説明

半導体装置

【課題】小電流用配線が自身よりも大電流が流れる部位と導通することを抑制できる半導体装置を提供する。
【解決手段】大電流が流れるエミッタ用パッド12a及びコレクタ用パッド12bと、小電流が流れる小電流用配線(131,133,134)とを含む半導体チップ10と、コレクタ用パッド12bに電気的に接続された金属からなるコレクタ用端子30と、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された金属からなる第2部材(ブロック体50及びエミッタ用端子20)とを備え、半導体チップ10、ブロック体50、エミッタ用端子20、コレクタ用端子30が一体的にモールド樹脂60にてモールドされた半導体装置100である。この第2部材(ブロック体50及びエミッタ用端子20)は、一部がモールド樹脂60の外部に露出し、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80に対向する位置にスリット部51が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面に電極が設けられた半導体チップと、各電極に電気的に接続されるものでありヒートシンクとしての機能を兼ねた端子(ヒートシンク)とを備える半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された半導体装置があった。この半導体装置は、両面に電極が設けられた半導体素子と、端子(下側ヒートシンク、上側ヒートシンク、ヒートシンクブロック)とを備えて構成されている。
【0003】
端子としてのヒートシンクブロックは、半導体素子の一方の面に設けられた電極(例えばエミッタ電極)に導電性接着剤(半田)で電気的に接続されている。さらに、ヒートシンクブロックは、半導体素子との接続面の反対面側において、端子としての上側ヒートシンクに導電性接着剤(半田)で電気的に接続されている。
【0004】
一方、端子としての下側ヒートシンクは、半導体素子の他方の面に設けられた電極(例えばコレクタ電極)に導電性接着剤(半田)で電気的に接続されている。これにより、半導体装置は、半導体素子の上下両面からヒートシンク(即ち、一対の放熱板)を介して放熱される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−268496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、上記半導体装置は、半導体素子の一方の面に、端子が電気的に接続された上記電極(大電流用電極)に流れる電流よりも小さい電流が流れる小電流用電極(ゲート電極、温度センス用の電極など)が設けられている。また、この小電流用電極と同じ面に設けられた2個の大電流用電極間(例えばエミッタ電極間)の領域には、小電流用電極と電気的に接続された小電流用配線が設けられている(例えば、特許文献1の図1など参照)。なお、この小電流用配線は、大電流用電極及び大電流用電極に電気的に接続された導電性接着剤と電気的に絶縁するために、絶縁性保護膜によって覆う必要がある。
【0007】
ところで、この半導体装置は、上述のように大電流用電極上に導電性接着剤を介して端子が電気的に接続されている。よって、小電流用配線は、自身と電位の異なる導電性接着剤が絶縁性保護膜を介して配置される可能性がある。
【0008】
なお、絶縁性保護膜を避けるように導電性接着剤を設けて、大電流用電極と端子とを接続することも考えられる。しかしながら、絶縁性保護膜に対向する位置には、端子が配置されている。よって、導電性接着剤は、製造時に、端子における絶縁性保護膜との対向面を伝って、絶縁性保護膜の表面にまで移動する可能性がある。
【0009】
このように、小電流用配線上に絶縁性保護膜を介して導電性接着剤が配置された場合、熱応力などによって絶縁性保護膜に亀裂が生じると、小電流用配線と導電性接着剤、つまり、小電流用配線と大電流用電極とがショートするという問題があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、小電流用配線が自身よりも大電流が流れる部位と導通することを抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1に記載の半導体装置は、
パワートランジスタと、パワートランジスタにおける大電流が流れる大電流用電極(12a,12b)と、大電流用電極(12a,12b)に流れる電流よりも小電流が流れる小電流用配線(131,133,134)とを含む半導体チップ(10)と、
大電流用電極(12a,12b)に電気的に接続された金属からなる大電流用外部接続端子(20,30,50,2050)と、を備え、
半導体チップ(10)、大電流用外部接続端子(20,30,50,2050)が一体的に絶縁性樹脂(60)にてモールドされた半導体装置であって、
小電流用配線(131,133,134)は、半導体チップ(10)の少なくとも一つの表面に絶縁性保護膜(80)によって覆われた状態で設けられ、
大電流用電極(12a,12b)は、半導体チップ(10)の小電流用配線(131,133,134)が設けられた表面及び表面の反対面に設けられ、
小電流用配線(131,133,134)と同じ面に形成された大電流用電極(12a)は、小電流用配線(131,133,134)の周辺に設けられ、
小電流用配線(131,133,134)上を除く大電流用電極(12a,12b)上には導電性接着剤(71,72)が設けられるものであり、
大電流用外部接続端子(20,30,50,2050)は、
一部が絶縁性樹脂(60)の外部に露出し、反対面に形成された大電流用電極(12b)に導電性接着剤としての第1接着剤(71)を介して接続された第1部材(30)と、
表面に形成された大電流用電極(12a)に導電性接着剤としての第2接着剤(72)を介して接続されるものであり、一部が絶縁性樹脂(60)の外部に露出し、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜(80)に対向する位置にスリット部(51)が設けられた第2部材(20,50,2050)と、を備え、
スリット部(51)は、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜(80)に対向して開口していることを特徴とする。
【0012】
このように、半導体チップ(10)の両面に設けられた各大電流用電極(12a,12b)に、一部が絶縁性樹脂(60)の外部に露出する大電流用外部接続端子(20,30,50,2050)を接続することによって、両面放熱構造の半導体装置とすることができる。つまり、大電流用外部接続端子(20,30,50,2050)は、端子としての機能と、放熱部材としての機能を有する。
【0013】
また、このように、大電流用電極(12a)と大電流用外部接続端子としての第2部材(20,50,2050)とを接続する第2接着剤(72)は、小電流用配線(131,133,134)上を除く大電流用電極(12a)上に設けられている。さらに、この第2部材(20,50,2050)には、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜(80)に対向する位置にスリット部(51)が設けられている。
【0014】
よって、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜(80)の表面に、大電流用電極(12a)に電気的に接続された第2接着剤(72)が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜(80)に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れる大電流用電極(12a)や第2接着剤(72)とショートすることを抑制できる。
【0015】
また、請求項2に示すように、第2部材(20,50)は、一部が絶縁性樹脂(60)の外部に露出するものであり外部装置との電気的な接続部位である端子部(20)と、第2接着剤(72)を介して大電流用電極(12a)と接続される部位であり、大電流用電極(12a)との接続面の反対面において導電性接着剤である第3接着剤(73)を介して端子部(20)と接続される複数のブロック体(50)と、を含み、各ブロック体(50)は、隣り合うブロック体(50)との間にスリット部(51)となる間隔を隔てて配置されるようにしてもよい。
【0016】
このようにすることで、複数のブロック体(50)を、隣り合うブロック体(50)との間に間隔を隔てて配置するだけで、容易にスリット部(51)を形成することができる。
【0017】
なお、一つの部材からなるブロック体に対して、ブロック体を貫通する切り込みを入れてスリット部を設けようとした場合、スリット部の幅は、ブロック体の厚みに依存する。つまり、比較的狭い幅のスリット部を設けようとした場合、スリット部の幅に応じてブロック体の厚みを薄くする必要がある。これに対して、請求項2においては、隣り合うブロック体(50)との間に間隔を隔てて配置するだけなので、ブロック体(50)の厚みが制限されることなく、スリット部(51)を形成することができる。つまり、ブロック体(50)の厚みを厚くしつつ(換言すると、ブロック体(50)の厚さを任意に設定することができ)、スリット部(51)を設けることができる。
【0018】
例えば、大電流用電極(12a)と同一面に設けられた小電流用配線(131,133,134)は、半導体チップ(10)の縁部に設けられた小電流用電極と電気的に接続される。そして、この小電流用電極は、ボンディングワイヤで小電流用外部接続端子と電気的に接続されることが考えられる。また、端子部(20)は、半導体チップ(10)の対向領域の全域に設けられることが考えられる。このような場合、小電流用電極と小電流用外部接続端子とを接続するボンディングワイヤが、端子部(20)に接触しないようにする必要がある。そこで、請求項2においては、上述のように、ブロック体(50)の厚みを厚くすることができるので、ボンディングワイヤが端子部(20)に接触しないようにすることができるので好ましい。
【0019】
なお、ここでの厚みとは、半導体チップ(10)の大電流用電極(12a)の形成面に対して垂直な方向の厚みである。また、ここでの幅とは、半導体チップ(10)の大電流用電極(12a)の形成面に対して平行な方向の幅である。
【0020】
また、請求項3に示すように、端子部(20)は、隣り合うブロック体(50)間のスリット部(51)を覆いつつ、複数のブロック体(50)に第3接着剤(73)を介して接続されるようにしてもよい。
【0021】
このようにすることによって、スリット部(51)を端子部(20)で蓋をすることができる。よって、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜(80)に塵埃や水滴などが付着することを抑制できる。
【0022】
また、請求項4に示すように、各ブロック体(50)は、隣り合うブロック体(50)と一部が接触しつつ、大電流用電極(12a)との接続部位から端子部(20)側への所定範囲において、隣り合うブロック体(50)との間に間隔が設けられるようにしてもよい。
【0023】
このように、大電流用電極(12a)との接続部位から端子部(20)側への所定範囲において、隣り合うブロック体(50)との間に間隔を設けることによって、スリット部(51)を設けることができる。また、各ブロック体(50)は、隣り合うブロック体(50)と一部が接触するので、大電流用電極(12a)上に第2接着剤(72)を介して配置する際に、位置決めを容易にすることができる。
【0024】
また、請求項5に示すように、スリット部(51)は、ブロック体(50)が第2接着剤(72)を介して大電流用電極(12a)と接続された際に、半導体チップ(10)の表面に対して垂直方向に貫通しているようにしてもよい。
【0025】
また、請求項6に示すように、スリット部(51)は、ブロック体(50)に小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜(80)のパターンを転写させた形の凹部として形成されるようにしてもよい。
【0026】
また、この場合、請求項7に示すように、ブロック材(50)は、第2接着剤(72)を介して大電流用電極(12a)と接続された際に、スリット部(51)が半導体チップ(10)の表面に対して平行方向に貫通されるようにしてもよい。
【0027】
このようにすることによって、スリット部(51)内に絶縁性樹脂(60)が入り込むのを容易にすることができる。
【0028】
また、請求項8に示すように、スリット部(51)は、絶縁性樹脂(60)で満たされるようにしてもよい。
【0029】
このようにすることで、小電流用配線(131,133,134)及び絶縁性保護膜(80)を絶縁性樹脂(60)で拘束することができ、小電流用配線(131,133,134)の断線を抑制することができる。また、絶縁性保護膜(80)に塵埃や水滴などが付着することを抑制できる。
【0030】
第2部材(2050)は、請求項9に示すように、一つの部材からなるようにしてもよい。例えば、第2部材としては、上述のように、複数の部材からなるものを採用することもできる。しかしながら、この場合、第2部材である複数の部材を接続する作業が必要である。これに対して、請求項9に示すように、第2部材(2050)として、一つの部材からなるものを採用した場合、第2部材である複数の部材を接続する作業を減らすことができる。
【0031】
また、請求項10に示すように、第2部材(2050)は、第2接着剤(72)を介して大電流用電極(12a)と接続された際に、スリット部(51)が半導体チップ(10)の表面に対して平行方向に貫通するようにしてもよい。
【0032】
このようにすることによって、スリット部(51)内に絶縁性樹脂(60)が入り込むのを容易にすることができる。
【0033】
なお、請求項11における作用、効果は、上述の請求項8によるものと同様であるため、説明は省略する。
【0034】
また、請求項12に示すように、スリット部(51)の平行方向における幅は、絶縁性樹脂(60)内に設けられたフィラーの大きさよりも広いと好ましい。
【0035】
このようにすることによっても、スリット部(51)内に絶縁性樹脂(60)が入り込むのを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体素子の概略構成を示す平面図であり、(a)は半導体素子にブロック体を取り付ける前の状態の図面であり、(b)は半導体素子にブロック体を取り付けた状態の図面である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置の概略構成を示す断面図であり、(a)は図1のIIIa−IIIa線に沿う断面図であり、(b)は図1のIIIb−IIIb線に沿う断面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるブロック体の概略構成を示す図面であり、(a)はブロック体の平面図であり、(b)は図4(a)のIVb−IVb線に沿う断面図である。
【図5】変形例1における半導体装置の概略構成を示す断面図であり、(a)は図3(a)に相当する断面図であり、(b)は図3(b)に相当する断面図である。
【図6】変形例2における半導体装置の概略構成を示す部分的断面図である。
【図7】変形例2における半導体装置の概略構成を示す部分的断面図である。
【図8】変形例3における半導体装置の概略構成を示す図面であり、(a)は半導体装置の部分的断面図であり、(b)は製造時のブロック体の断面図である。
【図9】変形例4における半導体装置の概略構成を示す断面図である(図3(b)に相当する)。
【図10】変形例5における半導体装置の概略構成を示す断面図である(図3(b)に相当する)。
【図11】変形例6における半導体装置の概略構成を示す断面図である(図3(b)に相当する)。
【図12】変形例7における半導体装置の概略構成を示す断面図である(図3(b)に相当する)。
【図13】変形例8における半導体素子の概略構成を示す平面図であり、(a)は半導体素子にブロック体を取り付ける前の状態の図面であり、(b)は半導体素子にブロック体を取り付けた状態の図面である。
【図14】変形例9における半導体素子の概略構成を示す平面図であり、(a)は半導体素子にブロック体を取り付ける前の状態の図面であり、(b)は半導体素子にブロック体を取り付けた状態の図面である。
【図15】変形例9における半導体素子の概略構成を示す平面図であり、半導体素子にブロック体を取り付けた状態の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。なお、以下の説明における厚さ方向とは、半導体素子10の厚さ方向を示すものである。換言すると、半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して垂直な方向を示すものである。例えば、図3(a),(b)においては、紙面の上下方向である。また、幅とは、半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して平行な方向の幅を示すものである。例えば、図3(a),(b)における紙面の左右方向や、図2(a),(b)における紙面の上下及び左右方向などである。
【0038】
図1,図3に示す半導体装置100は、例えば車両のインバータ回路に組み入れられ、負荷(例えばモータ等)をPWM制御するための装置として適用される。この半導体装置100は、主に、半導体素子10と、大電流用外部接続端子であるエミッタ用端子(第2部材)20、ブロック体(第2部材)50、コレクタ用端子(第1部材)30とを備え、これらが一体的にモールド樹脂(絶縁性樹脂)60にてモールドされたものである。また、半導体装置100は、この他にも、小電流用外部接続端子であるゲート用端子41、エミッタ用小電流端子42、ワイヤ42b、温度センサ用端子43,44などを備え、これらも一体的にモールド樹脂60にてモールドされたものである。
【0039】
半導体素子10は、シリコンなどの半導体基板に、周知の半導体プロセスによって複数のトランジスタ構造部が形成されている。例えば、パワーMOSFETやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)など、負荷の電力制御に用いられるパワートランジスタ素子が構成されたICチップ(ベアチップ)である。なお、本実施の形態においては、このパワートランジスタ素子としてIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を採用する。つまり、本実施の形態における半導体素子10は、厚さ方向に電流が流れるように所謂縦型構造を有している。また、半導体素子10は、このパワートランジスタ素子を除く素子、例えばダイオード、抵抗、コンデンサ、CMOS、バイポーラトランジスタなどの素子が集積されてなる信号処理回路部(大規模集積回路)が設けられているものを採用することもできる。
【0040】
図2(a),(b)、図3(a),(b)に示すように、この半導体素子10の両表面(厚さ方向に対して垂直な両面)のそれぞれには、半導体装置100と半導体装置100の外部(外部装置)との接続用に電極(例えばNi系材料からなる)が形成されている。この電極としては、IGBTにおける大電流が流れる大電流用電極(エミッタ用パッド12a、コレクタ用パッド12b)が半導体素子10の両表面のそれぞれに設けられている。換言すると、大電流用電極であるエミッタ用パッド12a及びコレクタ用パッド12bの一方は、半導体素子10の表面11に設けられ、他方は表面11の反対面に設けられている。なお、本実施の形態においては、半導体素子10の表面11にエミッタ用パッド12aが設けられ、半導体素子10の反対面にコレクタ用パッド12bが設けられている。なお、図2(a)は、半導体素子10にブロック体50を取り付ける前の状態の表面11側(エミッタ用パッド12aの形成面側)の平面図である。また、図2(b)は、半導体素子10にブロック体50を取り付けた状態の表面11側(エミッタ用パッド12aの形成面側)の平面面である。
【0041】
また、図2(a),(b)に示すように、エミッタ用パッド12aは、後ほど説明する小電流用電極(ゲート用パッド131a、エミッタ用小電流パッド132a、温度センサ用パッド133a,134a、以下、これらをまとめて単に小電流用電極とも称する)と同じ表面11に設けられている。同様に、エミッタ用パッド12aは、後ほど説明する小電流用配線(ゲート用配線131、エミッタ用小電流配線132、温度センサ用配線133,134、以下、これらをまとめて単に小電流用配線とも称する)と同じ表面11に設けられている。よって、エミッタ用パッド12aは、この小電流用電極及び小電流用配線を避けて設ける必要がある。
【0042】
よって、図2(a),(b)に示すように、エミッタ用パッド12aは、半導体素子10における同じ表面11に設けられている小電流用電極及び小電流用配線の周辺に設けられている。換言すると、小電流用配線の一部においては、平面方向における両側にエミッタ用パッド12aが設けられている。つまり、2つのエミッタ用パッド12aに挟まれた平面方向における領域に、小電流用配線の一部が設けられている。本実施の形態においては、ゲート用配線131の一部及び温度センサ用配線133,134の一部が、平面方向における2つのエミッタ用パッド12aに挟まれた領域に設けられている。つまり、エミッタ用パッド12a間に、ゲート用配線131の一部や、温度センサ用配線133,134の一部が配置されている。
【0043】
本実施の形態においては、エミッタ用パッド12aは、半導体素子10の表面11における複数に領域に分割して設けられている。より具体的には、同一の面積を有する4つの矩形形状のエミッタ用パッド12aと、このエミッタ用パッド12aの倍程度の面積を有する1つの矩形形状のエミッタ用パッド12aとを備える例を採用している。
【0044】
一方、コレクタ用パッド12bが形成された半導体素子10の反対面には、小電流用電極及び小電流用配線が形成されていない。よって、コレクタ用パッド12bは、半導体素子10の反対面において、縁部を除く広い範囲に設けることができる。換言すると、コレクタ用パッド12bは、半導体素子10の反対面において、分割することなく1つの領域に設けられている。
【0045】
さらに、電極としては、大電流用電極よりも小さな電流が流れる小電流用電極(ゲート用パッド131a、エミッタ用小電流パッド132a、温度センサ用パッド133a,134a、以下、これらをまとめて単に小電流用電極とも称する)が半導体素子10の両表面のうちの少なくとも一方の表面に設けられている。なお、本実施の形態における小電流用電極としては、上述のように、エミッタ用パッド12aと同じ表面11に設けられている例を採用する。また、これらの小電流用電極(二つのゲート用パッド131a、エミッタ用小電流パッド132a、温度センサ用パッド133a,134a)は、半導体素子10の縁部の一箇所にまとめて配置されている。
【0046】
なお、半導体素子10のエミッタ用パッド12a及び小電流用電極が設けられた表面11には、半導体素子10の温度に応じた信号を出力する温度センサ14が設けられている。具体的には、温度センサ14は、図2(a),(b)に示すように、半導体素子10の表面11の中央部に設けられている。このように、温度センサ14を半導体素子10の表面11の中央部に配置することによって、半導体素子10における最も温度が高くなる部位の温度を計測することができる。
【0047】
これらの小電流用電極には、図2(a),(b)に示すように、小電流用配線(ゲート用配線131、エミッタ用小電流配線132、温度センサ用配線133,134)が電気的に接続されている。
【0048】
ゲート用パッド131aは、ゲート用配線131を介して半導体素子10のゲート(図示省略)と電気的に接続されている。ゲート用配線131は、半導体素子10のゲートと電気的に接続するために、半導体素子10の表面11の周縁に配線されるとともに、この周縁から中心線側に向かって複数本(ここでは4本)が配線(配置、引き回)されている。
【0049】
また、上述のように、エミッタ用パッド12aは、このゲート用配線131を避けるように分割して設けられている。よって、ゲート用配線131は、複数のエミッタ用パッド12aを囲うように配線するとともに、各エミッタ用パッド12a間に配線されている。つまり、周縁から延びるゲート用配線131の一部が2つのエミッタ用パッド12aに挟まれる領域に配置されている。なお、このゲート用配線131の配線(配置、引き回し)は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
エミッタ用小電流パッド132aは、エミッタ用小電流配線132を介して半導体素子10のエミッタ(エミッタ用パッド12a)と電気的に接続されている。エミッタ用小電流配線132は、一例として、半導体素子10の縁部に設けられたエミッタ用小電流パッド132aと、エミッタ用小電流パッド132aから最も近いエミッタ用パッド12aとの間に配線(配置、引き回)されている。
【0051】
温度センサ用パッド133a,134aは、温度センサ用配線133,134を介して温度センサ14と電気的に接続されている。上述のように、温度センサ14は、半導体素子10の表面11における中央部に配置されている。よって、温度センサ用配線133,134は、一例として、半導体素子10の縁部に設けられた温度センサ用パッド133a,134aと、半導体素子10の表面11における中央部に配置され温度センサ14との間に配線(配置、引き回)されている。つまり、この温度センサ用配線133,134は、半導体素子10の表面11において中心線に沿って、複数のエミッタ用パッド12aに挟まれる領域に配置されている。また、温度センサ用パッド133a,134aと温度センサ14との配線距離を短くするために、温度センサ用パッド133a,134aは、半導体素子10の表面11における縁部の中央部に配置すると好ましい。
【0052】
なお、これらの小電流用配線(ゲート用配線131、エミッタ用小電流配線132、温度センサ用配線133,134)は、絶縁性保護膜(絶縁膜)80で覆われている。図3(a),(b)においては、温度センサ用配線133,134、ゲート用配線131の一部のみが絶縁性保護膜80で覆われて図を図示しているが、ゲート用配線131エミッタ用小電流配線132、温度センサ用配線133,134は、平面方向における全体が絶縁性保護膜80で覆われており表面に露出していない。
【0053】
このように、半導体素子10は、IGBTと、IGBTにおける大電流が流れるエミッタ用パッド12a及びコレクタ用パッド12bと、エミッタ用パッド12a及びコレクタ用パッド12bに流れる電流よりも小電流が流れる小電流用配線とを含むものである。さらに、半導体素子10は、小電流用配線と電気的に接続された小電流用電極が設けられている。
【0054】
図1,図3(a),(b)に示すように、この半導体素子10における大電流用電極(エミッタ用パッド12a及びコレクタ用パッド12b)、及び小電流用電極(ゲート用パッド131a、エミッタ用小電流パッド132a、温度センサ用パッド133a,134a)には、それぞれ外部接続用の端子が電気的に接続されている。
【0055】
ゲート用パッド131aには、小電流用外部接続端子であるゲート用端子41が電気的に接続されている。同様に、エミッタ用小電流パッド132aには、小電流用外部接続端子であるエミッタ用小電流端子42が電気的に接続されている。同様に、温度センサ用パッド133a,134aには、小電流用外部接続端子である温度センサ用端子43,44が電気的に接続されている。なお、これらの小電流用外部接続端子は、例えば、Cu、Au、Ag、Al、又は、これら金属の少なくとも1種類を含む合金からなるものを採用することができる。
【0056】
これらの小電流用外部接続端子(ゲート用端子41、エミッタ用小電流端子42、温度センサ用端子43,44)は、リードフレームからなるものである。そして、各小電流用電極と、各小電流用外部接続端子とは、AuやAlなどからなるワイヤ42b(ボンディングワイヤ)を介して電気的且つ機械的に接続されている。この一例を図3(a)に示す。図3(a)は、エミッタ用小電流パッド132aとエミッタ用小電流端子42とがワイヤ42bを介して電気的且つ機械的に接続されている図面である。他の小電流用外部接続端子と小電流用外部接続端子に関しても同様にワイヤ42bを介して電気的且つ機械的に接続される。なお、これらの小電流用外部接続端子は、半導体素子10や大電流用外部接続端子などとともにモールドされた状態で、一部がモールド樹脂60の外部に露出するものである。
【0057】
また、図3(a),(b)に示すように、半導体素子10のエミッタ用パッド12aには、大電流用外部接続端子の第2部材であるエミッタ用端子(端子部、第2部材)20及びブロック体(第2部材)50が接続されている。また、半導体素子10のコレクタ用パッド12bには、大電流用外部接続端子であるコレクタ用端子(第1部材)30が接続されている。
【0058】
このエミッタ用端子20、ブロック体50、コレクタ用端子30は、半導体素子10の大電流用外部接続端子としての機能を果たすとともに、半導体素子10に生じた熱を半導体装置100の外部に放熱する機能を果たす。よって、エミッタ用端子20、ブロック体50、コレクタ用端子30は、熱伝導性及び電気伝導性を確保すべく、少なくとも金属材料を用いて形成される。例えば、Cu、Au、Ag、Al、又は、これら金属の少なくとも1種類を含む合金などの熱伝導性及び電気伝導性に優れた金属材料からなる。
【0059】
半導体素子10のコレクタ用パッド12bとコレクタ用端子30との間には、例えば半田などからなる導電性接着剤としての第1接着剤71が介在されている。そして、半導体素子10のコレクタ用パッド12bとコレクタ用端子30とは、この第1接着剤71により電気的、熱的、且つ機械的に接続されている。
【0060】
コレクタ用端子30は、板状の部材からなり、コレクタ用パッド12bとの接続面及びその反対面が平坦面をなすものである。また、コレクタ用端子30は、外部装置との接続のための接続部30a、及び半導体素子10の放熱のための放熱部30b(放熱面)を有する。コレクタ用端子30における半導体素子10との対向面の面積は、半導体素子10の表面11(反対面)の面積以上である。よって、コレクタ用端子30は、半導体素子10における反対面(表面11の反対面)の対向領域の全域に設けられる。従って、コレクタ用端子30とコレクタ用パッド12bとが接続した状態では、半導体素子10の反対面(コレクタ用パッド12bの形成面)がコレクタ用端子30によって完全に覆われる。
【0061】
このコレクタ用端子30は、半導体素子10や小電流用外部接続端子などとともにモールドされた状態で、一部がモールド樹脂60の外部に露出している。具体的には、半導体装置100と外部装置との接続のために接続部30aがモールド樹脂60の外部に露出しているとともに、半導体素子10の放熱のために放熱部30b(コレクタ用パッド12bとの接続面の反対面)がモールド樹脂60の外部に露出している。
【0062】
半導体素子10のエミッタ用パッド12aと各ブロック体50との間には、例えば半田などからなる導電性接着剤としての第2接着剤72が介在されている。そして、半導体素子10のエミッタ用パッド12aとブロック体50とは、この第2接着剤72により電気的、熱的、且つ機械的に接続されている。この第2接着剤72は、小電流用配線(131,133,134)上を除くエミッタ用パッド12a上に設けられるものである。
【0063】
さらに、ブロック体50とエミッタ用端子20との間には、例えば半田などからなる導電性接着剤としての第3接着剤73が介在されている。そして、ブロック体50とエミッタ用端子20とは、この第3接着剤73により電気的、熱的、且つ機械的に接続されている。なお、第3接着剤73は、ブロック体50とエミッタ用端子20との間のみに設けられている。
【0064】
なお、エミッタ用端子20は、後ほど説明する隣り合うブロック体50間のスリット部51を覆いつつ、複数のブロック体50に第3接着剤73で接続される。このようにすることによって、スリット部51をエミッタ用端子20で蓋をすることができる。よって、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80に塵埃や水滴などが付着することを抑制できる。
【0065】
エミッタ用端子20は、板状の部材からなり、ブロック体50との接続面及びその反対面が平坦面をなすものである。また、エミッタ用端子20は、外部装置との接続のための接続部20a、及び半導体素子10の放熱のための放熱部20b(放熱面)を有する。エミッタ用端子20における半導体素子10との対向面の面積は、半導体素子10の表面11(反対面)の面積以上である。よって、エミッタ用端子20は、半導体素子10における表面11の対向領域の全域に設けられる。従って、エミッタ用端子20がブロック体50を介してエミッタ用パッド12aと接続した状態では、半導体素子10の表面11がエミッタ用端子20によって完全に覆われる。
【0066】
また、このエミッタ用端子20は、半導体素子10や小電流用外部接続端子などとともにモールドされた状態で、一部がモールド樹脂60の外部に露出している。具体的には、半導体装置100と外部装置との接続のために接続部20aがモールド樹脂60の外部に露出しているとともに、半導体素子10の放熱のために放熱部20b(ブロック体50との接続面の反対面)がモールド樹脂60の外部に露出している。
【0067】
一方、ブロック体50は、両端面(エミッタ用端子20との接続面、エミッタ用パッド12aとの接続面)が平坦面をなす柱状部材(ここでは四角柱)である。このブロック体50は、ワイヤ42bの高さを確保するためのものである。また、ブロック体50は、エミッタ用パッド12aの数に対応した個数が設けられる。ここでは、5つのエミッタ用パッド12aに対して、5つのブロック体50を用いる例を採用している。このブロック体50の平面方向の面積は、エミッタ用パッド12aと略同じ面積である(図2(b)を参照)。
【0068】
このようなブロック体50は、上述のように、エミッタ用パッド12a上に第2接着剤72で接続される。よって、図2(b)に示すように、各ブロック体50は、隣り合うブロック体50との間にスリット部51となる間隔を隔てて配置される。つまり、スリット部51は、小電流用配線(131,133,134)におけるエミッタ用パッド12aに挟まれた部位を覆っている絶縁性保護膜80に対向する位置に設けられている。さらに、スリット部51は、絶縁性保護膜80に対向して開口している。つまり、スリット部51は、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80に対向して開口している。よって、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜(80)に対向している位置には、エミッタ用パッド12aが設けられない構造をしている。
【0069】
このように、本実施の形態に係る半導体装置100は、半導体素子10の両面に設けられたエミッタ用パッド12a及びコレクタ用パッド12bに、一部がモールド樹脂60の外部に露出する大電流用外部接続端子(エミッタ用端子20,ブロック体50、及びコレクタ用端子30)を接続することによって、両面放熱構造となっている。つまり、大電流用外部接続端子(エミッタ用端子20,ブロック体50、及びコレクタ用端子30)は、端子としての機能と、放熱部材としての機能を有する。
【0070】
また、このように、エミッタ用パッド12aとブロック体50とを接続する第2接着剤72は、小電流用配線(131,133,134)上を除くエミッタ用パッド12a上に設けられている。さらに、複数のブロック体50(すなわち、独立したブロック体50)を、隣り合うブロック体50との間に間隔を隔てて配置することで、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80に対向する位置にスリット部51が設けられている。詳細には、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位に対向してスリット部51が設けられている。換言すると、大電流用外部接続端子における第2部材は、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位に対向して、周辺よりも窪んだ凹部(スリット部51)が設けられている。つまり、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位は、この部位の対向する領域にブロック体50の高さの分だけの空間(空隙)が形成されることになる。
【0071】
よって、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0072】
また、本実施の形態においては、複数のブロック体50を、隣り合うブロック体50との間に間隔を隔てて配置するだけで、容易にスリット部51を形成することができる。
【0073】
なお、一つの部材からなるブロック体に対して、ブロック体を貫通する切り込みを入れてスリット部を設けようとした場合、スリット部の幅は、ブロック体の厚みに依存する。つまり、比較的狭い幅のスリット部を設けようとした場合、スリット部の幅に応じてブロック体の厚みを薄くする必要がある。
【0074】
これに対して、本実施の形態においては、隣り合うブロック体50との間に間隔を隔てて配置するだけなので、ブロック体50の厚みが制限されることなく、スリット部51を形成することができる。つまり、ブロック体50の厚みを厚くしつつ、スリット部51を設けることができる。換言すると、ブロック体50の厚さを任意の厚さにすることができる。よって、上述のように、小電流用電極と小電流用外部接続端子とをワイヤ42bで接続する際に、ワイヤ42bの高さを確保しつつ、ワイヤ42bがエミッタ用端子20に接触しないようにすることができるので好ましい。
【0075】
ここで、この半導体装置100の製造方法において、特徴的な点に関して説明する。
【0076】
まず、図4に示すように、半導体素子10の表面11に形成されたエミッタ用パッド12aと接続される複数のブロック体50を、エミッタ用パッド12b間の間隔以上(好ましくは、エミッタ用パッド12b間の間隔と同等)の間隔を隔てて、接続部材90で一体化する(一体化工程)。つまり、エミッタ用パッド12b間の間隔以上(好ましくは、エミッタ用パッド12b間の間隔と同等)の厚みの接続部材90でブロック体50同士を接続する。
【0077】
この接続部材90としては、ポリイミド両面テープやエポキシ樹脂系の接着剤を採用することができる。また、接続部材90は、ブロック体50とエミッタ用パッド12bとが第2接着剤72で接続されるまで、ブロック体50同士を接続しておけばよい。よって、第2接着剤72でブロック体50とエミッタ用パッド12bとを接続する際の温度(リフロー温度)に耐えうるだけの耐熱性は必ずしも必要ではない。また、絶縁性保護膜80まで達しないように接続部材90を設ける場合は、第2接着剤72との接着しやすいものであってもよい。つまり、第2接着剤72として半田を用いた場合は、半田濡れ性が良いものであってもよい。しかしながら、絶縁性保護膜80上に第2接着剤72が配置されないようにするためには、第2接着剤72との接着しにくい材料を採用することが望ましい。つまり、第2接着剤72として半田を用いた場合は、半田濡れ性が悪い材料を採用することが望ましい。
【0078】
次に、小電流用配線(131,133,134)上を除くエミッタ用パッド12a上に第2接着剤72を設ける(接着剤形成工程)。その後、一体化された複数のブロック体50の接続部材90を、エミッタ用パッド12a間に配置されている絶縁性保護膜80に対向させつつ、一体化された複数のブロック体50を第2接着剤72上に配置する(配置工程)。
【0079】
次に、エミッタ用端子20を、複数のブロック体50におけるエミッタ用パッド12aとの接続面の反対面に、第3接着剤73で接続する(第2接続工程)。なお、第2接着剤72及び第3接着剤73として半田を用いた場合は、リフローによって接続することができる。
【0080】
このように、複数のブロック体50を一体化した後に、第2接着剤72でエミッタ用パッド12aと接続することによって、複数のブロック体50を一括でエミッタ用パッド12aに接続でき生産性を向上することができる。
【0081】
また、エミッタ用パッド12aを上述のような接続部材90で一体化することによって、エミッタ用パッド12a間に配置されている絶縁性保護膜80に対向する位置にスリット部51を設けることができる。つまり、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜(80)に対向している位置にエミッタ用パッド12aが設けられない構造をなすことができる。
【0082】
なお、一体化工程のその他の例としては、ブロック体50のエミッタ用端子20との接続面にテープを貼りつけるようにしてもよい。この場合、複数のブロック体50をエミッタ用パッド12b間の間隔以上(好ましくは、エミッタ用パッド12b間の間隔と同等)の間隔を隔てて、作業台などに配置しておく。このとき、作業台には、ブロック体50間の間隔が上記のようになるように、位置決め部(例えば凹部など)を設けておくと好ましい。つまり、エミッタ用パッド12b間の間隔と同等の間隔をおいて、ブロック体50が配置される凹部を設けておく。そして、ブロック体50のエミッタ用パッド12aとの接続面が凹部の底部側になるように、ブロック体50を凹部に配置する。このように凹部に複数のブロック体50を配置した状態で、ブロック体50のエミッタ用端子20との接続面にテープを貼りつけて、複数のブロック体50を一体化する。このようにしても、複数のブロック体50を一括でエミッタ用パッド12aに接続でき生産性を向上することができる。
【0083】
(変形例1)
上述の実施の形態においては、スリット部51にモールド樹脂60が設けられない例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図5(a),(b)に示す変形例1の半導体装置101のように、スリット部51は、モールド樹脂60で満たされるようにしてもよい。なお、変形例1における半導体装置101は、スリット部51がモールド樹脂60で満たされている点が上述の実施の形態における半導体装置100と異なる。その他の点に関しては、変形例1における半導体装置101と上述の実施の形態における半導体装置100とは同様である。よって、ここでは、変形例1の半導体装置101における、上述の実施の形態における半導体装置100と異なる点を重点的に説明し、同様な箇所に関しては説明を省略する。
【0084】
変形例1における半導体装置101は、スリット部51がモールド樹脂60で満たされている。よって、エミッタ用パッド12a間に配置された小電流用配線(131,133,134)及び絶縁性保護膜80がモールド樹脂60によって拘束されるので、小電流用配線(131,133,134)の断線を抑制することができる。また、絶縁性保護膜80に塵埃や水滴などが付着することを抑制できる。
【0085】
なお、変形例1においては、ブロック体50として、複数の独立したブロック体50を採用している。よって、スリット部51は、半導体素子10におけるエミッタ用パッド12aの形成面に平行な方向において貫通している(図2(b)参照)。従って、スリット部51内にモールド樹脂60が入り込むのを容易にすることができる。
【0086】
なお、スリット部51の平行方向における幅(つまり、隣り合うブロック体50間の間隔)は、モールド樹脂60内に設けられたフィラーの大きさよりも広いと好ましい。このようにすることによっても、スリット部51内にモールド樹脂60が入り込むのをより一層容易にすることができる。
【0087】
(変形例2)
上述の実施の形態においては、複数のブロック体50は、互いに接触しないように設けられている例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図6,図7に示す変形例2のように、複数のブロック体50は、互いに接触するようにしてもよい。なお、図6,図7においては、エミッタ用端子20、モールド樹脂60、及び小電流用外部接続端子などは省略している。なお、変形例2における半導体装置は、ブロック体50の形状が上述の実施の形態における半導体装置100と異なる。その他の点に関しては、変形例2における半導体装置と上述の実施の形態における半導体装置100とは同様である。よって、ここでは、変形例2の半導体装置における、上述の実施の形態における半導体装置100と異なる点を重点的に説明し、同様な箇所に関しては説明を省略する。
【0088】
変形例2の半導体装置においては、各ブロック体50は、隣り合うブロック体50と一部が接触しつつ、エミッタ用パッド12aとの接続部位からエミッタ用端子20側への所定範囲において、隣り合うブロック体50との間に間隔が設けられる。
【0089】
例えば、図6に示すように、各ブロック体50は、少なくとも隣り合うブロック体50側の面にテーパーが設けられている。ここでは、一例として、断面が台形状をなすブロック体50を採用している。つまり、各ブロック体50のエミッタ用パッド12a(第2接着剤72)との接続面(底面)は、エミッタ用パッド12aと同等の面積を有している。一方、各ブロック体50のエミッタ用端子20(第3接着剤73)との接続面(上面)は、エミッタ用パッド12aよりも広い面積を有している。そして、各ブロック体50の底面と上面との繋ぐ側壁(隣り合うブロック体50と対向面)は、テーパー形状を有している。換言すると、各ブロック体50の底面と上面との繋ぐ側壁(隣り合うブロック体50と対向面)は、半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して傾斜して設けられている。
【0090】
よって、複数のブロック体50は、エミッタ用パッド12aに接続された状態においては、エミッタ用端子20側の端部が互いに接触しつつ、エミッタ用端子20側からエミッタ用パッド12a側に行くに連れて隣り合うブロック体50との間隔が広くなる。従って、複数のブロック体50は、エミッタ用パッド12aに接続された状態においては、隣り合うブロック体50と一部が接触しつつ、エミッタ用パッド12aとの接続部位からエミッタ用端子20側への所定範囲において、隣り合うブロック体50との間に間隔(スリット部51)が設けられる。
【0091】
また、例えば図7に示すように、各ブロック体50は、隣り合うブロック体50との対向面と、第2接着剤72(エミッタ用パッド12a)と接続される接続面とが連なる部位が丸め形状であってもよい。このようにしても、複数のブロック体50は、エミッタ用パッド12aに接続された状態においては、隣り合うブロック体50と一部が接触しつつ、エミッタ用パッド12aとの接続部位からエミッタ用端子20側への所定範囲において、隣り合うブロック体50との間に間隔(スリット部51)が設けられる。
【0092】
このように、エミッタ用パッド12aとの接続部位からエミッタ用端子20側への所定範囲において、隣り合うブロック体50との間に間隔を設けることによって、スリット部51を設けることができる。また、各ブロック体50は、隣り合うブロック体50と一部が接触するので、エミッタ用パッド12a上に第2接着剤72を介して配置する際に、位置決めを容易にすることができる。
【0093】
よって、このようにしても、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0094】
(変形例3)
上述の実施の形態においては、複数のブロック体50は、半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して垂直な面を有する直方体の部材を用いる例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図8(a),(b)に示す変形例3のように、各ブロック体50は、半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して傾斜した面(テーパー)を有する柱状部材を用いてもよい。
【0095】
なお、図8(a),(b)においては、エミッタ用端子20、モールド樹脂60、及び小電流用外部接続端子などは省略している。また、変形例3における半導体装置は、ブロック体50の形状が上述の実施の形態における半導体装置100と異なる。その他の点に関しては、変形例3における半導体装置と上述の実施の形態における半導体装置100とは同様である。よって、ここでは、変形例3の半導体装置における、上述の実施の形態における半導体装置100と異なる点を重点的に説明し、同様な箇所に関しては説明を省略する。
【0096】
変形例3の半導体装置においては、複数のブロック体50は、断面が台形形状を有する柱状部材であるが、隣り合うブロック体50とは互いに異なる形状を有している。
【0097】
複数のブロック体50のうち一部のブロック体50(第1ブロック体とも称する)は、ブロック体50のエミッタ用パッド12a(第2接着剤72)との接続面(底面)は、エミッタ用パッド12aと同等の面積を有している。一方、各ブロック体50のエミッタ用端子20(第3接着剤73)との接続面(上面)は、エミッタ用パッド12aよりも広い面積を有している。そして、各ブロック体50の底面と上面との繋ぐ側壁(隣り合うブロック体50と対向面)は、テーパー形状を有している(半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して傾斜している)。図8(a)においては、両側のブロック体50が第1ブロック体に相当する。
【0098】
一方、その他のブロック体50(第2ブロック体とも称する)は、ブロック体50のエミッタ用パッド12a(第2接着剤72)との接続面(底面)は、エミッタ用パッド12aと同等の面積を有している。一方、各ブロック体50のエミッタ用端子20(第3接着剤73)との接続面(上面)は、エミッタ用パッド12aよりも狭い面積を有している。そして、各ブロック体50の底面と上面との繋ぐ側壁(隣り合うブロック体50と対向面)は、テーパー形状を有している(半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して傾斜している)。図8(a)においては、真ん中のブロック体50が第2ブロック体に相当する。
【0099】
そして、この第1のブロック体50と第2のブロック体50を第2接着剤72でエミッタ用パッド12aに接続する際には、第1のブロック体50と第2のブロック体50とが隣り合うように配置する。従って、複数のブロック体50は、エミッタ用パッド12aに接続された状態においては、隣り合うブロック体50と接触することなく、隣り合うブロック体50との間に間隔(スリット部51)が設けられる。
【0100】
なお、このような形状のブロック体50の場合、上述と同様に、複数のブロック体50を接続部材90で一体化した状態で、エミッタ用パッド12aと第2接着剤72で接続すると好ましい(図8(b)を参照)。
【0101】
このようにすることによっても、各ブロック体50の位置決めを容易にすることができる。なお、当然ながら、このようにしても、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0102】
(変形例4)
上述の実施の形態においては、ブロック体50として、複数のブロック体50を用いる例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図9に示す変形例4の半導体装置102のように、一つのブロック体50を用いてもよい。なお、この図9は、上述の実施の形態における図3(b)に相当する断面図である。
【0103】
変形例4における半導体装置102は、ブロック体50が一つの部材からなる点が上述の実施の形態における半導体装置100と異なる。その他の点に関しては、変形例4における半導体装置102と上述の実施の形態における半導体装置100とは同様である。よって、ここでは、変形例4の半導体装置102における、上述の実施の形態における半導体装置100と異なる点を重点的に説明し、同様な箇所に関しては説明を省略する。
【0104】
変形例4におけるブロック体50は、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位に対向して、周辺よりも窪んだ有底の凹部であるスリット部51を設けられている。よって、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位は、対向する領域に凹部(スリット部51)の深さの分だけの空間(空隙)が形成されることになる。換言すると、スリット部51は、ブロック体50に小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80のパターンを転写させた形の凹部として形成される。
【0105】
なお、スリット部51は、第2接着剤72がブロック体50を伝って絶縁性保護膜80上に移動しないように、十分深い必要がある。例えば、スリット部51は、第2接着剤72の余剰分(供給量から完成時(接続後)にエミッタ用パッド12aとブロック体50との間に存在する量を減算した量)よりも大きな容積であると好ましい。さらに、ブロック体50が第2接着剤72との接着性がよければ(例えば、第2接着剤72として半田を用いた場合は、半田濡れ性が良好であれば)より一層好ましい。つまり、このようにすることによって、絶縁性保護膜80に第2接着剤72が接触するのを抑制することができる。
【0106】
このようにしても、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0107】
(変形例5)
上述の変形例4においては、スリット部51にモールド樹脂60が設けられない例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図10に示す変形例5の半導体装置103のように、スリット部51は、モールド樹脂60で満たされるようにしてもよい。この図10は、上述の実施の形態における図3(b)に相当する断面図である。
【0108】
なお、変形例5における半導体装置103は、スリット部51がモールド樹脂60で満たされている点が上述の変形例4における半導体装置102と異なる。その他の点に関しては、変形例5における半導体装置103と上述の変形例4における半導体装置102とは同様である。よって、ここでは、変形例5の半導体装置103における、上述の変形例4における半導体装置102と異なる点を重点的に説明し、同様な箇所に関しては説明を省略する。なお、スリット部51は、上述の変形例4と同様に、ブロック体50に小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80のパターンを転写させた形の凹部として形成されている。
【0109】
変形例5における半導体装置103は、スリット部51がモールド樹脂60で満たされている。よって、エミッタ用パッド12a間に配置された小電流用配線(131,133,134)及び絶縁性保護膜80がモールド樹脂60によって拘束されるので、小電流用配線(131,133,134)の断線を抑制することができる。また、絶縁性保護膜80に塵埃や水滴などが付着することを抑制できる。
【0110】
なお、変形例5においては、一つの部材からなるブロック体50を採用している。よって、スリット部51は、ブロック体50における半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して垂直な端部まで繋がって開口していると好ましい。つまり、ブロック体50は、第2接着剤72でエミッタ用パッド12aに接続され、且つモールド樹脂60でモールドされる前の状態においては、スリット部51がブロック体50の外部と連通している。換言すると、ブロック材(50)は、第2接着剤72を介してエミッタ用パッド12aと接続された際に、スリット部51が半導体チップ10の表面に対して平行方向に貫通されている。このようにすることによって、スリット部51内にモールド樹脂60が入り込むのを容易にすることができる。
【0111】
また、スリット部51の平行方向における幅は、モールド樹脂60内に設けられたフィラーの大きさよりも広いと好ましい。このようにすることによっても、スリット部51内にモールド樹脂60が入り込むのをより一層容易にすることができる。
【0112】
当然ながら、このようにしても、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0113】
(変形例6)
上述の実施の形態においては、大電流用外部接続端子の第2部材として、ブロック体50とエミッタ用端子20を用いる例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図11に示す変形例6の半導体装置104のように、一つのエミッタ用端子2050を用いてもよい。換言すると、大電流用外部接続端子の第2部材としては、上述のエミッタ用端子20とブロック体50とが一体的に形成されたものを採用してもよい。なお、この図11は、上述の実施の形態における図3(b)に相当する断面図である。
【0114】
変形例6における半導体装置104は、エミッタ用端子20とブロック体50とが一つの部材(一括で一体的に形成された部材)からなる点が上述の実施の形態における半導体装置100と異なる。その他の点に関しては、変形例6における半導体装置104と上述の実施の形態における半導体装置100とは同様である。よって、ここでは、変形例6の半導体装置104における、上述の実施の形態における半導体装置100と異なる点を重点的に説明し、同様な箇所に関しては説明を省略する。
【0115】
変形例6におけるエミッタ用端子2050は、半導体素子10の表面に形成されたエミッタ用パッド12aに第2接着剤72を介して電気的、熱的、且つ機械的に接続されるものである。また、エミッタ用端子2050は、上述の実施の形態におけるエミッタ用端子20とブロック体50とが一括で一体的に形成された部材である。さらに、エミッタ用端子2050は、上述のブロック体50と同様な金属材料によって形成される。
【0116】
よって、エミッタ用端子2050は、両端面(モールド樹脂60の外部に露出する放熱部(放熱面)20b、エミッタ用パッド12aとの接続面)が平坦面をなすものである。また、エミッタ用端子2050は、一部がモールド樹脂60の外部に露出し、小電流用配線を覆っている絶縁性保護膜80に対向する位置にスリット部51が設けられている。なお、エミッタ用端子2050は、ワイヤ42bの高さを確保するためのものでもある。
【0117】
つまり、エミッタ用端子2050は、上述の実施の形態と同様に、半導体装置100と外部装置との接続のために接続部20aがモールド樹脂60の外部に露出しているとともに、半導体素子10の放熱のために放熱部20b(エミッタ用パッド12bとの接続面の反対面)がモールド樹脂60の外部に露出している。また、スリット部51は、上述の実施の形態と同様に、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位に対向して設けられている。換言すると、エミッタ用端子2050は、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位に対向して、周辺よりも窪んだ凹部(スリット部51)が設けられている。つまり、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位は、対向する領域にスリット部51の深さの分だけの空間(空隙)が形成されることになる。
【0118】
なお、このスリット部51は、第2接着剤72がエミッタ用端子2050を伝って絶縁性保護膜80上に移動しないように、十分深い必要がある。例えば、スリット部51は、第2接着剤72の余剰分(供給量から完成時(接続後)にエミッタ用パッド12aとブロック体50との間に存在する量を減算した量)よりも大きな容積であると好ましい。さらに、ブロック体50が第2接着剤72との接着性がよければ(例えば、第2接着剤72として半田を用いた場合は、半田濡れ性が良好であれば)より一層好ましい。つまり、このようにすることによって、絶縁性保護膜80に第2接着剤72が接触するのを抑制することができる。
【0119】
このようにしても、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0120】
(変形例7)
上述の変形例6においては、スリット部51にモールド樹脂60が設けられない例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図12に示す変形例7の半導体装置105のように、スリット部51は、モールド樹脂60で満たされるようにしてもよい。この図12は、上述の実施の形態における図3(b)に相当する断面図である。
【0121】
なお、変形例7における半導体装置105、スリット部51がモールド樹脂60で満たされている点が上述の変形例6における半導体装置104と異なる。その他の点に関しては、変形例7における半導体装置105と上述の変形例6における半導体装置104とは同様である。よって、ここでは、変形例7の半導体装置105における、上述の変形例6における半導体装置104と異なる点を重点的に説明し、同様な箇所に関しては説明を省略する。
【0122】
変形例7における半導体装置105は、スリット部51がモールド樹脂60で満たされている。よって、エミッタ用パッド12a間に配置された小電流用配線(131,133,134)及び絶縁性保護膜80がモールド樹脂60によって拘束されるので、小電流用配線(131,133,134)の断線を抑制することができる。また、絶縁性保護膜80に塵埃や水滴などが付着することを抑制できる。
【0123】
なお、変形例7においては、一つの部材からなるエミッタ用端子2050を採用している。よって、スリット部51は、エミッタ用端子2050における半導体素子10のエミッタ用パッド12aの形成面に対して垂直な端部まで繋がって開口していると好ましい。つまり、エミッタ用端子2050は、第2接着剤72でエミッタ用パッド12aに接続され、且つモールド樹脂60でモールドされる前の状態においては、スリット部51がエミッタ用端子2050の外部と連通している。このようにすることによって、スリット部51内にモールド樹脂60が入り込むのを容易にすることができる。
【0124】
また、スリット部51の平行方向における幅は、モールド樹脂60内に設けられたフィラーの大きさよりも広いと好ましい。このようにすることによっても、スリット部51内にモールド樹脂60が入り込むのをより一層容易にすることができる。
【0125】
当然ながら、このようにしても、小電流用配線を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0126】
(変形例8)
なお、上述の実施の形態においては、小電流用配線(ゲート用配線131)は、半導体素子10の表面11の周縁に配線されるとともに、この周縁から複数本が中心線側に配線されている例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図13(a),(b)に示す変形例8の半導体装置のように、ゲート用配線131を配線するようにしてもよい。なお、図13(a),(b)は、上述の実施の形態における図2(a),(b)に相当する平面図である。また、図13(a),(b)においては、小電流用端子、モールド樹脂などは省略している。
【0127】
図13(a),(b)に示すように、ゲート用配線131は、半導体素子10の表面11の周縁、及び半導体素子10の表面11の中心線に沿って配線されるとともに、この中心線に沿って配線された部位から周縁方向に向かって複数本(ここでは4本)が配線(配置、引き回)されるようにしてもよい。つまり、中心線に沿って配線されたゲート用配線131の一部、及び中心線に沿って配線された部位から周縁方向に向かって配線されたゲート用配線131の一部が複数のエミッタ用パッド12aに挟まれる領域に配置されている。
【0128】
さらに、図13(a),(b)に示すように、中心線に沿って配線された部位から周縁方向に向かって配線されたゲート用配線131の先端と、半導体素子10の表面11の周縁に配線されたゲート用配線131との間には、小電流用配線は設けられていない。よって、この場合、図13(b)に示すように、ブロック体50は、一つの部材からなるものを採用することができる。換言すると、ブロック体50は、複数の独立したものでなくてもよい。つまり、変形例8におけるブロック体50は、各エミッタ用パッド12bに対応(対向)する部位と、この部位を連結する部位(連結部)とからなる。この連結部は、ブロック体50を第2接着剤72でエミッタ用パッド12bに接続した状態において、ゲート用配線131の先端と周縁に配線されたゲート用配線131との間(小電流用配線は設けられていない領域)に対向する位置に設けられる。
【0129】
このようにすることで、複数のブロック体50を用いることなく、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位に対向して、周辺よりも窪んだ凹部(スリット部51)を設けることができる。
【0130】
よって、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0131】
(変形例9)
なお、上述の実施の形態においては、小電流用配線(ゲート用配線131)は、半導体素子10の表面11の周縁に配線されるとともに、この周縁から複数本が中心線側に配線されている例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。図14(a),(b),図15に示す変形例9の半導体装置のように、ゲート用配線131を配線するようにしてもよい。なお、図14(a),(b)は、上述の実施の形態における図2(a),(b)に相当する平面図である。また、図15は、上述の実施の形態における図2(b)に相当する平面図である。
【0132】
図14(a),(b),図15に示すように、ゲート用配線131は、半導体素子10の表面11の周縁にのみ配線(配置、引き回)される。この場合、エミッタ用パッド12bは、ゲート用配線131に囲まれた領域であり、温度センサ用配線133,134を除く領域に設けられる。従って、エミッタ用パッド12bは、温度センサ用配線133,134を除く一つの領域に設けられており、複数の領域に分割されていなくてもよい。つまり、エミッタ用パッド12bは、温度センサ用配線133,134が配置されている部分に切り込みが設けられている。具体的には、エミッタ用パッド12bは、コ字形状(ここでは、コ字形状を180度回転させた形状)に設けられている。よって、温度センサ用配線133,134の一部が2つのエミッタ用パッド12aに挟まれる領域に配置されている。
【0133】
さらに、変形例9においては、図14(b)に示すように、ブロック体50は、同じ形状(ここでは同じ矩形形状、且つ同じ面積)の二つの部材(ブロック体50)を採用することができる。このようにすることで、複数のブロック体50を、隣り合うブロック体50との間に間隔を隔てて配置するだけで、容易にスリット部51を形成することができる。
【0134】
または、変形例9においては、図15に示すように、ブロック体50は、一つの部材からなるものを採用することができる。換言すると、ブロック体50は、複数の独立したものでなくてもよい。つまり、変形例9におけるブロック体50は、エミッタ用パッド12bの形状に対応した形状を有するものを採用することができる。
【0135】
一例として、この変形例9におけるブロック体50は、図15に示すように、スリット部51は、ブロック体50が第2接着剤72を介してエミッタ用パッド12bと接続された際に、半導体チップ10の表面に対して垂直方向に貫通しているようにしてもよい。
【0136】
このようにすることで、複数のブロック体50を用いることなく、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80における、エミッタ用パッド12aで挟まれている部位に対向して、周辺よりも窪んだ凹部(スリット部51)を設けることができる。
【0137】
よって、小電流用配線(131,133,134)を覆っている絶縁性保護膜80の表面に、エミッタ用パッド12aに電気的に接続された第2接着剤72が配置されることを抑制することができる。従って、絶縁性保護膜80に亀裂が生じたとしても、小電流用配線(131,133,134)が自身よりも大電流が流れるエミッタ用パッド12aや第2接着剤72とショートすることを抑制できる。
【0138】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0139】
10 半導体素子(半導体チップ)、11 表面、12a エミッタ用パッド、12b コレクタ用パッド、131 ゲート用配線(小電流用配線)、131a ゲート用パッド、132 エミッタ用小電流配線(小電流用配線)、132a エミッタ用小電流パッド、133,134 温度センサ用配線(小電流用配線)、133a,134a 温度センサ用パッド、14 温度センサ、20 エミッタ用端子(大電流用外部接続端子、端子部、第2部材)、20a 接続部(大電流用外部接続端子、端子部、第2部材)、20b 放熱部(大電流用外部接続端子、端子部、第2部材)、2050 エミッタ用端子(大電流用外部接続端子、第2部材)、30 コレクタ用端子(大電流用外部接続端子、第1部材)、30a 接続部、30b 放熱部、41 ゲート用端子(小電流用外部接続端子)、42 エミッタ用小電流端子(小電流用外部接続端子)、42b ワイヤ、43,44 温度センサ用端子(小電流用外部接続端子)、50 ブロック体(大電流用外部接続端子、第2部材)、51 スリット部、60 モールド樹脂(絶縁性樹脂)、71 導電性接着剤(第1接着剤)、72 導電性接着剤(第2接着剤)、73 導電性接着剤(第3接着剤)、80 絶縁性保護膜(絶縁膜)、90 接続部材、100〜105 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワートランジスタと、当該パワートランジスタにおける大電流が流れる大電流用電極(12a,12b)と、当該大電流用電極(12a,12b)に流れる電流よりも小電流が流れる小電流用配線(131,133,134)とを含む半導体チップ(10)と、
前記大電流用電極(12a,12b)に電気的に接続された金属からなる大電流用外部接続端子(20,30,50,2050)と、を備え、
前記半導体チップ(10)、前記大電流用外部接続端子(20,30,50,2050)が一体的に絶縁性樹脂(60)にてモールドされた半導体装置であって、
前記小電流用配線(131,133,134)は、前記半導体チップ(10)の少なくとも一つの表面に絶縁性保護膜(80)によって覆われた状態で設けられ、
前記大電流用電極(12a,12b)は、前記半導体チップ(10)の前記小電流用配線(131,133,134)が設けられた表面及び該表面の反対面に設けられ、
前記小電流用配線(131,133,134)と同じ面に形成された前記大電流用電極(12a)は、当該小電流用配線(131,133,134)の周辺に設けられ、
前記小電流用配線(131,133,134)上を除く前記大電流用電極(12a,12b)上には導電性接着剤(71,72)が設けられるものであり、
前記大電流用外部接続端子(20,30,50,2050)は、
一部が前記絶縁性樹脂(60)の外部に露出し、前記反対面に形成された前記大電流用電極(12b)に前記導電性接着剤としての第1接着剤(71)を介して接続された第1部材(30)と、
前記表面に形成された前記大電流用電極(12a)に前記導電性接着剤としての第2接着剤(72)を介して接続されるものであり、一部が前記絶縁性樹脂(60)の外部に露出し、前記小電流用配線(131,133,134)を覆っている前記絶縁性保護膜(80)に対向する位置にスリット部(51)が設けられた第2部材(20,50,2050)と、を備え、
前記スリット部(51)は、前記小電流用配線(131,133,134)を覆っている前記絶縁性保護膜(80)に対向して開口していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2部材(20,50)は、一部が前記絶縁性樹脂(60)の外部に露出するものであり外部装置との電気的な接続部位である端子部(20)と、前記第2接着剤(72)を介して前記大電流用電極(12a)と接続される部位であり、当該大電流用電極(12a)との接続面の反対面において導電性接着剤である第3接着剤(73)を介して前記端子部(20)と接続される複数のブロック体(50)と、を含み、
各ブロック体(50)は、隣り合うブロック体(50)との間に前記スリット部(51)となる間隔を隔てて配置されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記端子部(20)は、隣り合う前記ブロック体(50)間の前記スリット部(51)を覆いつつ、複数の前記ブロック体(50)に前記第3接着剤(73)を介して接続されることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
各ブロック体(50)は、隣り合うブロック体(50)と一部が接触しつつ、前記大電流用電極(12a)との接続部位から前記端子部(20)側への所定範囲において、隣り合うブロック体(50)との間に間隔が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記スリット部(51)は、前記ブロック体(50)が前記第2接着剤(72)を介して前記大電流用電極(12a)と接続された際に、前記半導体チップ(10)の表面に対して垂直方向に貫通していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記スリット部(51)は、前記ブロック体(50)に前記小電流用配線(131,133,134)を覆っている前記絶縁性保護膜(80)のパターンを転写させた形の凹部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ブロック材(50)は、前記第2接着剤(72)を介して前記大電流用電極(12a)と接続された際に、前記スリット部(51)が前記半導体チップ(10)の表面に対して平行方向に貫通していることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記スリット部(51)は、前記絶縁性樹脂(60)で満たされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2部材(2050)は、一つの部材からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2部材(2050)は、前記第2接着剤(72)を介して前記大電流用電極(12a)と接続された際に、前記スリット部(51)が前記半導体チップ(10)の表面に対して平行方向に貫通していることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記スリット部(51)は、前記絶縁性樹脂(60)で満たされていることを特徴とする請求項9又は10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記スリット部(51)の前記平行方向における幅は、前記絶縁性樹脂(60)内に設けられたフィラーの大きさよりも広いことを特徴とする請求項8又は11に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−191012(P2012−191012A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53371(P2011−53371)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】