説明

半導電性ゴムベルト、およびその製造方法

【課題】特にベルト周方向での電気抵抗のばらつきが低減され、高画質な画像形成が可能な半導電性ゴムベルト、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】体積固有抵抗が10〜1012Ω・cmであるシームレスの半導電性ゴムベルトの製造方法において、スパイラルフロー型の溝25が形成された内筒部23を有するクロスヘッド3を備えた押出機を使用し、スコーチ時間tが10〜18分である未加硫ゴム組成物を可塑化して、押出機より押し出す押出工程、押出機における未加硫ゴム組成物6の押し出し方向と略直交方向に、内筒部23の内部にて筒状金型5を移動させつつ、未加硫ゴム組成物6を筒状金型5外面に層状に被覆して未加硫ゴムベルト成形体7とする未加硫ゴムベルト成形工程、および未加硫ゴムベルト成形体7を加硫して半導電性ゴムベルトとする加硫工程を備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機、プリンター、ファクシミリなどの静電写真プロセスによる画像形成装置において転写部などに使用される半導電性ゴムベルト、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において転写部などに使用される半導電性ゴムベルトは、一般にグラファイトやカーボンブラックなどの導電性の充填剤を添加し、体積固有抵抗が10〜1012Ω・cmの範囲に調整されたものが使用される。ここで、上記の体積固有抵抗の範囲は、一般的に半導電性領域といわれ、この領域では充填剤の添加量のわずかな差によって、半導電性ゴムベルトの電気抵抗がばらつく傾向がある。ゴムベルトの電気抵抗がばらつくと、形成画像にムラが発生することから、半導電性ゴムベルトの電気抵抗を全体的に均一なものとすることは極めて重要である。この半導電性ゴムベルトの製造方法として、充填剤を配合した未加硫ゴム組成物をチューブ押出成形することで、チューブ状の未加硫ゴムベルト成形体を作成し、これを金型に被覆して加熱加硫することによってベルトを製造する「チューブ押出成形法」が知られている。
【0003】
上記チューブ押出成形法では、充填剤を配合した未加硫ゴム組成物の流動速度(押出速度)を低く設定することも可能であることから、未加硫ゴム組成物が押出口金などを通過する際に受けるせん断力を比較的小さくすることができる。しかし、電気抵抗を半導電性領域にて均一なものとする場合、押出成形時のわずかなせん断履歴によっても、半導電性ゴムベルトの電気抵抗が局所的にばらつくことがある。特に、未加硫ゴム組成物をチューブ状に押し出す際に必要なダイス(口金)に、通常3本以上設けられるブリッジ部において、未加硫ゴム自体のウェルドラインがベルト幅方向(ベルトの押出方向)に発生し、この部分においてベルトの肉厚が薄くなり、かつ電気抵抗のばらつきが発生する場合がある。したがって、通常のチューブ押出成形法では、ベルト幅方向と直交する「ベルト周方向」に間隔を置いてウェルドラインが形成されることから、ベルト周方向において、半導電性ゴムベルトの電気抵抗がばらつくという問題があった。
【0004】
下記特許文献1では、転写バイアスの強度を制御することにより、半導電性ゴムベルトのベルト周方向における電気抵抗が変化しても(つまり、ベルト周方向にて、半導電性ゴムベルトの電気抵抗がばらつく場合であっても)、半導電性ゴムベルトの電荷量を一定に保つことのできる画像形成装置が開示されている。しかしながら、かかる文献に記載の装置は、転写バイアスの強度を制御するための設備が別途必要となる。さらに、画像形成装置の画像形成処理速度を高めるために、半導電性ベルトの回転速度を高速化する場合には、転写バイアスの強度を制御することが困難となる。したがって、市場においては、半導電性ゴムベルトの電気抵抗を高いレベルで均一化すべきとの要望は非常に大きい。
【0005】
下記特許文献2では、ベルト幅方向に沿った同一線上において、ベルトの幅方向に対する分子配向角θの平均値を−15°〜+15°の範囲とし、かつ導電層の分子配向度MOR−Cの平均値、最大値および最小値の関係を、(最大値−最小値)/平均値<0.4とすることで、ベルト幅方向における電気抵抗のばらつきを低減し、形成画像にムラが発生するのを防止できる半導電性ベルトが記載されている。しかしながら、かかる半導電性ベルトは、通常のチューブ押出成形法により製造されるため、上述したベルト周方向における電気抵抗がばらつくという問題を解決できるものではない。
【0006】
一方、下記特許文献3では、スパイラルフロー型の溝が形成された内筒部を有するクロスヘッドを備えた押出機を使用した、半導電性ゴムベルトの製造方法により、電気抵抗のバラツキの発生を低減した半導電性ゴムベルトが製造できる点を開示している。しかしながら、本発明者らの鋭意検討の結果、かかる製造方法により製造した半導電性ゴムベルトでは、特にベルト周方向における電気抵抗のバラツキの点で、さらなる改良の余地があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3414514号公報
【特許文献2】特許第3056413号公報
【特許文献3】特許第3998344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特にベルト周方向での電気抵抗のばらつきが低減され、高画質な画像形成が可能な半導電性ゴムベルト、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために、ベルト周方向における半導電性ゴムベルトの分子配向度MOR−Cと、画像形成時の画質との関係について鋭意検討した。その結果、ベルト周方向に延びる同一直線上において、半導電性ゴムベルトの分子配向度MOR−Cの最大値、最小値、および平均値を特定の関係とすることで、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
即ち、本発明に係る半導電性ゴムベルトは、体積固有抵抗が10〜1012Ω・cmであるシームレスの半導電性ゴムベルトであって、このベルト幅方向と直交するベルト周方向に延びる同一直線上において、次式(1):

(式中、tは補正厚み(mm)、tはベルト厚み(mm)を示す。)で表される、前記半導電性ゴムベルトの分子配向度MOR−Cの最大値をa、最小値をb、および平均値をcとしたとき、次式(2)および(3):

を満たすことを特徴とする。
【0011】
上記半導電性ゴムベルトにおいては、ベルト周方向における分子配向度のムラが低減されていることから、特にベルト周方向における電気抵抗のばらつきが低減されている。このため、画像形成時の画質を高画質なものとすることができ、しかも半導電性ゴムベルトの電気抵抗が高いレベルで均一化されているため、特に新たな設備などを要することなく、半導電性ベルトの回転速度を高速化することができる。その結果、上記半導電性ゴムベルトを備えた高速複写機やプリンターなどにおいては、新たに特別な設備を装備しなくても、高画質・搬送安定性を確保することができる。
【0012】
また、本発明に係る半導電性ゴムベルトの製造方法は、体積固有抵抗が10〜1012Ω・cmであるシームレスの半導電性ゴムベルトの製造方法であって、スパイラルフロー型の溝が形成された内筒部を有するクロスヘッドを備えた押出機を使用し、スコーチ時間tが10〜18分である未加硫ゴム組成物を可塑化して、前記押出機より押し出す押出工程、前記押出機における前記未加硫ゴム組成物の押し出し方向と略直交方向に、前記内筒部の内部にて筒状金型を移動させつつ、前記未加硫ゴム組成物を前記筒状金型外面に層状に被覆して未加硫ゴムベルト成形体とする未加硫ゴムベルト成形工程、および前記未加硫ゴムベルト成形体を加硫して半導電性ゴムベルトとする加硫工程を備えることを特徴とする。
【0013】
スパイラルフロー型の溝が形成された内筒部を有するクロスヘッドを備えた押出機を使用し、スコーチ時間tが10〜18分である未加硫ゴム組成物を、特定の成形方法で押し出すことにより、ベルト周方向における分子配向度のムラが低減された半導電性ゴムベルトを製造することができる。より具体的には、上記半導電性ゴムベルトの製造方法によれば、上記式(2)および(3)を満たす半導電性ゴムベルトを製造することができる。
【0014】
上記半導電性ゴムベルトの製造方法において、前記内筒部の最大外径dと吐出口外径eとの比(ダイス絞り率)が、0.2≦e/d≦0.8であり、かつ前記未加硫ゴムベルト成形工程における前記筒状金型の移動速度が1m/分以下であることが好ましい。かかる製造方法によれば、ベルト周方向における分子配向度のムラがより確実に低減され、電気抵抗が高いレベルで均一化された半導電性ゴムベルトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】クロスヘッドの構造の例を示した図
【図2】半導電性ゴムベルトの製造装置の例をモデル的に示した図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に使用する押出機は公知のゴム押出機を使用することが可能であるが、加硫工程などにおいて発生するベルト中の気泡を除去するために、真空装置を備えた押出機の使用が好適である。
【0017】
本発明の半導電性ゴムベルトのゴム基材層を構成するゴム材料としては、公知のゴム材料を特に限定なく使用することが可能であり、天然ゴム(NR)のほか、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエンゴム;NBR)などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM,ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)などの非ジエン系合成ゴム、その他ウレタンゴム(U)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、多硫化ゴム(T)などが例示され、単独での使用、2種以上の併用が可能である。上記ゴム材料の中でも、CR、EPDM、NBR、CO(ECO)の少なくとも一つ以上を含むゴム材料を使用することが好ましい。
【0018】
本発明において半導電性を付与するために使用される充填剤としては、カーボンブラックの使用が好適である。具体的には、EC(Extra Conductive)カーボン、ECF(Extra Conductive Furnance )カーボン、SCF(Super Conductive Furnance )カーボン、CF(Conductive Furnance )カーボン、アセチレンブラック、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MTなどのカーボンブラックが例示される。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもかまわない。
【0019】
カーボンブラック以外に、必要に応じて他の導電性付与材料、例えば銀粉、銅粉、ニッケル粉などの金属材料、酸化錫、酸化インジウムなどの金属酸化物、金属をコーティングしたマイカなどの無機材料、グラファイトや炭素繊維などの炭素化合物を併用することも好適な態様である。
【0020】
上述のゴム材料は、導電性付与のための充填剤のほかに、プロセスオイルないしは可塑剤、安定剤、分散改良剤などの周知のゴム用添加剤を加えて混練し、さらに加硫剤、加硫促進剤、架橋密度調整剤などの添加剤を加えて未加硫ゴム組成物を調製して押出機に供給される。架橋は過酸化物架橋であってもよく、硫黄加硫であってもよく、周知の加硫方法が使用可能である。
【0021】
本発明に係る半導電性ゴムベルトの製造方法においては、上記ゴム材料と、充填剤と、各種添加剤とを配合することで得られる、スコーチ時間tが10〜18分である未加硫ゴム組成物を使用することが肝要である。スパイラルフロー型の溝が形成された内筒部を有するクロスヘッドを備えた押出機を使用し、この未加硫ゴム組成物を特定の成形方法で押し出すことにより、ベルト周方向における分子配向度のムラを低減することができる。スコーチ時間tが10〜18分である未加硫ゴム組成物は、上記添加剤の中でも、特にゴム材料に対する加硫剤および加硫促進剤の配合比を適宜調整することや、ゴム混練時の排出温度や未加硫ゴム組成物の保管温度を適宜調整することで得られる。
【0022】
以下、本発明に係る半導電性ゴムベルトの製造方法について説明する。本発明の実施に使用される装置の例を図1に示した。本発明に係る半導電性ゴムベルトの製造方法に使用される未加硫ゴムベルト成形体の製造装置は、押出機1と、その押し出し先端部に装着されたクロスヘッド3と、筒状金型5とにより構成され、ホッパー(不図示)より供給された未加硫ゴム組成物は、スクリュー17により先端部に装着されたクロスヘッド3に加熱・可塑化されて送られる。筒状金型5は、クロスヘッド3の一端からゴム押し出し方向と略直行方向に駆動手段13により一定速度で送られる。未加硫ゴムベルト成形工程における筒状金型5の移動速度は1m/分以下であることが好ましい。筒状金型5の移動速度をかかる範囲内とすることで、ベルト周方向における分子配向度のムラがより確実に低減され、電気抵抗が高いレベルで均一化された半導電性ゴムベルトを製造することができる。
【0023】
押出機1から押し出された未加硫ゴム組成物は、クロスヘッド3の内部において筒状金型5の移動方向に流れ方向を変更され、かつ筒状金型5を覆うように筒状に流動させられ、厚み調整手段11により所定厚みにて筒状金型5の外面に被覆される。
【0024】
筒状金型5は、図1に示すとおり、連続的に移動することが好ましく、被覆された未加硫ゴム組成物の層は連続的である。連続した筒状金型5の継ぎ目を適宜の手段により検出し、カッター9により未加硫ゴム組成物層を切断し、金型を未加硫ゴム成形体層を備えた状態で分離し、加硫工程に供給する。
【0025】
筒状金型5を移動させる駆動手段13は、図1において示した例では2本のローラーを使用した例を示したが、これに限定されるものではない。
【0026】
加硫工程において使用する加硫方法は、公知の加硫方法を限定なく使用することができ、具体的には、加硫缶を使用する方法、金型を蒸気もしくは電気ヒーターなどにより加熱する方法、常圧下、加熱オーブン中にて加熱するオーブン加硫法、過熱水蒸気などの熱媒体を送り込んでゴム膜(ブラダ)を膨張させることにより未加硫ゴムベルト成形体を加圧して加硫する方法(ブラダ加硫法)、電子線などの高エネルギー放射線を使用する加硫方法などが例示され、これらの2つ以上を併用した加硫方法を使用してもよい。
【0027】
次に、クロスヘッド3の構造の具体例を、図2に示す。クロスヘッド3は、未加硫ゴム組成物6が押出機1から押し出される方向と略直交する方向を軸芯として、外筒部21と内筒部23を有し、フランジ29によって押出機の先端部に装着される。外筒部21と内筒部23の間には筒状空間が形成されており、押出機1から押し出された未加硫ゴム組成物6は、この空間において筒状に成形され、先端部に押し出される。外筒部21は、中央付近に流れ調整リング17と先端部に厚み調整手段11を備えており、また内筒部23はその内部を筒状金型5が移動可能であり、流れを調整し、均一化するためのエッジリング19とスパイラルフロー型の溝25を備えている。筒状金型5はクロスヘッドの一端より内筒部23に挿入され、一定速度で移動し、内筒部23の他端にて筒状の未加硫ゴム組成物が厚み調整手段11により所定の厚みにて筒状金型5外面に被覆され、未加硫ゴムベルト成形体7が形成される。厚み調整手段11は、異なった厚みのベルトを製作するために交換することができるように、着脱可能に構成されていることが好適である。
【0028】
本実施形態のクロスヘッド3の内筒部23は、スパイラルフロー型の溝25よりも上流側(押出機側)で外径が最大となり、最先端部(吐出口23E側)で外径が最小となる。本実施形態では、内筒部23の最大外径dと吐出口外径との比(ダイス絞り率)を、0.2≦e/d≦0.8に設定している。このダイス絞り率を上記範囲内に設定すると、ベルト周方向における分子配向度のムラがより確実に低減され、電気抵抗が高いレベルで均一化された半導電性ゴムベルトを製造することができる。
【0029】
本発明に係る半導電性ゴムベルトの製造方法は、加硫工程にて得られた半導電性ゴムベルトのゴム基材層を所定厚みまで研磨する研磨工程を備えるものであってもよい。研磨工程において使用可能な研磨装置としては、公知のベルト研磨手段は限定なく使用可能であり、ベルトをマンドレルもしくは複数のローラーを使用して伸張状態にて回転させつつ回転砥石などの研削手段で研磨する方法が例示される。研磨後のゴム基材層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば400〜700μmのものが挙げられる。
【0030】
本発明に係る半導電性ゴムベルトは、特にゴム材料および充填剤の配合比を適宜調整することで、体積固有抵抗が10〜1012Ω・cmのゴムベルトとすることができる。さらに、ベルト周方向における分子配向度のムラを低減し、ベルト周方向における電気抵抗のばらつきを低減するためには、このベルト幅方向と直交するベルト周方向に延びる同一直線上において、次式(1):

(式中、tは補正厚み(mm)、tはベルト厚み(mm)を示す。)で表される、半導電性ゴムベルトの分子配向度MOR−Cの最大値をa、最小値をb、および平均値をcとしたとき、次式(2)および(3):

を満たすことが肝要である。上述した本発明に係る半導電性ゴムベルトの製造方法によれば、上記式(2)および(3)を満たす半導電性ゴムベルトを製造することができる。
【0031】
本発明に係る半導電性ゴムベルトにおいては、ベルト周方向における分子配向度のムラをさらに低減し、ベルト周方向における電気抵抗のばらつきを特に低減するためには、ベルト幅方向と直交するベルト周方向に延びる同一直線上において、次式(2)’および(3)’を満たすことが好ましい。

【0032】
本発明の半導電性ゴムベルトにおいては、所望によりゴム基材層からなるベルト表面に適宜、離型層を形成しても良い。この離型層はベルト表面の片面に形成しても良く、両面に形成しても良い。この離型層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば3〜20μmのものが挙げられる。
【0033】
離型層を形成する材料としては、トナーの剥落が容易な材料が好ましく、塗装により得られる塗膜層が好ましい。使用する塗料は、ベルト基材層との接着性、トナーの剥落性、電気特性などを考慮して選択することができるが、塗膜層の耐摩耗性と、ゴム基材層への密着性、柔軟性とを考慮すると、ポリウレタン系塗料の使用が好ましく、特にポリ四フッ化エチレンの微粉末を添加した塗料の使用が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、半導電性ゴムベルトの分子配向度MOR−Cは、王子計測機器社製の分子配向計(型番:MOA−6015)を使用して測定し、測定した配向度測定値MORを上記式(1)に代入して算出した。分子配向度MOR−Cの厚み補正を行う際、上記式(1)の補正厚みは、t=1.08mmとした。分子配向度MOR−Cの測定に際しては、半導電性ゴムベルトのベルト周方向に延びる同一直線上にて、第1列から第n列(n=2〜5)にて各3〜6点測定し、その平均値を算出した。
【0035】
本実施例において使用した材料、商品名と供給メーカーを表1に示す。
【0036】
(ゴム組成物の調製)
ゴム成分100重量部に対して、表1の配合処方の中で、硫黄、加硫促進剤を除く成分をそれぞれニーダーにて混練し、冷却後、再度ニーダーにて硫黄、加硫促進剤を混練し、リボン状の未加硫ゴム組成物にして押出機に供した。使用した未加硫ゴム組成物のスコーチ時間t分を表1に示す。
【0037】
押出機はスクリュー径が50mmのベント型押出機を使用し、これに外径30〜150mm、長さ400mmの円筒状金型を連続的に送ることが可能なクロスヘッドを装着した(使用したクロスヘッド内筒部の最大外径d、吐出口外径e、およびその比e/d(ダイス絞り率)を表1に示す)。押出機は、スクリューおよびシリンダー温度を50〜60℃、クロスヘッド温度を70〜90℃に調節し、筒状金型をスクリューと直角方向に、表1に記載の移動速度にて供給し、厚みが0.9mmの未加硫ゴムベルト成形体を金型周囲に被覆した。未加硫ゴムベルト層が被覆された筒状金型は、ゴムの押し出し・流動圧力により、自動的にクロスヘッドより排出された。
【0038】
上記の押出工程にて得られた未加硫ゴムベルト成形体が被覆された筒状金型を、175℃に設定した加硫蒸気缶中に収容し、15分加熱して加硫を行った。加硫後、筒状金型から脱型したベルトの表面と裏面をそれぞれ0.2mm、合計0.4mm研磨し、厚さ0.5mmのゴムベルト(ゴム基材層)を得、さらに両端を切断して幅350mmのベルトとした。得られた半導電性ゴムベルトの分子配向度MOR−C、その最大値をa、最小値をb、および平均値をcとしたときの[(a−b)/c]、[a/b]の値を表2に示す。また、得られた半導電性ゴムベルトの体積固有抵抗値を、印加電圧500Vにて、ベルト周方向に3〜6箇所測定し、その平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0039】
実施例1〜4、比較例1
表1に示す配合および条件で製造した半導電性ゴムベルトを、画像形成装置に装着して実機評価を行い、形成された画像の画質を目視にて観察することで評価した。表2において、○は高画質であって、全く問題がないレベル、△は一部転写ムラがあるが、問題がないレベル、×は転写ムラがかなりあり、実用不可能なレベルを示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表2の結果から、実施例1〜4に係る半導電性ゴムベルトの実機評価では、高画質な画像形成が可能なことがわかる。一方、比較例1に係る半導電性ゴムベルトの実機評価では、転写ムラが多く、実用不可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0043】
1:押出機
3:クロスヘッド
5:筒状金型
6:未加硫ゴム組成物
7:未加硫ゴムベルト成形体
21:外筒部
23:内筒部
25:スパイラルフロー型の溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積固有抵抗が10〜1012Ω・cmであるシームレスの半導電性ゴムベルトであって、
このベルト幅方向と直交するベルト周方向に延びる同一直線上において、次式(1):

(式中、tは補正厚み(mm)、tはベルト厚み(mm)を示す。)で表される、前記半導電性ゴムベルトの分子配向度MOR−Cの最大値をa、最小値をb、および平均値をcとしたとき、次式(2)および(3):

を満たすことを特徴とする半導電性ゴムベルト。
【請求項2】
体積固有抵抗が10〜1012Ω・cmであるシームレスの半導電性ゴムベルトの製造方法であって、
スパイラルフロー型の溝が形成された内筒部を有するクロスヘッドを備えた押出機を使用し、スコーチ時間tが10〜18分である未加硫ゴム組成物を可塑化して、前記押出機より押し出す押出工程、前記押出機における前記未加硫ゴム組成物の押し出し方向と略直交方向に、前記内筒部の内部にて筒状金型を移動させつつ、前記未加硫ゴム組成物を前記筒状金型外面に層状に被覆して未加硫ゴムベルト成形体とする未加硫ゴムベルト成形工程、および前記未加硫ゴムベルト成形体を加硫して半導電性ゴムベルトとする加硫工程を備えることを特徴とする半導電性ゴムベルトの製造方法。
【請求項3】
前記内筒部の最大外径dと吐出口外径eとの比(ダイス絞り率)が、0.2≦e/d≦0.8であり、かつ前記未加硫ゴムベルト成形工程における前記筒状金型の移動速度が1m/分以下である請求項2に記載の半導電性ゴムベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−208297(P2010−208297A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59908(P2009−59908)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】