説明

半導体装置の電源配線レイアウト方法及び電源配線レイアウト装置

【課題】基板ノイズ違反を解消しつつ、半導体集積回路の大型化を抑制することができる半導体装置の電源配線レイアウト方法。
【解決手段】アナログ回路とデジタル回路とが混載された半導体集積回路の電源配線レイアウト方法。電源配線を、複数のノードと、それぞれが互いに隣接するノード間に配置された複数の要素抵抗と、を含む解析モデルとしてモデル化し、回路シミュレーションにより各複数のノードにおける電圧値を求め、アナログ回路のノードの電圧値に基板ノイズ違反がある場合、デジタル回路のノードのうち当該アナログ回路のノードへ流れ込む電流量が最大となる最大電流ノードを探索し、デジタル回路において最大電流ノードへ流れ込む電流経路を探索し、複数の要素抵抗のうち、電流経路に含まれる要素抵抗からボトルネック要素抵抗を選択し、ボトルネック要素抵抗の抵抗値を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の電源配線レイアウト方法及び電源配線レイアウト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
論理回路が多数搭載されたデジタル回路では、論理回路のスイッチング動作による電源ノイズが発生する。特に、アナログ回路とデジタル回路とが同一基板に混載されたアナログ・デジタル混載LSIでは、デジタル回路による電源ノイズが基板を介してアナログ回路へ伝達され、アナログ回路の誤動作を引き起こす。このように、基板を介して伝達される電源ノイズを、特に基板ノイズという。
【0003】
そのため、この基板ノイズ低減が回路設計において重要となる。単純にアナログ回路とデジタル回路との間の距離を広げれば、基板ノイズは低減するが、LSIが大型化してしまう。そこで、アナログ回路の周囲にガードリングを設ける手法が知られている。非特許文献1には、ガードリングを備えたアナログ・デジタル混載LSIについての回路シミュレーション方法が開示されている。しかしながら、ガードリングによるチップ面積の増加や製造プロセス増加を招いてしてしまう。
【0004】
また、デジタル回路にデカップリンキャパシタを設けことによっても基板ノイズを低減することができる。特許文献1には、デカップリンキャパシタを効果的に設けるための回路設計方法が開示されている。デカップリングキャパシタを追加することによるチップ面積の増加、リークによる消費電力の増加を招いてしてしまう。
【0005】
他方、基板ノイズは電源電圧の変動に起因するため、ダイナミックIRドロップの問題として捉えることもできる。そのため、ダイナミックIRドロップを解消するのと同様に、デジタル回路の電源配線幅を広げることにより、基板ノイズを低減することもできる。非特許文献2には、IRドロップ違反があった場合、ある領域内の配線全体を太くすることにより、IRドロップ違反を解消する電源配線手法が開示されている。
【0006】
なお、特許文献2には、発明者自らの発明である基板ノイズの解析を容易化する半導体デバイス設計支援方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−172488号公報
【特許文献2】特開2009−276822号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D. K. Su, M. J. Loinaz, S. Masui and B. A. Wooley, "Experimental Results and Modeling Techniques for Substrate Noise in Mixed-Signal Integrated Circuits," IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 28, no. 4, pp. 420-430, April. 1993.
【非特許文献2】J. Singh, and S. S. Sapatnekar, "Partition-Based Algorithm for Power Grid Design Using Locality," IEEE Transactions on Computer-aided Design of Integrated Circuits and Systems, vol. 25, no. 4, pp. 664-677, April. 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者は以下の問題を見出した。基板ノイズ違反を解消するために配線幅を大きくすることは、電源配線の面積が増大し、半導体集積回路の大型化につながるため、最小限に留めたい。しかしながら、非特許文献2に開示された手法では、配線全体の配線幅を大きくするため、半導体集積回路の大型化につながり易いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体装置の電源配線レイアウト方法は、
アナログ回路とデジタル回路とが混載された半導体集積回路の電源配線レイアウト方法であって、
前記電源配線を、複数のノードと、それぞれが互いに隣接する前記ノード間に配置された複数の要素抵抗と、を含む解析モデルとしてモデル化し、
回路シミュレーションにより各前記複数のノードにおける電圧値を求め、
前記アナログ回路のノードの電圧値に基板ノイズ違反がある場合、前記デジタル回路のノードのうち当該アナログ回路のノードへ流れ込む電流量が最大となる最大電流ノードを探索し、
前記デジタル回路において前記最大電流ノードへ流れ込む電流経路を探索し、
前記複数の要素抵抗のうち、前記電流経路に含まれる要素抵抗からボトルネック要素抵抗を選択し、
前記ボトルネック要素抵抗の抵抗値を変更するものである。
【0011】
本発明に係る半導体装置の電源配線レイアウト装置は、
アナログ回路とデジタル回路とが混載された半導体集積回路の電源配線のレイアウトを行なう電源配線レイアウト装置であって、
前記電源配線を、複数のノードと、それぞれが2つの当該ノード間に配置された複数の要素抵抗と、を含む解析モデルとしてモデル化する電源配線モデル化部と、
各前記複数のノードにおける電圧値を求め、前記アナログ回路のノードの電圧値に基板ノイズ違反があるか否かを判定する基板ノイズ判定部と、
前記デジタル回路のノードのうち前記アナログ回路のノードへ流れ込む電流量が最大となる最大電流ノードを探索し、当該最大電流ノードへ流れ込む前記デジタル回路内の電流経路に含まれる要素抵抗からボトルネック要素抵抗を決定し、抵抗値を変更するボトルネック決定部と、を備えるものである。
【0012】
本発明では、デジタル回路のノードのうちアナログ回路のノードへ流れ込む電流量が最大となる最大電流ノードを探索し、デジタル回路において最大電流ノードへ流れ込む電流経路を探索し、複数の要素抵抗のうち、当該電流経路に含まれる要素抵抗からボトルネック要素抵抗を選択し、その抵抗値を変更する。そのため、IRドロップ違反を解消しつつ、半導体集積回路の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、基板ノイズ違反を解消しつつ、半導体集積回路の大型化を抑制することができる半導体装置の電源配線レイアウト方法及び電源配線レイアウト装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る半導体装置の電源配線レイアウト方法のフローチャートである。
【図2A】半導体デバイスチップ101のグランド配線網のレイアウトを示す平面図である。
【図2B】半導体デバイスチップ101の基板の仮想配線網のレイアウトを示す平面図である。
【図3】半導体デバイスチップ101の模式的断面図であって、図2A及び図2BのIII−III断面図である。
【図4】図2Aのグランド配線網及び図2Bの基板の仮想配線網に対応する解析モデルの斜視図である。
【図5】直流解析により求められた図2Aに示したグランド配線網の各ノードの電圧値の一例を示したものである。
【図6】直流解析により求められた図2Bに示した仮想配線網の各仮想ノードの電圧値の一例を示したものである。
【図7】図5の各枝にコスト=電流量/許容電流量を付した図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置設計用の電源配線レイアウト装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0016】
(実施の形態1)
図1を参照して本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の電源配線レイアウト方法について説明する。図1は、実施の形態1に係る半導体装置の電源配線レイアウト方法のフローチャートである。図1に示すように、電源配線レイアウト方法は、電源配線をモデル化するステップST1、抵抗値の初期値を設定するステップST2、直流解析を実行するステップST3、基板ノイズ違反があるか否かを判定するステップST4、基板ノイズ違反があった場合、ボトルネック枝を探索し、その抵抗値を更新するステップST5の5つのステップを備えている。
【0017】
まず、電源配線をモデル化するステップST1について説明する。本実施の形態に係る電源配線はグランド配線である。図2Aは、アナログ・デジタル混載LSI(Large Scale Integration)である半導体デバイスチップ101のグランド配線網のレイアウトを示す平面図である。図2Aを参照して、モデル化の対象となるグランド配線網について説明する。図2Aに示すように、半導体デバイスチップ101は、アナログ回路領域AAとデジタル回路領域DAとを備えている。デジタル回路領域DAには、太線で示されたグランド配線網102が設けられている。
【0018】
このグランド配線網102は、図面縦方向に4行、図面横方向に6列の網目状の配線を備えている。そして、横方向の配線と、縦方向の配線との交点に、合計3+4×5=23個のノードを備えている。
【0019】
具体的には、図面の最も左側に位置する縦方向の配線には、3つのノードN11〜N13が並んでいる。この配線の右隣に位置する縦方向の配線には、4つのノードN21〜N24が並んでいる。この配線の右隣に位置する縦方向の配線には、4つのノードN31〜N34が並んでいる。この配線の右隣に位置する縦方向の配線には、4つのノードN41〜N44が並んでいる。この配線の右隣に位置する縦方向の配線には、4つのノードN51〜N54が並んでいる。そして、この配線の右隣に位置し、図面の最も右側に位置する縦方向の配線には、4つのノードN61〜N64が並んでいる。
【0020】
換言すると、図面の最も上側に位置する横方向の配線には、6つのノードN11、N21、N31、N41、N51、N61が並んでいる。この配線の下隣に位置する横方向の配線には、6つのノードN12、N22、N32、N42、N52、N62が並んでいる。この配線の下隣に位置する横方向の配線には、6つのノードN13、N23、N33、N43、N53、N63が並んでいる。そして、この配線の下隣に位置し、図面の最も下側に位置する横方向の配線には、5つのノードN24、N34、N44、N54、N64が並んでいる。
また、上記23個のノードのうち、3つの隅に位置するノードN11、N61、N64は、それぞれグランドパッドGP1、GP3、GP4に配線を介して接続されている。
【0021】
一方、アナログ回路領域AAには、1つのノードN14が設けられている。このノードN14は、グランドパッドGP2に配線を介して接続されている。このように、デジタル回路のグランド配線網102と、アナログ回路のグランド配線とは、別々に設けられている。
【0022】
図2Bは、図2Aに対応した半導体デバイスチップ101の基板を仮想的な配線網(以下、基板仮想配線網と呼ぶ)として示した平面図である。図2Aに示した24個のノードN11〜N14、ノードN21〜N24、ノードN31〜N34、ノードN41〜N44、ノードN51〜N54、ノードN61〜N64に対応する24個の仮想ノードSN11〜SN14、仮想ノードSN21〜SN24、仮想ノードSN31〜SN34、仮想ノードSN41〜SN44、仮想ノードSN51〜SN54、仮想ノードSN61〜SN64が配置されている。
【0023】
図3は、半導体デバイスチップ101の模式的断面図であって、図2A及び図2BのIII−III断面図である。半導体デバイスチップ101は、P基板(P SUBSTRATE)からなり、アナログ回路領域AAには、NMOSトランジスタNM1とPMOSトランジスタPM1とからなるCMOSトランジスタが形成されている。また、デジタル回路領域DAにも、NMOSトランジスタNM2とPMOSトランジスタPM2とからなるCMOSトランジスタが形成されている。
【0024】
NMOSトランジスタNM1は、P基板上に形成されたn型拡散層とゲート電極G1から構成される。PMOSトランジスタPM1は、P基板のNウェルNW上に形成されたp型拡散層とゲート電極G2から構成される。同様に、NMOSトランジスタNM2は、P基板上に形成されたn型拡散層とゲート電極G3から構成される。そして、PMOSトランジスタPM2は、P基板のNウェルNW上に形成されたp型拡散層とゲート電極G4から構成される。
【0025】
ここで、アナログ回路領域AAとデジタル回路領域DAとのそれぞれに、P基板にグランド電圧GNDを与えるグランドタップが1つずつ形成されている。ここで、実際には複数のグランドタップが形成されているが、縮退されて1つのグランドタップとして描かれている。アナログ回路領域AAに形成されたグランドタップは、図2AにおけるノードN14に該当する。また、デジタル回路領域DAに形成されたグランドタップは、図2AにおけるノードN24に該当する。同様に、アナログ回路領域AAのNウェルNWとデジタル回路領域DAのNウェルNWのそれぞれに、電源電圧VDDを与える電源タップが1つずつ形成されている。
【0026】
ノードN14の下側のP基板内部に、図2Bにおける仮想ノードSN14が示されている。同様に、ノードN24の下側のP基板内部に、図2Bにおける仮想ノードSN24が示されている。図2Aに示すように、別々の配線として設けられたノードN14、N24は、基板を介して接続されている。これが、基板ノイズの伝達経路である。ここで、図3に示すように、電源配線(電源電圧VDD)とグランド配線(グランド電圧GND)とは、PN接合による容量を介して接続されている。そのため、直流解析を用いた基板ノイズ解析では、電源配線(電源電圧VDD)は考慮する必要がない。
【0027】
図4は、図2Aのグランド配線網及び図2Bの基板仮想配線網に対応する解析モデルの斜視図である。図4に示すように、当該解析モデルは直方体形状を有しており、その上面が図2Aに示したグランド配線網の解析モデル、下面が図2Bに示した基板仮想配線網の解析モデルである。図4に示すように、図2Aに示したグランド配線網の隣接ノード間の配線(以下、枝と呼ぶ)は、要素抵抗としてモデル化されている。また、グランドパッドGP1、GP2、GP3、GP4と、それぞれの最近接ノードN11、N14、N61、N64と、を結ぶ配線も要素抵抗としてモデル化されている。図2Bに示した基板仮想配線網についても同様にモデル化されている。なお、図4から明らかなように、基板仮想配線網の解析モデルについては一部省略されている。
【0028】
また、図4に示す解析モデルでは、図2Aに示したグランド配線網の24個のノードは、対応する図2Bに示した基板仮想配線網の24個のノードと、抵抗を介してそれぞれ接続されている。具体的には、図4に示すように、グランド配線のノードN14は、対応する基板仮想配線のノードSN14と、抵抗を介して接続されている。同様に、グランド配線のノードN24は、対応する基板仮想配線網のノードSN24と、抵抗を介して接続されている。その他のノードについても同様であるので、説明を省略する。
【0029】
次に、図1におけるグランド配線網の抵抗値の初期値を設定するステップST2について説明する。抵抗値の初期値は特に制約されないが、大きい抵抗値を初期値として設定することが好ましい。ここで、抵抗値は、配線幅、配線数、配線厚さなどにより変更可能である。しかしながら、配線幅により抵抗値を変更するのが製造プロセスに及ぼす影響が少なく好ましい。即ち、大きい抵抗値を有する配線とは小さい配線幅を有するということである。このように、できる限り小さい配線幅からスタートすることにより、最終的に得られるグランド配線の面積も小さくすることができる
【0030】
次に、図1における直流解析を実行するステップST3について説明する。直流解析は、例えばコンピュータ上でSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)を用いて行うことができる。この直流解析により、図2Aに示したグランド配線網の各ノードの電圧及び図2Bに示した基板仮想配線網の各仮想ノードの電圧を求めることができる。
【0031】
図5は、直流解析により求められた図2Aに示したグランド配線網の各ノードの電圧値の一例を示したものである。図5において、グランドパッドGP1〜GP4の電圧は、いずれも0Vである。そして、各ノードに示された値がそのノードの電圧(mV)である。また、各枝に沿って付された矢印は、電流の向きを示している。当然のことながら、電流は隣接ノード間において、電圧の高いノードから電圧の低いノードへ向かって流れる。なお、図5では、ノードN14、N22〜N24、N32〜N34、N42、N43、N52、N62以外のノード名は省略されている。
【0032】
図6は、直流解析により求められた図2Bに示した基板仮想配線網の各ノードの電圧値の一例を示したものである。図6において、各仮想ノードに示された値がそのノードの電圧(mV)である。また、各枝に沿って付された縦又は横方向の矢印は、電流の向きを示している。各仮想ノードに対し付された斜め方向の矢印は、各仮想ノードと対応するグランド配線網のノードとの間に流れる電流の向きを示している。さらに、電流の向きを示す矢印に付された四角で囲まれた値は電流値(mA)である。なお、図6では、仮想ノードSN12、SN13、SN14、SN23、SN24、SN33以外の仮想ノード名は省略されている。
【0033】
次に、図1における基板ノイズ違反があるか否かを判定するステップST4について説明する。上述の通り、基板ノイズは即ちアナログ回路のノードN14におけるダイナミックIRドロップの問題として捉えることができる。そのため、図5に示したノードN14にIRドロップ違反があるか否かを判定する。具体的には、グランド電圧0Vからの変動がある基準値を超えた場合、IRドロップ違反即ち基板ノイズ違反となる。ここで、図1に示すように、基板ノイズ違反が無ければ、フローは終了する。
【0034】
次に、ボトルネック枝を探索し、その抵抗値を更新するステップST5について説明する。図1に示すように、ステップST4において、ノードN14にIRドロップ違反があった場合、ボトルネック枝を探索し、その抵抗値を更新する。ここで、図5、6を用いて、ボトルネック枝の探索方法を説明する。
【0035】
まず、デジタル回路における23個のグランド配線のノードN11〜13、ノードN21〜24、ノードN31〜N34、ノードN41〜N44、ノードN51〜N54、ノードN61〜N64のうち、アナログ回路のノードN14に対し最も多く電流を供給しているノード(以下、最大電流ノードと呼ぶ)を探索する。つまり、このようなノードが、ノードN14のIRドロップ違反に最も影響を及ぼしていると考える。図4に示すように、デジタル回路のグランド配線の各ノードからアナログ回路のノードN14への電流は、基板仮想配線網を介して供給される。
【0036】
上述のとおり、図6に示した各仮想ノードには、対応するグランド配線のノードとの間に流れる電流の向きを示す斜めの矢印とともに電流値(四角で囲まれた値)が示されている。図6に示すように、アナログ回路のノードN14へは、仮想ノードSN14を介して25.76mAの電流が流入する。他方、デジタル回路のノードN24から対応する仮想ノードSN24へは、7.75mAの電流が流入する。同様に、デジタル回路のノードN13から対応する仮想ノードSN13へは、5.38mAの電流が流入する。デジタル回路のノードN23から対応する仮想ノードSN23へは、1.47mAの電流が流入する。デジタル回路のノードN33から対応する仮想ノードSN33へは、2.49mAの電流が流入する。その他のノードについても、図6の通りであるため、説明を省略する。
【0037】
ノードN24について考える。図6の電流経路をたどると、ノードN24から対応する仮想ノードSN24へ流れる電流7.75mAは、全てアナログ回路のノードN14に流入する。
【0038】
次に、ノードN13について考える。図6の電流経路をたどると、ノードN13から対応する仮想ノードSN13へ流れる電流5.38mAは、仮想ノードSN12とSN14とへ分岐する。ここで、図6に示すように、仮想ノードSN13から仮想ノードSN12への電流量は1.33mA、仮想ノードSN13から仮想ノードSN14への電流量は10.74mAである。そのため、ノードN13からアナログ回路のノードN14に流入する電流量は、5.38×10.74/(10.74+1.33)=4.79mAとなる。このような計算をデジタル回路の全ノードについて実施する。その結果、図5、6の例では、最大電流ノードはノードN24となる。図5において、このノードN24に丸印を付している。
【0039】
次に、図5のグランド配線網において、この最大電流ノードN24へ電流を供給している電流経路を探索する。この電流経路探索は、最大電流ノードN24から逆方向の矢印を遡って行くことにより求めることができる。図5の例では、網掛け領域が求める電流経路となる。ここで、図5に示したグランド配線網において、隣接ノード間のIRドロップが最大となるのは、ノードN52(電圧値:263.99V)とノードN62(電圧値:122.23V)との間であり、その値は141.76mVである。しかし、この枝は、網掛け領域に含まれない。そのため、この枝の抵抗値を変更したとしても、効果的にアナログ回路のノードN14の電圧値を下げ、IRドロップ即ち基板ノイズを解消することができない。
【0040】
図6に示すように、最大電流ノードN24に至る電流経路は、N24←N23←N22←N32と、N24←N34←N33←N32と、N24←N34←N33←N23←N22←N32と、N24←N34←N33←N43←N42←N32と、の4パスである。
【0041】
ここで、例えば、隣接ノード間の電位差がボトルネック基準値を超える場合、その枝をボトルネック枝と定義するとする。ここで、例えば、ボトルネック基準値を60mVとする。図5の場合、この定義に基づけば、電位差87.66mVのノードN22、N32間の枝及び電位差60.02mVのノードN32、N33間の枝の2つの枝がボトルネック枝となる。従って、この2つのボトルネック枝の抵抗値を更新する。具体的には、この2つのボトルネック枝の配線幅を広げて抵抗値を低くする。ここで、基準値を設けずに、隣接ノード間の電位差が最大となる枝(図5の場合、ノードN22、N32間の枝)をボトルネック枝として、その抵抗値を更新してもよい。つまり、少なくとも隣接ノード間の電位差が最大となる枝をボトルネック枝として、その抵抗値を更新すればよい。そして、ステップST3に戻り、再度直流解析を実行する。ステップST4においてIRドロップ違反が無くなるまで、ステップST3〜ST5の処理を繰り返し実行する。
【0042】
(実施の形態2)
次に、図7を参照して本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の電源配線レイアウト方法について説明する。実施の形態1では、図5に示した領域において隣接ノード間の電位差が最大あるいは基準値を超えたものをボトルネック枝として選定した。実施の形態2では、図5に示した網掛け領域において各枝の電流量も考慮して、最も重要な電流経路(クリティカルパス)を決定する。さらに、そのクリティカルパスに含まれる枝において、隣接ノード間の電位差が最大となる枝をボトルネック枝として選定する。
【0043】
図7は、図5の各枝にコスト=電流量I/許容電流量Iaを付した図である。また、カッコ内のr(単位:Ω)は各枝の抵抗値を示している。この抵抗値rは適宜設定するものである。隣接ノード間の電位差がボトルネック基準値を超えないように設定した場合、このボトルネック基準値Vbnと各枝の抵抗値rとを用いて、許容電流量Ia=Vbn/rと表すことができる。他方、隣接ノード間の電位差をVとすると、電流量I=V/rと表すことができる。つまり、コスト=I/Ia=V/r/(Vbn/r)=V/Vbnとなる。
【0044】
図7の例では、ボトルネック基準値Vbn=60mV、各枝の抵抗値r=3Ωとした場合を示している。そのため、各枝の許容電流量Ia=60mV/3Ω=20mAとなる。ノードN24、N23間の電位差が図5に示すように117.02−111.16=5.86mVであると、電流量I=5.86mV/3Ω=1.95mAとなる。従って、コスト=1.95/20となる。その他の枝についても同様にコストを求めることができる。
【0045】
図7に示すように、N24←N23←N22←N32と、N24←N34←N33←N32と、N24←N34←N33←N23←N22←N32と、N24←N34←N33←N43←N42←N32と、の4パスである。各電流経路のコストの逆数即ち電流量Iと許容電流量Iaとの逆比を合計し、その値が最小のものがクリティカルパスとして定まる。図7の例では、N24←N34←N33←N32がクリティカルパスとなる。そして、このクリティカルパスN24←N34←N33←N32において、隣接ノード間の電位差が60.02mVで最大となるノードN32、N33間の枝がボトルネック枝として選定される。
【0046】
なお、上記4つのパスは、いずれも始点がノードN32(210.78mV)、終点がノードN24(111.16mV)である。そのため、コストの合計はいずれのパスでも同じ値(210.78−111.16)/60=1.66となる。その他の工程は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
(実施の形態3)
次に、図8を参照して本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置設計用の電源配線レイアウト装置について説明する。図8は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置設計用の電源配線レイアウト装置のブロック図である。実施の形態1、2において説明した半導体装置の電源配線レイアウト方法は、通常、半導体装置設計ツールなどのソフトウェアに組み込むことにより実施される。しかしながら、図8に示すように、ハードウェアにより実現することもできる。
【0048】
図8に示すように、第3の実施の形態に係る半導体装置設計用の電源配線レイアウト装置は、配線モデル化部301、抵抗値設定部302、基板ノイズ判定部303、ボトルネック枝決定部304を備えている。配線モデル化部301は、図2A、2Bに示すようなグランド配線及び基板の設計データから図4に示すような電源配線モデルを生成する。基板ノイズ判定部303は、配線モデル化部301により生成された電源配線モデルを用いて、基板ノイズ判定を行なう。具体的な基板ノイズ判定方法は、実施の形態1と同様である。ボトルネック枝決定部304は、基板ノイズ判定結果に基づいて、基板ノイズに影響が大きいボトルネック枝を決定し、抵抗値を変更する。具体的な探索方法は、実施の形態1と同様である。
【0049】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0050】
101 半導体デバイスチップ
102 グランド配線網
301 配線モデル化部
302 抵抗値設定部
303 基板ノイズ判定部
304 ボトルネック枝決定部
AA アナログ回路領域
DA デジタル回路領域
GP1〜GP4 グランドパッド
N11〜N14 ノード
N21〜N24 ノード
N31〜N34 ノード
N41〜N44 ノード
N51〜N54 ノード
N61〜N64 ノード
SN11〜SN14 仮想ノード
SN21〜SN24 仮想ノード
SN31〜SN34 仮想ノード
SN41〜SN44 仮想ノード
SN51〜SN54 仮想ノード
SN61〜SN64 仮想ノード
NM1 トランジスタ
NM2 トランジスタ
NW Nウェル
PM1 トランジスタ
PM2 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ回路とデジタル回路とが混載された半導体集積回路の電源配線レイアウト方法であって、
前記電源配線を、複数のノードと、それぞれが互いに隣接する前記ノード間に配置された複数の要素抵抗と、を含む解析モデルとしてモデル化し、
回路シミュレーションにより各前記複数のノードにおける電圧値を求め、
前記アナログ回路のノードの電圧値に基板ノイズ違反がある場合、前記デジタル回路のノードのうち当該アナログ回路のノードへ流れ込む電流量が最大となる最大電流ノードを探索し、
前記デジタル回路において前記最大電流ノードへ流れ込む電流経路を探索し、
前記複数の要素抵抗のうち、前記電流経路に含まれる要素抵抗からボトルネック要素抵抗を選択し、
前記ボトルネック要素抵抗の抵抗値を変更する電源配線レイアウト方法。
【請求項2】
前記電流経路の探索において、
前記最大電流ノードへ流れ込む全ての電流経路を探索することを特徴とする請求項1に記載の電源配線レイアウト方法。
【請求項3】
前記ボトルネック要素抵抗には、前記電流経路において両端ノードの電位差が最大の要素抵抗が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源配線レイアウト方法。
【請求項4】
前記電流経路に含まれる各要素抵抗での電流量と許容電流量との逆比を求め、
前記電流経路のうち前記逆比の合計が最小になるクリティカルパスから前記ボトルネック要素抵抗を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の電源配線レイアウト方法。
【請求項5】
前記ボトルネック要素抵抗には、前記クリティカルパスにおいて両端ノードの電位差が最大の要素抵抗が含まれることを特徴とする請求項4に記載の電源配線レイアウト方法。
【請求項6】
前記ボトルネック要素抵抗の抵抗値を変更した後、再度回路シミュレーションを行なうことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電源配線レイアウト方法。
【請求項7】
前記ボトルネック要素抵抗の抵抗値を大きい値から小さい値へ変更することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電源配線レイアウト方法。
【請求項8】
前記ボトルネック要素抵抗の幅を広げることにより、抵抗値を変更することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電源配線レイアウト方法。
【請求項9】
アナログ回路とデジタル回路とが混載された半導体集積回路の電源配線のレイアウトを行なう電源配線レイアウト装置であって、
前記電源配線を、複数のノードと、それぞれが2つの当該ノード間に配置された複数の要素抵抗と、を含む解析モデルとしてモデル化する電源配線モデル化部と、
各前記複数のノードにおける電圧値を求め、前記アナログ回路のノードの電圧値に基板ノイズ違反があるか否かを判定する基板ノイズ判定部と、
前記デジタル回路のノードのうち前記アナログ回路のノードへ流れ込む電流量が最大となる最大電流ノードを探索し、当該最大電流ノードへ流れ込む前記デジタル回路内の電流経路に含まれる要素抵抗からボトルネック要素抵抗を決定し、抵抗値を変更するボトルネック決定部と、を備える電源配線レイアウト装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−204085(P2011−204085A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71789(P2010−71789)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】