説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】ウェーハの裏面研削やダイシングの際に生じる、水分の浸入による汚れ、あるいは割れ、クラック、チッピング、層間剥離等の物理的損傷を抑制することを目的とする。
【解決手段】基板11上のチップ領域12の周縁部にその内側の部分を連続して取り囲むよう有機保護膜23’を形成する。また、パッシベーション膜22および有機保護膜23がキャップ層47上に閉環状開口部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハに複数の半導体チップを形成し、スクライブ領域をダイシングすることにより形成する半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体装置は、例えばシリコンなどの半導体ウェーハ上に、複数の素子から構成され且つ所定の機能を有する多数のIC(Integrated Circuit)回路をマトリクス状に配置して作られる。
【0003】
また、ウェーハ上において多数個配置されたチップ領域同士の間は、格子状に設けられたスクライブ領域(スクライブライン)によって隔てられている。半導体製造工程を経て1枚のウェーハ上に複数のチップ領域を形成した後、該ウェーハは、所定の厚みになるように裏面から研削する工程と、スクライブ領域に沿って個々のチップにダイシングする工程と、その後の実装工程とを経て、個々の半導体装置とされる。
【0004】
しかし、ウェーハをダイシングして個々のチップに分割すると、チップの端面には透水性、吸湿性の高い層間絶縁膜が露出することになる。このため、チップの端面から層間絶縁膜中に浸入した水分、可動イオン等がチップ内部にまで浸入して配線を腐食したり、絶縁膜の耐性劣化、素子の特性悪化等を起こしたりする場合がある。また、ダイシングによって個々のチップに分割する際に、スクライブライン周辺のチップ領域が機械的衝撃を受けることにより、分離されたチップのダイシング断面にクラックや欠けを生じる場合もある。
【0005】
このような水分、可動イオン等の浸入及び機械的衝撃に対して防御するために、従来の半導体装置では、チップ領域の周囲にシールリングと呼ばれるリング状の防御壁を設ける場合があった。
【0006】
図24は従来のシールリングを有する半導体装置の構成を説明する要部拡大図である。図25は従来のシールリングを有する半導体装置の構成を説明する断面図であり、図24のA−A’線で切り取った断面構造を示す図である。また、図26は従来の半導体装置が複数形成されるウェーハの構成を説明する図であり、シールリングを有する半導体装置がウェーハからなる基板上に複数形成されている状態を示している。
【0007】
図24及び図25に示すように、ウェーハからなる基板111上には、スクライブ領域113によって区画されたチップ領域112が複数形成されている。基板111上には、複数の層間絶縁膜115〜120からなる積層絶縁膜170が形成されている。
【0008】
チップ領域112において、基板111上に、素子を構成するための活性層130が形成されている。積層絶縁膜170中に、活性層130と接続する配線構造171が形成されている。より詳しくは、層間絶縁膜115には活性層130と接続するビア131が形成され、層間絶縁膜116にはビア131と接続する配線132が、層間絶縁膜117には配線132と接続するビア133が、層間絶縁膜118にはビア133と接続する配線134が、層間絶縁膜119には配線134と接続するビア135が、層間絶縁膜120にはビア135と接続する配線136が、それぞれ形成されており、配線構造171を構成している。
【0009】
また、チップ領域112の周縁部における複数の層間絶縁膜115〜120の積層構造には、該積層構造を貫通し且つチップ領域112を連続的に取り囲むシールリング114が形成されている。シールリング114は配線形成用マスクによって形成されるシール配線とビア形成用マスクによって形成されるシールビアとを交互に積み重ねて形成される。具体的には、シールリング114は、基板111に形成された導電層140と、層間絶縁膜115に形成され且つ導電層140に接続するシールビア141と、層間絶縁膜116に形成され且つシールビア141と接続するシール配線142と、層間絶縁膜117に形成され且つシール配線142と接続するシールビア143と、層間絶縁膜118に形成され且つシールビア143と接続するシール配線144と、層間絶縁膜119に形成され且つシール配線144と接続するシールビア145と、層間絶縁膜120に形成され且つシールビア145に接続するシール配線146とから構成されている。
【0010】
更に、配線(132,134,136)とビア(131,133,135)とシールリング104とが設けられた積層絶縁膜170上には、パッシベーション膜121が設けられている。パッシベーション膜121は、配線136上及びシール配線146上にそれぞれ開口部を有する。また、該開口部には、配線136と接続するパッド137と、シール配線146と接続するキャップ層147とが形成されている。
【0011】
また、パッシベーション膜121の上部には、シールリング114の上方と、パッド137上とに開口部を有する他のパッシベーション膜122が形成されている。そして、チップ領域112の保護のために、パッド137及びその周辺上と、シールリング114上とに開口部を有する保護膜123が形成されている。
【0012】
図24及び図25に示すような構造にすることにより、ダイシング時の機械的衝撃を防御する壁が存在するため、チップ領域112にまでクラックが伝播することを防ぐことができる。また、パッシベーション膜121がシールリング114上に開口部を有することにより、ダイシング時の衝撃によってチップ領域112上のパッシベーション膜まで剥れてしまうのを避けることができる。また、シールリング114上のパッシベーション膜121の開口部にキャップ層147が形成されているため、キャップ層147が設けられていない場合と比較して、ダイシングの際にスクライブ領域から浸入した水分や不純物がチップ領域112に浸入するのを防ぐことができる。
【0013】
しかし、このような構造の半導体装置に関して、以下のことが知られている。
一般的に、半導体製造工程にて、ウェーハからなる基板111上に図24及び図25に示すような構造のチップ領域112を形成した後、該ウェーハは、所定の厚みになるように裏面から研削された後、スクライブ領域113内で個々のチップにダイシングされる。
【0014】
このような裏面研削の際には、ウェーハ表面、つまりパターン形成面に保護シートを貼り付け、ウェーハ裏面に高速回転する砥石を押し当てて研削する。研削中には、発生する切削屑を洗い流すために、また、研削で発生する摩擦熱を冷却するために、水を吹きつけている。
【0015】
ここで、図26に示すように、ウェーハ上にはスクライブ領域113が最外周まで形成されている。また、チップ領域112上には保護膜123が形成されている。該保護膜123はチップ領域112をキズや汚染から保護する目的で設けられており、ある程度(5μm前後)の厚みを有する。このため、スクライブ領域113と保護膜123との段差が存在することになる。裏面研削のために保護テープを貼り付けた際、該段差を埋めることができず、保護テープとスクライブ領域113との間に隙間が発生しうる。
【0016】
裏面研削の際、ウェーハの外周部においてこのような隙間から切削屑を含んだ切削水が浸入し、スクライブラインに沿ってウェーハの内側に進み、各チップ表面を汚染することがある。
【0017】
そこで、特許文献1では、チップ領域を保護するための保護膜(ポリイミド膜)をパターニングする際に、縦横に格子状に走るスクライブラインの交叉点近傍に堤防を形成し、スクライブラインを分断する技術が開示されている。この方法によれば、スクライブラインと保護テープの隙間から切削屑を含んだ切削水が浸入しても、スクライブライン上に堤防が設けられているため、切削水はこの堤防より先に進むことができない。これにより、堤防よりも先のチップ領域における電極パッドやチップ表面が汚染されるのを防ぐことができるとされている。
【0018】
一方、裏面研削に続くダイシングの際には、スクライブ領域113に沿って円盤状のダイシングブレードを押し当てて個々のチップに分割するが、この、スクライブ領域113には、半導体素子の特性あるいは半導体製造プロセス途中の種々のプロセス値を確認するためのモニター素子を形成し、そのモニター素子につながる電極パッドを用いて特性検査を行うことにより、半導体チップの良否を推定したり、半導体製造プロセスの異常の有無を確認したりする場合が多い。アクセサリパターンと呼ばれる、このようなモニター素子や、特性検査用電極パッドが存在すると、ダイシングの際にチッピングやパターン剥離が発生する可能性が高くなり、歩留まりの低下の原因となっている。
【0019】
そこで、特許文献2では、保護膜(ポリイミド膜)でスクライブ領域上のアクセサリパターンの一部を覆うことにより、アクセサリパターンが保護膜によって押さえつけられ、ダイシング時のアクセサリパターンの剥れ等が発生しにくくなると開示されている。また、ポリイミドなどの保護膜がスクライブ領域を覆っているような場合には、ダイシングの際にダイシングブレードに保護膜が付着し、ダイシングブレードに目詰まりが発生してその寿命が損なわれるが、アクセサリパターンの一部のみを覆う構造とすることにより、ダイシングブレードに対する保護膜の影響もないとされている。
【0020】
さらに、近年の微細化、高集積化の進行に伴って、配線材料として比較的抵抗の小さい銅配線が用いられたり、層間絶縁膜として比誘電率の低い、いわゆるLow−k材料が用いられたりするケースが多くなってきている。ところが、Low−k材料などの低誘電率膜は、機械強度が弱く、ダイシングの際にチッピングや膜剥離を起こす場合が多くなり、歩留まりの低下や品質の低下の原因になっている。
【0021】
この課題に対して、特許文献3では、平面視したときにシールリングの外側に形成された凹み部を備えることにより、シールリングにまで剥離が進行することを防止する技術が開示されている。この方法によれば、ダイシングの際に発生したシリコン基板の欠けが、回路形成領域に向かって進行する場合に、凹み部の存在によりその部分に応力が集中し、剥離が横方向に進行することを抑制するというものである。
【0022】
ところで、近年、携帯機器への適用のために、半導体装置の薄型化が進んでおり、これに伴って、チップの薄型化への要求が強くなっている。例えば、チップの厚みを100μm以下にする場合も多くなってきた。
【0023】
しかしながら、従来の製造方法、つまり、1枚のウェーハ上に複数のチップ領域を形成した後に裏面研削及びダイシングを行なうという製造方法の場合、裏面研削加工後のウェーハに反りが発生し、装置内の搬送過程で割れやクラックが発生することがある。また、研削済みウェーハの取り扱いにおいて、ハンドリングミスによるウェーハ割れが発生することもあった。更に、100μmを下回るような厚みにまで研削加工した後にダイシングしようとすると、ダイシング時の衝撃によりチップにクラックが入ることがあった。これらのことは、いずれも製造の歩留まりの低下、品質の低下の原因となっていた。
【0024】
これに対し、特許文献4では、先に溝入れ工程を行なって、ウェーハの表面側にスクライブラインに沿って溝を設けておき、その後、裏面研削工程を実施し、ウェーハの裏面研削と同時に先に形成した溝を裏面に連通させることによって各チップに分離させる技術が開示されている。この方法によれば、ウェーハの状態で取り扱う場合には十分な厚みを有しているため割れが発生することがなく、溝入れ工程においてもウェーハの厚み方向の一部に表面側から切り込みを入れるので、クラックの発生を抑制できるとされている。
【0025】
この方法は、先ダイシング法又はDBG(Dicing Before Grinding)工法と呼ばれ、ウェーハが大口径の場合や、裏面研削での仕上げ厚みが薄い場合に特に有効な製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2001−274129号公報
【特許文献2】特開2005−183866号公報
【特許文献3】特開2006−140404号公報
【特許文献4】特開平5−335411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、以上に説明した技術には次のような問題がある。
特許文献1の技術の場合、スクライブライン上に切削水の浸入に対する堤防を設けることにより、切削水の浸入は抑制できる。しかし、その後に続くダイシングの際には、スクライブライン上に保護膜が存在するために、ダイシングブレードが目詰まりを起こす要因となる。この結果、チッピングが増加して品質低下を招いたり、歩留まりが低下したりする場合があった。
【0028】
また、チップの薄型化の要求に応えるために、特許文献4の技術を用いた場合、スクライブラインの交叉点(各チップ領域の角の近傍)に保護膜が形成されていたとしても、堤防としての機能を果たすことができない。つまり、裏面研磨の際にはスクライブラインに既に溝が形成されているため、該溝を通って切削水が浸入し、各チップ領域を汚染する場合がある。
【0029】
特許文献2の技術の場合には、表層のアクセサリパターンの剥離に対しては、その一部を保護膜が覆っていることにより一定の抑制効果があるが、先述したように、微細化、高集積化のために層間絶縁材料としてLow−k材料などの低誘電率膜が用いられるような場合には、層間絶縁膜の剥離が発生しやすくなっているため十分な抑制効果が発揮できなくなってきている。
【0030】
また、特許文献3の技術のように、低誘電率膜の剥離への対策として、予めシールリングの外側に凹み部を形成することにより、該凹み部に応力を集中させ、シールリングにまで達する剥離を抑制している場合においても、生産性に繋がる凹みの深さと、剥離抑制効果はトレードオフの関係にあり、車載用途などの安全性を最重要視する場合には、チップ領域の保護という観点からは十分とはいえない。さらに、万一該凹み部でチッピングや剥離が抑制できず、シールリングにまで伝播してしまった場合には、表面保護膜(パッシベーション膜)はシールリング上でチップ領域内に繋がっているため、剥離はチップ内部にまで進展してしまう可能性があり、信頼性に問題を生じる場合があった。
【0031】
これらの点について、解決が課題となっている。
本発明の半導体装置及びその製造方法は、以上の課題を解決するために、ウェーハの裏面研削やダイシングの際に生じる、水分の浸入による汚れ、あるいは割れ、クラック、チッピング、層間剥離等の物理的損傷を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置は、チップ領域と、前記チップ領域に形成される積層絶縁膜と、前記積層絶縁膜上に形成される電極パッドと、前記積層絶縁膜全層を貫通して互いに接続される配線及びビアから成り前記電極パッドと前記チップ領域の外周との間に前記チップ領域の外周全周と平行に閉環状に形成されるシールリングと、前記シールリング上に前記シールリングに接続して形成されるキャップ層と、少なくとも前記電極パッド及び前記キャップ層を露出して形成されるパッシベーション膜と、少なくとも前記電極パッド上及び前記キャップ層の一部上を開口して前記チップ領域上全面に形成される保護膜とを有することを特徴とする。
【0033】
また、前記パッシベーション膜の前記キャップ層より前記チップ領域の外周側に前記チップ領域の外周全周と平行に閉環状に形成される第1の溝を更に有し、前記保護膜が前記第1の溝の中にも形成されることが好ましい。
【0034】
また、前記パッシベーション膜の前記キャップ層より前記チップ領域の外周側に前記チップ領域の外周と平行に互いに間隔を空けて形成される複数の開口部を更に有し、前記保護膜が前記開口部の中にも形成されることが好ましい。
【0035】
また、前記シールリングの平面形状が、前記チップ領域の4つのコーナー部それぞれに1辺が形成される八角形であることが好ましい。
また、前記パッシベーション膜の前記キャップ層より前記チップ領域の外周側に前記チップ領域の外周全周と平行に閉環状に形成される第1の溝と、前記チップ領域の4つのコーナー部で前記シールリングと平行で両端が前記第1の溝と接続される第2の溝とを更に有し、前記保護膜が前記第1の溝及び前記第2の溝の中にも形成されると共に、前記第1の溝と前記第2の溝とで形成される三角形を覆うことが好ましい。
【0036】
また、前記パッシベーション膜の前記キャップ層より前記チップ領域の外周側に前記チップ領域の外周全周と平行に互いに間隔を空けて形成される複数の第1の開口部と、前記チップ領域の4つのコーナー部で前記シールリングと平行でその集合体の両端が前記第1の開口部と接続されて互いに間隔を空けて形成される複数の第2の開口部とを更に有し、前記保護膜が前記第1の開口部及び前記第2の開口部の中にも形成されると共に、前記第1の開口部と前記第2の開口部とで形成される三角形を覆うことが好ましい。
【0037】
さらに、本発明の半導体装置の製造方法は、ウェーハに形成された複数のチップ領域をスクライブ領域で個辺化する半導体装置の製造方法であって、前記チップ領域を形成する際に、基板に素子を形成するのと同時に前記チップ領域の周縁部に導電層を形成する導電層形成工程と、前記基板上に層間絶縁膜を形成すると共に、前記層間絶縁膜中に前記素子と電気的に接続される配線層及びビアを含む配線構造を形成し、同時に前記層間絶縁膜中に前記導電層に電気的に接続されるシール配線及びシールビアを含み且つ前記配線構造及び前記素子を連続して取り囲むシールリングを前記チップ領域の外周全周と平行に形成するシールリング形成工程と、前記層間絶縁膜上に、前記配線構造の少なくとも一部の上方に電極パッド用開口部を備え、前記シールリングの少なくとも一部の上方に前記チップ領域の外周全周と平行に形成される閉環状のキャップ層用開口部を備える第1のパッシベーション膜を形成する第1のパッシベーション膜形成工程と、前記電極パッド用開口部に前記配線構造と接続される電極パッドを形成するのと同時に前記キャップ層用開口部に閉環状のキャップ層を形成するキャップ層形成工程と、前記第1のパッシベーション膜上に、前記電極パッドの少なくとも一部及び前記キャップ層の少なくとも一部を露出させる第2のパッシベーション膜を形成する第2のパッシベーション膜形成工程と、前記チップ領域内の前記第2のパッシベーション膜上に少なくとも前記電極パッドとその近傍及び前記キャップ層上方を露出する保護膜を形成する保護膜形成工程とを有し、前記保護膜が前記キャップ層上に前記チップ領域の外周全周と平行に形成される閉環状の開口部を備えることを特徴とする。
【0038】
また、前記第1のパッシベーション膜形成工程において、更に、前記シールリングよりも前記スクライブ領域側の前記第1のパッシベーション膜に、閉環状の第1の溝を前記チップ領域の外周全周と平行に形成し、前記第2のパッシベーション膜形成工程において、更に、前記閉環状の溝の上部に閉環状の第2の溝を前記チップ領域の外周全周と平行に形成し、前記保護膜形成工程において、前記第1の溝及び前記第2の溝の中にも前記保護膜を形成することが好ましい。
【0039】
また、前記第1のパッシベーション膜形成工程において、更に、前記シールリングよりも前記スクライブ領域側の前記第1のパッシベーション膜に、互いに間隔を空けて形成される複数の第1の開口部を前記チップ領域の外周全周と平行に形成し、前記第2のパッシベーション膜形成工程において、前記第1の開口部の上部に、複数の第2の開口部を前記チップ領域の外周全周と平行に形成し、前記保護膜形成工程において、前記第1の開口部及び前記第2の開口部の中にも前記保護膜を形成することが好ましい。
【0040】
また、前記保護膜形成工程の後に、前記基板の前記保護膜が形成された主面側に保護シートを貼り付け、前記基板の前記主面に対する裏面から前記基板を研削して所定の厚さとする研削工程と、前記研削工程の後に、前記スクライブ領域内をダイシングすることにより個々の前記半導体装置に個辺化するダイシング工程とを更に有することが好ましい。
【0041】
また、前記保護膜形成工程の後に、前記保護膜が形成された主面側から前記基板の前記スクライブ領域内に所定の深さの第3の溝を形成する溝入れ工程と、前記溝入れ工程の後に、前記基板の主面側に保護シートを貼り付け、前記基板の前記主面に対する裏面から前記第3の溝に達するまで研削することにより個々の半導体装置に個辺化する個辺化工程とを更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0042】
以上により、ウェーハの裏面研削やダイシングの際に生じる、水分の浸入による汚れ、あるいは割れ、クラック、チッピング、層間剥離等の物理的損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図
【図2】第1の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図
【図3】第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図4】第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図5】第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図6】第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図7】第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図8】第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図9】第2の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図
【図10】第2の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図
【図11】第2の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図12】第3の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図
【図13】第3の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図
【図14】第3の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図15】第4の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図
【図16】第4の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図
【図17】第4の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図18】第4の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図19】第4の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図20】第5の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図
【図21】第5の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図
【図22】第5の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図23】第5の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図
【図24】従来のシールリングを有する半導体装置の構成を説明する要部拡大図
【図25】従来のシールリングを有する半導体装置の構成を説明する断面図
【図26】従来の半導体装置が複数形成されるウェーハの構成を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、異なる実施形態においても、共通の構成については図面中に同じ符号を用いることによって詳しい説明を省略することがある。
【0045】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について以下に図1〜図8を用いて説明する。図1は第1の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図である。図2は第1の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図であり、図2(a)、(b)は、それぞれ図1のA−A’線、B−B’線における断面構造を示す図である。ここでは、ウェーハに、複数のチップ領域12と、各チップ領域12をダイシングにより分離するためのスクライブ領域13とが形成された様子を示している。
【0046】
半導体装置は、基板11を用いて形成されている。基板11上には、複数の層間絶縁膜15、16、17、18、19及び20が下から順に積層された構造の積層絶縁膜70が形成されている。
【0047】
チップ領域12において、基板11上部に素子を構成する活性層30(素子については図示省略)が形成されると共に、積層絶縁膜70中に、活性層30と接続された配線構造71が形成されている。配線構造71は、層間絶縁膜15中に形成され且つ活性層30に接続するビア31と、層間絶縁膜16中に形成され且つビア31に接続する配線32と、層間絶縁膜17中に形成され且つ配線32に接続するビア33と、層間絶縁膜18中に形成され且つビア33に接続する配線34と、層間絶縁膜19中に形成され且つ配線34に接続するビア35と、層間絶縁膜20中に形成され且つビア35に接続する配線36とを含む。
【0048】
また、チップ領域12の周縁部において、基板11上部に導電層40が形成されると共に、積層絶縁膜70を貫通するシールリング14が形成されている。導電層40及びシールリング14は、活性層30、配線構造71等を連続的に取り囲むように、チップ領域12の周縁部に沿って形成されている。シールリング14は、配線形成用マスクを利用して形成されるシール配線と、ビア形成用マスクを利用して形成されるシールビアとを交互に積み重ねた構造を有する。具体的には、層間絶縁膜15中に形成され且つ導電層40に接続されたシールビア41と、層間絶縁膜16中に形成され且つシールビア41に接続されたシール配線42と、層間絶縁膜17中に形成され且つシール配線42に接続されたシールビア43と、層間絶縁膜18中に形成され且つシールビア43に接続されたシール配線44と、層間絶縁膜19中に形成され且つシール配線44に接続されたシールビア45と、層間絶縁膜20中に形成され且つシールビア45に接続されたシール配線46とを含む。
【0049】
更に、配線構造71及びシールリング14が設けられた積層絶縁膜70上を覆うように、パッシベーション膜21が設けられている。パッシベーション膜21は、配線構造71(配線36)上とシールリング14(シール配線46)上とに開口部を有する。該開口部には、配線36と接続するパッド電極37およびシール配線46と接続するキャップ層47が形成されている。
【0050】
また、パッシベーション膜21上には、パッド電極37の上部と、キャップ層47の上部とを除いて、パッシベーション膜22が形成されている。さらに、パッシベーション膜22上に、チップ領域12の保護のために、パッド電極37及びその近傍と、シールリング14の上部とに開口部を有するように有機保護膜23が形成されており、チップ領域12内でシールリング14よりもスクライブ領域13側にチップ領域12の内側を取り囲むように閉環状の保護膜23’も形成されている。
【0051】
つまり、有機保護膜は、素子形成領域を保護する部分である保護膜23と、チップ領域12の内側を取り囲むように、シールリング14よりもスクライブ領域13側にも閉環状となるように形成された保護膜23’とで構成されており、パッシベーション膜22及び有機保護膜23、23’はキャップ層47上の一部が露出するように形成される閉環状開口部48によって、チップ領域12側に形成される保護膜23と、スクライブ領域13側に形成される保護膜23’とが不連続となって独立している。
【0052】
図1及び図2(a)、(b)に示すように、チップ領域12のパッド電極より外側を含んで保護膜23を形成すると共に、開口部48によって保護膜23と接触しない保護膜23’をチップ領域12の外周部の全周にわたりにスクライブ領域13に沿って形成することにより、裏面研削の際に、チップ領域12の表面の切削水による汚染を避けることができる。つまり、裏面研削の際に保護テープを貼り付けると、貼り付けローラーはパッシベーション膜22の閉環状開口部よりもスクライブ領域12側に形成された有機保護膜23’の環状部分を押圧することになり、チップ領域12の内側を取り囲む有機保護膜23’と、保護テープとを密着させることができる。このため、保護テープとスクライブ領域13との間に隙間が存在し、その隙間から裏面研削の切削水が浸入したとしても、チップ領域12内にまで浸入することは抑制される。よって、チップ領域12の汚染は抑制されている。
【0053】
また、閉環状開口部48を有するため、ダイシングの際に、チッピングや膜剥離が発生したとしても、パッシベーション膜22の閉環状開口部の存在および有機保護膜23、23’のシールリング上方の開口部の存在によって、シールリング14より内側の素子形成領域への膜剥離やダメージの伝播を防止できる。
【0054】
次に、図1及び図2(a)、(b)に示した構造を形成するための製造方法と、ダイシングにより個々のチップ領域12をそれぞれ半導体装置として個片化する方法について図3〜図8を用いて説明する。
【0055】
図3(a)〜(e)、図4(a)〜(d)、図5(a)〜(d)、図6(a)〜(b)、図7(a)〜(b)及び図8(a)〜(c)は第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図であり、図1におけるA−A’線による断面の構造を形成する工程を順に示す図である。特に、図8(a)〜(c)は、裏面研削とダイシングについて説明する図である。
【0056】
まず、図3(a)に示すように、ウェーハ(基板11)のチップ領域12に、トランジスタ等の素子を構成する活性層30を形成すると共に、活性層30よりも周縁部側に、周縁部全周にわたって連続的に構成されたチップ領域12の内部を囲む環状の導電層40を形成する。
【0057】
次に、図3(b)に示すように、基板11上に層間絶縁膜15を堆積する。更に、該層間絶縁膜15に対し、ビア31を形成するためのビアホール15aを活性層30上に形成すると共に、シールビア41を形成するための溝状凹部15bを導電層40上に形成する。このためには、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いればよい。
【0058】
ここで、シールビア41は、シールリング14を構成する部材であって、溝状凹部15bに導電材料を埋め込むことによって形成される。つまり、シールビア41は、ビアと同程度の幅を有するライン状構造を有している。また、シールリング14がチップ領域12の素子等を連続して取り囲む構造であることから、シールビア41も、連続した環状となっている。
【0059】
尚、ここでは、層間絶縁膜15にビアホール15aを形成する際に、溝状凹部15bを同時に形成する例を説明した。しかし、これには限らず、ビアホール15aと溝状凹部15bとを別々に形成しても良い。
【0060】
次に、図3(c)に示す工程を行なう。まず、層間絶縁膜15に設けられたビアホール15a及び溝状凹部15bに対し、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition )法を用いてWからなる導電膜を埋め込む。次に、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い、ビアホール15a及び溝状凹部15bからはみ出した余分な導電膜を除去する。これにより、活性層30に接続するビア31と、導電層40に接続するシールビア41とを形成する。
【0061】
次に、図3(d)に示す工程を行なう。まず、層間絶縁膜15上に層間絶縁膜16を堆積する。更に、該層間絶縁膜16に対し、配線32を形成するための配線溝16aをビア31上に形成すると共に、シール配線42を形成するためのシール配線溝16bをシールビア41上に形成する。このためには、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いればよい。
【0062】
次に、図3(e)に示す工程を行なう。まず、層間絶縁膜16に設けられた配線溝16a及びシール配線溝16bに対し、例えば、電気めっき法によってCuからなる導電膜を埋め込む。次に、例えばCMP法を用い、配線溝16a及びシール配線溝16bからはみ出した余分な導電膜を除去する。これにより、ビア31に接続する配線32と、シールビア41に接続するシール配線42とを形成する。
【0063】
次に、図4(a)に示す工程を行なう。まず、層間絶縁膜16上に層間絶縁膜17を形成する。続いて、該層間絶縁膜17に対し、ビア33を形成するためのビアホール17aを配線32上に形成すると共に、シールビア43を形成するための溝状凹部17bをシール配線42上に形成する。いずれも、図3(b)の工程と同様の方法及び材料を用いることができる。
【0064】
次に、図4(b)に示す工程を行なう。つまり、ビアホール17aを埋め込んで配線32に接続するビア33と、溝状凹部17bを埋め込んでシール配線42に接続するシールビア43とを形成する。いずれも、図3(c)の工程と同様の方法及び材料を用いることができる。
【0065】
次に、図4(c)に示す工程を行なう。まず、層間絶縁膜17上に層間絶縁膜18を形成する。続いて、層間絶縁膜18に対し、配線34を形成するための配線溝18aをビア33上に形成すると共に、シール配線44を形成するためのシール配線溝18bをシールビア43上に形成する。いずれも、図3(d)の工程と同様の方法及び材料を用いることができる。
【0066】
次に、図4(d)に示す工程を行なう。つまり、配線溝18aを埋め込んでビア33に接続する配線34と、シール配線溝18bを埋め込んでシールビア43に接続するシール配線44と形成する。いずれも、図3(e)の工程と同様の方法及び材料を用いることができる。
【0067】
次に、図5(a)〜(d)の工程を行なう。これらは、層間絶縁膜18上に積層された層間絶縁膜19とこれに埋め込まれたビア35及びシールビア45を形成し、更に、層間絶縁膜19上に積層された層間絶縁膜20とこれに埋め込まれた配線36及びシール配線46を形成する工程である。
【0068】
それぞれ、図4(a)〜(d)の工程と同様に、ビアホール19a及び溝状凹部19bを有する層間絶縁膜19と、配線溝20a及びシール配線溝20bを有する層間絶縁膜20とを形成し、導電膜を埋め込むことにより形成すればよい。
【0069】
これにより、配線32、34及び36とビア31、33及び35とからなる配線構造71が形成されると共に、シール配線42、44及び46とシールビア41、43及び45とからなるシールリング14が形成される。
【0070】
続いて、図6(a)に示す工程を行なう。まず、最上層の配線層である配線36及び最上層シール配線46及び層間絶縁膜20上に、配線36およびシール配線46の保護膜となるパッシベーション膜21を堆積する。その後、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、配線36上およびシール配線46上のパッシベーション膜21を部分的に開口し、開口部21a及び21bを形成する。
【0071】
次に、図6(b)に示すように、配線36に接続するように、パッシベーション膜21の開口部21aにパッド電極37を形成するのと同時に、シール配線46に接続するように、パッシベーション膜21の開口部21bにキャップ層47を形成する。このためには、まず、開口部21aおよび21b上を含むパッシベーション膜21上の全面に亘って、例えば、スパッタ法によりAl膜を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用い、該Al膜を配線36およびシール配線46上にパターニングしてパッド電極37およびキャップ層47とする。
【0072】
次に、図7(a)に示す工程を行なう。まず、パッド電極37上及びキャップ層47上を含むパッシベーション膜21上に、他のパッシベーション膜22を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、パッド電極37上及びキャップ層47上を開口する。これにより、配線構造71上にパッド電極37によりボンディングパッドが形成され、シーリング14上のキャップ層47上には閉環状の開口部48aが形成される。
【0073】
次に、図7(b)に示すように、チップ領域12上に、有機保護膜を形成する。これには、まず、パッド電極37上及びシールリング14上方を含む基板11上の全面に亘って、例えば、ポリイミドからなる液状樹脂をスピンコート法により塗布する。その後、リソグラフィ法によって露光及び現像し、チップ領域12のパッド電極37及びその近傍と、シールリング14の上部とに開口部を有する有機保護膜23及び、チップ領域12内でシールリング14よりもスクライブ領域13側にチップ領域12の内側を取り囲むように有機保護膜23’を形成する(図1を参照)。このとき、キャップ層47上方には有機保護膜23と23’とを隔てる閉環状の開口部48bが形成されているので、パッシベーション膜の開口部48aとあわせて閉環状の開口部48によってキャップ層47の一部が露出した構造となっている。
【0074】
続いて、裏面研削及びダイシングを行なう。このためには、まず、図8(a)に示すように、基板11の主面側(活性層30、有機保護膜23、23’等の形成されている側)の全面に亘って、保護テープ61を貼り付ける。これは、裏面研削の際に表面を保護するためのものであり、貼り付けローラーを用いて押し付けることによりウェーハ表面に保護テープ61を密着させる。このとき、シールリング14よりもスクライブ領域12側にも有機保護膜23’が閉環状に存在することによりチップ領域12の周縁部にある有機保護膜23’と保護テープ61とが密着する。従って、有機保護膜23’による段差が原因となって保護テープ61とウェーハ表面との間に部分的に隙間が生じた場合にも、スクライブ領域13と配線構造71等が形成されるチップ領域12とは、保護テープ61及び有機保護膜23’の密着部分によって完全に分離されている。
【0075】
次に、図8(b)に示すように、基板11が所定の厚さになるように、基板11を裏面側から研削する。この際、ウェーハの外周部のスクライブ領域13から切削水が侵入することがある。しかし、図8(a)のように有機保護膜23’の存在によってスクライブ領域13とチップ領域12とは有機保護膜23’と保護テープ61の密着部によって分離されているので、切削水による汚染がチップ領域12に及ぶことは無い。その後、保護テープ61を剥がす。
【0076】
次に、図8(c)に示すように、スクライブ領域13に対してダイシングを実施し、チップ領域12を個々のチップに分離すると、半導体装置が得られる。このダイシングの際に、チッピングや膜剥離が発生したとしてもパッシベーション膜22及び有機保護膜23、23’のシールリング14上方の閉環状開口部48の存在によって、シールリング14より内側の素子形成領域への膜剥離やチッピング、クラック等のダメージの伝播を防止できる。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態の半導体装置の製造方法によると、各チップ領域12の内側の部分を連続して取り囲むように設けられた有機保護膜23’と、保護テープ61とが密着した状態において裏面研削を行なう。このため、保護テープ61とスクライブ領域13との間に隙間が存在し、その隙間に裏面研削時の切削水が浸入したとしても、チップ領域12内にまで浸入することはない。よって、有機保護膜23、23’が形成されていることによってチップ領域12とスクライブ領域13との段差が存在するが、これに起因してチップ領域12が汚染されたり、水分の進入によって内部回路に破壊等の影響が出ることはない。
【0078】
更に、シールリング14上方に閉環状開口部48を形成しているので、ダイシングの際にチッピングや膜剥離が発生したとしても、素子形成領域への膜剥離やダメージの伝播が防止できる。
【0079】
尚、以上の工程では配線、ビア、シール配線、シールビアの形成のために、平坦化を行なう方法(いわゆるダマシン法)を用いたが、これには限らず、平坦化を伴わない積層方法を用いても良い。
【0080】
また、3層積層構造の配線構造及びシーリングを例に説明したが、積層数は任意である。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図9〜図11を用いて説明する。
【0081】
図9は第2の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図、本実施形態の例示的半導体装置について示す平面図である。図10は第2の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図であり、図10(a)、(b)は、それぞれ図9のA−A’線及びB−B’線における断面構造を示す図である。第1の実施形態の場合と同様に、ウェーハに、複数のチップ領域12と、各チップ領域12をダイシングにより分離するためのスクライブ領域13とが形成された様子を示している。
【0082】
以下には、図9及び図10(a)、(b)に示す半導体装置の構造について、図1及び図2(a)、(b)に示す第1の実施形態における構造との相違点を主に説明する。尚、同じ構成要素については、同じ符号を付している。
【0083】
本実施形態の場合、図9及び図10(a)、(b)に示す通り、パッド電極37上の一部と、キャップ層47上及びキャップ層47よりもスクライブ領域13側の部分である開口部49とを除いたチップ領域上、およびスクライブ領域13上にパッシベーション膜22が形成されている。また、有機保護膜は、パッド電極37とその近傍からシールリング14の上方に開口部を有するようにパッシベーション膜22上に形成された保護膜23、及び、キャップ層47よりもスクライブ領域13側のパッシベーション膜21上に閉環状となるように形成された保護膜23’で構成されている。つまり、第1の実施形態に対して、キャップ層47からスクライブ領域13に至る領域にパッシベーション膜22を設けず、パッド電極37からキャップ層47の間に保護層23を形成しない構成である。
【0084】
このような有機保護膜23、23’が形成されている場合にも、第1の実施形態の場合と同様に、裏面研削時に切削水によってチップ領域12が汚染されるのを防ぐことができる。更に、パッシベーション膜22はキャップ層47近傍の開口部49でスクライブ領域13と不連続となっており、有機保護膜23、23’もシールリング14上で分離されているので、ダイシングの際にチッピングや膜剥離が発生したとしても、ダメージや膜剥離等がシールリング14を超えて素子形成領域にまで達することはない。
【0085】
次に、このような構造を形成するための製造方法について図11を用いて説明する。図11(a)及び(b)は第2の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図であり、図9におけるA−A’線における断面の構造を形成する工程を示す図である。
【0086】
まず、第1の実施形態において説明した図3(a)〜図6(b)までの工程に従って、図6(b)の構造を形成する。つまり、基板11を用い、活性層30及び導電層40と、配線層15〜20からなる積層絶縁膜70と、これに埋め込まれた配線構造71及びシールリング14と、パッシベーション膜21と、パッド電極37及びキャップ層47とを形成する。
【0087】
次に、図11(a)の工程を行なう。まず、パッド電極37上及びキャップ層47上を含むパッシベーション膜21上に、他のパッシベーション膜22を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、パッド電極37上の一部と、キャップ層47上及びキャップ層47よりもスクライブ領域13側の部分である開口部49を開口する。これにより、配線構造71上にパッド電極37によりボンディングパッドが形成され、シーリング14上のキャップ層47の一部が開口部49によって露出した状態となる。
【0088】
次に、図11(b)に示すように、パッド電極37及びキャップ層47上を含む基板11上の全面に亘って、例えば、ポリイミドからなる液状樹脂をスピンコート法により塗布する。その後、リソグラフィ法によって露光及び現像を行ない、チップ領域12におけるパッド電極37の近傍からシールリング14上部に開口部を有する有機保護膜23を形成し、同時にキャップ層47よりもスクライブ領域13側の、パッシベーション膜21上にも、チップ領域12の内側を取り囲むように閉環状の有機保護膜23’を形成する。
【0089】
この後は、第1の実施形態において図8(a)〜(c)に説明したのと同様に、保護テープを貼り付けて裏面研削した後、ダイシングを実施して個々のチップに分離する。
以上に説明した通り、本実施形態においても、各チップ領域12の周縁部にその内側の部分を連続して取り囲むように有機保護膜23’を設けている。これにより、裏面研削時のチップ領域12の汚染を防ぐことができる。
【0090】
更に、開口部49によってキャップ層47が露出した構造となっており、有機保護膜23’及びパッシベーション膜22がキャップ層47上で不連続となっているので、ダイシングの際のダメージや膜剥離が素子形成領域内に伝播するのを防ぐことができる。
【0091】
本実施形態では、配線、ビア、シール配線、シールビアの形成のために、平坦化を行なう方法(いわゆるダマシン法)を用いたが、これには限らず、平坦化を伴わない積層方法を用いても良い。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図12〜図14を用いて説明する。図12は第3の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図である。図13は第3の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面であり、図13(a)、(b)は、それぞれ図12のA−A’線及びB−B’線における断面構造を示す図である。第1の実施形態の場合と同様に、ウェーハに、複数のチップ領域12と、各チップ領域12をダイシングにより分離するためのスクライブ領域13とが形成された様子を示している。
【0093】
以下には、図12及び図13(a)、(b)に示す半導体装置の構造について、図1及び図2(a)、(b)に示す第1の実施形態における構造との相違点を主に説明する。尚、同じ構成要素については、同じ符号を付している。
【0094】
本実施形態の場合、図13に示す通り、パッシベーション膜22は、パッド電極37上に開口部を有し、キャップ層47上にも開口部48aを有している。さらに、パッシベーション膜21及び22には、チップ領域12における、キャップ層47よりもスクライブ領域13側の領域にパッシベーション膜21および22を貫通する溝50がチップ領域の内側を取り囲むように閉環状に形成されている。なお、図12の平面図では、実際は溝50を視認することができないが、説明のため、図面上溝50を表現している。
【0095】
また、チップ領域12において、パッド電極37とその近傍からシールリング14上方に開口部を有するように有機保護膜23が形成されており、チップ領域12における、キャップ層47よりも外側の領域にも有機保護膜23’が形成されている。このとき、パッシベーション膜21及び22を貫通する溝50は有機保護膜23’によって埋め込まれた状態となっている。
【0096】
このような有機保護膜23、23’が形成されている場合も、第1の実施形態の場合と同様に、キャップ層47よりも外側の領域に有機保護膜23’が形成されているため、裏面研削時に切削水によってチップ領域12が汚染されるのを防ぐことができる。また、パッシベーション膜22がキャップ層47上に閉環状開口部48aを有するため、ダイシングの際にチッピングや膜剥離が発生したとしてもそのダメージや膜の剥離等が素子形成領域12にまで達することはない。更に、キャップ層47よりもスクライブ領域13側の領域に形成された有機保護膜23’はパッシベーション膜21及び22に形成された閉環状の溝50を覆っているため、層間絶縁膜として、剥離が発生し易いLow−k材料等の低誘電率膜を用いた場合であっても、そのアンカー効果によって有機保護膜23’そのものの剥離が発生しにくい構造となっており、より信頼性を向上させることができる。
【0097】
次に、このような構造を形成するための製造方法について説明する。図14(a)〜(d)は第3の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図であり、図12におけるA−A’線による断面の構造を形成する工程を示す図である。
【0098】
まず、第1の実施形態において説明した図3(a)〜図5(d)までの工程に従って、図5(d)の構造を形成する。つまり、基板11を用い、活性層30及び導電層40と、配線層15〜20からなる積層絶縁膜70と、これに埋め込まれた配線構造71及びシールリング14とを形成する。
【0099】
次に、図14(a)の工程を行なう。まず、最上層の配線層である配線36上及びシール配線46上を含む層間絶縁膜20上に、配線36の保護膜となるパッシベーション膜21を堆積する。その後、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、パッシベーション膜21に対し、配線36上及びシール配線46上をそれぞれ部分的に開口して、開口部21a及び開口部21bを形成する。また、それと同時に、チップ領域12内における、シールリング14よりもスクライブ領域13側に、チップ領域12の内側を取り囲み、層間絶縁膜20に達する閉環状溝50aを形成する。
【0100】
次に、図14(b)に示すように、パッシベーション膜21の開口部21aに配線36と接続するパッド電極37を形成すると共に、開口部21bにシール配線46と接続するキャップ層47を形成する。このためには、まず、開口部21a上及び開口部21b上を含むパッシベーション膜21上の全面に亘って、例えば、スパッタ法によりAl膜を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用い、該Al膜を配線36上及びシール配線46上にパターニングし、それぞれパッド電極37及びキャップ層47とする。
【0101】
次に、図14(c)に示す工程を行なう。まず、チップ領域12のパッド電極37上及びキャップ層47上を含むパッシベーション膜21上に、他のパッシベーション膜22を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用い、パッシベーション膜22に対し、パッド電極37上及びキャップ層47上にそれぞれ開口部を形成するのと同時に、パッシベーション膜21に閉環状に形成した閉環状溝50a上に閉環状溝50bを形成する。これにより、配線構造71上にパッド電極37によりボンディングパッドが形成され、キャップ層上に開口部48aが形成され、チップ領域12の内側を取り囲むパッシベーション膜21及び22を貫通する閉環状溝50が形成される。
【0102】
次に、図14(d)の工程を行なう。まず、パッド電極37上及びキャップ層47上及び閉環状溝50を含む基板11上の全面に亘って、例えば、ポリイミドからなる液状樹脂をスピンコート法により塗布する。その後、リソグラフィ法によって露光及び現像を行ない、チップ領域12におけるパッド電極37の近傍からシールリング上部に開口部を有する有機保護膜23を形成すると共に、チップ領域12内でシールリング14よりもスクライブ領域13側に、チップ領域12の内側を取り囲み、閉環状溝50を覆う有機保護膜23’を形成する。
【0103】
この後は、第1の実施形態において図8(a)〜(c)に説明したのと同様に、保護テープを貼り付けて裏面研削した後、ダイシングを実施して個々のチップに分離する。
以上に説明した通り、本実施形態においても、各チップ領域12の周縁部にその内側の部分を連続して取り囲むようにチップ領域12の外周全周に沿って有機保護膜23’を設けている。これにより、裏面研削時のチップ領域12の汚染を防ぐことができる。
【0104】
また、パッシベーション膜22がキャップ層47上に閉環状開口部48aを有するため、ダイシングの際にチッピングや膜剥離が発生したとしてもそのダメージや膜の剥離等が素子形成領域にまで達することはない。
【0105】
更に、キャップ層47よりもスクライブ領域13側の領域に形成された有機保護膜23’はパッシベーション膜21及び22に形成された閉環状溝50を覆っているため、そのアンカー効果によって有機保護膜23’そのものの剥離の発生を抑制することができるので、本実施形態で説明したような、裏面研削の後にダイシングを実施する場合だけでなく、DBG工法を用いて、スクライブ領域13に先に溝入れを行った後に裏面研削を実施する場合にも、ダイシング時に有機保護膜23’が剥離してしまうのを抑制できるため、その後に続く裏面研削の場合に切削水の浸入によるチップ領域12の汚染を抑制することができ、製造歩留まりを向上することができる。
本実施形態では、配線、ビア、シール配線、シールビアの形成のために、平坦化を行なう方法(いわゆるダマシン法)を用いたが、これには限らず、平坦化を伴わない積層方法を用いても良い。
【0106】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図15は第4の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図である。図16(a)、(b)は第4の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図であり、それぞれ図15のA−A’線及びB−B’線における断面構造を示す図である。第1〜第3の実施形態の場合と同様に、ウェーハに、複数のチップ領域12と、各チップ領域12をダイシングにより分離するためのスクライブ領域13とが形成された様子を示している。
【0107】
以下には、図15及び図16に示す本実施形態の構造について、図12及び図13に示す第3の実施形態における構造との相違点を主に説明する。尚、同じ構成要素については、同じ符号を付している。
【0108】
図12及び図13(a)、(b)に示した第3の実施形態では、シールリング14よりもスクライブ領域13側にチップ領域12の内側を取り囲むようにパッシベーション膜21、22に閉環状の溝50が形成されているが、本実施形態の場合には、図15及び図16(a)、(b)に示すように、閉環状ではなく、その集合体によって前記チップ領域12の内側を取り囲む略方形状となり、パッシベーション膜21,22を貫通し、互いに接続されない複数の開口部51が形成されている。ここで、実際は図15に示す平面図では開口部51は視認できないが、説明のため、図面上に開口部51を表現している。
【0109】
また、チップ領域12において、パッド電極37とその近傍、及びシールリング14上方に開口部を有するように有機保護膜23が形成されており、チップ領域12における、キャップ層47よりも外側の領域にも有機保護膜23’が形成されている。このとき、パッシベーション膜21及び22を貫通する複数の開口部51は有機保護膜23’によって埋め込まれた状態となっている。ここで、有機保護膜23はパッド電極37とシールリング14との間の領域にも形成されており、有機保護膜23及び23’がキャップ層47上に閉環状開口部48を形成した構造となっている点で、第3の実施形態と異なっている。
【0110】
このように、有機保護膜23’が形成された構造を有する場合にも、裏面研削時に切削水によってチップ領域12が汚染されるのを防ぐことができ、閉環状開口部48の存在によってダイシングの際のダメージや膜剥離等の素子形成領域内への伝播を抑制することができる。また、パッシベーション膜21,22を貫通する複数の開口部51を有機保護膜23’が覆うことにより、有機保護膜23’の剥離も抑制できる。また、溝50が不連続となっていることにより、有機保護膜23’が万一剥離した場合においても、チップ外周に沿った剥離の進行を抑制することができる。
【0111】
次に、このような構造を形成するための製造方法について説明する。図17(a)〜(d)、図18(a)〜(d)及び図19(a)〜(c)は第4の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図であり、それぞれ図15におけるA−A’線、B−B’線による断面構造を形成する工程を示す図である。特に、図19(a)〜(c)は、裏面研削とダイシングについて説明する図である。
【0112】
まず、第1の実施形態において説明した図3(a)〜図5(d)までの工程に従って、図5(d)の構造を形成する。つまり、基板11を用い、活性層30及び導電層40と、層間絶縁膜15〜20からなる積層絶縁膜70と、これに埋め込まれた配線構造71及びシールリング14とを形成する。
【0113】
次に、図17(a)及び図18(a)の工程を行なう。まず、最上層の配線層である配線36上及びシール配線46上を含む層間絶縁膜20上に、配線36の保護膜となるパッシベーション膜21を堆積する。その後、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、パッシベーション膜21に対し、配線36上及びシール配線46上をそれぞれ部分的に開口して、開口部21a及び開口部21bを形成する。それと同時に、チップ領域12内における、シールリング14よりもスクライブ領域13側に、その集合体によってチップ領域の内側を取り囲み、層間絶縁膜20に達する開口部51aを一定の間隔で形成する。図17(a)は開口部51aが形成された部分の断面を、図18(a)は開口していない部分の断面を表している。
【0114】
次に、図17(b)及び図18(b)に示すように、パッシベーション膜21の開口部21aに配線36と接続するパッド電極37を形成すると共に、開口部21bにシール配線46と接続するキャップ層47を形成する。このためには、まず、開口部21a上及び開口部21b上を含むパッシベーション膜21上の全面に亘って、例えば、スパッタ法によりAl膜を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用い、該Al膜を配線36上及びシール配線46上にパターニングし、それぞれパッド電極37及びキャップ層47とする。
【0115】
次に、図17(c)及び図18(c)に示す工程を行なう。まず、チップ領域12のパッド電極37上及びキャップ層47上を含むパッシベーション膜21上に、他のパッシベーション膜22を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用い、パッシベーション膜22に対し、パッド電極37上及びキャップ層47上にそれぞれ開口部を形成するのと同時に、パッシベーション膜21に形成した複数の開口部51a上に開口部51bを形成する。図17(c)は開口部51bが形成された部分の断面を、図18(c)は開口していない部分の断面を表している。これにより、配線構造71上にパッド電極37によりボンディングパッドが形成され、キャップ層47上に開口部48aが形成され、さらに、その集合体でチップ領域12の内側を取り囲む略方形状をなし、パッシベーション膜21及び22を貫通し、互いに接続されない複数の開口部51が形成される。
【0116】
次に、図17(d)及び図18(d)の工程を行なう。まず、パッド電極37上及びキャップ層47上及び複数の開口部51を含む基板11上の全面に亘って、例えば、ポリイミドからなる液状樹脂をスピンコート法により塗布する。その後、リソグラフィ法によって露光及び現像を行ない、チップ領域12におけるパッド電極37の近傍及びシールリング上部に開口部を有する有機保護膜23を形成すると共に、チップ領域12内でシールリング14よりもスクライブ領域13側に、チップ領域12の内側を取り囲み、その集合体で略方形状をなす複数の開口部51を覆う有機保護膜23’を形成する。
【0117】
以上のようにしてウェーハに形成された各チップ領域12について、図19(a)〜(c)に示すようにして、個々の半導体装置として分割する。これは、DBG(Dicing Before Grinding)工法(又は先ダイシング法)と呼ばれる方法である。図19(a)〜(c)は図15におけるA−A’線による断面構造を表している。
【0118】
まず、図19(a)に示すように、スクライブ領域13に沿って基板11の主面側から途中まで切り込みを入れ、溝62を形成する。
次に、図19(b)に示すように、基板11の主面側に保護テープ61を貼り付ける。
【0119】
次に、図19(c)に示すように、基板11に対して裏面側から溝62に達するまで研削を行なう。これにより、各チップ領域12は個々の半導体装置として個片化される。この後、保護テープ61を剥がして半導体装置を得る。
【0120】
以上に説明した通り、本実施形態においての半導体装置及びその製造方法の場合にも、各チップ領域12の周縁部にその内側の部分を連続して取り囲むように有機保護膜23’を設けている。また、有機保護膜23’は、パッシベーション膜21,22を貫通する複数の開口部51を埋め込んでいる。これにより、スクライブ領域13に沿って切り込みを入れる場合にも複数の開口部51のアンカー効果により有機保護膜23’の剥離が抑制され、その後に続く裏面研削時には有機保護膜23’が切削水の素子形成領域への浸入を確実に抑制するので、チップ領域12の汚染を防ぐことができる。尚、これは、裏面研削を行なった後にダイシングを行なう際にも適用できる。
【0121】
本実施形態では、配線、ビア、シール配線、シールビアの形成のために、平坦化を行なう方法(いわゆるダマシン法)を用いたが、これには限らず、平坦化を伴わない積層方法を用いても良い。
【0122】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図20は第5の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部平面図である。図21(a)、(b)は第5の実施形態における半導体装置の構成を例示する要部断面図であり、それぞれ図20のA−A’線及びB−B’線における断面構造を示す図である。第1〜第4の実施形態の場合と同様に、ウェーハに、複数のチップ領域12と、各チップ領域12をダイシングにより分離するためのスクライブ領域13とが形成された様子を示している。
【0123】
以下には、図20及び図21(a)、(b)に示す半導体装置の構造について、図12及び図13(a)、(b)に示す第3の実施形態における構造との相違点を主に説明する。尚、同じ構成要素については、同じ符号を付している。
【0124】
図20に示すように、本実施形態の場合、シールリング14は、平面形状が、第3の実施形態のような方形状ではなく、チップコーナーにおいて面取りされたような、八角形となっている。つまり、チップ領域12の4辺の中央部分についてはスクライブ領域13と平行なシーリング14が形成され、チップ領域12の4つのコーナー部分では、コーナー部分を形成する2辺に形成されたシーリング14の端部をつなぐシーリング14を形成することにより、八角形のシーリング14を形成する。また、第3の実施形態の場合には、パッシベーション膜21及び22を貫通する溝50が、チップ領域12におけるシールリング14よりもスクライブ領域13側に、チップ領域12の内側を取り囲むように方形の閉環状に形成されているが、本実施形態の場合には、パッシベーション膜21、22を貫通する溝52は、チップコーナー部において、シールリングに平行な領域52xと、スクライブ領域13に平行な領域52yとに分離しており、チップ領域12の内側を取り囲む閉環状を形成しているだけでなく、チップ領域12のコーナー部分において、溝52xと、溝52yとで、三角形の環状開口部を形成している。更に、第3の実施形態の場合には、有機保護膜23’はパッシベーション膜21、22を貫通する溝50を埋め込むように、等幅の方形閉環状となっているが、本実施形態の場合には、チップコーナー部ではスクライブ領域14に平行な溝52xとスクライブ領域13に平行な溝52yとの両方を埋め込むように略三角形状に形成されている。つまり、閉環状溝52の上部を含む、チップ領域12内のシールリング14よりもスクライブ領域13側のほぼ全域を覆った構造となっている。
【0125】
このような構成の場合も、有機保護膜23’をチップコーナー部で略三角形状に形成することにより、裏面研削時における保護テープの密着性をより高くすることができ、裏面研削時に切削水によってチップ領域12が汚染されるのを防ぐことができる。また、ダイシングの際にチッピングやカケが生じやすいチップコーナー部においても、キャップ層47上に開口部48を有し、閉環状溝52を有機保護膜23’が覆っているため、ダイシングの際のチッピングや膜剥離等によって素子形成領域にダメージが及ぶことはない。さらに、ダイシングのダメージを受けやすく、膜剥離が発生しやすいチップコーナー部においても、有機保護膜23’が、溝52x及び溝52yを覆っているため、コーナー剥離や捲れの抑制効果が高く、歩留まりが向上し、製品の信頼性も向上する。
【0126】
次に、このような構造を形成するための製造方法について説明する。図22(a)〜(d)及び図23(a)〜(d)は第5の実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程断面図であり、それぞれ図20のA−A’線及びB−B’線における断面構造を形成する工程を示す図である。
【0127】
まず、第1の実施形態において説明した図3(a)〜図5(d)までの工程に従って、図5(d)の構造を形成する。つまり、基板11を用い、活性層30及び導電層40と、配線層15〜20からなる積層絶縁膜70と、これに埋め込まれた配線構造71及びシールリング14とを形成する。ここで、本実施形態の場合には、チップコーナー部におけるシールリングの位置は図3(a)〜図5(d)に示したものと異なるが、製造の過程は同様である。
【0128】
次に、図22(a)及び図23(a)の工程を行なう。まず、最上層の配線層である配線36上及びシール配線46上を含む層間絶縁膜20上に、配線36の保護膜となるパッシベーション膜21を堆積する。その後、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用いて、パッシベーション膜21に対し、配線36上及びシール配線46上をそれぞれ部分的に開口して、開口部21a及び開口部21bを形成する。それと同時に、チップ領域12内における、シールリング14よりもスクライブ領域13側に、チップ領域の内側を取り囲み、層間絶縁膜20に達する閉環状の溝52a、52ax、52ayを形成する。このとき、溝52aと溝52ayによって、略方形の閉環状溝が形成され、溝52aと溝52axによって略八角形の閉環状溝が形成されている。
【0129】
次に、図22(b)及び図23(b)に示すように、パッシベーション膜21の開口部21aに配線36と接続するパッド電極37を形成すると共に、開口部21bにシール配線46と接続するキャップ層47を形成する。このためには、まず、開口部21a上及び開口部21b上を含むパッシベーション膜21上の全面に亘って、例えば、スパッタ法によりAl膜を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用い、該Al膜を配線36上及びシール配線46上にパターニングし、それぞれパッド電極37及びキャップ層47とする。
【0130】
次に、図22(c)及び図23(c)に示す工程を行なう。まず、チップ領域12のパッド電極37上及びキャップ層47上を含むパッシベーション膜21上に、他のパッシベーション膜22を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法を用い、パッシベーション膜22に対し、パッド電極37上及びキャップ層47上にそれぞれ開口部を形成するのと同時に、パッシベーション膜21に閉環状に形成した溝52a、52ax、52ay上に溝52b、52bx、52byを形成する。これにより、配線構造71上にパッド電極37によりボンディングパッドが形成され、キャップ層47上に開口部48が形成され、チップ領域12の内側を取り囲むパッシベーション膜21及び22を貫通する閉環状の溝52、52x、52yが形成される。このとき、溝52と溝52yによって、略方形の閉環状溝が形成され、溝52と溝52xによって略八角形の閉環状溝が形成されている。
【0131】
次に、図22(d)及び図23(d)の工程を行なう。まず、パッド電極37上及びキャップ層47上及び閉環状溝52、52x、52yを含む基板11上の全面に亘って、例えば、ポリイミドからなる液状樹脂をスピンコート法により塗布する。その後、リソグラフィ法によって露光及び現像を行ない、チップ領域12におけるパッド電極37の近傍からシールリング上部に開口部を有する有機保護膜23を形成すると共に、チップ領域12内でシールリング14よりもスクライブ領域13側に、チップ領域の内側を取り囲み、閉環状溝52、52x、52yを覆う有機保護膜23’を形成する。このとき、有機保護膜23’は、チップコーナー部において、溝52xと溝52yによって形成される三角形を覆っており、図20に示すように略三角形状となっている。
【0132】
この後は、第1の実施形態において図8(a)〜(c)に説明したのと同様に、保護テープ61を貼り付けて裏面研削した後、ダイシングを実施して個々の半導体装置に分離する。
【0133】
以上のような製造方法によると、工程数を増加することなく、チップコーナー部の剥離を抑制する有機保護膜23’を形成することができる。このため、裏面研削時に切削水の浸入によるチップ領域の汚染が抑制でき、ダイシング時のダメージや膜剥離等が素子形成領域に達するのを抑制でき、チップコーナー部が補強された半導体装置が製造できる。
【0134】
以上、本発明の技術について5つの具体例を挙げて説明したが、以上に限定するものではなく、構成の趣旨を外れない範囲で各種の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態においては、有機保護膜としてはポリイミドを使用したが、これに限定されず、ポリベンゾオキサゾール(PBO)等を使用しても良い。
【0135】
また、第4の実施形態において先ダイシング工法を説明したが、他の実施形態において先ダイシング工法を用いても良い。更に、第4の実施形態において、裏面研削時の後にダイシングを行なう方法を取ることも可能である。
【0136】
また、上記説明において、保護膜23’をパッシベーション膜21及び22の開口部に形成しない例で説明した実施形態に対しても、保護膜23’をパッシベーション膜21及び22の開口部に形成することができる。また、いずれの実施形態においても保護膜23’下部の溝を不連続に形成することもできる。また、パッド電極37とキャップ層47の間に保護膜23を形成する場合と形成しない場合について説明したが、いずれの実施形態においても、形成しても良いし、形成しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、ウェーハの裏面研削やダイシングの際に生じる、水分の浸入による汚れ、あるいは割れ、クラック、チッピング、層間剥離等の物理的損傷を抑制することができ、半導体ウェーハに複数の半導体チップを形成し、スクライブ領域をダイシングすることにより形成する半導体装置及びその製造方法等に有用である。
【符号の説明】
【0138】
11、111 基板
12、112 チップ領域
13、113 スクライブ領域
14、114 シールリング
15、16、17、18、19、20 層間絶縁膜
115、116、117、118、119、120 層間絶縁膜
15a、17a、19a ビアホール
15b、17b、19b 溝状凹部
16a、18a、20a 配線溝
16b、18b、20b シール配線溝
21、22、121、122 パッシベーション膜
21a、21b 開口部
23、23’、123 保護膜
30、130 活性層
31、33、35 ビア
131、133、135 ビア
32、34、36 配線
132、134、136 配線
37、137 パッド電極
40、140 導電層
41、43、45 シールビア
141、143、145 シールビア
42、44、46 シール配線
142、144、146 シール配線
47、147 キャップ層
48、48a、48b 開口部
49 開口部
50、50a、50b 閉環状溝
51、51a、51b 開口部
52、52a、52b 溝
52x、52ax、52bx 溝
52y、52ay、52by 溝
61 保護テープ
62 溝
70、170 積層絶縁膜
71、171 配線構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ領域と、
前記チップ領域に形成される積層絶縁膜と、
前記積層絶縁膜上に形成される電極パッドと、
前記積層絶縁膜全層を貫通して互いに接続される配線及びビアから成り前記電極パッドと前記チップ領域の外周との間に前記チップ領域の外周全周と平行に閉環状に形成されるシールリングと、
前記シールリング上に前記シールリングに接続して形成されるキャップ層と、
少なくとも前記電極パッド及び前記キャップ層を露出して形成されるパッシベーション膜と、
少なくとも前記電極パッド上及び前記キャップ層の一部上を開口して前記チップ領域上全面に形成される保護膜と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記パッシベーション膜の前記キャップ層より前記チップ領域の外周側に前記チップ領域の外周全周と平行に閉環状に形成される第1の溝を更に有し、前記保護膜が前記第1の溝の中にも形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パッシベーション膜の前記キャップ層より前記チップ領域の外周側に前記チップ領域の外周と平行に互いに間隔を空けて形成される複数の開口部を更に有し、前記保護膜が前記開口部の中にも形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記シールリングの平面形状が、前記チップ領域の4つのコーナー部それぞれに1辺が形成される八角形であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記パッシベーション膜の前記キャップ層より前記チップ領域の外周側に前記チップ領域の外周全周と平行に閉環状に形成される第1の溝と、前記チップ領域の4つのコーナー部で前記シールリングと平行で両端が前記第1の溝と接続される第2の溝とを更に有し、前記保護膜が前記第1の溝及び前記第2の溝の中にも形成されると共に、前記第1の溝と前記第2の溝とで形成される三角形を覆うことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記パッシベーション膜の前記キャップ層より前記チップ領域の外周側に前記チップ領域の外周全周と平行に互いに間隔を空けて形成される複数の第1の開口部と、前記チップ領域の4つのコーナー部で前記シールリングと平行でその集合体の両端が前記第1の開口部と接続されて互いに間隔を空けて形成される複数の第2の開口部とを更に有し、前記保護膜が前記第1の開口部及び前記第2の開口部の中にも形成されると共に、前記第1の開口部と前記第2の開口部とで形成される三角形を覆うことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項7】
ウェーハに形成された複数のチップ領域をスクライブ領域で個辺化する半導体装置の製造方法であって、
前記チップ領域を形成する際に、
基板に素子を形成するのと同時に前記チップ領域の周縁部に導電層を形成する導電層形成工程と、
前記基板上に層間絶縁膜を形成すると共に、前記層間絶縁膜中に前記素子と電気的に接続される配線層及びビアを含む配線構造を形成し、同時に前記層間絶縁膜中に前記導電層に電気的に接続されるシール配線及びシールビアを含み且つ前記配線構造及び前記素子を連続して取り囲むシールリングを前記チップ領域の外周全周と平行に形成するシールリング形成工程と、
前記層間絶縁膜上に、前記配線構造の少なくとも一部の上方に電極パッド用開口部を備え、前記シールリングの少なくとも一部の上方に前記チップ領域の外周全周と平行に形成される閉環状のキャップ層用開口部を備える第1のパッシベーション膜を形成する第1のパッシベーション膜形成工程と、
前記電極パッド用開口部に前記配線構造と接続される電極パッドを形成するのと同時に前記キャップ層用開口部に閉環状のキャップ層を形成するキャップ層形成工程と、
前記第1のパッシベーション膜上に、前記電極パッドの少なくとも一部及び前記キャップ層の少なくとも一部を露出させる第2のパッシベーション膜を形成する第2のパッシベーション膜形成工程と、
前記チップ領域内の前記第2のパッシベーション膜上に少なくとも前記電極パッドとその近傍及び前記キャップ層上方を露出する保護膜を形成する保護膜形成工程と
を有し、前記保護膜が前記キャップ層上に前記チップ領域の外周全周と平行に形成される閉環状の開口部を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1のパッシベーション膜形成工程において、更に、前記シールリングよりも前記スクライブ領域側に、閉環状の第1の溝を前記チップ領域の外周全周と平行に形成し、
前記第2のパッシベーション膜形成工程において、更に、前記閉環状の溝の上部に閉環状の第2の溝を前記チップ領域の外周全周と平行に形成し、
前記保護膜形成工程において、前記第1の溝及び前記第2の溝の中にも前記保護膜を形成する
ことを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1のパッシベーション膜形成工程において、更に、前記シールリングよりも前記スクライブ領域側に、互いに間隔を空けて形成される複数の第1の開口部を前記チップ領域の外周全周と平行に形成し、
前記第2のパッシベーション膜形成工程において、前記第1の開口部の上部に、複数の第2の開口部を前記チップ領域の外周全周と平行に形成し、
前記保護膜形成工程において、前記第1の開口部及び前記第2の開口部の中にも前記保護膜を形成する
ことを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記保護膜形成工程の後に、前記基板の前記保護膜が形成された主面側に保護シートを貼り付け、前記基板の前記主面に対する裏面から前記基板を研削して所定の厚さとする研削工程と、
前記研削工程の後に、前記スクライブ領域内をダイシングすることにより個々の前記半導体装置に個辺化するダイシング工程と
を更に有することを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記保護膜形成工程の後に、前記保護膜が形成された主面側から前記基板の前記スクライブ領域内に所定の深さの第3の溝を形成する溝入れ工程と、
前記溝入れ工程の後に、前記基板の主面側に保護シートを貼り付け、前記基板の前記主面に対する裏面から前記第3の溝に達するまで研削することにより個々の半導体装置に個辺化する個辺化工程と
を更に有することを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2011−216753(P2011−216753A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84728(P2010−84728)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】