説明

半導体製造プロセスの過程で導電面を不動態化するための方法

半導体ウェハの製造プロセスが開示されている。メタル配線の表面に発生するデンドライトや電気分解反応を抑止するため、半導体ウェハに対して溶液が適用される。その溶液は、CMP処理の際又はCMP洗浄後処理の際に適用される。その溶液は、界面活性剤及び防食剤を含む。一実施形態では、その溶液中に含まれる界面活性剤の濃度が約1重量パーセント未満に設定され、防食剤の濃度が約1重量パーセント未満に設定される。また、その溶液は、溶媒及び共溶媒を含むこともできる。別の実施形態では、その溶液が、界面活性剤及び防食剤を含まず、溶媒及び共溶媒を含む。一実施形態では、CMP処理及びCMP洗浄後処理を、約1μm未満の波長を持つ光の存在下で実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、より詳しくは、化学的機械研磨(CMP)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの過程において、電流源が存在する条件下で、メタル配線が、電解セルのアノード及びカソードのいずれか一方として機能する場合がある。電解質が存在する条件下では、メタル配線からそれ以外へと電流が流れて、電気分解を引き起こすことがある。前記電解質は、半導体ウェハが濡れているときに化学的機械研磨(CMP)の過程で発生する。電気分解の過程では、メタル配線(アノード)が酸化されてイオンを形成し、そのイオンが移動して他のメタル配線(カソード)で還元される。アノードにて酸化される金属が溶解することによって、配線間に空隙や電気的な断線が発生する虞がある。いずれの場合(短絡又は断線)にも、電気分解が電気回路に欠陥を生じさせ、装置の信頼性を低下させてしまう。
【0003】
電気分解の発生に必要な電流源は、熱又は光により発生するシリコンレベルでの電子−正孔の対の生成を含む現象に起因して生じる。シリコンに対するバンドギャップ(〜1.1eV)よりも大きいエネルギーを有する光子(例えば光)の存在下では、電子−正孔の対が生成されると共に、PN接合部において分離することがある。そのような条件下では、電気ポテンシャルがウェハ表面での電気分解に対して好都合となり、光による電子−正孔の対の生成が電流源としての機能を発揮する。電流量は、PN接合の面積、P領域とN領域との相対ドーピング、及び、吸収された光子の位置や量等と釣り合っている。電子−正孔の対は、半導体ウェハの吸収作用及び減衰共同作用に従い同半導体ウェハの表面付近にて生成される。吸収される放射線の量は、ベールの法則の関係に従うのが一般的であり、半導体ウェハの表面からの深さに応じて指数関数的に減衰する。これらの光子(電流をもたらす光子の割合)の収集効率は、光子エネルギー、ドーパント型、ドーパント濃度分布、再結合速度、及び生成速度等の多くの因子に依存している。
【0004】
電気分解の発生(即ち、デンドライトの形成)を最小限に抑える方法の一つに、キャリアである光の発生を阻止するため、製造室内の照明等が消された暗室内で半導体ウェハを磨いたり研磨したりする方法がある。ところが、暗がりやほのかな光の中で半導体ウェハを処理すれば、デンドライトの形成は抑制されるものの、デバイスの構造や製造プロセスの環境によっては、キャリアである熱の発生が著しい腐食を引き起こす虞がある。更に、暗がりやほのかな光の中でウェハを研磨すれば、技術者や作業者にとって製造室内が見え難くなるため、例えば半導体ウェハの落下や破損、又は人体の負傷といった事故の危険性を増大させることになる。
【0005】
デンドライトの形成や成長を最小限に抑えつつ、作業者や技術者にとって製造室内を見えるようにするため、CMP装置や洗浄機の窓部が不透明材料によって被覆されている。これは、濡れた状態でデンドライトが最も形成され易い半導体ウェハに対して、光を到達させることのないようにするためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、CMP装置に不透明材料を採用すれば、原因不明の理由に対して、例えば研磨液の吐出を停止させるのか、又は半導体ウェハの処理を停止させるのかを決定する際に、作業者や技術者は、処理中の半導体ウェハを見ることができない。更に、何らかの理由により、半導体ウェハを取り除く必要のある場合(例えば、CMP装置内で半導体ウェハが重なり合い処理が停止した場合)、電気分解が発生して半導体ウェハの信頼性に問題が生じたり、歩留まりが悪化したりする虞がある。従って、電気分解とそれによるデンドライトの形成や成長を最小限に抑えながら上記製造プロセスの問題を克服することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
半導体ウェハの表面の洗浄中や洗浄後に、界面活性剤及び防食剤を含むデンドライト抑制溶液が適用される。また、デンドライト抑制溶液は、溶媒、及び共溶媒も含む。デンドライト抑制溶液は、好ましくは、半導体ウェハ上に多くの配線が形成されて、それらがウェハ表面に沿って電気的に絶縁された後に、半導体ウェハに対して適用される。しかし、洗浄中と洗浄後とにおいて、同じ溶液を使用する必要はない。一実施形態では、その溶液を適用した後に、半導体ウェハが乾燥される。化学的機械研磨(CMP)処理での前記溶液の使用法について(図と共に)以下に詳細に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、実施例によって説明されているが、添付図面により限定されるものではない。なお、図中、同じ符号は、同じ構成要素を示している。
図1に示すように、CMPシステム10は、第1プラテン12、第2プラテン14、第3プラテン16、必要に応じて槽18、及び、洗浄機又は非接触型の洗浄装置20を備えている。一般に、第1プラテン12、第2プラテン14、第3プラテン16は同一装置の一部をそれぞれ構成している。CMPシステム10は、CMP処理と、CMP洗浄後処理とに分けられ、CMP処理では、第1プラテン12、第2プラテン14、第3プラテン16、及び槽18が使用され、CMP後処理では、洗浄機20が使用される。第1プラテン12、第2プラテン14、及び第3プラテン16は、半導体ウェハの研磨や平坦化のために使用される。次の処理で不純物汚染を生じさせないようにするためのパーティクル除去が各CMP処理にて行われた後、必要に応じて洗浄処理が実施される。ところで、CMPシステム10は、任意の数のプラテンを備えてもよい。例えば、CMPシステム10は、一つのプラテン、二つのプラテン、又は三つ以上のプラテンを備えることもできる。
【0009】
平坦化後、多数の半導体ウェハが、例えば同一のウェハボックスやコンテナ内に同時に格納されて全て揃うまでの間、水を含む液体の蓄えられた槽内に保存される。一実施形態では、複数の半導体ウェハが、槽18から洗浄機20内の第1ステーションへと同時に搬送される。第1ステーションは積載ステーションであり、第1ステーションには水を含む溶液が蓄えられている。複数の半導体ウェハから一枚ずつ、手動により又はロボットにより積載ステーションから搬送されて、洗浄機20のブラシボックス内に載置される。そして、ブラシによる断続的な機械的作用(ブラッシング)が半導体ウェハに適用され、平坦化後に必要に応じて行う洗浄処理によっても除去されないパーティクルを取り除く。ブラシによって、半導体ウェハからパーティクルが取り除かれた後、成膜処理やエッチング処理等の次工程のプロセス処理のため、スピン回転処理、洗浄処理、及び乾燥処理が実施され、半導体ウェハが更に洗浄されると共に乾燥される。
【0010】
別の実施形態では、第1、第2、第3プラテン12,14,16、及び洗浄機20が同一装置の一部をそれぞれ構成している。この実施形態では、槽と、洗浄機20の積載ステーションとが、ウェハを格納するのに不要とされている。また、別の実施形態では、半導体ウェハ上のパーティクルを除去するためブラシボックス等で機械的作用を加える洗浄機20に替えて、例えば音の力を利用する超音波洗浄機等の非接触式洗浄機20を用いてもよい。電気分解や腐食を低減させるため、界面活性剤、防食剤、溶媒、及び共溶媒(他の溶媒と共に使用される溶媒)が、以下に詳細に説明されるように、最終的にメタルを除去した後の半導体ウェハの処理に使用される。
【0011】
銅溝形成のための銅研磨処理が、図1のCMPシステム10を用いた図2〜図5に示す半導体ウェハの製造について記載されている。図2に示す半導体ウェハ30が、CMPシステム10の第1プラテン12に供給される。なお、半導体ウェハ30の半導体基板32上には、従来の半導体製造プロセスによりバリア層36及び導体層38が形成されている。半導体基板32は、絶縁層33内に形成された凹部43を有し、その絶縁層33は、半導体基板32内に形成されたP領域とN領域とを覆うようにして形成されている。図2には示さないが、半導体基板32は、例えば、シリコン、シリコンゲルマニウム、ガリウム砒素、及び、それらと同類のものからなる半導体層上に誘電体層(例えば、二酸化珪素)を備えてもよい。バリア層36及びメタル層38の一部が凹部34内に形成されることが望ましく、凹部34の外側に形成される他の部分はCMPシステム10によって除去される。一実施形態では、バリア層36及び導体層38として、タンタル、銅、アルミニウム、タングステン、銀、チタニウム、それらと同類のもの、又はそれらの組合せ等が挙げられる。
【0012】
半導体基板30が、導体層38の一部を除去するため第1プラテン12上に載置される。第1プラテン12は、好ましくは銅等の導体層38の塊部分を除去するために使用され、その結果、導体層38は、図3に示す薄い導体層40になる。例えば、導体層38の厚さを約500〜1000nmとしてもよく、また、薄い導体層40の厚さを約20〜200nmとしてもよい。一実施形態において、薄い導体層40の厚さを約100nmとするためには、除去される導体層38の塊部分の厚さが400〜900nmとなる。
【0013】
第1プラテン12を用いて導体層38を研磨するため、砥粒(例えば、アルミニウム含有物(アルミナ)粒子、セリア化合物(セリア)又はシリコン含有物(シリカ)粒子)、銅溶解溶液又は錯化剤(例えば、クエン酸)、酸化剤(例えば、過酸化物)、水、及び界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコール)を含むCMPスラリーが使用される。銅は、酸及び塩基の両方の性質を持ち(即ち、酸及び塩基の両方に溶解する)、錯化剤は、通常は銅イオンを溶解しないCMPスラリーのpHの範囲内で銅含有イオンを溶解させるために使用される。また、第1CMPスラリーは、ウェハ表面の過剰な化学エッチング(孔食)を抑止するために防食剤を含み、また、スラリー中の生物学的成長を抑止するために殺生剤を含む。
【0014】
導体層38を研磨して薄い導体層40を形成した後、半導体ウェハは、手動により又はロボットによって、図1中の矢印13で示されるように第2プラテン14へと搬送される。第2プラテン14は、凹部34内に形成されない薄い導体層40を除去して、図4に示される導体部42を形成するために使用される。
【0015】
幾つかの実施形態では、第2プラテン14によるバリア層36の端面の研磨処理で、タンタル(Ta)又は窒化タンタル(TaN)を約10〜100nmに亘って研磨することが一般的である。一実施形態では、この研磨処理中に、バリア層36が全く除去されない。ところが、別の実施形態では、ウェハ上の密集し、かつ絶縁された領域の研磨速度を異ならせることでバリア層36の幾つかの部分が除去される。一般に、第1プラテン12で使用されるCMPスラリーと類似したスラリーが、第2プラテン14でも使用される。従って、凹部34内に形成されない導体層38、及び薄い導体層40の全てを研磨するためには、同一のプラテンを使用することが望ましい。
【0016】
一実施形態では、凹部34内に形成されない薄い導体層40の全てを除去した後、半導体ウェハが、手動により又は自動的に(例えば、ロボットを用いて)図1中の矢印15で示されるように第3プラテン16へと搬送される。一般に、軟質なバフパットは、配線領域46と配線バリア44とを形成するため、絶縁層33上に形成されたバリア層36の一部と、いくらかの犠牲的な誘電体層(又はキャッピング)とを除去するために使用される。一般に、犠牲的な誘電体(又はキャッピング)は低誘電率材料ではなく、絶縁層33の露出面が低誘電率材料であり、そのことが、作製される半導体装置の電気抵抗を低減させている。従って、電気抵抗値を最小限に抑えるため、キャッピングとしての誘電体を除去することが望ましい。
【0017】
第3プラテンによる研磨の間にバリア層36が除去されると、導体層38及び薄い導体層40とは異なり、配線46間が半導体ウェハの表面に沿って相互に電気的に接続されなくなる(例えば、絶縁層33上に導体層が存在しなくなる)。配線46が半導体ウェハの表面に沿って互いに電気的に接続されなくなると、導体部42が共に短絡されずに電気分解により電流を流すことができるため、CMP処理の間にデンドライトの発生頻度を増大させてしまう。これは、導体層38,40やバリア層36により周辺光が遮断されず、絶縁層33を通過してP領域とN領域とに到達することにより、光による電子−正孔の対の生成を開始させるためである。このようにして、P領域及びN領域は、電解セルの電流源としての機能を果たす。その場合、配線46はアノード及びカソードとなり、CMPスラリーが電解質となる。
【0018】
実際には、バフ研磨処理中に、半導体ウェハの各部分が種々の異なる研磨速度によって研磨される。そのため、半導体ウェハのある領域内で、配線46の外側に形成されるバリア層36の一部が除去されると、それにより、光がP領域及びN領域に到達する。一方、他の領域内では、バリア層36が、配線46の外側に存在したままである。そのため、配線46の外側に形成されるバリア層36の全てを除去するため、半導体ウェハの幾つかの領域が必要以上に研磨される。よって、P領域及びN領域はその上部にバリア層36を有しなくなることで研磨時に光に晒されてデンドライトが形成されるものの、その研磨時にデンドライト抑制溶液を使用することでデンドライトの形成が低減される。
【0019】
界面活性剤、防食剤、溶媒及び共溶媒、存在する他の溶媒とは異なる溶媒を含むデンドライト抑制溶液が使用される。一実施形態では、界面活性剤として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンオキシドのブロック共重合体(PPO)又はポリプロピレンオキシド(PEO)、硫酸ドデシルアンモニウム、アルキルフェノールエーテルリン酸塩、アミノエチルイミダゾリン、それらと同類のもの、又はそれらの組合せ等が挙げられ、また、防食剤としては、ベンゼントリアゾール(BTA)、トリアゾール、カフェイン、テオフィリン、ビピリジル、それらと同類のもの、又はそれらの組合せ等が挙げられる。
【0020】
一実施形態では、界面活性剤及び防食剤が、デンドライト抑制溶液中にそれぞれ約100〜500ppm含まれている。好ましい実施形態では、界面活性剤及び防食剤の濃度が、デンドライト抑制溶液の1重量パーセント(1wt%)以下に設定されている。界面活性剤及び防食剤のいずれもが有機物であり、デンドライト抑制溶液に対するそれらの溶解度には上限があり、そのことが、半導体ウェハ表面でのカーボンによる欠陥の発生頻度を増大させている。このことから、界面活性剤及び防食剤の総濃度を最小限に抑えることが望ましい。防食剤の存在により、腐食とデンドライトの成長とが低減される。しかしながら、防食剤だけを用いれば(即ち、共溶媒無し)、結果として、不均一な濡れ又は乾燥に起因して、望ましくない欠陥を生じさせてしまう虞がある。
【0021】
デンドライト抑制溶液中に含まれる共溶媒の存在により、防食剤の溶解度を増大させ、配線領域46と共に防食剤の吸収反応速度を増大させることができる。また、エチレングリコール、メチルアルコール、又は他の無極性化学物質と、極性を有する水溶媒とを含むことで、ウェハ表面の疎水性表面及び親水性表面のいずれに対しても濡れを増大させている。しかも、界面活性剤は、ウェハ表面の疎水性表面及び親水性領域の濡れを均一にすることも可能にする。これらの有利点は、CMP処理やCMP洗浄後処理中に生じる表面欠陥を減少させるという結果をもたらす。
【0022】
溶媒及び共溶媒としては、水、アルコール、グリコール(例えば、エチレングリコール)、アセトニトリル、アセトン、プロピレン・カーボネート、及びそれらと類似したものが使用され、溶媒は、共溶媒と種類の異なるものが使用される。例えば、水を溶媒とした場合、共溶媒をエチレングリコールとすることができる。好ましい実施形態では、共溶媒が、デンドライト抑制溶液の約0.5〜50重量パーセント(0.5〜50wt%)に設定され、好ましくは、1〜10重量パーセントに設定される。
【0023】
バフ研磨後、半導体ウェハは、CMP処理を実施した結果、半導体ウェハ上に残存するあらゆるパーティクルを除去するため、第3プラテン16上にて洗浄処理される。また、デンドライト抑制溶液中には殺生剤も含まれている。一実施形態では、防食剤が界面活性剤であるため、防食剤を界面活性剤とは別に用意する必要はない。
【0024】
CMP洗浄後処理の際にもデンドライト抑制液は使用されるものの、以下に示すように、その化学的性質や濃度は全ての処理に対して同じである必要はない。ウェハを洗浄処理した後、該ウェハは、手動により又はロボットによって、図中の矢印17で示されるように第3プラテン16から槽18へと搬送される。その後、他の半導体ウェハと共に、図中の矢印19で示されるように洗浄機20へと搬送される。それに替わる方法では、ウェハが、第3プラテン16から洗浄機20へと直接搬送される。更に別の実施形態では、洗浄機20が非接触式洗浄装置20であり、半導体ウェハが、第3プラテン16から非接触式洗浄装置20へと搬送される。槽18内、洗浄機20の全ての部位(即ち、積載ステーション、ブラシボックス、及び、スピン回転−リンス−乾燥処理)、又は、超音波洗浄装置内に蓄えられる溶液中にデンドライト抑制溶液が含まれてもよい。
【0025】
一方、砥粒のゼータ電位を調整するため、洗浄機20のブラシボックスで使用されるデンドライト抑制溶液には、例えばクエン酸等の他の化学物質も含まれている。ゼータ電位は、ウェハ表面又は砥粒に存在する表面電荷を示唆する。砥粒又はウェハの表面によっては、砥粒とウェハ表面との間に生じる反発力を増大させるように、ゼータ電位が溶液中で操作される。また、ゼータ電位は、砥粒の安定性を予知し、かつ制御するためにも使用される。砥粒のゼータ電位が増大すると、それに伴い、凝集能も低下する。
【0026】
デンドライト抑制溶液は、上述した任意の処理に対して使用することができる。デンドライト抑制溶液は、溶液中に半導体ウェハを浸漬する方法、半導体ウェハの表面に溶液を吹き付ける方法、又は、半導体ウェハの表面に溶液を注ぐ方法、それらと類似した方法、又はそれらを組み合せた方法を通じて適用される。プラテン上で半導体ウェハを研磨しながらデンドライト抑制溶液を適用する場合、ウェハ表面にデンドライト抑制溶液を吹き付ける方法が好ましく、また、CMP洗浄後処理中にデンドライト抑制溶液を適用する場合、例えば洗浄機内のデンドライト抑制溶液中に半導体ウェハを浸漬する方法が好ましい。更に、デンドライトが形成されて欠陥が存在する虞のある箇所に、他の湿式処理によりデンドライト抑制溶液を使用することも好ましい。デンドライト抑制溶液は、デンドライトや欠陥を最小限に抑えるため、他の任意の処理と共に使用してもよい。例えば、デンドライト抑制溶液の使用時に、製造室内の光を遮断したり薄暗くしたりしてもよく、製造室内の光をつけたまましてもよい。CMPシステム10内で実施される処理に伴うデンドライト抑制溶液の使用を、スピン回転−リンス−乾燥処理のための第3プラテン16から開始することによって、周辺光が十分にあるときでも、デンドライトの形成を十分に低減させることが実験によって確認された。言い換えれば、約1μm未満の波長を持つ光の存在下で全ての処理を実施できるうえに、デンドライトの成長を低減させることができる。また、第2プラテン14上で半導体ウェハと共にデンドライト抑制溶液を使用した実験を実施した。そのような使用は可能ではあるが、デンドライトの成長に関する十分な効果が得られなかった。そのため、第2プラテン14上で使用される溶液のコストが無用に増大するものとして、そのような使用は好ましくない。
【0027】
上記の議論に基づき、特に、半導体ウェハ(即ち、凹部内に形成されない導体材料が除去された)の表面で互いの配線が電気的に絶縁された後のCMP処理の間に、界面活性剤、防食剤、溶媒、及び共溶媒からなるデンドライト抑制溶液を使用することが、デンドライトの成長(即ち、電気分解)を低減させることは、当業者にとって明白である。また、デンドライト抑制溶液によって、表面酸化を抑止して電解セルの一部を構成しないメタル表面の腐食を低減できると共に、そうした腐食による配線内の欠陥を解消して歩留まりの向上を図ることもできる。他の有利点としては、信頼性及びエレクトロマイグレーション耐性の向上が挙げられる。配線−誘電体の界面は、配線内に使用される一成分である銅が拡散し易い経路として知られ、別の欠陥(例えば、カーボンや酸化銅)が、ストレスによる不具合(空隙)を早期に引き起こすと共に、装置の寿命を制限してしまう虞がある。
【0028】
上述した明細書において、本発明は、特定の実施形態を参照して記載されている。しかしながら、以下の特許請求の範囲に記述される本発明の技術的範囲から逸脱しないで、種々の変形や変更が可能であることは、当業者にとって明白である。例えば、本発明は、特定の導体種について記載されているが、これらの導体種を入れ替えてもよいことは、当業者にとって明白である。2つの配線領域が図示されているが、任意の数の配線領域を形成してもよい。更に、他の適切なバリア材料及び配線材料を用いてもよく、任意の数の配線用バリア層及び配線層を用いてもよい。例えば、配線用バリア層は、種々の金属からなる多層構造であってもよい。従って、本明細書及び図面は、限定的なものではなく、例示的なものとみなすべきであり、全ての変更例は、本明細書の技術的範囲内に含まれている。
【0029】
利益、他の利点、及び問題の解決手段が、特定の実施形態を参照して上記に記載されている。しかしながら、利益、他の利点、及び問題を解決するための手段と共に、あらゆる利益、他の利点を生じさせるあらゆる要素、又は問題の発生やより顕著になることに対する解決手段については、全ての特許請求の範囲又は幾つかの特許請求の範囲に関する重要な、必要な、又は本質的な要素や特徴として説明されていない。本明細書を用いた場合、「からなる」やそれを変化させて用いた用語は、包括的にカバーすることを意図して用いられている。例えば、本明細書に記載された要素からなる処理、方法、物品、又は、装置は、記載された要素のみを備えるものではなく、明確には記載されない他の要素や、処理、方法、物品、又は装置に特有の他の要素を備えてもよい。
【0030】
簡潔さや明瞭さのために図中の構成要素が説明され、また、実寸通りに図示する必要の無いことは当業者にとって明白である。例えば、図中の幾つかの構成要素は、本発明の実施形態を理解し易くするため、他の構成要素よりも誇張して図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体ウェハの製造に用いられる化学的機械研磨(CMP)システムの概略構成図。
【図2】図1のCMPシステムを用いた種々の処理段階における半導体ウェハの部分断面図。
【図3】図1のCMPシステムを用いた種々の処理段階における半導体ウェハの部分断面図。
【図4】図1のCMPシステムを用いた種々の処理段階における半導体ウェハの部分断面図。
【図5】図1のCMPシステムを用いた種々の処理段階における半導体ウェハの部分断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの製造方法であって、
複数の導体配線を備える半導体ウェハの表面を洗浄する処理と、
前記複数の配線は、半導体ウェハの表面に沿って電気的に絶縁されていることと、
前記半導体ウェハに溶液を適用する処理と、
前記溶液は、界面活性剤及び防食剤を含むと共に、前記半導体ウェハの洗浄処理中又は洗浄処理後に適用されることと、
前記半導体ウェハに前記溶液を適用した後に同半導体ウェハを乾燥する処理と、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記半導体ウェハの表面の洗浄処理中及び洗浄処理後に前記溶液を適用する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記洗浄処理及び前記乾燥処理の少なくともいずれか一方の処理を約1μm未満の波長を持つ光の存在下で実施する方法。
【請求項4】
請求項8に記載の方法において、
前記洗浄処理及び前記乾燥処理の両処理を約1μm未満の波長を持つ光の存在下で実施する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記界面活性剤は、前記防食剤を含む方法。
【請求項6】
半導体ウェハの製造方法であって、
半導体ウェハのCMP処理を実施することと、
前記半導体ウェハのCMP洗浄後処理を実施することと、
前記CMP処理及び前記CMP洗浄後処理の少なくともいずれか一方の処理中に前記半導体ウェハに対する溶液の適用を実施することと、
前記溶液は、溶媒及び共溶媒を含むことと、
を備える方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記CMP洗浄後処理は、前記半導体ウェハの表面に対して機械的作用を適用することを含み、前記溶液の適用を、少なくとも前記半導体ウェハの表面に対する前記機械的作用の適用中に実施する方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、
前記CMP処理は、前記半導体ウェハの表面をバフ研磨することを含み、前記溶液の適用を、少なくとも前記バフ研磨処理中に実施する方法。
【請求項9】
半導体ウェハの製造プロセスに用いられる溶液であって、
ポリエチレングリコール(PEG)、ブロック共重合体、又はポリプロピレングリコール(PPG)からなる界面活性剤と、
ベンゼントリアゾール、カフェイン、テオフィリン、ビピリジル、又はトリアゾールからなる防食剤と、
水、アルコール、グリコール、アセトン、アセトニトリル、又はプロピレン・カーボネートからなる溶媒と、
前記溶媒とは異なる溶媒であって、アルコール、グリコール、アセトン、アセトニトリル、又はプロピレン・カーボネートからなる共溶媒と、
を含む溶液。
【請求項10】
請求項9に記載の溶液において、
前記溶液中に含まれる前記界面活性剤の濃度が約1重量パーセント未満であると共に、同溶液中に含まれる前記防食剤の濃度が約1重量パーセント未満である溶液。
【請求項11】
半導体ウェハの製造方法であって、
半導体ウェハのCMP処理を実施することと、
前記半導体ウェハのCMP処理を実施した後に同半導体ウェハのCMP洗浄後処理を実施することと、
前記半導体ウェハに溶液を適用することと、
を備え、
前記溶液は、ブロック共重合体、共溶媒、防食剤、及び錯化剤を含む方法。
【請求項12】
請求項30に記載の方法において、
前記半導体ウェハに対する前記溶液の適用を前記CMP洗浄後処理の間に実施する方法。
【請求項13】
請求項30に記載の方法において、
前記溶液は、溶媒及び共溶媒を更に含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−511894(P2007−511894A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532518(P2006−532518)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/013373
【国際公開番号】WO2004/102620
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】