の下端をシールした状態となる。
【0076】
処理室301内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ346によって処理室301内を真空排気する。この際、処理室301内の圧力を圧力センサ345で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ342をフィードバック制御する。また、処理室301内が所望の温度となるように、ヒータ307によって加熱する。この際、処理室301内が所望の温度分布となるように、温度センサ363が検出した温度情報に基づきヒータ307への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構367によりボート317を回転させることで、ウェハ200を回転させる。
【0077】
その後、上述の実施形態における前処理工程(S5)、Ni膜形成工程(S6)と同様な手順で、前処理工程、Ni膜形成工程を行う。すなわち、まず、処理室301内に還元性ガスとしてHガスまたはNHガスを供給し排気して、加熱された状態のウェハ200に対して前処理を行う工程(S5a)と、処理室301内に不活性ガスとしてNガスを供給し排気して、処理室301内に残留する還元性ガスを除去する工程(S5b)と、を行う。その後、還元性ガスを除去した処理室301内に原料としてNi(PFを供給し排気して、前処理がなされた加熱された状態のウェハ200上にNi膜を形成する工程(S6a)と、処理室301内に不活性ガスとしてNガスを供給し排気して処理室301内をパージする工程(S6b)と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで(S6c)、前処理(還元処理)がなされたウェハ200上にCVD法により所定膜厚のNi膜を形成する。ウェハ200上に、所定膜厚のNi膜が形成された後、上述の実施形態における残留ガス除去工程(S7)と同様な手順で残留ガス除去工程を行う。
【0078】
その後、ボートエレベータ315によりシールキャップ319を下降させて、マニホールド309の下端を開口させるとともに、所定膜厚のNi膜が形成された後のウェハ200を、ボート317に保持させた状態でマニホールド309の下端からプロセスチューブ303の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウェハ200をボート317より取り出す(ウェハディスチャージ)。
【0079】
<本発明のさらに他の実施形態>
上述したように、還元性ガスと原料(Ni(PF)とが混ざると、Ni(PFの分解が過度に進み、形成されるNi膜中にP(リン)が混入し易くなり、Ni膜中
のP濃度が上昇してしまうことがある。上述の実施形態では、還元性ガス供給後、原料供給前に処理室内をパージすることで、還元性ガスと原料とが混ざらないようにして、Ni膜中のP濃度を低減する方法について説明した。
【0080】
この他、上述の実施形態とは異なる手法によりNi膜中のP濃度を低減することもできる。本実施形態では、Ni膜形成工程(S6)において、処理容器内にNiを含む原料としてNi(PFを供給し排気してCVD法によりウェハ上にNi膜を形成する工程(S6a)と、処理容器内に不活性ガスとしてNガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程(S6b)と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことで(S6c)、ウェハ上に所定膜厚のNi膜を形成する成膜手法を用いることにより、Ni膜中のP濃度を低減する。
【0081】
この場合、原料供給工程(S6a)においては薄いNi膜が形成されるが、その際、原料が分解することで生じるPやF等の不純物がNi膜に付着もしくは混入してしまうことがある。しかしながら、その後に行うパージ工程(S6b)において、そのNi膜が加熱された不活性ガス雰囲気(Nガス雰囲気)下に放置されることで、Ni膜に付着もしくは混入したPやF等の不純物が、アニール効果により脱離する。脱離したPやF等の不純物は、不活性ガスを用いたパージにより処理室外に排出される。これを細かく、複数回繰り返すことにより、Ni膜に付着もしくは混入する不純物を脱離しつつ、良質なNi膜を丁寧に成膜していくことが可能となる。
【0082】
このように、本実施形態の処理シーケンスによれば、成膜の過程で原料が分解することで生じるPやF等の不純物がNi膜中に取り込まれるのを抑制することができ、形成されるNi膜の膜中不純物濃度、特にP濃度を大幅に低減することができる。すなわち、膜中不純物濃度、特にP濃度の低い良質なNi膜を形成することができるようになる。そしてこれにより、デバイス特性の劣化を防止することが可能となる。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
<Ni膜の抵抗率の前処理時間依存性>
上述の実施形態で説明した基板処理装置を用い、表面に100nmのSiO膜が形成されたウェハに対して、還元性ガス(Hガス、NHガス)を用いて前処理工程を行い、その後、Ni(PFを用いてNi膜形成工程を行い、ウェハ表面のSiO膜上にNi膜が形成された評価サンプルを作成した。なお、前処理工程における還元性ガスの種類、還元性ガス供給時間を変化させた評価サンプルを複数作成し、それぞれの評価サンプルのNi膜の抵抗率を測定した。なお、前処理工程、Ni膜形成工程は、上述の実施形態における前処理工程(S5)、Ni膜形成工程(S6)の処理フローと同様に行った。また、前処理工程、Ni膜形成工程における処理温度(ウェハ温度)は200℃とし、それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。
【0084】
図6に、その評価サンプルにおけるNi膜の抵抗率の前処理時間依存性を示す。図6の横軸は、前処理時間、すなわち、還元性ガス供給時間(分)を示している。図6の左側の縦軸はNi膜の膜厚(nm)を示しており、右側の縦軸はNi膜の抵抗率(μΩ・cm)を示している。また、図中白丸(○)は還元性ガスとしてHガスを用いた場合を示しており、白三角(△)は還元性ガスとしてNHガスを用いた場合を示している。なお、前処理時間0分とは、前処理工程を行わなかった評価サンプルを示している。
【0085】
図6より、前処理工程において還元性ガスとしてHガスを用いた場合も、NHガスを用いた場合も、前処理を行わなかった場合に比べ、Ni膜の膜厚は同等であるにもかか
わらず、抵抗率が低くなることが分かる。なお、Ni膜の膜厚が同等で、抵抗率が低くなることは、Ni膜のグレインが密集してグレイン密度が高くなり、Ni膜が連続膜となることを示している。特に、前処理時間1〜5分でNi膜の抵抗率が急激に低くなり、前処理時間5分でNi膜の抵抗率が最小となることが分かる。この実験データより、還元性ガスによる前処理により、Ni膜のグレイン密度を高くすることができ、低抵抗のNi膜を形成することができることを確認できた。
【0086】
(実施例2)
<前処理後のNi膜の表面モフォロジの変化>
上述の実施形態で説明した基板処理装置を用い、表面に100nmのSiO膜が形成されたウェハに対して、還元性ガス(Hガス、NHガス)を用いて前処理工程を行い、その後、Ni(PFを用いてNi膜形成工程を行い、ウェハ表面のSiO膜上にNi膜が形成された評価サンプルを作成した。なお、前処理工程における還元性ガスの種類を変化させた評価サンプルを複数作成し、それぞれの評価サンプルのNi膜の表面モフォロジを電子顕微鏡により観察した(SEM観察)。なお、前処理工程、Ni膜形成工程は、上述の実施形態における前処理工程(S5)、Ni膜形成工程(S6)の処理フローと同様に行った。また、前処理工程、Ni膜形成工程における処理温度(ウェハ温度)は200℃とし、前処理工程における還元性ガス供給時間は0分、5分とし、それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。なお、還元性ガス供給時間0分とは、前処理工程を行わなかった場合である。
【0087】
図7に、還元性ガス(Hガス、NHガス)による前処理を行った場合と、行わなかった場合のNi膜の表面モフォロジを表す電子顕微鏡画像(SEM画像)を示す。「Normal CVD」が、前処理を行わなかった場合を示しており、「H 5min preflow」、「NH 5min preflow」が、Hガスによる前処理を行った場合、NHガスによる前処理を行った場合をそれぞれ示している。
【0088】
図7より、前処理工程において還元性ガスとしてHガスを用いた場合も、NHガスを用いた場合も、前処理を行わなかった場合に比べ、Ni膜のグレインサイズが小さくなっており、また、グレイン密度も高くなっており、良好な表面モフォロジが得られることが分かる。この実験データより、還元性ガスによる前処理により、Ni膜のグレインサイズやグレイン密度を制御することができ、良好な表面モフォロジを有する良質なNi膜を形成することができることを確認できた。なお、Ni膜のグレインサイズやグレイン密度は、前処理工程における処理条件、例えば、還元性ガスの供給時間等を調整することにより、所望のサイズや所望の密度に制御できることも確認できている。
【0089】
(実施例3)
<Ni膜中P濃度の前処理後のパージ時間依存性>
上述の実施形態で説明した基板処理装置を用い、表面に100nmのSiO膜が形成されたウェハに対して、還元性ガスとしてNHガスを用いて前処理工程を行い、その後、Ni(PFを用いてNi膜形成工程を行い、ウェハ表面のSiO膜上にNi膜が形成された評価サンプルを作成した。なお、NHガス供給後、Ni(PF供給前に行うNガスによるパージの時間を変化させた評価サンプルを複数作成し、それぞれの評価サンプルのNi膜中のP強度をXRF(蛍光X線分析装置)にて測定した。なお、前処理工程、Ni膜形成工程は、上述の実施形態における前処理工程(S5)、Ni膜形成工程(S6)の処理フローと同様に行った。また、前処理工程、Ni膜形成工程における処理温度(ウェハ温度)は200℃とし、NHガス供給後、Ni(PF供給前に行うパージの時間は、0.5分(30秒)、2分、5分と変化させ、それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。
【0090】
図8に、その評価サンプルにおけるNi膜中P強度の前処理後のパージ時間依存性を示す。図8の横軸は、パージ時間、すなわち、NHガス供給後、Ni(PF供給前に供給するNガスの供給時間(分)を示している。図8の縦軸はNi膜中のP強度(任意単位(a.u.))を示している。また、図中白丸(○)は前処理工程を行った場合のNi膜中のP強度を、点線は前処理工程を行わなかった(NHガスを供給しなかった)場合のNi膜中のP強度を示している。
【0091】
図8より、パージ時間を0.5分(30秒)とした場合、Ni膜中のP強度は比較的高いが、パージ時間を延ばすことでNi膜中のP強度を低減できることが分かる。また、パージ時間を5分とした場合には、Ni膜中のP強度を、パージ時間を0.5分(30秒)とした場合の1/2以下にすることができ、NHガスを供給しない場合に近づくことが分かる。この実験データより、原料としてNi(PFのように還元性ガスと反応し易い原料を用いる場合においては、還元性ガスの供給と原料の供給との間に行う処理室内のパージは、Ni膜中不純物(P濃度)を低減する上で必須であることを確認できた。
【0092】
(実施例4)
<P/Ni蛍光X線強度比の処理シーケンス依存性>
上述の実施形態で説明した基板処理装置を使用して、表面に100nmのSiO膜が形成されたウェハに対して、原料としてNi(PFを用いてNi膜の成膜を行い、ウェハ表面のSiO膜上にNi膜が形成された評価サンプルを作成した。なお、処理シーケンス等を変えてNi膜を形成した評価サンプル、具体的には、次の3つの評価サンプルを作成し、それぞれの評価サンプルにおけるP/NI蛍光X線強度比を測定した。
【0093】
(A)Ni(PFの連続供給によりNi膜を形成した評価サンプル(Conventional CVD)。
(B)Ni(PFとNとの交互供給によりNi膜を形成した評価サンプル(Cyclic N CVD)。
(C)Ni(PFとHとの交互供給によりNi膜を形成した評価サンプル(Cyclic H CVD)。
【0094】
図9に、各評価サンプルを作成した際の処理シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す。評価サンプル(A)は、通常のCVD法によりNi膜を形成したサンプルである。評価サンプル(B)は、上述の実施形態のNi膜形成工程(S6)において、Ni(PFを供給する原料供給工程(S6a)と、Nガスを用いたパージ工程(S6b)と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことによりNi膜を形成したサンプルである。評価サンプル(C)は、Ni(PFを供給する原料供給工程と、Hガスを用いたパージ工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことによりNi膜を形成したサンプルである。なお、各評価サンプルを作成した際の処理条件は、上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。
【0095】
図10に、各評価サンプルにおけるNi膜のP/Ni蛍光X線強度比を示す。図10の横軸は、各評価サンプルを示しており、縦軸は、P/Ni蛍光X線強度比を示している。なお、P/Ni蛍光X線強度比はNiに対するPの濃度を示しており、大きいほどP濃度が高く、小さいほどP濃度が低いことを示している。
【0096】
図10より、評価サンプル(C)(Cyclic H CVD)におけるNi膜のP濃度は、評価サンプル(A)(Conventional CVD)におけるNi膜のP濃度と同程度であるが、評価サンプル(B)(Cyclic N CVD)におけるNi膜のP濃度は、評価サンプル(A)(Conventional CVD)におけるNi膜のP濃度よりも大幅に低くなっていることが分かる。この実験データより、Ni(P
を供給する原料供給工程と、Nガスを用いたパージ工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返してNi膜を形成することにより、膜中不純物濃度、特に膜中P濃度の低い良質なNi膜を形成することができることを確認できた。
【0097】
(実施例5)
<Ni膜の表面モフォロジの変化>
上述の3つの評価サンプルのそれぞれにおけるNi膜の表面モフォロジを電子顕微鏡により観察した(SEM観察)。図11に、各評価サンプルのNi膜の表面モフォロジを表す電子顕微鏡画像(SEM画像)を示す。図11より、評価サンプル(A)(Conventional CVD)におけるNi膜と比較すると、評価サンプル(B)(Cyclic N CVD)におけるNi膜も、評価サンプル(C)(Cyclic H CVD)におけるNi膜も、表面モフォロジの劣化がないことが分かる。これらの実験データより、Ni(PFを用いたCVD法による成膜では、Ni(PFを供給する工程と、Nガスによるパージ工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返してNi膜を形成することで、Ni膜の表面モフォロジを劣化させることなく膜中不純物濃度、特に膜中P濃度の低い良質なNi膜を形成することができることを確認できた。
【0098】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0099】
本発明の一態様によれば、
処理容器内に基板を搬入する工程と、
前記処理容器内で前記基板を加熱する工程と、
前記処理容器内に還元性ガスを供給し排気して、加熱された状態の前記基板に対して前処理を行う工程と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して、前記処理容器内に残留する還元性ガスを除去する工程と、
還元性ガスを除去した前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気して、前記前処理がなされた加熱された状態の前記基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成する処理を行う工程と、
前記処理容器内から処理済基板を搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0100】
好ましくは、前記所定膜厚のニッケルを含む膜を形成する処理を行う工程では、前記処理容器内に前記ニッケルを含む原料を供給し排気してCVD法により前記基板上にニッケルを含む膜を形成する工程と、前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。
また好ましくは、前記ニッケルを含む原料が、ニッケルおよびリンを含む原料である。
また好ましくは、前記ニッケルを含む原料が、ニッケル、リンおよびフッ素を含む原料である。
また好ましくは、前記ニッケルを含む原料がNi(PFである。
また好ましくは、前記還元性ガスがHガスまたはNHガスである。
また好ましくは、前記前処理を行う工程と前記処理を行う工程は、前記基板の温度を同様な温度帯に設定した状態で行われる。
また好ましくは、前記ニッケルを含む膜はCVD法により形成される。
【0101】
本発明の他の態様によれば、
処理容器内に基板を搬入する工程と、
前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気してCVD法により前記基板上にニッケルを含む膜を形成する工程と、前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処
理容器内をパージする工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより、前記基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成する処理を行う工程と、
前記処理容器内から処理済基板を搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0102】
好ましくは、前記ニッケルを含む原料が、ニッケルおよびリンを含む原料である。
また好ましくは、前記ニッケルを含む原料が、ニッケル、リンおよびフッ素を含む原料である。
また好ましくは、前記ニッケルを含む原料がNi(PFである。
【0103】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内に還元性ガスを供給する還元性ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給する原料供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の基板を加熱するヒータと、
前記処理容器内で前記基板を加熱し、前記処理容器内に還元性ガスを供給し排気して、加熱された状態の前記基板に対して前処理を行い、前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して、前記処理容器内に残留する還元性ガスを除去し、還元性ガスを除去した前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気して、前記前処理がなされた加熱された状態の前記基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成するように、前記還元性ガス供給系、前記不活性ガス供給系、前記原料供給系、前記排気系および前記ヒータを制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0104】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給する原料供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気してCVD法により基板上にニッケルを含む膜を形成し、前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージし、これを1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより、前記基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成するように、前記原料供給系、前記不活性ガス供給系、および、前記排気系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0105】
200 ウェハ(基板)
201 処理室
202 処理容器
203 支持台
206 ヒータ
213a 原料ガス供給管
213b 還元性ガス供給管
213c パージガス供給管
213e パージガス供給管
237a キャリアガス供給管
220a バブラ
261 排気管
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に基板を搬入する工程と、
前記処理容器内で前記基板を加熱する工程と、
前記処理容器内に還元性ガスを供給し排気して、加熱された状態の前記基板に対して前処理を行う工程と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して、前記処理容器内に残留する還元性ガスを除去する工程と、
還元性ガスを除去した前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気して、前記前処理がなされた加熱された状態の前記基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成する処理を行う工程と、
前記処理容器内から処理済基板を搬出する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記所定膜厚のニッケルを含む膜を形成する処理を行う工程では、前記処理容器内に前記ニッケルを含む原料を供給し排気してCVD法により前記基板上にニッケルを含む膜を形成する工程と、前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ニッケルを含む原料がNi(PFであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記還元性ガスがHガスまたはNHガスであることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器内に還元性ガスを供給する還元性ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給する原料供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の基板を加熱するヒータと、
前記処理容器内で前記基板を加熱し、前記処理容器内に還元性ガスを供給し排気して、加熱された状態の前記基板に対して前処理を行い、前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して、前記処理容器内に残留する還元性ガスを除去し、還元性ガスを除去した前記処理容器内にニッケルを含む原料を供給し排気して、前記前処理がなされた加熱された状態の前記基板上に所定膜厚のニッケルを含む膜を形成するように、前記還元性ガス供給系、前記不活性ガス供給系、前記原料供給系、前記排気系および前記ヒータを制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−142288(P2011−142288A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148047(P2010−148047)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】