半導体集積回路および無線通信装置
【課題】小規模かつ低消費電力で発振信号を生成可能な半導体集積回路およびこれを用いた無線通信装置を提供する。
【解決手段】半導体集積回路は、デジタル制御発振器と、カウンタと、時間デジタル変換器と、加算器と、制御信号生成部と、を備える。時間デジタル変換器は、発振信号と参照信号との位相差に対応する第3のデジタル信号を生成する。前記時間デジタル変換器は、分周器と、複数のインピーダンス素子と、位相差検出部と、を有する。分周器は、前記発振信号を分周して複数の分周信号を生成する。複数のインピーダンス素子は、前記複数の分周信号を分圧して、前記発振信号を遅延させた複数の遅延信号を生成する。位相差検出部は、前記参照信号と、前記複数の遅延信号のそれぞれと、を比較することにより、前記参照信号と前記発振信号との位相差に対応する前記第3のデジタル信号を出力する。
【解決手段】半導体集積回路は、デジタル制御発振器と、カウンタと、時間デジタル変換器と、加算器と、制御信号生成部と、を備える。時間デジタル変換器は、発振信号と参照信号との位相差に対応する第3のデジタル信号を生成する。前記時間デジタル変換器は、分周器と、複数のインピーダンス素子と、位相差検出部と、を有する。分周器は、前記発振信号を分周して複数の分周信号を生成する。複数のインピーダンス素子は、前記複数の分周信号を分圧して、前記発振信号を遅延させた複数の遅延信号を生成する。位相差検出部は、前記参照信号と、前記複数の遅延信号のそれぞれと、を比較することにより、前記参照信号と前記発振信号との位相差に対応する前記第3のデジタル信号を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体集積回路および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線通信装置には、信号を変調および復調する基準となるLO(Local Oscillator)信号を生成するためのPLL(Phase Lock Loop)回路が搭載されていることがある。近年では、すべての処理をデジタル回路で構成したADPLL(All Digital Phase Lock Loop)回路が搭載されることも多い。
【0003】
ADPLL回路では、生成されたLO信号と、外部から入力される参照信号との位相差をデジタル値に変換する時間デジタル変換器(Time to Digital Converter:以下、TDC)が用いられる。従来のTDCでは、インバータ等の遅延素子を直列接続したものが一般的である。しかしながら、半導体製造プロセスのばらつき等に起因して遅延素子の遅延時間がばらつくこともある。そのため、複雑な演算を行って位相差情報を規格化する必要がある。その結果、PLL回路の規模が大きくなったり、消費電力が増大してしまったりするという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Erwan Le Roux et al., "A 1V RF SoC with an 863-to-928MHz 400kb/s Radio and a 32b Dual MAC DSP Core for Wireless Sensor and Body Networks", ISSCC 2010/SESSION 25/WIRELESS CONNECTIVITY/25.8, pp. 464-465.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小規模かつ低消費電力で発振信号を生成可能な半導体集積回路およびこれを用いた無線通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、半導体集積回路は、デジタル制御発振器と、カウンタと、時間デジタル変換器と、加算器と、制御信号生成部と、を備える。デジタル制御発振器は、第1のデジタル信号に応じた周波数の発振信号を生成する。カウンタは、前記発振信号のパルス数をカウントし、参照信号に同期して、カウント値を第2のデジタル信号として出力する。時間デジタル変換器は、前記発振信号と前記参照信号との位相差に対応する第3のデジタル信号を生成する。加算器は、前記第2および第3のデジタル信号を加算して第4のデジタル信号を生成する。制御信号生成部は、前記参照信号に同期して周波数設定値を積算した値と、前記第4のデジタル信号と、に基づいて、前記発振信号の周波数が所定値に近づくよう前記第1のデジタル信号を生成する。前記時間デジタル変換器は、分周器と、複数のインピーダンス素子と、位相差検出部と、を有する。分周器は、前記発振信号を分周して複数の分周信号を生成する。複数のインピーダンス素子は、前記複数の分周信号を分圧して、前記発振信号を遅延させた複数の遅延信号を生成する。位相差検出部は、前記参照信号と、前記複数の遅延信号のそれぞれと、を比較することにより、前記参照信号と前記発振信号との位相差に対応する前記第3のデジタル信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態に係る無線通信装置100の概略ブロック図。
【図2】半導体集積回路200の概略ブロック図。
【図3】図2の半導体集積回路の処理動作の一例を示すフローチャート。
【図4】参照信号REFおよび信号ACC1,ACC2の波形図の一例。
【図5】TDC24の内部構成の一例を示す図。
【図6】TDC24内の遅延信号q[1]〜q[n]および参照信号REFの波形図の一例を示す図。
【図7】PPG32の内部構成の一例を示す回路図。
【図8】PPG32の具体例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、半導体集積回路および無線通信装置の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る無線通信装置100の概略ブロック図である。図1の無線通信装置100は、例えば携帯電話に搭載される。無線通信装置100は、アンテナ1と、切替器(SW)2と、信号送信部3と、信号受信部4とを備えている。なお、無線通信装置100は信号送信部3および信号受信部4のうちの1つのみを備えていてもよい。
【0010】
アンテナ1は電波信号を送信または受信する。切替器2はアンテナ1が電波信号を送信するか受信するかを切り替える。信号送信部3は図示しないベースバンドLSI(Large Scale Integrated circuit)等から入力された入力信号を処理した電波信号をアンテナ1に出力する。信号受信部4はアンテナ1が受信した電波信号を処理して外部に出力する。
【0011】
信号送信部3は、入力信号処理回路5と、第1の半導体集積回路6と、変調回路7と、パワーアンプ(PA)8とを有する。入力信号処理回路5は外部から入力された信号を処理する。第1の半導体集積回路6はLO信号(発振信号)を生成する。このLO信号に基づいて、変調回路7は入力信号処理回路5の出力信号を変調する。パワーアンプ8は変調回路7の出力信号を増幅してアンテナ1へ出力する。
【0012】
信号受信部4は、LNA(Low Noise Amplifier)9と、第2の半導体集積回路10と、復調回路11と、出力信号処理回路12とを有する。LNA9はアンテナ1が受信した電波信号を増幅する。第2の半導体集積回路10はLO信号を生成する。このLO信号に基づいて、復調回路11は、LNA9により増幅された電波信号を復調する。出力信号処理回路12は復調された信号を処理して外部に出力する。
【0013】
第1および第2の半導体集積回路6,10が位相雑音が小さいLO信号を生成できれば、外部からの入力信号、例えば音声/画像信号を所定の圧縮方式でエンコードして送信することや、アンテナ1で受信した信号をデコードして元の音声/画像信号を誤動作なく安定して再生することができる。そこで、本実施形態では、以下のようにして、LO信号を生成する。
【0014】
図2は、図1の第1および第2の半導体集積回路6,10として使用可能な半導体集積回路200の概略ブロック図である。図2の半導体集積回路には、参照信号REFと、周波数設定値FCW(Frequency Command Word)が入力される。参照信号REFは、例えばクリスタル(不図示)により生成される。参照信号REFの周波数Frefはそれほど高くない(例えば13MHz)が、位相雑音は極めて小さい。
【0015】
図2の半導体集積回路は、参照信号REFの周波数Frefより周波数が高いLO信号、より具体的には、Fref*FCWを目標周波数とするLO信号を生成するものである。本実施形態では、Fref=13MHz,FCW=185とし、周波数Floが13MHz*185=2405MHz(約2.4GHz)のLO信号を生成する例を示す。この周波数Floは特定の無線通信で用いられる帯域である。
【0016】
図2の半導体集積回路は、デジタル制御発振器(Digitally Controlled Oscillator:以下、DCO)21と、フリップフロップ(FF)22と、カウンタ23と、TDC24と、加算器25と、アキュムレータ26と、制御信号生成部27とを備えている。
【0017】
DCO21は発振器制御信号OTW(Oscillator Tuning Word、第1のデジタル信号)に応じた周波数のLO信号を生成する。DCO21は、図示していないが、例えば複数のバラクタ容量を2値制御することにより実現され、発振器制御信号OTWが大きいほどLO信号の周波数Floは小さくなる。
【0018】
フリップフロップ22は、データ端子Dに参照信号REFが、クロック端子にLO信号がそれぞれ入力される。そして、フリップフロップ22は、LO信号に同期して、参照信号REFの値を保持する。
【0019】
カウンタ23はアキュムレータ23aを有する。アキュムレータ23aはLO信号がクロックとして入力され、LO信号のパルス数をカウントする。カウンタ23にはフリップフロップ22の出力信号がクロックとして入力される。フリップフロップ22の出力信号に同期して、カウンタ23はアキュムレータ23aのカウント値を信号CNTV(第2のデジタル信号)として出力する。
【0020】
この信号CNTVの値は、LO信号の周波数Floと参照信号REFの周波数Frefとの比Flo/Frefの整数部分に対応する。例えば、LO信号の周波数Floが目標周波数である2405MHzに等しい場合、アキュムレータ23aは2405MHzで1ずつカウントアップするのに対し、カウンタ23はFref=13MHzでアキュムレータ26のカウント値を出力する。そのため、信号CNTVの値は2405MHz/13MHz=185ずつ増加する。この値185は周波数設定値FCWに等しい。一方、周波数Floが2405MHzより高い(低い)場合、信号CNTVの値は185より大きい(小さい)値ずつ増加する。
【0021】
TDC24は、LO信号と参照信号Frefとの位相差を、LO信号の1周期より細かい精度で計測し、計測値を信号d(第3のデジタル信号)として出力する。より具体的には、LO信号を遅延させて得られる、互いに遅延時間が異なる複数の遅延信号の位相と、参照信号Frefの位相とを比較することにより、信号dを生成する。信号dは、比Flo/Frefの小数部分に対応する。
【0022】
後述するように、本実施形態のTDC24は、遅延素子を直列接続して遅延信号を生成するのではなく、分周器で分周信号を生成し、複数の抵抗を用いて分周信号を分圧して遅延信号を生成する。そのため、遅延素子のばらつきを規格化する必要はなく、小規模かつ低消費電力の回路で、信号dを生成できる。詳細は図5以降を用いて説明する。
【0023】
加算器25は信号CNTVと信号dとを加算して、信号ACC2(第4のデジタル信号)として出力する。信号ACC2は比Flo/Frefに対応する。
【0024】
アキュムレータ26には参照信号REFがクロックとして入力される。そして、アキュムレータ26は参照信号REFに同期して周波数設定値FCWを積算し、信号ACC1として出力する。よって、信号ACC1は、参照信号REFに同期して、周波数設定値FCWずつ増加する。
【0025】
制御信号生成部27は、例えば、減算器27aと、ループフィルタ27bと、乗算器27cとを有する。減算器27aは、信号ACC1の値から信号ACC2の値を減じて得られる差分値をループフィルタ27bへ出力する。ループフィルタ27bは、差分値を平滑化し、差分値の高周波成分を除去する。乗算器27cは、ループフィルタ27bの出力値に所定の係数Kを乗じて、発振器制御信号OTWを出力する。
【0026】
制御信号生成部27は、信号ACC1,ACC2に基づいて、LO信号の周波数Floが目標周波数であるFref*FCWに近づくよう、発振器制御信号OTWを制御する。より具体的には、LO信号の周波数Floが2405MHzより高い(低い)場合、信号ACC2が信号ACC1より大きく(小さく)なる。このとき、制御信号生成部27は、周波数Floが低く(高く)なるよう、発振器制御信号OTWを制御する。
【0027】
図3は、図2の半導体集積回路の処理動作の一例を示すフローチャートである。カウンタ23は参照信号REFに同期してLO信号のパルス数をカウントし、比Flo/Frefの整数部に対応する信号CNTVを生成する(ステップS1)。また、TDC24はLO信号と参照信号REFとの位相差を検出し、比Flo/Frefの小数部に対応する信号dを生成する(ステップS2)。
【0028】
続いて、制御信号生成部27は、参照信号REFに同期して周波数設定値FCWを加算した信号ACC1と、比Flo/Frefの整数部分および小数部分を加えた信号ACC2と、に基づいて、発振器制御信号OTWを生成する。より具体的には、ACC1>ACC2である場合、周波数Floは目標周波数FCW*Frefより低い(ステップS3のYES)ので、DCO21が生成するLO信号の周波数が高くなるよう、制御信号生成部27は周波数設定値FCWを生成する(ステップS4)。一方、ACC1<ACC2である場合、周波数Floは目標周波数FCW*Frefより高い(ステップS5のYES)ので、DCO21が生成するLO信号の周波数が低くなるよう、制御信号生成部27は周波数設定値FCWを生成する(ステップS6)。そして、DCO21は生成された周波数設定値FCWに応じた周波数のLO信号を生成する。
【0029】
このようなフィードバック動作を繰り返して、LO信号の周波数Floが目標周波数FCW*Frefに近づくよう制御される。
【0030】
図4は、参照信号REFおよび信号ACC1,ACC2の波形図の一例である。なお、同図では信号ACC1,ACC2が8ビットである例を示している。また、信号ACC2はデジタル信号であるが、説明を簡略化するために小数表記している。
【0031】
図4に示すように、アキュムレータ26が生成する信号ACC1の値は、参照信号REFに同期して、周波数設定値FCWの値である185ずつ増加する。例えば、信号ACC1の値はそれぞれ、時刻t0では0、時刻t1では185、時刻t2では185+185−256=114である。
【0032】
一方、信号ACC2は、上述のように、比Flo/Frefに対応する。例えば、時刻t1〜t2では、信号ACC2の値は185.1であり、信号ACC1の値185より大きい。これは、LO信号の周波数Floが目標周波数である2405MHzより若干高いことを意味する。このとき、制御信号生成部27により、LO信号の周波数が低くなるよう、発振器制御信号OTWが生成される。ここで、185.1の整数部185はカウンタ23により検出され、小数部0.1はTDC24により検出される。
【0033】
一方、時刻t2〜t3では、信号ACC2の値は113.9であり、信号ACC1の値114より小さい。これは、LO信号の周波数Floが目標周波数より若干低いことを意味する。このとき、制御信号生成部27により、LO信号の周波数が高くなるよう、発振器制御信号OTWが生成される。ここで、113.9の整数部113はカウンタ23により検出され、小数部0.9はTDC24により検出される。
【0034】
なお、発振器生成部にはループフィルタ27bが含まれるため、信号ACC1と信号ACC2の大小関係がすぐにLO信号の周波数Floに反映されるわけではない。
【0035】
以下、本実施形態の特徴の1つであるTDC24の内部構成について、詳しく説明する。図5は、TDC24の内部構成の一例を示す図である。TDC24は、分周器(DIV)31と、PPG(Passive Phase Generator)32と、n個のフリップフロップ331〜33n(そのうちの1つをフリップフロップ33kと表記する)およびエンコーダ34から構成される位相差検出部35とを有する。
【0036】
分周器31はLO信号を分周し、例えば90度ずつの位相差を持った4相の分周信号LO1〜LO4を生成する。分周器31は、例えば、Quadrature VCOやリング発振器、ポリフェーズフィルタ等により実現できる。なお、分周器31は4相の分周信号でなく、8相や16相の分周信号を生成してもよい。
【0037】
PPG32は、4相の分周信号LO1〜LO4をさらにm分割して、4*m(=n)相の遅延信号dly[1]〜dly[n]を生成する。なお、遅延信号dly[1]はLO信号そのものである。また、遅延信号dly[1]〜dly[n]の順にdly[1]との位相差、すなわち、遅延時間が大きくなる。PPG32の内部構成は図7を用いて後述する。
【0038】
位相差検出部35は、参照信号REFと、遅延信号dly[1]〜dly[n]のそれぞれと、を比較して、信号dを出力する。より具体的には、フリップフロップ33kは、データ端子Dに対応する遅延信号dly[k]が、クロック端子に参照信号REFがそれぞれ入力される。そして、フリップフロップ33kは、参照信号REFに同期して遅延信号dly[k]の値を保持し、信号q[k]としてそれぞれ出力する。そして、エンコーダ34は、信号q[1]〜q[n]に基づいて、LO信号と参照信号REFとの位相差を示す信号dを生成し、出力する。
【0039】
図6は、TDC24内の遅延信号q[1]〜q[n]および参照信号REFの波形図の一例を示す図である。同図では、時刻t10で遅延信号dly[1]つまりLO信号が立ち上がり、続いて、時刻t20,t30で遅延信号dly[2],dly[3]がそれぞれ立ち上がる様子を示している。
【0040】
ここで、参照信号REFが、時刻t20とt30の間の時刻t25で立ち上がったとすると、フリップフロップ331〜33nのそれぞれは、時刻t25での遅延信号dly[1]〜dly[n]の値を信号q[1]〜q[n]として保持する。その結果、信号q[2]はハイに、信号q[3]はロウにそれぞれ設定される。エンコーダ34は、信号q[2]とq[3]との間で値がハイからロウへ切り替わったことを検出し、これに基づいて、LO信号と参照信号REFとの位相差を示す信号dを出力する。
【0041】
図7は、PPG32の内部構成の一例を示す回路図である。同図は、図5の分周器31により生成される、LO信号を4分周した分周信号LO1〜LO4をさらにm分割して、遅延信号dly[1]〜dly[4m]を生成するものである。
【0042】
PPG32は4m個の抵抗R1〜Rmを有する。抵抗R1〜Rmは分周信号LO1と分周信号LO2との間に直列接続される。抵抗Rm+1〜R2mは分周信号LO2と分周信号LO3との間に直列接続される。抵抗R2m+1〜R3mは分周信号LO3と分周信号LO4との間に直列接続される。抵抗R3m+1〜R4mは分周信号LO4と分周信号LO1との間に直列接続される。ここで、半導体集積回路200から出力されるスプリアスを小さくするため、遅延信号dly[1]〜dly[4m]の遅延時間を等間隔にするのがよい。よって、分周信号の近くに接続される抵抗ほど、抵抗値を大きくするのが望ましい。例えば、R1>R2>・・・<Rm−1<Rmとする。
【0043】
抵抗Rk(k=1〜4m−1)と抵抗Rk+1との接続ノードから遅延信号dly[k+1]が出力され、抵抗R4mと抵抗R1との接続ノードから遅延信号dly[1]が出力される。例えば、遅延信号dly[2]は、分周信号LO1とLO2とを、抵抗R1〜Rmで分圧して得られる。分圧して得られた遅延信号dly[2]の遅延時間は、分周信号LO1の遅延時間と分周信号LO2の遅延時間との間の値となる。他の遅延信号も同様である。
【0044】
なお、分周信号LO1と遅延信号dly[1],LO2とdly[m+1],LO3とdly[2m+1],LO4とdly[3m+1]はそれぞれ同じ信号である。
【0045】
抵抗R1〜Rmの抵抗値を適切な値に設定することにより、遅延時間dly[1]〜dly[4m]の遅延時間を等間隔にすることができる。
【0046】
図8は、PPG32の具体例を示す回路図である。図8のPPG32は、図7においてm=4とした例である。以下、図8のPPG32で、遅延信号dly[1]〜dly[16]の遅延時間を等間隔にするための条件を求める。
【0047】
抵抗R1〜R16の抵抗値は、任意の2つの分周信号間で対称でなければならない。そのため、分周信号の直近に配置される8個の抵抗の抵抗値をr1、他の抵抗の抵抗値をr2とする。また、LO信号およびその分周信号LO1〜LO4は2.4GHz程度の高周波数であるため、その波形は矩形ではなく正弦波で近似できる。さらに、分周信号LO1〜LO4は互いに90度ずつの位相差を有することを考慮すると、下記(1)〜(4)式で表される。
LO1 = sinωt ・・・(1)
LO2 = cosωt ・・・(2)
LO3 = -sinωt ・・・(3)
LO4 = -cosωt ・・・(4)
【0048】
ここで、ω=2π*Floである。例えば遅延信号dly[2]〜dly[4]は、分周信号LO1とLO2とを抵抗R1〜R4で分圧した電圧となる。よって、dly[1]〜dly[5]は下記(5)〜(9)式で表される。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0049】
ここで、A,α,βは下記(10)〜(12)式で表される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0050】
そこで、抵抗値r1,r2が下記(13)式を満たすようにする。
r1=√2*r2 ・・・(13)
【0051】
これにより、α=22.5度、β=67.5度となり、遅延信号dly[1]〜dly[5]を位相が22.5度ずつずれた信号とすることができる。結果として、遅延信号dly[1]〜dly[16]は、360度を16等分した位相差を有し、遅延時間が等間隔となる。これにより、半導体集積回路200から出力されるスプリアスを小さくすることができる。
【0052】
このように、本実施形態のTDC24では、まず、分周器31によりLO信号を分周して複数の分周信号を生成する。次に、複数の抵抗により分周信号を分圧してLO信号の遅延信号を生成する。そのため、複雑な演算を行って位相差情報を規格化する必要がない。よって、規格化のための回路が不要になり、回路の小規模化および低消費電力化が図れる。また、規格化演算が不要なため、フィードバックループの遅延時間が短くすることができ、Fref*FCWを100MHz以上の値に設定して、高周波数(例えば2.4GHz)のLO信号(発振信号)を生成できる。また、TDC24内の抵抗値を調整することにより、複数の遅延信号の遅延時間を等間隔にすることができる。
【0053】
なお、図7および図8において、抵抗に代えて、容量、インダクタ、ゲートが所定電位にバイアスされたトランジスタ等の一般的なインピーダンス素子でもよい。
【0054】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0055】
なお、本実施形態は、以下の態様も含む。
【0056】
請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体集積回路において、前記複数の遅延信号の遅延時間が等間隔になるよう、前記インピーダンス素子のインピーダンス値が設定されてもよい。
【0057】
請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体集積回路において、前記発振信号の周波数は100MHz以上であってもよい。
【0058】
請求項1に記載の半導体集積回路において、前記分周器は、互いに90度ずつの位相差を有する第1乃至第4の分周信号を生成し、前記複数のインピーダンス素子は、前記第l(lは1乃至3の整数)の分周信号と前記第(l+1)の分周信号との間、および、前記第4の分周信号と前記第1の分周信号との間にそれぞれ直列接続される第1乃至第4のインピーダンス素子を含み、前記第1および第4のインピーダンス素子のインピーダンス値をr1、前記第2および第3のインピーダンス素子のインピーダンス値をr2とすると、下記(14)式を満たすことにしてもよい。
【0059】
r1=√2*r2 ・・・ (14)。
【0060】
前記分周器は、Quadrature VCO、リング発振器およびポリフェーズフィルタのいずれかであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 アンテナ
3 信号送出部
4 信号受信部
6,10 半導体集積回路
21 デジタル制御発振器
23 カウンタ
24 TDC
25 加算器
27 制御信号生成部
31 分周器
32 PPG
35 位相差検出部
R1〜R4m 抵抗
100 無線通信装置
200 半導体集積回路
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体集積回路および無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される無線通信装置には、信号を変調および復調する基準となるLO(Local Oscillator)信号を生成するためのPLL(Phase Lock Loop)回路が搭載されていることがある。近年では、すべての処理をデジタル回路で構成したADPLL(All Digital Phase Lock Loop)回路が搭載されることも多い。
【0003】
ADPLL回路では、生成されたLO信号と、外部から入力される参照信号との位相差をデジタル値に変換する時間デジタル変換器(Time to Digital Converter:以下、TDC)が用いられる。従来のTDCでは、インバータ等の遅延素子を直列接続したものが一般的である。しかしながら、半導体製造プロセスのばらつき等に起因して遅延素子の遅延時間がばらつくこともある。そのため、複雑な演算を行って位相差情報を規格化する必要がある。その結果、PLL回路の規模が大きくなったり、消費電力が増大してしまったりするという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Erwan Le Roux et al., "A 1V RF SoC with an 863-to-928MHz 400kb/s Radio and a 32b Dual MAC DSP Core for Wireless Sensor and Body Networks", ISSCC 2010/SESSION 25/WIRELESS CONNECTIVITY/25.8, pp. 464-465.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小規模かつ低消費電力で発振信号を生成可能な半導体集積回路およびこれを用いた無線通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、半導体集積回路は、デジタル制御発振器と、カウンタと、時間デジタル変換器と、加算器と、制御信号生成部と、を備える。デジタル制御発振器は、第1のデジタル信号に応じた周波数の発振信号を生成する。カウンタは、前記発振信号のパルス数をカウントし、参照信号に同期して、カウント値を第2のデジタル信号として出力する。時間デジタル変換器は、前記発振信号と前記参照信号との位相差に対応する第3のデジタル信号を生成する。加算器は、前記第2および第3のデジタル信号を加算して第4のデジタル信号を生成する。制御信号生成部は、前記参照信号に同期して周波数設定値を積算した値と、前記第4のデジタル信号と、に基づいて、前記発振信号の周波数が所定値に近づくよう前記第1のデジタル信号を生成する。前記時間デジタル変換器は、分周器と、複数のインピーダンス素子と、位相差検出部と、を有する。分周器は、前記発振信号を分周して複数の分周信号を生成する。複数のインピーダンス素子は、前記複数の分周信号を分圧して、前記発振信号を遅延させた複数の遅延信号を生成する。位相差検出部は、前記参照信号と、前記複数の遅延信号のそれぞれと、を比較することにより、前記参照信号と前記発振信号との位相差に対応する前記第3のデジタル信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態に係る無線通信装置100の概略ブロック図。
【図2】半導体集積回路200の概略ブロック図。
【図3】図2の半導体集積回路の処理動作の一例を示すフローチャート。
【図4】参照信号REFおよび信号ACC1,ACC2の波形図の一例。
【図5】TDC24の内部構成の一例を示す図。
【図6】TDC24内の遅延信号q[1]〜q[n]および参照信号REFの波形図の一例を示す図。
【図7】PPG32の内部構成の一例を示す回路図。
【図8】PPG32の具体例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、半導体集積回路および無線通信装置の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る無線通信装置100の概略ブロック図である。図1の無線通信装置100は、例えば携帯電話に搭載される。無線通信装置100は、アンテナ1と、切替器(SW)2と、信号送信部3と、信号受信部4とを備えている。なお、無線通信装置100は信号送信部3および信号受信部4のうちの1つのみを備えていてもよい。
【0010】
アンテナ1は電波信号を送信または受信する。切替器2はアンテナ1が電波信号を送信するか受信するかを切り替える。信号送信部3は図示しないベースバンドLSI(Large Scale Integrated circuit)等から入力された入力信号を処理した電波信号をアンテナ1に出力する。信号受信部4はアンテナ1が受信した電波信号を処理して外部に出力する。
【0011】
信号送信部3は、入力信号処理回路5と、第1の半導体集積回路6と、変調回路7と、パワーアンプ(PA)8とを有する。入力信号処理回路5は外部から入力された信号を処理する。第1の半導体集積回路6はLO信号(発振信号)を生成する。このLO信号に基づいて、変調回路7は入力信号処理回路5の出力信号を変調する。パワーアンプ8は変調回路7の出力信号を増幅してアンテナ1へ出力する。
【0012】
信号受信部4は、LNA(Low Noise Amplifier)9と、第2の半導体集積回路10と、復調回路11と、出力信号処理回路12とを有する。LNA9はアンテナ1が受信した電波信号を増幅する。第2の半導体集積回路10はLO信号を生成する。このLO信号に基づいて、復調回路11は、LNA9により増幅された電波信号を復調する。出力信号処理回路12は復調された信号を処理して外部に出力する。
【0013】
第1および第2の半導体集積回路6,10が位相雑音が小さいLO信号を生成できれば、外部からの入力信号、例えば音声/画像信号を所定の圧縮方式でエンコードして送信することや、アンテナ1で受信した信号をデコードして元の音声/画像信号を誤動作なく安定して再生することができる。そこで、本実施形態では、以下のようにして、LO信号を生成する。
【0014】
図2は、図1の第1および第2の半導体集積回路6,10として使用可能な半導体集積回路200の概略ブロック図である。図2の半導体集積回路には、参照信号REFと、周波数設定値FCW(Frequency Command Word)が入力される。参照信号REFは、例えばクリスタル(不図示)により生成される。参照信号REFの周波数Frefはそれほど高くない(例えば13MHz)が、位相雑音は極めて小さい。
【0015】
図2の半導体集積回路は、参照信号REFの周波数Frefより周波数が高いLO信号、より具体的には、Fref*FCWを目標周波数とするLO信号を生成するものである。本実施形態では、Fref=13MHz,FCW=185とし、周波数Floが13MHz*185=2405MHz(約2.4GHz)のLO信号を生成する例を示す。この周波数Floは特定の無線通信で用いられる帯域である。
【0016】
図2の半導体集積回路は、デジタル制御発振器(Digitally Controlled Oscillator:以下、DCO)21と、フリップフロップ(FF)22と、カウンタ23と、TDC24と、加算器25と、アキュムレータ26と、制御信号生成部27とを備えている。
【0017】
DCO21は発振器制御信号OTW(Oscillator Tuning Word、第1のデジタル信号)に応じた周波数のLO信号を生成する。DCO21は、図示していないが、例えば複数のバラクタ容量を2値制御することにより実現され、発振器制御信号OTWが大きいほどLO信号の周波数Floは小さくなる。
【0018】
フリップフロップ22は、データ端子Dに参照信号REFが、クロック端子にLO信号がそれぞれ入力される。そして、フリップフロップ22は、LO信号に同期して、参照信号REFの値を保持する。
【0019】
カウンタ23はアキュムレータ23aを有する。アキュムレータ23aはLO信号がクロックとして入力され、LO信号のパルス数をカウントする。カウンタ23にはフリップフロップ22の出力信号がクロックとして入力される。フリップフロップ22の出力信号に同期して、カウンタ23はアキュムレータ23aのカウント値を信号CNTV(第2のデジタル信号)として出力する。
【0020】
この信号CNTVの値は、LO信号の周波数Floと参照信号REFの周波数Frefとの比Flo/Frefの整数部分に対応する。例えば、LO信号の周波数Floが目標周波数である2405MHzに等しい場合、アキュムレータ23aは2405MHzで1ずつカウントアップするのに対し、カウンタ23はFref=13MHzでアキュムレータ26のカウント値を出力する。そのため、信号CNTVの値は2405MHz/13MHz=185ずつ増加する。この値185は周波数設定値FCWに等しい。一方、周波数Floが2405MHzより高い(低い)場合、信号CNTVの値は185より大きい(小さい)値ずつ増加する。
【0021】
TDC24は、LO信号と参照信号Frefとの位相差を、LO信号の1周期より細かい精度で計測し、計測値を信号d(第3のデジタル信号)として出力する。より具体的には、LO信号を遅延させて得られる、互いに遅延時間が異なる複数の遅延信号の位相と、参照信号Frefの位相とを比較することにより、信号dを生成する。信号dは、比Flo/Frefの小数部分に対応する。
【0022】
後述するように、本実施形態のTDC24は、遅延素子を直列接続して遅延信号を生成するのではなく、分周器で分周信号を生成し、複数の抵抗を用いて分周信号を分圧して遅延信号を生成する。そのため、遅延素子のばらつきを規格化する必要はなく、小規模かつ低消費電力の回路で、信号dを生成できる。詳細は図5以降を用いて説明する。
【0023】
加算器25は信号CNTVと信号dとを加算して、信号ACC2(第4のデジタル信号)として出力する。信号ACC2は比Flo/Frefに対応する。
【0024】
アキュムレータ26には参照信号REFがクロックとして入力される。そして、アキュムレータ26は参照信号REFに同期して周波数設定値FCWを積算し、信号ACC1として出力する。よって、信号ACC1は、参照信号REFに同期して、周波数設定値FCWずつ増加する。
【0025】
制御信号生成部27は、例えば、減算器27aと、ループフィルタ27bと、乗算器27cとを有する。減算器27aは、信号ACC1の値から信号ACC2の値を減じて得られる差分値をループフィルタ27bへ出力する。ループフィルタ27bは、差分値を平滑化し、差分値の高周波成分を除去する。乗算器27cは、ループフィルタ27bの出力値に所定の係数Kを乗じて、発振器制御信号OTWを出力する。
【0026】
制御信号生成部27は、信号ACC1,ACC2に基づいて、LO信号の周波数Floが目標周波数であるFref*FCWに近づくよう、発振器制御信号OTWを制御する。より具体的には、LO信号の周波数Floが2405MHzより高い(低い)場合、信号ACC2が信号ACC1より大きく(小さく)なる。このとき、制御信号生成部27は、周波数Floが低く(高く)なるよう、発振器制御信号OTWを制御する。
【0027】
図3は、図2の半導体集積回路の処理動作の一例を示すフローチャートである。カウンタ23は参照信号REFに同期してLO信号のパルス数をカウントし、比Flo/Frefの整数部に対応する信号CNTVを生成する(ステップS1)。また、TDC24はLO信号と参照信号REFとの位相差を検出し、比Flo/Frefの小数部に対応する信号dを生成する(ステップS2)。
【0028】
続いて、制御信号生成部27は、参照信号REFに同期して周波数設定値FCWを加算した信号ACC1と、比Flo/Frefの整数部分および小数部分を加えた信号ACC2と、に基づいて、発振器制御信号OTWを生成する。より具体的には、ACC1>ACC2である場合、周波数Floは目標周波数FCW*Frefより低い(ステップS3のYES)ので、DCO21が生成するLO信号の周波数が高くなるよう、制御信号生成部27は周波数設定値FCWを生成する(ステップS4)。一方、ACC1<ACC2である場合、周波数Floは目標周波数FCW*Frefより高い(ステップS5のYES)ので、DCO21が生成するLO信号の周波数が低くなるよう、制御信号生成部27は周波数設定値FCWを生成する(ステップS6)。そして、DCO21は生成された周波数設定値FCWに応じた周波数のLO信号を生成する。
【0029】
このようなフィードバック動作を繰り返して、LO信号の周波数Floが目標周波数FCW*Frefに近づくよう制御される。
【0030】
図4は、参照信号REFおよび信号ACC1,ACC2の波形図の一例である。なお、同図では信号ACC1,ACC2が8ビットである例を示している。また、信号ACC2はデジタル信号であるが、説明を簡略化するために小数表記している。
【0031】
図4に示すように、アキュムレータ26が生成する信号ACC1の値は、参照信号REFに同期して、周波数設定値FCWの値である185ずつ増加する。例えば、信号ACC1の値はそれぞれ、時刻t0では0、時刻t1では185、時刻t2では185+185−256=114である。
【0032】
一方、信号ACC2は、上述のように、比Flo/Frefに対応する。例えば、時刻t1〜t2では、信号ACC2の値は185.1であり、信号ACC1の値185より大きい。これは、LO信号の周波数Floが目標周波数である2405MHzより若干高いことを意味する。このとき、制御信号生成部27により、LO信号の周波数が低くなるよう、発振器制御信号OTWが生成される。ここで、185.1の整数部185はカウンタ23により検出され、小数部0.1はTDC24により検出される。
【0033】
一方、時刻t2〜t3では、信号ACC2の値は113.9であり、信号ACC1の値114より小さい。これは、LO信号の周波数Floが目標周波数より若干低いことを意味する。このとき、制御信号生成部27により、LO信号の周波数が高くなるよう、発振器制御信号OTWが生成される。ここで、113.9の整数部113はカウンタ23により検出され、小数部0.9はTDC24により検出される。
【0034】
なお、発振器生成部にはループフィルタ27bが含まれるため、信号ACC1と信号ACC2の大小関係がすぐにLO信号の周波数Floに反映されるわけではない。
【0035】
以下、本実施形態の特徴の1つであるTDC24の内部構成について、詳しく説明する。図5は、TDC24の内部構成の一例を示す図である。TDC24は、分周器(DIV)31と、PPG(Passive Phase Generator)32と、n個のフリップフロップ331〜33n(そのうちの1つをフリップフロップ33kと表記する)およびエンコーダ34から構成される位相差検出部35とを有する。
【0036】
分周器31はLO信号を分周し、例えば90度ずつの位相差を持った4相の分周信号LO1〜LO4を生成する。分周器31は、例えば、Quadrature VCOやリング発振器、ポリフェーズフィルタ等により実現できる。なお、分周器31は4相の分周信号でなく、8相や16相の分周信号を生成してもよい。
【0037】
PPG32は、4相の分周信号LO1〜LO4をさらにm分割して、4*m(=n)相の遅延信号dly[1]〜dly[n]を生成する。なお、遅延信号dly[1]はLO信号そのものである。また、遅延信号dly[1]〜dly[n]の順にdly[1]との位相差、すなわち、遅延時間が大きくなる。PPG32の内部構成は図7を用いて後述する。
【0038】
位相差検出部35は、参照信号REFと、遅延信号dly[1]〜dly[n]のそれぞれと、を比較して、信号dを出力する。より具体的には、フリップフロップ33kは、データ端子Dに対応する遅延信号dly[k]が、クロック端子に参照信号REFがそれぞれ入力される。そして、フリップフロップ33kは、参照信号REFに同期して遅延信号dly[k]の値を保持し、信号q[k]としてそれぞれ出力する。そして、エンコーダ34は、信号q[1]〜q[n]に基づいて、LO信号と参照信号REFとの位相差を示す信号dを生成し、出力する。
【0039】
図6は、TDC24内の遅延信号q[1]〜q[n]および参照信号REFの波形図の一例を示す図である。同図では、時刻t10で遅延信号dly[1]つまりLO信号が立ち上がり、続いて、時刻t20,t30で遅延信号dly[2],dly[3]がそれぞれ立ち上がる様子を示している。
【0040】
ここで、参照信号REFが、時刻t20とt30の間の時刻t25で立ち上がったとすると、フリップフロップ331〜33nのそれぞれは、時刻t25での遅延信号dly[1]〜dly[n]の値を信号q[1]〜q[n]として保持する。その結果、信号q[2]はハイに、信号q[3]はロウにそれぞれ設定される。エンコーダ34は、信号q[2]とq[3]との間で値がハイからロウへ切り替わったことを検出し、これに基づいて、LO信号と参照信号REFとの位相差を示す信号dを出力する。
【0041】
図7は、PPG32の内部構成の一例を示す回路図である。同図は、図5の分周器31により生成される、LO信号を4分周した分周信号LO1〜LO4をさらにm分割して、遅延信号dly[1]〜dly[4m]を生成するものである。
【0042】
PPG32は4m個の抵抗R1〜Rmを有する。抵抗R1〜Rmは分周信号LO1と分周信号LO2との間に直列接続される。抵抗Rm+1〜R2mは分周信号LO2と分周信号LO3との間に直列接続される。抵抗R2m+1〜R3mは分周信号LO3と分周信号LO4との間に直列接続される。抵抗R3m+1〜R4mは分周信号LO4と分周信号LO1との間に直列接続される。ここで、半導体集積回路200から出力されるスプリアスを小さくするため、遅延信号dly[1]〜dly[4m]の遅延時間を等間隔にするのがよい。よって、分周信号の近くに接続される抵抗ほど、抵抗値を大きくするのが望ましい。例えば、R1>R2>・・・<Rm−1<Rmとする。
【0043】
抵抗Rk(k=1〜4m−1)と抵抗Rk+1との接続ノードから遅延信号dly[k+1]が出力され、抵抗R4mと抵抗R1との接続ノードから遅延信号dly[1]が出力される。例えば、遅延信号dly[2]は、分周信号LO1とLO2とを、抵抗R1〜Rmで分圧して得られる。分圧して得られた遅延信号dly[2]の遅延時間は、分周信号LO1の遅延時間と分周信号LO2の遅延時間との間の値となる。他の遅延信号も同様である。
【0044】
なお、分周信号LO1と遅延信号dly[1],LO2とdly[m+1],LO3とdly[2m+1],LO4とdly[3m+1]はそれぞれ同じ信号である。
【0045】
抵抗R1〜Rmの抵抗値を適切な値に設定することにより、遅延時間dly[1]〜dly[4m]の遅延時間を等間隔にすることができる。
【0046】
図8は、PPG32の具体例を示す回路図である。図8のPPG32は、図7においてm=4とした例である。以下、図8のPPG32で、遅延信号dly[1]〜dly[16]の遅延時間を等間隔にするための条件を求める。
【0047】
抵抗R1〜R16の抵抗値は、任意の2つの分周信号間で対称でなければならない。そのため、分周信号の直近に配置される8個の抵抗の抵抗値をr1、他の抵抗の抵抗値をr2とする。また、LO信号およびその分周信号LO1〜LO4は2.4GHz程度の高周波数であるため、その波形は矩形ではなく正弦波で近似できる。さらに、分周信号LO1〜LO4は互いに90度ずつの位相差を有することを考慮すると、下記(1)〜(4)式で表される。
LO1 = sinωt ・・・(1)
LO2 = cosωt ・・・(2)
LO3 = -sinωt ・・・(3)
LO4 = -cosωt ・・・(4)
【0048】
ここで、ω=2π*Floである。例えば遅延信号dly[2]〜dly[4]は、分周信号LO1とLO2とを抵抗R1〜R4で分圧した電圧となる。よって、dly[1]〜dly[5]は下記(5)〜(9)式で表される。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0049】
ここで、A,α,βは下記(10)〜(12)式で表される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0050】
そこで、抵抗値r1,r2が下記(13)式を満たすようにする。
r1=√2*r2 ・・・(13)
【0051】
これにより、α=22.5度、β=67.5度となり、遅延信号dly[1]〜dly[5]を位相が22.5度ずつずれた信号とすることができる。結果として、遅延信号dly[1]〜dly[16]は、360度を16等分した位相差を有し、遅延時間が等間隔となる。これにより、半導体集積回路200から出力されるスプリアスを小さくすることができる。
【0052】
このように、本実施形態のTDC24では、まず、分周器31によりLO信号を分周して複数の分周信号を生成する。次に、複数の抵抗により分周信号を分圧してLO信号の遅延信号を生成する。そのため、複雑な演算を行って位相差情報を規格化する必要がない。よって、規格化のための回路が不要になり、回路の小規模化および低消費電力化が図れる。また、規格化演算が不要なため、フィードバックループの遅延時間が短くすることができ、Fref*FCWを100MHz以上の値に設定して、高周波数(例えば2.4GHz)のLO信号(発振信号)を生成できる。また、TDC24内の抵抗値を調整することにより、複数の遅延信号の遅延時間を等間隔にすることができる。
【0053】
なお、図7および図8において、抵抗に代えて、容量、インダクタ、ゲートが所定電位にバイアスされたトランジスタ等の一般的なインピーダンス素子でもよい。
【0054】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0055】
なお、本実施形態は、以下の態様も含む。
【0056】
請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体集積回路において、前記複数の遅延信号の遅延時間が等間隔になるよう、前記インピーダンス素子のインピーダンス値が設定されてもよい。
【0057】
請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体集積回路において、前記発振信号の周波数は100MHz以上であってもよい。
【0058】
請求項1に記載の半導体集積回路において、前記分周器は、互いに90度ずつの位相差を有する第1乃至第4の分周信号を生成し、前記複数のインピーダンス素子は、前記第l(lは1乃至3の整数)の分周信号と前記第(l+1)の分周信号との間、および、前記第4の分周信号と前記第1の分周信号との間にそれぞれ直列接続される第1乃至第4のインピーダンス素子を含み、前記第1および第4のインピーダンス素子のインピーダンス値をr1、前記第2および第3のインピーダンス素子のインピーダンス値をr2とすると、下記(14)式を満たすことにしてもよい。
【0059】
r1=√2*r2 ・・・ (14)。
【0060】
前記分周器は、Quadrature VCO、リング発振器およびポリフェーズフィルタのいずれかであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 アンテナ
3 信号送出部
4 信号受信部
6,10 半導体集積回路
21 デジタル制御発振器
23 カウンタ
24 TDC
25 加算器
27 制御信号生成部
31 分周器
32 PPG
35 位相差検出部
R1〜R4m 抵抗
100 無線通信装置
200 半導体集積回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のデジタル信号に応じた周波数の発振信号を生成するデジタル制御発振器と、
前記発振信号のパルス数をカウントし、参照信号に同期して、カウント値を第2のデジタル信号として出力するカウンタと、
前記発振信号と前記参照信号との位相差に対応する第3のデジタル信号を生成する時間デジタル変換器と、
前記第2および第3のデジタル信号を加算して第4のデジタル信号を生成する加算器と、
前記参照信号に同期して周波数設定値を積算した値と、前記第4のデジタル信号と、に基づいて、前記発振信号の周波数が所定値に近づくよう前記第1のデジタル信号を生成する制御信号生成部と、を備え、
前記時間デジタル変換器は、
前記発振信号を分周して複数の分周信号を生成する分周器と、
前記複数の分周信号を分圧して、前記発振信号を遅延させた複数の遅延信号を生成する複数のインピーダンス素子と、
前記参照信号と、前記複数の遅延信号のそれぞれと、を比較することにより、前記参照信号と前記発振信号との位相差に対応する前記第3のデジタル信号を出力する位相差検出部と、を有することを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記分周器は、前記発振信号をk(kは整数)分周して、第1乃至第kの分周信号を生成し、
前記複数のインピーダンス素子は、前記第l(lは1乃至(k−1)の整数)の分周信号と前記第(l+1)の分周信号との間、および、前記第kの分周信号と前記第1の分周信号との間にそれぞれ複数個ずつ直列接続され、
前記複数のインピーダンス素子同士の接続ノードのそれぞれから、前記複数の遅延信号が出力されることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記直列接続されるインピーダンス素子のうち、前記分周信号の近くに接続される前記インピーダンス素子ほど、インピーダンス値が大きいことを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記複数のインピーダンス素子のそれぞれは、抵抗、容量、インダクタおよびゲートが所定電位にバイアスされたトランジスタのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項5】
第1の半導体集積回路を有し、前記第1の半導体集積回路により生成される発振信号に基づいて外部から入力された入力信号を変調し、変調された前記入力信号をアンテナから送信する信号送出部と、
第2の半導体集積回路を有し、前記第2の半導体集積回路により生成される発振信号に基づいて前記アンテナで受信した受信信号を復調し、復調された前記受信信号を外部へ出力する信号受信部と、のうち少なくとも1つを備え、
前記第1および第2の半導体集積回路のそれぞれは、
第1のデジタル信号に応じた周波数の発振信号を生成するデジタル制御発振器と、
前記発振信号のパルス数をカウントし、参照信号に同期して、カウント値を第2のデジタル信号として出力するカウンタと、
前記発振信号と前記参照信号との位相差に対応する第3のデジタル信号を生成する時間デジタル変換器と、
前記第2および第3のデジタル信号を加算して第4のデジタル信号を生成する加算器と、
前記参照信号に同期して周波数設定値を積算した値と、前記第4のデジタル信号と、に基づいて、前記発振信号の周波数が所定値に近づくよう前記第1のデジタル信号を生成する制御信号生成部と、を備え、
前記時間デジタル変換器は、
前記発振信号を分周して複数の分周信号を生成する分周器と、
前記複数の分周信号を分圧して、前記発振信号を遅延させた複数の遅延信号を生成する複数のインピーダンス素子と、
前記参照信号と、前記複数の遅延信号のそれぞれと、を比較することにより、前記参照信号と前記発振信号との位相差に対応する前記第3のデジタル信号を出力する位相差検出部と、を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項1】
第1のデジタル信号に応じた周波数の発振信号を生成するデジタル制御発振器と、
前記発振信号のパルス数をカウントし、参照信号に同期して、カウント値を第2のデジタル信号として出力するカウンタと、
前記発振信号と前記参照信号との位相差に対応する第3のデジタル信号を生成する時間デジタル変換器と、
前記第2および第3のデジタル信号を加算して第4のデジタル信号を生成する加算器と、
前記参照信号に同期して周波数設定値を積算した値と、前記第4のデジタル信号と、に基づいて、前記発振信号の周波数が所定値に近づくよう前記第1のデジタル信号を生成する制御信号生成部と、を備え、
前記時間デジタル変換器は、
前記発振信号を分周して複数の分周信号を生成する分周器と、
前記複数の分周信号を分圧して、前記発振信号を遅延させた複数の遅延信号を生成する複数のインピーダンス素子と、
前記参照信号と、前記複数の遅延信号のそれぞれと、を比較することにより、前記参照信号と前記発振信号との位相差に対応する前記第3のデジタル信号を出力する位相差検出部と、を有することを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
前記分周器は、前記発振信号をk(kは整数)分周して、第1乃至第kの分周信号を生成し、
前記複数のインピーダンス素子は、前記第l(lは1乃至(k−1)の整数)の分周信号と前記第(l+1)の分周信号との間、および、前記第kの分周信号と前記第1の分周信号との間にそれぞれ複数個ずつ直列接続され、
前記複数のインピーダンス素子同士の接続ノードのそれぞれから、前記複数の遅延信号が出力されることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記直列接続されるインピーダンス素子のうち、前記分周信号の近くに接続される前記インピーダンス素子ほど、インピーダンス値が大きいことを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記複数のインピーダンス素子のそれぞれは、抵抗、容量、インダクタおよびゲートが所定電位にバイアスされたトランジスタのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項5】
第1の半導体集積回路を有し、前記第1の半導体集積回路により生成される発振信号に基づいて外部から入力された入力信号を変調し、変調された前記入力信号をアンテナから送信する信号送出部と、
第2の半導体集積回路を有し、前記第2の半導体集積回路により生成される発振信号に基づいて前記アンテナで受信した受信信号を復調し、復調された前記受信信号を外部へ出力する信号受信部と、のうち少なくとも1つを備え、
前記第1および第2の半導体集積回路のそれぞれは、
第1のデジタル信号に応じた周波数の発振信号を生成するデジタル制御発振器と、
前記発振信号のパルス数をカウントし、参照信号に同期して、カウント値を第2のデジタル信号として出力するカウンタと、
前記発振信号と前記参照信号との位相差に対応する第3のデジタル信号を生成する時間デジタル変換器と、
前記第2および第3のデジタル信号を加算して第4のデジタル信号を生成する加算器と、
前記参照信号に同期して周波数設定値を積算した値と、前記第4のデジタル信号と、に基づいて、前記発振信号の周波数が所定値に近づくよう前記第1のデジタル信号を生成する制御信号生成部と、を備え、
前記時間デジタル変換器は、
前記発振信号を分周して複数の分周信号を生成する分周器と、
前記複数の分周信号を分圧して、前記発振信号を遅延させた複数の遅延信号を生成する複数のインピーダンス素子と、
前記参照信号と、前記複数の遅延信号のそれぞれと、を比較することにより、前記参照信号と前記発振信号との位相差に対応する前記第3のデジタル信号を出力する位相差検出部と、を有することを特徴とする無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
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【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−60603(P2012−60603A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204695(P2010−204695)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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