説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置に設けられた半導体部品等の電極パッドとそれに接続されるべくインクジェット法により形成される配線との電気的な接続を好適に確保することのできる半導体装置、及びその半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の第2電極パッド15に電気的に接続される金属配線膜19が、銀微粒子を分散媒に分散させた導電性インクからなる液滴(液層25L)の配置及び乾燥により形成される。このとき、第2電極パッド15の表面のメッキ層21に銀微粒子の結合層からなる中間層23Dを形成した後、中間層23Dを覆うかたちに上記分散媒を撥液する撥液材料を含む撥液層24を積層する。これにより、金属配線膜19は、その乾燥焼成を通じて中間層23Dと物理的に接続するようになり、撥液層24を間に挟みつつ第2電極パッド15と物理的に接続され、すなわち電気的にも接続されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により形成された配線を有する半導体装置、及びその半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体部品等を実装基板に実装した半導体装置においては、実装基板の電極パッドと半導体部品の電極パッドとを結ぶ配線の形成方法として、導電性の微粒子を分散させた導電性インクを微小な液滴にして吐出して乾燥する、いわゆるインクジェット法が用いられることが少なくない。インクジェット法は、配線の形状を液滴の単位で変更できるために、従来のワイヤボンディング法に比べて、配線構造の自由度を大幅に拡張させることができる。そのうえ、ワイヤボンディング法のような空中配線を必要としないために、配線の占有空間を小さくすることもでき、その結果、半導体装置そのものの小型化を図ることもできる。
【0003】
ところで、半導体部品の能動面などにはSiOやSiN等の無機の絶縁膜が形成されている。そのような絶縁膜を下地としてインクジェット法により描画される配線は通常、下地との密着性が良好とはなり難く、同下地から剥がれて断線するおそれがあることや、下地との一体性が弱いために機械的強度が低いなど、その信頼性が劣るものとなっている。また、インクジェット法により配線を形成する場合には、配線が形成される面を適正な状態で均一化させることで、そこに配置される液滴の濡れ広がりが均一にされるようにして、例えば液滴の広がりが足らずに断線したり広がり過ぎて短絡したりすることがないようにする必要もある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の半導体装置は、半導体部品にて電極パッドを有するいわゆる能動面に、インクジェット法により形成される配線と良好な接合力や密着性を発現する有機絶縁膜を予め形成し、これによってインクジェット法により形成される配線がその下地の有機絶縁膜に適切な接合力や密着性により接着されるようにしている。また、このような有機絶縁膜は、能動面を適正な状態に均一化させることから、そこに配置される液滴の濡れ広がりを適正な状態に維持することもできる。これによってインクジェット法により描画される配線の信頼性の向上を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−147650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年は、半導体装置の小型化に伴い、配線パターンもその微細化の要求が強まっている。特に、半導体部品や実装基板に上記インクジェット法にて微細な配線パターンを描画しようとする場合、吐出配置された液滴がその描画面において大きく濡れ広がるようなことがあると液滴による微細なパターンの描画が難しくなることから、吐出配置された液滴が描画面において所定の大きさを維持しつつそこに保持されることが好ましい。そこで、液滴の配置される描画面には、その液滴に対して撥液性を発現する撥液材料の含まれる撥液層を形成する表面処理を行って、撥液層が描画面の上に液滴を所定の大きさに保持し得るようにする。このような表面処理により描画面に配置される液滴の濡れ広がりが抑制されるようになることから、インクジェット法にて配置される液滴により描画面に所望の微細パターンを描画することができるようになり、ひいてはその後の乾燥焼成を通じ
て微細な配線パターンを形成することができるようになる。
【0007】
一方、半導体部品や実装基板には回路相互の接続のための電極パッドが設けられていることも多いが、上記表面処理によりこの電極パッド上にも撥液層が形成される場合、配線を形成する液滴と電極パッドとの間に撥液層が挟まれるかたちになり、液滴が乾燥焼成されて形成される配線と電極パッドとの電気的な接続が確保されないおそれがある。例えば、パッド表面の酸化を抑制すべく金メッキの施された電極パッドには、その表面の滑らかさから、均一かつ安定した撥液層が形成される。このため、このような撥液層上に配置された液滴によって配線が形成されたとしても、その配線と電極パッドとの電気的な接続が撥液層により阻害されるおそれが高い。また、たとえ一時的に電気的な接続が確保されたとしても、撥液層を間に挟む配線と電極パッドとの接合力は弱いものとならざるを得ず、接続不良なども生じかねない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、半導体装置に設けられた半導体部品等の電極パッドとそれに接続されるべくインクジェット法により形成される配線との電気的な接続を好適に確保することのできる半導体装置、及びその半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体装置は、半導体装置の電極パッドに電気的に接続される配線が、金属微粒子を分散媒に分散させた導電性インクからなる液滴の配置及び乾燥により形成される半導体装置であって、前記電極パッドの表面に金属微粒子の結合層からなる中間層と、前記分散媒を撥液する撥液材料を含んで前記中間層を覆うかたちに積層された撥液層とを備え、前記配線は、前記撥液層及び前記中間層を介して電極パッドに物理的に接続されてなることを要旨とする。
【0010】
下地が平面的に均一であるような場合、撥液層は下地に沿って均一かつ安定して形成されるために、その上に形成される配線は下地としての電極パッドとの間の導通が撥液層により阻害されるおそれがある。
【0011】
そこで、このような構成によれば、電極パッドに金属微粒子の結合された中間層が形成され、その中間層の上に撥液層を挟んで配置した液滴を焼成して金属微粒子からなる配線を形成する。これにより中間層の表面には、金属微粒子の結合により微粒子の大きさに応じた凸凹(粗さ)が生じ、それを覆うかたちに形成される撥液層に平面的に濃淡を生じさせるようになり、その際間から金属微粒子が覗く(はみ出る)ようにもなる。これにより、撥液層を挟んで、中間層の上に配線の金属微粒子が配置される場合、撥液層の間から覗く(はみ出る)中間層の金属微粒子と配線の金属微粒子が相互に接触するようになり、中間層と配線との物理的な接続が確保されるようにもなる。そして電気的な接続も確保されるようになる。
【0012】
この半導体装置は、前記中間層と前記配線とが同一種の金属の組み合わせであることを要旨とする。
この半導体装置によれば、中間層と配線とを同一種の金属から構成させることで、凝集により該中間層と該配線とを強力に結合されるようになり、異種類の金属同士の接合や結合に比べて、容易に強力な融着力が得られるようにもなる。その結果、撥液層を挟みながらも中間層と配線との接続が強固になされるようになり電気的な接続もより安定的になる。
【0013】
この半導体装置は、前記電極パッドはその表面が金によりメッキされており、前記中間層は、この金によりメッキされた電極パッドの表面に形成されたものであることを要旨と
する。
【0014】
このような構成によれば、電極パッドの表面が金に覆われることになるので、電極パッドが酸化され難くなり、その表面上に形成される中間層と電極パッドとの導通が好適に確保されるようになる。例えば、インクジェット法による配線の形成によれば、電極パッドに酸化膜が形成されているような場合、その酸化膜を除去してから導電性インクからなる液滴を配置することが好ましいが、酸化膜が形成されないことからインクジェット法による配線の形成が容易に行なわれるようにもなる。
【0015】
また、金属微粒子を構成する金属として銀を用いた場合、銀は、例えばアルミニウムなどよりも金と強く接合することから、中間層と電極パッドとの間の電気的な接続が好適に確保されるようにもなる。
【0016】
この半導体装置は、前記撥液層は、前記撥液材料の単分子膜からなることを要旨とする。
このような構成によれば、半導体装置において撥液層は、中間層以外の部分には所望の撥液性を発揮する単分子膜として形成され、凸凹を有する中間層の上には単分子膜として単分子の配置となるがゆえに、その配置にむらを生ずるとともに満遍なくその間から金属微粒子が覗く(はみ出る)ようになる。これにより、中間層は、単分子膜を挟みつつその金属微粒子が配線の金属微粒子に好適に接触して、乾燥焼成を通じてより強力な融着力により結合されるようになる。これにより、電極パッドと配線との電気的接続の安定性がより向上されるようになる。
【0017】
この半導体装置は、前記撥液材料は、フッ素系の材料からなることを要旨とする。
このような構成によれば、撥液材料には分散媒への高い撥液性が与えられるようになるので、インクジェット法にて配置された液滴の濡れ広がりが抑制されるようになり、同法によって半導体装置に微細な配線が描画できるようになる。
【0018】
この半導体装置は、前記電極パッドは、外部回路との接続端子として半導体部品の能動面にパッド状に設けられた電極であることを要旨とする。
このような構成によれば、半導体装置の半導体部品は、それが有する外部への接続端子にもインクジェット法による配線が描画されるようになるので、このような半導体部品を有する半導体装置の用途が広げられる。
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法は、金属微粒子を分散媒に分散させた導電性インクからなる液滴を配置して乾燥させることにより半導体装置の電極パッドに電気的に接続される配線を形成する半導体装置の製造方法であって、前記電極パッドの表面に金属微粒子の結合層からなる中間層を形成した後、前記分散媒を撥液する撥液材料を含む撥液層を前記中間層を覆うかたちで積層し、これら積層した撥液層及び中間層を介して前記配線を前記電極パッド上に形成するようにしたことを要旨とする。
【0020】
下地が平面的に均一であるような場合、撥液層は下地に沿って均一かつ安定して形成されるために、その上に形成される配線は下地としての電極パッドとの間の導通が撥液層により阻害されるおそれがある。
【0021】
そこで、このような方法によれば、電極パッドに金属微粒子の結合された中間層が形成され、その中間層の上に撥液層を挟んで配置した液滴を焼成して金属微粒子からなる配線を形成する。これにより中間層の表面には、金属微粒子の結合により微粒子の大きさに応じた凸凹(粗さ)が生じ、それを覆うかたちに形成される撥液層に平面的に濃淡を生じさせるようになり、その際間から金属微粒子が覗く(はみ出る)ようにもなる。これにより
、撥液層を挟んで、中間層の上に配線の金属微粒子が配置される場合、撥液層の間から覗く(はみ出る)中間層の金属微粒子と配線の金属微粒子が相互に接触するようになり、中間層と配線との物理的な接続が確保されるようにもなる。そして電気的な接続も確保されるようになる。
【0022】
この半導体装置の製造方法は、前記中間層を構成する金属と前記配線を構成する金属とが同一種の金属の組み合わせであることを要旨とする。
この半導体装置の製造方法によれば、中間層と配線とを同一種の金属から構成させることで、凝集により該中間層と該配線とを強力に結合されるようになり、異種類の金属同士の接合や結合に比べて、容易に強力な融着力が得られるようにもなる。その結果、撥液層を挟みながらも中間層と配線との接続が強固になされるようになり電気的な接続もより安定的になる。
【0023】
この半導体装置の製造方法は、前記電極パッドとしてその表面が金によりメッキされたものを用い、前記中間層をこの金メッキされた電極パッドの表面に形成することを要旨とする。
【0024】
このような方法によれば、電極パッドの表面が金に覆われることになるので、電極パッドが酸化され難くなり、その表面上に形成される中間層と電極パッドとの導通が好適に確保されるようになる。例えば、インクジェット法による配線の形成によれば、電極パッドに酸化膜が形成されているような場合、その酸化膜を除去してから導電性インクからなる液滴を配置することが好ましいが、酸化膜が形成されないことからインクジェット法による配線の形成が容易に行なわれるようにもなる。
【0025】
また、金属微粒子を構成する金属として銀を用いた場合、銀は、例えばアルミニウムなどよりも金と強く接合することから、中間層と電極パッドとの間の電気的な接続が好適に確保されるようにもなる。
【0026】
この半導体装置の製造方法は、前記撥液層として前記撥液材料の単分子膜を用いることを要旨とする。
このような方法によれば、半導体装置において撥液層は、中間層以外の部分には所望の撥液性を発揮する単分子膜として形成され、凸凹を有する中間層の上には単分子膜として単分子の配置となるがゆえに、その配置にむらを生ずるとともに満遍なくその間から金属微粒子が覗く(はみ出る)ようになる。これにより、中間層は、単分子膜を挟みつつその金属微粒子が配線の金属微粒子に好適に接触して、乾燥焼成を通じてより強力な融着力により結合されるようになる。これにより、電極パッドと配線との電気的接続の安定性がより向上されるようになる。
【0027】
この半導体装置の製造方法は、前記中間層として前記導電性インクの液滴を前記電極パッドに配置してから焼成したものを用いることを要旨とする。
このような方法によれば、インクジェット法にて導電性インクの液滴が電極パッドに配置されることにより中間層が形成されるようになり、インクジェット法にて形成された中間層の表面には微粒子の大きさに応じた凸凹(粗さ)が容易に形成されるようになる。また、前記電極パッドが金メッキされているような場合、前記中間層を形成する前に電極パッドに形成された酸化膜などの導通の阻害要因となる膜などを除去する必要もない。
【0028】
この半導体装置の製造方法は、前記撥液材料としてフッ素系の材料を用いることを要旨とする。
このような方法によれば、撥液材料には分散媒への高い撥液性が与えられるようになるので、インクジェット法にて配置された液滴の濡れ広がりが抑制されるようになり、同法
によって半導体装置に微細な配線が描画できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる半導体装置の一実施形態を示す図であって、(a)は上側から見た平面図、(b)は1b−1b線に沿った部分断面図。
【図2】本発明にかかる半導体装置の一実施形態を示す図であって、図1(b)の一部を拡大して示す部分断面図。
【図3】半導体装置に配線を形成する場合の工程を示すフローチャート。
【図4】(a)〜(e)は各工程における製造状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の半導体装置を具体化した一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。図1は半導体装置10を示す図であって、(a)は上側から見た平面構造を示す図であり、(b)は(a)に示す1b−1b線に沿った部分の断面構造を示す図である。図2は、図1(b)に示す1b−1b線に沿った断面構造の一部を拡大して示す図である。
【0031】
図1(a),(b)に示すように、半導体装置10に具備された実装基板11は、その厚さ方向である上下方向から見て矩形状をなす多層基板であり、その最上層には絶縁性を有する絶縁基板(図示略)が積層されている。その絶縁基板の上面、すなわち実装基板11の上面である実装面11aには、上方から見て矩形状をなす接続端子としての第1電極パッド13が実装面11aの四辺に沿って配列されている。
【0032】
絶縁基板(実装基板11の最上層)の構成材料としては、可撓性あるいは非可撓性の各種絶縁材料を用いることができる。可撓性を有する具体的な材料としては、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂を用いることが可能である。また非不可撓性を有する具体的な材料としては、低温焼結基材であるガラスセラミックの他、高温焼結基材や誘電体材料などを用いることが可能である。
【0033】
なお、上述する実装基板11は、上記第1電極パッド13の他、その実装面11aに各種配線を有する構成であってもよい。さらに、上述する実装基板11は、各種配線がプリントされた複数の回路基板を下層に有する多層基板であってもよく、上記実装面11aに第1電極パッド13が形成されているものであればよい。さらにまた、実装基板11の第1電極パッド13は、実装面11aの四辺に沿って配列されているが、例えば実装面11aの1辺にだけ形成される構成でもよい。
【0034】
実装面11aには、上記複数の第1電極パッド13に取り囲まれるように、半導体部品としての半導体チップ14が図示しない接着層を介して接合されている。この半導体チップ14は、上方から見て矩形状をなす板状に形成されている。半導体チップ14の上面であるパッド形成面14aには、上方から見て矩形状をなす複数の接続端子としての第2電極パッド15が、実装基板11の各第1電極パッド13に対応するかたちで、半導体チップ14の四辺に沿って配列されている。
【0035】
図2に示すように、第2電極パッド15は、その本体部20が導電性を有する金属であるアルミニウムにより形成され、その上面には金メッキが施されることにより同金メッキからなるメッキ層21が形成されている。このメッキ層21は、本体部20の上面に形成されるアルミニウムの酸化膜などが除去された状態にて、無電解メッキや電解メッキなどの金メッキが施されることにより、本体部20に沿った均一な状態に形成されている。これにより第2電極パッド15は、その上面に酸化され難いメッキ層21が形成され、その
後の工程においてそこにインクジェット法により形成される配線との電気的な接続がそこに形成される酸化膜などにより阻害されることなく確実なものとされるようにしている。
【0036】
なお、上述する半導体部品は、半導体チップ14等の能動部品に限らず、抵抗器やコンデンサなどに代表されるような受動部品であってもよく、パッド形成面14aに第2電極パッド15が形成されて、そのパッド形成面14aの反対側面を実装面11aに向けた実装、いわゆるフェイスアップ方式の実装が可能なものであればよい。さらに、半導体チップ14の第2電極パッド15は、パッド形成面14aの四辺に沿って配列されているが、実装基板11の第1電極パッド13と同様に、例えばパッド形成面14aの1辺にだけ第2電極パッド15が形成される構成や第2電極パッド15が1つだけ形成される構成であってもよい。
【0037】
第2電極パッド15は、そのメッキ層21上に中間層23Dが積層されている。中間層23Dは、吐出配置された導電性インクの液滴が乾燥され、焼成されることによりその導電性インクに含まれる金属微粒子が焼結されて形成される、いわゆるインクジェット法により形成される金属微粒子の結合層である。なお本実施形態では、導電性インクは銀ナノペーストからなり、この銀ナノペーストは、直径1nm〜数十nmの粒径を有する、特に1〜5ナノメートルの金属微粒子としての銀微粒子の外周を分散剤でコーティングして分散媒(本実施形態では、水)で希釈したコロイド状のインクである。すなわち銀ナノペーストでは、銀微粒子の外周を分散剤でコーティングすることにより、銀微粒子同士が凝集して結合することを防止させて、その分散媒に分散されるようにしている。
【0038】
なお、金属微粒子としては、銀の他、金や銅、あるいはこれらの混合物や合金を用いることができる。またこれらの金属微粒子の分散剤(コーティング剤)としては、アミン、アルコール、チオールなどが知られている。より具体的には、金属微粒子のコーティング剤として、2−メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、ジエチルメチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミンなどのアミン化合物、アルキルアミン類、エチレンジアミン、アルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、アルキルチオール類、エタンジチオールを用いることができる。
【0039】
また、上記分散媒としては、金属微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法(インクジェット法)への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0040】
一方、銀ナノペーストは焼成されると銀微粒子をコーティングしていた分散剤や分散させている分散媒が蒸発や分解され、銀微粒子同士が直に接触するようになりそれら銀微粒子が相互に融着し所定の融着力により結合されるようになる。すなわち中間層23Dは、銀ナノペーストが焼成されることにより複数の銀微粒子が焼結されることにより形成され
る。なおこのとき、中間層23Dは銀微粒子の焼結により形成されているため、その上面には銀微粒子の外形が少なからず残るかたちとなり、銀微粒子の大きさに基づく凸凹(粗さ)が形成されるようになる。また中間層23Dは、それを構成する銀と相性のよい(相溶性が高い)金を主成分とするメッキ層21にも物理的及び化学的な接合が好適になされるものであり、同メッキ層21を介して第2電極パッド15への電気的な接続も好適に確保される。
【0041】
また、パッド形成面14aには、第2電極パッド15を露出させるかたちで絶縁層16が形成されている。絶縁層16は、無機絶縁材料や有機絶縁材料からなる薄膜であって、無機絶縁材料としては、SiOやSiNなどを用いることが可能であり、有機絶縁材料としては、ポリイミド樹脂などを用いることが可能である。なお絶縁層16は、前記無機絶縁材料や前記有機絶縁材料からなる絶縁材料を含む絶縁性インクを用いるインクジェット法により形成されている。絶縁層16には、その上面に撥液層24が積層されている。
【0042】
撥液層24は、高い精度による形成が必要とされないため、撥液材料を含むコーティング剤が絶縁層16、メッキ層21及び中間層23Dを含むパッド形成面14a上の全体に広げられるかたちで、例えばディスペンサ法により形成されている。撥液層24は、撥液材料を構成する分子が均一に配列された薄く均一な厚みを有する単分子膜となるように形成されている。なお本実施形態では、撥液材料としては、後に述べる導電性インクの分散媒に対して撥液性を発現するフッ素系樹脂などを用いることができる。
【0043】
詳述すると撥液材料は、絶縁層16、メッキ層21及び中間層23D上に有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成するようになっている。有機分子膜は、絶縁層16などの表面に結合可能な官能基を有し、該有機分子膜の下地表面に結合した官能基とは反対側となる他端側に撥液性を発現する官能基を有すると共に、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖を備えており、絶縁層16などに結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0044】
つまり自己組織化膜とは、絶縁層16など下地層等構成原子と化学的に結合可能な結合性官能基を有した直鎖状の基本骨格からなる分子であり、該直鎖分子間の相互作用により極めて高い配向性を発現する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。即ち、膜の表面に同じ撥液性の官能基が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性等を付与することができる。
【0045】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いた場合には、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
【0046】
自己組織化膜を形成する化合物としては、例えば、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下、「FAS」と表記する)を挙げることができる。使用に際しては、一つの化合物を単独で用いるのも好ましいが、2種以上の化合物を組合せて使用してもよい。
【0047】
これにより、パッド形成面14aには極めて薄くかつ、適切な撥液性を発現する撥液層
24が形成される。ところで、撥液層24は単分子膜であるがゆえに下地が均一な絶縁層16にはその上面を好適に覆う膜が形成されるものの、下地が凸凹している(粗い)中間層23D上面においては他の下地である絶縁層16やメッキ層21と比較して撥液材料が下地の表面に対して均一に配置され難く、その配置にむらを生じて中間層23Dの銀微粒子が撥液層24の厚さ方向を通して覗く(はみ出る)ようなかたちに形成される。例えば凸曲面となる下地表面においては、撥液層24を構成する自己組織化膜が同凸曲面の法線方向に延びる直鎖状の分子からなるために、自己組織化膜の表面となる撥液基の間隔が自ずと広くなる。また凹曲面となる下地表面においても、撥液層24を構成する自己組織化膜が同凸曲面の法線方向に延びる直鎖状の分子からなるために、直鎖状の分子の相互作用が平坦面と比較して強くなり、直鎖状の分子そのものが下地表面に緻密に配置され難くなる。これらのことにより、中間層23D上における撥液層24は所望の配線の形成が可能な範囲ではあるが、他の下地である絶縁層16やメッキ層21上における撥液層24と比較して導電性インクの液滴に対する撥液性が弱いものとなっている。
【0048】
上述する実装面11aとパッド形成面14aとの間には、半導体チップ14の厚さに相当する段差が形成されている。半導体チップ14の外周には、実装面11aとパッド形成面14aとをつなぐ連続面を有して該連続面が前記段差を緩和するかたちをなす傾斜部であるスロープ17が形成されている。このスロープ17は、各第1電極パッド13の一部と絶縁層16の一部とを覆うように形成されている。このスロープ17は絶縁材料から形成されており、絶縁材料としては、エポキシ系の熱硬化性樹脂やアクリル系の光硬化性樹脂、あるいはこれらを混合させたものを用いることができる。
【0049】
このスロープ17の表面には、第1電極パッド13と第2電極パッド15とを電気的に接続する配線としての金属配線膜19が形成されている。金属配線膜19は、金属微粒子の分散系からなる導電性インクを用いたインクジェット法によって形成される。本実施形態では、金属配線膜19を形成する際に用いられる導電性インクとして、中間層23Dを形成する際に用いられる前述の銀ナノペーストを用いている。すなわち本実施形態では、中間層23Dと金属配線膜19とが同一種の金属の組み合わせである。なお、この金属配線膜19を形成する際に用いられる導電性インクは、中間層23Dと同様に、金属微粒子としては、銀の他、金や銅、あるいはこれらの合金を用いることができる。またこれらの金属微粒子の分散剤及び分散媒も、前述した分散剤及び分散媒を用いることができる。
【0050】
ところで本実施形態では、図2に示すように、第2電極パッド15のメッキ層21には中間層23Dが形成され、その中間層23Dの上には撥液層24が形成されている。しかし、上述のように中間層23D上の撥液層24はその厚みが薄い個所を有するとともに中間層23Dの銀粒子が覗く(はみ出る)かたちとなっており、中間層23D上に形成される金属配線膜19はそれらはみ出た銀粒子を通じて中間層23Dと直接接触するようになる。このことにより金属配線膜19の銀微粒子と中間層23Dの銀微粒子とが直接接触して物理的及び化学的に接合するとともに、乾燥焼成を通じてそれら銀微粒子同士が融着して所定の融着力により結合するようになる。このような乾燥焼成の過程において、撥液層24を形成する撥液材料はその薄い部分などが中間層23Dと金属配線膜19との間で適宜移動や分散されて中間層23Dと金属配線膜19との銀微粒子が結合する領域においてそれらの結合を妨げないように適宜配置されるようにもなる。
【0051】
これにより、金属配線膜19は、中間層23Dを介して第2電極パッド15のメッキ層21に接続され、すなわち第2電極パッド15(本体部20)への電気的な接続が確保されるようになる。
【0052】
ちなみに、第1電極パッド13と第2電極パッド15とを例えばワイヤボンディングを用いて接続した場合には、実装基板11及び半導体チップ14が高温に加熱されたり、大
きな機械的なストレスが局所的に加わったりする。そのため、ワイヤボンディングを用いた場合には、実装基板11や半導体チップ14に耐熱性や機械的なストレスへの耐久性が高い水準で要求される。しかし、本実施形態のように液滴吐出法を用いて金属配線膜19を形成すれば、上述したような実装基板11や半導体チップ14への要求を軽減することができ、これらの材質選定における自由度を拡大することもできる。
【0053】
次に、このような半導体装置10を製造する方法について説明する。図3は半導体装置において配線を形成するための工程を示すフローチャートであり、図4は図3に示される各工程における半導体装置の断面構造を示す図である。
【0054】
図3に示すように、配線を形成する工程は、第2電極パッド15にメッキ層21を形成するメッキ工程(ステップS11)と、メッキ層21に銀微粒子を含む液滴を配置するペースト塗布工程(ステップS12)と、同液滴を焼成して銀微粒子の中間層23Dを形成する仮焼成工程(ステップS13)とを有している。また、配線を形成する工程は、前記中間層23D上に撥液層24を形成するコーティング工程(ステップS14)と、撥液層24に金属配線膜19を構成する銀微粒子を含む液滴を配置する配線描画工程(ステップS15)と、同液滴を焼成して金属配線膜19を形成する本焼成工程(ステップS16)とを有している。
【0055】
メッキ工程では、図4(a)に示すように、アルミニウムからなる第2電極パッド15の本体部20は、その上面に形成されている酸化膜の除去された状態にされてから、無電解メッキや電解メッキなどによる金メッキが施されてメッキ層21が形成される。
【0056】
なおこの工程は、第2電極パッド15と後の工程で形成される配線との電気的な接続が第2電極パッドに形成された酸化膜などにより阻害されることを防ぐために、第2電極パッド15にその酸化が抑制されるメッキ層21を形成するものであるから、後工程との時間的な連続性は要求されない。すなわち、メッキ工程とこの後の工程の間に、他の作業工程が含まれてもよい。
【0057】
ペースト塗布工程では、図4(b)に示すように、第2電極パッド15のメッキ層21の上にインクジェット法にて配置される銀ナノペーストからなる液滴により液層23Lが形成される。
【0058】
仮焼成工程では、図4(c)に示すように、ペースト塗布工程で形成された液層23Lを180度〜230度の温度で約1時間焼成する。これにより銀微粒子をコーティングしている分散剤や分散させている分散媒が蒸発や分解などされて銀微粒子が相互に直接接触して凝集し結合するようになることにより主に銀微粒子からなる中間層23Dが形成される。すなわち、銀ナノペーストが焼成されることにより、銀微粒子が凝集し所定の融着力にて結合され固定化されるとともに導電性も確保された銀微粒子からなる中間層23Dが形成される。なお固定化された中間層23Dの表面には銀微粒子の大きさに基づく凸凹(粗さ)が生じる。
【0059】
また、中間層23Dは、その銀微粒子がそれと相性のよい金属である金からなるメッキ層21と結合することにより第2電極パッド15と所定の接合力により接合されるとともに電気的な接続が好適に確保される。すなわち、第2電極パッド15のメッキ層21に、第2電極パッド15との電気的な接続が確保された中間層23Dが積層形成される。
【0060】
コーティング工程では、これも図4(c)に示されるように、半導体チップ14のパッド形成面14aの上方、すなわち絶縁層16及び第2電極パッド15のメッキ層21及び中間層23Dの上面にディスペンサ法により所定量の撥液性インクの液滴が滴下され、広
げられ乾燥されて撥液層24が形成される。
【0061】
配線描画工程では、図4(d)に示すように、撥液層24の上に中間層23Dの上方を含むかたちでインクジェット法により銀ナノペーストからなる液滴が配置されて、銀ナノペーストからなる液層25Lが形成される。なおこの液層25Lは、以下の工程で金属配線膜19として形成されることから、金属配線膜19と同じパターンとなるように撥液層24上や中間層23D上に配置される。
【0062】
本焼成工程では、図4(e)に示すように、配線描画工程で形成された液層25Lを180度〜230度の温度で約1時間焼成することにより銀微粒子からなる配線層25Dが形成される。これにより銀微粒子が所定の融着力による結合により固定化されるとともに導電性も確保された銀微粒子からなる配線層25D(金属配線膜19)が形成される。
【0063】
また、配線層25Dは撥液層24の所々から銀微粒子を覗かせる(はみ出させる)中間層23Dともそれらを構成する銀微粒子同士が凝集して所定の融着力により結合されるようにもなる。このとき配線層25Dと中間層23Dとの間に配置された撥液層24を構成する撥液材料は、配線層25Dと中間層23Dとを構成する銀微粒子の間に適宜に分散配置される。これにより、配線層25Dと中間層23Dは、その間に撥液層24が挟まれた場合であれ、所定の融着力により結合するとともに電気的な接続が確保される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置10によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)下地が平面的に均一であるような場合、撥液層24は下地に沿って均一かつ安定して形成されるために、その上に形成される金属配線膜19は下地としての第2電極パッド15との間の導通が撥液層24により阻害されるおそれがある。
【0065】
そこで、第2電極パッド15に銀微粒子の結合された中間層23Dが形成され、その中間層23Dの上に撥液層24を挟んで配置した液滴(液層25L)を焼成して銀微粒子からなる金属配線膜19を形成した。これにより中間層23Dの表面には、銀微粒子の結合により微粒子の大きさに応じた凸凹(粗さ)が生じ、それを覆うかたちに形成される撥液層24に平面的に濃淡を生じさせるようになり、その際間から銀粒子が覗く(はみ出る)ようにもなる。これにより、撥液層24を挟んで、中間層23Dの上に金属配線膜19の銀微粒子が配置される場合、撥液層24の間から覗く(はみ出る)中間層23Dの銀微粒子と金属配線膜19の銀微粒子が相互に接触するようになり、中間層23Dと金属配線膜19との物理的な接続が確保されるようにもなる。そして電気的な接続も確保されるようになる。
【0066】
(2)さらに、中間層23Dも金属配線膜19もそれら同一金属である銀微粒子から構成したことから凝集により強力に結合されるようになり、異種類の金属同士の接合や結合に比べて、容易に強力な融着力が得られるようにもなる。その結果、撥液層24を挟みながらも中間層23Dと金属配線膜19との接続が強固になされるようになり電気的な接続もより安定的になる。
【0067】
(3)第2電極パッド15の表面がメッキ層21の金に覆われるようにしたので、第2電極パッド15の表面が酸化され難くなり、その表面上に形成される中間層23Dと第2電極パッド15の本体部20との導通が好適に確保されるようになる。例えば、インクジェット法による中間層23Dの形成によれば、第2電極パッド15に酸化膜が形成されているような場合、その酸化膜を除去してから導電性インクからなる液滴(液層23L)を配置することが好ましいが、酸化膜が形成されないことからインクジェット法による中間層23Dの形成が容易に行なわれるようにもなる。
【0068】
(4)また、銀は、例えばアルミニウムなどよりも金と強く接合することから、中間層23Dが金のメッキ層21を介して第2電極パッド15との電気的な接続が好適に確保されるようにもなる。
【0069】
(5)半導体装置10において撥液層24は、中間層23D以外の部分には所望の撥液性を発揮する単分子膜として形成され、凸凹を有する中間層23Dの上には単分子膜として単分子の配置となるがゆえに、その配置にむらを生ずるとともに満遍なくその間から銀粒子が覗く(はみ出る)かたちになるようにした。これにより、中間層23Dは、単分子膜を挟みつつその銀微粒子が金属配線膜19の銀微粒子に好適に接触して、乾燥焼成を通じてより強力な融着力により結合されるようになる。これにより、第2電極パッド15と金属配線膜19との電気的接続の安定性がより向上されるようになる。
【0070】
(6)撥液材料には分散媒への高い撥液性が与えられるようにしたので、インクジェット法にて配置された液滴(液層25L)の濡れ広がりが抑制されるようになり、同法によって半導体装置10に微細な配線が描画できるようになる。
【0071】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、金属配線膜19が中間層23Dを介して接続される電極は、半導体チップ14の外部回路との接続用の電極である第2電極パッド15であった。しかしこれに限らず、電極パッドは半導体装置に設けられるパッド状の電極であれば、例えば実装基板等の基板に形成された電極パッドであってもよい。具体的には、金属配線膜19が中間層23Dを介して接続される電極は、第1電極パッド13でもよい。これにより半導体装置において金メッキされた電極パッドへ接続される配線であればこのような配線の形成方法を用いることにより半導体装置への適用の自由度が高められる。
【0072】
・上記実施形態では、メッキ層21は金メッキにより形成されたが、メッキ層はインクジェット法により形成される中間層との電気的な接続が確保されるとともに銀微粒子と好適に接合するものであれば金メッキではなく、例えば、酸化されづらい金属や酸化されても導電性を有する金属により形成されてもよい。酸化されづらい金属としては、金、銀、白金、などの貴金属が挙げられる。酸化されても導電性を有する金属としては、ロジウムなどが挙げられる。これにより、メッキ層の選択自由度が向上するようになる。
【0073】
・上記実施形態では、第2電極パッド15には、無電解メッキや電解メッキによる金メッキが施されたが、これに限らず、第2電極パッドへ施される金メッキは、インクジェット法などにより施されてもよい。例えば、インクジェット法による場合、酸化膜などの除去された第2電極パッドに不活性ガス下において金を含む導電性微粒子の液滴を配置するようにしてもよい。これにより、このような配線の形成方法の自由度が高められる。
【0074】
・上記実施形態では、第2電極パッド15はその上面にメッキ層21を有した。しかしこれに限らず、電極パッドはその上面にインクジェット法により形成される配線との電気的な接続が好適に確保される場合、例えば電極パッドの本体部が上に述べた酸化されづらい金属や酸化されても導電性を有する金属などにより形成されている場合にはメッキ層が無くてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、第2電極パッド15の本体部20はアルミニウムであったが、これに限らず、本体部は電極パッドとして機能するものであれば、銅などその他の金属により構成されていてもよい。これにより、このような配線の形成方法が適用される半導体装置の選択の自由度が高められる。
【0076】
なお、アルミニウムに金メッキを行う場合には、アルミニウムにパラジウムの層を形成してから金メッキを行うと、金メッキが好適に行なわれることが知られており、アルミニウムにパラジウム層を形成してから金メッキを行ってもよい。
【0077】
・上記実施形態では、撥液層24は撥液材料を含むコーティング剤が絶縁層16及びメッキ層21を含むパッド形成面14a上の全体に広げられるかたちで例えばディスペンサ法により形成された。しかしこれに限らず、パッド形成面14a上の全体に撥液層が形成されるのであれば、スピンコータ法、インクジェット法や浸積などその他の形成方法により形成されてもよい。これにより、撥液層の形成方法の自由度が広げられこのような半導体装置の形成方法の用途が広げられる。
【0078】
・上記実施形態では、撥液層24は液滴、すなわち液相から形成された。しかしこれに限らず、撥液層は、気相からも形成されてもよい。
・また撥液層は、常圧でプラズマ照射により形成されてもよい。プラズマ処理に用いるガス種は、基板の表面材質等を考慮して種々選択できる。例えば、4フッ化メタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロデカン等のフルオロカーボン系ガスを処理ガスとして使用できる。この場合、撥液層として撥液性のフッ化重合膜を形成することができる。
【0079】
・さらに撥液層は、所望の撥液性を有するフィルム、例えば4フッ化エチレン加工されたポリイミドフィルム等を貼着することによって形成されてもよい。
・上記実施形態では、撥液層24は絶縁層16及びメッキ層21を含むパッド形成面14a上の全体に形成された。しかしこれに限らず、パッド形成面14a上の必要な個所にのみ形成するようにしてもよい。これにより、撥液層の形成方法の態様についての自由度が高められる。
【0080】
・上記実施形態では、液層23Lや液層25Lを構成する銀ナノペーストは180度〜230度の温度で約1時間焼成されることにより銀微粒子からなる中間層23Dや配線層25Dが形成された。しかしこれに限らず、銀ナノペーストが焼成される時間や温度は、銀微粒子が所定の融着力により結合して固定化されるものであればよく、銀ナノペーストに用いられている銀微粒子の粒径や、分散剤、分散媒などの諸条件に基づいて適宜変更してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、金属微粒子として銀を用いて中間層23D及び金属配線膜19を形成することで、これら中間層23D及び金属配線膜19を同一種の金属の組み合わせとした。これに限らず、中間層23D及び金属配線膜19は、例えば中間層23Dを金属微粒子として銀を用いて形成するとともに金属配線膜19を金属微粒子として銅を用いて形成するような、異種金属の組み合わせであってもよく、さらには同一種の合金からなる組み合わせや異種の合金からなる組み合わせであってもよい。こうした構成であっても、導電性インクの乾燥焼成を通じて、中間層23D及び金属配線膜19を構成する金属を凝集させて結合させることができ、中間層23Dが設けられていない構成に比べて、第2電極パッド15と金属配線膜19との接続がより強固になされるようになり電気的な接続もより安定的になる。
【符号の説明】
【0082】
10…半導体装置、11…実装基板、11a…実装面、13…第1電極パッド、14…半導体チップ、14a…パッド形成面、15…第2電極パッド、16…絶縁層、17…スロープ、19…金属配線膜、20…本体部、21…メッキ層、23D…中間層、23L…液層、24…撥液層、25D…配線層、25L…液層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の電極パッドに電気的に接続される配線が、金属微粒子を分散媒に分散させた導電性インクからなる液滴の配置及び乾燥により形成される半導体装置であって、
前記電極パッドの表面に金属微粒子の結合層からなる中間層と、
前記分散媒を撥液する撥液材料を含んで前記中間層を覆うかたちに積層された撥液層とを備え、
前記配線は、前記撥液層及び前記中間層を介して電極パッドに物理的に接続されてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記中間層と前記配線とが同一種の金属の組み合わせである
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電極パッドはその表面が金によりメッキされており、前記中間層は、この金によりメッキされた電極パッドの表面に形成されたものである
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記撥液層は、前記撥液材料の単分子膜からなる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記撥液材料は、フッ素系の材料からなる
請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電極パッドは、外部回路との接続端子として半導体部品の能動面にパッド状に設けられた電極である
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
金属微粒子を分散媒に分散させた導電性インクからなる液滴を配置して乾燥させることにより半導体装置の電極パッドに電気的に接続される配線を形成する半導体装置の製造方法であって、
前記電極パッドの表面に金属微粒子の結合層からなる中間層を形成した後、前記分散媒を撥液する撥液材料を含む撥液層を前記中間層を覆うかたちで積層し、これら積層した撥液層及び中間層を介して前記配線を前記電極パッド上に形成するようにした
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記中間層を構成する金属と前記配線を構成する金属とが同一種の組み合わせである
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記電極パッドとしてその表面が金によりメッキされたものを用い、前記中間層をこの金メッキされた電極パッドの表面に形成する
請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記撥液層として前記撥液材料の単分子膜を用いる
請求項7〜9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記中間層として前記導電性インクの液滴を前記電極パッドに配置してから焼成したものを用いる
請求項7〜10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記撥液材料としてフッ素系の材料を用いる
請求項7〜11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−141293(P2010−141293A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220797(P2009−220797)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】