説明

半導体集積回路

【課題】セル内のCMOSトランジスタの製造欠陥による漏れ電流を正確に測定することができる半導体集積回路を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体集積回路は、状態設定端子STに入力される状態設定信号とNAND回路3aとを用いて、ノードAの論理を変化させてNAND回路4のCMOSトランジスタの動作をオフ状態とするとともに、上記CMOSトランジスタに電源電流が流れるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル内のCMOSトランジスタの漏れ電流を正確に測定することができる半導体集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の検査には、静止時の電源電流に対する検査がある。静止時電源電流検査は、CMOSトランジスタで構成された半導体集積回路の静止時電源電流が非常に少ないことを利用して、製造欠陥が存在する半導体集積回路を選別するための検査である。この検査は、半導体集積回路に信号を入力して静止時の状態を生じさせ、電源電流を測定し、その後あらかじめ定めた電流値よりも大きいか少ないかを調べることでなしえる。
【0003】
静止時電源電流検査を利用して、各種セル(論理回路を構成する基本素子)内のCMOSトランジスタの製造欠陥によるソース−ドレイン間の漏れ電流を検査する。しかしながら、上記各種セルでは、その構成により、上記漏れ電流を検査できない場合がある。以下、例を挙げてより詳しく説明する。
【0004】
図3は、上記セルとしてのリセット付きDフリップフロップ回路10の構成を示しており、図4は、Dフリップフロップ回路10に備えられているNAND回路4のCMOSトランジスタの構成を示している。
【0005】
NAND回路4におけるNチャンネル型MOSトランジスタ(以下、単に「トランジスタ」と称する)N2のソース−ドレイン間の漏れ電流を測定する場合、トランジスタN2のゲート電位をトランジスタN2がオフ状態となるような電位にするとともに、トランジスタN2に電流が流れるように、Dフリップフロップ回路10を設定する。つまり、Dフリップフロップ回路10のリセット端子RST,ノードAの論理をそれぞれ0,1とする。
【0006】
しかしながら、Dフリップフロップ回路10では、NAND回路4およびNOT回路3により、リセット端子RSTの論理を0にした場合、ノードAの論理も必ず0となる。この状態では、トランジスタN1がオフ状態となり、トランジスタN2に電流が流れる経路が遮断される。よって、トランジスタN2のソース−ドレイン間に発生する漏れ電流を検査することが困難となる。
【0007】
この問題に対する公知の技術として、半導体集積回路の動作時電源電流に対する検査がある。この検査は、半導体集積回路に信号を入力して動作時の電源電流を測定する。半導体集積回路の動作時には、静止時と遷移時との状態が含まれているため、上記漏れ電流を含む電源電流の検査ができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記公知の技術では、測定を必要とする漏れ電流だけでなく、電源−GND間の瞬間的な貫通電流も同時に測定する。この瞬間的な貫通電流は、例えば数十mA程度発生するのに対して、上記漏れ電流は、例えば数μA程度である。つまり、製造欠陥を持つ半導体集積回路と製造欠陥を持たない半導体集積回路との動作時電源電流の各電流値の差は、測定した電源電流値に対して0.1%程度である。このため、動作時電源電流測定時における計測器の測定誤差により、上記漏れ電流の測定が正確に行えないという問題を生じる。
【0009】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、セル内のCMOSトランジスタの製造欠陥による漏れ電流を正確に測定することができる半導体集積回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体集積回路は、上記課題を解決するために、入力される検査設定信号により、セル内の検査対象回路の入力信号論理を変化させて、上記検査対象回路内のCMOSトランジスタの動作をオフ状態とするとともに、上記CMOSトランジスタに電源電流が流れるように設定する検査設定回路を備えていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、本発明に係る半導体集積回路は、検査設定信号によって検査対象回路の入力信号論理を変化させることにより、上記検査対象回路内のCMOSトランジスタの動作がオフ時の電源電流(静止時電源電流)を測定できる。一般的に、CMOSトランジスタの静止時電源電流は非常に少ないため、漏れ電流が生じていれば漏れ電流を測定することができる。これにより、セル内のCMOSトランジスタの製造欠陥による漏れ電流を正確に測定することができる半導体集積回路を提供することができるという効果を奏する。
【0012】
また、上記セルとしては、リセット付きDフリップフロップ回路が挙げられる。
【0013】
本発明に係る半導体集積回路は、スキャン回路を備えており、上記検査設定信号は、上記リセット付きフリップフロップ回路をリセットするためのリセット信号と、上記スキャン回路を動作状態とするためのスキャンイネーブル信号とによって生成されることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、上記検査設定信号を半導体集積回路内の信号によって生成するため、新たな配線追加による半導体集積回路のチップ面積の増加を最小限に抑えることが可能となるとともに、それにより半導体集積回路の価格増加を抑えることが可能となるというさらなる効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る半導体集積回路は、上記課題を解決するために、入力される検査設定信号により、セル内の検査対象回路の入力信号論理を変化させて、上記検査対象回路内のCMOSトランジスタの動作をオフ状態とするとともに、上記CMOSトランジスタに電源電流が流れるように設定する検査設定部を備えていることを特徴としている。これにより、セル内のCMOSトランジスタの製造欠陥による漏れ電流を正確に測定することができる半導体集積回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を用いて説明すると以下の通りである。
【0017】
図1は、一実施形態に係る半導体集積回路におけるセル(論理回路を構成する基本素子)としてのリセット付きDフリップフロップ回路(以下、単に「フリップフロップ回路」と称する)10aの構成を示している。
【0018】
フリップフロップ回路10aは、NAND回路1、NOT回路2、NAND回路(検査設定回路)3a、NAND回路(検査対象回路)4、およびスイッチSW1,SW2を備えている。
【0019】
NAND回路1の一方の入力端子は、クロック端子CKに入力されるクロック信号ckもしくはクロック信号ckの反転信号ckバーに基づいて動作するスイッチSW1により、フリップフロップ回路10aの入力端子DもしくはNOT回路2の出力端子と接続され、NAND回路1の他方の入力端子は、リセット端子RSTに接続されている。NAND回路1の出力端子は、NOT回路2の入力端子に接続されている。図中のSW1は、クロック信号ckに基づいて動作している状態を表しており、MOSトランジスタによって構成できる。
【0020】
NAND回路3aの一方の入力端子は、クロック端子CKに入力されるクロック信号ckもしくはクロック信号ckの反転信号ckバーに基づいて動作するスイッチSW2により、NAND回路1の出力端子もしくはNAND回路4の出力端子と接続され、NAND回路3aの他方の入力端子は、状態設定端子STに接続されている。図中のSW2は、クロック信号ckの反転信号ckバーに基づいて動作している状態を表しており、MOSトランジスタによって構成できる。
【0021】
NAND回路3aの出力端子は、NAND回路4の一方の入力端子に接続されているとともに、フリップフロップ回路10aの出力端子Qに接続されている。NAND回路4の他方の入力端子は、リセット端子RSTに接続されている。なお、NAND回路3aの出力端子とNAND回路4の一方の入力端子との接続点をノードAとする。
【0022】
NAND回路4は、図3に示したリセット付きDフリップフロップ回路10におけるNAND回路4と同一であり、図4に示すような構成を備えている。すなわち、Pチャンネル型MOSトランジスタ(以下、単に「トランジスタ」と称する)P1,P2、およびNチャンネル型MOSトランジスタ(以下、単に「トランジスタ」と称する)N1,N2を備えている。
【0023】
トランジスタP1,P2のソースは、それぞれ電源端子に接続されている。トランジスタP1のゲートはノードAに接続されており、トランジスタP2のゲートはリセット端子RSTに接続されている。トランジスタP1,P2の各ドレインは、互いに接続され、トランジスタN1,N2を介してGNDに接続されている。トランジスタN1のゲートはノードAに接続されており、トランジスタN2のゲートはリセット端子RSTに接続されている。
【0024】
既に述べたように、NAND回路4におけるトランジスタN2のソース−ドレイン間の漏れ電流を測定する場合、リセット端子RST,ノードAの論理をそれぞれ0,1とする必要があるが、フリップフロップ回路10ではその構成上、ノードAの論理をそのような論理とすることができず、トランジスタN2の漏れ電流を測定することができなかった。
【0025】
これに対し、フリップフロップ回路10aでは、状態設定端子STおよびNAND回路3aを備えている。状態設定端子STには、通常動作時には論理「1」の状態設定信号が入力される。この場合、NAND回路3aは、フリップフロップ回路10のNOT回路3と同様に機能し、フリップフロップ回路10aは、フリップフロップ回路10と同等機能の動作を行う。
【0026】
一方、漏れ電流測定時(検査時)には、状態設定端子STには論理「0」の状態設定信号(検査設定信号)が入力される。この時、リセット端子RSTの論理は「0」である。これにより、リセット端子RST,ノードAの論理をそれぞれ0,1とすることができ、トランジスタN2の漏れ電流を静止時電源電流として測定することができる。その結果、製造欠陥により端子間漏れ電流を発生させるCMOSトランジスタを有する半導体集積回路を試験にて確実に選別することが可能となる。
【0027】
製造欠陥により端子間漏れ電流を発生させるCMOSトランジスタを有する半導体集積回路は、製造欠陥を有さない半導体集積回路と比較して機能的性能が同等であることが多い。従い、半導体集積回路の機能試験では正確に選別することが困難である。しかしながら、製造欠陥により端子間漏れ電流を発生させるCMOSトランジスタを有する半導体集積回路は、製造欠陥を有さない半導体集積回路と比較して、同等の機能的性能が発揮できる寿命が短い。保障した寿命よりも短い半導体集積回路を、例えば車や航空機に利用した場合、人命にかかわる事故を引き起こす危険がある。つまり、製造欠陥により端子間漏れ電流を発生させるCMOSトランジスタを有する半導体集積回路を正確に試験し選別することは非常に重要であり、この点から本発明の有用性を理解できると考える。
【0028】
ところで、状態設定端子STに入力する状態設定信号は、それ専用に生成して入力してもよいが、半導体集積回路内の信号を利用して生成すれば、新たな配線追加による半導体集積回路のチップ面積の増加を最小限に抑えることが可能となるとともに、それにより半導体集積回路の価格増加を抑えることが可能となる。
【0029】
図2は、状態設定端子STに入力する状態設定信号をSCAN-Enable(スキャンイネーブル)信号とリセット端子RSTに入力されるリセット信号とで生成する構成を示している。
【0030】
論理回路からなる半導体集積回路を製造する場合、SCAN回路を利用することがある。SCAN-Enable信号は、このSCAN回路を有効(動作状態)とするための信号である。通常、SCAN回路が挿入された半導体集積回路は、SCAN-Enable信号とリセット信号とが独立して機能するように設計される。従って、SCAN-Enable信号とリセット信号とが同時に有効(Enable)となることは無い。
【0031】
状態表示記号付きNAND回路5は、SCAN-Enable信号とリセット信号とがそれぞれ入力され、それぞれの信号が有効となった場合に、論理「0」の状態設定信号を状態設定端子STに入力する。このNAND回路5により、状態設定信号をSCAN-Enable信号とリセット信号とで新たな配線の追加なしに制御することが可能となる。
【0032】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る半導体集積回路は、本明細書において示したような構成を有するCMOSトランジスタを備える半導体集積回路であれば、多種多様な機能を有する半導体集積回路に好適に用いることができ、CMOSトランジスタの漏れ電流を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体集積回路に備えられているセルとしてのリセット付きDフリップフロップ回路の構成を示す回路図である。
【図2】状態設定信号を生成する構成を示す回路図である。
【図3】従来技術を示すものであり、リセット付きDフリップフロップ回路の構成を示す回路図である。
【図4】上記リセット付きDフリップフロップ回路に備えられているNAND回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0035】
3a NAND回路(検査設定回路)
4 NAND回路(検査対象回路)
10、10a リセット付きDフリップフロップ回路(セル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される検査設定信号により、セル内の検査対象回路の入力信号論理を変化させて、上記検査対象回路内のCMOSトランジスタの動作をオフ状態とするとともに、上記CMOSトランジスタに電源電流が流れるように設定する検査設定回路を備えていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
上記セルは、リセット付きDフリップフロップ回路であることを特徴とする請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
上記半導体集積回路は、スキャン回路を備えており、
上記検査設定信号は、上記リセット付きフリップフロップ回路をリセットするためのリセット信号と、上記スキャン回路を動作状態とするためのスキャンイネーブル信号とによって生成されることを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−128324(P2009−128324A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306635(P2007−306635)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】