説明

半導体装置の製造方法

【課題】樹脂封止やワイヤボンディング高さの量産によるバラつきによりワイヤの露出を防止して、不良品の増加や製品寿命の悪化を抑えて、またパッケージの薄型化を実現することができ、最薄の樹脂厚でのパッケージの設計を可能することを目的とする。
【解決手段】半導体チップの主表面の電極パッドと配線基板の接続パッドとの間にワイヤをボンディングする工程と、ここでワイヤは、半導体チップの電極パッドから上方に向かってループ状を形成し、ループ状のワイヤにフラット部を形成する工程と、フラット部が埋設するように半導体チップを封止材料で封止する工程とを備える半導体装置の製造方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング方式のBGA半導体装置に樹脂等を用いて封止を施すための半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なワイヤボンディング方式のBGA半導体装置の構成を図14に示す。図14に示す半導体装置101は、略四角形の配線基板2を有している。配線基板2の一面には、複数の接続パッド3が形成されており、半導体チップ6が絶縁性接着剤となる例えばDAF7(ダイアタッチフィルム)を介して固定されている。また半導体チップ6の上面6aの周辺近傍位置には複数の電極パッド8が形成されており、それぞれ対応する配線基板2の接続パッド3との間を、例えばAu、Cu等からなる導電性のワイヤ9により結線されることで電気的に接続されている。そして配線基板2の一面には、半導体チップ6及びワイヤ9を覆うように例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる封止体10で覆われている。また、配線基板2の一面と反対側の他面には、半田等からなる半田ボール5が備えられている。半田ボール5と接続パッド3は、配線基板2内の図示略の配線によって接続されている。
【0003】
携帯電話やデジタルカメラ等の電子機器の進化に伴い、搭載する半導体装置の小型・薄型化への要望は強く、色々な小型・薄型化の対応方法が必要になっている。薄型化の方法の1つとして、搭載するチップやワイヤのパッケージ上部を覆っている封止樹脂の厚さ(図14のH1部分、半導体チップの上面6aから封止体10の上面10aまでの厚み)の薄型化が重要であるが、設計上の厚さH1を薄くし過ぎると、樹脂封止やワイヤボンディング高さの量産バラつきによりワイヤ9の露出が発生する可能性が高まり、不良品の増加や製品寿命の悪化につながるため、上部封止樹脂の厚さH1(例:H1=0.20mm程度)を一定値以下に薄く設計できない状況である。
【0004】
パッケージ上部の薄型化をすすめる製造方法の1つとして特開平10−189631号があり、ボンディングワイヤ上部に金型の一部(可動部金型)を降下しワイヤ高さを規制したまま一次樹脂封止し、可動部金型を上に戻してから二次樹脂封止する方法が開示されている。この発明では金型の一部のみを降下し戻すために、可動部金型を戻したときの位置ずれによる痕跡がパッケージ表面に残り、外観不良やマーキング位置が制約される支障が考えられる。また、製品の形状毎に可動部金型を設計・製作する必要があり、コストや金型設定の手間がかかるなど製造原価や製造時間の増大につながるデメリットがあり、薄型化の方法としては不十分と考えられる。
【0005】
また、特開2002−299357号の発明では、金型でボンディングワイヤの最上部を押圧して樹脂封止した後、上部表面に絶縁物被膜(フィルム等)を貼付ける製造方法が開示されているが、被膜を利用することによる信頼度低下(ハガレ、耐湿性)や、被膜を貼付ける手間(作業時間の増加)などのデメリットが考えられる。
【特許文献1】特開平10−189631号公報
【特許文献2】特開2002−299357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来の欠点を鑑みてなされたもので、樹脂封止やワイヤボンディング高さの量産によるバラつきによりワイヤの露出を防止して、不良品の増加や製品寿命の悪化を抑えて、またパッケージの薄型化を実現することができ、最薄の樹脂厚でのパッケージの設計を可能することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、半導体チップの主表面の電極パッドと配線基板の接続パッドとの間にワイヤをボンディングする工程と、ここで該ワイヤは、該半導体チップの該電極パッドから上方に向かってループ状を形成し、前記ループ状のワイヤにフラット部を形成する工程と、前記フラット部が埋設するように半導体チップを封止材料で封止する工程とを備える半導体装置の製造方法である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記フラット部形成工程において、前記半導体チップの主表面に対向して当接面を有する可動部材を配設し、該可動部材を下降させて該当接面を前記ワイヤの最頂部に当接させて押圧して該ワイヤにフラット部を形成する、前記封止工程では、前記可動部材を前記フラット部から上昇させて前記当接面と前記フラット部との間に形成される空間に封止部材を設けて該フラット部が埋設するようにして前記半導体チップを封止する、ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記フラット部形成工程において、前記半導体チップの主表面に対向して当接部材を有する可動部材を配設し、該可動部材を第1位置まで下降させて該当接部材を前記ワイヤの最頂部に当接させて押圧して該ワイヤにフラット部を形成する、前記封止工程では、前記可動部材を前記フラット部から第2位置まで上昇させた後、前記当接部材を取り除いて該当接部材より厚さの薄い封止形成部材を取り付けて、前記可動部材を前記第1位置まで下降させて該封止形成部材と前記フラット部との間に形成された空間に封止部材を設けて該フラット部が埋設するようにして半導体チップを封止する、ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記フラット部形成工程においては、前記半導体チップの主表面に対向して当接部材に取り付けられた離型部材を有する可動部材を配設し、該可動部材を下降させて当接部材を前記ワイヤの最頂部に当接させて押圧して該ワイヤにフラット部を形成する、前記封止工程では、前記当接部材を前記フラット部に当接させた後、前記可動部材を上昇させて前記当接部材を該離型部材から分離させ、該当接部材と前記フラット部との間に形成された空間に封止部材を設けて該フラット部が埋設するようにして半導体チップを封止する、ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記当接部材は、絶縁性フィルムであることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤボンディングのワイヤループ高さを量産時のバラつきを考慮して樹脂の厚に余裕を持たせた設計しかできなかったが、本発明では封止金型をワイヤに当てワイヤ高さを揃えバラつきを抑えて不良品の増加や製品寿命の悪化を抑え、またパッケージの薄型化を実現することができる、最薄の樹脂厚でのパッケージの設計が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
「第1実施形態」
以下、本発明の第1の実施形態である半導体装置及びその製造方法について図面を参照して説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、略四角形の配線基板2を有している。配線基板2は、例えばガラスエポキシ基板であり、所定の配線が形成されている。配線基板2の一面には、複数の接続パッド3が形成されている。また配線基板2の一面には、半導体チップ6が絶縁性接着剤となる例えばDAF7(ダイアタッチフィルム)を介して固定されている。半導体チップ6は、一面に例えば論理回路や記憶回路等が形成されている。また半導体チップ6の上面(主表面)6aの周辺近傍位置には複数の電極パッド8が形成されている。
【0015】
半導体チップ6の電極パッド8は、それぞれ対応する配線基板2上の接続パッド3との間を、導電性のワイヤ19により結線されることで電気的に接続されている。ワイヤ19は例えばAu、Cu等からなる。そして配線基板2の一面は、半導体チップ6及びワイヤ19を覆うように一次封止体10で覆われている。一次封止体10は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。
また、一次封止体10の上面10aには、二次封止体102が積層されている。二次封止体102は、一次封止体10と同様に例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。
【0016】
ワイヤ19には、ループ状に形成されているが、その最頂部にはフラット部19aが設けられている。フラット部19aは、平坦な治具等によってループ状のワイヤの一部が押し潰されて平坦に成形された部分である。このフラット部19aは、一次封止体10と二次封止体102との境界面(一次封止体10の上面10a)に位置している。
【0017】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法は、以下の工程を備える。
図2〜図3に示すように、半導体チップ6の主表面6aの電極パッド8と配線基板2の接続パッド3との間にワイヤ19でボンディング行う。ここでワイヤ19は、半導体チップ6の電極パッド8から上方に向かってループ状を形成してなる。次にループ状のワイヤ19の最頂部にフラット部19aを形成する。そして、フラット部19aが埋設するように半導体チップ6を封止材料(一次封止体10、二次封止体102)で封止する。
【0018】
以下、図2と図3について詳細に説明する。
本実施形態では、配線基板2上にDAF7を介して半導体チップ2を搭載し、半導体チップ6の電極パッド8と配線基板2の接続パッド3とをループ状のワイヤ19でボンディングする。ワイヤ19は、上方に向けてループ状に形成する。これにより、ワイヤ19には最頂部が形成される。次に、封止工程第1段階(フラット部形成工程及び封止工程)として、図2のとおり上部封止金型18(可動部材)の当接面18aをボンディングワイヤ19の最頂部と接触する条件、すなわち半導体チップ6の上面6a(主表面)からの厚さH2(例えばH2=0.08mm)程度の位置に設定した状態で、一次封止体10による一次封止を実施する。上部封止金型18は、特開平10−189631号のような可動用一部金型ではなく平板状の金型全体でよい。第1段階での目的は、上部封止金型18とワイヤ19の最頂部を接触させることでワイヤ19にフラット部19aを形成し、ループ高さを一括にフラットとさせてバラつきを抑えたまま封止することであり、この段階ではワイヤ19のフラット部19aが露出したものが未だありうる状態である。
【0019】
次に、封止工程第2段階(封止工程)において、図3のとおり上部封止金型18を第1段階より少し半導体チップ6の上端からの上部封止樹脂の間隔H3(例えばH3=0.15mm)程度に上昇させた位置に設定することで、上部封止金型18をフラット部19aから上昇させて当接面18aとフラット部19aとの間に空間を形成する。そして、ワイヤ19の露出部を完全に封止するために、形成された空間に封止樹脂を充填し、二次封止体102による薄い二次封止を実施する。ここで、二次封止を薄くできる理由は、第1段階を実行したことによりワイヤ19のループ高さのバラつきが押さえ込まれている為に、バラつきに対する設計上の余裕値を小さくすることができる為である。二次封止体102となる上部封止樹脂の厚さは一般的な設計例(H1=0.20mm)に比べ本実施例ではH3=0.15mm程度まで薄くすることが可能になる。
【0020】
また、二次封止の際に懸念される一次封止体10と二次封止体102との密着性を向上させる構造を図4に示す。図4は、半導体チップ6の両側の一次封止体10に凹部17を設け、この凹部17内に二次封止体102が充填されることにより密着性が向上する。
【0021】
「第2の実施形態」
図5と図6は、第2実施形態である半導体装置の製造方法の封止工程における断面図である。
本実施形態では、封止工程第1段階(フラット部形成工程及び封止工程)として、図5のとおり上部封止金型18に厚さが例えば0.10mm程度の第1離型フィルム191(当接部材)を取り付けた状態で、第1離型フィルム191がボンディングワイヤ19の最頂部と接触する位置、例えば半導体チップ6の主表面6aから上部封止金型18までの間隔H4(例えばH4=0.18mm)程度の位置(第1位置)に上部封止金型18を一度下げる。第1段階での目的は、第1離型フィルム191とワイヤ19の上部ループ部分を接触し押さえ込ませることでワイヤ19を一括にフラットにし、ワイヤ19のループ状の最頂部をフラット部19aに変形させて高さのバラつきを揃えることである。一括にフラットにした後、樹脂封止を行わないまま上部封止金型18及び第1離型フィルム191を一旦元の位置(第2位置)に戻す。
【0022】
次に、図6のように、上部封止金型18に取り付けた第1離型フィルム119を、第1離型フィルム191よりも厚みが薄い、例えば0.05mm程度の第2離型フィルム192(封止形成部材)に交換する。その後、上部封止金型18を第1段階と同じ位置(第1位置(例えばH4=0.18mm))まで押下し再設定し、離型フィルム192とフラット部19aとの間に形成された空間に封止樹脂を設けて一次封止体10による封止を行う。
【0023】
この方法では、第1段階を実行しワイヤ19のループ高さのバラつきを薄く押さえ込むことでバラつきに対する設計上の余裕値を小さくすることができ、第1離型フィルム191と第2離型フィルム192の厚さの差分、0.05mm程度の薄さでワイヤ19の露出を発生させずに上部封止を行うことが可能になる。一次封止体10による上部封止樹脂の厚さは一般的な設計例(H1=0.20mm)に比べ本実施例ではH5=0.13mm程度まで薄くすることが可能になる。また、パッケージ上部樹脂の厚さを設計変更し量産対応する時は、対応する厚さの離型フィルムを選び交換するだけで済み、量産対応が容易である。さらに、第1実施形態に比べると、上部金型の準備や設定作業、及び封止作業が一度で済み、製造コストや作業時間の面で有利な製法となる。
【0024】
図7には、本実施形態によって製造された半導体装置201を示す。図7に示すように、本実施形態に係る半導体装置201は、略四角形の配線基板2を有している。配線基板2には所定の配線が形成されている。配線基板2の一面には、複数の接続パッド3が形成されている。また配線基板2の一面には、半導体チップ6が絶縁性接着剤となる例えばDAF7(ダイアタッチフィルム)を介して固定されている。また半導体チップ6の主表面6aの周辺近傍位置には複数の電極パッド8が形成されている。
【0025】
半導体チップ6の電極パッド8は、それぞれ対応する配線基板2上の接続パッド3との間を、導電性のワイヤ19により結線されることで電気的に接続されている。ワイヤ19は例えばAu、Cu等からなる。そして配線基板2の一面は、半導体チップ6及びワイヤ19を覆うように一次封止体10で覆われている。一次封止体10は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。
【0026】
ワイヤ19は、ループ状に形成されているが、その最頂部にはフラット部19aが設けられている。フラット部19aは、上部封止金型18によってループ状のワイヤの一部が押し潰されて平坦に成形された部分である。このフラット部19aは、一次封止体10の内部に封入されている。
【0027】
本実施形態の半導体装置210およびその製造方法によれば、ワイヤ19の高さを揃えバラつきを抑えて不良品の増加や製品寿命の悪化を抑え、またパッケージの薄型化を実現することができる、最薄の樹脂厚でのパッケージの設計が可能になる。
【0028】
「第3の実施形態」
図8と図9は、第3実施形態である半導体装置の製造方法の封止工程における断面図である。
本実施形態では、フラット部形成工程及び封止工程において、図8のように上部封止金型18に2層フィルム300を設置した状態で、ボンディングワイヤ19の上面と接触する条件の位置、すなわち、半導体チップ6の主平面6aから上部封止金型18までの距離H6(例えばH6=0.18mm)程度に上部封止金型18を下げ、ワイヤ19にフラット部19aを形成してループ高さのバラつきを揃えたまま一次封止体10による封止を行う。2層フィルム300は、上側が離型フィルム193(離型部材)であり下側が一次封止体10の構成材料に類似する例えばエポキシ樹脂系材料のような薄い絶縁性フィルム203(当接部材);厚さは0.02mm程度で構成されている。2層フィルム300の層間の接着性は弱いものでよく、フィルム同士が接着されないまま2層の状態に設定されていてもよい。
【0029】
封止後に、図9のように上部封止金型18と2層フィルム300の上側の離型フィルム193のみを絶縁性フィルム203から剥がすように上昇させる。これにより、半導体装置の上面に絶縁性フィルム203が貼付き保護した状態になる。ワイヤ19のフラット部19aは、一次封止体10と絶縁性フィルム203との境界面(一次封止体10の上面10a)に位置することになる。
【0030】
この方法では、上部封止金型18及び2層フィルム300をループ状のワイヤ19と接触する位置に下げることでワイヤ19の高さのバラつきが薄く押さえられ、かつ薄い絶縁性フィルム203によりワイヤ19のフラット部19aを保護することが可能になる。このため上部封止樹脂の厚さは一般的な設計例(H1=0.20mm)に比べて、一次封止体10よりなる上部封止樹脂部及び絶縁性フィルム203の合計厚さH7=0.10mm程度まで薄くすることが可能になる。また、一次封止体10に類似する材料の絶縁性フィルム203を利用し樹脂封止と貼付けを同時に作業することで、一次封止体10の封止作業に伴う熱と圧力により一次封止体10と絶縁性フィルム203の密着性や一体化性が向上し、フィルムの剥がれ不良を削減できる。さらに、金型の上下の動きがある封止作業と同時に2層フィルムの貼着や各フィルムを剥がす作業を行うため、特開2002−299357号のように被膜フィルム貼付けに伴う作業の追加が少ない製法となる。
【0031】
尚、ワイヤボンディング方式の半導体装置において、ワイヤのループ上面を封止金型と接触する条件によりバラつきを押さえ、薄い封止を実現するものであれば、ワイヤに接触させるものは封止金型に限らず、離型フィルムや絶縁性フィルム、例えば半導体装置やチップの裏面など、他のものでもよい。
【実施例1】
【0032】
図10(a)〜図10(g)を用いて、第1実施例の半導体装置の製造方法を説明する。第1実施例は、第1実施形態の半導体装置の製造方法に対応するものである。
本実施例の半導体装置の製造に用いる配線母基板は、例えばガラスエポキシ基材からなる基板であり、複数の製品形成領域を有している。製品形成領域はマトリックス配置されており、それぞれの製品形成領域間にはダイシングラインが形成されている。ダイシングラインで切断することにより、製品形成領域は半導体装置の配線基板2となる部位である。
製品形成領域は、半導体装置の配線基板2と同様の構造であり、一面の半導体チップ6の搭載される部位の周囲には複数の接続パッド3が形成されており、他面側には格子状に配置された複数のランド4が形成されている。接続パッド3とそれと対応するランド4とは配線等を介して電気的に接続されている。また、ランド4は、基板作成時に所定の場所に例えば半田ボールからなるバンプ5が形成できるように配置されている。このような配線母基板M1が準備される。配線母基板M1はダイボンディング工程に移行される。
【0033】
図10(a)に示すように、配線母基板M1のそれぞれの製品形成領域の中央領域に半導体チップ6が搭載される。半導体チップ6は図示しないダイボンディング装置により、例えば絶縁性の接着剤DAF7(ダイアタッチフィルム)を介して製品形成領域に固着される。
【0034】
次に、ワイヤボンディング工程に移行され、図10(b)に示すように半導体チップ6上の電極パッド8とそれに対応する配線母基板M1(配線基板2)の接続パッド3とを、例えばAu等からなる導電性のワイヤ19により結線する。ワイヤボンディングは、図示しないワイヤボンディング装置により、溶融され先端にボールが形成されたワイヤを電極パッド8に超音波熱圧着し、その後、所定のループ形状を描きながら後端を配線基板の接続パッド3上に超音波熱圧着により接続することで行われる。全ての電極パッド8と接続パッド3とをワイヤ19にて結線する。
【0035】
次に、ダイボンディングとワイヤボンディングの完了した配線母基板は、封止(モールド)工程に移行される。一般的なモールド工程では、図示しないトランスファモールド装置の上部封止金型18と図示しない下部封止金型により前記配線母基板を型閉めした状態で、溶融された封止樹脂、例えば熱硬化性のエポキシ樹脂等を充填させ、充填させた状態でキュアすることで封止樹脂が熱硬化し、図10(c)に示すように複数の製品形成領域を一括的に覆う一次封止体10が形成される。一括モールドを用いることにより効率よく一次封止体10を形成し、図10(f)のボールマウント工程に進む。
【0036】
本実施例の場合は、モールド第1段階として、図10(c)に示すように、上部封止金型18をボンディングワイヤ19の最頂部と接触する位置、チップ上端からの間隔=0.08mm程度の位置に設定し、図示しない下部封止金型により配線母基板M1を型閉めした状態で封止樹脂を充填、キュアすることで一次封止体10を形成する。封止後、上部封止金型18を一度開放し上昇させる。
【0037】
次に、一次封止体と二次封止体の密着性を向上させるために、図示しないプラズマクリーニング機器により一次封止体の表面にプラズマクリーニングを行う。さらに、二次封止体の界面剥離を防止して一次封止体10部との密着性を向上させるために図10(d)のようにダイシングブレード22で一次封止体10に凹部17を設けてもよい。ここで、凹部17は、図13に示すように半導体装置1個づつに切断分離する位置よりも内側にあり、かつボンディングワイヤ19や半導体チップ6に影響を与えない位置に設ける。
【0038】
次に、モールド第2段階として、図10(e)のとおり上部封止金型18を第1段階より少し半導体チップ6の上面からの上部封止樹脂の間隔=0.15mm程度上昇させた位置に設定し、図示しない下部封止金型とにより配線母基板M1を型閉めした状態で封止樹脂を充填、キュアすることで二次封止体102による薄い二次封止を実施する。
【0039】
次に、一次封止体10及び二次封止体102が形成された配線母基板M1は、ボールマウント工程に移行される。ボールマウント工程では、図10(f)に示すように配線母基板M1の他面のランド4上に半田ボール5を搭載し、外部端子を形成する。ボールマウント工程は、例えばボールマウンターのマウントツール21により半田ボール5を真空吸着し、フラックスを介して半田ボール5を配線母基板M1(配線基板)のランド4上に搭載する。その後、配線母基板M2をリフローすることで、半田ボール5がランド4上に接続されバンプ5が形成される。
【0040】
次に、半田ボールの搭載された配線母基板M1は、基板ダイシング工程に移行される。基板ダイシング工程では、図10(g)に示すように、二次封止体102をダイシングテープ23に貼着固定し、高速回転のダイシングブレード22により、配線母基板M1のダイシングラインを回転研削することで、個々の製品形成領域毎に切断・分離する。その後、ダイシングテープ23からピックアップすることで、半導体装置1が得られる。
【実施例2】
【0041】
図11(a)〜図11(f)を用いて、第1実施例の半導体装置の製造方法を説明する。第2実施例は、第2実施形態の半導体装置の製造方法に対応するものである。
まず、第1実施例と同様にダイボンディング工程とワイヤボンディング工程を実施した後、モールド工程に移行する。本実施例の場合は、図11(a)のとおり厚い離型フィルム191を上部封止金型18に設定した後、離型フィルム191がボンディングワイヤ19の最頂部と接触する位置に上部封止金型18を押下し、チップ上端から離型フィルム下端の間隔=0.08mm程度に設定する。図示しない下部封止金型により前記配線母基板を型閉めしワイヤの一括フラットニング状態を形成し、フラット部19aを設ける(図11(b))。
【0042】
次に、樹脂封止を行わないまま上部封止金型18及び厚い離型フィルム192を一旦上方、例えば元の位置に戻し、厚い離型フィルム192を薄い離型フィルム192に交換する(図11(c))。 次に、薄い離型フィルム192を設定した状態で上部封止金型18を図11(b)と同じ位置に押下して設置し、図示しない下部封止金型とにより配線母基板を型閉めし、封止樹脂を充填、キュアすることで一次封止体10を形成する(図11(d))。
【0043】
なお、上下の封止金型を開放し、モールド工程を終了した段階で、離型フィルム192は封止体部分から取り除かれている。封止体の形成された配線母基板は、ボールマウント工程に移行され、以後は実施例1と同様の工程を実施する(図11(e)及び(f))。このようにして半導体装置が得られる。
【実施例3】
【0044】
図12(a)〜図12(e)を用いて、第3実施例の半導体装置の製造方法を説明する。第3実施例は、第3実施形態の半導体装置の製造方法に対応するものである。
先ず、第1実施例と同様にダイボンディング工程とワイヤボンディング工程を実施した後、モールド工程に移行する。
【0045】
本実施例の場合は、図12(a)のとおり離型フィルム193と絶縁性フィルム203からなる2層フィルム300を上部封止金型18に設定した後、2層フィルム300がボンディングワイヤ19の最頂部と接触する位置に上部封止金型18を押下設置する。チップ上端から2層フィルム下端の間隔は、0.08mm程度である。図示しない下部封止金型とにより配線母基板を型閉めし、封止樹脂を充填、キュアすることで一次封止体10を形成する(図12(b))。
【0046】
次に、上部封止金型18の開放時に2層フィルム300の離型フィルム193のみを剥がし上部封止金型18と同時に上昇させ、絶縁性フィルム203が一次封止体10に密着した状態を形成する(図12(c))。一次封止体10及び絶縁性フィルム203が形成された配線母基板は、ボールマウント工程に移行され、以後は実施例1と同様の工程を実施する(図12(d)及び(e))。このようにして半導体装置が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
IC、LSI、液晶等の表示装置における半導体チップの封止に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置を示す断面模式図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態であるワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置の一次封止工程を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態であるワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置の二次封止工程を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係るワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置の二次封止工程において封止体の密着性を向上させる構造を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態に係るワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置の封止工程を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態に係るワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置の封止状態を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態に係るワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置を示す断面模式図である。
【図8】図8は、本発明の第3実施形態に係るワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置の封止工程を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明の第3実施形態に係るワイヤボンディング方式のBGA型の半導体装置の封止状態を示す概略図である。
【図10】図10は、実施例1の半導体装置の製造工程を示す工程図である。
【図11】図11は、実施例2の半導体装置の製造工程を示す工程図である。
【図12】図12は、実施例3の半導体装置の製造工程を示す工程図である。
【図13】図13は、実施例1の半導体装置の製造工程において、凹部を形成する工程を示す工程図である。
【図14】図14は、従来のワイヤボンディング方式のBGA半導体装置を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1、201…半導体装置、2…配線基板、3…接続パッド、6…半導体チップ、6a…上面(主表面)、8…電極パッド、10…一次封止体(封止材料、封止部材)、18…上部封止金型(可動部材)、18a…当接面、19…ワイヤ、19a…フラット部、102…二次封止体(封止材料、封止部材)、191…第1離型フィルム(当接部材)、192…第2離型フィルム(封止形成部材)、193…離型フィルム(離型部材)、203…絶縁層フィルム(当接部材、封止部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの主表面の電極パッドと配線基板の接続パッドとの間にワイヤをボンディングする工程と、
ここで該ワイヤは、該半導体チップの該電極パッドから上方に向かってループ状を形成し、
前記ループ状のワイヤにフラット部を形成する工程と、
前記フラット部が埋設するように半導体チップを封止材料で封止する工程とを備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記フラット部形成工程は、前記半導体チップの主表面に対向して当接面を有する可動部材を配設し、該可動部材を下降させて該当接面を前記ワイヤの最頂部に当接させて押圧して該ワイヤにフラット部を形成する、
前記封止工程は、前記可動部材を前記フラット部から上昇させて前記当接面と前記フラット部との間に形成される空間に封止部材を設けて該フラット部が埋設するようにして前記半導体チップを封止する、ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記フラット部形成工程は、前記半導体チップの主表面に対向して当接部材を有する可動部材を配設し、該可動部材を第1位置まで下降させて該当接部材を前記ワイヤの最頂部に当接させて押圧して該ワイヤにフラット部を形成する、
前記封止工程は、前記可動部材を前記フラット部から第2位置まで上昇させた後、前記当接部材を取り除いて該当接部材より厚さの薄い封止形成部材を取り付けて、前記可動部材を前記第1位置まで下降させて該封止形成部材と前記フラット部との間に形成された空間に封止部材を設けて該フラット部が埋設するようにして半導体チップを封止する、ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記フラット部形成工程は、前記半導体チップの主表面に対向して当接部材に取り付けられた離型部材を有する可動部材を配設し、該可動部材を下降させて当接部材を前記ワイヤの最頂部に当接させて押圧して該ワイヤにフラット部を形成する、
前記封止工程は、前記当接部材を前記フラット部に当接させた後、前記可動部材を上昇させて前記当接部材を該離型部材から分離させ、該当接部材と前記フラット部との間に形成された空間に封止部材を設けて該フラット部が埋設するようにして半導体チップを封止する、ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記当接部材は、絶縁性フィルムであることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−10174(P2010−10174A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164207(P2008−164207)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】