説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】 導電部の膨張破壊や電極断線、及び基板の破壊等を生じることが無く、耐熱性等に優れた半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板2の一方の面2aに配され、該面内にある機能素子5と電気的に接続された電極4と、基板2の他方の面2bから一方の面2aに配した電極4が露呈するように、基板2内に開けられた貫通孔3と、該貫通孔3内の側面3a及び電極4の露呈部4aを覆うように配され、電極4と電気的に接続された導電部と、該導電部に接するように配された補強材とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の一面に配された機能素子と、該機能素子と電気的に接続するように設けられた貫通電極とを備えてなる半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の電子機器の高機能化が進み、これらの機器に用いられるICやLSI等の電子デバイス、及びOEICや光ピックアップ等の光デバイスにおいて、デバイス自体の小型化や高機能化を図るための開発が各所で進められている。例えば、このようなデバイスを積層して設ける技術が提案されており、具体的には、何らかの機能素子が一方の面に設けられている基板に対し、該基板の一方の面から他方の面に貫通してなる貫通電極を用いる技術が挙げられる。
【0003】
また、これらの基板の配線材料として、銅や銀等が次世代材料として期待されている。
特に、銅は比抵抗が低いこと、エレクトロマイグレーション耐性がアルミニウム系合金に比べて高いこと、銀に比べて安価である等の理由により、最も期待され、配線材料として用いられている。
【0004】
一般に、銅めっきを用いた配線形成方法として、ダマシンプロセスが従来から用いられている。このダマシンプロセスを用いて得られる基板は、絶縁層に形成する孔の開口径を小さくすることにより、実装基板の一層の高集積化を図っている。
【0005】
図9は、従来の基板を用いた半導体装置の一例を概略説明する部分断面図である。
図9(a)に示す半導体基板100においては、セラミックスやシリコン等の硬質材からなる基板101と、基板101の両面を貫通して設けられた貫通孔102と、貫通孔102の孔内に充填され、銅材等からなる導電部103と、貫通孔102内に露呈するようにして半導体基板100の一方の面に配される電極104と、半導体基板100上に配されるICチップや光素子等の機能素子105と、基板101上において電極104及び機能素子105と電気的に接続されてなる配線回路106とから概略構成されている。
半導体基板100は、電極104と機能素子105とが配線部106によって電気的に接続されているとともに、電極104と電気的に接続された導電部103を介して基板両面が電気的に接続可能となっている。
【0006】
例えば、ダマシンプロセスを用いて図9(a)に示すような半導体基板100を製造する場合は、基板101に予め貫通孔102を形成し、該貫通孔102に銅材を埋め込む方法(例えば、特許文献1を参照)によって孔内への銅配線形成を行う。この銅めっき処理によって貫通孔102内を金属で完全に充填し、基板101の両面を貫通してなる導電部103を形成して半導体基板100が得られる。
【0007】
また、導電部103を形成した後、基板101表面上に形成した銅めっき層をパターニングすることで配線回路として使用することができ、その配線の保護層として樹脂を基板表面に塗布して用いている(例えば、特許文献2、3、4を参照)。
【0008】
ところで、上述のような基板を用いた半導体装置等においては、更なる高集積化に伴い、貫通孔102のアスペクト比(孔の開口直径に対する孔深さの比)が大きくなる傾向にある。このため、銅めっきを行った際に貫通孔102内が完全に充填されず、内部に閉鎖された空間が生じたボイド107(図9(b))や、外部に繋がった空間が生じたシーム108(図9(c))と呼ばれるめっき不良が発生してしまうという問題があった。
【0009】
上述のボイド107やシーム108は、以下に説明するようなメカニズムで発生する。
貫通孔102に、銅めっきによって導電部103を形成する際に、貫通孔102内において、めっきが内壁に沿って均一に成長しない状態で、開口部側が先に閉じてしまった際に、ボイド107(図9(b))が発生し、めっきが内壁に沿って均一に成長しつつも、最終的に完全には充填することができず、開口部から貫通孔底部に向かって直線状に空間が残ってしまった際にシーム108(図9(c))が発生する。
通常、銅めっきを行う際は酸性のめっき液を用いることが多いが、上述のボイド107やシーム108にめっき液が残留すると、めっき液が時間の経過とともに銅(導電部103)を溶解して変質させることにより、基板の長期的な信頼性が低下する虞がある。また、導電部103の形成工程の後に熱プロセスを含む工程がある場合、内部の液体(めっき液)が急激に気化して容積が膨張することにより、導電部103の膨張破壊及びこれに伴う電極104の断線、更にはウェハ(基板101)の破壊が生じるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−178999号公報
【特許文献2】特開平5−175652号公報
【特許文献3】特開平11−354671号公報
【特許文献4】特開2001−339165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、導電部と電極との間の電気的な接続不良が発生しにくい半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る半導体装置は、基板の一方の面に配され、該面内にある機能素子と電気的に接続された電極と、前記基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するように、基板内に開けられた貫通孔と、前記貫通孔内の側面及び前記電極の露呈部を覆うように配され、前記電極と電気的に接続された導電部と、 前記導電部に接するように配された補強材と、を具備したことを特徴としている。
本発明の請求項2に係る半導体装置は、請求項1に記載の半導体装置において、前記補強材が、前記導電部によって覆われた貫通孔内部に埋設されていることを特徴としている。
本発明の請求項3に係る半導体装置は、請求項1又は2に記載の半導体装置において、前記導電部が、前記他方の面上まで延設されていることを特徴としている。
本発明の請求項4に係る半導体装置は、請求項3に記載の半導体装置において、前記補強材が、前記導電部の延設された少なくとも一部を覆うように配されていることを特徴としている。
本発明の請求項5に係る半導体装置は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置において、前記貫通孔内の側面と前記導電部との間に絶縁部を配したことを特徴としている。
本発明の請求項6に係る半導体装置の製造方法は、基板の一方の面に配され、該面内にある機能素子と電気的に接続された電極と、前記基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するように、基板内に開けられた貫通孔と、前記貫通孔内の側面及び前記電極の露呈部を覆うように配され、前記電極と電気的に接続された導電部と、前記導電部に接するように配された補強材とを具備してなる半導体装置の製造方法であって、前記基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するように、基板内に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔内の側面及び前記電極の露呈部を覆うように、前記電極と電気的に接続するように導電部を形成する工程と、前記導電部を覆うように補強材を形成する工程と、を少なくとも具備してなることを特徴としている。
本発明の請求項7に係る半導体装置の製造方法は、請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、前記導電部を形成する工程が、前記貫通孔内の側面及び前記電極の露呈部とともに、前記他方の面上まで前記導電部が覆うように設ける方法としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置によれば、基板の一方の面に配され、該面内にある機能素子と電気的に接続された電極と、前記基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するように、基板内に開けられた貫通孔と、前記貫通孔内の側面及び前記電極の露呈部を覆うように配され、前記電極と電気的に接続された導電部と、前記導電部に接するように配された補強材と、を具備した構成としている。
また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、前記基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するように、基板内に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔内の側面と、前記電極の露呈部とを覆うように、前記電極と電気的に接続するように導電部を形成する工程と、前記導電部を覆うように補強材を形成する工程と、を少なくとも具備してなる。
これにより、半導体基板が熱サイクルや高温環境下において使用される場合であっても、基板材料と電極及び導電部材料との間の熱膨張係数の差に起因して生じる熱ひずみに対して応力を緩和することができ、電極の破断等が生じることが無い。
また、補強材によって導電部が覆われることにより、該導電部の酸化や変形、劣化を防止することができる。
また、貫通孔内におけるボイドやシーム等が生じることに伴うめっき液の残留や、該残留液が熱プロセスを含む工程において急激に気化し、電極や基板を破壊するのを防止することができる。
従って、導電部と電極との間の電気的な接続不良や、基板の破壊等を生じることが無く、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る半導体装置の実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1乃至図5は、本実施形態の半導体装置10の一例を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、半導体装置10は、基板2の一方の面2aに配され、該一方の面2a内にある機能素子5と電気的に接続された電極4と、基板2の他方の面2bから、一方の面2aに配された電極4が露呈するように、基板2内に開けられた貫通孔3と、該貫通孔3内の側面3a及び電極4の露呈部4aを覆うように配され、電極4と電気的に接続された導電部16と、導電部16に接するように配された補強材17と、を具備して概略構成されている。
図1では、導電部16によって貫通孔3の側面3aを全て被覆した場合の例を示している。
また、図1に示す例では、補強材17を、導電部16に接しながら、貫通孔3内に充填するようにして配している。
【0015】
基板2は、例えば、シリコン(Si)等からなる半導体基材や、ガラス基材、セラミック基材等、絶縁性の硬質材料からなる。
基板2の厚さは、例えば数百μm程度である。
図1に示す例では、基板2をSi等の半導体基材から構成し、基板2の一方の面2a及び他方の面2bに加え、貫通孔3の側面3aの表層部2cが絶縁化された領域をなすように構成されている。また、基板を半導体基板から構成する場合は、図4に示す例のように、貫通孔3と導電部16との間に絶縁部9を配し、半導体基板12と導電部16とを電気的に絶縁した構成としても良い。
また、基板材料が、上述の絶縁性硬質材料からなる場合には、貫通孔3内の側面3aが絶縁体なので、図2に示す例のように、基板21に設けられた貫通孔3と導電部26とが接した構成とすることができる。
【0016】
貫通孔3は、図1に示すように、基板2において、他方の面2bから、一方の面2aに配された後述する電極4が孔内に露呈するように、基板2内に開けられてなる。
貫通孔3の口径は、例えば数十μm程度である。
また、基板2上に設けられる貫通孔3の数は、特に限定されない。
【0017】
電極4は、基板2の一方の面2aに配され、露呈部4aが貫通孔3の一方の開口部31から孔内に露呈するようにして設けられている。
電極4は、後述の配線回路8を介して、該一方の面2a内にある後述の機能素子5と電気的に接続されている。
電極4の材質としては、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)合金、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)合金等の導電性に優れる材料が好適に用いられる。
【0018】
機能素子5は、本実施形態では、例えばICチップや、CCD素子等の光素子からなる。
また、機能素子5の他の例としては、例えばマイクロリレー、マイクロスイッチ、圧力センサ、加速度センサ、高周波フィルタ、マイクロミラー、マイクロリアクター、μ−TAS、DNAチップ、MEMSデバイス、マイクロ燃料電池等が挙げられる。
【0019】
導電部16は、貫通孔3内の側面3aの少なくとも一部に配されることにより、導電体として有効に働く。
図1の断面図に示す例では、導電部16は、側面3aの全体を覆うように配されているが、これには限定されない。例えば、導電部16が、側面3aの一部に、基板2の一方の面2aと他方の面2bとの間に渡って配された構成としても良い。
【0020】
導電部16の材質は、導電性に優れた材料を用いることが好ましい。また、導電部16は、電極4との密着性に優れるとともに、導電部16を構成する元素が電極4や基板2内に拡散しない材料を用いれば、さらに好ましい。
例えば、図1に示す例のように導電部16が単層である場合には、電極4と同材料であることが望ましく、Al、Cu、Ni、Au等の金属材料を用いれば、導電性や電極4との密着性等の点で好ましい。
また、導電部16を、2種類以上の金属材料からなる多層構造、あるいは材料の異なる膜を積層した構造とした場合、外側の層には、電極4を成す材質との密着性に優れる材料や、導電部16と、電極4又は基板2との間で元素移動(拡散)が生じるのを防止できる金属材料(バリアメタル)を配し、内側の層には、導電性の高い金属を配した構成とすることが好ましい。
また、導電部16と貫通孔3(もしくは絶縁部9)との間、又は導電部16と後述の補強材17との間に、例えば、応力緩和作用のある材料や、元素移動を防止するバリアメタル、又は密着性に優れた材料等を配した多層構造の中間層を設けた構成としても良い。
例えば、導電部16がCuの場合、バリアメタルとしてTaN、Ta、W、WN、TiN、TiSiN等が挙げられ、それぞれ密着性に優れている。また、それらの材料以外にも、Cr、TiW等が、密着性の高いバリアメタルとして挙げられる。
【0021】
補強材17は、貫通孔3内において、導電部16の内面に接するように配され、非導電材料からなる。
補強材17は、導電部16に熱歪み等によって生じる応力に対して緩衝材として機能するとともに、導電部16が外気へ剥き出しにならないようにオーバーコートする。
補強材17は、導電部16の内面全体を完全に覆うように形成することが、上述した導電部16をオーバーコートする点で好ましく、また、図1に示す例のように、充填(埋設)して配することが、後述の、導電部16に生じる応力を緩和する点から好ましい。
【0022】
補強材17の材質としては、導電部16を成す金属材料と異なり、樹脂等の応力緩和作用を有する非導電性材料、または金属粉末を含有した導電性樹脂等を用いることが好ましく、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂等の樹脂材料を用いれば良い。
また、補強剤17の材質に導電性樹脂を用いた場合、導電部16に亀裂が生じて電気的断絶に至る様な状態となった場合でも、導電部16の内面側に配した補強材17(導電性樹脂)により、電気的接続状態を維持することができる。
また、補強材17の材質に無溶剤性樹脂を用い、真空印刷によって補強材17を配する方法とした場合には、補強材17の形成工程、作業がスムーズになり、また、ボイド等の不具合を防止することができる。この場合、真空印刷装置として、例えばサンユレック社製の特殊真空印刷システム(型番:VPES−HA−IV)等を用いることができる。
【0023】
本実施形態の半導体装置10では、貫通孔3内に導電部16を形成する際、金属材料を完全に充填せず、開口を配した構成としている(図1参照)。ボイドやシーム等の不良(図9参照)は、開口がなく閉じられた状態で発生する可能性が高いものであるため、開口を配した構成とすれば、これらの不良は発生しない。また、開口を配することにより、内部に液体が溜まった場合でも、洗浄及び除去することが可能となる。
さらに、半導体装置10は、貫通孔3内において、導電部16を覆うようにして補強材17を配した構成とし、図1に示す例では、貫通孔3内に充填するようにして設けられている。これにより、導電部16に生じる応力を緩和するとともに、導電部16が外気に剥き出しになることによって生じる酸化や変形を防止することができる。
【0024】
また、半導体装置が熱サイクルや高温環境にさらされる場合、基板2の材質と導電部16の材質との間の熱膨張係数の差に起因して熱歪みが生じることがある。本実施形態の半導体装置1では、導電部16の内面側に形成された空間3bに、金属とは異なる別材料、詳細には樹脂材料からなる補強材を配することによって応力緩和が可能となり、導電部16や電極4の破断等を防止し、信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0025】
なお、補強材は、図3(a)に示す例のように、導電部36を該導電部36の内面に沿って被覆した補強材37として構成しても良いし、図3(b)に示す例のように、貫通孔3内の下部のみに充填した補強材47として構成としても良い。
また、図4(b)に示す例のように、導電部66の内面に沿って被覆して配した補強材67bの内面に、補強材67aを充填して配した補強材67として構成しても良い。この場合には、外層となる補強材67bに、より応力緩和作用の大きな材料を用いることが好ましい。
【0026】
配線回路8は、基板2上に配され、電極4や機能素子5等を電気的に接続して回路をなす。
配線回路8の材質としては、電極4と同様の材質を用いれば良く、アルミニウム(Al)や銅(Cu)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)合金、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)合金等の導電性に優れる材料が好適である。
【0027】
本実施形態の半導体装置10は、必要に応じて基板2の一方の面2aにガラス基板等のような別基板を接合した構成としても良い。
【0028】
以下、本実施形態の半導体装置10の製造方法について、図6を用いて説明する。
なお、図6は、本実施形態の半導体装置10を工程順に示した断面模式図であり、一部は分かりやすいように上面から眺めた図も添付してある。
本実施形態の半導体装置10の製造方法では、基板2の一方の面2aに配され、該面内にある機能素子5と電気的に接続された電極4と、基板2の他方の面2bから、一方の面2aに配された電極4が露呈するように、基板2内に開けられた貫通孔3と、貫通孔3内の側面3a及び電極4の露呈部4aを覆うように配され、電極4と電気的に接続された導電部16と、導電部16に接するように配された補強材17とを具備してなる半導体装置10の製造方法であって、基板2の他方の面2bから、一方の面2aに配された電極4が露呈するように、基板2内に貫通孔3を形成する工程Aと(図6(a)、(b)参照)、貫通孔3内の側面3a及び電極4の露呈部4aを覆うように、電極2と電気的に接続するように導電部16を形成する工程Bと(図6(c)参照)、導電部16を覆うように補強材17を形成する工程Cと(図6(d)参照)、を少なくとも具備してなることを特徴としている。
【0029】
上述の構成により、図1に示すような、貫通孔3内の側面3aの少なくとも一部と電極4の露呈部4aとを覆うようにして導電部16を設け、該導電部16の内面を覆うように充填して補強材17を設けた半導体装置10を効率良く製造することが可能となる。
また、貫通孔3を形成した後、剥き出しになった電極4の露呈部4aを導電部16で覆い、次いで、補強材17で導電部16を覆う工程としているため、導電部16が外気に剥き出しになることなくオーバーコートされ、保護することができる。
【0030】
なお、以下の説明においては、半導体装置10の基板2の材質に、ガラスやセラミック材料等の非導電性材料を用いた例について説明する。
【0031】
(イ) 工程A
図6(a)には、通常の製造工程プロセスが終了して完成した、ガラスやセラミック材料からなる基板2、外部と電気的な接続をするための電極4、フォトダイオード群やマイクロレンズ群、或いはICチップなどからなる機能素子5、電極4と機能素子5とを電気的に接続するための配線回路8等が配された半導体装置を示している。
本例においては、基板2の厚さは200μmであり、また、電極4及び配線回路8はアルミニウム(Al)金属からなっている。また、電極4は、100μm×100μmの正方形である。
【0032】
まず、図6(b)に示すように、機能素子5等が配されている一方の面2aと他方の面2bとの間において、他方の面2b上の電極4に対向する位置から、電極4の裏面(つまり、電極4の一方の面2aと重なり合っていた面)に達するまで、基板2を貫通する貫通孔3を形成する。この時、電極4の裏面の内の少なくとも一部が露呈部4aとして、開口部31から孔内に露呈するようにして、貫通孔3を形成する。
【0033】
本例では、基板2をなす非導電材料の内、電極4が配された部分をエッチング処理によって除去することにより、孔径80μm、深さ200μmの微細な孔である貫通孔3を形成した。
【0034】
(ロ)工程B
次いで、図6(c)に示すように、貫通孔3内の側面3a、及び電極4の露呈部4aを覆うようにして、金属材料からなる導電部16のシード層を形成する。本例では、前記シード層をなす金属材料として、側面3aと接する外側にCrを、内面側にCuを用い、スパッタ法によって形成したが、その他、MOCVD、無電解めっき等によって形成しても良い。これにより、貫通孔3内の側面3a及び電極4の露呈部4aは、前記シード層によって被覆される。そして、上記シード層の内面側にCuをめっき処理することにより、導電部16が形成される。
なお、本例では、導電部16が、露呈部4a及び側面3a全体を被覆するようにして形成された例を説明しているが、導電部16は、基板2の一方の面2aと他方の面2bとの間で連なって配され、電極4と電気的に接続されていれば良く、例えば、側面3aの表面に線状に形成された導電部であっても良い。
【0035】
(ハ)工程C
次いで、図6(d)に示すように、貫通孔3内に形成された導電部16の内面側を、樹脂材料で覆うようにして補強材17を形成する。本例で説明する補強材17は、樹脂材料として、熱硬化性エポキシ樹脂を用いるとともに、他方の面2bに向けて開口部17aを有して形成されている。
補強材17を形成する方法としては、例えば、導電部16を形成した基板2上に、真空印刷法によって無溶剤性樹脂等の樹脂材料を印刷することにより、貫通孔3内の導電部16内面へ樹脂を押し込む方法を用いれば良い。
また、ノズルを用い、貫通孔3内の導電部16内面に、樹脂を直接塗布する方法を用いれば、樹脂材料を適量だけ塗布し、基板2ごと減圧することによって補強材17を形成することができる。
【0036】
上述した各工程により、本実施形態の半導体装置10を効率良く製造することができる。
【0037】
なお、本例では、電極4の大きさ及び形状を100μm角の正方形としたが、電極4の形状はこれに限定されず、円形、楕円形、三角形、矩形などいかなる形状でもよく、その大きさも電気的配線に用いる電極としての機能が保持できれば、如何なる大きさでも良い。更に、電極4及び配線回路8の材質も、本例ではAlとしているが、これには限定されず、銅(Cu)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)など、他の如何なる配線材料であってもよい。
【0038】
また、本例では、貫通孔3の直径を80μmの円形として形成しているが、これには限定されず、貫通孔3と電極4との接触面全体が、電極4の内部に位置するような大きさであれば如何なる大きさでもよく、その形状も円形のみならず楕円形、四角形、三角形、矩形など如何なる形状でもよい。
【0039】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法では、基板2の材質にシリコン(Si)等からなる半導体ウェハを用いた半導体基板を例として説明しているが、この場合には、上述したように半導体基板12に形成された貫通孔3内の側面3aに、例えばSiNやSiO等からなる絶縁部9を形成することができる(図4参照)。該絶縁部9の側面、及び電極4の露呈部4aを覆うようにして導電部16を形成することにより、半導体基板12と導電部16とを電気的に絶縁することができる。
半導体基板12への貫通孔3及び絶縁部9の形成については、従来から行われている方法を用いることができる。
なお、基板にガラス材等の非導電性材料を用いた場合には、絶縁部9を形成する必要は無い。
【0040】
また、本例では、補強材17の材質として樹脂材料を用いているが、これには限定されず、補強材17の材質として、応力緩和作用を有する金属材料を用いても良い。
【0041】
以上、説明したように、本実施形態の半導体装置10によれば、基板2の一方の面2aに配され、該面内にある機能素子5と電気的に接続された電極4と、基板2の他方の面2bから、一方の面2aに配された電極4が露呈するように、基板2内に開けられた貫通孔3と、該貫通孔3内の側面3a及び電極4の露呈部4aを覆うように配され、電極4と電気的に接続された導電部16と、該導電部16に接するように配された補強材17とを具備した構成としている。
また、本実施形態の半導体装置10の製造方法によれば、基板2の他方の面2bから、一方の面2aに配された電極4が露呈するようにして、基板2内に貫通孔3を形成する工程Aと、貫通孔3内の側面3a及び電極4の露呈部4aを覆うようにして、電極4と電気的に接続するように導電部16を形成する工程Bと、導電部16を覆うようにして補強材17を形成する工程Cと、を少なくとも具備してなる。
これにより、半導体装置10が熱サイクルや高温環境下において使用される場合であっても、基板2をなす材料と電極4及び導電部16をなす材料との間の熱膨張係数の差に起因して生じる熱ひずみに対して応力を緩和することができ、電極の破断等が生じることが無い。
また、補強材17によって導電部16が覆われることにより、該導電部16の酸化や変形、劣化を防止することができる。
また、貫通孔内におけるボイドやシーム等が生じることに伴うめっき液の残留や、該残留液が熱プロセスを含む工程において急激に気化し、電極や基板を破壊するのを防止することができる。
従って、導電部16と電極4との間の電気的な接続不良や、基板2の破壊等を生じることが無く、信頼性の高い半導体装置10を得ることができる。
【0042】
なお、本実施形態の半導体装置では、図1に示すような、導電部16及び補強材17の全体が貫通孔3内に収容されている例を説明しているが、図2に示す例のように、導電部が、基板2の他方の面2b上まで延設されてなる半導体装置としても良い。図示例では、導電部26が、他方の面2b上に、延設部26a、26bとして延設されている。このような構成とすることにより、他方の面2b側の配線も一括して形成することができ、製造工程の削減が可能となる。
また、図5に示す例のように、補強材57を、導電部56の延設された少なくとも一部を覆うように配した構成としても良い。図示例では、導電部56が、他方の面2b上に、延設部56a、56bとして延設されているとともに、補強材57が、他方の面2b上に、被覆部57a、57bとして延設され、該被覆部57a、57bが、それぞれ前記延設部56a、56bを覆うようにして形成されている。このような構成とすることにより、補強材が、後述するバンプを形成するためのオーバーコート層を兼ねることができる。
【0043】
図2及び図5に示すような、基板2の何れかの面上に導電部が延設された半導体装置を製造する場合には、導電部26(56)を形成する工程を、貫通孔3の側面3a及び電極4の露呈部4aとともに、他方の面2b上まで、導電部の延設部26a、26b(56a、56b)が覆うように設ける方法とすれば良い。
【0044】
また、本実施形態の半導体装置は、図5に示すように、基板2の表面に補強材57を延設することによって、導電部56や配線回路8を保護するためのオーバーコート層(被覆部57a、57b)を配する際、導電部56の内面を補強材57で覆いながら、該補強材57が延設された被覆部57a、57bをオーバーコート層として一体成形することができ、作業工程の削減が可能となる。
この際、被覆部の一部に、導電部56aが覗き込むことができるような開口部57cを設けることにより、この開口部57cに半田バンプ58を設けることもできる。つまり、補強材57と被覆部57a、57bとを一体として形成することにより、従来は別体として設ける必要があったオーバーコート層を一緒に成形するので、密着性が向上するともに、工程が削減されて低コスト化が実現できる。また、この場合には、導電部56を覆う材料と、基板2の表面をオーバーコートする材料が同一材料であり、且つ継ぎ目の無い連続体として形成されるため、密着性の点で優れ、例えば、吸湿、高温環境等において生じるオーバーコート層の剥がれ等を防止することができる。
また、補強材57とオーバーコート層となる被覆部57a、57bとを一体成形する場合、材料に感光性樹脂を用いれば、基板2表面の配線に合わせ、高精度のパターン形状を有した被覆部57a、57bを形成することができる。
【0045】
また、本実施形態の半導体装置は、基板上において電極が配されていない位置に貫通孔を設けた場合であっても、貫通孔の側面のみを覆うように導電部を配し、該導電部を覆って接するように補強材を配した構成とすることにより、上述の効果が得られる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明に係る半導体装置の実施例について、図7〜8を用いて説明する。
【0047】
[作製工程]
基板として、厚さが200μm、大きさが6インチ(直径150mmの円)のシリコン半導体基板を用い、基板の一方の面に電極、機能素子及び配線回路(図示略)を配した。電極として、Alパッドを用いた。
そして、基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するようにして、基板内に孔径が80μmの貫通孔を、DRIE(エッチング処理)によって形成した。貫通孔内の側面には、図示略の絶縁部として、SiOの被膜を形成した。
そして、貫通孔内の側面及び電極の露呈部を覆うようにしてシード層(Cr)及び銅材料を配することにより導電部を形成した後、導電部の内面に熱硬化性エポキシ樹脂を充填するように埋設して補強材を形成し、本発明に係る半導体装置(実施例)を得た(図8(a)参照)。
【0048】
また、上述同様にして、貫通孔を基板内に形成した後、貫通孔内の側面及び電極の露呈部を覆うようにして、電極と電気的に接続するように導電部を形成して該導電部の内面側に空間を有した状態とし、従来の半導体装置(比較例)を得た(図7(a)参照)。
【0049】
[評価試験]
上述の各サンプルを、実施例n=260、比較例n=100の数量で用い、−40℃:30分、125℃:30分の計1時間を1サイクルとして、熱サイクル試験を計100サイクル:100時間行った。
熱サイクル試験終了後、各サンプルの電極の破断の有無を、顕微鏡で観察、確認した。
【0050】
[評価結果]
図8(c)に示すように、本発明に係る半導体装置は、上記条件の熱サイクル試験を行った場合であっても電極の破断等が発生せず、初期状態(図8(b)参照)に対して変化が見られなかった。実施例のサンプル260台中、電極の破断が生じたサンプルは無かった。
【0051】
一方、図7(c)に示すように、従来の半導体装置は、上記条件の熱サイクル試験を行った後、比較例のサンプル100台中、78台に電極の破断が生じた。
図7(b)に示す初期状態においては、電極面に破断は見られないが、熱サイクル試験後、図7(c)に示すように、電極面に、貫通孔及び導電部に沿った円形の破断痕が生じている。また、図7(d)の断面図に示すように、電極の導電部と接している部分と、基板に接触している部分とが完全に破断している。
【0052】
以上の結果により、本発明に係る半導体装置が、熱サイクルや高温環境下において使用される場合であっても、基板材料と電極及び導電部材料との間の熱膨張係数の差に起因して生じる熱ひずみに対し、導電部の内面側の空間に、樹脂等の別材料による補強材を配することによって応力を緩和でき、電極の破断等が生じず、高い信頼性を有することが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る半導体装置の一例を説明する断面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の他例を説明する断面図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の他例を説明する要部断面図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の他例を説明する要部断面図である。
【図5】本発明に係る半導体装置の他例を説明する要部断面図である。
【図6】本発明に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する工程図である。
【図7】従来の半導体装置を用いて熱サイクル試験を行った場合の状態を説明する概略図である。
【図8】本発明に係る半導体装置を用いて熱サイクル試験を行った場合の状態を説明する概略図である。
【図9】従来の半導体装置を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0054】
2、12…基板、2a…一方の面、2b…他方の面、3…貫通孔、3a…側面、4…電極、4a…露呈部、5…機能素子、16、26、36、46、56…導電部、26a、26b、56a、56b…延設部、17、27、37、47、57…補強材、27a、27b、57a、57b…被覆部、8…配線回路、9…絶縁部、10、20…半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面に配され、該面内にある機能素子と電気的に接続された電極と、
前記基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するように、基板内に開けられた貫通孔と、
前記貫通孔内の側面及び前記電極の露呈部を覆うように配され、前記電極と電気的に接続された導電部と、
前記導電部に接するように配された補強材と、
を具備したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記補強材は、前記導電部によって覆われた貫通孔内部に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置
【請求項3】
前記導電部は、前記他方の面上まで延設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記補強材は、前記導電部の延設された少なくとも一部を覆うように配されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記貫通孔内の側面と前記導電部との間に絶縁部を配したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
基板の一方の面に配され、該面内にある機能素子と電気的に接続された電極と、前記基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するように、基板内に開けられた貫通孔と、 前記貫通孔内の側面及び前記電極の露呈部を覆うように配され、前記電極と電気的に接続された導電部と、前記導電部に接するように配された補強材とを具備してなる半導体装置の製造方法であって、
前記基板の他方の面から一方の面に配した電極が露呈するように、基板内に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔内の側面と及び前記電極の露呈部を覆うように、前記電極と電気的に接続するように導電部を形成する工程と、
前記導電部を覆うように補強材を形成する工程と、
を少なくとも具備してなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記導電部を形成する工程は、前記貫通孔内の側面及び前記電極の露呈部とともに、前記他方の面上まで前記導電部が覆うように設けることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−96233(P2007−96233A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287075(P2005−287075)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】