半導体装置の製造方法
【課題】トレンチ構造のゲート絶縁膜がエミッタ層等を形成するときの砒素イオンよる損傷を受けることがなく、その絶縁耐圧が向上する半導体装置を低コストで製造できる方法を確立する。
【解決手段】トレンチ3内に埋め込まれて形成されたポリシリコンからなるゲート電極5を高温炉中等で熱酸化してゲート電極5上に厚いポリシリコン熱酸化膜6を形成する。その後に不純物イオンをイオン注入してエミッタ層等となるN型半導体層8を形成する。この場合、ポリシリコン熱酸化膜6の膜厚を、イオン注入によりエミッタ層等となるN型半導体層8を形成するための不純物イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程より厚く形成する。これにより、不純物イオンがゲート電極5とN型半導体層8に挟まれたゲート絶縁膜4に損傷を与えるのを防止する。
【解決手段】トレンチ3内に埋め込まれて形成されたポリシリコンからなるゲート電極5を高温炉中等で熱酸化してゲート電極5上に厚いポリシリコン熱酸化膜6を形成する。その後に不純物イオンをイオン注入してエミッタ層等となるN型半導体層8を形成する。この場合、ポリシリコン熱酸化膜6の膜厚を、イオン注入によりエミッタ層等となるN型半導体層8を形成するための不純物イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程より厚く形成する。これにより、不純物イオンがゲート電極5とN型半導体層8に挟まれたゲート絶縁膜4に損傷を与えるのを防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体装置の製造方法に関し、特にIGBTやパワーMOSトランジスタのゲート絶縁膜の絶縁耐圧がエミッタ層等を形成するときのイオン注入の衝撃等により劣化するのを防ぐ事ができる半導体装置の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSトランジスタは低オン抵抗化等の実現のためトレンチゲート構造が採用される場合が多い。トレンチゲート構造は、図11に示すように、先ず、N型半導体層1とP型半導体層2とを有する半導体基板12の表面から内部に向かって半導体基板12をエッチングして、半導体基板12にトレンチ3を形成する。その後トレンチ3内壁を被覆するゲート絶縁膜4を形成した後に、トレンチ3内を充填する導電性ポリシリコンによりゲート電極5を形成する。その後P型半導体層2の表面に砒素イオン等のイオン注入により不純物を注入して、さらに熱拡散させ、該P型半導体層2内にN型半導体層8となる不純物領域を形成する。N型半導体層8は、IGBTの場合はエミッタ層、パワーMOSトランジスタの場合はソース層となる。
【0003】
図11に示すように、半導体基板12内にN型半導体層8を形成するためには、矢印9bで示す方向から高電圧で加速された砒素イオン等がイオン注入されるが、このとき同時に、矢印9aの方向から、直接に、またはゲート電極5であるポリシリコン層を通り抜けて、ゲート電極5とN型半導体層8に挟まれたゲート絶縁膜4中にも砒素イオン等が注入される。矢印9a、9bはそれぞれの砒素イオン等の飛程を示し、それらの先端は砒素イオンの被注入対象であるシリコン酸化膜等内の平均飛程の概略の位置を示す。
【0004】
矢印9aで示された飛程でポリシリコンからなるゲート電極5内等を通過して、該ゲート電極5とN型半導体層8に挟まれたゲート絶縁膜4中に注入された砒素イオン等は、大きなエネルギーを有しているため、矢印9aの飛程に沿ってゲート絶縁膜4内に損傷を与える。その結果、その部分のゲート絶縁膜4の膜質が劣化しリーク電流が流れ、ゲート絶縁膜4の絶縁耐圧が低下するという弊害が生じる。なお、砒素イオン等の注入方向が半導体基板12に垂直ではなく斜め方向に向かっているが、これは砒素イオン等が半導体基板12内をチャネリングするのを防止するためである。
【0005】
トレンチゲート構造からなるIGBT等のゲート絶縁耐圧劣化対策については、以下の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−349289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、砒素イオンのイオン注入によりN型半導体層8を形成するとき、砒素イオンがポリシリコンからなるゲート電極5とN型半導体層8に挟まれたゲート絶縁膜4中に入り込まないように、トレンチ3内を充填するゲート電極5上を厚い絶縁膜で被覆する。その結果、イオン注入時のゲート絶縁膜への損傷を防止するという目的を達成している。
【0008】
ゲート電極5上を被覆する厚い絶縁膜の形成方法は以下の通りである。先ず、ゲート電極5上を含む半導体基板12上の全面に、CVD法により厚さ1μm程度のシリコン酸化膜を堆積する。その後、P型半導体層2の表面が露出するまで全面をドライエッチング等によりエッチバックする。更に、露出したP型半導体層2の表面がイオン注入により損傷を受けるのを防止するため、ゲート電極5上を含む半導体基板12の表面全体をスクリーン酸化膜50nm程度により被覆する。
【0009】
上述のように、特許文献1に記載の方法では、イオン注入の損傷を防止するためゲート電極5上を被覆する絶縁膜を形成する工程が、CVDシリコン酸化膜形成、シリコン酸化膜の全面エッチバック及びスクリーン酸化膜の形成という複雑な工程から構成されている。
【0010】
従って、ゲート電極5上を被覆する絶縁膜を簡単に、かつ低コストで形成する事ができる製造方法の確立が課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1導電型の第1半導体層の上に第2導電型の第2半導体層を有する半導体基板を準備する工程と、第2半導体層の表面から第1半導体層内まで延在するトレンチを形成する工程と、トレンチ内壁から第2半導体層の表面まで延在するゲート絶縁膜を形成する工程と、ゲート絶縁膜が形成されたトレンチ内にゲート電極を形成する工程と、ゲート電極を熱酸化することによりゲート電極の上面にゲート電極保護膜を形成する工程と、ゲート電極保護膜の形成後に、第2半導体層内に不純物イオンをイオン注入して第1導電型の不純物領域を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、ゲート絶縁膜の絶縁耐圧の向上した半導体装置を低コストで製造する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】ゲート印加電圧とゲート絶縁膜のリーク電流の関係を示すグラフである。
【図7】規格化された追酸化量とポリシリコン上及びシリコン上の規格化酸化膜厚との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態における半導体装置の製造方法を示すゲート電極最上面近傍を拡大した断面図である。
【図11】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図1〜図7に基づいて説明する。本発明は、IGBTやパワーMOSトランジスタの製造方法に係るものであるが、発明の要旨は、トレンチゲート構造におけるゲート電極最上面近傍のゲート絶縁膜がエミッタ層等の形成のための砒素イオン等のイオン注入により受ける損傷を防止する製造方法に関するものである。従って、図面についても、トレンチゲート構造におけるゲート電極最上面近傍のゲート絶縁膜部分を中心に記載して説明を進める。
【0015】
先ず、図1に示す半導体基板12を以下の手順により準備する。はじめに、半導体装置がNチャネル型パワーMOSトランジスタの場合は不図示のN+型半導体基板を、半導体装置がIGBTの場合はその表面に不図示のN+型半導体層をエピタキシャル法等により形成した不図示のP+型半導体基板を準備する。両半導体基板の表面にはN+型半導体層が露出することになる。なお、本実施形態のN+型半導体基板、P+型半導体基板は単結晶シリコン基板であり、エピタキシャル成長されたN+型半導体層もシリコン層である。
【0016】
次に、図1に示すように、該N+型半導体層の表面に所定のエピタキシャル法により所定の膜厚からなるN型半導体層1を形成する。次にN型半導体層1の表面に不図示のシリコン酸化膜を形成し、該シリコン酸化膜を通してボロンイオンをN型半導体層1内にイオン注入する。その後半導体基板12を高温炉等内に挿入し、イオン注入されたボロンをN型半導体層1内に拡散することによりP型半導体層2を形成する。P型半導体層2は後にゲート電極直下のチャネル層となる領域である。
【0017】
次に、図2に示すように、不図示のシリコン酸化膜等からなるマスクを所定の工程を経ることにより形成し、該マスクによりドライエッチング等によりP型半導体層2の表面からN型半導体層1の内部まで延在する所定の幅、所定の深さのトレンチ3を形成する。トレンチ3は複数形成されるがそのうちの1つを記載している。
【0018】
トレンチ3の側壁となるN型半導体層1及びP型半導体層2の表面には、ドライエッチング等時のエッチングダメージが多数残っている。そこで、先ず、半導体基板12を高温炉内に挿入してトレンチ3の側壁となるP型半導体層2、N型半導体層1の表面に所定の膜厚の、いわゆる犠牲酸化膜を形成し、その中に前記エッチングダメージ層を吸収する。
【0019】
その後、半導体基板をフッ酸等のエッチング液内に浸し犠牲酸化膜をエッチング除去する。次に、図3に示すように、高温炉等内に半導体基板12を挿入し、トレンチ3内からP型半導体層2の表面まで延在する所定の膜厚からなるゲート絶縁膜4を形成する。なお、ゲート絶縁膜4はシリコン熱酸化膜に窒素を取り込んだ酸窒化膜としても良い。
【0020】
次に、CVD法により、トレンチ3の内部を含む半導体基板12の表面全体を被覆するポリシリコン層を形成する。ポリシリコン層の膜厚は厚いので、ポリシリコン層はトレンチ3の内部を埋め込み、その表面はほぼ平坦な状態となる。次に、オキシ塩化リン(POCl3)等を不純物源として高温炉の中でポリシリコン層中にリンを拡散する。その後ドライエッチングによりP型半導体層2上のゲート絶縁膜4が露出するまでポリシリコン層を全面エッチバックする。
【0021】
この際、エッチング装置のエンドポイントでエッチング状態を確認してから、P型半導体層2上のゲート絶縁膜4上にポリシリコン層の残渣が残らないように、一定の時間オーバーエッチングすることで、図4に示すようなトレンチ3の内部を充填するゲート電極5を形成する。トレンチ3の上からはゲート電極最上面5aが確認できる。その結果、図4に示すように、トレンチ3の内部を充填するゲート電極最上面5aは、P型半導体層2の表面から所定の位置まで下がった低い位置になる。このゲート電極5とP型半導体層2に挟まれた部分のゲート絶縁膜4の絶縁耐圧が、次工程のエミッタ層等形成時の砒素イオン等のイオン注入から受ける損傷により低下するのを防止するのが本発明の目的である。
【0022】
次に、図5に示すように、半導体基板12を高温炉等内に挿入してゲート電極5を構成するポリシリコン膜を熱酸化し、砒素イオンのイオン注入時のポリシリコン熱酸化膜中の平均飛程より厚いゲート電極上保護膜となるポリシリコン熱酸化膜6を形成する。ポリシリコン熱酸化膜6は、図5に示すように、酸化前の点線で示すゲート電極最上面5aを挟んで上部6aと下部6bから構成され新たなゲート電極最上面5bが形成される。
【0023】
このとき、同時にP型半導体層2上に形成されていた所定の膜厚のゲート絶縁膜4も図7に示す追酸化量だけ追酸化され厚い追酸化膜7となる。追酸化膜7の厚さは、砒素イオンの平均飛程の70%未満とする。上記ポリシリコン熱酸化膜6の膜厚及び追酸化膜7の膜厚の必要性については後述する。
【0024】
なお、イオンの平均飛程とは、ある物体中に複数のイオンがイオン注入された時、それぞれのイオンが物体内を進行する飛程の平均値のことを言う。イオン注入されたイオンは最終的に中性の原子となり停止し被イオン注入物体内でガウス分布する。従って、イオンの平均飛程とは、物体内に停止した不純物のガウス分布のピーク位置を指すことになる。
【0025】
次に、矢印9bで示すように、P型半導体層2内にN型半導体層8を形成するため砒素イオン等を一定の加速電圧でイオン注入する。イオン注入の方向が半導体基板に垂直な方向から僅かに角度をもっているのは、前述したように、注入されるイオンがチャネリングによりP型半導体層2内の所定の位置より不規則に深い位置に分布するのを防ぐためである。
【0026】
図5の矢印9aで示す砒素イオン等は、ポリシリコンの上面にポリシリコン熱酸化膜6が形成されたため当初のゲート電極最上面5aより低い位置になったゲート電極最上面5bとP型半導体層2に挟まれた部分のゲート絶縁膜4方向に向かって注入される。注入された砒素イオン等は、酸化後の新たなゲート電極最上面5b上に、ポリシリコン熱酸化膜中の砒素イオンの平均飛程より厚いポリシリコン熱酸化膜6が形成されていることから、上記ゲート電極5とP型半導体層2に挟まれたゲート絶縁膜4中には進入できないか、できたとしても砒素イオンの平均飛程より奥側の砒素イオンのみが侵入することになる。
【0027】
図11に示す従来例の場合は、直接ゲート電極5とP型半導体層2に挟まれたゲート絶縁膜4中に砒素イオンがイオン注入されるため、ゲート絶縁膜4が砒素イオンの衝撃を受け、図6(a)に示すようにゲート印加電圧に対するゲート絶縁膜リーク電流が増加し、ゲート絶縁膜4の絶縁耐圧が低下する。しかし、本実施形態の場合には、上述の如く、ゲート電極5とP型半導体層2に挟まれたゲート絶縁膜4中に注入される砒素イオンが存在したとしても従来に比して格段に少ないため、図6(b)に示すように高い絶縁耐圧を保持している。
【0028】
なお、図5、図11においてイオン注入直後にP型半導体層2内にN型半導体層8が形成されたように記載しているが、その時点では砒素イオンの大半は不活性な状態でP型半導体層2を構成するシリコン原子の格子間にガウス分布し、P型半導体層2内に完全なN型半導体層8を形成しているわけではない。後続工程の層間絶縁膜の高温アニール処理等により拡散、活性化し図5、図11に示す最終的なN型半導体層8が形成される。
【0029】
次に、P型半導体層2上に形成された初期ゲート絶縁膜4と新たな追酸化量が合算された追酸化膜7の膜厚が砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程の70%未満とした理由について以下に説明する。図5の矢印9bで示す砒素イオンのイオン注入によりP型半導体層2内にN型半導体層8が形成される。N型半導体層8はIGBTのエミッタ層、パワーMOSトランジスタのソース層となり、それらの下層のP型半導体層2は、それぞれのデバイスのチャネル層となる。
【0030】
砒素イオンのイオン注入により形成されるN型半導体層8は後の層間絶縁膜のアニール処理を行いP型半導体層2の表面からP型半導体層2とゲート絶縁膜4を介して対峙するゲート電極最上面5bより深いP型半導体層2内まで延在させる。また、N型半導体層8の砒素濃度は、オン抵抗低減のため、及びN型半導体層8とコンタクトする不図示のエミッタ電極等とのコンタクト抵抗を低減させるため実用的範囲内でできるだけ高濃度である事が望ましい。
【0031】
追酸化膜7の膜厚は薄ければ薄いほど注入したイオンが追酸化膜7内で止ってしまう割合が減り、安定的に高濃度のN型半導体層8を形成する事ができる。注入されるイオンの分布はガウス分布に従うので、安定的に高濃度のN型半導体層8を形成する為に追酸化膜7の膜厚が砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程の70%未満が望ましいとしている。
【0032】
一方で、上記ゲート絶縁膜4への損傷を防止するためゲート電極5上のポリシリコン熱酸化膜6は厚い方が良い。図7の横軸に、所定の初期膜厚のゲート絶縁膜4を有するP型半導体層2の表面に新たに追加形成される追酸化量を、同縦軸に、P型半導体層2上に所定の初期膜厚のゲート絶縁膜4と追酸化量を合算して形成された追酸化膜7の膜厚及びゲート電極5上に形成されるポリシリコン熱酸化膜6の膜厚を、それぞれ規格化して表示した関係を示す。ポリシリコン中の不純物の濃度などの影響を受けるがポリシリコン上に成長する酸化膜の成膜速度はシリコン上に成長する酸化膜の成長速度より速い。この成長速度の差を利用している事も本出願の効果を得るための重要なポイントである。
【0033】
本実施形態での砒素イオンのイオン注入時の加速電圧の場合、砒素イオンのポリシリコン酸化膜中の平均飛程は図7の縦軸のa1で示す規格化された値でa1≒3.25nmである。従って、ゲート電極最上面5b部近傍のゲート電極5とP型半導体層2に挟まれたゲート絶縁膜4が砒素イオンのイオン注入により損傷を受けないようにするためには、ゲート電極最上面5b上のポリシリコン熱酸化膜6の規格化された膜厚は約3.25nmより厚い事が必要になる。
【0034】
砒素イオンのポリシリコン酸化膜中の平均飛程3.25nmよりポリシリコン熱酸化膜6の膜厚を薄くした場合、ゲート絶縁膜4の絶縁耐圧の劣化が見られたからである。なお、この場合、初期のゲート電極最上面5aと新たなゲート電極最上面5b間のポリシリコン熱酸化膜6の下部6bの膜厚は全体の膜厚の0.45で、初期のゲート電極最上面5aより上に形成されたポリシリコン熱酸化膜6の上部6aの膜厚は全体の膜厚の約0.55であった。
【0035】
図7から、ゲート電極5上のポリシリコン熱酸化膜6のポリシリコン上規格化酸化膜厚がa1≒3.25nmであるとき規格化追酸化量はc1≒1.3nmであり、P型半導体層2上のシリコン上規格化追酸化膜7の膜厚はb1≒1.87nmとなる。一方、砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程は、ポリシリコン酸化膜の場合とほぼ同等の約3.25nmである。シリコン上規格化追酸化膜7の膜厚が砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程3.25nmの0.7倍の約2.25nm(b2)より厚くなると図5の矢印9bで示す砒素イオンのP型半導体層2中への注入量が減少し、N型半導体層8の抵抗が高くなり、また表面濃度の低下により不図示のエミッタ電極等との接触抵抗が高くなる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について図8、図9に基づいて説明する。符号については第1の実施形態と同一構成については同様とする。先ず、第1の実施形態と同一の工程を経て図4に示す半導体基板12を準備する。次に、図8に示すように、P型半導体層2上に露出しているゲート絶縁膜4をエッチング除去する。この際、ゲート電極5とP型半導体層2に挟まれた部分のゲート絶縁膜4も若干食い込んだ形でエッチングされる。
【0037】
次に、図9に示すように、半導体基板12を高温炉内に挿入して、第1の実施形態と同一条件でゲート電極5上にポリシリコン熱酸化膜6を、P型半導体層2上に追酸化膜7aを形成する。この場合ゲート電極5上に形成されるポリシリコン酸化膜6の膜厚は第1の実施形態の場合と同一になる。
【0038】
それに対して同一追酸化量では、P型半導体層2上に形成される追酸化膜7aの膜厚は初期膜厚が0なので、所定の初期膜厚からスタートする第1の実施形態における追酸化膜7の膜厚より当然薄くなる。厳密さを欠くが本実施形態の露出したP型半導体層2上に形成されるシリコン熱酸化膜からなるシリコン上規格化追酸化膜7aの膜厚は、規格化追酸化量と同一の値となる。
【0039】
追酸化膜7、追酸化膜7aの膜厚の下限は、イオン注入の損傷を防ぐための最少のポリシリコン熱酸化膜6の膜厚で制限され、上限はN型半導体層8の濃度等により制限される。その許容範囲を第1の実施形態における図7の規格化追酸化量で比較する。第1の実施形態、本実施形態いずれにおいても規格化追酸化量の下限は、ポリシリコン上規格化酸化膜の膜厚a1≒3.25nmに対応するc1≒1.3nmで同一である。
【0040】
それに対して規格化追酸化量の上限は、第1の実施形態においてはシリコン上規格化追酸化膜厚の上限b2≒2.25nmに対応するc2≒1.72nmである。本実施形態においては規格化追酸化量そのものがP型半導体層2上のシリコン規格化追酸化膜厚に相当することから、シリコン上規格追酸化膜厚の上限c3は砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程3.25nmの0.7倍、つまりc3≒2.25nmになる。その結果、第1の実施形態では規格化追酸化量の許容範囲はc1〜c2、即ち、1.3〜1.72nmとなるのに対して、本実施形態では規格化追酸化量の許容範囲はc1〜c3、即ち、1.3〜2.25nmとなる。その結果、追酸化量の許容範囲を2.2倍以上広げる事ができる。規格化追酸化量は酸化時間の1/2乗に比例することから、本実施形態の規格化追酸化量の上限までの時間は第1の実施形態の場合に比べて約1.8倍と長くする事ができる。
【0041】
即ち、第1の実施形態の場合、許容規格化追酸化量を形成するための上限と下限間の熱処理時間幅が狭くプロセス余裕度小さいため、1回の処理枚数を減らす等のばらつき低減策が必要になる。それに対して、本実施形態では許容規格化追酸化量の上限までの時間が第1の実施形態に比べ約1.8倍に伸びているためプロセス余裕度を大幅に改善する事ができる。
【0042】
次に、第1の実施形態及び第2の実施形態(以後、合わせて本実施形態と呼ぶ)に共通した、特許文献1に記載の従来例に無い本発明の特徴について説明する。第1番目の特徴はトレンチ3の側壁からP型半導体層2内に不純物イオンを注入できるか否かである。従来例の第1実施例では、トレンチ3内を含む半導体基板12上全面が平坦な状態に厚いシリコン酸化膜で被覆されており、トレンチ3の側壁が露出することは無い。従って、P型半導体層2の上面からのみ該P型半導体層2内に砒素イオン等がイオン注入され、トレンチ3の側壁から砒素イオン等がイオン注入されることは無い。
【0043】
また、第3の実施例では最上部が露出したトレンチ3の露出部分から確認できるトレンチ3の側壁がCVD酸化膜、ゲート酸化膜及びスクリーン酸化膜からなる厚い膜で被覆されているため、やはり、トレンチ3の側壁から砒素イオン等がイオン注入されることは無い。
【0044】
それに対して、本実施形態においてはゲート電極5上のポリシリコン酸化膜6の上面をP型半導体層2の上面より低く形成しているため、トレンチ3の側壁を追酸化膜7、または追酸化膜7aで被覆された状態ではあるが、トレンチ3の一部が露出している。従って、P型半導体層2の上面からの注入に加え、矢印9aや矢印9aと矢印9bの間の方向に注入される砒素イオン等の一部は追酸化膜7内又は追酸化膜7a内等を経由してトレンチ3の側壁からP型半導体層2内に注入される。
【0045】
矢印9aや矢印9aと矢印9bの間の方向からの砒素イオン等の追酸化膜7又は追酸化膜7aへの入射口は、矢印9b方向からの砒素イオンのP型半導体層2上の追酸化膜7又は追酸化膜7aへの入射口より低い位置にあるためトレンチ3の側壁から入射する砒素イオン等を、従来例よりP型半導体層2のより深い位置に分布させる事ができる。この結果、デバイス特性の向上等が期待できる。なお、この位置は追酸化膜7等の膜厚が薄ければより深くなるので、第1の実施形態に比べて第2の実施形態の方が有利になる。
【0046】
但し、矢印9aや矢印9aと矢印9bの間の方向から入射する砒素イオン等は、トレンチ3の側壁上に形成された追酸化膜7又は追酸化膜7aを斜めに進行する。そのため、例えばシリコン上規格化追酸化膜7aの膜厚が、ポリシリコン上規格化酸化膜の膜厚a1≒3.25nmに対応するc1≒1.3nmの場合でも、砒素イオン等はシリコン上規格化追酸化膜中を約10.6nmを経由してからP型半導体層2内に注入される。結果的に、P型半導体層2内に注入された砒素等の濃度は低いものとなる。
【0047】
従って、上記効果を発揮するためには、シリコン中の砒素イオンの平均飛程がシリコン酸化膜中の砒素イオンの平均飛程の約1.2倍あることも考慮して、ポリシリコン酸化膜6の最上面とP型半導体層2の上面の距離を決定しなければならない。
【0048】
次に、第2番目の特徴について図10を参酌して説明する。図10はゲート電極最上面5bとゲート絶縁膜4近傍の位置関係をミクロに表示したものである。ゲート電極5を酸化してゲート電極5上にポリシリコン酸化膜6を形成するが、このとき、ゲート絶縁膜4と接しているゲート電極最上面5a部近傍はポリシリコンが酸化されると同時にゲート絶縁膜4を通った酸化種によってP型半導体層2も酸化される。
【0049】
その結果、ゲート電極最上面5bは、P型半導体層2と離間するにつれ徐々にその高さが高くなる最高部を持ち、その後トレンチ3の中心部に向かいその高さを低くする山型の形状となる。また、P型半導体層2とゲート電極最上面5bの間には、所定の膜厚のゲート絶縁膜から始まってゲート電極最上面5bの最高部に向かって徐々に膜厚が増加するP型半導体層の熱酸化膜およびポリシリコンの熱酸化膜の混合された厚い混合絶縁膜6cが形成される。
【0050】
一方、ゲート電極最上面5aとP型半導体層2の間に挟まれたゲート絶縁膜4内やその直下のP型半導体層2表面にはエッチング直後にエッチングダメージ等が入り、それがそのまま残る場合がある。この場合、上述のように、ゲート電極最上面5bとゲート絶縁膜4を介して対峙するエッチングダメージの入ったP型半導体層2が新たな混合絶縁膜6cの一部に変わり、P型半導体層2に入ったダメージ層が吸収除去される。また、ゲート電極最上面5bまで徐々に厚くなる混合絶縁膜6cが形成されることから、ゲート電極最上面5aと該ゲート電極最上面5aと対峙するP型半導体層2の間の電界強度が緩和され、その間のリーク電流の増大を防止する事ができる。
【0051】
最後に、第3番目の特徴について説明する。砒素等のイオン注入工程が終了すると、次に半導体基板12上全面に層間絶縁膜がCVD法等により堆積される。層間絶縁膜は、通常、ノンドープシリコン酸化膜NSG、ボロン及びリンドープシリコン酸化膜BPSGをこの順序で堆積して形成される。本実施形態においては、ゲート電極5上やN型半導体層8上に、従来よりも厚いポリシリコン熱酸化膜6や追酸化膜7が形成されているためNSG層を形成することなく直接BPSGを形成する事も可能であるという特徴を有する。
【0052】
この後、所定の工程を経て層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、所定の工程を経てエミッタ電極等を形成し、最後に窒化膜等からなるパッシベーションを形成することにより半導体装置は完成する。このようにすることで、製造工程数をさらに削減でき、上述したゲート絶縁膜の絶縁耐圧の向上した半導体装置をさらに低コストで製造する事ができる。
【0053】
なお、Nチャネル型パワーMOSトランジスタについて上述したが、Pチャネル型パワーMOSトランジスタ場合は、第1、2の実施形態とも各不純物の極性が反対になるだけで基本的部分は変わらない。
【符号の説明】
【0054】
1 N型半導体層 2 P型半導体層 3 トレンチ 4 ゲート絶縁膜
5 ゲート電極 5a、5b ゲート電極最上面 6 ポリシリコン熱酸化膜
6a、6b、6c ポリシリコン熱酸化膜 7、7a 追酸化膜 8 N型半導体層
9a、9b 矢印(砒素イオンのイオン注入方向)
12 半導体基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する半導体装置の製造方法に関し、特にIGBTやパワーMOSトランジスタのゲート絶縁膜の絶縁耐圧がエミッタ層等を形成するときのイオン注入の衝撃等により劣化するのを防ぐ事ができる半導体装置の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSトランジスタは低オン抵抗化等の実現のためトレンチゲート構造が採用される場合が多い。トレンチゲート構造は、図11に示すように、先ず、N型半導体層1とP型半導体層2とを有する半導体基板12の表面から内部に向かって半導体基板12をエッチングして、半導体基板12にトレンチ3を形成する。その後トレンチ3内壁を被覆するゲート絶縁膜4を形成した後に、トレンチ3内を充填する導電性ポリシリコンによりゲート電極5を形成する。その後P型半導体層2の表面に砒素イオン等のイオン注入により不純物を注入して、さらに熱拡散させ、該P型半導体層2内にN型半導体層8となる不純物領域を形成する。N型半導体層8は、IGBTの場合はエミッタ層、パワーMOSトランジスタの場合はソース層となる。
【0003】
図11に示すように、半導体基板12内にN型半導体層8を形成するためには、矢印9bで示す方向から高電圧で加速された砒素イオン等がイオン注入されるが、このとき同時に、矢印9aの方向から、直接に、またはゲート電極5であるポリシリコン層を通り抜けて、ゲート電極5とN型半導体層8に挟まれたゲート絶縁膜4中にも砒素イオン等が注入される。矢印9a、9bはそれぞれの砒素イオン等の飛程を示し、それらの先端は砒素イオンの被注入対象であるシリコン酸化膜等内の平均飛程の概略の位置を示す。
【0004】
矢印9aで示された飛程でポリシリコンからなるゲート電極5内等を通過して、該ゲート電極5とN型半導体層8に挟まれたゲート絶縁膜4中に注入された砒素イオン等は、大きなエネルギーを有しているため、矢印9aの飛程に沿ってゲート絶縁膜4内に損傷を与える。その結果、その部分のゲート絶縁膜4の膜質が劣化しリーク電流が流れ、ゲート絶縁膜4の絶縁耐圧が低下するという弊害が生じる。なお、砒素イオン等の注入方向が半導体基板12に垂直ではなく斜め方向に向かっているが、これは砒素イオン等が半導体基板12内をチャネリングするのを防止するためである。
【0005】
トレンチゲート構造からなるIGBT等のゲート絶縁耐圧劣化対策については、以下の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−349289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、砒素イオンのイオン注入によりN型半導体層8を形成するとき、砒素イオンがポリシリコンからなるゲート電極5とN型半導体層8に挟まれたゲート絶縁膜4中に入り込まないように、トレンチ3内を充填するゲート電極5上を厚い絶縁膜で被覆する。その結果、イオン注入時のゲート絶縁膜への損傷を防止するという目的を達成している。
【0008】
ゲート電極5上を被覆する厚い絶縁膜の形成方法は以下の通りである。先ず、ゲート電極5上を含む半導体基板12上の全面に、CVD法により厚さ1μm程度のシリコン酸化膜を堆積する。その後、P型半導体層2の表面が露出するまで全面をドライエッチング等によりエッチバックする。更に、露出したP型半導体層2の表面がイオン注入により損傷を受けるのを防止するため、ゲート電極5上を含む半導体基板12の表面全体をスクリーン酸化膜50nm程度により被覆する。
【0009】
上述のように、特許文献1に記載の方法では、イオン注入の損傷を防止するためゲート電極5上を被覆する絶縁膜を形成する工程が、CVDシリコン酸化膜形成、シリコン酸化膜の全面エッチバック及びスクリーン酸化膜の形成という複雑な工程から構成されている。
【0010】
従って、ゲート電極5上を被覆する絶縁膜を簡単に、かつ低コストで形成する事ができる製造方法の確立が課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1導電型の第1半導体層の上に第2導電型の第2半導体層を有する半導体基板を準備する工程と、第2半導体層の表面から第1半導体層内まで延在するトレンチを形成する工程と、トレンチ内壁から第2半導体層の表面まで延在するゲート絶縁膜を形成する工程と、ゲート絶縁膜が形成されたトレンチ内にゲート電極を形成する工程と、ゲート電極を熱酸化することによりゲート電極の上面にゲート電極保護膜を形成する工程と、ゲート電極保護膜の形成後に、第2半導体層内に不純物イオンをイオン注入して第1導電型の不純物領域を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、ゲート絶縁膜の絶縁耐圧の向上した半導体装置を低コストで製造する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】ゲート印加電圧とゲート絶縁膜のリーク電流の関係を示すグラフである。
【図7】規格化された追酸化量とポリシリコン上及びシリコン上の規格化酸化膜厚との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態における半導体装置の製造方法を示すゲート電極最上面近傍を拡大した断面図である。
【図11】従来の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について図1〜図7に基づいて説明する。本発明は、IGBTやパワーMOSトランジスタの製造方法に係るものであるが、発明の要旨は、トレンチゲート構造におけるゲート電極最上面近傍のゲート絶縁膜がエミッタ層等の形成のための砒素イオン等のイオン注入により受ける損傷を防止する製造方法に関するものである。従って、図面についても、トレンチゲート構造におけるゲート電極最上面近傍のゲート絶縁膜部分を中心に記載して説明を進める。
【0015】
先ず、図1に示す半導体基板12を以下の手順により準備する。はじめに、半導体装置がNチャネル型パワーMOSトランジスタの場合は不図示のN+型半導体基板を、半導体装置がIGBTの場合はその表面に不図示のN+型半導体層をエピタキシャル法等により形成した不図示のP+型半導体基板を準備する。両半導体基板の表面にはN+型半導体層が露出することになる。なお、本実施形態のN+型半導体基板、P+型半導体基板は単結晶シリコン基板であり、エピタキシャル成長されたN+型半導体層もシリコン層である。
【0016】
次に、図1に示すように、該N+型半導体層の表面に所定のエピタキシャル法により所定の膜厚からなるN型半導体層1を形成する。次にN型半導体層1の表面に不図示のシリコン酸化膜を形成し、該シリコン酸化膜を通してボロンイオンをN型半導体層1内にイオン注入する。その後半導体基板12を高温炉等内に挿入し、イオン注入されたボロンをN型半導体層1内に拡散することによりP型半導体層2を形成する。P型半導体層2は後にゲート電極直下のチャネル層となる領域である。
【0017】
次に、図2に示すように、不図示のシリコン酸化膜等からなるマスクを所定の工程を経ることにより形成し、該マスクによりドライエッチング等によりP型半導体層2の表面からN型半導体層1の内部まで延在する所定の幅、所定の深さのトレンチ3を形成する。トレンチ3は複数形成されるがそのうちの1つを記載している。
【0018】
トレンチ3の側壁となるN型半導体層1及びP型半導体層2の表面には、ドライエッチング等時のエッチングダメージが多数残っている。そこで、先ず、半導体基板12を高温炉内に挿入してトレンチ3の側壁となるP型半導体層2、N型半導体層1の表面に所定の膜厚の、いわゆる犠牲酸化膜を形成し、その中に前記エッチングダメージ層を吸収する。
【0019】
その後、半導体基板をフッ酸等のエッチング液内に浸し犠牲酸化膜をエッチング除去する。次に、図3に示すように、高温炉等内に半導体基板12を挿入し、トレンチ3内からP型半導体層2の表面まで延在する所定の膜厚からなるゲート絶縁膜4を形成する。なお、ゲート絶縁膜4はシリコン熱酸化膜に窒素を取り込んだ酸窒化膜としても良い。
【0020】
次に、CVD法により、トレンチ3の内部を含む半導体基板12の表面全体を被覆するポリシリコン層を形成する。ポリシリコン層の膜厚は厚いので、ポリシリコン層はトレンチ3の内部を埋め込み、その表面はほぼ平坦な状態となる。次に、オキシ塩化リン(POCl3)等を不純物源として高温炉の中でポリシリコン層中にリンを拡散する。その後ドライエッチングによりP型半導体層2上のゲート絶縁膜4が露出するまでポリシリコン層を全面エッチバックする。
【0021】
この際、エッチング装置のエンドポイントでエッチング状態を確認してから、P型半導体層2上のゲート絶縁膜4上にポリシリコン層の残渣が残らないように、一定の時間オーバーエッチングすることで、図4に示すようなトレンチ3の内部を充填するゲート電極5を形成する。トレンチ3の上からはゲート電極最上面5aが確認できる。その結果、図4に示すように、トレンチ3の内部を充填するゲート電極最上面5aは、P型半導体層2の表面から所定の位置まで下がった低い位置になる。このゲート電極5とP型半導体層2に挟まれた部分のゲート絶縁膜4の絶縁耐圧が、次工程のエミッタ層等形成時の砒素イオン等のイオン注入から受ける損傷により低下するのを防止するのが本発明の目的である。
【0022】
次に、図5に示すように、半導体基板12を高温炉等内に挿入してゲート電極5を構成するポリシリコン膜を熱酸化し、砒素イオンのイオン注入時のポリシリコン熱酸化膜中の平均飛程より厚いゲート電極上保護膜となるポリシリコン熱酸化膜6を形成する。ポリシリコン熱酸化膜6は、図5に示すように、酸化前の点線で示すゲート電極最上面5aを挟んで上部6aと下部6bから構成され新たなゲート電極最上面5bが形成される。
【0023】
このとき、同時にP型半導体層2上に形成されていた所定の膜厚のゲート絶縁膜4も図7に示す追酸化量だけ追酸化され厚い追酸化膜7となる。追酸化膜7の厚さは、砒素イオンの平均飛程の70%未満とする。上記ポリシリコン熱酸化膜6の膜厚及び追酸化膜7の膜厚の必要性については後述する。
【0024】
なお、イオンの平均飛程とは、ある物体中に複数のイオンがイオン注入された時、それぞれのイオンが物体内を進行する飛程の平均値のことを言う。イオン注入されたイオンは最終的に中性の原子となり停止し被イオン注入物体内でガウス分布する。従って、イオンの平均飛程とは、物体内に停止した不純物のガウス分布のピーク位置を指すことになる。
【0025】
次に、矢印9bで示すように、P型半導体層2内にN型半導体層8を形成するため砒素イオン等を一定の加速電圧でイオン注入する。イオン注入の方向が半導体基板に垂直な方向から僅かに角度をもっているのは、前述したように、注入されるイオンがチャネリングによりP型半導体層2内の所定の位置より不規則に深い位置に分布するのを防ぐためである。
【0026】
図5の矢印9aで示す砒素イオン等は、ポリシリコンの上面にポリシリコン熱酸化膜6が形成されたため当初のゲート電極最上面5aより低い位置になったゲート電極最上面5bとP型半導体層2に挟まれた部分のゲート絶縁膜4方向に向かって注入される。注入された砒素イオン等は、酸化後の新たなゲート電極最上面5b上に、ポリシリコン熱酸化膜中の砒素イオンの平均飛程より厚いポリシリコン熱酸化膜6が形成されていることから、上記ゲート電極5とP型半導体層2に挟まれたゲート絶縁膜4中には進入できないか、できたとしても砒素イオンの平均飛程より奥側の砒素イオンのみが侵入することになる。
【0027】
図11に示す従来例の場合は、直接ゲート電極5とP型半導体層2に挟まれたゲート絶縁膜4中に砒素イオンがイオン注入されるため、ゲート絶縁膜4が砒素イオンの衝撃を受け、図6(a)に示すようにゲート印加電圧に対するゲート絶縁膜リーク電流が増加し、ゲート絶縁膜4の絶縁耐圧が低下する。しかし、本実施形態の場合には、上述の如く、ゲート電極5とP型半導体層2に挟まれたゲート絶縁膜4中に注入される砒素イオンが存在したとしても従来に比して格段に少ないため、図6(b)に示すように高い絶縁耐圧を保持している。
【0028】
なお、図5、図11においてイオン注入直後にP型半導体層2内にN型半導体層8が形成されたように記載しているが、その時点では砒素イオンの大半は不活性な状態でP型半導体層2を構成するシリコン原子の格子間にガウス分布し、P型半導体層2内に完全なN型半導体層8を形成しているわけではない。後続工程の層間絶縁膜の高温アニール処理等により拡散、活性化し図5、図11に示す最終的なN型半導体層8が形成される。
【0029】
次に、P型半導体層2上に形成された初期ゲート絶縁膜4と新たな追酸化量が合算された追酸化膜7の膜厚が砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程の70%未満とした理由について以下に説明する。図5の矢印9bで示す砒素イオンのイオン注入によりP型半導体層2内にN型半導体層8が形成される。N型半導体層8はIGBTのエミッタ層、パワーMOSトランジスタのソース層となり、それらの下層のP型半導体層2は、それぞれのデバイスのチャネル層となる。
【0030】
砒素イオンのイオン注入により形成されるN型半導体層8は後の層間絶縁膜のアニール処理を行いP型半導体層2の表面からP型半導体層2とゲート絶縁膜4を介して対峙するゲート電極最上面5bより深いP型半導体層2内まで延在させる。また、N型半導体層8の砒素濃度は、オン抵抗低減のため、及びN型半導体層8とコンタクトする不図示のエミッタ電極等とのコンタクト抵抗を低減させるため実用的範囲内でできるだけ高濃度である事が望ましい。
【0031】
追酸化膜7の膜厚は薄ければ薄いほど注入したイオンが追酸化膜7内で止ってしまう割合が減り、安定的に高濃度のN型半導体層8を形成する事ができる。注入されるイオンの分布はガウス分布に従うので、安定的に高濃度のN型半導体層8を形成する為に追酸化膜7の膜厚が砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程の70%未満が望ましいとしている。
【0032】
一方で、上記ゲート絶縁膜4への損傷を防止するためゲート電極5上のポリシリコン熱酸化膜6は厚い方が良い。図7の横軸に、所定の初期膜厚のゲート絶縁膜4を有するP型半導体層2の表面に新たに追加形成される追酸化量を、同縦軸に、P型半導体層2上に所定の初期膜厚のゲート絶縁膜4と追酸化量を合算して形成された追酸化膜7の膜厚及びゲート電極5上に形成されるポリシリコン熱酸化膜6の膜厚を、それぞれ規格化して表示した関係を示す。ポリシリコン中の不純物の濃度などの影響を受けるがポリシリコン上に成長する酸化膜の成膜速度はシリコン上に成長する酸化膜の成長速度より速い。この成長速度の差を利用している事も本出願の効果を得るための重要なポイントである。
【0033】
本実施形態での砒素イオンのイオン注入時の加速電圧の場合、砒素イオンのポリシリコン酸化膜中の平均飛程は図7の縦軸のa1で示す規格化された値でa1≒3.25nmである。従って、ゲート電極最上面5b部近傍のゲート電極5とP型半導体層2に挟まれたゲート絶縁膜4が砒素イオンのイオン注入により損傷を受けないようにするためには、ゲート電極最上面5b上のポリシリコン熱酸化膜6の規格化された膜厚は約3.25nmより厚い事が必要になる。
【0034】
砒素イオンのポリシリコン酸化膜中の平均飛程3.25nmよりポリシリコン熱酸化膜6の膜厚を薄くした場合、ゲート絶縁膜4の絶縁耐圧の劣化が見られたからである。なお、この場合、初期のゲート電極最上面5aと新たなゲート電極最上面5b間のポリシリコン熱酸化膜6の下部6bの膜厚は全体の膜厚の0.45で、初期のゲート電極最上面5aより上に形成されたポリシリコン熱酸化膜6の上部6aの膜厚は全体の膜厚の約0.55であった。
【0035】
図7から、ゲート電極5上のポリシリコン熱酸化膜6のポリシリコン上規格化酸化膜厚がa1≒3.25nmであるとき規格化追酸化量はc1≒1.3nmであり、P型半導体層2上のシリコン上規格化追酸化膜7の膜厚はb1≒1.87nmとなる。一方、砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程は、ポリシリコン酸化膜の場合とほぼ同等の約3.25nmである。シリコン上規格化追酸化膜7の膜厚が砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程3.25nmの0.7倍の約2.25nm(b2)より厚くなると図5の矢印9bで示す砒素イオンのP型半導体層2中への注入量が減少し、N型半導体層8の抵抗が高くなり、また表面濃度の低下により不図示のエミッタ電極等との接触抵抗が高くなる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について図8、図9に基づいて説明する。符号については第1の実施形態と同一構成については同様とする。先ず、第1の実施形態と同一の工程を経て図4に示す半導体基板12を準備する。次に、図8に示すように、P型半導体層2上に露出しているゲート絶縁膜4をエッチング除去する。この際、ゲート電極5とP型半導体層2に挟まれた部分のゲート絶縁膜4も若干食い込んだ形でエッチングされる。
【0037】
次に、図9に示すように、半導体基板12を高温炉内に挿入して、第1の実施形態と同一条件でゲート電極5上にポリシリコン熱酸化膜6を、P型半導体層2上に追酸化膜7aを形成する。この場合ゲート電極5上に形成されるポリシリコン酸化膜6の膜厚は第1の実施形態の場合と同一になる。
【0038】
それに対して同一追酸化量では、P型半導体層2上に形成される追酸化膜7aの膜厚は初期膜厚が0なので、所定の初期膜厚からスタートする第1の実施形態における追酸化膜7の膜厚より当然薄くなる。厳密さを欠くが本実施形態の露出したP型半導体層2上に形成されるシリコン熱酸化膜からなるシリコン上規格化追酸化膜7aの膜厚は、規格化追酸化量と同一の値となる。
【0039】
追酸化膜7、追酸化膜7aの膜厚の下限は、イオン注入の損傷を防ぐための最少のポリシリコン熱酸化膜6の膜厚で制限され、上限はN型半導体層8の濃度等により制限される。その許容範囲を第1の実施形態における図7の規格化追酸化量で比較する。第1の実施形態、本実施形態いずれにおいても規格化追酸化量の下限は、ポリシリコン上規格化酸化膜の膜厚a1≒3.25nmに対応するc1≒1.3nmで同一である。
【0040】
それに対して規格化追酸化量の上限は、第1の実施形態においてはシリコン上規格化追酸化膜厚の上限b2≒2.25nmに対応するc2≒1.72nmである。本実施形態においては規格化追酸化量そのものがP型半導体層2上のシリコン規格化追酸化膜厚に相当することから、シリコン上規格追酸化膜厚の上限c3は砒素イオンのシリコン酸化膜中の平均飛程3.25nmの0.7倍、つまりc3≒2.25nmになる。その結果、第1の実施形態では規格化追酸化量の許容範囲はc1〜c2、即ち、1.3〜1.72nmとなるのに対して、本実施形態では規格化追酸化量の許容範囲はc1〜c3、即ち、1.3〜2.25nmとなる。その結果、追酸化量の許容範囲を2.2倍以上広げる事ができる。規格化追酸化量は酸化時間の1/2乗に比例することから、本実施形態の規格化追酸化量の上限までの時間は第1の実施形態の場合に比べて約1.8倍と長くする事ができる。
【0041】
即ち、第1の実施形態の場合、許容規格化追酸化量を形成するための上限と下限間の熱処理時間幅が狭くプロセス余裕度小さいため、1回の処理枚数を減らす等のばらつき低減策が必要になる。それに対して、本実施形態では許容規格化追酸化量の上限までの時間が第1の実施形態に比べ約1.8倍に伸びているためプロセス余裕度を大幅に改善する事ができる。
【0042】
次に、第1の実施形態及び第2の実施形態(以後、合わせて本実施形態と呼ぶ)に共通した、特許文献1に記載の従来例に無い本発明の特徴について説明する。第1番目の特徴はトレンチ3の側壁からP型半導体層2内に不純物イオンを注入できるか否かである。従来例の第1実施例では、トレンチ3内を含む半導体基板12上全面が平坦な状態に厚いシリコン酸化膜で被覆されており、トレンチ3の側壁が露出することは無い。従って、P型半導体層2の上面からのみ該P型半導体層2内に砒素イオン等がイオン注入され、トレンチ3の側壁から砒素イオン等がイオン注入されることは無い。
【0043】
また、第3の実施例では最上部が露出したトレンチ3の露出部分から確認できるトレンチ3の側壁がCVD酸化膜、ゲート酸化膜及びスクリーン酸化膜からなる厚い膜で被覆されているため、やはり、トレンチ3の側壁から砒素イオン等がイオン注入されることは無い。
【0044】
それに対して、本実施形態においてはゲート電極5上のポリシリコン酸化膜6の上面をP型半導体層2の上面より低く形成しているため、トレンチ3の側壁を追酸化膜7、または追酸化膜7aで被覆された状態ではあるが、トレンチ3の一部が露出している。従って、P型半導体層2の上面からの注入に加え、矢印9aや矢印9aと矢印9bの間の方向に注入される砒素イオン等の一部は追酸化膜7内又は追酸化膜7a内等を経由してトレンチ3の側壁からP型半導体層2内に注入される。
【0045】
矢印9aや矢印9aと矢印9bの間の方向からの砒素イオン等の追酸化膜7又は追酸化膜7aへの入射口は、矢印9b方向からの砒素イオンのP型半導体層2上の追酸化膜7又は追酸化膜7aへの入射口より低い位置にあるためトレンチ3の側壁から入射する砒素イオン等を、従来例よりP型半導体層2のより深い位置に分布させる事ができる。この結果、デバイス特性の向上等が期待できる。なお、この位置は追酸化膜7等の膜厚が薄ければより深くなるので、第1の実施形態に比べて第2の実施形態の方が有利になる。
【0046】
但し、矢印9aや矢印9aと矢印9bの間の方向から入射する砒素イオン等は、トレンチ3の側壁上に形成された追酸化膜7又は追酸化膜7aを斜めに進行する。そのため、例えばシリコン上規格化追酸化膜7aの膜厚が、ポリシリコン上規格化酸化膜の膜厚a1≒3.25nmに対応するc1≒1.3nmの場合でも、砒素イオン等はシリコン上規格化追酸化膜中を約10.6nmを経由してからP型半導体層2内に注入される。結果的に、P型半導体層2内に注入された砒素等の濃度は低いものとなる。
【0047】
従って、上記効果を発揮するためには、シリコン中の砒素イオンの平均飛程がシリコン酸化膜中の砒素イオンの平均飛程の約1.2倍あることも考慮して、ポリシリコン酸化膜6の最上面とP型半導体層2の上面の距離を決定しなければならない。
【0048】
次に、第2番目の特徴について図10を参酌して説明する。図10はゲート電極最上面5bとゲート絶縁膜4近傍の位置関係をミクロに表示したものである。ゲート電極5を酸化してゲート電極5上にポリシリコン酸化膜6を形成するが、このとき、ゲート絶縁膜4と接しているゲート電極最上面5a部近傍はポリシリコンが酸化されると同時にゲート絶縁膜4を通った酸化種によってP型半導体層2も酸化される。
【0049】
その結果、ゲート電極最上面5bは、P型半導体層2と離間するにつれ徐々にその高さが高くなる最高部を持ち、その後トレンチ3の中心部に向かいその高さを低くする山型の形状となる。また、P型半導体層2とゲート電極最上面5bの間には、所定の膜厚のゲート絶縁膜から始まってゲート電極最上面5bの最高部に向かって徐々に膜厚が増加するP型半導体層の熱酸化膜およびポリシリコンの熱酸化膜の混合された厚い混合絶縁膜6cが形成される。
【0050】
一方、ゲート電極最上面5aとP型半導体層2の間に挟まれたゲート絶縁膜4内やその直下のP型半導体層2表面にはエッチング直後にエッチングダメージ等が入り、それがそのまま残る場合がある。この場合、上述のように、ゲート電極最上面5bとゲート絶縁膜4を介して対峙するエッチングダメージの入ったP型半導体層2が新たな混合絶縁膜6cの一部に変わり、P型半導体層2に入ったダメージ層が吸収除去される。また、ゲート電極最上面5bまで徐々に厚くなる混合絶縁膜6cが形成されることから、ゲート電極最上面5aと該ゲート電極最上面5aと対峙するP型半導体層2の間の電界強度が緩和され、その間のリーク電流の増大を防止する事ができる。
【0051】
最後に、第3番目の特徴について説明する。砒素等のイオン注入工程が終了すると、次に半導体基板12上全面に層間絶縁膜がCVD法等により堆積される。層間絶縁膜は、通常、ノンドープシリコン酸化膜NSG、ボロン及びリンドープシリコン酸化膜BPSGをこの順序で堆積して形成される。本実施形態においては、ゲート電極5上やN型半導体層8上に、従来よりも厚いポリシリコン熱酸化膜6や追酸化膜7が形成されているためNSG層を形成することなく直接BPSGを形成する事も可能であるという特徴を有する。
【0052】
この後、所定の工程を経て層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、所定の工程を経てエミッタ電極等を形成し、最後に窒化膜等からなるパッシベーションを形成することにより半導体装置は完成する。このようにすることで、製造工程数をさらに削減でき、上述したゲート絶縁膜の絶縁耐圧の向上した半導体装置をさらに低コストで製造する事ができる。
【0053】
なお、Nチャネル型パワーMOSトランジスタについて上述したが、Pチャネル型パワーMOSトランジスタ場合は、第1、2の実施形態とも各不純物の極性が反対になるだけで基本的部分は変わらない。
【符号の説明】
【0054】
1 N型半導体層 2 P型半導体層 3 トレンチ 4 ゲート絶縁膜
5 ゲート電極 5a、5b ゲート電極最上面 6 ポリシリコン熱酸化膜
6a、6b、6c ポリシリコン熱酸化膜 7、7a 追酸化膜 8 N型半導体層
9a、9b 矢印(砒素イオンのイオン注入方向)
12 半導体基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層の上に第2導電型の第2半導体層を有する半導体基板を準備する工程と、
前記第2半導体層の表面から前記第1半導体層内まで延在するトレンチを形成する工程と、
前記トレンチ内壁から前記第2半導体層の表面まで延在するゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜が形成された前記トレンチ内にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極を熱酸化することにより前記ゲート電極の上面にゲート電極保護膜を形成する工程と、
前記ゲート電極保護膜の形成後に、前記第2半導体層内に不純物イオンをイオン注入して第1導電型の不純物領域を形成する工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート電極保護膜を形成する工程では、前記第2半導体層の上面に前記ゲート絶縁膜に重畳して熱酸化膜が形成され、
前記ゲート電極保護膜の膜厚は、前記不純物領域を形成する工程における前記不純物イオンの前記ゲート電極保護膜中の平均飛程より厚く且つ、前記ゲート絶縁膜と前記熱酸化膜を重畳した膜厚は、前記不純物イオンの前記ゲート電極保護膜中の平均飛程の70%未満の厚さであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ゲート電極保護膜の上面が前記第2半導体層の上面より低い位置になることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ゲート電極と前記第2半導体層に挟まれた前記ゲート絶縁膜が前記ゲート電極最上面で厚く形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2半導体層と対峙する前記ゲート電極最上面が該第2半導体層から離間するに従い高くなる最上部を有し、その後前記トレンチの中心部に向かって低くなる山型に形成され、前記第2半導体層と前記ゲート電極最上面との間の前記ゲート絶縁膜が所定の膜厚から前記最上部に向かい徐々に厚く形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ゲート電極の形成後であって、前記ゲート電極保護膜を形成する前に、前記第2半導体層表面から前記ゲート絶縁膜を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層の上に第2導電型の第2半導体層を有する半導体基板を準備する工程と、
前記第2半導体層の表面から前記第1半導体層内まで延在するトレンチを形成する工程と、
前記トレンチ内壁から前記第2半導体層の表面まで延在するゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜が形成された前記トレンチ内にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極を熱酸化することにより前記ゲート電極の上面にゲート電極保護膜を形成する工程と、
前記ゲート電極保護膜の形成後に、前記第2半導体層内に不純物イオンをイオン注入して第1導電型の不純物領域を形成する工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ゲート電極保護膜を形成する工程では、前記第2半導体層の上面に前記ゲート絶縁膜に重畳して熱酸化膜が形成され、
前記ゲート電極保護膜の膜厚は、前記不純物領域を形成する工程における前記不純物イオンの前記ゲート電極保護膜中の平均飛程より厚く且つ、前記ゲート絶縁膜と前記熱酸化膜を重畳した膜厚は、前記不純物イオンの前記ゲート電極保護膜中の平均飛程の70%未満の厚さであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ゲート電極保護膜の上面が前記第2半導体層の上面より低い位置になることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ゲート電極と前記第2半導体層に挟まれた前記ゲート絶縁膜が前記ゲート電極最上面で厚く形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2半導体層と対峙する前記ゲート電極最上面が該第2半導体層から離間するに従い高くなる最上部を有し、その後前記トレンチの中心部に向かって低くなる山型に形成され、前記第2半導体層と前記ゲート電極最上面との間の前記ゲート絶縁膜が所定の膜厚から前記最上部に向かい徐々に厚く形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ゲート電極の形成後であって、前記ゲート電極保護膜を形成する前に、前記第2半導体層表面から前記ゲート絶縁膜を除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−134837(P2011−134837A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292162(P2009−292162)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】
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