説明

半導体装置

【課題】機能素子からの放熱性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】機能素子140と、表面の一部の搭載領域130に機能素子が搭載された金属基板(熱伝導性基板)101と、金属基板の表面の搭載領域を除く配線層領域125に形成された単層または多層の配線層110とを有することを特徴とする半導体装置100であって、金属基板と反対側の機能素子表面は、配線層の金属基板と反対側の表面よりも低い。金属基板は、金属材料から構成されることを特徴とし、機能素子は、金属基板の表面に接合された複数の半導体素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性基板の表面に機能素子と配線層と形成した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、実装する電子部品で発生する熱の放熱性を高めた配線基板に関する技術が利用されている。このような技術として、例えば、特許文献1には、配線基板上の電子部品が実装される領域に放熱用パターンを基板の実装表面側と裏側で位置を合わせて形成し、両側の放熱用パターンをビアホールで接続した構造とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−54883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリコン集積回路技術として周知のビアホール技術も放熱効果を高めるための技術である。すなわち、ビアホール技術は、シリコン基板の表面に形成された集積回路パターンに対してシリコン基板の裏面側からビアホールを形成し、シリコン基板よりも熱伝導率の大きな金属等によりビアホールを埋め込む技術である。したがって、このビアホール技術は、シリコン基板の熱伝導率が小さいことに起因する改良方法の一つである。しかしながら、ビアホール技術は、断面積が小さいので放熱効果が小さい問題点がある。
【0005】
また、多層配線間を貫通させるビアホールのサイズが機能素子の微細化および高集積化に伴ってダウンサイズすることができないために、その相対的な占有面積率が高くなってしまう。このような放熱用パターンを設ける構成では、電子部品(機能素子)を高密度に実装し集積化する場合などでは、配線基板上の限られた領域に放熱用パターンやビアホールを高密度に形成することが困難であった。さらに、放熱用パターンやビアホールを数多く高密度に形成することは、占有面積の増加等による基板コストの増加にもなっていた。
【0006】
本発明の目的は、機能素子からの放熱性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の半導体装置は、機能素子と、表面の一部の搭載領域に前記機能素子が搭載された熱伝導性基板(例えば、金属基板、ダイヤモンド基板)と、前記熱伝導性基板の表面の前記搭載領域を除く配線層領域に形成された単層または多層の配線層とを有することを特徴とする。
【0008】
そして、前記熱伝導性基板と反対側の機能素子表面は、前記配線層の前記熱伝導性基板と反対側表面よりも低いことを好適とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機能素子からの放熱性の高い半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、第1の実施形態の半導体装置を説明するための斜視図である。(b)は、第1の実施形態の半導体装置を説明するための断面図である。
【図2】(a)は、第1の実施形態の半導体装置における放熱効果を説明するための断面図である。(b)は、第1の実施形態の半導体装置における放熱効果を説明するための断面図である。
【図3】第1の実施形態の半導体装置の変形例1を説明するための断面図である。
【図4】(a)は、第1の実施形態の半導体装置の変形例2を説明するための断面図である。(b)は、第1の実施形態の半導体装置の変形例2における放熱効果を説明するための断面図である。
【図5】第1の実施形態の半導体装置の変形例3を説明するための断面図である。
【図6】第2の実施形態の半導体装置を説明するための断面図である。
【図7】(a)は、第3の実施形態の半導体装置を説明するための平面図である。(b)は、第3の実施形態の半導体装置を説明するための断面図である。
【図8】第3の実施形態の半導体装置を説明するための平面図である。
【図9】第3の実施形態の変形例の半導体装置を説明するための平面図である。
【図10】第3の実施形態の変形例の半導体装置を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図1乃至図10を参照して説明する。なお、各図で同じ構成要素には同一の符号を付している。以下、図面を参照して順次本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態およびその変形例を、図1乃至図5を参照して説明する。
【0013】
(構成)
第1の実施形態の半導体装置の構成を、図1(a)および図1(b)を参照して説明する。図1(a)は、本実施形態の半導体装置100を模式的に示した斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)の半導体装置100のA−A線に沿って切断した半導体装置100aの断面を示す断面図である。
【0014】
半導体装置100、100aは、図1(a)および図1(b)に示すように、金属材料で構成される金属基板101と、金属基板101の表面の一部の基板表面露出領域(搭載領域)130に搭載された機能素子140と、金属基板101の表面の基板表面露出領域(搭載領域)130を除く配線層領域125に形成された配線層110と、金属基板101の裏面に設けられた高熱伝導率を有する無機材料で構成される高熱伝導無機絶縁膜120(120a)とを備えて構成される。
【0015】
金属基板101は、Cu、Al、のうち少なくとも一つの元素を含む材料が好適である。あるいは、金属基板101および高熱伝導無機絶縁膜120(120a)をダイヤモンドからなる構成とすることで高熱伝導基板とすることもできる。
【0016】
また、配線層110は、単層または多層の配線層と層間絶縁層とで構成される。図1(b)では、配線層110は、2層構成の配線層と3層構成の層間絶縁層とを備えて構成される。図1(b)において、配線層110は、金属基板101の表面から順に、第1の層間絶縁層111a、第1の配線層112a、第2の層間絶縁層111b、第2の配線層112b、第3の層間絶縁層111c、および、外部との接続用の接続パッド115、116を備えて構成される。第1の配線層112aと第2の配線層112bとの接続、および、第2の配線層112bと接続パッド115、116との接続は、それぞれ、第2の層間絶縁層111bおよび第3の層間絶縁層111cに開口されたスルーホールを経由して接続されている。
【0017】
第1の層間絶縁層111a乃至第3の層間絶縁層111cは、例えば、エポキシ系有機材料による構成とすることができる。また、第1の配線層112a、第2の配線層112bおよび接続パッド115、116は、例えば、Ag、Au、Cuの材料を少なくとも一つ含む金属材料による構成とすることができる。
【0018】
そして、金属基板101の裏面側に設けた高熱伝導無機絶縁膜120aは、熱伝導率が高いことが望ましく、構成材料として、ダイヤモンドライクカーボン (Diamond-Like Carbon:DLC)、AlN、Al23、およびSiNのうちのいずれかの絶縁膜またはこれらの積層された絶縁膜であることが好適である。
【0019】
そして、基板表面露出領域130は、その底面の表面は露出された金属基板101の表面であり、配線層110と金属基板101とで形成された領域は、多層構造の配線層110の断面を有する矩形凹部領域となっている。
【0020】
機能素子140は、この基板表面露出領域130内の金属基板101の表面に搭載され、配線層110と接続配線によって接続されている。
【0021】
(動作)
本実施形態は、この基板表面露出領域(搭載領域)130である矩形凹部領域内に搭載された機能素子140の表面が配線層110の表面よりも低くなった構造となっていることを特徴とする。
【0022】
このような構成とすることで、半導体装置100(100a)における放熱効果を説明する。本実施形態の半導体装置100(100a)における熱移動の伝熱形態は、図2(a)および図2(b)に示すように、双方向矢印B、C、および、Dで示した3つの伝熱形態(パス)が存在する。
【0023】
まず、図2(a)に示すように、双方向矢印Bで示した伝熱形態(以後、熱流束Bと記載する。)としては、外部から金属基板101の表面に搭載された機能素子140の表面と、機能素子140の裏面と、金属基板101内と、そして、配線層110の裏面と配線層110の表面との間で熱伝導する熱流束Bが存在する。また、機能素子140の表面が配線層110の表面よりも低くなった構造であることにより、基板表面露出領域130の配線層110の側面の外部の空気と、配線層110の側面と配線層110の内部との間で熱伝導する熱流束Cが存在する。
【0024】
したがって、機能素子140が熱源となる場合には、熱流束B、Cの方向が機能素子140を始点とした方向の熱流束となり、機能素子140を熱源とする半導体装置100aで発生する熱が半導体装置100aの表面から外部の空気へ放熱され放熱性が高くなる。
【0025】
さらに、図2(b)に示すように、金属基板101の裏面を高熱伝導無機絶縁膜120aで被覆する形態とすることで、背景技術の形態のように、ビアホールによって表側と裏側に設けた金属層を接続して熱伝導性を高める必要がなくなる。
【0026】
すなわち、機能素子140または配線層110と金属基板101と高熱伝導無機絶縁膜120aと高熱伝導無機絶縁膜120aから外部との間での熱流束Dの方向は、機能素子140の裏面から金属基板101、そして高熱伝導無機絶縁膜120aを経由して外部への方向となる。
【0027】
したがって、機能素子140が熱源となる場合の発生熱は、金属基板101の裏面方向から外部の空気へ熱伝達されやすくなる。すなわち、機能素子140で発生した熱は、金属基板101の裏面を経由して半導体装置100aの裏面から外部の空気へ熱伝達される。
【0028】
また、高熱伝導無機絶縁膜120aを設けることにより金属基板101の裏面を保護することもできる。
【0029】
(効果)
本発明の第1の実施形態では、基板表面露出領域(搭載領域)130である矩形凹部領域内に搭載された機能素子140の表面が配線層110の表面よりも低くなった構造としたので、従来の形態と比較して、機能素子140を熱源とする半導体装置100aで発生する熱が半導体装置100aの表面から外部へ放熱され放熱性が高くなる。
【0030】
すなわち、機能素子140で発生する熱が金属基板101を経由して配線層110表面から外部の空気へ熱伝達される熱流束B、および、配線層110の側面から外部の空気へ熱伝達される熱流束Cを設けることができ、基板101の表面側からの放熱性が高い半導体装置100を提供できる。
【0031】
さらに、本実施形態では、金属基板101の裏面に高熱伝導無機材料絶縁膜120(120a)を設け、基板裏面を保護すると共に、機能素子140で発熱した熱が金属基板101へ伝導し、さらに高熱伝導絶縁薄膜120aを介して外部の空気へ熱伝達される。
【0032】
したがって、本実施形態によれば、シリコン集積回路の作製技術として周知のシリコン基板の表側と裏側を貫通するビアホールを設けることなく、金属基板101を用いることで、高密度で放熱性の高い半導体装置を提供することができる。
【0033】
(変形例1)
図3は、本実施形態の変形例1の半導体装置100bを示している。図3に示した通り、基板101の両側面(2側面)を高熱伝導無機材料絶縁膜120bで被覆した構造あるいは、図示しない前後面を加えて基板101の4側面を高熱伝導無機材料絶縁膜120bとすることもできる。この変形例でも、基板101の側面から高熱伝導無機材料絶縁膜120bを経由して金属基板101の側面から外部の空気への熱伝達が行われ、高い放熱性を確保することができる。
【0034】
(変形例2)
また、図4(a)および図4(b)は、本実施形態の変形例2の半導体装置100cを示している。図4(a)に示すように、基板101の内側の配線領域126の外側に基板101に配線層110bを設け、配線層110bの周囲に基板表面露出領域132を設けた金属基板101の表面に機能素子141を2つ設けた構成とすることもできる。
【0035】
この構成の場合には、図4(b)に示すように、2つの機能素子141で発生した熱の熱流束は、本実施形態で説明した3つの熱移動の伝熱形態を示す、矢印E、F、Gのような熱流束E、F、Gで金属基板101の表側と裏側の両方から熱伝達され、高い放熱性を備えた半導体装置100cを提供できる。また、配線層領域をリング状に設け、リング状の配線層の内側領域と外側領域に基板表面露出領域を設けて機能素子を搭載するなどの変形も可能である。
【0036】
(変形例3)
図5は、本実施形態の変形例3の半導体装置100dを示す断面図である。この半導体装置100dでは、本実施形態の半導体装置100aに対して、高熱伝導無機絶縁膜150を金属基板101の表面にさらに設け、この高熱伝導無機絶縁膜150の表面に機能素子140および配線層110を設けている。
【0037】
高熱伝導無機絶縁膜150の具体例としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、AlN、Al23、およびSiNのうちのいずれかの絶縁膜またはこれらが積層された絶縁膜であることが好適である。
【0038】
金属基板101の表面に、高熱伝導無機絶縁膜150を設けることによって、金属基板101の表面の露出領域を保護できるとともに、金属基板101の表面露出領域の高い熱伝達効果を確保することができる。
【0039】
また、高熱伝導無機材料薄膜150と金属基板101との間の密着性が高くなるように、高熱伝導無機絶縁膜150と基板101との間に、別の金属薄膜(図示しない)を設けることもできる。別の金属薄膜としては、例えば、Ag、Cu、Pd、Al、Ni、およびTiのうち、少なくともいずれか一つを含む金属薄膜層を設けることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
つぎに、本発明の第2の実施形態について、図6を参照して説明する。
【0041】
前記第1の実施形態は、金属基板101の裏面に高熱伝導無機絶縁膜120を設けた構成とした。本実施形態では、図6に示すように、半導体装置200aが第1の実施形態と異なり、第1の実施形態の金属基板101を金属層214とセラミックス基板212とからなる基板210とした。以下、第1の実施形態と異なる点についてのみ、第2の実施形態の半導体装置200aを説明する。
【0042】
本実施形態の半導体装置200aは、基板210がセラミックス基板212とセラミックス基板212上に設けた金属層214で構成される。金属層214の表面には、第1の実施形態と同様に機能素子140および配線層110が設けられている。
【0043】
基板210を構成するセラミックス基板212は、高熱伝導材料で構成することが望ましい。セラミックス基板212の具体例として、例えば、AlN、Al23、SiN等のセラミックス基板とすることができる。また、セラミックス基板212の表面に設けられた金属層214は、Au、Ag、Cu、Pd、Al、Ni、Ti、およびPtのうち、少なくともいずれか一つを含む金属材料層とすることができる。
【0044】
(効果)
本発明の第2の実施形態によれば、第1の実施形態および変形例で得られる効果に加えて、基板の裏面に設ける高熱伝導無機材料層(高熱伝導無機絶縁膜120)を省略することで、高熱伝導無機絶縁膜120を形成するためのプロセス工程を省略することができるので、配線基板の低コスト化が可能となる。
【0045】
(変形例)
第1の実施形態で述べた変形例2および変形例3を本実施形態についても同様に変形例として適用することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について、図7乃至図10を参照して説明する。
【0047】
図7(a)は、本発明の第3の実施形態の半導体装置300を示す平面図である。また、図7(b)は、図7(a)の半導体装置300におけるH−H線に沿って切断した断面を示す断面図である。
【0048】
本実施形態の半導体装置300は、図7(a)に示すように、前記実施形態で述べた複数の機能素子140として、発光素子アレイ310と、発光素子アレイ310を駆動する駆動回路素子としての駆動回路312とが金属基板101の表面に実装され、これら複数の機能素子の表面が配線層110の表面よりも低くなった構造とすることで高放熱性の熱伝達効果を有することを特徴としている。
【0049】
図7において、前記実施形態の構成要素と同等の構成要素には同じ符号を付している。同じ符号については説明を省略する。
【0050】
図7(a)に示すように、半導体装置300は、複数の発光領域を備えた発光素子アレイ310、発光素子アレイ310を駆動するための駆動回路312、発光素子アレイ310と駆動回路312とを接続する発光素子駆動回路間接続配線314、駆動回路312と金属基板101上の配線層110とを接続する駆動回路配線層間接続配線316、発光素子アレイ310と配線層110とを接続する発光素子アレイ配線層間接続配線318、外部から電源や駆動信号を供給するための金属基板101に設けた電源信号コネクタ350を備えて構成される。
【0051】
つぎに、図7(b)の断面図を参照して半導体装置300aを詳細に説明する。
発光素子アレイ310の構成は、AlGaAs系材料やAlGaInP系材料、あるいは、AlGaN、InGaNなどの窒化物半導体系材料を含む単結晶半導体薄膜素子の形態の発光素子のアレイとすることができる。
【0052】
発光素子アレイ310は、単結晶半導体薄膜素子の形態であり、接着剤を使用せずに基板表面露出領域130の金属基板101の表面に直接接合された形態が好適である。単結晶半導体薄膜素子の形態で金属基板101表面に直接接合することによって、主として発光素子アレイ310の発光層で発生した熱が金属基板101に効率的に熱伝達され、発光素子アレイ310の温度上昇を防止できる。
【0053】
また、駆動回路312は、発光素子アレイ310を駆動する電流や駆動する速度によって、単結晶Si、アモルファスSi、ポリSi、および、有機半導体や酸化物半導体の中から適宜選択することができる。
【0054】
そして、駆動回路312も半導体薄膜素子の形態とすることができる。したがって、駆動回路312を金属基板101の表面に接着剤を使用せずに直接接合または直接形成することが好適である。この形態とすることにより、発光素子アレイ310と同様に駆動回路312で発生した熱が金属基板101へ効率よく熱伝達される。
【0055】
また、発光素子アレイ310は配線層110と発光素子アレイ配線層間接続配線318で接続され、駆動回路312は駆動回路配線層間接続配線316で接続されている。発光素子アレイ310と駆動回路312とは発光素子駆動回路間接続配線314で接続されている。なお、これらの機能素子と接続配線との間は、層間絶縁膜315を介した接続形態とすることができる。
【0056】
これらの接続配線318、316、314は、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Pt、Niの中から選択する金属を少なくとも一つ含む金属材料からなる金属薄膜配線とすることができる。
【0057】
発光素子アレイ310および駆動回路312で発生した熱は、接続配線318、316を介して配線層110に熱伝導され、配線層110から金属基板101に熱伝導し、配線層110の側面、あるいは配線層110の上面からも外部の空気へ熱伝達される。
【0058】
また、単結晶半導体薄膜素子の形態で構成される発光素子アレイ310の厚さは、例えば、0.2μm〜3μmであることが好ましい。そして、発光素子アレイ310を金属基板101の表面に直接接合する場合には、金属基板101の表面がナノメータ・オーダの平坦性を備えていることが望ましい。
【0059】
ナノメータ・オーダの平坦性とは、ここでは金属基板101の表面の測定エリアを5μm四方(□)に設定したとき、周知のAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)を用いた平坦性の測定値として、最大−最小粗さ(RPV)が5nm以下であることを意味する。
【0060】
発光素子アレイ310の裏面と接合される金属基板101の表面の接合領域の表面粗さRPVを5nm以下(RPV≦5nm)とすることにより、直接接合が可能となる。表面粗さRPVが5nmを超える(RPV>5nm)場合には、接合困難な状態となる。半導体装置の作製工程に耐える十分強固な接合強度を得るためには、表面粗さRPVが3nm以下(RPV≦3nm)とすることが、より好適である。
【0061】
なお、機能素子140(発光素子アレイ310、または、駆動回路312)の材料と、金属基板101の材料とが、その接触部で反応性がある組み合わせである場合は、高熱伝導性薄膜(たとえば、DLC、AlN等)を間に介するものとしてもよい。この場合は、機能素子140と直接接触する高熱伝導性薄膜の表面に平坦性を備えるようにすることが望ましい。
【0062】
図8には、半導体装置300における発光素子アレイ310および駆動回路312の実装形態を拡大して示した平面図を示す。図8において、各発光素子アレイ310には発光領域320と接続用の電極パッド322、328とが設けられ、駆動回路312には、駆動回路素子(図示せず)と接続用の電極パッド324、326とが設けられている。
【0063】
本実施形態のように、発光素子アレイ310および駆動回路312を1次元的な配列として金属基板101の表面に実装した半導体装置300としては、例えば、電子写真プリンタ(光プリンタ)の書込み光源として用いるLEDプリントヘッドとすることができる。
【0064】
(効果)
本発明の第3の実施形態では、基板表面露出領域(搭載領域)130である矩形凹部領域内に搭載された機能素子140としての発光素子アレイ310および駆動回路312の表面が配線層110の表面よりも低くなった構造としたので、前記実施形態と同様に、従来の形態と比較して、発光素子アレイ310および駆動回路312を熱源とする半導体装置300で発生する熱が半導体装置300の表面から外部へ放熱され熱伝達効果を高くすることができる。
【0065】
また、金属基板101の表面に発光素子アレイ310および駆動回路312を直接接合し、配線層110と接続配線で接続した構成としたので、前記第1の実施形態、および、第2の実施形態の効果に加えて、これら発光素子アレイ310および駆動回路312で発生した熱を半導体素子の裏面側からのみでなく、表面側からも効率よく発生熱が熱伝達され、発光素子アレイ310および駆動回路312の動作に伴う半導体装置300における温度上昇を防止することができる。
【0066】
また、高放熱特性を備えた熱伝達を考慮した放熱構造とした半導体装置300とすることで、前記の従来技術と比較して、単純な構成で、高密度高集積化への対応が可能となる。
【0067】
(変形例)
本実施形態の半導体装置300は、前記第1の実施形態、第2の実施形態および変形例で説明した形態をとることができる。
【0068】
また、本実施形態においては、単結晶半導体薄膜素子を基板上に直接接合する形態を好適例として説明したが、発光素子アレイや駆動回路としてバルク基板半導体チップを使用して、例えば、導電性ペーストのような熱伝導性がある程度確保できるペースト類を使用した形態とすることもできる。
【0069】
バルク基板半導体チップを使用した場合には、基板表面露出領域130の金属基板101の表面に、当該バルク基板半導体チップを実装して各チップ間の接続配線の形態を金属薄膜配線に代えてボンディングワイヤ(例えば、Au細線)を使った接続形態とすることができる。
【0070】
(第3の実施形態の他の変形例)
図9および図10は、本実施形態の半導体装置300の別の変形例として半導体装置400を模式的に示した図である。図9は、平面図であり、図10は、図9のI−I線に沿って切断した断面を示す断面図である。
【0071】
本変形例の半導体装置400では、発光素子および駆動回路を2次元的にマトリクス配列している。
【0072】
図9および図10に示すように、半導体装置400(400a)は、第2導電型層表面420および第1導電型層表面422を有する複数の発光素子410とx方向の駆動回路462およびy方向の駆動回路464とが基板表面露出領域(搭載領域)130内の金属基板101上に高熱伝導無機絶縁膜150を介して配設されている。
【0073】
そして、各機能素子間と配線層110とは、それぞれ、第1導電側接続配線413および第2導電側接続配線414、x方向配線415およびy方向配線416、そして、x方向駆動回路配線層間接続配線417およびy方向駆動回路配線層間接続配線418により接続されている。そして、外部から電源、信号を入力するための電源信号コネクタ452、454が配設されている。
【0074】
なお、発光素子、駆動回路、接続配線の各材料は第3の実施形態と同様の材料を用いることができる。
【0075】
また、配線基板については第1の実施例、第2の実施例およびその変形例で示した変形例を適用することができる。
【0076】
このような実施形態の半導体装置400の具体例としては、発光素子410および駆動回路462、464を2次元的にマトリクス配列したLEDディスプレイを挙げることができる。
【符号の説明】
【0077】
100、100a、100b、100c、100d、200a、300、300a、400、400a 半導体装置
101 金属基板(熱伝導性基板)
110、110b 配線層
111a 第1の層間絶縁層
111b 第2の層間絶縁層
111c 第3の層間絶縁層
112a 第1の配線層
112b 第2の配線層
115、116 接続パッド
120、120a、120b、150 高熱伝導無機絶縁膜
125、126 配線層領域
130、132 基板表面露出領域(搭載領域)
140、141 機能素子
210 基板(熱伝導性基板)
212 セラミックス基板
214 金属層
310 発光素子アレイ(機能素子、発光素子)
312 駆動回路(機能素子、駆動回路素子)
314 発光素子駆動回路間接続配線
315 層間絶縁膜
316 駆動回路配線層間接続配線
318 発光素子アレイ配線層間接続配線
320 発光領域
322、324、326、328 電極パッド
350、452、454 電源信号コネクタ
410 発光素子(機能素子)
413 第1導電側接続配線
414 第2導電側接続配線
415 x方向配線
416 y方向配線
417 x方向駆動回路配線層間接続配線
418 y方向駆動回路配線層間接続配線
420 第2導電型層表面
422 第1導電型層表面
462 x方向駆動回路(機能素子、駆動回路素子)
464 y方向駆動回路(機能素子、駆動回路素子)
B、C、D、E、F、G 熱流束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能素子と、
表面の一部の搭載領域に前記機能素子が搭載された熱伝導性基板と、
前記熱伝導性基板の表面の前記搭載領域を除く配線層領域に形成された単層または多層の配線層と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記熱伝導性基板と反対側の前記機能素子表面は、前記配線層の前記熱伝導性基板と反対側表面よりも低い
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記配線層は、鉛直面の少なくとも一部が前記機能素子の鉛直面に対して所定の間隔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記一部は、前記熱伝導性基板に対して鉛直方向反対側の一部であり、
前記熱伝導性基板側の他部と前記機能素子との間は、積層物により充填されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記熱伝導性基板は、金属材料から構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記機能素子は、前記熱伝導性基板の表面に接合された複数の半導体素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記複数の半導体素子は、複数の発光素子と前記複数の発光素子を駆動する駆動回路素子とから構成され、
前記発光素子および前記駆動回路素子の何れか一方または双方は、前記配線層と接続配線によって接続されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記発光素子は、単結晶半導体薄膜素子であり、
前記単結晶半導体薄膜素子は、前記熱伝導性基板表面に直接接合されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記熱伝導性基板は、セラミックス基板と前記セラミックス基板上に積層された金属層とで構成される
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記熱伝導性基板は、表面および裏面の何れか一方または双方に無機材料層から構成される絶縁膜を備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記無機材料層は、ダイヤモンドライクカーボン、窒化アルミニウム、および、酸化アルミニウムから選択される少なくとも1つまたは複数の材料層から構成される
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−166001(P2011−166001A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28711(P2010−28711)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】